JP2004059546A - 抗アレルギー剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ニクズク及びその抽出物を担体と共に含有させて成る。ニクズク及びその誘導体のヒスタミンH1受容体遮断作用は、競合的な拮抗阻害であり、ヒスタミンH1受容体の状態を変化させるものではなかった。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
この発明は、ヒスタミンH1受容体に対し、選択的且つ高い遮断作用を有し、ヒスタミンの関与するI型アレルギー反応や、虫刺され,皮膚そう痒症等のかゆみの抑制に有効なヒスタミンH1受容体遮断剤,抗ヒスタミン剤,及び抗アレルギー剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒスタミンは肥満細胞又は好塩基球内の分泌顆粒より放出され、炎症のケミカルメディエーターとして、I型のアレルギー反応や毒素,化学物質等によるショック症状その他の炎症に広く関与する。従来より、かかるヒスタミンによる炎症反応、特にI型アレルギー反応やかゆみを抑制するため、ヒスタミンのH1受容体に対し、拮抗作用を有する薬剤の検討が行われてきた。
【0003】
上記のヒスタミンH1受容体拮抗薬としては、ジフェンヒドラミン等のアミノエーテル型拮抗薬、ピリラミン等のエチレンジアミン型拮抗薬、ヒドロキシジン,ホモクロルシクリジン,メクリジン等のピペラジン型拮抗薬、プロメタジン,アリメマジン,メキタジン等のフェノチアジン型拮抗薬、クロルフェラミン等のアルキルアミン型拮抗薬等が知られている。
【0004】
しかしながら、上記のようなヒスタミンH1受容体拮抗薬は、ヒスタミンの作用に対する拮抗阻害作用の他に、中枢神経系抑制作用を有するものが多く、消化器障害の副作用や、アトロピン様作用による口渇,排尿困難といった症状を呈するものも存在する。
【0005】
そこで、本発明においては、ヒスタミンH1受容体に対し選択的且つ高い遮断作用を有し、ヒスタミンの関与するI型アレルギー反応や、虫刺され,皮膚そう痒症等のかゆみの抑制に有効で、中枢神経系抑制作用や局所刺激性といった副作用のないヒスタミンH1受容体遮断剤,抗ヒスタミン剤,及び抗アレルギー剤を得ることを目的とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために種々検討した結果、ニクズク及びその抽出物において高いヒスタミンH1受容体遮断作用を認め、さらにニクズク及びその抽出物においては、中枢神経系抑制作用や、局所刺激作用その他の好ましくない作用が見られないことから、ニクズク及びその抽出物をヒスタミンH1受容体遮断剤,抗ヒスタミン剤,及び抗アレルギー剤として応用することにより、本発明を完成するに至った。
【0007】
ニクズク(Myristica fragrans Houtt. ; Myristica moschata Thunb. ; Myristica officinalis L. f. ; Myristica aromatica Lam)は、ニクズク科(Myristicaceae)ニクズク属(Myristica Gronov.)に属する常緑高木で、香辛料原料として、モルッカ諸島,ジャワ,マレー,スマトラ等で、広く栽培されている。仮種皮を除いた種子をナツメグ、仮種皮をメースといい、香辛料及び薬用として広く利用さており、特に種子は消化不良,腹痛,下痢等に用いられている。しかしながら、ニクヅク及びその抽出物が、ヒスタミンH1受容体遮断作用を有することはもちろん、抗アレルギー作用を発揮することは全く知られていなかった。
【0008】
【発明の実施の形態】
ニクズクは、種子をそのまま、若しくは種皮を取り除いた種子、仮種皮を、そのまま、若しくは溶媒で抽出して得られる抽出物として用いる。
【0009】
ニクズク抽出物を得る際の抽出溶媒としては、水の他、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。抽出の際のニクズクと溶媒との比率は特に限定されないが、ニクズク1に対して溶媒0.1〜1000重量倍、特に抽出操作,効率の点で、0.5〜100重量倍が好ましい。抽出時、抽出効率を上げるため撹拌を行ったり、抽出溶媒中でホモジナイズしてもよい。抽出温度としては、5℃程度から抽出溶媒の沸点以下の温度とするのが適切である。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度によっても異なるが、4時間〜2週間程度とするのが適切である。
【0010】
ニクズクの上記溶媒による抽出物は、そのままでも本発明に係るヒスタミンH1受容体遮断剤,抗ヒスタミン剤,及び抗アレルギー剤に含有させることができるが、濃縮,乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いは抗アレルギー作用を損なわない範囲で脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。
【0011】
本発明に係るヒスタミンH1受容体遮断剤,抗ヒスタミン剤,及び抗アレルギー剤は、食品,医薬品,化粧料などに添加,配合して用いることができる。食品においては、油脂製品や乳化製品、清涼飲料等に添加することができる。医薬品では経口剤,外用剤,注射剤,吸入剤,点鼻・点眼剤等に添加することができ、これらの使用方法に応じて、錠剤,液剤,注射剤,軟膏,クリーム,ローション,エアゾール剤,座剤等の所望の剤型にすることができる。また、必要に応じて賦形剤,基剤,乳化剤,安定剤,溶解助剤,矯味剤,保存剤,芳香剤,着色剤,コーティング剤などを適宜配合することができる。化粧料としては、化粧水,乳液,クリーム等に添加することができ、必要に応じて油分,保湿剤,紫外線吸収剤,水溶性高分子,酸化防止剤,界面活性剤,金属イオン封鎖剤,抗菌防腐剤等が配合できる。さらに他の抗炎症剤,抗アレルギー剤、例えば、グリチルリチン酸類,水溶性アズレン,塩酸ジフェンヒドラミン,dl−α−トコフェロール及びその誘導体,ビタミンB2及びB6等と共に用いることによりさらにその効果を高めることもできる。
【0012】
医薬品として利用する場合のニクズク及びその抽出物の投与量は、使用するニクズクの種類,精製の程度や、患者の年齢,症状等により大きく変動するが、一般には、経口投与の場合、乾燥重量として5〜500mg/日の範囲である。食品や化粧品に配合する場合は、その効果や添加した際の香り、色調の点から考え、0.0001〜5重量%の濃度範囲とすることが望ましい。
【0013】
【実施例】
本発明の特徴について、実施例により詳細に説明する。実施例の説明に先立ち、各実施例で使用したニクズク抽出物の調製方法を述べる。
【0014】
[ニクズク抽出物1]
ニクズクの種皮及び仮種皮を取り除いて乾燥させた種子100gを粉砕し、1000gの50容量%エタノール水溶液中に室温にて7日間浸漬し、上清を濾過することによりニクズク抽出物1を調製した。
【0015】
[ニクズク抽出物2]
ニクズク種子を圧搾して油を搾ったものを、ニクズク抽出物2とした。
【0016】
続いてニクズク,及びニクズク抽出物を含有するヒスタミンH1受容体遮断剤についての実施例を示す。
【0017】
[実施例1] ローション剤
(1)エタノール 15.00(重量%)
(2)ヒドロキシエチルセルロース 0.10
(3)パラオキシ安息香酸メチル 0.10
(4)ニクズク抽出物1 0.01
(5)精製水 84.79
製法:(1)〜(4)を順次(5)に添加し、均一に溶解する。
【0018】
[実施例2] 乳剤
(1)ステアリン酸 0.2(重量%)
(2)セタノール 1.5
(3)ワセリン 3.0
(4)流動パラフィン 7.0
(5)ポリオキシエチレン(10EO)モノオレイン酸エステル 1.5
(6)酢酸トコフェロール 0.2
(7)ニクズク抽出物2 0.4
(8)グリセリン 5.0
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(10)トリエタノールアミン 0.1
(11)精製水 81.0
製法:(1)〜(7)の油相成分を混合,加熱して均一に溶解し、70℃に保つ。一方(8)〜(11)の水相成分を混合,加熱して均一とし、70℃とする。この水相成分に前記油相成分を撹拌しながら徐々に添加して乳化し、冷却する。
【0019】
[実施例3] ゲル剤
(1)ジプロピレングリコール 10.0(重量%)
(2)カルボキシビニルポリマー 0.5
(3)水酸化カリウム 0.1
(4)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(5)精製水 88.8
(6)ニクズク抽出物1 0.5
製法:(5)に(2)を均一に溶解した後、(1)に(4)を溶解して添加し、次いで(3)を加えて増粘させ、(6)を添加,混合する。
【0020】
[実施例4] クリーム剤
(1)ミツロウ 6.0(重量%)
(2)セタノール 5.0
(3)還元ラノリン 8.0
(4)スクワラン 27.5
(5)グリセリル脂肪酸エステル 4.0
(6)親油型グリセリルモノステアリン酸エステル 2.0
(7)ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタン
モノラウリン酸エステル 5.0
(8)ニクズク抽出物2 0.5
(9)プロピレングリコール 5.0
(10)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(11)精製水 36.9
製法:(1)〜(8)の油相成分を混合,溶解して85℃に加熱する。一方、(9)〜(11)の水相成分を混合,溶解して85℃に加熱する。次いで、前記水相に油相成分を添加して予備乳化した後、ホモミキサーにて均一に乳化し、冷却後40℃にて、(11)の成分を添加する。
【0021】
[実施例5] 散剤
(1)ケイ酸アルミン酸マグネシウム 95.3(重量%)
(2)カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5
(3)ニクズク種子 0.2
製法:(1)〜(3)の粉体を混合後、粉砕機にて粉砕し、均一に分散する。
【0022】
[実施例6] キャンデー
(1)白糖 60.0(重量%)
(2)水飴 39.5
(3)ニクズク仮種皮粉砕物 0.4
(4)香料 0.1
製法;(1)と(2)を加熱混合均一化した後冷却し、70℃で(3),(4)の成分を添加し、混合均一化した後成型する。
【0023】
[実施例7] 錠剤
ニクズク種子150gを粉砕し、同量の乳糖及びステアリン酸マグネシウム5gと混合し、打錠機にて直径10mm、重量300mgの錠剤を製造した。
【0024】
上記実施例1について、モルモット回腸の収縮阻害を指標として、ヒスタミンH1受容体に対するヒスタミンの結合阻害作用を評価した。評価は、実施例1及び比較のために1μM塩酸ジフェンヒドラミンの溶液環流下にモルモット回腸を置き、ヒスタミンを生理食塩水に0.001〜300μMの範囲で添加して回腸の収縮を記録し、生理食塩水環流下に行った対照と比較して行った。なお、実施例1環流下で収縮試験を行った後洗浄し、再び生理食塩水環流下にて収縮実験を行い、対照2とした。結果は、図1に示した。
【0025】
図1中対照において、ヒスタミン濃度と収縮率との間にはシグモイド様の曲線が得られるが、本発明の実施例1存在下では、塩酸ジフェンヒドラミン存在下の場合と同様にヒスタミン濃度−収縮率曲線が高濃度側にほぼ並行に移動していた。これにより、実施例1によるヒスタミンH1受容体への結合阻害は、競合的な拮抗阻害であることが示された。なお、本発明の実施例1環流下で収縮実験を行った後洗浄し、再び生理食塩水環流下にて収縮実験を行った対照2は、対照と同様の収縮が見られ、ヒスタミンH1受容体の状態に変化が生じていないことが示された。
【0026】
次にI型アレルギー性の蕁麻疹患者に本発明の実施例7を服用させ、そう痒感及び発疹の改善効果を評価した。その際、比較のために、塩酸ジフェンヒドラミン20g,乳糖280g,ステアリン酸マグネシウム5gにて実施例7と同様に調製した錠剤を比較例として同時に評価した。蕁麻疹患者20名を1群とし、各群に、本発明の実施例7及び比較例をブラインドにて、1回1錠を1日3回,3日間内服させた。その後、各患者よりそう痒感の改善効果について聞き取り調査を行い、「改善」,「やや改善」,「変化無し」,「悪化」の4段階にて評価させた。また、患部の発疹の状態を塗布開始前と終了後で比較観察し、「軽減」,「やや軽減」,「変化無し」,「悪化」の4段階で評価した。結果は、各評価を得たパネラー数にて表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から明らかなように、本発明の実施例7使用群では、全パネラーにおいてそう痒感及び発疹の改善傾向を認めており、そう痒感では、20名中15名において明確な改善が、発疹では、20名中8名において明確な軽減が観察されていた。このそう痒感の改善効果及び発疹の軽減効果は、塩酸ジフェンヒドラミンを含有する比較例と遜色のないものであった。さらに、実施例7使用群においては、塗布部における皮膚刺激性反応や皮膚感作性反応はもちろん、全身性の刺激性又は感作性反応は全く見られなかった。
【0029】
なお、本発明の上記実施例1〜実施例7においては、25℃で6ヶ月間保存した場合、変色,変臭,含有成分の析出,凝集,相分離等の状態の変化は全く見られなかった。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、ヒスタミンH1受容体に対し、選択的且つ高い遮断作用を有し、ヒスタミンの関与するI型アレルギー反応や、虫刺され,皮膚そう痒症等のかゆみの抑制に有効で、副作用がなく安全で且つ安定なヒスタミンH1受容体遮断剤,抗ヒスタミン剤,及び抗アレルギー剤を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有効成分であるニクズク抽出物のヒスタミンによる収縮に対する阻害作用を塩酸ジフェンヒドラミンと比較して示す図である。
Claims (4)
- ニクズク及びその抽出物を有効成分とする抗アレルギー剤。
- ニクズク及びその抽出物を有効成分とする抗I型アレルギー剤。
- ニクズク及びその抽出物を有効成分とする抗ヒスタミン剤。
- ニクズク及びその抽出物を有効成分とするヒスタミンH1受容体遮断剤。
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JP2002223515A JP2004059546A (ja) | 2002-07-31 | 2002-07-31 | 抗アレルギー剤 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006096672A (ja) * | 2004-09-28 | 2006-04-13 | A Pharma Kindai Co Ltd | 抗アレルギー剤及び抗掻痒剤 |
CN105250522A (zh) * | 2015-10-30 | 2016-01-20 | 北京工商大学 | 具有防治蚊虫叮咬功效的外用中药组合物、护肤制剂及其制备方法 |
-
2002
- 2002-07-31 JP JP2002223515A patent/JP2004059546A/ja active Pending
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CN105250522A (zh) * | 2015-10-30 | 2016-01-20 | 北京工商大学 | 具有防治蚊虫叮咬功效的外用中药组合物、护肤制剂及其制备方法 |
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