JP2004059434A - シクロドデカノンの製造方法 - Google Patents
シクロドデカノンの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004059434A JP2004059434A JP2002215370A JP2002215370A JP2004059434A JP 2004059434 A JP2004059434 A JP 2004059434A JP 2002215370 A JP2002215370 A JP 2002215370A JP 2002215370 A JP2002215370 A JP 2002215370A JP 2004059434 A JP2004059434 A JP 2004059434A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- catalyst
- reaction
- reaction mixture
- ecd
- recovered
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P20/00—Technologies relating to chemical industry
- Y02P20/50—Improvements relating to the production of bulk chemicals
- Y02P20/582—Recycling of unreacted starting or intermediate materials
Landscapes
- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Abstract
【課題】シクロドデカトリエン(CDT)から高収率をもってシクロドデカノン(CDON)を製造する方法の提供。
【解決手段】CDTをH2 O2 によりエポキシ化し、得られた反応混合液を油/水相分離し、その油相から未反応CDTを回収し、得られたエポキシシクロドデカジエン(ECD″)を、白金担持触媒の存在下に水素添加し、得られたエポキシシクロドデカン(ECD)をハロゲン化アルカリ触媒の存在下に異性化してCDONを製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】CDTをH2 O2 によりエポキシ化し、得られた反応混合液を油/水相分離し、その油相から未反応CDTを回収し、得られたエポキシシクロドデカジエン(ECD″)を、白金担持触媒の存在下に水素添加し、得られたエポキシシクロドデカン(ECD)をハロゲン化アルカリ触媒の存在下に異性化してCDONを製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロドデカトリエンからシクロドデカノンを製造する方法に関する。更に詳しく述べるならば、本発明はシクロドデカトリエンからエポキシシクロドデカジエンを製造し、さらにエポキシシクロドデカジエンの炭素−炭素二重結合を水素添加し、得られたエポキシシクロドデカンを異性化することによりシクロドデカノンを製造する方法に関する。本発明方法により得られるシクロドデカノンは、ラウロラクタム、ドデカン二酸、及びドデカンジオール等の原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
シクロドデカノンの従来から知られている工業的な製法としては、シクロドデカトリエンを水素添加して得られるシクロドデカンを、ホウ酸触媒の存在下、酸素酸化槽において酸化してシクロドデカノンおよびシクロドデカノールを調製し、得られた反応混合物から、ホウ酸を水で抽出し、ホウ酸抽出後の未反応シクロドデカン、シクロドデカノン、シクロドデカノール、酸、その他の混合物を含有する反応液をアルカリ水溶液で処理して酸成分を除き、かつ未反応のシクロドデカンを回収し、残存フラクションを酸素酸化槽へリサイクルし、シクロドデカノンおよびシクロドデカノールのうちのシクロドデカノールを脱水素してシクロドデカノンを調製する製造方法が知られている。しかし、この方法は、下記の問題点を有し、必ずしも工業的に満足すべきものではない。
即ち、酸素酸化槽では、ホウ酸触媒を、シクロドデカンを主成分とする有機反応相中に均一に溶解させる必要があり、一方、この酸素酸化槽で生成したシクロドデカノールとホウ酸触媒とから生成するホウ酸エステルを、水と接触させてホウ酸触媒のみを反応液相中から水相中へ移動させる工程が必要である。さらにシクロドデカノンの酸素酸化では少量の酸も生成するため、これをアルカリ水溶液で除去した後、未反応のシクロドデカンを回収する必要がある。さらに、ホウ酸触媒法では、シクロドデカノールが生成物の主成分であり、さらに脱水素してシクロドデカノンとする必要がある。また、ホウ酸触媒法の反応成績は、例えばUS3,651,153によれば転化率25%であり、シクロドデカノン及びシクロドデカノールへの選択率は78%であって、この反応成績は、特に優れているとは言えない。
【0003】
ホウ酸触媒以外の酸素酸化法としては、例えば、特開平10−053575号公報に可溶性遷移金属触媒と燐酸エステルとを触媒として使用する方法が開示されている。この製造法の利点としては、ホウ酸の除去・反応槽へのリサイクルの工程は省略できるという点があるが、シクロドデカンの転化率を上げると選択率が大幅に低下するため、ホウ酸法程度に転化率を上げることができず、大量の未反応のシクロドデカンを回収・再使用しなければならないという問題点がある。
【0004】
また、その他の製造法として、特開平10−034389号公報には、シクロドデカンを酸化して主にその過酸化物を生成させ、ついで可溶性の三酸化モリブデン触媒の存在下、シクロドデカトリエンと、前記シクロドデカン過酸化物含有酸化液とを接触させて、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを効率よく製造し、この1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン含有反応生成液を、水素添加用、固体触媒(Ni金属、Pt族金属/担体等)の存在下に水素添加工程に供して、シクロドデカノン、シクロドデカノールおよびシクロドデカンを主成分とする反応混合液を調製し、この反応混合液からシクロドデカンを回収して酸化反応用原料として利用し、一方、得られたシクロドデカノンおよびシクロドデカノールのうちシクロドデカノールを脱水素してシクロドデカノンを調製する製造法が開示されている。
しかし、この製造法には、シクロドデカンを酸素酸化して過酸化物を得る工程の安全性および選択性の面からシクロドデカンの転化率を10%程度までしか上げる事ができないこと、中間体の1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの濃度を高める事ができないこと、及び、満足すべき量のシクロドデカノンおよびシクロドデカノールを得ようとすれば、装置の大型化が必要であること、及びシクロドデカンを大量に循環再使用する必要があることなどの問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シクロドデカトリエンからシクロドデカノンを工業的に製造する方法において、高収率・高選択率で、かつ、原料の循環・再利用量を少なくすることができ、かつ連続化することも可能であるという経済性の高い方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、公知の方法における問題点を解決するために鋭意研究した結果、シクロドデカトリエンを過酸化水素で酸化してエポキシシクロドデカジエンとし、このエポキシシクロドデカジエンの炭素−炭素二重結合に水素添加してエポキシシクロドデカンを調製し、このエポキシシクロドエカンを異性化することによってシクロドデカノンを高収率、高選択率をもって経済的に製造できることを見出した。
【0007】
本発明のシクロドデカノンの製造方法は、
シクロドデカトリエンと、過酸化水素とを、エポキシ化触媒の存在下において反応させて、エポキシシクロドデカジエンを含む反応混合液を調製する第1工程と、
前記反応混合物を分離槽に導入して、これを油/水2相に分離してエポキシシクロドデカジエンと、未反応シクロドデカトリエンとを含む油相フラクションを捕集する第2工程と、
前記油相フラクションから、前記未反応シクロドデカトリエンを分離回収し、かつ前記エポキシシクロドデカジエンを捕集する第3工程と、
前記捕集されたエポキシシクロドデカジエンを、担体と、それに担持された白金含有触媒成分とからなる触媒の存在下に、水素と接触させて、エポキシシクロドデカンを製造し、かつ得られた反応混合物から前記触媒を分離回収してエポキシシクロドデカンを含有する液体フラクションを捕集する第4工程と、
前記エポキシシクロドデカン含有フラクションを、アルカリ金属のハロゲン化物を含む触媒の存在下に異性化反応に供して、前記エポキシシクロドデカンを、シクロドデカノンに異性化し、この反応混合物からシクロドデカノンを分離捕集する第5工程と、
を含むことを特徴とするものである。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第1工程において用いられるエポキシ化触媒が、タングステン化合物、燐酸及び少なくとも1種の四級オニウム塩を含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第3工程において、分離回収された未反応シクロドデカトリエンを、前記第1工程に還流して、前記第1工程の出発原料として再使用することをさらに含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第4工程において用いられた触媒の担体が、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、及びスピネルから選ばれた1種からなり、前記白金含有触媒成分が白金であることが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第4工程において、前記反応混合液から前記触媒が濾過によって分離回収され、この分離回収された触媒を、前記エポキシシクロドデカンを含有する液体フラクションの一部分を用いて分散して、回収触媒のスラリーを調製し、この回収触媒スラリーを、前記第4工程において水素化触媒として再使用することをさらに含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第5工程において用いられる触媒が、ヨー化リチウムを含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第5工程において得られた反応混合物から前記アルカリ金属のハロゲン化物を含む触媒を回収し、この回収触媒を、前記第5工程において異性化触媒として再使用することをさらに含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、第1〜5工程を連続的に行ってもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のシクロドデカトリエン(CDT)からシクロドデカノン(CDON)を製造する方法の一例のフローシートが示されている。
図1において、CDTと過酸化水素とを、第1工程(エポキシ化反応)に供してエポキシシクロドデカジエン(ECD″)を製造し、得られた反応混合物は第2工程(分離工程)に送られて、反応混合物中のECD″と未反応CDTを含む油相フラクションが、その他の成分を含む水相フラクションから分離捕集され、この油性フラクションを第3工程(未反応CDTの回収)に送って、ECD″を分離捕集し、必要により分離された未反応CDTを回収して第1工程において再使用し、捕集したECD″を第4工程に送って、これに白金担持触媒の存在下に水素ガスによる水素添加を施し、それによって生成したエポキシシクロドデカン(ECD)を、分離捕集して第5工程(異性化)に送って、ECDをCDONに異性化する。
【0009】
本発明方法の第1工程において、出発原料として使用されるシクロドデカトリエン(以下CDTと記載することもある)は、ブタンジエンを、チーグラー・ナッタ触媒存在下において、三量化して製造することができる。使用されるCDTのグレードには、特に制限はなく、市販品をそのまま用いてもよく、或いは自家合成品を使用してもよいが、これらを、予じめ蒸留するなどして精製したものを使用することが好ましい。また、CDTのシス体あるいはトランス体等の異性体のいかなるものを使用しても何ら問題はない。これらは混合物で使用することもできる。
さらに、本発明方法の第1工程から送り出される反応混合物から未反応のCDTを回収して使用してもよい。
【0010】
本発明方法の第1工程において使用される過酸化水素のグレード、濃度などには特に制限はないが、取り扱い上の安全性や経済性を考慮すると、10〜70重量%濃度の水溶液を用いることが好ましい。その使用量は、CDTに対して0.05〜1.2倍モル量であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0倍モルであり、更に好ましくは0.1〜0.5倍モルである。
【0011】
本発明方法の第1工程において使用されるエポキシ化触媒としては、少なくとも1種のタングステン化合物と、少なくとも1種の鉱酸と、少なくとも1種の四級オニウム塩との組み合わせを用いることができる。
第1工程エポキシ化触媒用タングステン化合物としては、タングステン原子を含有する無機酸又はその塩であることが好ましく、例えばタングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム等のタングステン酸及びその塩、並びに十二タングステン酸ナトリウム、十二タングステン酸カリウム、十二タングステン酸アンモニウム等の十二タングステン酸塩、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイタングステン酸、ケイタングステン酸ナトリウム、リンバナドタングステン酸、リンモリブドタングステン酸等のヘテロポリ酸及びその塩が挙げられる。より好ましくはタングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、リンタングステン酸が用いられる。これらタングステン化合物は単一種で用いられてもよく、或は二種以上を混合して使用されてもよい。
【0012】
本発明方法の第1工程のエポキシ化反応において使用するタングステン化合物の量は、CDTの質量に対して、0.0007〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.002〜3質量%である。
【0013】
本発明方法第1工程において使用されるエポキシ化触媒用四級オニウム塩としては、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリデシルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ジメチルジドデシルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムアイオダイド、及びフェニルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウムハライド、硫酸水素トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム硫酸水素塩、過塩素酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム過塩素酸塩、リン酸二水素トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウムリン酸二水素塩、硝酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム硝酸塩、珪弗化水素酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム珪弗化水素酸塩、並びに酢酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム酢酸塩等が好ましく用いられ、より好ましくは四級アンモニウムハライドが用いられ、さらに好ましくはトリオクチルメチルアンモニウムクロライド、及びトリデシルメチルアンモニウムクロライドが用いられる。
上記エポキシ化触媒における四級オニウム塩の使用量は、CDTの質量に対して、0.0003〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003〜2.5質量%である。
【0014】
本発明方法、第1工程において用いられるエポキシ化触媒用鉱酸としては、例えば、リン酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、ヘキサフルオロ珪酸、硝酸、テトラフルオロ珪酸等を用いることが好ましく、より好ましくはリン酸および硫酸が用いられ、さらに好ましくはリン酸が用いられる。これら鉱酸は、単一種で用いられてもよく、或は二種以上を混合して使用してもよい。
【0015】
上記エポキシ化触媒における鉱酸の使用量は、CDT質量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%である。
【0016】
本発明方法、第1工程におけるエポキシ化反応では、反応溶媒として有機溶媒を使用することもできる。使用する有機溶媒は、水と均一に混ざり合うことがなく、かつ反応を阻害しないものである限り、格別の制限はない。この有機溶媒として例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族非ハロゲン炭化水素、並びにベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。これらは単一種で用いられてもよく、或は二種以上を混合して使用することもできる。前記有機溶媒の使用量は、CDT質量に対し、0〜20質量倍であることが好ましく、より好ましくは0〜10質量倍である。
【0017】
本発明方法、第1工程のエポキシ化反応は、CDTと過酸化水素とが分離した二液相中に含まれるようにして行なうことが好ましく、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、CDT、過酸化水素(水溶液)、タングステン化合物、四級オニウム塩および鉱酸(水溶液)を混合し、例えば加熱攪拌する方法によって、常圧又は加圧下で行われる。反応温度には、格別の制限はないが、20〜120℃であることが好ましく、より好ましくは30〜100℃である。このとき、CDT及び生成するエポキシシクロドデカジエンを含む油性液相と、過酸化水素、タングステン化合物、鉱酸、四級オニウム塩を含む水性液相とが、微細に分散し、互に接触して反応する。
【0018】
本発明方法の第1工程で得られた反応混合液からエポキシシクロドデカジエン(以下ECD″と記載することもある)及び未反応のシクロドデカトリエンを含有する油性液相フラクションを捕集する第2工程は、第1工程により得られたエポキシ化反応混合液を、油/水二相に分離することにより実施することができる。なお、このとき未反応の過酸化水素あるいは生成した過酸化物を分解除去するために、第1工程と第2工程との間において、エポキシ化反応混合液をアルカリ水溶液で処理することが好ましい。
【0019】
本発明方法の第2工程で分離捕集された油相フラクションから未反応CDTを分離回収し、エポキシシクロドデカジエン(ECD″)を得る第3工程は、前記捕集された油相フラクションに蒸留分離を施すことによって行われる。蒸留装置としては、通常の蒸留塔を使用でき、単蒸留あるいは精密蒸留で行なうことができる。蒸留条件には、格別の制限はなく、通常、減圧下で、実施されることが好ましい。
【0020】
本発明方法の第3工程で得られたECD″を第4工程に供して、担体と、それに担体されている白金含有触媒成分とからなる触媒の存在下、水素と接触させて水素化して、エポキシシクロドデカン(以下ECDと記載することもある)が調製される。この工程において使用する白金担持触媒とは、白金元素を含む化合物からなる触媒成分を、不活性担体に担持させた固体触媒、好ましくは粉末触媒、更に好ましくは平均粒径が数μm〜数百μmの微粒子触媒である。前記不活性担体としては、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、及びスピネル等があげられるが、好ましくは、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナが用いられ、より好ましくは活性炭が用いられる。また、白金含有触媒成分の不活性担体による担持量は、白金元素量に換算して、不活性担体質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜8質量%である。触媒中の白金含有触媒成分は、不活性支持体の表面又は内部、若しくはその両方に担持されていてもよい。
【0021】
本発明方法、第4工程の反応において使用される前記白金含有触媒成分は、例えばハロゲン化白金、ハロゲン化白金酸、ハロゲン化白金酸塩、水酸化白金、硫化白金、酸化白金、白金酸塩等から選ばれた1種以上からなることが好ましい。より具体的に述べるならば、塩化白金、酸化白金、白金酸ナトリウム、白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム、塩化白金酸カリウムなどから選ばれた1種以上からなることが好ましい。白金担持触媒の量は、白金元素量に換算して原料のECD″質量に対し0.0005倍モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.000001〜0.0005倍モルであり、さらに好ましくは0.000005〜0.0004倍モルである。白金担持触媒の使用量があまりに少なすぎると反応に長時間を要するという不都合を生ずることがありまたそれがあまりに多いと目的物の収量が低下することがある。
【0022】
本発明方法、第4工程水素化反応では、溶媒を使用する必要はないが、有機溶媒を使用してもよく、その場合には、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−テトラデカン、シクロヘキサン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、t−ブタノール、t−アミルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を用いることが好ましい。これら溶媒は単一種で用いられてもよく、或は、二種以上を混合して使用してもよい。その使用量は、原料の1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの質量に対して、0〜20質量倍であることが好ましく、更に好ましくは0〜10質量倍である。
【0023】
本発明方法、第4工程において、エポキシシクロドデカジエンの二重結合に対する水素添加は、反応器を水素ガス雰囲気に満たして、その中でECD″と白金担持触媒とを混合し、水素ガスの反応水素圧を、好ましくは0.8〜9MPa に、より好ましくは1〜8MPa に、さらに好ましくは3〜7MPa に調整して行われる。
このときの反応温度については、格別の制限はないが、40℃より高いことが好ましく、より好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは60〜150℃である。
反応水素圧および反応温度があまりに低いときは、反応に長時間を要するという不都合を生ずることがあり、また、反応水素圧および反応温度があまりに高いときは、還元反応が過度に進み、目的物の収量が低下することがある。
【0024】
本発明方法、第4工程における水素添加反応後の反応混合液は、濾過装置に送られ、触媒粒子が分離捕集され、触媒粒子を含まないエポキシシクロドデカン(ECDと記載することもある)含有フラクションを捕集する。このとき、水素添加反応後の反応混合液を大量に濾過装置に供給すると、濾過面上の触媒の堆積量が増加して圧損が増加し、多大の動力を必要とすることがある。そこで、濾過面に適量の触媒が堆積した時点で、濾過した反応生成液フラクションの一部を利用して、これを逆面から流して使用済み触媒のスラリー液を形成し、これを第4工程の水素添加反応器に再送入して触媒として再利用することが好ましい。スラリー中の回収触媒濃度には特に制約はないが、2〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは2〜20重量%であり、より好ましくは3〜15重量%である。このように回収触媒の使用量を調節することが好ましい。ECD含有フラクションを大量に使用してスラリー中の触媒濃度をあまりに低くすると、スラリーとともに、ECDを多量に、第4工程の反応槽に戻すことになり、生産性が低下するばかりでなく、ECDが水素還元されてシクロドデカノール(CDOLと記載することもある)を副生するという不都合を生ずることがある。また、スラリー中の触媒濃度があまりに高いと、スラリー粘度が大きくなるため、スラリーを送液するための所要ポンプ動力が高くなるだけでなく、触媒による配管等の閉塞が起こりやすくなるなどの不都合が生ずることがある。なお、濾過装置により捕集された触媒の一部を系外に抜き出し、新鮮な触媒を使用済み触媒と混合し、これを反応槽へ供給して水素添加反応に供する方法も用いることができる。
【0025】
本発明方法、第4工程の水素添加反応時間は、触媒の使用量あるいは反応温度に応じて適宜に設定されるが、通常10時間以内で十分である。
また、水素添加反応の操作法として、連続的に操作してもよく、或は、バッチ的に操作してもよい。連続的に操作する場合には、第3工程で得られたECD″を1段または多段装置の1段目に供給し、順次につぎの段へ供給し、最終段より抜き出してECDに転化させた後、これをろ過装置へ供給する。一方、水素を各段に吹き込み、気液の混合を良好にして、スムーズに反応させる。装置のタイプとしては、攪拌気泡塔、気泡塔、塔型の多孔板塔などを用いることができる。
バッチ的に操作する場合には、1段の装置を設け、ECD″をこの装置に仕込んだ後、水素を供給して気液の混合を良好にしてECDにスムーズに転化させた後、ろ過装置へ供給する。水素は連続的に所定量を供給し、一部を系外へ抜き出す方式と反応に要して消費されただけを補給し、系外へ抜き出さない方式などが考えられる。
上記のように、本第4工程については、バッチ方式と連続方式とのいずれの操作を選んでもよい。
【0026】
本発明方法、第4工程で得られたECD含有フラクションを第4工程に送入して、アルカリ金属のハロゲン化合物触媒存在下にECDを異性化反応に供してシクロドデカノン(以下CDONと記載することもある)を製造する。この第5工程で使用される触媒は、好ましくは臭化リチウムまたはヨウ化リチウムを含むものである。これらのリチウム化合物には、それを触媒として使用するために特別な前処理等を施す必要なく、通常市販されている臭化リチウムまたはヨウ化リチウムをそのまま使用できる。具体的には、無水臭化リチウム、臭化リチウム一水和物、臭化リチウム二水和物、臭化リチウム三水和物、無水ヨウ化リチウム、ヨウ化リチウム一水和物、ヨウ化リチウム二水和物、ヨウ化リチウム三水和物等が好ましく用いられる。また、これらの化合物を水溶液として反応に使用してもよい。
【0027】
本発明方法、第5工程の異性化反応触媒の使用量は、反応条件等にも影響されるが、ECD 1モルに対し、0.01〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5モル%である。使用量が余りに少ないと反応時間が長くなり工業的に不利になることがあり、またそれが余りに多いと触媒コストがかかりすぎ経済的に不利になることがある。
【0028】
本発明方法、第5工程の異性化反応では、反応中のガス雰囲気が重要であり、反応系に含まれる反応成分及び触媒と反応することのないガス雰囲気下で実施する。このような非反応性ガス雰囲気下でECDの異性化反応を実施することにより、効率的(反応速度が大)かつ高転化率、高選択率で、さらに高沸物の生成がほとんどないCDONの工業的製造方法が可能となった。本発明において使用する非反応性ガスとしてヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトン、キセノン、水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンガス、エチレンガスなどを用いることができるが、好ましくは窒素、アルゴンガス、二酸化炭素が用いられる。これらは単一種で用いられてもよく、或は2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明方法、第5工程のECDの異性化反応は、必要により無極性溶媒を使用することも可能であるが、通常は無溶媒で実施され、この場合、ECDが溶媒としての役割をはたす。すなわち、非反応性ガス雰囲気下で、反応器にECD含有フラクションと、好ましくは臭化リチウムあるいはヨウ化リチウムを含む異性化触媒を仕込み、非反応性ガス雰囲気中でECDの異性化反応を行うことが好ましい。
前記無極性溶媒としては、炭素数6〜12の環状炭化水素があげられるが、その使用量はECDの使用量を超えないことが好ましい。
【0030】
本発明方法、第5工程の異性化反応温度は、使用する触媒の種類及び使用量により多少異なるが、臭化リチウムが用いられる場合には、120〜300℃であることが好ましく、より好ましくは150〜280℃であり、さらに好ましくは170〜260℃である。またヨウ化リチウムが用いられる場合には100〜300℃であることが好ましく、より好ましくは130〜280℃であり、さらに好ましくは150〜260℃である。
反応温度が余りに低いと、反応速度が遅く、工業的に不利を生ずることがあり、またそれが余りに高いと、高沸点物の生成が多くなるという不都合を生ずることがある。
【0031】
本発明方法、第5工程の異性化反応時間は、触媒のタイプ及び使用量並びに反応温度に応じて適宜設定することができるが、通常10時間以内で十分である。
また、前記異性化反応器形式も、それが連続的に実施できることが好ましいが、格別の制限はなく、反応圧力にも制限はなく、適宜に設定することができる。
【0032】
本発明方法、第5工程において、ECDの転化率をほぼ100モル%にすることが可能であり、このため、CDONを分離・精製方法に格別の制限はなく、通常の蒸留を用いることができる。
【0033】
第1工程から第5工程まで全て連続で操作する場合は、各工程の前後に中継タンクを設けることが有効であるが、これらタンクを省略することも可能である。また、第4工程だけをバッチ操作する場合には、原料ECD″、製品ECDおよび反応用水素を収容するためのタンクを設け、これらにバッチ操作時間に適応する量を溜め込み、他の工程の連続操作の妨げにならないようにすれば、全体として連続的に操業することができる。
【0034】
【実施例】
本発明方法を下記実施例によりさらに説明する。
【0035】
実施例1(エポキシシクロドデカジエン(ECD″)の製造(第1〜3工程))
内径210mm、オーバーフロー高さ200mmの円筒型反応器(内容積=約7リットル、ジャッケット付き)を3基直列に繋ぎ、原料のCDTと、60質量%の濃度の過酸化水素水溶液とを第1反応器に供給した。なお、触媒のNa2 WO3 ・2H2 Oと85重量%燐酸とを60質量%濃度の過酸化水素水溶液の質量に対して、夫々2300ppm (対質量)になるように予め添加した。また、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(Aldrich 社商品名:Aliquat)をCDT質量に対して200ppm (対重量)になるように予め添加した。触媒入りのCDTを13.2kg/hの供給速度で、また触媒入り60重量%過酸化水素水溶液を0.84kg/hの供給速度で第1反応器に供給した。各反応器の温度は、各反応器のジャケットに熱水を供給することにより75℃に制御した。各反応器の中心部に攪拌機が設置されており、全ての反応器についてこれを600rpm で運転した。第3反応器を出た反応混合物について油/水相分離操作を施し、油相フラクション(ECD″及び未反応CDTを含む有機溶媒)と水相フラクションに分けた。定常状態に到達後、第3反応器出口液をサンプリングし、水相と油相に分け、水相と油相をガスクロマトグラフィー、沃素滴定および水相中の総有機カーボン量分析(TOC分析)で測定した。数点の分析を実施し、平均値を用いて反応成績を推算した。その結果、CDT転化率=17.1モル%、H2 O2 転化率=99.1モル%であり、一方、ECD″選択率は、CDT基準において93.6モル%であり、H2 O2 基準において87.4モル%であった。
【0036】
この条件で600時間の定常運転を実施し、得られた油相フラクションを内径250mm、高さ9mの蒸留塔(塔底部容積300リットル)で蒸留して、未反応のCDT(塔底温度130℃、圧力30mmHg)を分離回収し、かつ中間製品のECD″(塔底温度160℃、圧力30mmHg)を分離・精製した。得られた精製ECD″の純度は99.7%であり、その収量は958kgであった。
【0037】
実施例2(回収CDTからのECD″の製造)
実施例1の蒸留操作で得られた回収CDTを用い、実施例1と同様の装置を用いて同じ条件の下でエポキシ化反応を行った。その反応成績は実施例1と殆ど同一の結果が得られた。すなわち、CDT転化率=17.2モル%、H2 O2 転化率=99.0モル%、ECD″選択率(CDT基準)=93.6モル%、ECD″選択率(H2 O2 基準)=87.1モル%であった。
【0038】
実施例3(フレシュCDTと回収CDTの混合物からのECD″の製造)
実機の運転操作を想定して、実施例1の蒸留操作で得られた回収CDT 4質量部とフレシュCDT 1質量部とを混合して原料CDTとし、これにCDTの質量に対して、200ppm のトリオクチルメチルクロライドを、混合し、このCDTを13.2kg/hの供給速度で、また実施例1と同様にNa2 WO4 と、リン酸とを含む60質量%の過酸化水素水溶液を、1.15kg/hの供給速度で供給し、CDT/H2 O2 モル比=4、の条件下において、実施例1と同じ条件下で反応させた。結果は、CDT転化率=23.2モル%、H2 O2 転化率=98.3モル%、ECD″選択率(CDT基準)=91.4モル%、ECD″選択率(H2 O2 基準)=83.2モル%であった。
【0039】
実施例4(エポキシシクロドデカン(ECD)の製造、第4工程)
実施例1で得られたECD″を用いて、以下のようにECDを製造した。
内径140mm、オーバーフロー高さ330mmの円筒型反応器(内容積=5リットル、ジャッケット付き、伝熱面積=0.19m2 )を4基直列に繋いだ。第1反応器については、その内部に15mmの蛇管冷却装置(外径基準の伝熱面積=0.15m2 )が設置されていた。また各反応器は、中心部に攪拌機が設置されているものであった。また、水素ガスを、各円筒反応器の底部に設けられた内径4mmのパイプを通じて供給した。第1反応器の温度はジャッケットおよび蛇管に供給する熱水温度により制御し、第2反応器の温度はジャッケットへ供給する熱水温度で制御し、夫々80℃に保ち、第3および第4反応器の温度は熱媒で130℃に保った。反応器の圧力は5MPaGに保持された。
【0040】
実施例1で得られた精製ECD″中に5質量% Pt/C触媒を混ぜ、スラリー濃度0.1質量%の触媒スラリーを準備した。この触媒スラリーをポンプで昇圧し、2.5kg/hの流量で第1反応器に供給した。水素ガスは、その流量は第1槽1Nm3 /h、第2層0.3Nm3 /h、第3槽0.3Nm3 /h、第4槽0.2Nm3 /hに制御して供給した。攪拌機の回転数は650rpm である。反応状態が定常状態に達した後、8日間の連続運転を実施した。
得られた反応混合液の組成は、目的物のECD 99.3モル%、未反応ECD″0.01モル%、シクロドデカノン(CDON)0.02モル%、シクロドデカノール(CDOLと記載)0.35モル%、シクロドデカン(CDANと記載)0.19モル%、その他0.13モル%を含むものであった。この反応混合液をフィルターで濾過して触媒を分離回収し、ECD 455kgと触媒0.45kgを得た。ECD″からECDの、次式で定義された収率を計算した。
水素添加収率=(生成したECDとCDONの合計モル数)/(供給したECD″のモル数)=99.6モル%
【0041】
実施例5(ECDの製造;水添触媒の再利用、第4工程)
実施例4のフィルターで分離回収された触媒を用いて、実施例4と同様の実験を実施した。反応系が定常状態に達した後、3日間の連続運転を実施した。得られた反応混合液の組成は、目的物のECD 99.3モル%、未反応ECD″0.01モル%、CDON 0.03モル%、CDOL 0.38モル%、CDAN 0.19モル%、その他0.12モル%を含むものであった。
反応成績は実施例4のそれと殆ど同じであり、触媒は再使用可能なことが確認された。この反応混合液をフィルターで濾過して触媒と分離し、ECD 328kgを捕集し触媒0.33kgを回収した。
【0042】
実施例6(CDONの製造、第5工程:フレシュLiI触媒使用)
実施例4および5で得られたECDを用いて、下記のようにしてCDONを製造した。内径250mm、高さ400mmの円筒型グラスライニング製装置(ジャッケット付き)を3塔直列に繋いだ。各反応器のホールド量(反応流収量量)は夫々5リットルになるように、配管の垂直高さを調整した。反応器の中心部には攪拌機が設置され、これを200rpm で操作した。
触媒LiIをCDONに溶解し、LiI濃度6.67質量%の触媒含有液20リットルをジャッケット付きタンクA中に準備した。まず最初に各反応器にCDON液を張り込み、熱媒で160℃に昇温した。その後、タンクAの触媒含有液を、0.3kg/hの供給速度で第1反応器に供給し、それと同時に、実施例3および4で得られたECDを2.5kg/hの供給速度で第1反応器に供給した。第1反応器に供給された反応系は第2,3反応器を順次に経由した。第3反応器を出た反応混合液を内径250mm、高さ400mmのグラスライニング製装置(ジャッケット付き)に供給して、CDONを単蒸発させ、LiI触媒を濃縮した。
各反応器の反応温度は、第1反応器200℃、第2反応器210℃、第3反応器210℃となるようにジャッケットへ供給する熱媒の温度と流量を制御した。一方、CDONの単蒸発装置においては、ジャケット部へ熱媒を供給し、圧力13mmHg、塔底部の液温度148℃でCDONを単蒸発して捕集し、残留液状フラクション中のLiI触媒の濃度を約8倍に濃縮した。この触媒濃縮液がジャッケット付きタンクB(内容積20リットル)に収容し、その量が約5リットルに達した時点で反応装置の運転を停止した。
次に、第2反応器への触媒供給酸を、タンクAから0.03kg/h、タンクBから0.27kg/hに変更するとともに、タンクBから0.03kg/hの排出速度で抜き出したことを除き、それ以外は上述と同じ条件で第5工程を実験し、濃縮液中のCDON濃度および単蒸発させた留出液中CDON濃度を測定し、これらの濃度が定常になるまで運転した。定常状態下の反応結果を表1に示す。原料ECDからの製品CDONの収率は98.8モル%であった。
【0043】
【表1】
【0044】
上記本発明の方法により、
第1工程(酸化)では、CDTの転化率=17.1モル%の時のECD″への選択率(CDT基準)=93.6モル%、CDTの転化率=23.2モル%の時のECD″への選択率(CDT基準)=91.4モル%であり、
第4工程(水素添加)におけるECDの収率は99.6モル%であり、
第5工程(異性化)におけるCDONの収率は98.8モル%であった。
【0045】
この結果から、CDTから目的物CDONへの全工程収率を求めると、
第1工程のCDTの転化率=17.1モル%の場合、全工程を通じてのCDT基準のCDONの収率(反応のみを考慮)は92.1モル%であり、
CDT転化率=23.2モル%の場合、全工程を通じてのCDT基準のCDONの収率(反応のみを考慮)は89.9モル%であった。
これに対して、従来のホウ酸法の場合、CDTの水素添加およびCDOLの脱水素の収率を100モル%とみなしても、CDANの酸化転化率=25モル%でCDONへの選択率=78モル%であるから、本発明方法の高収率性が確認された。
【0046】
【発明の効果】
本発明の、CDTからCDONの製造方法は、各工程の収率が高く、副生物の種類も少なく、工程間のリサイクル量も少なく、従って環境を汚染することの少ない工業的な新規プロセスをはじめて提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一例のフローシート。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロドデカトリエンからシクロドデカノンを製造する方法に関する。更に詳しく述べるならば、本発明はシクロドデカトリエンからエポキシシクロドデカジエンを製造し、さらにエポキシシクロドデカジエンの炭素−炭素二重結合を水素添加し、得られたエポキシシクロドデカンを異性化することによりシクロドデカノンを製造する方法に関する。本発明方法により得られるシクロドデカノンは、ラウロラクタム、ドデカン二酸、及びドデカンジオール等の原料として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
シクロドデカノンの従来から知られている工業的な製法としては、シクロドデカトリエンを水素添加して得られるシクロドデカンを、ホウ酸触媒の存在下、酸素酸化槽において酸化してシクロドデカノンおよびシクロドデカノールを調製し、得られた反応混合物から、ホウ酸を水で抽出し、ホウ酸抽出後の未反応シクロドデカン、シクロドデカノン、シクロドデカノール、酸、その他の混合物を含有する反応液をアルカリ水溶液で処理して酸成分を除き、かつ未反応のシクロドデカンを回収し、残存フラクションを酸素酸化槽へリサイクルし、シクロドデカノンおよびシクロドデカノールのうちのシクロドデカノールを脱水素してシクロドデカノンを調製する製造方法が知られている。しかし、この方法は、下記の問題点を有し、必ずしも工業的に満足すべきものではない。
即ち、酸素酸化槽では、ホウ酸触媒を、シクロドデカンを主成分とする有機反応相中に均一に溶解させる必要があり、一方、この酸素酸化槽で生成したシクロドデカノールとホウ酸触媒とから生成するホウ酸エステルを、水と接触させてホウ酸触媒のみを反応液相中から水相中へ移動させる工程が必要である。さらにシクロドデカノンの酸素酸化では少量の酸も生成するため、これをアルカリ水溶液で除去した後、未反応のシクロドデカンを回収する必要がある。さらに、ホウ酸触媒法では、シクロドデカノールが生成物の主成分であり、さらに脱水素してシクロドデカノンとする必要がある。また、ホウ酸触媒法の反応成績は、例えばUS3,651,153によれば転化率25%であり、シクロドデカノン及びシクロドデカノールへの選択率は78%であって、この反応成績は、特に優れているとは言えない。
【0003】
ホウ酸触媒以外の酸素酸化法としては、例えば、特開平10−053575号公報に可溶性遷移金属触媒と燐酸エステルとを触媒として使用する方法が開示されている。この製造法の利点としては、ホウ酸の除去・反応槽へのリサイクルの工程は省略できるという点があるが、シクロドデカンの転化率を上げると選択率が大幅に低下するため、ホウ酸法程度に転化率を上げることができず、大量の未反応のシクロドデカンを回収・再使用しなければならないという問題点がある。
【0004】
また、その他の製造法として、特開平10−034389号公報には、シクロドデカンを酸化して主にその過酸化物を生成させ、ついで可溶性の三酸化モリブデン触媒の存在下、シクロドデカトリエンと、前記シクロドデカン過酸化物含有酸化液とを接触させて、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを効率よく製造し、この1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン含有反応生成液を、水素添加用、固体触媒(Ni金属、Pt族金属/担体等)の存在下に水素添加工程に供して、シクロドデカノン、シクロドデカノールおよびシクロドデカンを主成分とする反応混合液を調製し、この反応混合液からシクロドデカンを回収して酸化反応用原料として利用し、一方、得られたシクロドデカノンおよびシクロドデカノールのうちシクロドデカノールを脱水素してシクロドデカノンを調製する製造法が開示されている。
しかし、この製造法には、シクロドデカンを酸素酸化して過酸化物を得る工程の安全性および選択性の面からシクロドデカンの転化率を10%程度までしか上げる事ができないこと、中間体の1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの濃度を高める事ができないこと、及び、満足すべき量のシクロドデカノンおよびシクロドデカノールを得ようとすれば、装置の大型化が必要であること、及びシクロドデカンを大量に循環再使用する必要があることなどの問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シクロドデカトリエンからシクロドデカノンを工業的に製造する方法において、高収率・高選択率で、かつ、原料の循環・再利用量を少なくすることができ、かつ連続化することも可能であるという経済性の高い方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、公知の方法における問題点を解決するために鋭意研究した結果、シクロドデカトリエンを過酸化水素で酸化してエポキシシクロドデカジエンとし、このエポキシシクロドデカジエンの炭素−炭素二重結合に水素添加してエポキシシクロドデカンを調製し、このエポキシシクロドエカンを異性化することによってシクロドデカノンを高収率、高選択率をもって経済的に製造できることを見出した。
【0007】
本発明のシクロドデカノンの製造方法は、
シクロドデカトリエンと、過酸化水素とを、エポキシ化触媒の存在下において反応させて、エポキシシクロドデカジエンを含む反応混合液を調製する第1工程と、
前記反応混合物を分離槽に導入して、これを油/水2相に分離してエポキシシクロドデカジエンと、未反応シクロドデカトリエンとを含む油相フラクションを捕集する第2工程と、
前記油相フラクションから、前記未反応シクロドデカトリエンを分離回収し、かつ前記エポキシシクロドデカジエンを捕集する第3工程と、
前記捕集されたエポキシシクロドデカジエンを、担体と、それに担持された白金含有触媒成分とからなる触媒の存在下に、水素と接触させて、エポキシシクロドデカンを製造し、かつ得られた反応混合物から前記触媒を分離回収してエポキシシクロドデカンを含有する液体フラクションを捕集する第4工程と、
前記エポキシシクロドデカン含有フラクションを、アルカリ金属のハロゲン化物を含む触媒の存在下に異性化反応に供して、前記エポキシシクロドデカンを、シクロドデカノンに異性化し、この反応混合物からシクロドデカノンを分離捕集する第5工程と、
を含むことを特徴とするものである。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第1工程において用いられるエポキシ化触媒が、タングステン化合物、燐酸及び少なくとも1種の四級オニウム塩を含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第3工程において、分離回収された未反応シクロドデカトリエンを、前記第1工程に還流して、前記第1工程の出発原料として再使用することをさらに含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第4工程において用いられた触媒の担体が、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、及びスピネルから選ばれた1種からなり、前記白金含有触媒成分が白金であることが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第4工程において、前記反応混合液から前記触媒が濾過によって分離回収され、この分離回収された触媒を、前記エポキシシクロドデカンを含有する液体フラクションの一部分を用いて分散して、回収触媒のスラリーを調製し、この回収触媒スラリーを、前記第4工程において水素化触媒として再使用することをさらに含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第5工程において用いられる触媒が、ヨー化リチウムを含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、前記第5工程において得られた反応混合物から前記アルカリ金属のハロゲン化物を含む触媒を回収し、この回収触媒を、前記第5工程において異性化触媒として再使用することをさらに含むことが好ましい。
本発明のシクロドデカノンの製造方法において、第1〜5工程を連続的に行ってもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のシクロドデカトリエン(CDT)からシクロドデカノン(CDON)を製造する方法の一例のフローシートが示されている。
図1において、CDTと過酸化水素とを、第1工程(エポキシ化反応)に供してエポキシシクロドデカジエン(ECD″)を製造し、得られた反応混合物は第2工程(分離工程)に送られて、反応混合物中のECD″と未反応CDTを含む油相フラクションが、その他の成分を含む水相フラクションから分離捕集され、この油性フラクションを第3工程(未反応CDTの回収)に送って、ECD″を分離捕集し、必要により分離された未反応CDTを回収して第1工程において再使用し、捕集したECD″を第4工程に送って、これに白金担持触媒の存在下に水素ガスによる水素添加を施し、それによって生成したエポキシシクロドデカン(ECD)を、分離捕集して第5工程(異性化)に送って、ECDをCDONに異性化する。
【0009】
本発明方法の第1工程において、出発原料として使用されるシクロドデカトリエン(以下CDTと記載することもある)は、ブタンジエンを、チーグラー・ナッタ触媒存在下において、三量化して製造することができる。使用されるCDTのグレードには、特に制限はなく、市販品をそのまま用いてもよく、或いは自家合成品を使用してもよいが、これらを、予じめ蒸留するなどして精製したものを使用することが好ましい。また、CDTのシス体あるいはトランス体等の異性体のいかなるものを使用しても何ら問題はない。これらは混合物で使用することもできる。
さらに、本発明方法の第1工程から送り出される反応混合物から未反応のCDTを回収して使用してもよい。
【0010】
本発明方法の第1工程において使用される過酸化水素のグレード、濃度などには特に制限はないが、取り扱い上の安全性や経済性を考慮すると、10〜70重量%濃度の水溶液を用いることが好ましい。その使用量は、CDTに対して0.05〜1.2倍モル量であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0倍モルであり、更に好ましくは0.1〜0.5倍モルである。
【0011】
本発明方法の第1工程において使用されるエポキシ化触媒としては、少なくとも1種のタングステン化合物と、少なくとも1種の鉱酸と、少なくとも1種の四級オニウム塩との組み合わせを用いることができる。
第1工程エポキシ化触媒用タングステン化合物としては、タングステン原子を含有する無機酸又はその塩であることが好ましく、例えばタングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウム等のタングステン酸及びその塩、並びに十二タングステン酸ナトリウム、十二タングステン酸カリウム、十二タングステン酸アンモニウム等の十二タングステン酸塩、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイタングステン酸、ケイタングステン酸ナトリウム、リンバナドタングステン酸、リンモリブドタングステン酸等のヘテロポリ酸及びその塩が挙げられる。より好ましくはタングステン酸、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、リンタングステン酸が用いられる。これらタングステン化合物は単一種で用いられてもよく、或は二種以上を混合して使用されてもよい。
【0012】
本発明方法の第1工程のエポキシ化反応において使用するタングステン化合物の量は、CDTの質量に対して、0.0007〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.002〜3質量%である。
【0013】
本発明方法第1工程において使用されるエポキシ化触媒用四級オニウム塩としては、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリデシルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ジメチルジドデシルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムアイオダイド、及びフェニルトリメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウムハライド、硫酸水素トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム硫酸水素塩、過塩素酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム過塩素酸塩、リン酸二水素トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウムリン酸二水素塩、硝酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム硝酸塩、珪弗化水素酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム珪弗化水素酸塩、並びに酢酸トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム酢酸塩等が好ましく用いられ、より好ましくは四級アンモニウムハライドが用いられ、さらに好ましくはトリオクチルメチルアンモニウムクロライド、及びトリデシルメチルアンモニウムクロライドが用いられる。
上記エポキシ化触媒における四級オニウム塩の使用量は、CDTの質量に対して、0.0003〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは0.003〜2.5質量%である。
【0014】
本発明方法、第1工程において用いられるエポキシ化触媒用鉱酸としては、例えば、リン酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、ヘキサフルオロ珪酸、硝酸、テトラフルオロ珪酸等を用いることが好ましく、より好ましくはリン酸および硫酸が用いられ、さらに好ましくはリン酸が用いられる。これら鉱酸は、単一種で用いられてもよく、或は二種以上を混合して使用してもよい。
【0015】
上記エポキシ化触媒における鉱酸の使用量は、CDT質量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%である。
【0016】
本発明方法、第1工程におけるエポキシ化反応では、反応溶媒として有機溶媒を使用することもできる。使用する有機溶媒は、水と均一に混ざり合うことがなく、かつ反応を阻害しないものである限り、格別の制限はない。この有機溶媒として例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロメタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族非ハロゲン炭化水素、並びにベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いることができる。これらは単一種で用いられてもよく、或は二種以上を混合して使用することもできる。前記有機溶媒の使用量は、CDT質量に対し、0〜20質量倍であることが好ましく、より好ましくは0〜10質量倍である。
【0017】
本発明方法、第1工程のエポキシ化反応は、CDTと過酸化水素とが分離した二液相中に含まれるようにして行なうことが好ましく、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下において、CDT、過酸化水素(水溶液)、タングステン化合物、四級オニウム塩および鉱酸(水溶液)を混合し、例えば加熱攪拌する方法によって、常圧又は加圧下で行われる。反応温度には、格別の制限はないが、20〜120℃であることが好ましく、より好ましくは30〜100℃である。このとき、CDT及び生成するエポキシシクロドデカジエンを含む油性液相と、過酸化水素、タングステン化合物、鉱酸、四級オニウム塩を含む水性液相とが、微細に分散し、互に接触して反応する。
【0018】
本発明方法の第1工程で得られた反応混合液からエポキシシクロドデカジエン(以下ECD″と記載することもある)及び未反応のシクロドデカトリエンを含有する油性液相フラクションを捕集する第2工程は、第1工程により得られたエポキシ化反応混合液を、油/水二相に分離することにより実施することができる。なお、このとき未反応の過酸化水素あるいは生成した過酸化物を分解除去するために、第1工程と第2工程との間において、エポキシ化反応混合液をアルカリ水溶液で処理することが好ましい。
【0019】
本発明方法の第2工程で分離捕集された油相フラクションから未反応CDTを分離回収し、エポキシシクロドデカジエン(ECD″)を得る第3工程は、前記捕集された油相フラクションに蒸留分離を施すことによって行われる。蒸留装置としては、通常の蒸留塔を使用でき、単蒸留あるいは精密蒸留で行なうことができる。蒸留条件には、格別の制限はなく、通常、減圧下で、実施されることが好ましい。
【0020】
本発明方法の第3工程で得られたECD″を第4工程に供して、担体と、それに担体されている白金含有触媒成分とからなる触媒の存在下、水素と接触させて水素化して、エポキシシクロドデカン(以下ECDと記載することもある)が調製される。この工程において使用する白金担持触媒とは、白金元素を含む化合物からなる触媒成分を、不活性担体に担持させた固体触媒、好ましくは粉末触媒、更に好ましくは平均粒径が数μm〜数百μmの微粒子触媒である。前記不活性担体としては、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、及びスピネル等があげられるが、好ましくは、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナが用いられ、より好ましくは活性炭が用いられる。また、白金含有触媒成分の不活性担体による担持量は、白金元素量に換算して、不活性担体質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜8質量%である。触媒中の白金含有触媒成分は、不活性支持体の表面又は内部、若しくはその両方に担持されていてもよい。
【0021】
本発明方法、第4工程の反応において使用される前記白金含有触媒成分は、例えばハロゲン化白金、ハロゲン化白金酸、ハロゲン化白金酸塩、水酸化白金、硫化白金、酸化白金、白金酸塩等から選ばれた1種以上からなることが好ましい。より具体的に述べるならば、塩化白金、酸化白金、白金酸ナトリウム、白金酸カリウム、塩化白金酸ナトリウム、塩化白金酸カリウムなどから選ばれた1種以上からなることが好ましい。白金担持触媒の量は、白金元素量に換算して原料のECD″質量に対し0.0005倍モル以下であることが好ましく、より好ましくは0.000001〜0.0005倍モルであり、さらに好ましくは0.000005〜0.0004倍モルである。白金担持触媒の使用量があまりに少なすぎると反応に長時間を要するという不都合を生ずることがありまたそれがあまりに多いと目的物の収量が低下することがある。
【0022】
本発明方法、第4工程水素化反応では、溶媒を使用する必要はないが、有機溶媒を使用してもよく、その場合には、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−テトラデカン、シクロヘキサン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、メタノール、エタノール、t−ブタノール、t−アミルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類を用いることが好ましい。これら溶媒は単一種で用いられてもよく、或は、二種以上を混合して使用してもよい。その使用量は、原料の1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの質量に対して、0〜20質量倍であることが好ましく、更に好ましくは0〜10質量倍である。
【0023】
本発明方法、第4工程において、エポキシシクロドデカジエンの二重結合に対する水素添加は、反応器を水素ガス雰囲気に満たして、その中でECD″と白金担持触媒とを混合し、水素ガスの反応水素圧を、好ましくは0.8〜9MPa に、より好ましくは1〜8MPa に、さらに好ましくは3〜7MPa に調整して行われる。
このときの反応温度については、格別の制限はないが、40℃より高いことが好ましく、より好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは60〜150℃である。
反応水素圧および反応温度があまりに低いときは、反応に長時間を要するという不都合を生ずることがあり、また、反応水素圧および反応温度があまりに高いときは、還元反応が過度に進み、目的物の収量が低下することがある。
【0024】
本発明方法、第4工程における水素添加反応後の反応混合液は、濾過装置に送られ、触媒粒子が分離捕集され、触媒粒子を含まないエポキシシクロドデカン(ECDと記載することもある)含有フラクションを捕集する。このとき、水素添加反応後の反応混合液を大量に濾過装置に供給すると、濾過面上の触媒の堆積量が増加して圧損が増加し、多大の動力を必要とすることがある。そこで、濾過面に適量の触媒が堆積した時点で、濾過した反応生成液フラクションの一部を利用して、これを逆面から流して使用済み触媒のスラリー液を形成し、これを第4工程の水素添加反応器に再送入して触媒として再利用することが好ましい。スラリー中の回収触媒濃度には特に制約はないが、2〜30重量%であることが好ましく、さらに好ましくは2〜20重量%であり、より好ましくは3〜15重量%である。このように回収触媒の使用量を調節することが好ましい。ECD含有フラクションを大量に使用してスラリー中の触媒濃度をあまりに低くすると、スラリーとともに、ECDを多量に、第4工程の反応槽に戻すことになり、生産性が低下するばかりでなく、ECDが水素還元されてシクロドデカノール(CDOLと記載することもある)を副生するという不都合を生ずることがある。また、スラリー中の触媒濃度があまりに高いと、スラリー粘度が大きくなるため、スラリーを送液するための所要ポンプ動力が高くなるだけでなく、触媒による配管等の閉塞が起こりやすくなるなどの不都合が生ずることがある。なお、濾過装置により捕集された触媒の一部を系外に抜き出し、新鮮な触媒を使用済み触媒と混合し、これを反応槽へ供給して水素添加反応に供する方法も用いることができる。
【0025】
本発明方法、第4工程の水素添加反応時間は、触媒の使用量あるいは反応温度に応じて適宜に設定されるが、通常10時間以内で十分である。
また、水素添加反応の操作法として、連続的に操作してもよく、或は、バッチ的に操作してもよい。連続的に操作する場合には、第3工程で得られたECD″を1段または多段装置の1段目に供給し、順次につぎの段へ供給し、最終段より抜き出してECDに転化させた後、これをろ過装置へ供給する。一方、水素を各段に吹き込み、気液の混合を良好にして、スムーズに反応させる。装置のタイプとしては、攪拌気泡塔、気泡塔、塔型の多孔板塔などを用いることができる。
バッチ的に操作する場合には、1段の装置を設け、ECD″をこの装置に仕込んだ後、水素を供給して気液の混合を良好にしてECDにスムーズに転化させた後、ろ過装置へ供給する。水素は連続的に所定量を供給し、一部を系外へ抜き出す方式と反応に要して消費されただけを補給し、系外へ抜き出さない方式などが考えられる。
上記のように、本第4工程については、バッチ方式と連続方式とのいずれの操作を選んでもよい。
【0026】
本発明方法、第4工程で得られたECD含有フラクションを第4工程に送入して、アルカリ金属のハロゲン化合物触媒存在下にECDを異性化反応に供してシクロドデカノン(以下CDONと記載することもある)を製造する。この第5工程で使用される触媒は、好ましくは臭化リチウムまたはヨウ化リチウムを含むものである。これらのリチウム化合物には、それを触媒として使用するために特別な前処理等を施す必要なく、通常市販されている臭化リチウムまたはヨウ化リチウムをそのまま使用できる。具体的には、無水臭化リチウム、臭化リチウム一水和物、臭化リチウム二水和物、臭化リチウム三水和物、無水ヨウ化リチウム、ヨウ化リチウム一水和物、ヨウ化リチウム二水和物、ヨウ化リチウム三水和物等が好ましく用いられる。また、これらの化合物を水溶液として反応に使用してもよい。
【0027】
本発明方法、第5工程の異性化反応触媒の使用量は、反応条件等にも影響されるが、ECD 1モルに対し、0.01〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5モル%である。使用量が余りに少ないと反応時間が長くなり工業的に不利になることがあり、またそれが余りに多いと触媒コストがかかりすぎ経済的に不利になることがある。
【0028】
本発明方法、第5工程の異性化反応では、反応中のガス雰囲気が重要であり、反応系に含まれる反応成分及び触媒と反応することのないガス雰囲気下で実施する。このような非反応性ガス雰囲気下でECDの異性化反応を実施することにより、効率的(反応速度が大)かつ高転化率、高選択率で、さらに高沸物の生成がほとんどないCDONの工業的製造方法が可能となった。本発明において使用する非反応性ガスとしてヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトン、キセノン、水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンガス、エチレンガスなどを用いることができるが、好ましくは窒素、アルゴンガス、二酸化炭素が用いられる。これらは単一種で用いられてもよく、或は2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明方法、第5工程のECDの異性化反応は、必要により無極性溶媒を使用することも可能であるが、通常は無溶媒で実施され、この場合、ECDが溶媒としての役割をはたす。すなわち、非反応性ガス雰囲気下で、反応器にECD含有フラクションと、好ましくは臭化リチウムあるいはヨウ化リチウムを含む異性化触媒を仕込み、非反応性ガス雰囲気中でECDの異性化反応を行うことが好ましい。
前記無極性溶媒としては、炭素数6〜12の環状炭化水素があげられるが、その使用量はECDの使用量を超えないことが好ましい。
【0030】
本発明方法、第5工程の異性化反応温度は、使用する触媒の種類及び使用量により多少異なるが、臭化リチウムが用いられる場合には、120〜300℃であることが好ましく、より好ましくは150〜280℃であり、さらに好ましくは170〜260℃である。またヨウ化リチウムが用いられる場合には100〜300℃であることが好ましく、より好ましくは130〜280℃であり、さらに好ましくは150〜260℃である。
反応温度が余りに低いと、反応速度が遅く、工業的に不利を生ずることがあり、またそれが余りに高いと、高沸点物の生成が多くなるという不都合を生ずることがある。
【0031】
本発明方法、第5工程の異性化反応時間は、触媒のタイプ及び使用量並びに反応温度に応じて適宜設定することができるが、通常10時間以内で十分である。
また、前記異性化反応器形式も、それが連続的に実施できることが好ましいが、格別の制限はなく、反応圧力にも制限はなく、適宜に設定することができる。
【0032】
本発明方法、第5工程において、ECDの転化率をほぼ100モル%にすることが可能であり、このため、CDONを分離・精製方法に格別の制限はなく、通常の蒸留を用いることができる。
【0033】
第1工程から第5工程まで全て連続で操作する場合は、各工程の前後に中継タンクを設けることが有効であるが、これらタンクを省略することも可能である。また、第4工程だけをバッチ操作する場合には、原料ECD″、製品ECDおよび反応用水素を収容するためのタンクを設け、これらにバッチ操作時間に適応する量を溜め込み、他の工程の連続操作の妨げにならないようにすれば、全体として連続的に操業することができる。
【0034】
【実施例】
本発明方法を下記実施例によりさらに説明する。
【0035】
実施例1(エポキシシクロドデカジエン(ECD″)の製造(第1〜3工程))
内径210mm、オーバーフロー高さ200mmの円筒型反応器(内容積=約7リットル、ジャッケット付き)を3基直列に繋ぎ、原料のCDTと、60質量%の濃度の過酸化水素水溶液とを第1反応器に供給した。なお、触媒のNa2 WO3 ・2H2 Oと85重量%燐酸とを60質量%濃度の過酸化水素水溶液の質量に対して、夫々2300ppm (対質量)になるように予め添加した。また、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(Aldrich 社商品名:Aliquat)をCDT質量に対して200ppm (対重量)になるように予め添加した。触媒入りのCDTを13.2kg/hの供給速度で、また触媒入り60重量%過酸化水素水溶液を0.84kg/hの供給速度で第1反応器に供給した。各反応器の温度は、各反応器のジャケットに熱水を供給することにより75℃に制御した。各反応器の中心部に攪拌機が設置されており、全ての反応器についてこれを600rpm で運転した。第3反応器を出た反応混合物について油/水相分離操作を施し、油相フラクション(ECD″及び未反応CDTを含む有機溶媒)と水相フラクションに分けた。定常状態に到達後、第3反応器出口液をサンプリングし、水相と油相に分け、水相と油相をガスクロマトグラフィー、沃素滴定および水相中の総有機カーボン量分析(TOC分析)で測定した。数点の分析を実施し、平均値を用いて反応成績を推算した。その結果、CDT転化率=17.1モル%、H2 O2 転化率=99.1モル%であり、一方、ECD″選択率は、CDT基準において93.6モル%であり、H2 O2 基準において87.4モル%であった。
【0036】
この条件で600時間の定常運転を実施し、得られた油相フラクションを内径250mm、高さ9mの蒸留塔(塔底部容積300リットル)で蒸留して、未反応のCDT(塔底温度130℃、圧力30mmHg)を分離回収し、かつ中間製品のECD″(塔底温度160℃、圧力30mmHg)を分離・精製した。得られた精製ECD″の純度は99.7%であり、その収量は958kgであった。
【0037】
実施例2(回収CDTからのECD″の製造)
実施例1の蒸留操作で得られた回収CDTを用い、実施例1と同様の装置を用いて同じ条件の下でエポキシ化反応を行った。その反応成績は実施例1と殆ど同一の結果が得られた。すなわち、CDT転化率=17.2モル%、H2 O2 転化率=99.0モル%、ECD″選択率(CDT基準)=93.6モル%、ECD″選択率(H2 O2 基準)=87.1モル%であった。
【0038】
実施例3(フレシュCDTと回収CDTの混合物からのECD″の製造)
実機の運転操作を想定して、実施例1の蒸留操作で得られた回収CDT 4質量部とフレシュCDT 1質量部とを混合して原料CDTとし、これにCDTの質量に対して、200ppm のトリオクチルメチルクロライドを、混合し、このCDTを13.2kg/hの供給速度で、また実施例1と同様にNa2 WO4 と、リン酸とを含む60質量%の過酸化水素水溶液を、1.15kg/hの供給速度で供給し、CDT/H2 O2 モル比=4、の条件下において、実施例1と同じ条件下で反応させた。結果は、CDT転化率=23.2モル%、H2 O2 転化率=98.3モル%、ECD″選択率(CDT基準)=91.4モル%、ECD″選択率(H2 O2 基準)=83.2モル%であった。
【0039】
実施例4(エポキシシクロドデカン(ECD)の製造、第4工程)
実施例1で得られたECD″を用いて、以下のようにECDを製造した。
内径140mm、オーバーフロー高さ330mmの円筒型反応器(内容積=5リットル、ジャッケット付き、伝熱面積=0.19m2 )を4基直列に繋いだ。第1反応器については、その内部に15mmの蛇管冷却装置(外径基準の伝熱面積=0.15m2 )が設置されていた。また各反応器は、中心部に攪拌機が設置されているものであった。また、水素ガスを、各円筒反応器の底部に設けられた内径4mmのパイプを通じて供給した。第1反応器の温度はジャッケットおよび蛇管に供給する熱水温度により制御し、第2反応器の温度はジャッケットへ供給する熱水温度で制御し、夫々80℃に保ち、第3および第4反応器の温度は熱媒で130℃に保った。反応器の圧力は5MPaGに保持された。
【0040】
実施例1で得られた精製ECD″中に5質量% Pt/C触媒を混ぜ、スラリー濃度0.1質量%の触媒スラリーを準備した。この触媒スラリーをポンプで昇圧し、2.5kg/hの流量で第1反応器に供給した。水素ガスは、その流量は第1槽1Nm3 /h、第2層0.3Nm3 /h、第3槽0.3Nm3 /h、第4槽0.2Nm3 /hに制御して供給した。攪拌機の回転数は650rpm である。反応状態が定常状態に達した後、8日間の連続運転を実施した。
得られた反応混合液の組成は、目的物のECD 99.3モル%、未反応ECD″0.01モル%、シクロドデカノン(CDON)0.02モル%、シクロドデカノール(CDOLと記載)0.35モル%、シクロドデカン(CDANと記載)0.19モル%、その他0.13モル%を含むものであった。この反応混合液をフィルターで濾過して触媒を分離回収し、ECD 455kgと触媒0.45kgを得た。ECD″からECDの、次式で定義された収率を計算した。
水素添加収率=(生成したECDとCDONの合計モル数)/(供給したECD″のモル数)=99.6モル%
【0041】
実施例5(ECDの製造;水添触媒の再利用、第4工程)
実施例4のフィルターで分離回収された触媒を用いて、実施例4と同様の実験を実施した。反応系が定常状態に達した後、3日間の連続運転を実施した。得られた反応混合液の組成は、目的物のECD 99.3モル%、未反応ECD″0.01モル%、CDON 0.03モル%、CDOL 0.38モル%、CDAN 0.19モル%、その他0.12モル%を含むものであった。
反応成績は実施例4のそれと殆ど同じであり、触媒は再使用可能なことが確認された。この反応混合液をフィルターで濾過して触媒と分離し、ECD 328kgを捕集し触媒0.33kgを回収した。
【0042】
実施例6(CDONの製造、第5工程:フレシュLiI触媒使用)
実施例4および5で得られたECDを用いて、下記のようにしてCDONを製造した。内径250mm、高さ400mmの円筒型グラスライニング製装置(ジャッケット付き)を3塔直列に繋いだ。各反応器のホールド量(反応流収量量)は夫々5リットルになるように、配管の垂直高さを調整した。反応器の中心部には攪拌機が設置され、これを200rpm で操作した。
触媒LiIをCDONに溶解し、LiI濃度6.67質量%の触媒含有液20リットルをジャッケット付きタンクA中に準備した。まず最初に各反応器にCDON液を張り込み、熱媒で160℃に昇温した。その後、タンクAの触媒含有液を、0.3kg/hの供給速度で第1反応器に供給し、それと同時に、実施例3および4で得られたECDを2.5kg/hの供給速度で第1反応器に供給した。第1反応器に供給された反応系は第2,3反応器を順次に経由した。第3反応器を出た反応混合液を内径250mm、高さ400mmのグラスライニング製装置(ジャッケット付き)に供給して、CDONを単蒸発させ、LiI触媒を濃縮した。
各反応器の反応温度は、第1反応器200℃、第2反応器210℃、第3反応器210℃となるようにジャッケットへ供給する熱媒の温度と流量を制御した。一方、CDONの単蒸発装置においては、ジャケット部へ熱媒を供給し、圧力13mmHg、塔底部の液温度148℃でCDONを単蒸発して捕集し、残留液状フラクション中のLiI触媒の濃度を約8倍に濃縮した。この触媒濃縮液がジャッケット付きタンクB(内容積20リットル)に収容し、その量が約5リットルに達した時点で反応装置の運転を停止した。
次に、第2反応器への触媒供給酸を、タンクAから0.03kg/h、タンクBから0.27kg/hに変更するとともに、タンクBから0.03kg/hの排出速度で抜き出したことを除き、それ以外は上述と同じ条件で第5工程を実験し、濃縮液中のCDON濃度および単蒸発させた留出液中CDON濃度を測定し、これらの濃度が定常になるまで運転した。定常状態下の反応結果を表1に示す。原料ECDからの製品CDONの収率は98.8モル%であった。
【0043】
【表1】
【0044】
上記本発明の方法により、
第1工程(酸化)では、CDTの転化率=17.1モル%の時のECD″への選択率(CDT基準)=93.6モル%、CDTの転化率=23.2モル%の時のECD″への選択率(CDT基準)=91.4モル%であり、
第4工程(水素添加)におけるECDの収率は99.6モル%であり、
第5工程(異性化)におけるCDONの収率は98.8モル%であった。
【0045】
この結果から、CDTから目的物CDONへの全工程収率を求めると、
第1工程のCDTの転化率=17.1モル%の場合、全工程を通じてのCDT基準のCDONの収率(反応のみを考慮)は92.1モル%であり、
CDT転化率=23.2モル%の場合、全工程を通じてのCDT基準のCDONの収率(反応のみを考慮)は89.9モル%であった。
これに対して、従来のホウ酸法の場合、CDTの水素添加およびCDOLの脱水素の収率を100モル%とみなしても、CDANの酸化転化率=25モル%でCDONへの選択率=78モル%であるから、本発明方法の高収率性が確認された。
【0046】
【発明の効果】
本発明の、CDTからCDONの製造方法は、各工程の収率が高く、副生物の種類も少なく、工程間のリサイクル量も少なく、従って環境を汚染することの少ない工業的な新規プロセスをはじめて提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一例のフローシート。
Claims (8)
- シクロドデカトリエンと、過酸化水素とを、エポキシ化触媒の存在下において反応させて、エポキシシクロドデカジエンを含む反応混合液を調製する第1工程と、
前記反応混合物を分離槽に導入して、これを油/水2相に分離してエポキシシクロドデカジエンと、未反応シクロドデカトリエンとを含む油相フラクションを捕集する第2工程と、
前記油相フラクションから、前記未反応シクロドデカトリエンを分離回収し、かつ前記エポキシシクロドデカジエンを捕集する第3工程と、
前記捕集されたエポキシシクロドデカジエンを、担体と、それに担持された白金含有触媒成分とからなる触媒の存在下に、水素と接触させて、エポキシシクロドデカンを製造し、かつ得られた反応混合物から前記触媒を分離回収してエポキシシクロドデカンを含有する液体フラクションを捕集する第4工程と、
前記エポキシシクロドデカン含有フラクションを、アルカリ金属のハロゲン化物を含む触媒の存在下に異性化反応に供して、前記エポキシシクロドデカンを、シクロドデカノンに異性化し、この反応混合物からシクロドデカノンを分離捕集する第5工程と、
を含むことを特徴とするシクロドデカノンの製造方法。 - 前記第1工程において用いられるエポキシ化触媒が、少なくとも1種のタングステン化合物、少なくとも1種の鉱酸及び少なくとも1種の四級オニウム塩を含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
- 前記第3工程において、分離回収された未反応シクロドデカトリエンを、前記第1工程に還流して、前記第1工程の出発原料として再使用することをさらに含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
- 前記第4工程において用いられた触媒の担体が、活性炭、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト及びスピネルから選ばれた1種からなり、前記白金含有触媒成分が白金である、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
- 前記第4工程において、前記反応混合液から前記触媒が濾過によって分離回収され、この分離回収された触媒を、前記エポキシシクロドデカンを含有する液体フラクションの一部分を用いて分散して、回収触媒のスラリーを調製し、この回収触媒スラリーを、前記第4工程において水素化触媒として再使用することをさらに含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
- 前記第5工程において用いられる触媒が、ヨー化リチウムを含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
- 前記第5工程において得られた反応混合物から前記アルカリ金属のハロゲン化物を含む触媒を回収し、この回収触媒を、前記第5工程において異性化触媒として再使用することをさらに含む、請求項1に記載のシクロドデカノンの製造方法。
- 前記第1〜5工程を連続的に行う請求項1〜7のいずれか1項に記載のシクロドデカノンの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002215370A JP2004059434A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | シクロドデカノンの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002215370A JP2004059434A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | シクロドデカノンの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004059434A true JP2004059434A (ja) | 2004-02-26 |
Family
ID=31937421
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002215370A Pending JP2004059434A (ja) | 2002-07-24 | 2002-07-24 | シクロドデカノンの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004059434A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005030690A2 (de) * | 2003-09-25 | 2005-04-07 | Basf Aktiengesellschaft | Verfahren zur herstellung eines ketons |
WO2020130292A1 (ko) * | 2018-12-19 | 2020-06-25 | 한화케미칼 주식회사 | 사이클로도데카논의 제조방법 |
WO2021085966A1 (ko) * | 2019-10-29 | 2021-05-06 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
WO2021085978A1 (ko) * | 2019-10-29 | 2021-05-06 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
-
2002
- 2002-07-24 JP JP2002215370A patent/JP2004059434A/ja active Pending
Cited By (15)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005030690A2 (de) * | 2003-09-25 | 2005-04-07 | Basf Aktiengesellschaft | Verfahren zur herstellung eines ketons |
WO2005030690A3 (de) * | 2003-09-25 | 2005-05-26 | Basf Ag | Verfahren zur herstellung eines ketons |
US7449606B2 (en) | 2003-09-25 | 2008-11-11 | Basf Se | Method for producing a ketone |
CN113242849A (zh) * | 2018-12-19 | 2021-08-10 | 韩华思路信株式会社 | 用于制造环十二酮的方法 |
KR20200076237A (ko) * | 2018-12-19 | 2020-06-29 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논의 제조방법 |
WO2020130292A1 (ko) * | 2018-12-19 | 2020-06-25 | 한화케미칼 주식회사 | 사이클로도데카논의 제조방법 |
US11358923B2 (en) * | 2018-12-19 | 2022-06-14 | Hanwha Solutions Corporation | Method for manufacturing cyclododecanone |
KR102528919B1 (ko) * | 2018-12-19 | 2023-05-08 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논의 제조방법 |
CN113242849B (zh) * | 2018-12-19 | 2023-07-25 | 韩华思路信株式会社 | 用于制造环十二酮的方法 |
WO2021085966A1 (ko) * | 2019-10-29 | 2021-05-06 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
WO2021085978A1 (ko) * | 2019-10-29 | 2021-05-06 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
KR20210050924A (ko) * | 2019-10-29 | 2021-05-10 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
KR20210050909A (ko) * | 2019-10-29 | 2021-05-10 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
KR102609700B1 (ko) | 2019-10-29 | 2023-12-06 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
KR102609694B1 (ko) * | 2019-10-29 | 2023-12-06 | 한화솔루션 주식회사 | 사이클로도데카논 및 이의 제조방법 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR20100036383A (ko) | 시클로헥센의 분리 및 제조 방법 | |
JP2009035544A (ja) | エポキシ化合物の製造装置および製造方法 | |
JP2008518001A (ja) | シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンの製造方法 | |
TWI292753B (ja) | ||
JP2004059434A (ja) | シクロドデカノンの製造方法 | |
JPH11322661A (ja) | シクロヘキサノンの製造方法及びε−カプロラクタムの製造方法 | |
JP3032931B2 (ja) | シクロヘキサノールの製造方法 | |
KR100862177B1 (ko) | 프로펜의 에폭시화 방법 | |
US6344586B1 (en) | Process for producing adipic acid | |
JP5262710B2 (ja) | 5−フェニルイソフタル酸の製造方法 | |
JP2008519782A (ja) | 固定床反応器内でのベンゼンからフェノールの連続製造方法 | |
JP4079880B2 (ja) | シクロドデカノンの製造方法 | |
JP2000256340A (ja) | 1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンを製造する方法 | |
US20230382829A1 (en) | A method for the preparation of 1,2-propanediol | |
JP2003335722A (ja) | シクロドデカノン化合物の製造方法 | |
CN111825541B (zh) | 由含有烷基蒽的产物中分离2-烷基蒽并催化氧化制备2-烷基蒽醌的方法 | |
EP3988525A1 (en) | A method for the preparation of 1,2-propanediol | |
JP5782801B2 (ja) | プロピレンオキシドの製造方法 | |
JP2735755B2 (ja) | クロロホルムの製造方法 | |
US6958421B2 (en) | Salt-free preparation of cyclobutanone | |
JPS6261942A (ja) | 3−エチルベンゾフエノンの製造法 | |
JPH11199532A (ja) | シクロヘキサノールの製造方法 | |
TW202233555A (zh) | 製備1,2—丙二醇之方法 | |
JPH11228456A (ja) | シクロヘキサノールとシクロヘキサンの併産方法 | |
JPH0113704B2 (ja) |