JP2004059778A - 封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】鉛フリー錫合金ハンダを利用するバンプ電極等の酸化皮膜を除去するフラックス処理と同等の機能をも付与され、アンダーフィル(封止充填剤)としても所望の樹脂特性を有する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】フリップチップ実装の封止充填工程に用いられる液状エポキシ樹脂組成物として、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)硬化剤として酸無水物、ならびに(C)分散型硬化促進剤、さらに付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分となる、炭素数9〜15のジカルボン酸を、酸無水物1モル当たり、5×10−2〜5×10−1モルの範囲で添加してなる液状エポキシ樹脂組成物とする。
【選択図】 なし
【解決手段】フリップチップ実装の封止充填工程に用いられる液状エポキシ樹脂組成物として、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)硬化剤として酸無水物、ならびに(C)分散型硬化促進剤、さらに付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分となる、炭素数9〜15のジカルボン酸を、酸無水物1モル当たり、5×10−2〜5×10−1モルの範囲で添加してなる液状エポキシ樹脂組成物とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリップチップ実装における封止充填の際に利用される、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物と、それを用いた封止充填方法に関する。より具体的には、実装用基板の加熱温度均一化を図る予備加熱過程を設け、段階的な加熱して、封止充填剤の熱硬化を行う際、バンプ電極材料として、融点が200℃以上の鉛フリー錫合金ハンダ材料を用いているフリップチップ実装に利用されるバンプの熔融をも行い、電極とバンプとの間をハンダ付け固着・接合する工程において、鉛フリー錫合金ハンダ製のバンプをも覆う封止充填剤に好適な液状エポキシ樹脂組成物、特には、バンプを形成するハンダ材にスズ−銀系合金ハンダを使用した際にも、その低い溶融温度においても、十分なフラックス活性が達成できる封止充填剤として、より好適に利用される液状エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の軽量化、小型化ならびに薄型化を進めるに際し、プリント配線基板上に半導体チップ部品を実装する方法として、フリップチップ実装方式の採用が進められている。このフリップチップ実装方式では、チップ部品の実装面(裏面)にチップ部品用電極を形成し、これをプリント配線基板上に形成されている基板用電極の所定の領域(実装領域)に対向させて配置し、両電極間に所望の導通を達成するためにバンプ電極が用いられる。例えば、チップ部品の実装面(裏面)に形成されるチップ部品用電極に、予め球形状のハンダで作製されるバンプ電極を設け、このバンプ電極を基板用電極の所定の領域(実装領域)に接触させる。その配置において、ハンダを熔融させると、基板用電極と接触させた所望の位置にハンダ付け固着・接合がなされる。これによりバンプ電極を介して、チップ部品とプリント配線基板の両電極間に所望の導通が達成される。あるいは、逆にバンプ電極をプリント配線基板の電極上に設ける手法を用いることもある。
【0003】
このフリップチップ実装方式では、チップ部品とプリント配線基板の両電極間を接続するバンプ電極のみによって、チップ部品は固着されることになる。小型化や薄型化を目的とする実装方法であるため、このバンプ電極は、可能な限り小さくされる。チップ部品とプリント配線基板は、その熱膨張係数が異なっており、動作時の温度変化に伴い、相対的にプリント配線基板の熱膨張あるいは熱収縮が生じた際、バンプ電極には、その熱変位を吸収・緩和する遊び・撓みが存在しない。温度変化(熱サイクル)が繰り返されると、前記の熱変位に由来する応力歪みが反復された結果、バンプ電極と電極間の接合箇所(ハンダ付け箇所)における剥離を引き起こすこともある。
【0004】
この熱サイクル劣化を抑制するため、チップ部品とプリント配線基板との間隙に相互を接着・固定して、相対的な熱変位を低減する役割を有する樹脂による充填・封止が行われる。この封止充填剤は、アンダーフィルと呼ばれるが、その使用目的からして、チップ部品とプリント配線基板と間隙を密に充填し、ボイドと称される未充填の残り(空隙)を生じないように充填される。さらには、バンプ電極の周囲をも密に被覆するように充填・封止が行われる。
【0005】
従来は、バンプ電極と電極間の接合(ハンダ付け)を先に行い、その後、チップ部品とプリント配線基板との間隙に、液状エポキシ樹脂組成物を注入、染み込ませる手法が利用されていた。この手法では、高集積化に伴いチップ部品自体が大型化し、また、プリント配線基板の基板電極と結線すべき電極数(端子数)が多くなり、バンプ電極相互の間隔、チップ部品とプリント配線基板との間隙が更に狭まると、ボイドの発生頻度が増す懸念がある。また、液状エポキシ樹脂組成物の注入工程は、作業効率を更に上げる際の障害ともなっている。
【0006】
これらの課題を回避する手法として、予め、プリント配線基板上の所定領域に合わせて、液状エポキシ樹脂組成物の層をスクリーン印刷等の手段で形成しておき、プリント配線基板上にチップ部品を配置し、バンプ電極と電極間の接触を行う際、チップ部品の実装面(裏面)で液状エポキシ樹脂組成物の層を押し伸ばす手法が提案されている(特開平11−354555号公報など)。前記のチップ部品を圧接する工程で、バンプ電極と電極間の接触とともに、チップ部品とプリント配線基板の間に隙間なく液状エポキシ樹脂組成物の充填が行われる。次いで、バンプ電極と電極間の接合(ハンダ付け)を行うべく、リフロー炉内においてハンダ製のバンプを熔融するため加熱を行う。この加熱処理の際、充填されている液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化も行われ、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着が同時に達成される。予めアンダーフィル(封止充填剤)を再現性・作業性の高いスクリーン印刷等の手段で作製でき、また、加熱工程を一体化できるため、作業効率は大幅に向上する方法である。
【0007】
前記のバンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同一の工程で行う方法は、作業性の点では優れた方法であり、特に、高集積化に伴うチップ部品自体の大型化、電極数(端子数)の増加にも容易に対応できるという大きな利点を持っている。一方、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)の際、バンプ(球状ハンダ)の表面あるいは回路の電極面上に酸化皮膜が残っていると、バンプ(球状ハンダ)自体の熔融が均一とならない、あるいは、回路の電極面とハンダとの濡れが不良となるといった不具合が少なからず生ずる。このハンダ付け不良の問題は、フラックス処理を施すことで、一掃される。
【0008】
しかしながら、前記の加熱処理を1工程で行う方法では、バンプ(球状ハンダ)自体をも覆うように、アンダーフィルの充填がなされるため、前もってフラックス処理を施しておく必要があった。それでもなお、フラックス処理後に形成される酸化皮膜の影響は残り、処理後の時間経過とともに、その影響は増すものであった。そのため、予めフラックス処理を施しても、なお、ハンダとの濡れ不良に起因するハンダ付け不良、導通不良の発生が少なからず見出されている。
【0009】
加えて、昨今、前記のバンプ(球状ハンダ)の作製には、Pb−Sn共晶合金に代えて、鉛を含まない錫合金、所謂、鉛フリーハンダを利用するバンプ(球状ハンダ)の利用も検討されている。この鉛フリーハンダ製のバンプ(球状ハンダ)表面の酸化皮膜の除去を行って、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同時に実施する上では、この鉛フリーハンダの比較的に高い熔融温度においても、十分なフラックス活性が発揮され、また、そのリフロー温度を高くし、その高い温度条件において、適度な熱硬化が進行するアンダーフィル(封止充填剤)が必要となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記のアンダーフィル充填をチップ部品のプリント配線基板上へ配置・圧接と合わせて一工程内で行う方法においても、この工程の直前にフラックス処理を施すならば、上記する酸化皮膜の影響は概ね排除できるが、このような工程の時間的な自由度を制限する手段に代わり、アンダーフィル充填に利用する熱硬化型樹脂組成物中に、フラックス活性を有する成分を加え、酸化皮膜の影響を十分に排除し、工程の時間的な自由度を制限することのない新たな手段が望まれる。
【0011】
加えて、昨今利用される鉛を含まない錫合金ハンダ、所謂、鉛フリーハンダを利用したバンプ電極を採用する際には、従来のPb−Sn合金ハンダと比較して、鉛フリーハンダの融点が高い分、そのリフロー温度をより高く選択せざるを得ない。そのリフロー温度(熱硬化温度)条件においても、ハンダ表面の酸化皮膜が速やかに除去できる高いフラックス活性を有し、また、適度な速度で熱硬化が進行するアンダーフィル(封止充填剤)である必要がある。
【0012】
封止充填剤の樹脂主成分の熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤として酸無水物を用いると、この酸無水物自体、錫合金ハンダ表面の酸化皮膜、具体的には、より卑な金属成分である錫の表面酸化膜と高い温度では反応し、フラックス成分として機能することを、発明者らは先に見出し、その酸無水物のフラックス作用と硬化剤としての機能を共に利用する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の発明を、特願2000−72184号として特許出願した。
【0013】
かかる封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物では、熱硬化性エポキシ樹脂1当量に対して、その硬化剤として酸無水物を1当量よりも高い比率で含有させ、酸無水物のフラックス作用を発揮させている。酸無水物のフラックス作用、具体的には、錫の酸化物と酸無水物との反応速度は、温度の上昇とともに増すものの、鉛フリーハンダの比較的に高い熔融温度に適合する、高いリフロー温度(熱硬化温度)では、所望のフラックス活性を達成するには、エポキシ樹脂組成物中に含有させる酸無水物の含有比率を大幅に高めることが必要となっていた。
【0014】
なお、この錫の酸化物と酸無水物との反応により少量の酸無水物が消費され、若干の濃度低下は生じるものの、依然として、高い含有比率に留まることになる。幸いにも、ハンダ材表面に存在する酸化皮膜量が僅かであった場合には、酸無水物の消費量も僅かなものとなり、酸無水物の含有比率は、当初の高い含有比率のままとなる。
【0015】
一方、同時に進行する熱硬化性エポキシ樹脂の熱硬化反応は、硬化剤となる酸無水物の含有比率が高いと、酸無水物によるエポキシ環の開環反応の誘起がより高い頻度で開始することになる。その結果として、フラックス処理速度に比べて、相対的に熱硬化がより急速に進行すると、前記錫の酸化物と酸無水物との反応が終了しない間に、硬化反応によるエポキシ樹脂組成物の粘度上昇、流動性の低下が起こる。すなわち、目的とする、フラックス処理が十分に施されない間に、熱硬化性エポキシ樹脂の熱硬化が進行するため、場合によっては、導通不良を生じる事態に至ることもある。加えて、最終的な封止充填する硬化物の樹脂強度、接着強度は、熱硬化性エポキシ樹脂とその硬化剤である酸無水物との比率に依存し、熱硬化温度によって、より好適な比率が定まるが、酸無水物の含有比率がより高くなるにつれ、得られる硬化物の樹脂特性は、所望とする最適な特性と次第に離れたものとなる。一方、熱硬化反応が速やかに進行すると、残余している酸無水物の濃度は急速に低下するため、フラックス活性もそれに伴い低下し、目的とするフラックス活性の維持が困難となる場合も増してくる。
【0016】
実際には、熱硬化温度(リフロー温度)を比較的に高く選択する際には、熱硬化性エポキシ樹脂と酸無水物との開環重合反応を促進する作用を有する硬化促進剤の添加量を抑えて、硬化速度が過度に速くなることの回避を図るものの、熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤となる酸無水物の含有比率を当量比より高くするにつれ、未反応のまま残留する酸無水物の比率が増すことになる。その際、この残余する酸無水物の量が過度になると、封止充填剤としての機能、例えば、高湿・高温条件における耐久性の維持などの観点では、必ずしも好ましいものではない。
【0017】
従って、フラックス処理において、酸無水物を利用するものの、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物中に含有させる酸無水物の含有比率を不要に高くすることなく、所望のフラックス処理を達成でき、また、適正な硬化特性をも得られる液状エポキシ樹脂組成物の開発が、新たな開発の目標となってくる。より具体的には、鉛フリーハンダを利用したバンプ電極を採用することに伴い、熱硬化温度(リフロー温度)を比較的に高く選択する場合でも、熱硬化速度とフラックス処理速度の間において均衡を保つとともに、さらに、鉛フリーハンダの熔融がなされる温度に達した後も、必要とするフラックス活性を維持することが必要となる。その上、鉛フリーハンダを利用する場合、熱硬化温度(リフロー温度)を比較的に高く選択することに付随して、実装用プリント配線基板を加熱する際、基板内の温度ムラに起因する基板の反りを回避する目的で、鉛フリーハンダの熔融温度より若干低い温度まで一旦加熱して、一時保持する予備加熱過程を設けることで、基板内の温度均一化を図る。この予備加熱過程を設ける場合でも、予備加熱過程中における熱硬化を抑制し、全体工程を通して、熱硬化速度とフラックス処理速度の間において均衡を保つとともに、さらに、鉛フリーハンダの熔融がなされる温度に達した後も、必要とするフラックス活性を維持することが必要となる。
【0018】
加えて、封止充填を施して得られるエポキシ樹脂硬化物は、チップ部品とプリント配線基板との隙間を埋め、例えば、周囲温度が変化を繰り返した際にも、その封止特性を維持できることが必要であり、より具体的には、冷熱サイクル試験により、加速的に温度変化による封止特性の劣化を図った際にも、樹脂自体に熱的歪応力によるクラックの発生が抑制され、剥離など封止特性上の不良の発生も抑制できることも望まれている。
【0019】
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、熱硬化性エポキシ樹脂とその硬化剤として酸無水物を利用する液状エポキシ樹脂組成物において、前記酸無水物の有するフラックス活性に加えて、フラックス活性増強成分を付加的成分として添加することで、酸無水物の含有比率を過度に高くしなくとも、所望のフラックス処理を達成でき、また、適正な硬化特性をも得られる新規な組成の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、ならびに、かかる封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を利用する封止充填方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、例えば、リフロー温度・熱硬化温度を、所謂鉛フリー錫合金ハンダの熔融温度に適合する、相対的に高い温度に選択して、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同一の加熱工程で行った際、熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤となる酸無水物の含有比率は、良好な硬化特性により適する範囲に留めつつ、一方、ハンダとの濡れ不良に起因するハンダ付け不良、導通不良の発生を有効に防止できる、優れたフラックス活性を発揮するため、フラックス活性増強成分を付加的成分として添加してなる新規な組成の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明は、最終的な目的として、ハンダ材として、鉛を含まない錫合金ハンダを利用する際、その鉛フリー錫合金ハンダの種類、そのリフロー温度(熱硬化温度)に依存することなく、前記するフラックス処理効果をも有する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いることで、ハンダとの濡れ不良に起因するハンダ付け不良、導通不良の発生を防止できるフリップチップ実装における封止充填方法、例えば、ハンダ材として、Sn−Ag系合金ハンダを利用する際にも、有効な封止充填方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、その熱硬化を行う温度を、鉛フリー錫合金ハンダが示す200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の熔融温度に応じて、比較的に高い温度に選択した際にも、適度な熱硬化特性を維持するとともに、その熱硬化処理を進める間に、目的とするフラックス処理効果をも発揮できる封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とするためには、特に、熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤となる酸無水物の含有比率を当量比あるいは、当量比より若干低い比率に留めた際にも、酸無水物自体が主に関与するフラックス活性を、所望のフラックス活性まで増強を図るフラックス活性増強成分として、いかなる成分を付加的成分として含む組成物とすべきか、鋭意検討・研究を進めた。
【0022】
前記のフラックス作用を必要としないならば、例えば、熱硬化温度を250℃程度とする際にも、通常、アンダーフィル(封止充填剤)の用途で推奨される液状エポキシ樹脂と硬化剤の酸無水物との混合比率は、液状エポキシ樹脂の1当量に対して、例えば、酸無水物を1当量未満の若干等量より少ない量、好ましくは0.8当量程度に選択される。その点を考慮すると、フラックス作用をも有する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、酸無水物自体は、フラックス活性に主に関与させる上では、その過程で消費される酸無水物に相当する量を余剰に含む必要はあるものの、液状エポキシ樹脂と硬化剤の混合比率は、液状エポキシ樹脂の1当量に対して、前記の0.8当量よりは有意に高いものの、1当量を極僅かに超える、できれば、1当量以下、0.9当量以上の範囲に選択し、この比較的に低い含有比率において、所望のフラックス活性を達成できるフラックス活性増強成分を選択することが望ましいとの結論を得た。
【0023】
また、付加的に添加するフラックス活性増強成分は、液状エポキシ樹脂組成物中に添加した際、その熱硬化特性、ならびに得られる硬化物の特性に対しては、本質的に影響を持たない成分であることが望ましい。少なくとも、酸無水物自体が主に関与するフラックス処理の活性増強を図るものの、エポキシ樹脂の硬化剤である酸無水物との反応を過度に促進する、あるいは、逆に阻害することがないものであることが望ましい。更には、フラックス処理、熱硬化処理が終了した時点で、このフラックス活性増強成分が残留していたとしても、得られるエポキシ樹脂硬化物の特性、例えば、絶縁特性などに実質的な影響を有さないものである必要もある。
【0024】
これらの制約条件の下、液状エポキシ樹脂組成物中に含有した際、その熱硬化性、接着性、硬化後の樹脂強度を所望の範囲に維持でき、しかも、バンプ電極と電極などの表面酸化皮膜に対して、一般のフラックス処理と同等の効果を発揮でき、しかも添加濃度を少量としても、酸無水物の示すフラックス活性の増強が可能な成分を探索した。その結果、フラックス活性増強には、プロトン供与能を有する成分が適しており、なお、液状エポキシ樹脂組成物全体に均一に分布させることができる、つまり、液状エポキシ樹脂への混合性(溶解性・分散性)に優れたものである、ジカルボン酸が、これらの要件を満たすものの一つであることを見出した。
【0025】
すなわち、ジカルボン酸、例えば、鎖状のジカルボン酸は、それを構成する骨格の炭化水素鎖部の親油性に因り、液状エポキシ樹脂との相溶性を有するので、室温付近でも、液状エポキシ樹脂への十分な混合性(溶解性・分散性)を示し、また、フラックス処理がなされる温度に達した際には、十分なプロトン供与能を発揮する。従って、ジカルボン酸は、ハンダ材表面の錫の酸化物に対して、その酸素にプロトンを一旦供与して、酸無水物との反応を促進するが、酸無水物に由来するジカルボン酸型の配位子からなる錯体形成、あるいは、酸無水物に由来するジカルボン酸の金属塩へと変換がなされた時点で、再び、プロトンが復して、元のジカルボン酸となる。この触媒的なフラックス活性増強作用のため、通常のフラックス剤のように、それ自体が消費されるものでないため、添加量は少量とできる。
【0026】
一方、フラックス処理が終了すると、その間に徐々に進行している熱硬化反応により生成するエポキシ樹脂と酸無水物の重合物における終端、具体的には、酸無水物に由来するカルボキシ・アニオン種、ならびに、エポキシ環の開環で生成しているカルボカチオン種に、ジカルボン酸に由来するプロトンとカルボキシ・アニオン種とがそれぞれ結合し、その終端に利用される。なお、ジカルボン酸からのプロトン遊離は、平衡反応であり、プロトン遊離をせずジカルボン酸の形状のものが相当割合で存在するものの、硬化物中に均一に分布しており、何らかの不具合の要因ともなる、ジカルボン酸の凝集体を形成することも少ない。勿論、ジカルボン酸自体は、エポキシ樹脂の熱硬化物と比較すると、水に対する溶解度は高いものの、最終的には熱硬化重合物の終端にその大部分が消費され、若干残留するジカルボン酸も、硬化物中に均一に分散される結果、残留するカルボキシ基は、イオン電導性を示すものとして機能せず、硬化物自体の絶縁性に本質的な影響をも与えない。本発明者らは、上記の一連の知見に基づき、液状エポキシ樹脂と硬化剤の酸無水物に加えて、ジカルボン酸を少量添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製し、比較的に高い熱硬化温度で封止充填を実施し、目的とするフラックス処理と同等の効果が有効に達成され、同時に、熱硬化反応自体には実質的な影響がなく、また、得られる熱硬化物の樹脂強度なども、遜色のないものとなることを確認した。本発明者らは、特に、予備加熱過程を設けた上、上記のフラックス処理と、エポキシ樹脂の熱硬化処理を進める場合には、前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を、硬化促進剤により促進することで進行する形態とすることが望ましく、その際、かかる硬化促進剤を粉体状で均一分散させる形態とすることにより、予備加熱過程中では、不要な熱硬化の促進を回避できることを見出し、更なる向上した効果を有する本発明を完成するに至った。
【0027】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤の酸無水物、ならびに、この酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤を必須成分とする液状エポキシ樹脂組成物に、前記酸無水物の有するフラックス活性を増強するため、プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を少量(触媒量)、付加的成分として添加するものであり、
すなわち、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、バンプ電極材料として、融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料を用いているフリップチップ実装の封止充填工程に用いられる液状エポキシ樹脂組成物であって、
前記液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物、ならびに、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤、さらに、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を含んでなり、
前記(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合され、
前記(D)フラックス活性増強成分が、炭素数9〜15のジカルボン酸であり、
前記(B)硬化剤の酸無水物1モル当たり、前記(D)フラックス活性増強成分のジカルボン酸の含有量が、5×10−2〜5×10−1モルの範囲に選択されていることを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物である。その際、(B)硬化剤の酸無水物に対する前記(C)硬化促進剤として、
融点が100℃以上の範囲に選択されるイミダゾー類を、粉体状で均一分散させる形態で含むことが好ましい。さらに、その他の副次的な添加成分として、応力緩和剤、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤、チキソ剤から選択する1種以上の添加成分をも含むことを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とすることもできる。
【0028】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂は、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂の群から選択される1種以上の熱硬化性エポキシ樹脂であることが好ましい。また、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂の1当量に対して、(B)硬化剤の酸無水物を0.9〜1.1当量含むことが好ましい。さらに、前記(C)の分散型硬化促進剤として、1位の窒素原子上に置換を有するイミダゾール環に対する酸付加塩の形成に伴うイミダゾリウムの含有する酸付加塩型イミダゾール類を選択することも望ましい。一方、前記ジカルボン酸は、ω,ω’−直鎖炭化水素ジカルボン酸であり、その炭素数は、C10〜C13の範囲に選択されていることが好ましい。
【0029】
加えて、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、(B)硬化剤の酸無水物として、飽和な環状炭化水素ジカルボン酸由来の分子内酸無水物を用いることが、得られるエポキシ樹脂硬化物の示す柔軟性、あるいは、靭性の強化の目的では好ましい。また、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂として、
熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含むことを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とすることが、得られるエポキシ樹脂硬化物の示す柔軟性、あるいは、靭性の強化の目的では好ましい。
【0030】
なお、前記(C)硬化促進剤として、融点が100℃以上の範囲に選択されるイミダゾー類を利用する際に、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂に由来する、一つのエポキシ基当たり、前記(C)硬化促進剤のイミダゾール類の添加比率を、0.5×10−3〜10×10−3分子の範囲に選択することがより好ましい。
【0031】
加えて、本発明は、上記する構成を有する本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の有効な利用法として、封止充填の方法の発明をも提供し、
すなわち、本発明の封止充填の方法は、フリップチップ実装における封止充填の方法であって、
(1)基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品とを融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を用いて両電極間の相互導通をとるべく、前記プリント配線基板上の所定の領域に前記チップ部品を配置後、前記バンプ電極と電極間の接触を図る工程、
(2)前記バンプ電極と電極間の接触を図る工程後、またはその工程と併せて、前記プリント配線基板とその上の所定の領域上に配置される前記チップ部品の間隙に、前記接触を図ったバンプ電極と電極とを被覆するように、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を満たす充填工程、
(3)次いで加熱して、前記所定の領域の間隙に充填した前記液状エポキシ樹脂組成物における、前記エポキシ樹脂の熱硬化を進めるとともに、前記液状エポキシ樹脂組成物が被覆する前記ハンダ製のバンプを熔融させる工程、
所定時間の加熱後、冷却して、一旦熔融したハンダの再固化を行い、バンプ電極と電極とをハンダ付け固着・接合させ、同時に熱硬化したエポキシ樹脂により封止充填を完了する工程、
上記(1)〜(3)の一連の工程を有する、
封止充填剤として、上記いずれか形態を有する本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする封止充填の方法である。特に、本発明の封止充填の方法は、前記のハンダ材料は、Sn−Ag系合金であることを特徴とする封止充填の方法として実施すると好ましいものとなる。
【0032】
その際、本発明の封止充填の方法において、前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、
引き続き、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設け、
前記予備加熱過程の温度を、110℃以上、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点未満の範囲に選択し、
前記予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上に選択することができ、前記プリント配線基板における加熱ムラを低減する上でより望ましい。
【0033】
さらには、本発明は、かかる本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、ならびに、それを利用する封止充填の方法の発明が最終目的とする、封止充填された電子部品の発明をも当然に提供し、
すなわち、本発明にかかる電子部品は、プリント配線基板上に、チップ部品を融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用して、フリップチップ実装し、その間に封止充填がなされてなる実装組み立て済み電子部品であって、
前記プリント配線基板は、基板用電極を有するプリント配線基板であり、前記チップ部品は、チップ部品用電極を有するチップ部品であり、そのフリップチップ実装において、両電極間の相互導通は、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を用いてなされており、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用するフリップチップ実装と封止充填とが、前記本発明にかかる封止充填の方法でなされていることを特徴とする電子部品である。その際、通常、本発明にかかる電子部品は、プリント配線基板上にフリップチップ実装、封止充填される前記チップ部品の少なくとも一つは、半導体素子チップであることを特徴とする電子部品とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、バンプ電極の材料として、鉛を含まない錫合金ハンダ、所謂、鉛フリーハンダ、例えば、Sn−Ag系合金ハンダなどを利用している半導体素子の組み立てを行う際、その熱硬化を行う温度を、鉛フリー錫合金ハンダの熔融温度よりも高い温度に選択し、上述するバンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同一の工程で行う方法において、その本来の効果を発揮するものである。
【0035】
熱硬化性エポキシ樹脂に対し、その熱硬化を誘起する手段として、特に、酸無水物を硬化剤として用いることで、この酸無水物の金属酸化物に対する反応を主なフラックス活性としても利用している。加えて、前記酸無水物のフラックス活性の増強を図る目的で、付加的成分として、プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を添加して、錫合金ハンダ表面の酸化皮膜、具体的には、錫の酸化物に対する酸無水物の反応を触媒的な促進を図っている。具体的には、プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂中に溶解可能なジカルボン酸を利用している。熱硬化(リフロー)のため加熱する際、熱的に前記ジカルボン酸のカルボキシ基から、錫の酸化物の酸素原子にプロトンを供与することで、酸無水物が錫の酸化物と反応して、酸無水物に由来するジカルボン酸型の配位子からなる錯体形成、あるいは、酸無水物に由来するジカルボン酸の金属塩へと変換する過程を促進している。なお、前記の反応後、一旦錫の酸化物の酸素原子に供与されていたプロトンは、前記の一連の反応を終えると、再び、元のカルボキシ基に復し、酸解離していないジカルボン酸となることで、酸触媒として機能するものである。加えて、前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応は、添加されている硬化促進剤によって、その反応を促進することで進行する構成とすることで、特に、予備加熱過程を設けた上、上記の酸無水物によるフラックス処理と、エポキシ樹脂の熱硬化処理を進める場合にも、予備加熱過程中における、不要な熱硬化の進行を抑制するものである。さらには、液状エポキシ樹脂組成物中において、硬化促進剤を粉体状で均一分散させる形態とすることにより、予備加熱過程の間に、液状エポキシ樹脂組成物中に硬化促進剤が溶解して、均一に分布させることで、予備加熱過程を終え、ハンダ熔融加熱過程に達した時点では、所望の酸無水物によるエポキシ環の開環反応が、エポキシ樹脂組成物全体で均一に進行することを可能としている。
【0036】
以下に、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、その調製方法、ならびに、この封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いた封止充填の手順について、より詳しく説明する。
【0037】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分として、エポキシ樹脂硬化物の骨格構成成分となる、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物を含み、この両者を均一に混合した液状エポキシ樹脂組成物中に、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤を分散状態で配合し、さらに、付加的成分として、(C)フラックス活性増強成分に利用するジカルボン酸として、炭素数9〜15のジカルボン酸を選択し、その含有量を、酸無水物1モル当たり、5×10−2〜5×10−1モルの範囲にしたものである。
【0038】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、熱硬化物を構成する必須成分の(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂としては、封止充填剤に利用可能なエポキシ樹脂である限り、その種類に制限はない。硬化時の樹脂強度、接着性などから、例えば、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂などが、封止充填剤においては汎用されている。本発明においても、前記のビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂の群から選択するとより好ましい。その際、単一の樹脂化合物を利用することも、二種以上の樹脂化合物を混合して利用することもできる。より具体的には、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテルとして、エピコート828(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量190)など、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテルとして、エピコート154(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量178)など、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステルとして、エピコート871(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量430)、エポミックR540(商品名;三井化学社製:エポキシ当量195)など、脂環式エポキシ樹脂として、セロキサイド2021(商品名;ダイセル化学工業社製:エポキシ当量135)などが使用される。
【0039】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、得られる熱硬化物の可撓性、柔軟性を増進するためには、用いられる必須成分の(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂として、熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含む組成とすることが特に有効である。なかでも、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理を施したエポキシ樹脂を部分的に利用することが望ましい。微粒子状で分散されている少量の熱可塑性樹脂は、比較的に高温で硬化を行う本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、その硬化の際にも、均一な分散状態を維持でき、得られる硬化物全体に、かかる熱可塑性樹脂微粒子に由来する強靭性が付与されたものとできる。同じく、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施したエポキシ樹脂を部分的に利用すると、得られる硬化物全体が、均一にかかる熱可塑性樹脂分子に由来する強靭性が付与されたものとできる。
【0040】
微粒子状の熱可塑性樹脂の分散を行ったエポキシ樹脂としては、例えば、熱硬化を行う際、かかる微粒子状の熱可塑性樹脂の形状を保持するように、コアシェル型の微粒子とし、コア部にゴム質の熱可塑性樹脂を、それを覆うシェル部にガラス転移点Tgがより高い熱可塑性樹脂を用いたものが、かかる目的に好適である。一例として、コアシェル型の平均粒径0.5μmゴム成分微粒子を分散したエポキシ樹脂であるYR−628(商品名;東都化成社製、 エポキシ当量: 225)や、EPR−21(商品名;旭電化工業社製、 エポキシ当量: 210)を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施したエポキシ樹脂としては、ニトリルゴム分子を付加修飾して変性を施したものなどが挙げられる。一例として、CTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 230)、YR−450(商品名;東都化成社製、 エポキシ当量: 450)、NBR変性エポキシ樹脂であるEPR−4026(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量:280)、EPR−1309(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 300)、ならびに、樹脂骨格に柔軟性を示すアルキレン鎖を含むエポキシ樹脂であるEPR−4000S(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 260)、エピコート871(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量430)、エピコート872(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量650)を挙げることができる。これら微粒子状の熱可塑性樹脂の分散や熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施した液状エポキシ樹脂は、一般に液粘性が増すため、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において必要とする、液流動性を維持する目的で、低粘度の液状エポキシ樹脂成分と混和し、全体として目的とする液粘度の範囲に調整することが好ましい。その際、混和比率は、室温付近において、充填すべき部位に均一な塗布、充填が可能となる樹脂組成物全体としての粘度範囲に応じて、適宜選択することができる。なお、利用される低粘度の液状エポキシ樹脂成分の一例として、ビスフェノールF型の低粘度の液状エポキシ樹脂である、EXA−835LV(商品名;大日本インキ化学工業社製、 エポキシ当量: 165)などを挙げることができる。
【0041】
かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を部分的に用いることで、得られる熱硬化物全体として、熱可塑性樹脂に由来する強靭性、柔軟性、可撓性の向上効果が得られ、また、熱硬化性エポキシ樹脂本来の接着性の利点も保持するものとなる。特に、氷点以下の温度へと冷却した際、冷却温度とともに、急速に脆さを増す熱硬化性エポキシ樹脂の難点は、付加されている熱可塑性樹脂成分に起因する柔軟性、靭性によって、大幅に改善される。結果として、得られる熱硬化物は、靭性を増し、特に、低温脆性が改善された、接着性、可撓性に富み、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下がより緩和されたものとできる。
【0042】
例えば、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散を行ったエポキシ樹脂を利用する際には、微粒子状の熱可塑性樹脂の含有比率が増すにつれ、低温脆性の改善は図られるものの、含有比率が過度に高くなると、エポキシ樹脂硬化物自体の優れた接着性、耐湿性、耐熱性に影響を及ぼすことをも考慮すると、液状のエポキシ樹脂組成物全体、100質量部当たり、それに分散されて含まれる微粒子状の熱可塑性樹脂は、微粒子の粒子径にも依存するが、多くとも40質量部を超えない範囲とすることが望ましい。エポキシ樹脂硬化物自体の優れた特性を維持しつつ、有意な低温脆性の改善を図る上では、液状のエポキシ樹脂組成物全体、100質量部当たり、それに分散されて含まれる微粒子状の熱可塑性樹脂の総量を、微粒子の粒子径にも依存するが、好ましくは2〜30質量部の範囲、より好ましくは4〜20質量部の範囲に選択することが望ましい。なお、前記の含有比率において、目標とする低温脆性の改善が達成される限り、微粒子状の熱可塑性樹脂の総量を可能な限り、低く抑えることがより望ましい。また、熱可塑性樹脂分子の付加修飾など、付加変性を施したエポキシ樹脂を利用する際にも、硬化物中に占める、熱可塑性樹脂分子に相当する部分の比率、例えば、変性により付加されたニトリルゴム分子に由来する部分の総和は、前記の含有比率に相当するものとすることが望ましい。例えば、付加変性を施したエポキシ樹脂自体を調製する際に用いる原料に基づき、熱可塑性樹脂分子に相当する部分の比率を合算して、かかる含有比率とすることもできる。
【0043】
(B)の硬化剤として利用できる酸無水物としては、熱硬化性エポキシ樹脂の硬化を引き起こすジカルボン酸の酸無水物が一般に利用できる。この酸無水物は、エポキシ樹脂と重付加型の反応を起こし、樹脂硬化を達成する。例えば、脂肪族酸無水物、例えば、ポリアゼライン酸無水物(PAPA)、ドデセニル無水コハク酸(DDSA)など、脂環族酸無水物、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、無水メチルナジック酸(NMT)など、芳香族酸無水物、例えば、無水トリメット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)など、ハロゲン系酸無水物、例えば、無水ヘット酸(HET)、テトラブロモ無水フタル酸(TBPA)などを、重付加型の酸無水物硬化剤の一例として挙げることができる。
【0044】
なかでも、用いられる酸無水物自体では、−CO−O−CO−を含む環構造が5員環を構成するとより好ましい。熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として利用されている酸無水物のうち、前記の構造を有するものとして、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(メタノテトラヒドロフタル酸)の酸無水物あるいはその炭化水素環上に置換を有する誘導体、無水フタル酸または無水フタル酸のベンゼン環上に置換を有する誘導体、無水コハク酸または無水コハク酸の炭化水素鎖上に置換を有する誘導体からなる酸無水物などが挙げられる。なお、本発明において好適に利用される、無水テトラヒドロフタル酸や無水ヘキサヒドロフタル酸の誘導体には、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(商品名B−650;大日本インキ化学工業社製)など、無水コハク酸の誘導体には、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
【0045】
例えば、前記のビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂のいずれかをエポキシ樹脂に選択する際、その硬化剤として機能する酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(メタノテトラヒドロフタル酸)の酸無水物あるいはその炭化水素環上に置換を有する誘導体、無水フタル酸または無水フタル酸のベンゼン環上に置換を有する誘導体、無水コハク酸または無水コハク酸の炭化水素鎖上に置換を有する誘導体のいずれかを選択すると一層好ましい組み合わせとなる。
【0046】
加えて、下記する一般式(I):
【0047】
【化1】
(式中、R2は、一価の鎖式炭化水素基であり、R3は、一価の鎖式炭化水素基であり、R6は、水素原子または鎖式炭化水素基である)で示される環上に置換を有するテトラヒドロフタル酸型の二カルボン酸の分子内酸無水物、あるいは、一般式(II):
【0048】
【化2】
(式中、R2は、一価の鎖式炭化水素基であり、R3は、一価の鎖式炭化水素基である)で示される環上に置換と架橋鎖を有するテトラヒドロフタル酸型二カルボン酸の分子内酸無水物など、相対的な嵩高い6員環を有するものも、好適な酸無水物の一例として挙げられる。
【0049】
加えて、得られるエポキシ樹脂硬化物において、その可撓性を増進するため、用いられる酸無水物自体の炭素骨格内に不飽和炭素結合を含まないものを用いることができる。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として利用されている酸無水物のうち、−CO−O−CO−を含む環構造が5員環を構成し、しかも、この5員環は、環状の炭化水素骨格と縮合する形状を有し、その際、環状の炭化水素骨格は、その環内に不飽和炭素結合を含まないものが好適である。より具体的には、飽和な環状の炭化水素二カルボン酸の分子内酸無水物であり、−CO−O−CO−を含む環構造が5員環を構成するものが好ましい。一例として、先に述べた脂環族酸無水物、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、無水メチルナジック酸(NMT)などに含まれる、環状の炭化水素骨格中の不飽和炭素結合に水素添加を施した、飽和な脂環族酸無水物が、かかる目的ではより好ましく、水素添加ナジック酸(HNA)の酸無水物を代表例として挙げることができる。
【0050】
下記する飽和な環状炭素骨格を有する水素添加ナジック酸(HNA)の酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸由来の酸無水物:
【0051】
【化3】
と同様に、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナン)骨格を含む、飽和な環状炭素骨格を有する酸無水物である、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸由来の酸無水物:
【0052】
【化4】
あるいは、分子内に鎖状のシロキサン構造(−(H2SiO)n−SiH2−)を含んでいる、末端にビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸由来の酸無水物構造が置換したポリシロキサン:
【0053】
【化5】
なども、利用可能な飽和な脂環族酸無水物に含まれる。なお、かかるビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸由来の酸無水物のように、ジカルボン酸のカルボキシ基が存在する炭素原子に対して、その隣接する炭素原子との間で炭素−炭素二重結合を構成する上で、立体障害となる炭素骨格を有するものでは、より高温において熱硬化反応を行う際、かかるジカルボン酸からの熱的な脱炭酸に伴う二酸化炭素の生成もなく、その点にも、利点を有している。
【0054】
前記酸無水物はその大半は硬化剤として消費されるが、フラックス成分として、若干量が消費されるので、その消費量を考慮し、液状エポキシ樹脂の1当量に対して、例えば、酸無水物を0.8当量以上、好ましくは、0.9当量以上、多くとも、若干等量を超える量、具体的には、1.1当量を超えない範囲、0.9〜1.1当量の範囲に選択することがより好ましい。
【0055】
なお、酸化皮膜の形成が多い劣悪な条件では、より高いフラックス活性が必要となり、その点を考慮して、前記(B)の硬化剤の酸無水物の添加率範囲上限に近い値を選択すると好ましい。現実的には、過度の自然酸化が生じないように当業者が通常の注意を払う限り、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂の1当量に対して、酸無水物を0.85〜0.95当量含む組成範囲に選択しても、必要とされるフラックス活性に伴う消費量を賄い、更に残る酸無水物の量は、熱硬化に適当な0.8当量〜0.9当量の範囲に概ね収まる。なお、バンプ電極間の間隔が狭くなることも考えあわせると、表面酸化皮膜の除去で消費される酸無水物の割合が相対的に増す傾向にある。その際には、安全を見て、当初の含有比率をやや高め、例えば、1.1当量までに選択することで、フラックス作用を発揮して消費される量を除いても、熱硬化に適当な0.8当量〜1.0当量の範囲により確実に収めることができる。
【0056】
前記する種々の酸無水物から、上記(A)の各種液状の熱硬化性エポキシ樹脂に応じて選択される酸無水物を(B)の硬化剤として用い、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂と共に開環重合を起こさせ、熱硬化を起こさせる。その際、熱硬化温度が比較的に低い場合は、エポキシ環の開環を適度に促進する目的で、(C)の硬化促進剤を少量添加する。すなわち、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物では、(B)の硬化剤として酸無水物は、適正な重合の伸長に適する比率であるものの、その熱硬化の開始に、(C)の硬化促進剤の作用を利用し、その添加量を硬化温度に応じて選択することで、全体的な熱硬化速度を所望の範囲に調整することが容易になる。なお、(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合する、具体的には、(C)の硬化促進剤は、室温では、粉末状とした上で、液状のエポキシ樹脂組成物全体中に、粉末状のまま、均一に分散する形態で配合する。
【0057】
この(C)の硬化促進剤は、エポキシ基の開環反応を促進し、酸無水物自体と反応を起こさないものである限り、特に制限はなく、酸無水物とアミドの形成を起こさないアミン化合物、ルイス酸、ならびにイミダゾール類が利用できる。前記の要件を満たすアミン化合物としては、具体的には、第三級アミン、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)など、ルイス酸としては、例えば、BF3・モノエチルアミン、BF3・ピペラジンなどを挙げられる。また、イミダゾール類としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EM124)、2−ヘプタデシルイミダゾール(HD12)など、これらを一例として挙げることができる。イミダゾール類の中でも、粉末状のまま、均一に分散する形態に適するものは、その融点が100℃以上であり、少なくとも、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点より有意に低いものである。より具体的には、予備加熱工程を設ける場合に適用する上では、その融点が前記予備加熱工程の温度と同程度、例えば、融点が140℃以上、200℃以下の範囲のイミダゾー類を選択することがより好ましい。例えば、イミダゾール類のうち、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとるものは、融点の上昇がなされ、前記の目的に適合している。少なくとも融点が100℃以上、好ましくは、140℃以上、200℃以下の範囲のイミダゾー類として、かかるイミダゾリウム構造をとる酸付加塩である、1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテイト(トリメリット酸との付加塩型イミダゾール、 融点 149℃、 分子量 485.7)、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテイト(融点 178℃、 分子量 407.4)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール・トリメリット酸塩(融点 176℃、 分子量 444.4)、さらには、2−フェニル−4−メチル−5−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(融点 192℃、 分子量 188.3)などを挙げることができる。例えば、イミダゾリウム構造をとる酸付加塩を用いると、温度上昇とともに、液状のエポキシ樹脂組成物中に徐々に溶解が進むが、粉末状のまま分散しているため、その融点より低い温度では、溶解速度は制限されているものの、融点を超える温度に達すると、急速に溶解均一化が進行する。さらに、その溶解状態に至った時点で、酸付加塩を構成している酸を遊離し、イミダゾール塩基となり、硬化促進剤としての機能が発揮される。すなわち、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点よりも高く選択される熱硬化温度に達した際には、硬化促進剤としての機能が十分に発揮され、
これら硬化促進剤の内でも、イミダゾール類は、付加的成分として添加されているジカルボン酸と含有される窒素原子間での複合体(付加塩)を形成する懸念が少なく、本発明の目的により適するものである。特には、融点が140℃以上、200℃以下の範囲のイミダゾー類を選択し、粉末状のまま、均一に分散する形態とすることがより好ましい。また、分散型硬化促進剤として配合する際、その分散粒子形態の平均粒子径を0.5〜10μmの範囲、好ましくは、1〜5μmの範囲に選択することが望ましい。
【0058】
硬化促進剤として、前記するアミン化合物、ルイス酸、ならびにイミダゾール類などを用いる際には、これら求核性化合物のエポキシ環の開環促進作用により、反応が誘起・促進された、エポキシ樹脂と酸無水物との重付加反応により、樹脂鎖の延長がなされる。従って、熱硬化性エポキシ樹脂の1分子当たり、0.001〜0.02分子の硬化促進剤を混合することが好ましい。具体的には、硬化促進剤として、例えば、エポキシ当量190のエポキシ樹脂の100g当たり、イミダゾール類では0.5〜10mmol(ミリモル)の範囲に選択するとよい。硬化促進剤個々の分子量にもよるが、例えば、液状エポキシ樹脂の100質量部当たり、0.1〜2質量部の範囲で添加することもできる。なお、硬化処理温度を高くするに伴い、硬化促進剤の添加比率を下げても、硬化剤の酸無水物との反応は進行するので、この熱硬化反応と平行して進行されるフラックス処理の反応と、その反応速度の均衡が図られるように、硬化処理温度を高く選択する際には、硬化促進剤の添加比率を相対的に下げ、液状エポキシ樹脂の100質量部当たり、0.1〜1.2質量部の範囲の範囲とすることがより望ましい。あるいは、硬化処理温度を高く設定する場合、硬化促進剤として、融点が100℃以上、好ましくは、140℃以上200℃以下の範囲に選択されるイミダゾー類を選択するとともに、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂に由来する、一つのエポキシ基当たり、硬化促進剤として、該イミダゾール類の添加比率を、0.5×10−3〜10×10−3分子の範囲、さらに好ましくは1.0×10−3〜6×10−3分子の範囲に選択することがより好ましい。
【0059】
仮に、融点が200℃を超えるイミダゾー類であっても、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に達した時点で、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に溶解可能であれば、同様に好適に分散型硬化促進剤として利用できる。
【0060】
以上に説明した、熱硬化反応に関与する主要成分を均一に混合した液状エポキシ樹脂組成物中に、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分としての機能を有する、ジカルボン酸を少量添加する。
【0061】
前記ジカルボン酸は、その融点は、液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度より低く、常温では固体であり、その沸点は、前記液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度よりも高いことが好ましい。加えて、液状エポキシ樹脂組成物中の主成分であるエポキシ樹脂と均一に混和できる、相溶性に富むジカルボン酸が好ましい。
【0062】
すなわち、ジカルボン酸は、酸無水物と同様に、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に溶解・混和した状態で使用されるが、熱硬化の進行とともに、溶媒としても機能している液状エポキシ樹脂自体、重合を起こし、溶媒として機能する液状エポキシ樹脂量が減少していく際にも、ジカルボン酸が液状エポキシ樹脂組成物中に均一な溶解状態を維持することが好ましい。
【0063】
従って、用いるジカルボン酸は、その沸点は、液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度よりも有意に高いことがより好ましい。熱硬化とともに、フラックス処理も進行するが、仮に、熱硬化温度よりも、用いるジカルボン酸の沸点が低いと、液状エポキシ樹脂組成物中に溶解しているので、沸点上昇が生じて、実効的に気泡を生じて気化するには至らないものの、蒸散が進み、残留濃度が減少すると、目標とするフラックス活性増強作用を達成できない事態も生じる。用いるジカルボン酸の沸点が、液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度よりも有意に高いならば、前記の蒸散に伴うフラックス活性増強作用の低下は、問題とならないものとなる。また、熱硬化が完了した時点で、重合反応の終端において消費されず、なお、残留しているジカルボン酸は、その融点が熱硬化温度よりも低いと、硬化物の重合体分子間に浸漬し、均一に分散した状態がより確実に達成できる。勿論、熱硬化の際、気化したジカルボン酸が気泡を形成して、ボイドの発生させる要因ともならない。
【0064】
加えて、ジカルボン酸は、その分子形状によっては、加熱する間に、自らの分子内で、二つのカルボキシ基間で脱水縮合が生じ、酸無水物へと変換されることもある。具体的には、生成する環状無水物が、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸のように、5員環を形成するもの、あるいは、グルタル酸無水物のように、6員環を形成するものは、加熱温度が増すに従って、脱水縮合による酸無水物へと変換が進行する。その際、フラックス活性増強作用を有するジカルボン酸の含有比率は結果として減少する、すなわち、フラックス活性増強作用の低下が引き起こされる。生成する酸無水物自体は、エポキシ樹脂に対する硬化剤として機能するものが多く、問題となることはないものの、当初添加するジカルボン酸量を予め増すことが必要となり、決して好ましいものではない。加えて、この5員環、あるいは、6員環の環状酸無水物を生成するに付随して、副生物の水分子が気化し、気泡を形成すると、ボイド発生の要因となり、封止充填剤の機能上好ましものではない。
【0065】
それとは別に、ジカルボン酸のうち、水に対する溶解性に富む、フマル酸(trans−ブタン二酸)、シュウ酸(エタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)などは、前記環状酸無水物を生成する懸念はないものの、封止充填剤の耐水性、あるいは、高湿環境における保護特性の観点では、硬化物表面に存在した際、水に溶解して、酸として機能する懸念があり、その利用範囲は制限がある。
【0066】
対象とするハンダ材料は、その融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリーハンダであるため、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化処理の温度は、鉛フリーハンダの融解温度よりは有意に、例えば10℃程度以上は高いものの、通常、高くとも260℃を超えない範囲に選択し、フラックス処理を併せて実施する。従って、かかる熱硬化処理の温度を、230℃〜260℃の範囲に選択する際にも、以上の種々の条件を全て満たし、制約なく、好適に利用可能なジカルボン酸は、ジカルボン酸の融点は、例えば、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%のSn−Ag系ハンダの融解温度(217℃)よりも有意に低く、沸点は、かかるSn−Ag系ハンダの融解温度よりも十分に高く、また、水に対する溶解性が乏しいもので、加えて、含まれる二つのカルボキシ基の間に、少なくとも、炭素数で4以上の炭素鎖長に相当する隔たりがある構造を有するジカルボン酸である。
【0067】
例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸であれば、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖(HOOC−(C)n−COOH)を母体鎖とする際、この鎖長(n+2)の母体鎖は、少なくとも、炭素数6以上の鎖長を有するもの、好ましくは、炭素数9〜15の範囲の鎖長を有するもの、より好ましくは、炭素数10〜13の範囲の鎖長を有するものを、好適な例として挙げることができる。なお、この母体鎖に対して、若干数の分岐鎖が存在するものであっても、その融点が極端に上昇するものでなければ、同様に好適なものとなる。飽和脂肪族ジカルボン酸のなかでも、側鎖を持たない、直鎖のアルカン二酸であり、その炭素数は、C9〜C15の範囲、より好ましくは、C10〜C13の範囲であると、より好ましいものとなる。
【0068】
また、不飽和脂肪族ジカルボン酸においても、前記飽和脂肪族ジカルボン酸に対応する、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖を母体鎖(HOOC−(C)n−COOH)が、炭素数9〜15の範囲の鎖長を有するもの、より好ましくは、炭素数10〜13の範囲の鎖長を有するものを、好適な例として挙げることができる。この場合も、その母体鎖に対して、若干数の分岐鎖が存在するものであっても、その融点が極端に上昇するものでなければ、同様に好適なものとなる。なお、母体鎖中に存在する−CH=CH−などの炭素−炭素二重結合における絶対配置によっては、二つのカルボキシ基が互いに近接して、分子内で酸無水物の生成が可能となる場合もあるが、この種の環状無水物が容易に生成する配置は、好適な範囲からは除かれる。不飽和脂肪族ジカルボン酸においても、側鎖を持たない、直鎖のジカルボン酸であり、その炭素数は、C9〜C15の範囲、より好ましくは、C10〜C13の範囲であると、より好ましいものとなる。
【0069】
さらには、上記の鎖状の脂肪族ジカルボン酸における、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖を母体鎖に代えて、鎖中に環構造を含み、その実効的な鎖長が炭素数6以上の鎖長に相当するものの、好適なジカルボン酸となる。具体的には、含まれる環構造としては、芳香環、例えば、フェニレン基(−C6H4−)など、あるいは、脂環炭化水素に由来する環構造、例えば、シクロヘキサンジイル(−C6H10−)などが挙げられる。なお、これらの環構造;Rに直接、一つのカルボキシ基が結合するものでなく、HOOC−(C)n1−R−(C)n2−COOH型の環構造上の二つの側鎖にそれぞれカルボキシ基が存在する形状のものがより好ましい。
【0070】
なお、飽和脂肪族ジカルボン酸であれば、母体鎖の炭素数が15を超えると、炭素数が増しても、然程上昇しなくなり、添加比率が少ない際には、母体鎖の炭素数が40程度に達するものであっても、利用可能なものとなる。なお、不必要に炭素数の大きなものとすることは好ましいものとは言えず、一般に、母体鎖の炭素数が15以下の範囲に留めることが望ましい。
【0071】
また、不飽和脂肪族ジカルボン酸においても、前記飽和脂肪族ジカルボン酸に対応する、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖を母体鎖(HOOC−(C)n−COOH)が、炭素数9以上の範囲の鎖長を有するものが好ましく、添加比率や処理温度の選択に応じて、場合によっては、母体鎖の炭素数が40程度であっても、利用可能なものとなる。なお、同じく、不必要に炭素数の大きなものとすることは好ましいものとは言えず、一般に、母体鎖の炭素数が15以下の範囲に留めることが望ましい。
【0072】
加えて、不飽和脂肪酸にアクリル酸などの短鎖のα,β−不飽和カルボン酸が付加した、炭素数20程度までのダイアシッド(付加ジカルボン酸)や、長鎖の不飽和カルボン酸が相互に付加した炭素数38〜44のダイマー酸なども、鉛フリーハンダが対象となる場合には、利用可能となる。なお、前記炭素数38〜44のダイマー酸は、若干のモノマー酸、トリマー酸が混入するものであるが、一般に、室温付近でも、高粘度の液状を示すが、これら混入物を含め、その沸点は、前記鉛フリーハンダの融解温度よりは十分に高いものである。
【0073】
ジカルボン酸の添加比率は、酸無水物に応じて、また、フラックス処理を行う温度をも考慮して、適宜選択するものである。つまり、フラックス処理を行う温度を高く選択する際には、主な役割が硬化剤である酸無水物は、熱硬化に急速に消費されるため、フラックス処理速度をかかる熱的な硬化速度と匹敵するものとする上では、ジカルボン酸の添加比率を増す必要がある。一方、フラックス処理を行う温度をそれほど高くしない場合には、熱的な硬化速度もそれほど速くなっていないので、ジカルボン酸の添加比率が低くとも、フラックス処理速度をかかる熱的な硬化速度と匹敵するものとすることができる。
【0074】
鉛フリーハンダ材料としては、その融点は、高くとも、230℃を超えない範囲のものが主に利用されており、例えば、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%のSn−Ag系ハンダの融解温度は217℃であり、その際、熱硬化処理の温度は、230℃以上、250℃以下の範囲に選択する。従って、本発明においては、前記熱硬化処理の温度に対応させて、一般に、(B)硬化剤の酸無水物の1モルに対して、前記ジカルボン酸を5×10−2〜5×10−1モルの範囲となる量、好ましくは、5×10−2〜3×10−1モルの範囲となる量に選択することが好ましい。あるいは、樹脂組成物全体に対して、ジカルボン酸の含有量が5〜15質量%の範囲に選択することがより望ましい。
【0075】
なお、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物においては、鉛フリー錫合金ハンダ材に対するフラックス処理は、主に、上記する付加的成分のジカルボン酸が示すフラックス活性増強作用を活用し、酸無水物を利用して行われるものであるが、場合によっては、更にフラックス活性増強作用を示す成分を副次的に添加することができる。例えば、この副次的に添加することが可能な、フラックス活性増強作用を示す成分としては、アクリル酸などを付加した酸変性ロジン、例えば、アクリル変性ロジン、あるいは、アミン化合物の塩基性窒素原子上にハロゲン化水素付加塩を形成してなるアミンのハロゲン化水素付加塩など、加熱した際、初めてプロトン供与能を示すものを、補足的な量を添加して利用することもできる。
【0076】
すなわち、本発明において、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分として、上記のジカルボン酸を主に利用するが、補足的に、ジカルボン酸の含有比率を超えない範囲で、例えば、高い沸点を有するモノカルボン酸をも用いることもできる。具体的には、熱硬化処理の温度を、230℃〜260℃の範囲に選択する際にも、補足的なフラックス活性増強成分として、好適に利用可能なモノカルボン酸は、かかるモノカルボン酸の融点は、例えば、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%のSn−Ag系ハンダの融解温度(217℃)よりも有意に低く、沸点は、かかるSn−Ag系ハンダの融解温度よりも十分に高く、また、水に対する溶解性が乏しいものである。前記の条件を満たし、補足的なフラックス活性増強成分として、好適に利用可能なモノカルボン酸の一例は、樹脂酸の主成分である、アビエチン酸、ピマル酸などのジテンペル酸C19H29COOH等を水素添加処理したもの、あるいは、これらのジテンペル酸を主成分とするロジンを水素添加処理した水添ロジンなどを挙げることができる。これらの高い沸点のモノカルボン酸をも利用する際には、ジカルボン酸の含有比率に対して、モノカルボン酸の含有比率が有意に低い範囲、例えば、ジカルボン酸10質量部に対して、モノカルボン酸は5質量部を超えない範囲に選択することがより望ましい。少なくとも、ジカルボン酸1分子に対して、モノカルボン酸が1/2分子を超えない範囲に選択することがより望ましい。
【0077】
一方、前記モノカルボン酸は、副次的なフラックス活性増強成分としての機能に加え、エポキシ樹脂の硬化反応に伴う重合鎖長の延長に際し、末端封止の役割をも有する。その結果、フラックス処理後、ハンダ付けとエポキシ樹脂の熱硬化が進む過程において、得られる架橋・重合構造における鎖長の延長が過度に進み、樹脂粘度が必要以上に増すことを回避する作用をも示す。加えて、過度な鎖長の延長に至らないので、得られる熱硬化体の低温における脆性の改善にも、寄与を示すものとなる。かかる補足的に添加されるモノカルボン酸も、樹脂組成物中に均一に溶解することが望ましく、加えて、得られる熱硬化体において、その吸水率を増す、あるいは、末端封止を行った際、かかるモノカルボン酸の炭素骨格自体がTgの上昇の要因となるなどの不具合を引き起こさないものが望ましい。従って、例えば、分子内に付加重合可能な不飽和炭素結合や、熱分解を引き起こす部位を有するロジンに対して、予め水添処理を施した水添ロジンは、前記の観点でも好適なモノカルボン酸の一つとなる。また、エポキシ樹脂における溶解特性に優れ、高沸点でありつつ、高温領域における高いプロトン供与能も示す、酸性度の高い安息香酸類、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ブロモ安息香酸などを用いることもできる。
【0078】
なお、酸無水物の含有比率が増すにつれ、酸無水物自体にフラックス活性が増すので、ジカルボン酸の添加比率を低くしても、所望のフラックス処理速度が達成できる。一方、酸無水物の含有比率が低い際には、前記の上限値を超えない範囲で、ジカルボン酸の添加比率をより高い範囲に選択し、所望のフラックス処理速度となるように一層の活性増強を図ることが好ましいものである。
【0079】
さらには、残余のジカルボン酸は、ハンダ付けが終了した後もアンダーフィル中に留まるが、接触している配線金属などに対して、不要な反応を起こして、動作不良を引き起こす要因を形成することもない。
【0080】
封止充填剤は、特に、バンプ電極近傍、すなわち、チップ部品とプリント配線基板との接合固定領域の補強を主な機能とするので、バンプ電極近傍において、硬化に実際に関与する、熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の最終的な含有率が好ましい範囲、具体的には、重付加型の硬化剤、例えば、酸無水物が0.8当量程度となるのが最適である。熱硬化を進めるため、高温に維持される間に、表面酸化皮膜の除去に伴い、酸無水物の一部は消費される。そのため、バンプ電極近傍において、酸無水物についてみるならば、その局所的な含有率は、フラックス処理が進むにつれて、しだいに低下していく。その結果、エポキシ樹脂と硬化剤との重合付加反応の伸長を一旦遅延されるので、フラックス処理の完了する前は、エポキシ樹脂組成物の流動性が損なわれ、フラックス処理の阻害要因となってしまうことを防止している。フラックス処理が終わると、その後、熱硬化に要する期間、ハンダの融点付近の温度で一定に保つ間に、拡散により必要な酸無水物は供給される。従って、バンプ電極近傍においても、得られる熱硬化物の特性は、従来の封止充填剤と比較して、全く遜色のないものとなる。
【0081】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、上述する(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂と(B)の硬化剤の酸無水物、粉末状で分散されている(C)の硬化促進剤、ならびに付加的成分の(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分として利用するジカルボン酸の必須成分に加えて、通常、先に述べた硬化促進剤を副次的な成分として添加することが多いが、それ以外も、この種のエポキシ樹脂組成物に慣用される副次的な成分を添加することもできる。具体的には、その他の副次的な成分として、応力緩和剤、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤など、さらには、可塑剤、チキソ剤などをも添加できる。いずれを添加するか、また、その添加量は、必須成分に用いる熱硬化性エポキシ樹脂と酸無水物に応じて、適宜選択するとよい。
【0082】
酸化防止剤は、封止充填した後、熱硬化処理の際、エポキシ樹脂の耐熱性を向上する目的で、予めエポキシ樹脂中に混入しておくことができる。この酸化防止剤としては、酸素除去・還元作用を有するヒドロキノン、亜リン酸エステル類などを用いることができ、その添加量は、熱処理環境、例えば、リフロー加熱炉内の残留酸素濃度・温度などを考慮して適宜選択する。
【0083】
レベリング剤は、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物自体の粘度、従って、必須成分に用いる熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の種類、含有比率に応じて、適宜添加量を選択するとよい。例えば、レベリング剤としては、ST80PA(商品名;東レ・ダウ=コーニング・シリコーン社製)などを用いることができ、液状エポキシ樹脂組成物全体に対して、0〜5質量%の範囲で添加することができる。応力緩和剤としては、アデカレジンEPR−1309(商品名;旭電化工業社製、エポキシ当量280)などを用いることができ、液状エポキシ樹脂組成物全体に対して、0〜10質量%の範囲で添加することができる。
【0084】
また、カップリング剤は、プリント配線基板の材質、チップ部品裏面の表面に露出している材料の種類を考慮し、用いるエポキシ樹脂の種類に応じて、必要に応じて、適宜好ましいものを選択して添加する。汎用されるカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤のγ−グリシト゛キシプロピルトリメトキシシランなどがあるが、これらから前記の選択基準に従って好適なカップリング剤を適量添加するとよい。一般に、カップリング剤は、液状エポキシ樹脂組成物全体に対して、0〜10質量%の範囲で添加することができる。
【0085】
可塑剤やチキソ剤は、液状エポキシ樹脂組成物の塗布加工性を考慮して、必要に応じて、添加される。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチルなどがあるが、エポキシ樹脂の種類に応じて、好ましい可塑剤を適量添加するとよい。チキソ剤としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸のトリグリセライド、ヒュームドシリカなどがあるが、エポキシ樹脂の種類に応じて、好ましいチキソ剤を適量添加するとよい。
【0086】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、その熱硬化処理の温度は、例えば、230℃〜260℃の範囲に選択されるので、その加熱昇温の過程で、一旦は次第に粘度が低下し、封止充填すべき隙間を均一に満たし、塗布する際に仮に部分的に濡れていない箇所も、この段階で液状エポキシ樹脂組成物により覆われた状態となる。従って、室温における液状エポキシ樹脂組成物自体の液粘度は、所望とする液量を鉛フリーハンダ製のバンプ電極を覆うように塗布可能な程度に流動性を満足する範囲に選択すればよい。例えば、塗布手段として、ディスペンサーを利用する際には、液状エポキシ樹脂組成物自体の液粘度は、ディスペンサーのノズル径に応じて、0.5〜50Pa・sの範囲に調整することが好ましい。本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分の熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤、付加的成分のジカルボン酸、ならびに必要に応じて添加される上述の慣用される副次的な成分とを含むが、主な成分である、熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の液粘度の組み合わせによって、全体の液粘度を前記の範囲に調整することが望ましい。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂として、例えば、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散や熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施した液状エポキシ樹脂を用いると、これらは一般に液粘性が増すが、硬化剤に利用する酸無水物として、相対的に液粘度の低いものを選択することで、全体として、好適な液粘度範囲の液状エポキシ樹脂組成物に調製することができる。
【0087】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分の熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤、付加的成分のジカルボン酸、ならびに必要に応じて添加される上述の慣用される副次的な成分とを十分に混合した後、その調製工程の攪拌等により内部に発生したあるいは取り込まれた気泡を減圧脱泡して製造することができる。加えて、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物中に含有される、硬化剤の酸無水物や、ジカルボン酸をなどは、硬化反応前から、水分が存在する環境に置くと、その本来の機能が失われる化合物であり、また、金属材料表面の酸化皮膜の除去作用を維持するためにも、製造された液状エポキシ樹脂組成物への水分混入を抑制して、調製・保存を行う。
【0088】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、フリップチップ実装における封止充填に用いて、その効果を発揮するものである。具体的には、フリップチップ実装において、鉛フリーハンダ製のバンプ電極の熔融を、アンダーフィルを充填した後、その熱硬化とともに行う方式において、その効果を発揮する。
【0089】
液状エポキシ樹脂組成物の充填方式に依らず、鉛フリー錫合金ハンダ製のバンプなどの金属表面に残留する酸化皮膜のその場除去作用は得られるが、例えば、以下の手順をとる封止充填方法をとる際、その効果はより高くなる。具体的には、フリップチップ実装における封止充填の方法として、
(1)基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品とをハンダ製のバンプ電極を用いて両電極間の相互導通をとるべく、前記プリント配線基板上の所定の領域に前記チップ部品を配置後、前記ハンダ製のバンプ電極と電極間の接触を図る工程、
(2)前記ハンダ製のバンプ電極と電極間の接触を図る工程後、またはその工程と併せて、前記プリント配線基板とその上の所定の領域上に配置される前記チップ部品の間隙に、前記接触を図ったハンダ製のバンプ電極と電極とを被覆するように、上記する本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を満たす充填工程、
(3)次いで加熱して、前記所定の領域の間隙に充填した前記液状エポキシ樹脂組成物における、前記エポキシ樹脂の熱硬化を進めるとともに、前記液状エポキシ樹脂組成物が被覆する前記ハンダ製のバンプを熔融させる工程、
所定時間の加熱後、冷却して、一旦熔融したハンダの再固化を行い、バンプ電極と電極とをハンダ付け固着・接合させ、同時に熱硬化したエポキシ樹脂により封止充填を完了する工程、
上記(1)〜(3)の一連の工程により、封止充填を行うと好ましいものとなる。
【0090】
つまり、所定の粘性を有する液状エポキシ樹脂組成物をプリント配線基板上に予め厚めに塗布しておき、その上からチップ部品を押し付けることで、金属配線の電極とバンプ電極との物理的な接触を行い、同時に、押しつぶされ、広がった液状エポキシ樹脂組成物が、金属配線の電極とバンプ電極をも覆った状態となる。この際、塗布されている液状エポキシ樹脂組成物の上面はほぼ平坦であるので、その上からチップ部品を押し付けることで、未充填部分、ボイドとなる部分が発生することはない。また、物理的な接触を果たした金属配線の電極とバンプ電極の表面を、液状エポキシ樹脂組成物が密に覆っている状態とできる。この状態において、ハンダ製のバンプを熔融させるべく加熱を行うので、上で説明したように、金属表面に残留している酸化皮膜の除去がなされる。
【0091】
なお、本発明の封止充填の方法では、前記の鉛フリー錫合金ハンダ材料として、例えば、Sn−Ag系合金を用いる際に、かかる鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に設定されるハンダ熔融加熱過程まで、一定の昇温速度で加熱した上、その温度で一時保持して、ハンダ製のバンプを熔融させる方法を選択することもできる。しかし、この一定の昇温速度で加熱する手法では、利用するリフロー装置によっては、プリント配線基板における加熱ムラが大きくなり、基板の反りを引き起こすこともある。この基板の反りを回避するため、所定の温度まで昇温し、一時保持して、その間に加熱ムラを緩和した上で、鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に設定されるハンダ熔融加熱過程まで昇温を行う手法が有効である。すなわち、本発明の封止充填の方法において、前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、
引き続き、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設けることがより好ましく、その際、予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上の範囲に選択することが、前記プリント配線基板における加熱ムラを低減する上でより望ましい。この予備加熱過程の温度では、少なくとも110℃以上、好ましくは、160℃を中心として、その前後50℃の範囲に温度を保持して、昇温時の温度ムラを解消するため、温度の均一化を図ることが望ましい。なお、この予備加熱過程における温度保持期間では、プリント基板内の温度均一化のみでなく、加熱装置内の温度分布の均一化をも達成することが望ましい。従って、温度保持期間中にも、設定温度は緩やかに上昇させ、加熱装置内の温度分布の均一化を図ることもでき、かかる設定温度は緩やかな上昇範囲は、多くとも50℃の温度幅に選択することが好ましい。
【0092】
加えて、本発明にかかる電子部品は、上に説明した本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を利用して、フリップチップ実装し、その間に封止充填がなされてなる実装組み立て済み電子部品であり、基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品との接合を、両電極間の相互導通を融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を利用した際、金属表面に残留している酸化皮膜の除去が効果的に行え、高い再現性で良好な導通特性が達成できる。加えて、フラックス処理が終わり、鉛フリー錫合金ハンダ材料の溶融、ハンダ付けが可能となった時点で、エポキシ樹脂の熱硬化も進むため、未充填部分、ボイドとなる部分が発生することもなく、ハンダ付けと封止充填がなされたものとなる。また、本発明にかかる電子部品は、鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用してフリップチップ実装可能な半導体素子チップをプリント配線基板上に、少ない工程で実装したものとできる。加えて、用いる本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を、
(B)硬化剤の酸無水物として、飽和な環状炭化水素ジカルボン酸由来の分子内酸無水物を用いる、あるいは、
(A)の熱硬化性エポキシ樹脂として、熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含む組成とすることで、得られるエポキシ樹脂硬化物の示す柔軟性、あるいは、靭性の強化を行うと、過酷な冷却条件、例えば、−65℃の冷却条件と125℃の加熱条件において、冷熱サイクル処理を施しても、封止充填されている樹脂硬化物におけるクラックの発生が効果的に抑制されたものとできる。また、その際、接着性不良などの不良も抑制でき、本発明にかかる電子部品は、寒暖差の大きな環境下、外部からの水分の浸入を長期にわたり防護された、耐環境性に優れたものとなる。
【0093】
更には、前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、予備加熱過程とハンダ熔融加熱過程とを設け、特に、予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上、望ましくは、両者の温度差を100℃またはそれより小さな範囲に選択することで、実装後のプリント配線基板における反り発生を回避することで、冷熱サイクル処理に起因する、ハンダ接合部における導通不良の発生頻度を低減する効果も得られる。この予備加熱過程の温度では、少なくとも110℃以上、好ましくは、160℃を中心として、その前後50℃の範囲に温度を保持して、昇温時の温度ムラを解消するため、温度の均一化を図ることが望ましい。より好ましくは、140℃以上、200℃以下の範囲に、予備加熱過程の温度を設定することができる。
【0094】
【実施例】
以下に、具体例を挙げて、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、それを用いた封止充填において達成される酸化皮膜の除去効果に関して、より具体的に説明する。なお、以下に示す実施例などは、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0095】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の示す特徴である、鉛フリーハンダ材料表面に生成する酸化皮膜の除去作用を検証した。具体的には、付加的成分として添加されている、ジカルボン酸によって、フラックス活性の増強が所望の程度に達成することを検証した。
【0096】
加えて、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤の酸無水物、ならびに、この酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤を必須成分とする構成をとることにより、鉛を含まない錫合金ハンダの融点より有意に高い温度まで加熱を進めた際にも、含有されている成分の熱的分解等に起因するボイドの発生を十分に抑制されることを検証した。
【0097】
ジカルボン酸の添加に伴う、液状エポキシ樹脂組成物中に必須成分として含まれる、(B)硬化剤の酸無水物が関与する、ハンダ材料の酸化皮膜の除去効率の差異は、封止充填剤を充填硬化させた試料について、ハンダ不良が要因と推察される、電極間の導通試験において、導通不良発生の有無により判定した。
【0098】
(実施例1)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、バンプを形成するハンダ材料として、鉛を含まないスズ合金ハンダ、所謂、鉛フリーハンダの一つ、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%(熔融点:217℃)のSn−Agハンダを用いる場合、その融点を大きく超えない温度で使用可能なアンダーフィル用のエポキシ樹脂として、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0099】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量 約190)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(商品名;ジャパンエポキシレジン社製、酸無水物当量 約230)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールの2E4MZ−CN(商品名、四国化成社製、分子量 163、融点 30℃)0.3質量部を均一に分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、前記分散型硬化促進剤の2E4MZ−CNには、平均粒子径10μmの分散粒子形態を利用している。加えて、直鎖状アルカン二酸;ω,ω’−アルカンジカルボン酸(HOOC−(CH2)n−COOH)の一つであるドデカン二酸(宇部興産(株)製、 分子量230.3、融点129℃、沸点245℃(10mmHg))20質量部を、フラックス活性増強成分として、かかる液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0100】
(実施例2)
前記実施例1と比べると、フラックス活性増強成分として、ドデカン二酸の添加に加え、水添ロジン:フォーラルAXE(商品名、日商岩井ケミカル社製、平均分子量 310)をも少量添加する変更を施し、液状エポキシ樹脂組成物を調製した。具体的には、液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)120質量部と、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0101】
(実施例3)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、すなわち、バンプを形成するハンダ材料として、前記のSn−Agハンダ(熔融点:217℃)が利用される際に好適な組成比を有する、液状エポキシ樹脂と酸無水物に、付加的成分のフラックス活性増強成分として、前記実施例2と同じく、直鎖状アルカン二酸の一つであるドデカン二酸(前出)と、少量の水添ロジン(前出)を含む液状エポキシ樹脂組成物とした。加えて、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)に代えて、水添ナジック酸の酸無水物:HNA(商品名、新日本理化社製、酸無水物当量 95)を利用した。
【0102】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)87質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を分散添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0103】
次いで、実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物について、それぞれ同様の条件でフリップチップ実装を行い、得られた実装済み半導体装置について、チップ部品とプリント回路基板の電極間の導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0104】
なお、用いた硬化条件は、20℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持した。この保持後、強制冷却した。
【0105】
表1に、導通試験結果を併せて示す。導通試験結果は、全試料数50に対して、導通不良の無い合格品数の比率をもって、その指標とする。
【0106】
【表1】
表1に示す通り、分散型硬化促進剤として、融点30℃の2E4MZ−CNを用いることで、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物では、若干導通不良は見出されるものの、導通不良は20%程度に抑えられている。同量のドデカン二酸を添加している、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物と比較して、実施例2の液状エポキシ樹脂組成物においては、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、導通不良はもはや見出されなくなっている。また、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307に代えて、水添ナジック酸の酸無水物HNA(前出)を採用した際にも、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、実施例3の液状エポキシ樹脂組成物においては、導通不良はもはや見出されなくなっている。
【0107】
従って、本発明の液状エポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤として、融点が100℃以上のイミダゾール類分散型硬化促進剤を配合し、また、エポキシ基当たり、5×10−3分子以下のイミダゾールのなる範囲にその配合比率を選択することによって、硬化促進剤による促進を受けて進行する、酸無水物によるエポキシ環開環反応の進行速度を制御し、一方、フラックス活性増強成分のドデカン二酸の添加により、酸無水物の示す、フラックス活性が付与・増進されている結果、リフロー処理によって前記の様に良好なバンプ電極による接合がなされていると判断される。加えて、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、一層良好なバンプ電極による接合がなされている。
【0108】
一方、硬化促進剤による促進を受けて進行する、酸無水物によるエポキシ環開環反応の進行速度を制御している結果、昇温過程での、不均一な熱硬化、あるいは、急速な粘度上昇が回避でき、硬化物中のボイド発生は、これら実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物において、全く見出されていない。
【0109】
加えて、得られるエポキシ樹脂硬化物は、それを構成するエポキシ樹脂成分と硬化剤の酸無水物の骨格構造に応じて、可撓性、接着性に違いが生じ、特に、氷点以下の温度に冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下が生じると、反復的に加熱・冷却を繰り返す間に、封止充填した樹脂硬化物の内部分的な剥離、あるいは、樹脂硬化物の表面における微細なクラック発生の有無に差異が生じる。この冷却における樹脂硬化物の可撓性、接着性の相違を比較するため、前記実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、以下に記載する実装工程の要領で、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0110】
ここでは、下記の手順を、プリント配線基板上にバンプ電極が設けられているフリップチップ実装に適用した。まず、前記のバンプ電極を予め形成したプリント配線基板に、上記アンダーフィル用エポキシ樹脂組成物をスクリーン印刷により所定のパターンに塗布する。これも裏面にバンプ電極を形成してあるチップ部品を、このアンダーフィル剤パターンを印刷した配線基板上のバンプ電極に対して、両者の電極位置が整合するように位置合わせする。この位置において、電極相互が接触するようにチップ部品を押し付ける。その過程で、塗布されているアンダーフィル剤層は押し広げられ、チップ部品の裏面とも密着する。また、接触しているバンプ電極、対応する基板上の配線表面、チップ部品の裏面電極面もしっかり、押し広げられたアンダーフィル剤で被覆される。
【0111】
このチップ部品の上面から押圧した状態で、リフロー炉内に入れ、例えば、温度250℃まで昇温してバンプ熔融を行う。バンプハンダ付けが済み、更にアンダーフィル剤のエポキシ樹脂の熱硬化が進行する。
【0112】
上述する通り、この手順に従うとチップ部品を押圧するので、チップ部品裏面との間に気泡が残ることもないので、ボイドは発生しない。また、既に説明した通り、酸化被膜もその場で除去されるのでハンダ付け不良もない。このように、電極の接合不良もなく、しかも、アンダーフィルの充填・硬化も過不足なく達成される。
【0113】
なお、用いているハンダ材料が、その融点が217℃の上述のSn−Ag系ハンダであるため、このリフロー工程における昇温過程は、かかる217℃より有意に高い250℃まで一定速度で昇温する過程を用いており、その際、130℃を超えると、徐々に熱硬化反応が進み始めるが、添加されているドデカン二酸の作用により、前記217℃近くに達するまでに十分にフラックス処理が進み、加えて、系内に残余する酸無水物濃度が相当低くなった状態となった時点でも、なお、必要とするフラックス活性の確保することが可能である。
【0114】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表2に、実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験における結果、特に、封止充填剤部の劣化に起因する不良発生比率、ならびに、サイクル試験終了時における封止充填剤部の硬化樹脂に微細なクラック発生の有無に関する評価結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0115】
【表2】
樹脂硬化物を構成するエポキシ樹脂成分とその硬化剤の酸無水物が同一組成である、実施例1、2の液状エポキシ樹脂組成物の間では、得られる樹脂硬化物の可撓性、接着性など、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下の程度は同程度であるため、上記の冷熱サイクル試験結果において、実質的な差異は見出されていない。冷却状態が−45℃の条件では、樹脂硬化物自体は、極端な脆さを示さず、樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力によるクラック発生も、問題となる頻度ではない。一方、冷却状態が−65℃の条件では、かかるエポキシ樹脂硬化物自体は、柔軟性に乏しく、脆さを示す状態となり、冷熱サイクル時の歪応力によるクラック発生がより顕著となっている。
【0116】
一方、硬化剤の酸無水物として、HNAを採用している実施例3の液状エポキシ樹脂組成物においては、そのエポキシ樹脂硬化物自体は、この酸無水物に由来する構造には、不飽和炭素結合を有してなく、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307を利用する実施例1、2の液状エポキシ樹脂組成物によるエポキシ樹脂硬化物と比較して、より柔軟性に富むものとなる。その相違により、冷却状態が−45℃の条件では、未だ脆さを示さず、不良発生もなく、歪応力によるクラック発生が回避されている。さらに、冷却状態が−65℃の条件でも、樹脂硬化物自体は、極端な脆さを示さず、僅かに不良発生、歪応力によるクラック発生は見られるものの、問題となる頻度ではない。
【0117】
樹脂硬化物自体の可撓性、接着性、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下をより小さなものとするため、利用する硬化剤の酸無水物として、不飽和炭素結合を持たない水添ナジック酸の酸無水物HNAを利用した上に、エポキシ樹脂成分自体も、可撓性、接着性の向上が図られるニトリル変性エポキシ樹脂の利用、あるいは、少量のアクリルゴムなど、熱可塑性樹脂成分の添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散など、柔軟性を付加することで、脆さを改善し、より高靭性を発揮する上で効果を持つものを利用して、液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0118】
(実施例4)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、すなわち、バンプを形成するハンダ材料として、前記のSn−Agハンダ(熔融点:217℃)が利用される際に好適な組成比を有する、液状エポキシ樹脂と酸無水物に、分散型硬化促進剤の2E4MZ−CNを分散配合し、付加的成分のフラックス活性増強成分として、前記実施例3と同じく、直鎖状アルカン二酸の一つであるドデカン二酸(前出)と、少量の水添ロジン(前出)を添加した液状エポキシ樹脂組成物とした。硬化剤の酸無水物として、YH−307(前出)を用い、エポキシ樹脂成分として、エピコート828(前出)に代えて、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主成分とする低粘度エポキシ樹脂であるEXA−835LV(商品名;大日本インキ化学工業社製、 エポキシ当量: 165)とCTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 230)とを混合して用いた。
【0119】
液状エポキシ樹脂として、EXA−835LV(前出)50質量部:EPR−4023(前出)50質量部の比率で混合される、エポキシ樹脂100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、YH−307(前出)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0120】
(実施例5)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、すなわち、バンプを形成するハンダ材料として、前記のSn−Agハンダ(熔融点:217℃)が利用される際に好適な組成比を有する、液状エポキシ樹脂と酸無水物に、付加的成分のフラックス活性増強成分として、前記実施例4と同じく、直鎖状アルカン二酸の一つであるドデカン二酸(前出)と、少量の水添ロジン(前出)を含む液状エポキシ樹脂組成物とした。硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)を用い、エポキシ樹脂成分として、エピコート828(前出)に代えて、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主成分とする低粘度エポキシ樹脂であるEXA−835LV(前出)とCTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(前出)とを混合して用いた。
【0121】
液状エポキシ樹脂として、EXA−835LV(前出)50質量部:EPR−4023(前出)50質量部の比率で混合される、エポキシ樹脂100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)86質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0122】
次いで、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物について、それぞれ、上記実施例3の液状エポキシ樹脂組成物と同様の条件でフリップチップ実装を行い、得られた実装済み半導体装置について、チップ部品とプリント回路基板の電極間の導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0123】
なお、用いた硬化条件は、20℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持した。この保持後、強制冷却した。
【0124】
表3に、導通試験結果を併せて示す。導通試験結果は、全試料数50に対して、導通不良の無い合格品数の比率をもって、その指標とする。
【0125】
【表3】
表3に示す通り、硬化剤、ならびにフラックス活性の主体として機能する、酸無水物として、HNA(前出)を用い、主なフラックス活性増強成分として、ドデカン二酸を、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、上記の実施例3の液状エポキシ樹脂組成物に比較して、酸無水物HNAの含有比率が若干少ない、実施例5の液状エポキシ樹脂組成物においても、導通不良は見出されていない。また、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)を用いている実施例4の液状エポキシ樹脂組成物においても、実施例2の液状エポキシ樹脂組成物と同じく、導通不良は見出されていない。
【0126】
従って、利用するエポキシ樹脂の種類は異なるものの、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物においても、先に示す実施例3、あるいは実施例2の液状エポキシ樹脂組成物と同様に、フラックス活性増強成分のドデカン二酸と水添ロジンの添加により、酸無水物の示すフラックス活性が付与・増進されている結果、リフロー処理によって前記の様に良好なバンプ電極による接合がなされていると判断される。また、ボイド発生は、これら実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物においても、全く見出されていない。
【0127】
加えて、これら実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物は、得られるエポキシ樹脂硬化物は、それを構成するエポキシ樹脂成分の一つとして、ニトリルゴム成分付加による変性を施したCTBN変性エポキシ樹脂を用いることによって、可撓性、接着性の向上を図り、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下をより緩和することを、主な目的としている。この冷却における樹脂硬化物の可撓性、接着性の向上を検証するため、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例3に記載する実装と同じ要領で、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0128】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表4に、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験の結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0129】
【表4】
実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合、上記実施例3の液状エポキシ樹脂組成物を用いた際と同様に、冷却状態が−45℃の条件では、樹脂硬化物自体は、脆さを示さず、樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力によるクラック発生もなく、不良が見出されていない。加えて、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合に、エポキシ樹脂成分の一つに、ニトリルゴム成分付加による変性を施すことによって、可撓性、接着性の向上を図る成分を利用する結果、冷却状態が−65℃の条件でも、かかるエポキシ樹脂硬化物自体は、脆さを示さず、高い靭性を保持し、冷熱サイクル時の歪応力によるクラック発生も回避でき、導通不良発生の低減効果も見出される。
【0130】
また、実施例5の液状エポキシ樹脂組成物と実施例4の液状エポキシ樹脂組成物に対する、冷却状態が−65℃の条件での冷熱サイクル評価結果を比較すると、エポキシ樹脂成分の一つに、CTBN変性エポキシ樹脂を用いることに加えて、硬化剤の酸無水物として、その骨格構造に不飽和炭素結合を有していないHNAを採用している実施例5の液状エポキシ樹脂組成物による樹脂硬化物では、接着性、可撓性の更なる向上が達成されている。すなわち、実施例5の液状エポキシ樹脂組成物では、その樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力に起因する、導通不良発生は見出されていない。
【0131】
(実施例6)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、配合される分散型硬化促進剤として、実施例1の2E4MZ−CNに代えて、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとる1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテイト(トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)との付加塩型イミダゾール)のC11Z−CNS(商品名、四国化成社製、分子量 485.7、融点 149℃)を利用して、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0132】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、C11Z−CNS(前出)1質量部を均一に分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、前記分散型硬化促進剤のC11Z−CNSには、平均粒子径3μmの分散粒子形態を利用している。加えて、ドデカン二酸(前出)20質量部を、フラックス活性増強成分として、かかる液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0133】
(実施例7)
硬化剤の酸無水物として、前記実施例6の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において使用した、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)に代えて、水添ナジック酸の酸無水物:HNA(前出)を利用して、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0134】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)87質量部を混合し、分散硬化促進剤として、C11Z−CNS(前出)1質量部を分散添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0135】
(実施例8)
液状エポキシ樹脂として、上記実施例6の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において使用した、エピコート828(前出)に代えて、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主成分とする低粘度エポキシ樹脂であるEXA−835LV(前出)とCTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(前出)とを混合して用いて、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0136】
液状エポキシ樹脂として、EXA−835LV(前出)50質量部:EPR−4023(前出)50質量部の比率で混合される、エポキシ樹脂100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、YH−307(前出)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、C11Z−CNS(前出)1質量部を分散添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0137】
次いで、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物について、それぞれ、上記実施例3の液状エポキシ樹脂組成物と同様の条件でフリップチップ実装を行い、得られた実装済み半導体装置について、チップ部品とプリント回路基板の電極間の導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0138】
なお、用いた硬化条件は、20℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持した。この保持後、強制冷却した。
【0139】
表5に、導通試験結果を併せて示す。導通試験結果は、全試料数50に対して、導通不良の無い合格品数の比率をもって、その指標とする。
【0140】
【表5】
表5に示すように、硬化剤の酸無水物によるエポキシ環の開環反応の促進を図る、分散型硬化促進剤として、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物では、融点 30℃の2E4MZ−CNを、エポキシ基一つ当たり、3.5×10−3分子を配合しているが、それに代えて、融点が149℃であり、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとるC11Z−CNSを利用し、また、エポキシ基一つ当たり、約3.9×10−3分子を配合している実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物においては、実施例2の液状エポキシ樹脂組成物のように、主なフラックス活性増強成分であるドデカン二酸に加えて、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加しなくとも、上記のリフロー条件では、導通不良は見出されていない。
【0141】
従って、前記実施例6の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際、その分散型硬化促進剤のC11Z−CNSによる促進によって進行する、酸無水物によるエポキシ環の開環反応は、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際、2E4MZ−CNによる促進によって進行するエポキシ環の開環反応と比較し、その進行速度はよるより適正な範囲に制御され、フラックス活性の主体として機能する、酸無水物によるフラックス処理がより効果的に達成でき、導通不良の発生が防止できている。利用するエポキシ樹脂の種類は異なるものの、実施例8の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際にも、同様の効果が発揮されている。また、利用する酸無水物の種類は異なるものの、実施例8の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際にも、同様の効果が発揮されている。また、ボイド発生は、これら実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物においても、全く見出されていない。
【0142】
加えて、これら実施例7、8の液状エポキシ樹脂組成物は、得られるエポキシ樹脂硬化物は、それを構成する硬化剤の酸無水物として、その骨格構造に不飽和炭素結合を有していないHNAを採用する、あるいは、エポキシ樹脂成分の一つとして、ニトリルゴム成分付加による変性を施したCTBN変性エポキシ樹脂を用いることによって、可撓性、接着性の向上を図り、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下をより緩和することを、主な目的としている。この冷却における樹脂硬化物の可撓性、接着性の向上を検証するため、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例3に記載する実装と同じ要領で、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0143】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表6に、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験の結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0144】
【表6】
実施例7、8の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合、上記実施例3、4の液状エポキシ樹脂組成物を用いた際と同様に、冷却状態が−45℃の条件では、樹脂硬化物自体は、脆さを示さず、樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力によるクラック発生もなく、不良が見出されていない。一方、実施例6の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合に、上記実施例2の液状エポキシ樹脂組成物を用いた際と同様に、導通不良の発生は抑制されているものの、樹脂硬化物自体の組成に起因する低温脆性が原因と考えられるクラック発生は見出されている。従って、利用する分散型硬化促進剤の違いに付随する、硬化反応の進行速度は、C11Z−CNSを利用する実施例6〜8では、2E4MZ−CNを利用する実施例2〜4と比較して、フラックス処理により適合する範囲に制御されている上、得られる樹脂硬化物自体の組成は、それぞれ対応するものと、同様なものとなっていることが判る。また、冷却状態が−65℃の条件での冷熱サイクル評価結果を比較することでも、C11Z−CNSを利用する実施例6〜8では、2E4MZ−CNを利用する実施例2〜4と比較して、得られる樹脂硬化物自体の組成は、それぞれ対応するものと、同様なものとなっていることが確認される。
【0145】
すなわち、エポキシ樹脂成分の一つに、CTBN変性エポキシ樹脂を用いること、あるいは、硬化剤の酸無水物として、その骨格構造に不飽和炭素結合を有していないHNAを採用することによる、得られる樹脂硬化物における、接着性、可撓性の向上効果は、C11Z−CNSを利用する際にも、実質的に同様な効果が達成されている。
【0146】
更に、フリップチップ実装時のリフロー条件として、予備加熱過程を設ける条件を利用する際における、導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0147】
なお、用いた硬化条件は、予備加熱過程として、20℃から160℃まで急速に昇温(2℃/s)し、160℃で60秒間保持し、次いで、ハンダ熔融加熱過程として、160℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持し、その保持後、強制冷却した。
【0148】
また、前記の予備加熱過程を設けるリフロー条件によって、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0149】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表7に、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物、ならびに、表8に、実施例2〜3の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、それぞれ、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験の結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0150】
【表7】
【0151】
【表8】
表7と表8に示す結果を対比させると、C11Z−CNSを利用する実施例6〜8では、2E4MZ−CNを利用する実施例2〜4と比較して、利用する分散型硬化促進剤の違いに付随して、その硬化反応の進行速度は、予備加熱過程を設けるリフロー条件における、フラックス処理により適合する範囲に制御されていることが判る。つまり、予備加熱過程の温度均一化の段階では、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとるC11Z−CNSを利用することにより、硬化反応の促進を僅かに留めることで、この間の不必要なエポキシ樹脂の硬化進行に由来する、導通不良の発生を効果的に回避できている。
【0152】
【発明の効果】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物では、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂と(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物、ならびに、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤、さらに、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を含む組成とする際、(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合され、また、(D)フラックス活性増強成分には、炭素数9〜15のジカルボン酸を用いて、(B)硬化剤の酸無水物1モル当たり、(D)フラックス活性増強成分のジカルボン酸の含有量が、5×10−2〜5×10−1モルの範囲に選択されている封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とする。この液状エポキシ樹脂組成物が充填された状態において、チップ部品とプリント配線基板の電極間に互いに物理的な接触を形成する配置されている、融点が200℃以上、230℃を超えない鉛フリー錫合金ハンダ製、特には、Sn−Ag系ハンダ製のバンプ電極を加熱熔融した際、ジカルボン酸のカルボキシ基より供与されるプロトンによって、(B)硬化剤の酸無水物が有するフラックス活性の増強がなされ、バンプ電極などの表面の酸化皮膜、例えば、錫の酸化物の除去を行うことができる。一方、前記の(B)硬化剤の酸無水物は、前記錫の酸化物との反応により、若干量が消費されるものの、過度な含有量の減少でなく、例えば、副次的な成分として添加されている、硬化促進剤の含有量を少量に留めるなどして、用いる鉛フリー錫合金ハンダに適合する比較的に高い熱硬化温度で加熱処理をした際にも、酸化物皮膜の除去とともに、適正な速度で熱硬化が進行し、所望の熱硬化物とできる。また、添加されるジカルボン酸の沸点は熱硬化温度より十分に高いので、その気化による気泡の形成もなく、ボイドの発生の要因ともならない。また、利用する母体鎖の炭素数は比較的に長いジカルボン酸は、エポキシ樹脂との相溶性も優れており、熱硬化が次第に進行していく間も、樹脂組成物中に均一に分散して、(B)硬化剤の酸無水物が有するフラックス活性の増強作用を維持でき、従って、予めバンプ電極などの表面の酸化皮膜を除去するため、フラックスによる処理を施さなくとも、バンプ電極に用いるハンダの良好な熔融、ハンダ付けによる電極間の接合ができ、同時に封止充填剤の熱硬化が行えるという利点が得られる。加えて、この方式の封止充填は、高い作業効率性を持ち、特に、プリント配線基板上にスクリーン印刷などの手段で所望の液状エポキシ樹脂組成物層を塗布形成するので、プリント配線基板の形状・材質に依らず、全般的な工程の短縮化、ならびにボイド発生などの不良要因の根絶が可能となる。加えて、(B)硬化剤の酸無水物として、その分子骨格内に不飽和炭素結合を含まないものを利用し、さらには、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂成分として、熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性などによって、得られる樹脂硬化物において、靭性を増し、特に、低温脆性が改善された、接着性、可撓性に富み、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下がより緩和されたものとできる。特に、ハンダ付けによる電極間の接合と、同時に封止充填剤の熱硬化を行うリフロー条件として、鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、引き続き、鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設ける場合、分散型硬化促進剤として、例えば、融点が140℃以上、200℃以下の範囲に選択されるイミダゾール類、例えば、1位の窒素原子上に置換を有するイミダゾール環に対する酸付加塩の形成に伴うイミダゾリウムの含有する酸付加塩型イミダゾール類を選択し、粉体状で均一分散させる形態で添加すると、ハンダ付けによる電極間の接合がより高い再現性で達成できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリップチップ実装における封止充填の際に利用される、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物と、それを用いた封止充填方法に関する。より具体的には、実装用基板の加熱温度均一化を図る予備加熱過程を設け、段階的な加熱して、封止充填剤の熱硬化を行う際、バンプ電極材料として、融点が200℃以上の鉛フリー錫合金ハンダ材料を用いているフリップチップ実装に利用されるバンプの熔融をも行い、電極とバンプとの間をハンダ付け固着・接合する工程において、鉛フリー錫合金ハンダ製のバンプをも覆う封止充填剤に好適な液状エポキシ樹脂組成物、特には、バンプを形成するハンダ材にスズ−銀系合金ハンダを使用した際にも、その低い溶融温度においても、十分なフラックス活性が達成できる封止充填剤として、より好適に利用される液状エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の軽量化、小型化ならびに薄型化を進めるに際し、プリント配線基板上に半導体チップ部品を実装する方法として、フリップチップ実装方式の採用が進められている。このフリップチップ実装方式では、チップ部品の実装面(裏面)にチップ部品用電極を形成し、これをプリント配線基板上に形成されている基板用電極の所定の領域(実装領域)に対向させて配置し、両電極間に所望の導通を達成するためにバンプ電極が用いられる。例えば、チップ部品の実装面(裏面)に形成されるチップ部品用電極に、予め球形状のハンダで作製されるバンプ電極を設け、このバンプ電極を基板用電極の所定の領域(実装領域)に接触させる。その配置において、ハンダを熔融させると、基板用電極と接触させた所望の位置にハンダ付け固着・接合がなされる。これによりバンプ電極を介して、チップ部品とプリント配線基板の両電極間に所望の導通が達成される。あるいは、逆にバンプ電極をプリント配線基板の電極上に設ける手法を用いることもある。
【0003】
このフリップチップ実装方式では、チップ部品とプリント配線基板の両電極間を接続するバンプ電極のみによって、チップ部品は固着されることになる。小型化や薄型化を目的とする実装方法であるため、このバンプ電極は、可能な限り小さくされる。チップ部品とプリント配線基板は、その熱膨張係数が異なっており、動作時の温度変化に伴い、相対的にプリント配線基板の熱膨張あるいは熱収縮が生じた際、バンプ電極には、その熱変位を吸収・緩和する遊び・撓みが存在しない。温度変化(熱サイクル)が繰り返されると、前記の熱変位に由来する応力歪みが反復された結果、バンプ電極と電極間の接合箇所(ハンダ付け箇所)における剥離を引き起こすこともある。
【0004】
この熱サイクル劣化を抑制するため、チップ部品とプリント配線基板との間隙に相互を接着・固定して、相対的な熱変位を低減する役割を有する樹脂による充填・封止が行われる。この封止充填剤は、アンダーフィルと呼ばれるが、その使用目的からして、チップ部品とプリント配線基板と間隙を密に充填し、ボイドと称される未充填の残り(空隙)を生じないように充填される。さらには、バンプ電極の周囲をも密に被覆するように充填・封止が行われる。
【0005】
従来は、バンプ電極と電極間の接合(ハンダ付け)を先に行い、その後、チップ部品とプリント配線基板との間隙に、液状エポキシ樹脂組成物を注入、染み込ませる手法が利用されていた。この手法では、高集積化に伴いチップ部品自体が大型化し、また、プリント配線基板の基板電極と結線すべき電極数(端子数)が多くなり、バンプ電極相互の間隔、チップ部品とプリント配線基板との間隙が更に狭まると、ボイドの発生頻度が増す懸念がある。また、液状エポキシ樹脂組成物の注入工程は、作業効率を更に上げる際の障害ともなっている。
【0006】
これらの課題を回避する手法として、予め、プリント配線基板上の所定領域に合わせて、液状エポキシ樹脂組成物の層をスクリーン印刷等の手段で形成しておき、プリント配線基板上にチップ部品を配置し、バンプ電極と電極間の接触を行う際、チップ部品の実装面(裏面)で液状エポキシ樹脂組成物の層を押し伸ばす手法が提案されている(特開平11−354555号公報など)。前記のチップ部品を圧接する工程で、バンプ電極と電極間の接触とともに、チップ部品とプリント配線基板の間に隙間なく液状エポキシ樹脂組成物の充填が行われる。次いで、バンプ電極と電極間の接合(ハンダ付け)を行うべく、リフロー炉内においてハンダ製のバンプを熔融するため加熱を行う。この加熱処理の際、充填されている液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化も行われ、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着が同時に達成される。予めアンダーフィル(封止充填剤)を再現性・作業性の高いスクリーン印刷等の手段で作製でき、また、加熱工程を一体化できるため、作業効率は大幅に向上する方法である。
【0007】
前記のバンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同一の工程で行う方法は、作業性の点では優れた方法であり、特に、高集積化に伴うチップ部品自体の大型化、電極数(端子数)の増加にも容易に対応できるという大きな利点を持っている。一方、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)の際、バンプ(球状ハンダ)の表面あるいは回路の電極面上に酸化皮膜が残っていると、バンプ(球状ハンダ)自体の熔融が均一とならない、あるいは、回路の電極面とハンダとの濡れが不良となるといった不具合が少なからず生ずる。このハンダ付け不良の問題は、フラックス処理を施すことで、一掃される。
【0008】
しかしながら、前記の加熱処理を1工程で行う方法では、バンプ(球状ハンダ)自体をも覆うように、アンダーフィルの充填がなされるため、前もってフラックス処理を施しておく必要があった。それでもなお、フラックス処理後に形成される酸化皮膜の影響は残り、処理後の時間経過とともに、その影響は増すものであった。そのため、予めフラックス処理を施しても、なお、ハンダとの濡れ不良に起因するハンダ付け不良、導通不良の発生が少なからず見出されている。
【0009】
加えて、昨今、前記のバンプ(球状ハンダ)の作製には、Pb−Sn共晶合金に代えて、鉛を含まない錫合金、所謂、鉛フリーハンダを利用するバンプ(球状ハンダ)の利用も検討されている。この鉛フリーハンダ製のバンプ(球状ハンダ)表面の酸化皮膜の除去を行って、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同時に実施する上では、この鉛フリーハンダの比較的に高い熔融温度においても、十分なフラックス活性が発揮され、また、そのリフロー温度を高くし、その高い温度条件において、適度な熱硬化が進行するアンダーフィル(封止充填剤)が必要となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記のアンダーフィル充填をチップ部品のプリント配線基板上へ配置・圧接と合わせて一工程内で行う方法においても、この工程の直前にフラックス処理を施すならば、上記する酸化皮膜の影響は概ね排除できるが、このような工程の時間的な自由度を制限する手段に代わり、アンダーフィル充填に利用する熱硬化型樹脂組成物中に、フラックス活性を有する成分を加え、酸化皮膜の影響を十分に排除し、工程の時間的な自由度を制限することのない新たな手段が望まれる。
【0011】
加えて、昨今利用される鉛を含まない錫合金ハンダ、所謂、鉛フリーハンダを利用したバンプ電極を採用する際には、従来のPb−Sn合金ハンダと比較して、鉛フリーハンダの融点が高い分、そのリフロー温度をより高く選択せざるを得ない。そのリフロー温度(熱硬化温度)条件においても、ハンダ表面の酸化皮膜が速やかに除去できる高いフラックス活性を有し、また、適度な速度で熱硬化が進行するアンダーフィル(封止充填剤)である必要がある。
【0012】
封止充填剤の樹脂主成分の熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤として酸無水物を用いると、この酸無水物自体、錫合金ハンダ表面の酸化皮膜、具体的には、より卑な金属成分である錫の表面酸化膜と高い温度では反応し、フラックス成分として機能することを、発明者らは先に見出し、その酸無水物のフラックス作用と硬化剤としての機能を共に利用する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の発明を、特願2000−72184号として特許出願した。
【0013】
かかる封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物では、熱硬化性エポキシ樹脂1当量に対して、その硬化剤として酸無水物を1当量よりも高い比率で含有させ、酸無水物のフラックス作用を発揮させている。酸無水物のフラックス作用、具体的には、錫の酸化物と酸無水物との反応速度は、温度の上昇とともに増すものの、鉛フリーハンダの比較的に高い熔融温度に適合する、高いリフロー温度(熱硬化温度)では、所望のフラックス活性を達成するには、エポキシ樹脂組成物中に含有させる酸無水物の含有比率を大幅に高めることが必要となっていた。
【0014】
なお、この錫の酸化物と酸無水物との反応により少量の酸無水物が消費され、若干の濃度低下は生じるものの、依然として、高い含有比率に留まることになる。幸いにも、ハンダ材表面に存在する酸化皮膜量が僅かであった場合には、酸無水物の消費量も僅かなものとなり、酸無水物の含有比率は、当初の高い含有比率のままとなる。
【0015】
一方、同時に進行する熱硬化性エポキシ樹脂の熱硬化反応は、硬化剤となる酸無水物の含有比率が高いと、酸無水物によるエポキシ環の開環反応の誘起がより高い頻度で開始することになる。その結果として、フラックス処理速度に比べて、相対的に熱硬化がより急速に進行すると、前記錫の酸化物と酸無水物との反応が終了しない間に、硬化反応によるエポキシ樹脂組成物の粘度上昇、流動性の低下が起こる。すなわち、目的とする、フラックス処理が十分に施されない間に、熱硬化性エポキシ樹脂の熱硬化が進行するため、場合によっては、導通不良を生じる事態に至ることもある。加えて、最終的な封止充填する硬化物の樹脂強度、接着強度は、熱硬化性エポキシ樹脂とその硬化剤である酸無水物との比率に依存し、熱硬化温度によって、より好適な比率が定まるが、酸無水物の含有比率がより高くなるにつれ、得られる硬化物の樹脂特性は、所望とする最適な特性と次第に離れたものとなる。一方、熱硬化反応が速やかに進行すると、残余している酸無水物の濃度は急速に低下するため、フラックス活性もそれに伴い低下し、目的とするフラックス活性の維持が困難となる場合も増してくる。
【0016】
実際には、熱硬化温度(リフロー温度)を比較的に高く選択する際には、熱硬化性エポキシ樹脂と酸無水物との開環重合反応を促進する作用を有する硬化促進剤の添加量を抑えて、硬化速度が過度に速くなることの回避を図るものの、熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤となる酸無水物の含有比率を当量比より高くするにつれ、未反応のまま残留する酸無水物の比率が増すことになる。その際、この残余する酸無水物の量が過度になると、封止充填剤としての機能、例えば、高湿・高温条件における耐久性の維持などの観点では、必ずしも好ましいものではない。
【0017】
従って、フラックス処理において、酸無水物を利用するものの、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物中に含有させる酸無水物の含有比率を不要に高くすることなく、所望のフラックス処理を達成でき、また、適正な硬化特性をも得られる液状エポキシ樹脂組成物の開発が、新たな開発の目標となってくる。より具体的には、鉛フリーハンダを利用したバンプ電極を採用することに伴い、熱硬化温度(リフロー温度)を比較的に高く選択する場合でも、熱硬化速度とフラックス処理速度の間において均衡を保つとともに、さらに、鉛フリーハンダの熔融がなされる温度に達した後も、必要とするフラックス活性を維持することが必要となる。その上、鉛フリーハンダを利用する場合、熱硬化温度(リフロー温度)を比較的に高く選択することに付随して、実装用プリント配線基板を加熱する際、基板内の温度ムラに起因する基板の反りを回避する目的で、鉛フリーハンダの熔融温度より若干低い温度まで一旦加熱して、一時保持する予備加熱過程を設けることで、基板内の温度均一化を図る。この予備加熱過程を設ける場合でも、予備加熱過程中における熱硬化を抑制し、全体工程を通して、熱硬化速度とフラックス処理速度の間において均衡を保つとともに、さらに、鉛フリーハンダの熔融がなされる温度に達した後も、必要とするフラックス活性を維持することが必要となる。
【0018】
加えて、封止充填を施して得られるエポキシ樹脂硬化物は、チップ部品とプリント配線基板との隙間を埋め、例えば、周囲温度が変化を繰り返した際にも、その封止特性を維持できることが必要であり、より具体的には、冷熱サイクル試験により、加速的に温度変化による封止特性の劣化を図った際にも、樹脂自体に熱的歪応力によるクラックの発生が抑制され、剥離など封止特性上の不良の発生も抑制できることも望まれている。
【0019】
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、熱硬化性エポキシ樹脂とその硬化剤として酸無水物を利用する液状エポキシ樹脂組成物において、前記酸無水物の有するフラックス活性に加えて、フラックス活性増強成分を付加的成分として添加することで、酸無水物の含有比率を過度に高くしなくとも、所望のフラックス処理を達成でき、また、適正な硬化特性をも得られる新規な組成の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、ならびに、かかる封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を利用する封止充填方法を提供することにある。より具体的には、本発明の目的は、例えば、リフロー温度・熱硬化温度を、所謂鉛フリー錫合金ハンダの熔融温度に適合する、相対的に高い温度に選択して、バンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同一の加熱工程で行った際、熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤となる酸無水物の含有比率は、良好な硬化特性により適する範囲に留めつつ、一方、ハンダとの濡れ不良に起因するハンダ付け不良、導通不良の発生を有効に防止できる、優れたフラックス活性を発揮するため、フラックス活性増強成分を付加的成分として添加してなる新規な組成の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明は、最終的な目的として、ハンダ材として、鉛を含まない錫合金ハンダを利用する際、その鉛フリー錫合金ハンダの種類、そのリフロー温度(熱硬化温度)に依存することなく、前記するフラックス処理効果をも有する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いることで、ハンダとの濡れ不良に起因するハンダ付け不良、導通不良の発生を防止できるフリップチップ実装における封止充填方法、例えば、ハンダ材として、Sn−Ag系合金ハンダを利用する際にも、有効な封止充填方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、その熱硬化を行う温度を、鉛フリー錫合金ハンダが示す200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の熔融温度に応じて、比較的に高い温度に選択した際にも、適度な熱硬化特性を維持するとともに、その熱硬化処理を進める間に、目的とするフラックス処理効果をも発揮できる封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とするためには、特に、熱硬化性エポキシ樹脂に対して、その硬化剤となる酸無水物の含有比率を当量比あるいは、当量比より若干低い比率に留めた際にも、酸無水物自体が主に関与するフラックス活性を、所望のフラックス活性まで増強を図るフラックス活性増強成分として、いかなる成分を付加的成分として含む組成物とすべきか、鋭意検討・研究を進めた。
【0022】
前記のフラックス作用を必要としないならば、例えば、熱硬化温度を250℃程度とする際にも、通常、アンダーフィル(封止充填剤)の用途で推奨される液状エポキシ樹脂と硬化剤の酸無水物との混合比率は、液状エポキシ樹脂の1当量に対して、例えば、酸無水物を1当量未満の若干等量より少ない量、好ましくは0.8当量程度に選択される。その点を考慮すると、フラックス作用をも有する封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、酸無水物自体は、フラックス活性に主に関与させる上では、その過程で消費される酸無水物に相当する量を余剰に含む必要はあるものの、液状エポキシ樹脂と硬化剤の混合比率は、液状エポキシ樹脂の1当量に対して、前記の0.8当量よりは有意に高いものの、1当量を極僅かに超える、できれば、1当量以下、0.9当量以上の範囲に選択し、この比較的に低い含有比率において、所望のフラックス活性を達成できるフラックス活性増強成分を選択することが望ましいとの結論を得た。
【0023】
また、付加的に添加するフラックス活性増強成分は、液状エポキシ樹脂組成物中に添加した際、その熱硬化特性、ならびに得られる硬化物の特性に対しては、本質的に影響を持たない成分であることが望ましい。少なくとも、酸無水物自体が主に関与するフラックス処理の活性増強を図るものの、エポキシ樹脂の硬化剤である酸無水物との反応を過度に促進する、あるいは、逆に阻害することがないものであることが望ましい。更には、フラックス処理、熱硬化処理が終了した時点で、このフラックス活性増強成分が残留していたとしても、得られるエポキシ樹脂硬化物の特性、例えば、絶縁特性などに実質的な影響を有さないものである必要もある。
【0024】
これらの制約条件の下、液状エポキシ樹脂組成物中に含有した際、その熱硬化性、接着性、硬化後の樹脂強度を所望の範囲に維持でき、しかも、バンプ電極と電極などの表面酸化皮膜に対して、一般のフラックス処理と同等の効果を発揮でき、しかも添加濃度を少量としても、酸無水物の示すフラックス活性の増強が可能な成分を探索した。その結果、フラックス活性増強には、プロトン供与能を有する成分が適しており、なお、液状エポキシ樹脂組成物全体に均一に分布させることができる、つまり、液状エポキシ樹脂への混合性(溶解性・分散性)に優れたものである、ジカルボン酸が、これらの要件を満たすものの一つであることを見出した。
【0025】
すなわち、ジカルボン酸、例えば、鎖状のジカルボン酸は、それを構成する骨格の炭化水素鎖部の親油性に因り、液状エポキシ樹脂との相溶性を有するので、室温付近でも、液状エポキシ樹脂への十分な混合性(溶解性・分散性)を示し、また、フラックス処理がなされる温度に達した際には、十分なプロトン供与能を発揮する。従って、ジカルボン酸は、ハンダ材表面の錫の酸化物に対して、その酸素にプロトンを一旦供与して、酸無水物との反応を促進するが、酸無水物に由来するジカルボン酸型の配位子からなる錯体形成、あるいは、酸無水物に由来するジカルボン酸の金属塩へと変換がなされた時点で、再び、プロトンが復して、元のジカルボン酸となる。この触媒的なフラックス活性増強作用のため、通常のフラックス剤のように、それ自体が消費されるものでないため、添加量は少量とできる。
【0026】
一方、フラックス処理が終了すると、その間に徐々に進行している熱硬化反応により生成するエポキシ樹脂と酸無水物の重合物における終端、具体的には、酸無水物に由来するカルボキシ・アニオン種、ならびに、エポキシ環の開環で生成しているカルボカチオン種に、ジカルボン酸に由来するプロトンとカルボキシ・アニオン種とがそれぞれ結合し、その終端に利用される。なお、ジカルボン酸からのプロトン遊離は、平衡反応であり、プロトン遊離をせずジカルボン酸の形状のものが相当割合で存在するものの、硬化物中に均一に分布しており、何らかの不具合の要因ともなる、ジカルボン酸の凝集体を形成することも少ない。勿論、ジカルボン酸自体は、エポキシ樹脂の熱硬化物と比較すると、水に対する溶解度は高いものの、最終的には熱硬化重合物の終端にその大部分が消費され、若干残留するジカルボン酸も、硬化物中に均一に分散される結果、残留するカルボキシ基は、イオン電導性を示すものとして機能せず、硬化物自体の絶縁性に本質的な影響をも与えない。本発明者らは、上記の一連の知見に基づき、液状エポキシ樹脂と硬化剤の酸無水物に加えて、ジカルボン酸を少量添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製し、比較的に高い熱硬化温度で封止充填を実施し、目的とするフラックス処理と同等の効果が有効に達成され、同時に、熱硬化反応自体には実質的な影響がなく、また、得られる熱硬化物の樹脂強度なども、遜色のないものとなることを確認した。本発明者らは、特に、予備加熱過程を設けた上、上記のフラックス処理と、エポキシ樹脂の熱硬化処理を進める場合には、前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を、硬化促進剤により促進することで進行する形態とすることが望ましく、その際、かかる硬化促進剤を粉体状で均一分散させる形態とすることにより、予備加熱過程中では、不要な熱硬化の促進を回避できることを見出し、更なる向上した効果を有する本発明を完成するに至った。
【0027】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤の酸無水物、ならびに、この酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤を必須成分とする液状エポキシ樹脂組成物に、前記酸無水物の有するフラックス活性を増強するため、プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を少量(触媒量)、付加的成分として添加するものであり、
すなわち、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、バンプ電極材料として、融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料を用いているフリップチップ実装の封止充填工程に用いられる液状エポキシ樹脂組成物であって、
前記液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物、ならびに、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤、さらに、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を含んでなり、
前記(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合され、
前記(D)フラックス活性増強成分が、炭素数9〜15のジカルボン酸であり、
前記(B)硬化剤の酸無水物1モル当たり、前記(D)フラックス活性増強成分のジカルボン酸の含有量が、5×10−2〜5×10−1モルの範囲に選択されていることを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物である。その際、(B)硬化剤の酸無水物に対する前記(C)硬化促進剤として、
融点が100℃以上の範囲に選択されるイミダゾー類を、粉体状で均一分散させる形態で含むことが好ましい。さらに、その他の副次的な添加成分として、応力緩和剤、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤、チキソ剤から選択する1種以上の添加成分をも含むことを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とすることもできる。
【0028】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂は、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂の群から選択される1種以上の熱硬化性エポキシ樹脂であることが好ましい。また、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂の1当量に対して、(B)硬化剤の酸無水物を0.9〜1.1当量含むことが好ましい。さらに、前記(C)の分散型硬化促進剤として、1位の窒素原子上に置換を有するイミダゾール環に対する酸付加塩の形成に伴うイミダゾリウムの含有する酸付加塩型イミダゾール類を選択することも望ましい。一方、前記ジカルボン酸は、ω,ω’−直鎖炭化水素ジカルボン酸であり、その炭素数は、C10〜C13の範囲に選択されていることが好ましい。
【0029】
加えて、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、(B)硬化剤の酸無水物として、飽和な環状炭化水素ジカルボン酸由来の分子内酸無水物を用いることが、得られるエポキシ樹脂硬化物の示す柔軟性、あるいは、靭性の強化の目的では好ましい。また、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂として、
熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含むことを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とすることが、得られるエポキシ樹脂硬化物の示す柔軟性、あるいは、靭性の強化の目的では好ましい。
【0030】
なお、前記(C)硬化促進剤として、融点が100℃以上の範囲に選択されるイミダゾー類を利用する際に、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂に由来する、一つのエポキシ基当たり、前記(C)硬化促進剤のイミダゾール類の添加比率を、0.5×10−3〜10×10−3分子の範囲に選択することがより好ましい。
【0031】
加えて、本発明は、上記する構成を有する本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の有効な利用法として、封止充填の方法の発明をも提供し、
すなわち、本発明の封止充填の方法は、フリップチップ実装における封止充填の方法であって、
(1)基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品とを融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を用いて両電極間の相互導通をとるべく、前記プリント配線基板上の所定の領域に前記チップ部品を配置後、前記バンプ電極と電極間の接触を図る工程、
(2)前記バンプ電極と電極間の接触を図る工程後、またはその工程と併せて、前記プリント配線基板とその上の所定の領域上に配置される前記チップ部品の間隙に、前記接触を図ったバンプ電極と電極とを被覆するように、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を満たす充填工程、
(3)次いで加熱して、前記所定の領域の間隙に充填した前記液状エポキシ樹脂組成物における、前記エポキシ樹脂の熱硬化を進めるとともに、前記液状エポキシ樹脂組成物が被覆する前記ハンダ製のバンプを熔融させる工程、
所定時間の加熱後、冷却して、一旦熔融したハンダの再固化を行い、バンプ電極と電極とをハンダ付け固着・接合させ、同時に熱硬化したエポキシ樹脂により封止充填を完了する工程、
上記(1)〜(3)の一連の工程を有する、
封止充填剤として、上記いずれか形態を有する本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする封止充填の方法である。特に、本発明の封止充填の方法は、前記のハンダ材料は、Sn−Ag系合金であることを特徴とする封止充填の方法として実施すると好ましいものとなる。
【0032】
その際、本発明の封止充填の方法において、前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、
引き続き、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設け、
前記予備加熱過程の温度を、110℃以上、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点未満の範囲に選択し、
前記予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上に選択することができ、前記プリント配線基板における加熱ムラを低減する上でより望ましい。
【0033】
さらには、本発明は、かかる本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、ならびに、それを利用する封止充填の方法の発明が最終目的とする、封止充填された電子部品の発明をも当然に提供し、
すなわち、本発明にかかる電子部品は、プリント配線基板上に、チップ部品を融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用して、フリップチップ実装し、その間に封止充填がなされてなる実装組み立て済み電子部品であって、
前記プリント配線基板は、基板用電極を有するプリント配線基板であり、前記チップ部品は、チップ部品用電極を有するチップ部品であり、そのフリップチップ実装において、両電極間の相互導通は、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を用いてなされており、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用するフリップチップ実装と封止充填とが、前記本発明にかかる封止充填の方法でなされていることを特徴とする電子部品である。その際、通常、本発明にかかる電子部品は、プリント配線基板上にフリップチップ実装、封止充填される前記チップ部品の少なくとも一つは、半導体素子チップであることを特徴とする電子部品とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、バンプ電極の材料として、鉛を含まない錫合金ハンダ、所謂、鉛フリーハンダ、例えば、Sn−Ag系合金ハンダなどを利用している半導体素子の組み立てを行う際、その熱硬化を行う温度を、鉛フリー錫合金ハンダの熔融温度よりも高い温度に選択し、上述するバンプ電極と電極間の接合形成(ハンダ付け)とアンダーフィル(封止充填剤)の硬化接着を同一の工程で行う方法において、その本来の効果を発揮するものである。
【0035】
熱硬化性エポキシ樹脂に対し、その熱硬化を誘起する手段として、特に、酸無水物を硬化剤として用いることで、この酸無水物の金属酸化物に対する反応を主なフラックス活性としても利用している。加えて、前記酸無水物のフラックス活性の増強を図る目的で、付加的成分として、プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を添加して、錫合金ハンダ表面の酸化皮膜、具体的には、錫の酸化物に対する酸無水物の反応を触媒的な促進を図っている。具体的には、プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂中に溶解可能なジカルボン酸を利用している。熱硬化(リフロー)のため加熱する際、熱的に前記ジカルボン酸のカルボキシ基から、錫の酸化物の酸素原子にプロトンを供与することで、酸無水物が錫の酸化物と反応して、酸無水物に由来するジカルボン酸型の配位子からなる錯体形成、あるいは、酸無水物に由来するジカルボン酸の金属塩へと変換する過程を促進している。なお、前記の反応後、一旦錫の酸化物の酸素原子に供与されていたプロトンは、前記の一連の反応を終えると、再び、元のカルボキシ基に復し、酸解離していないジカルボン酸となることで、酸触媒として機能するものである。加えて、前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応は、添加されている硬化促進剤によって、その反応を促進することで進行する構成とすることで、特に、予備加熱過程を設けた上、上記の酸無水物によるフラックス処理と、エポキシ樹脂の熱硬化処理を進める場合にも、予備加熱過程中における、不要な熱硬化の進行を抑制するものである。さらには、液状エポキシ樹脂組成物中において、硬化促進剤を粉体状で均一分散させる形態とすることにより、予備加熱過程の間に、液状エポキシ樹脂組成物中に硬化促進剤が溶解して、均一に分布させることで、予備加熱過程を終え、ハンダ熔融加熱過程に達した時点では、所望の酸無水物によるエポキシ環の開環反応が、エポキシ樹脂組成物全体で均一に進行することを可能としている。
【0036】
以下に、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、その調製方法、ならびに、この封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いた封止充填の手順について、より詳しく説明する。
【0037】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分として、エポキシ樹脂硬化物の骨格構成成分となる、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物を含み、この両者を均一に混合した液状エポキシ樹脂組成物中に、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤を分散状態で配合し、さらに、付加的成分として、(C)フラックス活性増強成分に利用するジカルボン酸として、炭素数9〜15のジカルボン酸を選択し、その含有量を、酸無水物1モル当たり、5×10−2〜5×10−1モルの範囲にしたものである。
【0038】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、熱硬化物を構成する必須成分の(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂としては、封止充填剤に利用可能なエポキシ樹脂である限り、その種類に制限はない。硬化時の樹脂強度、接着性などから、例えば、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂などが、封止充填剤においては汎用されている。本発明においても、前記のビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂の群から選択するとより好ましい。その際、単一の樹脂化合物を利用することも、二種以上の樹脂化合物を混合して利用することもできる。より具体的には、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテルとして、エピコート828(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量190)など、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテルとして、エピコート154(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量178)など、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステルとして、エピコート871(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量430)、エポミックR540(商品名;三井化学社製:エポキシ当量195)など、脂環式エポキシ樹脂として、セロキサイド2021(商品名;ダイセル化学工業社製:エポキシ当量135)などが使用される。
【0039】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、得られる熱硬化物の可撓性、柔軟性を増進するためには、用いられる必須成分の(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂として、熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含む組成とすることが特に有効である。なかでも、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理を施したエポキシ樹脂を部分的に利用することが望ましい。微粒子状で分散されている少量の熱可塑性樹脂は、比較的に高温で硬化を行う本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において、その硬化の際にも、均一な分散状態を維持でき、得られる硬化物全体に、かかる熱可塑性樹脂微粒子に由来する強靭性が付与されたものとできる。同じく、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施したエポキシ樹脂を部分的に利用すると、得られる硬化物全体が、均一にかかる熱可塑性樹脂分子に由来する強靭性が付与されたものとできる。
【0040】
微粒子状の熱可塑性樹脂の分散を行ったエポキシ樹脂としては、例えば、熱硬化を行う際、かかる微粒子状の熱可塑性樹脂の形状を保持するように、コアシェル型の微粒子とし、コア部にゴム質の熱可塑性樹脂を、それを覆うシェル部にガラス転移点Tgがより高い熱可塑性樹脂を用いたものが、かかる目的に好適である。一例として、コアシェル型の平均粒径0.5μmゴム成分微粒子を分散したエポキシ樹脂であるYR−628(商品名;東都化成社製、 エポキシ当量: 225)や、EPR−21(商品名;旭電化工業社製、 エポキシ当量: 210)を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施したエポキシ樹脂としては、ニトリルゴム分子を付加修飾して変性を施したものなどが挙げられる。一例として、CTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 230)、YR−450(商品名;東都化成社製、 エポキシ当量: 450)、NBR変性エポキシ樹脂であるEPR−4026(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量:280)、EPR−1309(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 300)、ならびに、樹脂骨格に柔軟性を示すアルキレン鎖を含むエポキシ樹脂であるEPR−4000S(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 260)、エピコート871(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量430)、エピコート872(商品名;ジャパンエポキシレジン社製:エポキシ当量650)を挙げることができる。これら微粒子状の熱可塑性樹脂の分散や熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施した液状エポキシ樹脂は、一般に液粘性が増すため、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において必要とする、液流動性を維持する目的で、低粘度の液状エポキシ樹脂成分と混和し、全体として目的とする液粘度の範囲に調整することが好ましい。その際、混和比率は、室温付近において、充填すべき部位に均一な塗布、充填が可能となる樹脂組成物全体としての粘度範囲に応じて、適宜選択することができる。なお、利用される低粘度の液状エポキシ樹脂成分の一例として、ビスフェノールF型の低粘度の液状エポキシ樹脂である、EXA−835LV(商品名;大日本インキ化学工業社製、 エポキシ当量: 165)などを挙げることができる。
【0041】
かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を部分的に用いることで、得られる熱硬化物全体として、熱可塑性樹脂に由来する強靭性、柔軟性、可撓性の向上効果が得られ、また、熱硬化性エポキシ樹脂本来の接着性の利点も保持するものとなる。特に、氷点以下の温度へと冷却した際、冷却温度とともに、急速に脆さを増す熱硬化性エポキシ樹脂の難点は、付加されている熱可塑性樹脂成分に起因する柔軟性、靭性によって、大幅に改善される。結果として、得られる熱硬化物は、靭性を増し、特に、低温脆性が改善された、接着性、可撓性に富み、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下がより緩和されたものとできる。
【0042】
例えば、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散を行ったエポキシ樹脂を利用する際には、微粒子状の熱可塑性樹脂の含有比率が増すにつれ、低温脆性の改善は図られるものの、含有比率が過度に高くなると、エポキシ樹脂硬化物自体の優れた接着性、耐湿性、耐熱性に影響を及ぼすことをも考慮すると、液状のエポキシ樹脂組成物全体、100質量部当たり、それに分散されて含まれる微粒子状の熱可塑性樹脂は、微粒子の粒子径にも依存するが、多くとも40質量部を超えない範囲とすることが望ましい。エポキシ樹脂硬化物自体の優れた特性を維持しつつ、有意な低温脆性の改善を図る上では、液状のエポキシ樹脂組成物全体、100質量部当たり、それに分散されて含まれる微粒子状の熱可塑性樹脂の総量を、微粒子の粒子径にも依存するが、好ましくは2〜30質量部の範囲、より好ましくは4〜20質量部の範囲に選択することが望ましい。なお、前記の含有比率において、目標とする低温脆性の改善が達成される限り、微粒子状の熱可塑性樹脂の総量を可能な限り、低く抑えることがより望ましい。また、熱可塑性樹脂分子の付加修飾など、付加変性を施したエポキシ樹脂を利用する際にも、硬化物中に占める、熱可塑性樹脂分子に相当する部分の比率、例えば、変性により付加されたニトリルゴム分子に由来する部分の総和は、前記の含有比率に相当するものとすることが望ましい。例えば、付加変性を施したエポキシ樹脂自体を調製する際に用いる原料に基づき、熱可塑性樹脂分子に相当する部分の比率を合算して、かかる含有比率とすることもできる。
【0043】
(B)の硬化剤として利用できる酸無水物としては、熱硬化性エポキシ樹脂の硬化を引き起こすジカルボン酸の酸無水物が一般に利用できる。この酸無水物は、エポキシ樹脂と重付加型の反応を起こし、樹脂硬化を達成する。例えば、脂肪族酸無水物、例えば、ポリアゼライン酸無水物(PAPA)、ドデセニル無水コハク酸(DDSA)など、脂環族酸無水物、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、無水メチルナジック酸(NMT)など、芳香族酸無水物、例えば、無水トリメット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)など、ハロゲン系酸無水物、例えば、無水ヘット酸(HET)、テトラブロモ無水フタル酸(TBPA)などを、重付加型の酸無水物硬化剤の一例として挙げることができる。
【0044】
なかでも、用いられる酸無水物自体では、−CO−O−CO−を含む環構造が5員環を構成するとより好ましい。熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として利用されている酸無水物のうち、前記の構造を有するものとして、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(メタノテトラヒドロフタル酸)の酸無水物あるいはその炭化水素環上に置換を有する誘導体、無水フタル酸または無水フタル酸のベンゼン環上に置換を有する誘導体、無水コハク酸または無水コハク酸の炭化水素鎖上に置換を有する誘導体からなる酸無水物などが挙げられる。なお、本発明において好適に利用される、無水テトラヒドロフタル酸や無水ヘキサヒドロフタル酸の誘導体には、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(商品名B−650;大日本インキ化学工業社製)など、無水コハク酸の誘導体には、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
【0045】
例えば、前記のビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂のいずれかをエポキシ樹脂に選択する際、その硬化剤として機能する酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸またはエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(メタノテトラヒドロフタル酸)の酸無水物あるいはその炭化水素環上に置換を有する誘導体、無水フタル酸または無水フタル酸のベンゼン環上に置換を有する誘導体、無水コハク酸または無水コハク酸の炭化水素鎖上に置換を有する誘導体のいずれかを選択すると一層好ましい組み合わせとなる。
【0046】
加えて、下記する一般式(I):
【0047】
【化1】
(式中、R2は、一価の鎖式炭化水素基であり、R3は、一価の鎖式炭化水素基であり、R6は、水素原子または鎖式炭化水素基である)で示される環上に置換を有するテトラヒドロフタル酸型の二カルボン酸の分子内酸無水物、あるいは、一般式(II):
【0048】
【化2】
(式中、R2は、一価の鎖式炭化水素基であり、R3は、一価の鎖式炭化水素基である)で示される環上に置換と架橋鎖を有するテトラヒドロフタル酸型二カルボン酸の分子内酸無水物など、相対的な嵩高い6員環を有するものも、好適な酸無水物の一例として挙げられる。
【0049】
加えて、得られるエポキシ樹脂硬化物において、その可撓性を増進するため、用いられる酸無水物自体の炭素骨格内に不飽和炭素結合を含まないものを用いることができる。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として利用されている酸無水物のうち、−CO−O−CO−を含む環構造が5員環を構成し、しかも、この5員環は、環状の炭化水素骨格と縮合する形状を有し、その際、環状の炭化水素骨格は、その環内に不飽和炭素結合を含まないものが好適である。より具体的には、飽和な環状の炭化水素二カルボン酸の分子内酸無水物であり、−CO−O−CO−を含む環構造が5員環を構成するものが好ましい。一例として、先に述べた脂環族酸無水物、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)、無水メチルナジック酸(NMT)などに含まれる、環状の炭化水素骨格中の不飽和炭素結合に水素添加を施した、飽和な脂環族酸無水物が、かかる目的ではより好ましく、水素添加ナジック酸(HNA)の酸無水物を代表例として挙げることができる。
【0050】
下記する飽和な環状炭素骨格を有する水素添加ナジック酸(HNA)の酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸由来の酸無水物:
【0051】
【化3】
と同様に、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナン)骨格を含む、飽和な環状炭素骨格を有する酸無水物である、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸由来の酸無水物:
【0052】
【化4】
あるいは、分子内に鎖状のシロキサン構造(−(H2SiO)n−SiH2−)を含んでいる、末端にビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸由来の酸無水物構造が置換したポリシロキサン:
【0053】
【化5】
なども、利用可能な飽和な脂環族酸無水物に含まれる。なお、かかるビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸由来の酸無水物のように、ジカルボン酸のカルボキシ基が存在する炭素原子に対して、その隣接する炭素原子との間で炭素−炭素二重結合を構成する上で、立体障害となる炭素骨格を有するものでは、より高温において熱硬化反応を行う際、かかるジカルボン酸からの熱的な脱炭酸に伴う二酸化炭素の生成もなく、その点にも、利点を有している。
【0054】
前記酸無水物はその大半は硬化剤として消費されるが、フラックス成分として、若干量が消費されるので、その消費量を考慮し、液状エポキシ樹脂の1当量に対して、例えば、酸無水物を0.8当量以上、好ましくは、0.9当量以上、多くとも、若干等量を超える量、具体的には、1.1当量を超えない範囲、0.9〜1.1当量の範囲に選択することがより好ましい。
【0055】
なお、酸化皮膜の形成が多い劣悪な条件では、より高いフラックス活性が必要となり、その点を考慮して、前記(B)の硬化剤の酸無水物の添加率範囲上限に近い値を選択すると好ましい。現実的には、過度の自然酸化が生じないように当業者が通常の注意を払う限り、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂の1当量に対して、酸無水物を0.85〜0.95当量含む組成範囲に選択しても、必要とされるフラックス活性に伴う消費量を賄い、更に残る酸無水物の量は、熱硬化に適当な0.8当量〜0.9当量の範囲に概ね収まる。なお、バンプ電極間の間隔が狭くなることも考えあわせると、表面酸化皮膜の除去で消費される酸無水物の割合が相対的に増す傾向にある。その際には、安全を見て、当初の含有比率をやや高め、例えば、1.1当量までに選択することで、フラックス作用を発揮して消費される量を除いても、熱硬化に適当な0.8当量〜1.0当量の範囲により確実に収めることができる。
【0056】
前記する種々の酸無水物から、上記(A)の各種液状の熱硬化性エポキシ樹脂に応じて選択される酸無水物を(B)の硬化剤として用い、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂と共に開環重合を起こさせ、熱硬化を起こさせる。その際、熱硬化温度が比較的に低い場合は、エポキシ環の開環を適度に促進する目的で、(C)の硬化促進剤を少量添加する。すなわち、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物では、(B)の硬化剤として酸無水物は、適正な重合の伸長に適する比率であるものの、その熱硬化の開始に、(C)の硬化促進剤の作用を利用し、その添加量を硬化温度に応じて選択することで、全体的な熱硬化速度を所望の範囲に調整することが容易になる。なお、(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合する、具体的には、(C)の硬化促進剤は、室温では、粉末状とした上で、液状のエポキシ樹脂組成物全体中に、粉末状のまま、均一に分散する形態で配合する。
【0057】
この(C)の硬化促進剤は、エポキシ基の開環反応を促進し、酸無水物自体と反応を起こさないものである限り、特に制限はなく、酸無水物とアミドの形成を起こさないアミン化合物、ルイス酸、ならびにイミダゾール類が利用できる。前記の要件を満たすアミン化合物としては、具体的には、第三級アミン、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)など、ルイス酸としては、例えば、BF3・モノエチルアミン、BF3・ピペラジンなどを挙げられる。また、イミダゾール類としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EM124)、2−ヘプタデシルイミダゾール(HD12)など、これらを一例として挙げることができる。イミダゾール類の中でも、粉末状のまま、均一に分散する形態に適するものは、その融点が100℃以上であり、少なくとも、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点より有意に低いものである。より具体的には、予備加熱工程を設ける場合に適用する上では、その融点が前記予備加熱工程の温度と同程度、例えば、融点が140℃以上、200℃以下の範囲のイミダゾー類を選択することがより好ましい。例えば、イミダゾール類のうち、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとるものは、融点の上昇がなされ、前記の目的に適合している。少なくとも融点が100℃以上、好ましくは、140℃以上、200℃以下の範囲のイミダゾー類として、かかるイミダゾリウム構造をとる酸付加塩である、1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテイト(トリメリット酸との付加塩型イミダゾール、 融点 149℃、 分子量 485.7)、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテイト(融点 178℃、 分子量 407.4)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール・トリメリット酸塩(融点 176℃、 分子量 444.4)、さらには、2−フェニル−4−メチル−5−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(融点 192℃、 分子量 188.3)などを挙げることができる。例えば、イミダゾリウム構造をとる酸付加塩を用いると、温度上昇とともに、液状のエポキシ樹脂組成物中に徐々に溶解が進むが、粉末状のまま分散しているため、その融点より低い温度では、溶解速度は制限されているものの、融点を超える温度に達すると、急速に溶解均一化が進行する。さらに、その溶解状態に至った時点で、酸付加塩を構成している酸を遊離し、イミダゾール塩基となり、硬化促進剤としての機能が発揮される。すなわち、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点よりも高く選択される熱硬化温度に達した際には、硬化促進剤としての機能が十分に発揮され、
これら硬化促進剤の内でも、イミダゾール類は、付加的成分として添加されているジカルボン酸と含有される窒素原子間での複合体(付加塩)を形成する懸念が少なく、本発明の目的により適するものである。特には、融点が140℃以上、200℃以下の範囲のイミダゾー類を選択し、粉末状のまま、均一に分散する形態とすることがより好ましい。また、分散型硬化促進剤として配合する際、その分散粒子形態の平均粒子径を0.5〜10μmの範囲、好ましくは、1〜5μmの範囲に選択することが望ましい。
【0058】
硬化促進剤として、前記するアミン化合物、ルイス酸、ならびにイミダゾール類などを用いる際には、これら求核性化合物のエポキシ環の開環促進作用により、反応が誘起・促進された、エポキシ樹脂と酸無水物との重付加反応により、樹脂鎖の延長がなされる。従って、熱硬化性エポキシ樹脂の1分子当たり、0.001〜0.02分子の硬化促進剤を混合することが好ましい。具体的には、硬化促進剤として、例えば、エポキシ当量190のエポキシ樹脂の100g当たり、イミダゾール類では0.5〜10mmol(ミリモル)の範囲に選択するとよい。硬化促進剤個々の分子量にもよるが、例えば、液状エポキシ樹脂の100質量部当たり、0.1〜2質量部の範囲で添加することもできる。なお、硬化処理温度を高くするに伴い、硬化促進剤の添加比率を下げても、硬化剤の酸無水物との反応は進行するので、この熱硬化反応と平行して進行されるフラックス処理の反応と、その反応速度の均衡が図られるように、硬化処理温度を高く選択する際には、硬化促進剤の添加比率を相対的に下げ、液状エポキシ樹脂の100質量部当たり、0.1〜1.2質量部の範囲の範囲とすることがより望ましい。あるいは、硬化処理温度を高く設定する場合、硬化促進剤として、融点が100℃以上、好ましくは、140℃以上200℃以下の範囲に選択されるイミダゾー類を選択するとともに、(A)の熱硬化性エポキシ樹脂に由来する、一つのエポキシ基当たり、硬化促進剤として、該イミダゾール類の添加比率を、0.5×10−3〜10×10−3分子の範囲、さらに好ましくは1.0×10−3〜6×10−3分子の範囲に選択することがより好ましい。
【0059】
仮に、融点が200℃を超えるイミダゾー類であっても、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に達した時点で、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に溶解可能であれば、同様に好適に分散型硬化促進剤として利用できる。
【0060】
以上に説明した、熱硬化反応に関与する主要成分を均一に混合した液状エポキシ樹脂組成物中に、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分としての機能を有する、ジカルボン酸を少量添加する。
【0061】
前記ジカルボン酸は、その融点は、液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度より低く、常温では固体であり、その沸点は、前記液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度よりも高いことが好ましい。加えて、液状エポキシ樹脂組成物中の主成分であるエポキシ樹脂と均一に混和できる、相溶性に富むジカルボン酸が好ましい。
【0062】
すなわち、ジカルボン酸は、酸無水物と同様に、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に溶解・混和した状態で使用されるが、熱硬化の進行とともに、溶媒としても機能している液状エポキシ樹脂自体、重合を起こし、溶媒として機能する液状エポキシ樹脂量が減少していく際にも、ジカルボン酸が液状エポキシ樹脂組成物中に均一な溶解状態を維持することが好ましい。
【0063】
従って、用いるジカルボン酸は、その沸点は、液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度よりも有意に高いことがより好ましい。熱硬化とともに、フラックス処理も進行するが、仮に、熱硬化温度よりも、用いるジカルボン酸の沸点が低いと、液状エポキシ樹脂組成物中に溶解しているので、沸点上昇が生じて、実効的に気泡を生じて気化するには至らないものの、蒸散が進み、残留濃度が減少すると、目標とするフラックス活性増強作用を達成できない事態も生じる。用いるジカルボン酸の沸点が、液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化温度よりも有意に高いならば、前記の蒸散に伴うフラックス活性増強作用の低下は、問題とならないものとなる。また、熱硬化が完了した時点で、重合反応の終端において消費されず、なお、残留しているジカルボン酸は、その融点が熱硬化温度よりも低いと、硬化物の重合体分子間に浸漬し、均一に分散した状態がより確実に達成できる。勿論、熱硬化の際、気化したジカルボン酸が気泡を形成して、ボイドの発生させる要因ともならない。
【0064】
加えて、ジカルボン酸は、その分子形状によっては、加熱する間に、自らの分子内で、二つのカルボキシ基間で脱水縮合が生じ、酸無水物へと変換されることもある。具体的には、生成する環状無水物が、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸のように、5員環を形成するもの、あるいは、グルタル酸無水物のように、6員環を形成するものは、加熱温度が増すに従って、脱水縮合による酸無水物へと変換が進行する。その際、フラックス活性増強作用を有するジカルボン酸の含有比率は結果として減少する、すなわち、フラックス活性増強作用の低下が引き起こされる。生成する酸無水物自体は、エポキシ樹脂に対する硬化剤として機能するものが多く、問題となることはないものの、当初添加するジカルボン酸量を予め増すことが必要となり、決して好ましいものではない。加えて、この5員環、あるいは、6員環の環状酸無水物を生成するに付随して、副生物の水分子が気化し、気泡を形成すると、ボイド発生の要因となり、封止充填剤の機能上好ましものではない。
【0065】
それとは別に、ジカルボン酸のうち、水に対する溶解性に富む、フマル酸(trans−ブタン二酸)、シュウ酸(エタン二酸)、マロン酸(プロパン二酸)などは、前記環状酸無水物を生成する懸念はないものの、封止充填剤の耐水性、あるいは、高湿環境における保護特性の観点では、硬化物表面に存在した際、水に溶解して、酸として機能する懸念があり、その利用範囲は制限がある。
【0066】
対象とするハンダ材料は、その融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリーハンダであるため、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の熱硬化処理の温度は、鉛フリーハンダの融解温度よりは有意に、例えば10℃程度以上は高いものの、通常、高くとも260℃を超えない範囲に選択し、フラックス処理を併せて実施する。従って、かかる熱硬化処理の温度を、230℃〜260℃の範囲に選択する際にも、以上の種々の条件を全て満たし、制約なく、好適に利用可能なジカルボン酸は、ジカルボン酸の融点は、例えば、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%のSn−Ag系ハンダの融解温度(217℃)よりも有意に低く、沸点は、かかるSn−Ag系ハンダの融解温度よりも十分に高く、また、水に対する溶解性が乏しいもので、加えて、含まれる二つのカルボキシ基の間に、少なくとも、炭素数で4以上の炭素鎖長に相当する隔たりがある構造を有するジカルボン酸である。
【0067】
例えば、飽和脂肪族ジカルボン酸であれば、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖(HOOC−(C)n−COOH)を母体鎖とする際、この鎖長(n+2)の母体鎖は、少なくとも、炭素数6以上の鎖長を有するもの、好ましくは、炭素数9〜15の範囲の鎖長を有するもの、より好ましくは、炭素数10〜13の範囲の鎖長を有するものを、好適な例として挙げることができる。なお、この母体鎖に対して、若干数の分岐鎖が存在するものであっても、その融点が極端に上昇するものでなければ、同様に好適なものとなる。飽和脂肪族ジカルボン酸のなかでも、側鎖を持たない、直鎖のアルカン二酸であり、その炭素数は、C9〜C15の範囲、より好ましくは、C10〜C13の範囲であると、より好ましいものとなる。
【0068】
また、不飽和脂肪族ジカルボン酸においても、前記飽和脂肪族ジカルボン酸に対応する、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖を母体鎖(HOOC−(C)n−COOH)が、炭素数9〜15の範囲の鎖長を有するもの、より好ましくは、炭素数10〜13の範囲の鎖長を有するものを、好適な例として挙げることができる。この場合も、その母体鎖に対して、若干数の分岐鎖が存在するものであっても、その融点が極端に上昇するものでなければ、同様に好適なものとなる。なお、母体鎖中に存在する−CH=CH−などの炭素−炭素二重結合における絶対配置によっては、二つのカルボキシ基が互いに近接して、分子内で酸無水物の生成が可能となる場合もあるが、この種の環状無水物が容易に生成する配置は、好適な範囲からは除かれる。不飽和脂肪族ジカルボン酸においても、側鎖を持たない、直鎖のジカルボン酸であり、その炭素数は、C9〜C15の範囲、より好ましくは、C10〜C13の範囲であると、より好ましいものとなる。
【0069】
さらには、上記の鎖状の脂肪族ジカルボン酸における、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖を母体鎖に代えて、鎖中に環構造を含み、その実効的な鎖長が炭素数6以上の鎖長に相当するものの、好適なジカルボン酸となる。具体的には、含まれる環構造としては、芳香環、例えば、フェニレン基(−C6H4−)など、あるいは、脂環炭化水素に由来する環構造、例えば、シクロヘキサンジイル(−C6H10−)などが挙げられる。なお、これらの環構造;Rに直接、一つのカルボキシ基が結合するものでなく、HOOC−(C)n1−R−(C)n2−COOH型の環構造上の二つの側鎖にそれぞれカルボキシ基が存在する形状のものがより好ましい。
【0070】
なお、飽和脂肪族ジカルボン酸であれば、母体鎖の炭素数が15を超えると、炭素数が増しても、然程上昇しなくなり、添加比率が少ない際には、母体鎖の炭素数が40程度に達するものであっても、利用可能なものとなる。なお、不必要に炭素数の大きなものとすることは好ましいものとは言えず、一般に、母体鎖の炭素数が15以下の範囲に留めることが望ましい。
【0071】
また、不飽和脂肪族ジカルボン酸においても、前記飽和脂肪族ジカルボン酸に対応する、二つのカルボキシ基を両端に含む鎖を母体鎖(HOOC−(C)n−COOH)が、炭素数9以上の範囲の鎖長を有するものが好ましく、添加比率や処理温度の選択に応じて、場合によっては、母体鎖の炭素数が40程度であっても、利用可能なものとなる。なお、同じく、不必要に炭素数の大きなものとすることは好ましいものとは言えず、一般に、母体鎖の炭素数が15以下の範囲に留めることが望ましい。
【0072】
加えて、不飽和脂肪酸にアクリル酸などの短鎖のα,β−不飽和カルボン酸が付加した、炭素数20程度までのダイアシッド(付加ジカルボン酸)や、長鎖の不飽和カルボン酸が相互に付加した炭素数38〜44のダイマー酸なども、鉛フリーハンダが対象となる場合には、利用可能となる。なお、前記炭素数38〜44のダイマー酸は、若干のモノマー酸、トリマー酸が混入するものであるが、一般に、室温付近でも、高粘度の液状を示すが、これら混入物を含め、その沸点は、前記鉛フリーハンダの融解温度よりは十分に高いものである。
【0073】
ジカルボン酸の添加比率は、酸無水物に応じて、また、フラックス処理を行う温度をも考慮して、適宜選択するものである。つまり、フラックス処理を行う温度を高く選択する際には、主な役割が硬化剤である酸無水物は、熱硬化に急速に消費されるため、フラックス処理速度をかかる熱的な硬化速度と匹敵するものとする上では、ジカルボン酸の添加比率を増す必要がある。一方、フラックス処理を行う温度をそれほど高くしない場合には、熱的な硬化速度もそれほど速くなっていないので、ジカルボン酸の添加比率が低くとも、フラックス処理速度をかかる熱的な硬化速度と匹敵するものとすることができる。
【0074】
鉛フリーハンダ材料としては、その融点は、高くとも、230℃を超えない範囲のものが主に利用されており、例えば、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%のSn−Ag系ハンダの融解温度は217℃であり、その際、熱硬化処理の温度は、230℃以上、250℃以下の範囲に選択する。従って、本発明においては、前記熱硬化処理の温度に対応させて、一般に、(B)硬化剤の酸無水物の1モルに対して、前記ジカルボン酸を5×10−2〜5×10−1モルの範囲となる量、好ましくは、5×10−2〜3×10−1モルの範囲となる量に選択することが好ましい。あるいは、樹脂組成物全体に対して、ジカルボン酸の含有量が5〜15質量%の範囲に選択することがより望ましい。
【0075】
なお、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物においては、鉛フリー錫合金ハンダ材に対するフラックス処理は、主に、上記する付加的成分のジカルボン酸が示すフラックス活性増強作用を活用し、酸無水物を利用して行われるものであるが、場合によっては、更にフラックス活性増強作用を示す成分を副次的に添加することができる。例えば、この副次的に添加することが可能な、フラックス活性増強作用を示す成分としては、アクリル酸などを付加した酸変性ロジン、例えば、アクリル変性ロジン、あるいは、アミン化合物の塩基性窒素原子上にハロゲン化水素付加塩を形成してなるアミンのハロゲン化水素付加塩など、加熱した際、初めてプロトン供与能を示すものを、補足的な量を添加して利用することもできる。
【0076】
すなわち、本発明において、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分として、上記のジカルボン酸を主に利用するが、補足的に、ジカルボン酸の含有比率を超えない範囲で、例えば、高い沸点を有するモノカルボン酸をも用いることもできる。具体的には、熱硬化処理の温度を、230℃〜260℃の範囲に選択する際にも、補足的なフラックス活性増強成分として、好適に利用可能なモノカルボン酸は、かかるモノカルボン酸の融点は、例えば、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%のSn−Ag系ハンダの融解温度(217℃)よりも有意に低く、沸点は、かかるSn−Ag系ハンダの融解温度よりも十分に高く、また、水に対する溶解性が乏しいものである。前記の条件を満たし、補足的なフラックス活性増強成分として、好適に利用可能なモノカルボン酸の一例は、樹脂酸の主成分である、アビエチン酸、ピマル酸などのジテンペル酸C19H29COOH等を水素添加処理したもの、あるいは、これらのジテンペル酸を主成分とするロジンを水素添加処理した水添ロジンなどを挙げることができる。これらの高い沸点のモノカルボン酸をも利用する際には、ジカルボン酸の含有比率に対して、モノカルボン酸の含有比率が有意に低い範囲、例えば、ジカルボン酸10質量部に対して、モノカルボン酸は5質量部を超えない範囲に選択することがより望ましい。少なくとも、ジカルボン酸1分子に対して、モノカルボン酸が1/2分子を超えない範囲に選択することがより望ましい。
【0077】
一方、前記モノカルボン酸は、副次的なフラックス活性増強成分としての機能に加え、エポキシ樹脂の硬化反応に伴う重合鎖長の延長に際し、末端封止の役割をも有する。その結果、フラックス処理後、ハンダ付けとエポキシ樹脂の熱硬化が進む過程において、得られる架橋・重合構造における鎖長の延長が過度に進み、樹脂粘度が必要以上に増すことを回避する作用をも示す。加えて、過度な鎖長の延長に至らないので、得られる熱硬化体の低温における脆性の改善にも、寄与を示すものとなる。かかる補足的に添加されるモノカルボン酸も、樹脂組成物中に均一に溶解することが望ましく、加えて、得られる熱硬化体において、その吸水率を増す、あるいは、末端封止を行った際、かかるモノカルボン酸の炭素骨格自体がTgの上昇の要因となるなどの不具合を引き起こさないものが望ましい。従って、例えば、分子内に付加重合可能な不飽和炭素結合や、熱分解を引き起こす部位を有するロジンに対して、予め水添処理を施した水添ロジンは、前記の観点でも好適なモノカルボン酸の一つとなる。また、エポキシ樹脂における溶解特性に優れ、高沸点でありつつ、高温領域における高いプロトン供与能も示す、酸性度の高い安息香酸類、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ブロモ安息香酸などを用いることもできる。
【0078】
なお、酸無水物の含有比率が増すにつれ、酸無水物自体にフラックス活性が増すので、ジカルボン酸の添加比率を低くしても、所望のフラックス処理速度が達成できる。一方、酸無水物の含有比率が低い際には、前記の上限値を超えない範囲で、ジカルボン酸の添加比率をより高い範囲に選択し、所望のフラックス処理速度となるように一層の活性増強を図ることが好ましいものである。
【0079】
さらには、残余のジカルボン酸は、ハンダ付けが終了した後もアンダーフィル中に留まるが、接触している配線金属などに対して、不要な反応を起こして、動作不良を引き起こす要因を形成することもない。
【0080】
封止充填剤は、特に、バンプ電極近傍、すなわち、チップ部品とプリント配線基板との接合固定領域の補強を主な機能とするので、バンプ電極近傍において、硬化に実際に関与する、熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の最終的な含有率が好ましい範囲、具体的には、重付加型の硬化剤、例えば、酸無水物が0.8当量程度となるのが最適である。熱硬化を進めるため、高温に維持される間に、表面酸化皮膜の除去に伴い、酸無水物の一部は消費される。そのため、バンプ電極近傍において、酸無水物についてみるならば、その局所的な含有率は、フラックス処理が進むにつれて、しだいに低下していく。その結果、エポキシ樹脂と硬化剤との重合付加反応の伸長を一旦遅延されるので、フラックス処理の完了する前は、エポキシ樹脂組成物の流動性が損なわれ、フラックス処理の阻害要因となってしまうことを防止している。フラックス処理が終わると、その後、熱硬化に要する期間、ハンダの融点付近の温度で一定に保つ間に、拡散により必要な酸無水物は供給される。従って、バンプ電極近傍においても、得られる熱硬化物の特性は、従来の封止充填剤と比較して、全く遜色のないものとなる。
【0081】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、上述する(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂と(B)の硬化剤の酸無水物、粉末状で分散されている(C)の硬化促進剤、ならびに付加的成分の(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分として利用するジカルボン酸の必須成分に加えて、通常、先に述べた硬化促進剤を副次的な成分として添加することが多いが、それ以外も、この種のエポキシ樹脂組成物に慣用される副次的な成分を添加することもできる。具体的には、その他の副次的な成分として、応力緩和剤、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤など、さらには、可塑剤、チキソ剤などをも添加できる。いずれを添加するか、また、その添加量は、必須成分に用いる熱硬化性エポキシ樹脂と酸無水物に応じて、適宜選択するとよい。
【0082】
酸化防止剤は、封止充填した後、熱硬化処理の際、エポキシ樹脂の耐熱性を向上する目的で、予めエポキシ樹脂中に混入しておくことができる。この酸化防止剤としては、酸素除去・還元作用を有するヒドロキノン、亜リン酸エステル類などを用いることができ、その添加量は、熱処理環境、例えば、リフロー加熱炉内の残留酸素濃度・温度などを考慮して適宜選択する。
【0083】
レベリング剤は、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物自体の粘度、従って、必須成分に用いる熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の種類、含有比率に応じて、適宜添加量を選択するとよい。例えば、レベリング剤としては、ST80PA(商品名;東レ・ダウ=コーニング・シリコーン社製)などを用いることができ、液状エポキシ樹脂組成物全体に対して、0〜5質量%の範囲で添加することができる。応力緩和剤としては、アデカレジンEPR−1309(商品名;旭電化工業社製、エポキシ当量280)などを用いることができ、液状エポキシ樹脂組成物全体に対して、0〜10質量%の範囲で添加することができる。
【0084】
また、カップリング剤は、プリント配線基板の材質、チップ部品裏面の表面に露出している材料の種類を考慮し、用いるエポキシ樹脂の種類に応じて、必要に応じて、適宜好ましいものを選択して添加する。汎用されるカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤のγ−グリシト゛キシプロピルトリメトキシシランなどがあるが、これらから前記の選択基準に従って好適なカップリング剤を適量添加するとよい。一般に、カップリング剤は、液状エポキシ樹脂組成物全体に対して、0〜10質量%の範囲で添加することができる。
【0085】
可塑剤やチキソ剤は、液状エポキシ樹脂組成物の塗布加工性を考慮して、必要に応じて、添加される。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチルなどがあるが、エポキシ樹脂の種類に応じて、好ましい可塑剤を適量添加するとよい。チキソ剤としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸のトリグリセライド、ヒュームドシリカなどがあるが、エポキシ樹脂の種類に応じて、好ましいチキソ剤を適量添加するとよい。
【0086】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、その熱硬化処理の温度は、例えば、230℃〜260℃の範囲に選択されるので、その加熱昇温の過程で、一旦は次第に粘度が低下し、封止充填すべき隙間を均一に満たし、塗布する際に仮に部分的に濡れていない箇所も、この段階で液状エポキシ樹脂組成物により覆われた状態となる。従って、室温における液状エポキシ樹脂組成物自体の液粘度は、所望とする液量を鉛フリーハンダ製のバンプ電極を覆うように塗布可能な程度に流動性を満足する範囲に選択すればよい。例えば、塗布手段として、ディスペンサーを利用する際には、液状エポキシ樹脂組成物自体の液粘度は、ディスペンサーのノズル径に応じて、0.5〜50Pa・sの範囲に調整することが好ましい。本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分の熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤、付加的成分のジカルボン酸、ならびに必要に応じて添加される上述の慣用される副次的な成分とを含むが、主な成分である、熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤の液粘度の組み合わせによって、全体の液粘度を前記の範囲に調整することが望ましい。例えば、熱硬化性エポキシ樹脂として、例えば、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散や熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施した液状エポキシ樹脂を用いると、これらは一般に液粘性が増すが、硬化剤に利用する酸無水物として、相対的に液粘度の低いものを選択することで、全体として、好適な液粘度範囲の液状エポキシ樹脂組成物に調製することができる。
【0087】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分の熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤、硬化促進剤、付加的成分のジカルボン酸、ならびに必要に応じて添加される上述の慣用される副次的な成分とを十分に混合した後、その調製工程の攪拌等により内部に発生したあるいは取り込まれた気泡を減圧脱泡して製造することができる。加えて、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物中に含有される、硬化剤の酸無水物や、ジカルボン酸をなどは、硬化反応前から、水分が存在する環境に置くと、その本来の機能が失われる化合物であり、また、金属材料表面の酸化皮膜の除去作用を維持するためにも、製造された液状エポキシ樹脂組成物への水分混入を抑制して、調製・保存を行う。
【0088】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物は、フリップチップ実装における封止充填に用いて、その効果を発揮するものである。具体的には、フリップチップ実装において、鉛フリーハンダ製のバンプ電極の熔融を、アンダーフィルを充填した後、その熱硬化とともに行う方式において、その効果を発揮する。
【0089】
液状エポキシ樹脂組成物の充填方式に依らず、鉛フリー錫合金ハンダ製のバンプなどの金属表面に残留する酸化皮膜のその場除去作用は得られるが、例えば、以下の手順をとる封止充填方法をとる際、その効果はより高くなる。具体的には、フリップチップ実装における封止充填の方法として、
(1)基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品とをハンダ製のバンプ電極を用いて両電極間の相互導通をとるべく、前記プリント配線基板上の所定の領域に前記チップ部品を配置後、前記ハンダ製のバンプ電極と電極間の接触を図る工程、
(2)前記ハンダ製のバンプ電極と電極間の接触を図る工程後、またはその工程と併せて、前記プリント配線基板とその上の所定の領域上に配置される前記チップ部品の間隙に、前記接触を図ったハンダ製のバンプ電極と電極とを被覆するように、上記する本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を満たす充填工程、
(3)次いで加熱して、前記所定の領域の間隙に充填した前記液状エポキシ樹脂組成物における、前記エポキシ樹脂の熱硬化を進めるとともに、前記液状エポキシ樹脂組成物が被覆する前記ハンダ製のバンプを熔融させる工程、
所定時間の加熱後、冷却して、一旦熔融したハンダの再固化を行い、バンプ電極と電極とをハンダ付け固着・接合させ、同時に熱硬化したエポキシ樹脂により封止充填を完了する工程、
上記(1)〜(3)の一連の工程により、封止充填を行うと好ましいものとなる。
【0090】
つまり、所定の粘性を有する液状エポキシ樹脂組成物をプリント配線基板上に予め厚めに塗布しておき、その上からチップ部品を押し付けることで、金属配線の電極とバンプ電極との物理的な接触を行い、同時に、押しつぶされ、広がった液状エポキシ樹脂組成物が、金属配線の電極とバンプ電極をも覆った状態となる。この際、塗布されている液状エポキシ樹脂組成物の上面はほぼ平坦であるので、その上からチップ部品を押し付けることで、未充填部分、ボイドとなる部分が発生することはない。また、物理的な接触を果たした金属配線の電極とバンプ電極の表面を、液状エポキシ樹脂組成物が密に覆っている状態とできる。この状態において、ハンダ製のバンプを熔融させるべく加熱を行うので、上で説明したように、金属表面に残留している酸化皮膜の除去がなされる。
【0091】
なお、本発明の封止充填の方法では、前記の鉛フリー錫合金ハンダ材料として、例えば、Sn−Ag系合金を用いる際に、かかる鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に設定されるハンダ熔融加熱過程まで、一定の昇温速度で加熱した上、その温度で一時保持して、ハンダ製のバンプを熔融させる方法を選択することもできる。しかし、この一定の昇温速度で加熱する手法では、利用するリフロー装置によっては、プリント配線基板における加熱ムラが大きくなり、基板の反りを引き起こすこともある。この基板の反りを回避するため、所定の温度まで昇温し、一時保持して、その間に加熱ムラを緩和した上で、鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に設定されるハンダ熔融加熱過程まで昇温を行う手法が有効である。すなわち、本発明の封止充填の方法において、前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、
引き続き、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設けることがより好ましく、その際、予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上の範囲に選択することが、前記プリント配線基板における加熱ムラを低減する上でより望ましい。この予備加熱過程の温度では、少なくとも110℃以上、好ましくは、160℃を中心として、その前後50℃の範囲に温度を保持して、昇温時の温度ムラを解消するため、温度の均一化を図ることが望ましい。なお、この予備加熱過程における温度保持期間では、プリント基板内の温度均一化のみでなく、加熱装置内の温度分布の均一化をも達成することが望ましい。従って、温度保持期間中にも、設定温度は緩やかに上昇させ、加熱装置内の温度分布の均一化を図ることもでき、かかる設定温度は緩やかな上昇範囲は、多くとも50℃の温度幅に選択することが好ましい。
【0092】
加えて、本発明にかかる電子部品は、上に説明した本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を利用して、フリップチップ実装し、その間に封止充填がなされてなる実装組み立て済み電子部品であり、基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品との接合を、両電極間の相互導通を融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を利用した際、金属表面に残留している酸化皮膜の除去が効果的に行え、高い再現性で良好な導通特性が達成できる。加えて、フラックス処理が終わり、鉛フリー錫合金ハンダ材料の溶融、ハンダ付けが可能となった時点で、エポキシ樹脂の熱硬化も進むため、未充填部分、ボイドとなる部分が発生することもなく、ハンダ付けと封止充填がなされたものとなる。また、本発明にかかる電子部品は、鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用してフリップチップ実装可能な半導体素子チップをプリント配線基板上に、少ない工程で実装したものとできる。加えて、用いる本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を、
(B)硬化剤の酸無水物として、飽和な環状炭化水素ジカルボン酸由来の分子内酸無水物を用いる、あるいは、
(A)の熱硬化性エポキシ樹脂として、熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含む組成とすることで、得られるエポキシ樹脂硬化物の示す柔軟性、あるいは、靭性の強化を行うと、過酷な冷却条件、例えば、−65℃の冷却条件と125℃の加熱条件において、冷熱サイクル処理を施しても、封止充填されている樹脂硬化物におけるクラックの発生が効果的に抑制されたものとできる。また、その際、接着性不良などの不良も抑制でき、本発明にかかる電子部品は、寒暖差の大きな環境下、外部からの水分の浸入を長期にわたり防護された、耐環境性に優れたものとなる。
【0093】
更には、前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、予備加熱過程とハンダ熔融加熱過程とを設け、特に、予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上、望ましくは、両者の温度差を100℃またはそれより小さな範囲に選択することで、実装後のプリント配線基板における反り発生を回避することで、冷熱サイクル処理に起因する、ハンダ接合部における導通不良の発生頻度を低減する効果も得られる。この予備加熱過程の温度では、少なくとも110℃以上、好ましくは、160℃を中心として、その前後50℃の範囲に温度を保持して、昇温時の温度ムラを解消するため、温度の均一化を図ることが望ましい。より好ましくは、140℃以上、200℃以下の範囲に、予備加熱過程の温度を設定することができる。
【0094】
【実施例】
以下に、具体例を挙げて、本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物、それを用いた封止充填において達成される酸化皮膜の除去効果に関して、より具体的に説明する。なお、以下に示す実施例などは、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0095】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の示す特徴である、鉛フリーハンダ材料表面に生成する酸化皮膜の除去作用を検証した。具体的には、付加的成分として添加されている、ジカルボン酸によって、フラックス活性の増強が所望の程度に達成することを検証した。
【0096】
加えて、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂、硬化剤の酸無水物、ならびに、この酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤を必須成分とする構成をとることにより、鉛を含まない錫合金ハンダの融点より有意に高い温度まで加熱を進めた際にも、含有されている成分の熱的分解等に起因するボイドの発生を十分に抑制されることを検証した。
【0097】
ジカルボン酸の添加に伴う、液状エポキシ樹脂組成物中に必須成分として含まれる、(B)硬化剤の酸無水物が関与する、ハンダ材料の酸化皮膜の除去効率の差異は、封止充填剤を充填硬化させた試料について、ハンダ不良が要因と推察される、電極間の導通試験において、導通不良発生の有無により判定した。
【0098】
(実施例1)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、バンプを形成するハンダ材料として、鉛を含まないスズ合金ハンダ、所謂、鉛フリーハンダの一つ、組成がSn:95.8%、Ag:3.5%、Cu:0.7%(熔融点:217℃)のSn−Agハンダを用いる場合、その融点を大きく超えない温度で使用可能なアンダーフィル用のエポキシ樹脂として、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0099】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量 約190)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(商品名;ジャパンエポキシレジン社製、酸無水物当量 約230)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールの2E4MZ−CN(商品名、四国化成社製、分子量 163、融点 30℃)0.3質量部を均一に分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、前記分散型硬化促進剤の2E4MZ−CNには、平均粒子径10μmの分散粒子形態を利用している。加えて、直鎖状アルカン二酸;ω,ω’−アルカンジカルボン酸(HOOC−(CH2)n−COOH)の一つであるドデカン二酸(宇部興産(株)製、 分子量230.3、融点129℃、沸点245℃(10mmHg))20質量部を、フラックス活性増強成分として、かかる液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0100】
(実施例2)
前記実施例1と比べると、フラックス活性増強成分として、ドデカン二酸の添加に加え、水添ロジン:フォーラルAXE(商品名、日商岩井ケミカル社製、平均分子量 310)をも少量添加する変更を施し、液状エポキシ樹脂組成物を調製した。具体的には、液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)120質量部と、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0101】
(実施例3)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、すなわち、バンプを形成するハンダ材料として、前記のSn−Agハンダ(熔融点:217℃)が利用される際に好適な組成比を有する、液状エポキシ樹脂と酸無水物に、付加的成分のフラックス活性増強成分として、前記実施例2と同じく、直鎖状アルカン二酸の一つであるドデカン二酸(前出)と、少量の水添ロジン(前出)を含む液状エポキシ樹脂組成物とした。加えて、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)に代えて、水添ナジック酸の酸無水物:HNA(商品名、新日本理化社製、酸無水物当量 95)を利用した。
【0102】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)87質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を分散添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0103】
次いで、実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物について、それぞれ同様の条件でフリップチップ実装を行い、得られた実装済み半導体装置について、チップ部品とプリント回路基板の電極間の導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0104】
なお、用いた硬化条件は、20℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持した。この保持後、強制冷却した。
【0105】
表1に、導通試験結果を併せて示す。導通試験結果は、全試料数50に対して、導通不良の無い合格品数の比率をもって、その指標とする。
【0106】
【表1】
表1に示す通り、分散型硬化促進剤として、融点30℃の2E4MZ−CNを用いることで、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物では、若干導通不良は見出されるものの、導通不良は20%程度に抑えられている。同量のドデカン二酸を添加している、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物と比較して、実施例2の液状エポキシ樹脂組成物においては、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、導通不良はもはや見出されなくなっている。また、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307に代えて、水添ナジック酸の酸無水物HNA(前出)を採用した際にも、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、実施例3の液状エポキシ樹脂組成物においては、導通不良はもはや見出されなくなっている。
【0107】
従って、本発明の液状エポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤として、融点が100℃以上のイミダゾール類分散型硬化促進剤を配合し、また、エポキシ基当たり、5×10−3分子以下のイミダゾールのなる範囲にその配合比率を選択することによって、硬化促進剤による促進を受けて進行する、酸無水物によるエポキシ環開環反応の進行速度を制御し、一方、フラックス活性増強成分のドデカン二酸の添加により、酸無水物の示す、フラックス活性が付与・増進されている結果、リフロー処理によって前記の様に良好なバンプ電極による接合がなされていると判断される。加えて、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、一層良好なバンプ電極による接合がなされている。
【0108】
一方、硬化促進剤による促進を受けて進行する、酸無水物によるエポキシ環開環反応の進行速度を制御している結果、昇温過程での、不均一な熱硬化、あるいは、急速な粘度上昇が回避でき、硬化物中のボイド発生は、これら実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物において、全く見出されていない。
【0109】
加えて、得られるエポキシ樹脂硬化物は、それを構成するエポキシ樹脂成分と硬化剤の酸無水物の骨格構造に応じて、可撓性、接着性に違いが生じ、特に、氷点以下の温度に冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下が生じると、反復的に加熱・冷却を繰り返す間に、封止充填した樹脂硬化物の内部分的な剥離、あるいは、樹脂硬化物の表面における微細なクラック発生の有無に差異が生じる。この冷却における樹脂硬化物の可撓性、接着性の相違を比較するため、前記実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、以下に記載する実装工程の要領で、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0110】
ここでは、下記の手順を、プリント配線基板上にバンプ電極が設けられているフリップチップ実装に適用した。まず、前記のバンプ電極を予め形成したプリント配線基板に、上記アンダーフィル用エポキシ樹脂組成物をスクリーン印刷により所定のパターンに塗布する。これも裏面にバンプ電極を形成してあるチップ部品を、このアンダーフィル剤パターンを印刷した配線基板上のバンプ電極に対して、両者の電極位置が整合するように位置合わせする。この位置において、電極相互が接触するようにチップ部品を押し付ける。その過程で、塗布されているアンダーフィル剤層は押し広げられ、チップ部品の裏面とも密着する。また、接触しているバンプ電極、対応する基板上の配線表面、チップ部品の裏面電極面もしっかり、押し広げられたアンダーフィル剤で被覆される。
【0111】
このチップ部品の上面から押圧した状態で、リフロー炉内に入れ、例えば、温度250℃まで昇温してバンプ熔融を行う。バンプハンダ付けが済み、更にアンダーフィル剤のエポキシ樹脂の熱硬化が進行する。
【0112】
上述する通り、この手順に従うとチップ部品を押圧するので、チップ部品裏面との間に気泡が残ることもないので、ボイドは発生しない。また、既に説明した通り、酸化被膜もその場で除去されるのでハンダ付け不良もない。このように、電極の接合不良もなく、しかも、アンダーフィルの充填・硬化も過不足なく達成される。
【0113】
なお、用いているハンダ材料が、その融点が217℃の上述のSn−Ag系ハンダであるため、このリフロー工程における昇温過程は、かかる217℃より有意に高い250℃まで一定速度で昇温する過程を用いており、その際、130℃を超えると、徐々に熱硬化反応が進み始めるが、添加されているドデカン二酸の作用により、前記217℃近くに達するまでに十分にフラックス処理が進み、加えて、系内に残余する酸無水物濃度が相当低くなった状態となった時点でも、なお、必要とするフラックス活性の確保することが可能である。
【0114】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表2に、実施例1〜3の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験における結果、特に、封止充填剤部の劣化に起因する不良発生比率、ならびに、サイクル試験終了時における封止充填剤部の硬化樹脂に微細なクラック発生の有無に関する評価結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0115】
【表2】
樹脂硬化物を構成するエポキシ樹脂成分とその硬化剤の酸無水物が同一組成である、実施例1、2の液状エポキシ樹脂組成物の間では、得られる樹脂硬化物の可撓性、接着性など、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下の程度は同程度であるため、上記の冷熱サイクル試験結果において、実質的な差異は見出されていない。冷却状態が−45℃の条件では、樹脂硬化物自体は、極端な脆さを示さず、樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力によるクラック発生も、問題となる頻度ではない。一方、冷却状態が−65℃の条件では、かかるエポキシ樹脂硬化物自体は、柔軟性に乏しく、脆さを示す状態となり、冷熱サイクル時の歪応力によるクラック発生がより顕著となっている。
【0116】
一方、硬化剤の酸無水物として、HNAを採用している実施例3の液状エポキシ樹脂組成物においては、そのエポキシ樹脂硬化物自体は、この酸無水物に由来する構造には、不飽和炭素結合を有してなく、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307を利用する実施例1、2の液状エポキシ樹脂組成物によるエポキシ樹脂硬化物と比較して、より柔軟性に富むものとなる。その相違により、冷却状態が−45℃の条件では、未だ脆さを示さず、不良発生もなく、歪応力によるクラック発生が回避されている。さらに、冷却状態が−65℃の条件でも、樹脂硬化物自体は、極端な脆さを示さず、僅かに不良発生、歪応力によるクラック発生は見られるものの、問題となる頻度ではない。
【0117】
樹脂硬化物自体の可撓性、接着性、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下をより小さなものとするため、利用する硬化剤の酸無水物として、不飽和炭素結合を持たない水添ナジック酸の酸無水物HNAを利用した上に、エポキシ樹脂成分自体も、可撓性、接着性の向上が図られるニトリル変性エポキシ樹脂の利用、あるいは、少量のアクリルゴムなど、熱可塑性樹脂成分の添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散など、柔軟性を付加することで、脆さを改善し、より高靭性を発揮する上で効果を持つものを利用して、液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0118】
(実施例4)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、すなわち、バンプを形成するハンダ材料として、前記のSn−Agハンダ(熔融点:217℃)が利用される際に好適な組成比を有する、液状エポキシ樹脂と酸無水物に、分散型硬化促進剤の2E4MZ−CNを分散配合し、付加的成分のフラックス活性増強成分として、前記実施例3と同じく、直鎖状アルカン二酸の一つであるドデカン二酸(前出)と、少量の水添ロジン(前出)を添加した液状エポキシ樹脂組成物とした。硬化剤の酸無水物として、YH−307(前出)を用い、エポキシ樹脂成分として、エピコート828(前出)に代えて、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主成分とする低粘度エポキシ樹脂であるEXA−835LV(商品名;大日本インキ化学工業社製、 エポキシ当量: 165)とCTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(商品名;旭電気化学工業社製、 エポキシ当量: 230)とを混合して用いた。
【0119】
液状エポキシ樹脂として、EXA−835LV(前出)50質量部:EPR−4023(前出)50質量部の比率で混合される、エポキシ樹脂100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、YH−307(前出)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0120】
(実施例5)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、すなわち、バンプを形成するハンダ材料として、前記のSn−Agハンダ(熔融点:217℃)が利用される際に好適な組成比を有する、液状エポキシ樹脂と酸無水物に、付加的成分のフラックス活性増強成分として、前記実施例4と同じく、直鎖状アルカン二酸の一つであるドデカン二酸(前出)と、少量の水添ロジン(前出)を含む液状エポキシ樹脂組成物とした。硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)を用い、エポキシ樹脂成分として、エピコート828(前出)に代えて、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主成分とする低粘度エポキシ樹脂であるEXA−835LV(前出)とCTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(前出)とを混合して用いた。
【0121】
液状エポキシ樹脂として、EXA−835LV(前出)50質量部:EPR−4023(前出)50質量部の比率で混合される、エポキシ樹脂100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)86質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、少量の2E4MZ−CN(前出)0.3質量部を分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部ならびに水添ロジン(前出)10質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0122】
次いで、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物について、それぞれ、上記実施例3の液状エポキシ樹脂組成物と同様の条件でフリップチップ実装を行い、得られた実装済み半導体装置について、チップ部品とプリント回路基板の電極間の導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0123】
なお、用いた硬化条件は、20℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持した。この保持後、強制冷却した。
【0124】
表3に、導通試験結果を併せて示す。導通試験結果は、全試料数50に対して、導通不良の無い合格品数の比率をもって、その指標とする。
【0125】
【表3】
表3に示す通り、硬化剤、ならびにフラックス活性の主体として機能する、酸無水物として、HNA(前出)を用い、主なフラックス活性増強成分として、ドデカン二酸を、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加することで、上記の実施例3の液状エポキシ樹脂組成物に比較して、酸無水物HNAの含有比率が若干少ない、実施例5の液状エポキシ樹脂組成物においても、導通不良は見出されていない。また、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)を用いている実施例4の液状エポキシ樹脂組成物においても、実施例2の液状エポキシ樹脂組成物と同じく、導通不良は見出されていない。
【0126】
従って、利用するエポキシ樹脂の種類は異なるものの、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物においても、先に示す実施例3、あるいは実施例2の液状エポキシ樹脂組成物と同様に、フラックス活性増強成分のドデカン二酸と水添ロジンの添加により、酸無水物の示すフラックス活性が付与・増進されている結果、リフロー処理によって前記の様に良好なバンプ電極による接合がなされていると判断される。また、ボイド発生は、これら実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物においても、全く見出されていない。
【0127】
加えて、これら実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物は、得られるエポキシ樹脂硬化物は、それを構成するエポキシ樹脂成分の一つとして、ニトリルゴム成分付加による変性を施したCTBN変性エポキシ樹脂を用いることによって、可撓性、接着性の向上を図り、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下をより緩和することを、主な目的としている。この冷却における樹脂硬化物の可撓性、接着性の向上を検証するため、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例3に記載する実装と同じ要領で、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0128】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表4に、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験の結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0129】
【表4】
実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合、上記実施例3の液状エポキシ樹脂組成物を用いた際と同様に、冷却状態が−45℃の条件では、樹脂硬化物自体は、脆さを示さず、樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力によるクラック発生もなく、不良が見出されていない。加えて、実施例4、5の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合に、エポキシ樹脂成分の一つに、ニトリルゴム成分付加による変性を施すことによって、可撓性、接着性の向上を図る成分を利用する結果、冷却状態が−65℃の条件でも、かかるエポキシ樹脂硬化物自体は、脆さを示さず、高い靭性を保持し、冷熱サイクル時の歪応力によるクラック発生も回避でき、導通不良発生の低減効果も見出される。
【0130】
また、実施例5の液状エポキシ樹脂組成物と実施例4の液状エポキシ樹脂組成物に対する、冷却状態が−65℃の条件での冷熱サイクル評価結果を比較すると、エポキシ樹脂成分の一つに、CTBN変性エポキシ樹脂を用いることに加えて、硬化剤の酸無水物として、その骨格構造に不飽和炭素結合を有していないHNAを採用している実施例5の液状エポキシ樹脂組成物による樹脂硬化物では、接着性、可撓性の更なる向上が達成されている。すなわち、実施例5の液状エポキシ樹脂組成物では、その樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力に起因する、導通不良発生は見出されていない。
【0131】
(実施例6)
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物の一例であり、配合される分散型硬化促進剤として、実施例1の2E4MZ−CNに代えて、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとる1−(2−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテイト(トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)との付加塩型イミダゾール)のC11Z−CNS(商品名、四国化成社製、分子量 485.7、融点 149℃)を利用して、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0132】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、C11Z−CNS(前出)1質量部を均一に分散配合した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、前記分散型硬化促進剤のC11Z−CNSには、平均粒子径3μmの分散粒子形態を利用している。加えて、ドデカン二酸(前出)20質量部を、フラックス活性増強成分として、かかる液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0133】
(実施例7)
硬化剤の酸無水物として、前記実施例6の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において使用した、テトラヒドロフタル酸無水物誘導体のYH−307(前出)に代えて、水添ナジック酸の酸無水物:HNA(前出)を利用して、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0134】
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート828(前出)100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、HNA(前出)87質量部を混合し、分散硬化促進剤として、C11Z−CNS(前出)1質量部を分散添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0135】
(実施例8)
液状エポキシ樹脂として、上記実施例6の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物において使用した、エピコート828(前出)に代えて、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主成分とする低粘度エポキシ樹脂であるEXA−835LV(前出)とCTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(前出)とを混合して用いて、以下の組成の液状エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0136】
液状エポキシ樹脂として、EXA−835LV(前出)50質量部:EPR−4023(前出)50質量部の比率で混合される、エポキシ樹脂100質量部当たり、硬化剤の酸無水物として、YH−307(前出)120質量部を混合し、分散型硬化促進剤として、C11Z−CNS(前出)1質量部を分散添加した液状エポキシ樹脂組成物を調製した。加えて、ドデカン二酸20質量部を、フラックス活性増強成分として、液状エポキシ樹脂組成物中に均一に分散した。その後、減圧脱泡処理して、目的の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を調製した。この液状エポキシ樹脂組成物は、熱硬化条件として、硬化温度250℃において、2〜5分間で所望の硬化がなされる。
【0137】
次いで、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物について、それぞれ、上記実施例3の液状エポキシ樹脂組成物と同様の条件でフリップチップ実装を行い、得られた実装済み半導体装置について、チップ部品とプリント回路基板の電極間の導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0138】
なお、用いた硬化条件は、20℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持した。この保持後、強制冷却した。
【0139】
表5に、導通試験結果を併せて示す。導通試験結果は、全試料数50に対して、導通不良の無い合格品数の比率をもって、その指標とする。
【0140】
【表5】
表5に示すように、硬化剤の酸無水物によるエポキシ環の開環反応の促進を図る、分散型硬化促進剤として、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物では、融点 30℃の2E4MZ−CNを、エポキシ基一つ当たり、3.5×10−3分子を配合しているが、それに代えて、融点が149℃であり、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとるC11Z−CNSを利用し、また、エポキシ基一つ当たり、約3.9×10−3分子を配合している実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物においては、実施例2の液状エポキシ樹脂組成物のように、主なフラックス活性増強成分であるドデカン二酸に加えて、補足的なフラックス活性増強成分として、さらに、水添ロジン(前出)を少量添加しなくとも、上記のリフロー条件では、導通不良は見出されていない。
【0141】
従って、前記実施例6の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際、その分散型硬化促進剤のC11Z−CNSによる促進によって進行する、酸無水物によるエポキシ環の開環反応は、実施例1の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際、2E4MZ−CNによる促進によって進行するエポキシ環の開環反応と比較し、その進行速度はよるより適正な範囲に制御され、フラックス活性の主体として機能する、酸無水物によるフラックス処理がより効果的に達成でき、導通不良の発生が防止できている。利用するエポキシ樹脂の種類は異なるものの、実施例8の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際にも、同様の効果が発揮されている。また、利用する酸無水物の種類は異なるものの、実施例8の液状エポキシ樹脂組成物を用いる際にも、同様の効果が発揮されている。また、ボイド発生は、これら実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物においても、全く見出されていない。
【0142】
加えて、これら実施例7、8の液状エポキシ樹脂組成物は、得られるエポキシ樹脂硬化物は、それを構成する硬化剤の酸無水物として、その骨格構造に不飽和炭素結合を有していないHNAを採用する、あるいは、エポキシ樹脂成分の一つとして、ニトリルゴム成分付加による変性を施したCTBN変性エポキシ樹脂を用いることによって、可撓性、接着性の向上を図り、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下をより緩和することを、主な目的としている。この冷却における樹脂硬化物の可撓性、接着性の向上を検証するため、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、前記実施例3に記載する実装と同じ要領で、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0143】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表6に、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験の結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0144】
【表6】
実施例7、8の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合、上記実施例3、4の液状エポキシ樹脂組成物を用いた際と同様に、冷却状態が−45℃の条件では、樹脂硬化物自体は、脆さを示さず、樹脂硬化物とプリント基板と熱膨張率の差異に由来する歪応力によるクラック発生もなく、不良が見出されていない。一方、実施例6の液状エポキシ樹脂組成物を用いた場合に、上記実施例2の液状エポキシ樹脂組成物を用いた際と同様に、導通不良の発生は抑制されているものの、樹脂硬化物自体の組成に起因する低温脆性が原因と考えられるクラック発生は見出されている。従って、利用する分散型硬化促進剤の違いに付随する、硬化反応の進行速度は、C11Z−CNSを利用する実施例6〜8では、2E4MZ−CNを利用する実施例2〜4と比較して、フラックス処理により適合する範囲に制御されている上、得られる樹脂硬化物自体の組成は、それぞれ対応するものと、同様なものとなっていることが判る。また、冷却状態が−65℃の条件での冷熱サイクル評価結果を比較することでも、C11Z−CNSを利用する実施例6〜8では、2E4MZ−CNを利用する実施例2〜4と比較して、得られる樹脂硬化物自体の組成は、それぞれ対応するものと、同様なものとなっていることが確認される。
【0145】
すなわち、エポキシ樹脂成分の一つに、CTBN変性エポキシ樹脂を用いること、あるいは、硬化剤の酸無水物として、その骨格構造に不飽和炭素結合を有していないHNAを採用することによる、得られる樹脂硬化物における、接着性、可撓性の向上効果は、C11Z−CNSを利用する際にも、実質的に同様な効果が達成されている。
【0146】
更に、フリップチップ実装時のリフロー条件として、予備加熱過程を設ける条件を利用する際における、導通不良の有無を評価した。加えて、実装済みのプリント回路基板について、透視観察して、空隙(ボイド)の有無を検査した。
【0147】
なお、用いた硬化条件は、予備加熱過程として、20℃から160℃まで急速に昇温(2℃/s)し、160℃で60秒間保持し、次いで、ハンダ熔融加熱過程として、160℃から250℃まで急速に昇温(1.5℃/s)し、250℃で20秒間保持し、その保持後、強制冷却した。
【0148】
また、前記の予備加熱過程を設けるリフロー条件によって、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施したプリント基板上に実装された半導体素子について、冷熱サイクル試験を実施した。
【0149】
冷熱サイクル試験は、温度条件を、冷却状態−45℃、加熱状態125℃の条件と、特に、冷却時の条件をより過酷とした、冷却状態−65℃、加熱状態125℃の条件とで行った。表7に、実施例6〜8の液状エポキシ樹脂組成物、ならびに、表8に、実施例2〜3の液状エポキシ樹脂組成物を用いて、それぞれ、アンダーフィルの充填・硬化と、ハンダ材のリフロー工程を施した実装半導体素子の冷熱サイクル試験の結果を示す。冷熱サイクル試験結果は、全試料数50に対して、不良発生の無い品数の比率をもって、その指標とする。
【0150】
【表7】
【0151】
【表8】
表7と表8に示す結果を対比させると、C11Z−CNSを利用する実施例6〜8では、2E4MZ−CNを利用する実施例2〜4と比較して、利用する分散型硬化促進剤の違いに付随して、その硬化反応の進行速度は、予備加熱過程を設けるリフロー条件における、フラックス処理により適合する範囲に制御されていることが判る。つまり、予備加熱過程の温度均一化の段階では、イミダゾール環上のアミノ窒素原子に因って、酸付加塩を形成し、イミダゾリウム構造をとるC11Z−CNSを利用することにより、硬化反応の促進を僅かに留めることで、この間の不必要なエポキシ樹脂の硬化進行に由来する、導通不良の発生を効果的に回避できている。
【0152】
【発明の効果】
本発明の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物では、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂と(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物、ならびに、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤、さらに、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を含む組成とする際、(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合され、また、(D)フラックス活性増強成分には、炭素数9〜15のジカルボン酸を用いて、(B)硬化剤の酸無水物1モル当たり、(D)フラックス活性増強成分のジカルボン酸の含有量が、5×10−2〜5×10−1モルの範囲に選択されている封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物とする。この液状エポキシ樹脂組成物が充填された状態において、チップ部品とプリント配線基板の電極間に互いに物理的な接触を形成する配置されている、融点が200℃以上、230℃を超えない鉛フリー錫合金ハンダ製、特には、Sn−Ag系ハンダ製のバンプ電極を加熱熔融した際、ジカルボン酸のカルボキシ基より供与されるプロトンによって、(B)硬化剤の酸無水物が有するフラックス活性の増強がなされ、バンプ電極などの表面の酸化皮膜、例えば、錫の酸化物の除去を行うことができる。一方、前記の(B)硬化剤の酸無水物は、前記錫の酸化物との反応により、若干量が消費されるものの、過度な含有量の減少でなく、例えば、副次的な成分として添加されている、硬化促進剤の含有量を少量に留めるなどして、用いる鉛フリー錫合金ハンダに適合する比較的に高い熱硬化温度で加熱処理をした際にも、酸化物皮膜の除去とともに、適正な速度で熱硬化が進行し、所望の熱硬化物とできる。また、添加されるジカルボン酸の沸点は熱硬化温度より十分に高いので、その気化による気泡の形成もなく、ボイドの発生の要因ともならない。また、利用する母体鎖の炭素数は比較的に長いジカルボン酸は、エポキシ樹脂との相溶性も優れており、熱硬化が次第に進行していく間も、樹脂組成物中に均一に分散して、(B)硬化剤の酸無水物が有するフラックス活性の増強作用を維持でき、従って、予めバンプ電極などの表面の酸化皮膜を除去するため、フラックスによる処理を施さなくとも、バンプ電極に用いるハンダの良好な熔融、ハンダ付けによる電極間の接合ができ、同時に封止充填剤の熱硬化が行えるという利点が得られる。加えて、この方式の封止充填は、高い作業効率性を持ち、特に、プリント配線基板上にスクリーン印刷などの手段で所望の液状エポキシ樹脂組成物層を塗布形成するので、プリント配線基板の形状・材質に依らず、全般的な工程の短縮化、ならびにボイド発生などの不良要因の根絶が可能となる。加えて、(B)硬化剤の酸無水物として、その分子骨格内に不飽和炭素結合を含まないものを利用し、さらには、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂成分として、熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性などによって、得られる樹脂硬化物において、靭性を増し、特に、低温脆性が改善された、接着性、可撓性に富み、特に、冷却した際、剪断強度、剥離強度の低下がより緩和されたものとできる。特に、ハンダ付けによる電極間の接合と、同時に封止充填剤の熱硬化を行うリフロー条件として、鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、引き続き、鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設ける場合、分散型硬化促進剤として、例えば、融点が140℃以上、200℃以下の範囲に選択されるイミダゾール類、例えば、1位の窒素原子上に置換を有するイミダゾール環に対する酸付加塩の形成に伴うイミダゾリウムの含有する酸付加塩型イミダゾール類を選択し、粉体状で均一分散させる形態で添加すると、ハンダ付けによる電極間の接合がより高い再現性で達成できる。
Claims (15)
- バンプ電極材料として、融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料を用いているフリップチップ実装の封止充填工程に用いられる液状エポキシ樹脂組成物であって、
前記液状エポキシ樹脂組成物は、必須成分として、(A)液状の熱硬化性エポキシ樹脂、(B)前記の熱硬化性エポキシ樹脂に対する硬化剤として酸無水物、ならびに、(C)前記酸無水物によるエポキシ環の開環反応を促進する硬化促進剤、さらに、付加的成分として、(D)プロトン供与能を有するフラックス活性増強成分を含んでなり、
前記(C)硬化促進剤は、該液状エポキシ樹脂組成物中に、分散型硬化促進剤の形態で配合され、
前記(D)フラックス活性増強成分が、炭素数9〜15のジカルボン酸であり、
前記(B)硬化剤の酸無水物1モル当たり、前記(D)フラックス活性増強成分のジカルボン酸の含有量が、5×10−2〜5×10−1モルの範囲に選択されていることを特徴とする封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。 - (B)硬化剤の酸無水物に対する前記(C)硬化促進剤として、
融点が100℃以上の範囲に選択されるイミダゾール類を、粉体状で均一分散させる形態で含むことを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。 - その他の副次的な添加成分として、応力緩和剤、レベリング剤、カップリング剤、酸化防止剤、チキソ剤から選択する1種以上の添加成分をも含むことを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- (A)の熱硬化性エポキシ樹脂は、ビスフェノール型骨格を有するジグリシジルエーテル、フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボン酸のジグリシジルエステル、脂環式エポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂の群から選択される1種以上の熱硬化性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- (A)の熱硬化性エポキシ樹脂の1当量に対して、(B)硬化剤の酸無水物を0.9〜1.1当量含むことを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- 前記(C)の分散型硬化促進剤として、1位の窒素原子上に置換を有するイミダゾール環に対する酸付加塩の形成に伴うイミダゾリウムの含有する酸付加塩型イミダゾール類を選択することを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- 前記ジカルボン酸は、ω,ω’−直鎖炭化水素ジカルボン酸であり、その炭素数は、C10〜C13の範囲に選択されていることを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- (B)硬化剤の酸無水物として、飽和な環状炭化水素ジカルボン酸由来の分子内酸無水物を用いることを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- (A)の熱硬化性エポキシ樹脂として、
熱可塑性樹脂成分の少量添加、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理により、かかる熱可塑性樹脂に由来する強靭性が付与された熱硬化性エポキシ樹脂成分を、少なくとも部分的に含むことを特徴とする請求項1に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。 - (A)の熱硬化性エポキシ樹脂に由来する、一つのエポキシ基当たり、前記(C)硬化促進剤のイミダゾール類の添加比率を、0.5×10−3〜10×10−3分子の範囲に選択することを特徴とする請求項2に記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物。
- フリップチップ実装における封止充填の方法であって、
(1)基板用電極を有するプリント配線基板とチップ部品用電極を有するチップ部品とを融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を用いて両電極間の相互導通をとるべく、前記プリント配線基板上の所定の領域に前記チップ部品を配置後、前記バンプ電極と電極間の接触を図る工程、
(2)前記バンプ電極と電極間の接触を図る工程後、またはその工程と併せて、前記プリント配線基板とその上の所定の領域上に配置される前記チップ部品の間隙に、前記接触を図ったバンプ電極と電極とを被覆するように、封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を満たす充填工程、
(3)次いで加熱して、前記所定の領域の間隙に充填した前記液状エポキシ樹脂組成物における、前記エポキシ樹脂の熱硬化を進めるとともに、前記液状エポキシ樹脂組成物が被覆する前記ハンダ製のバンプを熔融させる工程、
所定時間の加熱後、冷却して、一旦熔融したハンダの再固化を行い、バンプ電極と電極とをハンダ付け固着・接合させ、同時に熱硬化したエポキシ樹脂により封止充填を完了する工程、
上記(1)〜(3)の一連の工程を有する、
前記封止充填剤として請求項1〜10のいずれかに記載の封止充填剤用液状エポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする封止充填の方法。 - 前記のハンダ材料は、Sn−Ag系合金であることを特徴とする請求項11に記載の封止充填の方法。
- 前記(3)のエポキシ樹脂熱硬化ならびにハンダ熔融工程における加熱過程として、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点に満たない温度まで加熱し、一時保持する予備加熱過程と、
引き続き、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点以上の温度に加熱し、一時保持するハンダ熔融加熱過程とを設け、
前記予備加熱過程の温度を、110℃以上、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料の融点未満の範囲に選択し、
前記予備加熱過程の温度とハンダ熔融加熱過程の温度の差異を、少なくとも40℃以上に選択することを特徴とする請求項11または12に記載の封止充填の方法。 - プリント配線基板上に、チップ部品を融点が200℃以上、高くとも、230℃を超えない範囲の鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用して、フリップチップ実装し、その間に封止充填がなされてなる実装組み立て済み電子部品であって、
前記プリント配線基板は、基板用電極を有するプリント配線基板であり、前記チップ部品は、チップ部品用電極を有するチップ部品であり、そのフリップチップ実装において、両電極間の相互導通は、前記鉛フリー錫合金ハンダ材料製のバンプ電極を用いてなされており、
前記鉛フリー錫合金ハンダ材料を利用するフリップチップ実装と封止充填とが、前記請求項11〜13のいずれか一項に記載される封止充填の方法でなされていることを特徴とする電子部品。 - プリント配線基板上にフリップチップ実装、封止充填される前記チップ部品の少なくとも一つは、半導体素子チップであることを特徴とする請求項14に記載の電子部品。
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