JP2004058218A - 位置決め装置、処理装置及び位置決め方法 - Google Patents

位置決め装置、処理装置及び位置決め方法 Download PDF

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Takeshi Kobayashi
小林 丈司
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Abstract

【課題】周囲の温度変化による処理対象物の熱膨張作用により生じ得る処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差を抑制することである。
【解決手段】ビーム加工装置には、ワークWのX軸方向位置を検出するためのリニアスケール46及びその目盛りを読み取る位置検出センサ48が備わっており、リニアスケールは固定配置され、位置検出センサはワークと一緒に移動する。このリニアスケールは、スケール基体46bに目盛り板46aを貼り付けた構造であるが、そのスケール基体はワークと同じ材質で形成されており、リニアスケール全体の熱膨張率はワークの熱膨張率と同じと見ることができる。したがって、周囲の温度が変化してワークが膨張又は収縮しても、これに応じ、リニアスケールも同じように膨張又は収縮して目盛り幅が調整される。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行う処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を位置決めする位置決め装置、この位置決め装置を備えた処理装置及び位置決め方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子回路基板や金属板等の処理対象物(以下、「ワーク」という)にエネルギービームを照射して、熱溶融により加工処理を行うビーム加工装置が知られている。このようなビーム加工装置には、ワークをXYテーブル上に位置決め・保持し、所定の処理位置に照射されるエネルギービームに対して、ワークをXY平面内で移動させて加工するものがある。以下、従来のビーム加工装置の一例について説明する。
【0003】
図6は、従来のビーム加工装置の要部を示す側面図である。このビーム加工装置は、レーザ照射部109からのレーザ光Lの照射ポイント(処理位置)が固定されており、この照射ポイントに対してXYテーブル上のワークWがX軸方向(図中紙面方向)及びY軸方向(図中左右方向)に相対移動する。このXYテーブルのワーク台101上にはワークWが載置されており、リニアモータ102の駆動により、ワーク台101がワークWを載置した状態でX軸方向に移動する。ワーク台101は、ガイド104に案内されることで、移動台103上をX軸方向に沿って直線状に移動する。一方、移動台103も同様の構成によりY軸方向に沿って直線的に移動できる。
移動台103の上面には、リニアスケール105が貼り付けられたスケール保持部106が固定配置されており、そのリニアスケール105の目盛り方向はX軸方向に平行となっている。一方、ワーク台101の下面には、位置検出センサ107が取り付けられたセンサ保持部108が固定されており、その位置検出センサ107はリニアスケール105と対向するように配置されている。リニアモータ102が駆動してワーク台101がX軸方向に移動すると、これに伴い位置検出センサ107もリニアスケール105に沿って移動する。そして、位置検出センサ107の検出結果からワーク台101のX軸方向位置を把握できるので、X軸方向におけるレーザ照射ポイントとワークWとの相対位置を把握できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ビーム加工装置の周囲の温度が変化すると、ワークWの温度に変化が生じる。そうすると、微小ながらも熱膨張作用によりワークWが膨張又は収縮する。このとき、リニアスケール105が膨張又は収縮しない場合、ワークW上において、レーザ光Lを照射すべき照射ポイントと実際にレーザ光Lが照射されている照射ポイントとの間で誤差が生まれる。その結果、ワークW上の加工すべき箇所からズレた箇所にレーザ光Lを照射して加工してしまうという問題があった。近年では、加工処理すべきワークWが大型化する一方で、加工誤差が例えば±2μm以内という極めて高精度な位置決めが要求されるため、ワークWの熱膨張による微小な誤差であっても無視できない。
また、周囲の温度変化により、ワークWだけでなく、リニアスケール105及びスケール保持部106も膨張又は収縮する場合があるが、従来、その膨張又は収縮の度合いは、ワークWの膨張又は収縮の度合いとは異なるものであった。そのため、上記と同様に、レーザ光Lを照射すべき照射ポイントと実際にレーザ光Lが照射されている照射ポイントとの間で誤差が生まれ、上記問題が生じる。
また、1つのワークWに対する加工処理に長い時間を要する場合、その加工処理中に周囲の温度が変化することも考えられる。この場合、1つのワークW上における加工処理された複数箇所の間で相対位置ズレが生じるという問題もある。例えば、レーザ光LでワークW上に多数の直線加工を等間隔で施す場合、その加工処理中にワークWの温度が徐々に上昇するような環境にあると、ワークWの熱膨張により、ワークW上に加工処理された直線間の間隔が加工開始後の間隔よりも徐々に短くなる。このような場合、ワークW上に加工処理された多数の直線が等間隔とならない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、周囲の温度変化による処理対象物の熱膨張作用により生じ得る処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差を抑制できる位置決め装置、処理装置及び位置決め方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行う処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を検出するためのスケール部材と、該スケール部材上の目盛りを読み取る目盛り読取手段と、該目盛り読取手段による読み取り結果に基づいて、上記処理位置と上記処理対象物とを相対移動させる相対移動手段とを備え、上記処理位置と上記処理対象物との間の相対位置を位置決めする位置決め装置において、上記スケール部材として、その目盛り方向における熱膨張率が上記相対移動手段による相対移動方向における上記処理対象物の熱膨張率と同じであるものを用いたことを特徴とするものである。
この位置決め装置においては、処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行うために、スケール部材上の目盛りを目盛り読取手段によって読み取り、その読み取り結果に基づいて処理手段による処理位置と処理対象物とを相対移動させて位置決めする。従来では、処理対象物とスケール部材の熱膨張率が互いに異なっていたため、周囲の温度変化により処理対象物が膨張又は収縮すると、処理位置と処理対象物との間の相対位置に誤差が生じていた。これに対し、本位置決め装置では、スケール部材の目盛り方向における熱膨張率が相対移動方向における処理対象物の熱膨張率と同じである。よって、目盛り方向におけるスケール部材の膨張量又は収縮量を、相対移動方向における処理対象物の膨張量又は収縮量と等しくすることが可能となる。したがって、本位置決め装置によれば、周囲の温度が変化しても、従来生じていた処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差が生じにくい。
なお、スケール部材の熱膨張率とは、本位置決め装置で使用状態にあるときのスケール部材の実際の熱膨張率を意味するものである。したがって、ここでいう熱膨張率とは、そのスケール部材の材質だけで決まるものではなく、スケール部材がもつ熱膨張に関する異方性、スケール部材に加わる外力等も関係することになる。
また、本位置決め装置が特定の処理対象物に専用のものである場合には、スケール部を本体に対して着脱可能な構成とする必要はないが、本位置決め装置が不特定の処理対象物に対して利用される場合には、スケール部を本体に対して着脱可能な構成とするのがよい。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の位置決め装置において、上記スケール部材の少なくとも一部に、上記処理対象物と同じ材料を用いたことを特徴とするものである。
本位置決め装置で用いるスケール部材は、使用状態にあるときの熱膨張率が処理対象物のものと同じであればよい。これを実現するには、スケール部材の全部又は一部に処理対象物と同じ材料を用いるのが簡便である。ここで、スケール部材の一部を処理対象物と同じ材料にする場合、その材料による膨張又は収縮に、他部の材料の熱膨張がほとんど影響しないようにする必要がある。例えば、処理対象物と同じ材料で構成された上記一部の剛性よりも、他部の材料の剛性を小さくすることが挙げられる。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項2の位置決め装置において、上記スケール部材は、目盛りが付されたシート部材と、該シート部材と密着して該シート部材を固定するための固定部材とを有し、該固定部材を上記処理対象物と同じ材料で構成したことを特徴とするものである。
この位置決め装置においては、処理対象物と同じ材料の固定部材に、目盛り付きのシート部材を貼り付ける等して密着させることで、スケール部材を形成することができる。したがって、処理対象物として用いる物を利用してスケール部材を形成することができる。
【0009】
また、請求項4の発明は、処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行う処理手段と、該処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を検出し、その検出結果に基づいて該処理位置と該処理対象物とを相対移動させ、該処理位置と該処理対象物との間の相対位置を位置決めする位置決め装置とを備えた加工、検査などの処理を行う処理装置において、上記位置決め装置として、請求項1、2又は3の位置決め装置を用いたことを特徴とするものである。
この処理装置においては、請求項1、2又は3の位置決め装置を用いて位置決めを行うので、周囲の温度が変化しても、従来生じていた処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差が生じにくい。したがって、処理対象物上の処理手段により処理すべき箇所と実際に処理された箇所との間に誤差が生じにくい。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項4の処理装置において、上記処理手段は、パルス状のエネルギービームを繰り返し出射するビーム源と、該ビーム源から出射されたエネルギービームを処理対象物に案内して照射するビーム照射手段と、処理制御データに基づいて該ビーム源及び上記位置決め装置を制御する制御手段とから構成されており、上記位置決め装置は、上記処理対象物に対する上記エネルギービームの照射ポイントと該処理対象物との相対位置を位置決めするものであることを特徴とするものである。
この処理装置は、ビーム加工装置として利用されるものである。一般に、ビーム加工装置においては、処理対象物に対するエネルギービームの照射ポイントと処理対象物との相対位置の位置決めに対して高い精度が要求される。したがって、周囲の温度が変化しても熱膨張による誤差が生じにくい請求項1、2又は3の位置決め装置を用いることは有用である。
【0011】
請求項6の発明は、処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行う処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を検出するためのスケール部材と、該スケール部材上の目盛りを読み取る目盛り読取手段と、該目盛り読取手段による読み取り結果に基づいて、上記処理位置と上記処理対象物とを相対移動させる相対移動手段とを備えた位置決め装置を用いて、上記処理位置と上記処理対象物との間の相対位置を位置決めする位置決め方法において、上記スケール部材として、その目盛り方向における熱膨張率が、上記相対移動手段による相対移動方向における上記処理対象物の熱膨張率と同じであるものを使用して上記位置決めを行うことを特徴とするものである。
この位置決め方法においては、目盛り方向における熱膨張率が相対移動方向における処理対象物の熱膨張率と同じであるスケール部材を使用する。よって、上記請求項1の位置決め装置と同様に、周囲の温度が変化しても、従来生じていた処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差が生じにくい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、固体レーザであるYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザを用いた処理装置であるレーザ加工装置に適用した一実施形態について説明する。以下、ガラスからなる基体上にITO(インジウム酸化スズ)からなる透明導電層を形成した処理対象物であるワークWに対し、レーザ加工装置を用いて部分的にITOをガラスから除去して透明電極パターンを形成する場合について説明する。
【0013】
図2は、本実施形態に係るレーザ加工装置全体の概略構成図である。このレーザ加工装置は、YAGレーザ装置1、ワーク保持装置2、ワーク移載装置3、位置決め装置としてのXYテーブル4、制御手段を構成するメインコントローラ5から主に構成されている。
【0014】
図3は、上記YAGレーザ装置1を示す概略構成図である。YAGレーザ装置1は、YAGレーザ発振器10と加工ヘッド11とから構成されている。YAGレーザ発振器10は、適量のNd(ネオジウム)が添加されたYAGの棒状結晶体であるレーザロッド及びこれの励起用のランプを内蔵するレーザチャンバ12と、これから発せられる誘導放出光の光路に沿って所定の距離を隔てて対向配置されたフロントミラー13及びリアミラー14を備えている。なお、YAGレーザ装置1は、加工ヘッド11から照射されるレーザ光Lの照射ポイント(処理位置)の絶対位置は固定されてている。
【0015】
レーザチャンバ12は、図中に一点鎖線にて示す如く、誘導放出光を出射する。また、上記リアミラー14とレーザチャンバ12との間に、シャッタ15とQスイッチ16とが取り付けてある。上記フロントミラー13は、一部の光の透過が可能な反射率を有するミラーであり、レーザチャンバ12から発せられる誘導放出光の光路にその鏡面の中心を正対せしめて取り付けてある。上記リアミラー14は、実質的な全反射が可能な鏡面を有しており、上記フロントミラー13と対向するように取り付けてある。レーザチャンバ12から発せられる誘導放出光は、フロントミラー13とリアミラー14との間での多重反射の間に増幅される。上記シャッタ15は、レーザチャンバ12から発せられる誘導放出光の光路を遮断して、誘導放出光の増幅を抑えるものである。上記Qスイッチ16は、フロントミラー13とリアミラー14との間での共振器としてのメリット数(Q値)を高め、励起原子の反転分布を発生させ、高出力のレーザパルスを取り出す作用をなすものである。必要出力によっては、このQスイッチ16を用いなくてもよい。
なお、上記YAGレーザ発振器10の構成は一例であって、これに限られるものではない。他の構成としては、例えばLD励起を用いたものがある。
上記加工ヘッド11は、アパーチャ17、落射ミラー18及び結像レンズ19を備えている。
上記アパーチャ17は、開口の面積を変えることができるシャッタ機構を有する遮光板であり、該開口の中心を上記YAGレーザ発振器10から発せられるレーザ光の光路に合わせて取り付けてある。上記落射ミラー18はレーザ光の光路を90度折り曲げるものである。上記結像レンズ19はレーザ光を処理対象物としてのワークW上に集光させて結像させるものである。
【0016】
以上のように構成されたYAGレーザ装置1において、レーザチャンバ12から発せられる誘導放出光は、フロントミラー13とリアミラー14との間を往復する間に、Qスイッチ16の作用を受け、フロントミラー13を経て上記アパーチャ17にレーザ光として送り出される。レーザ光は、アパーチャ17を通過した後、落射ミラー18で光路を90度折り曲げられ結像レンズ19に入射する。結像レンズ19に入射したレーザ光は集光されてワークWに対し鉛直下向きに照射される。
【0017】
図4は、ワーク保持装置2を図2中の上側から見た平面図である。このワーク保持装置2は、処理対象物としてのワークWをワーク台20に保持し、加工中に位置がズレないようにする役割を果たすものである。図2に示したXYテーブル本体41に固設されたワーク台20には、一対の固定ガイド21,22及び一対の可動ガイド23,24が配設されている。これらの固定ガイド21,22及び可動ガイド23,24はコの字状の形態を成している。そのコの字状の先端部にそれぞれ、円筒面が回動可能なカムフォロア21a,21b,22a,22b,23a,23b,24a,24bが設けられている。これらのカムフォロアの円筒面がワーク端面に転がり接触するので、ガイドがワークに摺動接触する場合に比べ、位置決め時にワークのスムーズな位置決めが可能となる。そして、ワーク台20にワークWがセットされると、可動ガイド23,24によってワークWが固定ガイド21,22側に押圧され、ワークWがワーク台20に保持される。
【0018】
上記ワーク移載装置3は、ワーク台20に対するワークの装着及び取外しを行うものである。図2に示すように、複数の吸着パッド31でワーク上面を真空吸着しながら搬送するようになっている。
上記XYテーブル4は、XYテーブル本体41、XYテーブル本体41を制御するXYテーブルコントローラ42とから主に構成されている。XYテーブル本体41には、上述したようにワーク保持装置2が配設されている。
上記メインコントローラ5は、レーザ加工装置全体を制御するものであり、YAGレーザ装置1、ワーク移載装置3、XYテーブルコントローラ42が接続されている。
【0019】
図5は、本実施形態におけるXYテーブル4の要部の概略構成を示す側面図である。なお、このXYテーブル4は、従来技術として説明した図6に示す従来のXYテーブルと同様の構成を有する。
XYテーブル4は、加工ヘッド11から照射されるレーザ光Lの照射ポイントに対してワークWが保持されたワーク台20をX軸方向(図中紙面方向)及びY軸方向(図中左右方向)に相対移動させるものである。ワーク台20は、リニアモータ43の駆動により、ワークWを載置した状態でX軸方向に移動する。この移動の際、ワーク台20は、ガイド44に案内されることで、移動台45上をX軸方向に沿って直線状に移動する。一方、移動台45も、ワーク台20と同様に、図示しないリニアモータの駆動によりワーク台20を載置した状態でY軸方向に直線状に移動する。
【0020】
移動台45の上面には、スケール部材としてのリニアスケール46を保持するスケール保持部47が固定配置されている。リニアスケール46の目盛り方向はX軸方向に平行である。一方、ワーク台20の下面には、目盛り読取手段としての位置検出センサ48が取り付けられたセンサ保持部49が固定されている。位置検出センサ48は、リニアスケール46と対向するように配置されている。この位置検出センサ48としては、例えば反射型光学センサを用いることができ、この場合、リニアスケール46上の目盛りによってON/OFF信号をXYテーブルコントローラ42に出力する。XYテーブルコントローラ42は、その信号に基づいてリニアモータ43の駆動を制御し、照射ポイントに対してワークWを相対移動させ、X軸方向における位置決めを行う。なお、Y軸方向についても同様の処理を行うが、ここではX軸方向についてのみ説明する。
【0021】
次に、本発明の特徴部分であるリニアスケール46について説明する。
図1は、本実施形態のリニアスケール46を示す斜視図である。
本実施形態におけるリニアスケール46は、シート部材である目盛り板46aとこれが貼り付けられる固定部材としてのスケール基体46bとから構成されている。目盛り板46aの表面には、図1に示すように目盛りが付されている。リニアスケール46は、移動台45の上面に固定配置されているスケール保持部47に、目盛り方向がX軸方向に平行となるように保持されている。このスケール保持部47は、リニアスケール46の長手方向一端部を固定し、その他端部を付勢手段であるバネ47aで一端部側に付勢した状態で、リニアスケール46を保持している。このときの付勢力は、可動ガイド23によってワークWが受ける押圧力とほぼ同じである。また、スケール保持部47は、リニアスケール46の鉛直方向上端部と下端部を、それぞれ図示しないベアリングによって支持しており、リニアスケール46がその長手方向に少ない抵抗で変位できるようになっている。
【0022】
ここで、本実施形態では、スケール基体46bがワークWの基体と同じガラスで形成されており、目盛り板46aは可撓性を有する樹脂で形成されている。そして、目盛り板46aがスケール基体46bに金属蒸着によって密着固定されている。目盛り板46aはスケール基体46bに比べてはるかに剛性が低いため、リニアスケール全体の熱膨張率はスケール基体46bの熱膨張率と同じと見ることができる。すなわち、周囲の温度が変化すると、スケール基体46bは、これに密着した状態の目盛り板46aと一緒に膨張又は収縮し、このときの膨張率は目盛り板46aの剛性が低いためスケール基体46b自体の膨張率と同じと見ることができる。また、リニアスケール46は、上述のように、スケール保持部47のバネ47aによりワークWがX軸方向に受ける押圧力とほぼ同じ力で付勢された状態でX軸方向に変位可能に保持されている。よって、周囲温度がある温度であるとき、目盛り方向(X軸方向)におけるリニアスケール46の膨張量又は収縮量は、ワークWの移動方向(X軸方向)におけるワークWの膨張量又は収縮量とほぼ等しくなる。したがって、周囲の温度が変化してワークWが膨張又は収縮しても、これに応じ、リニアスケール46も同じように膨張又は収縮して目盛り幅が調整されることになる。その結果、周囲の温度が変化しても、加工ヘッド11から照射されるレーザ光Lの照射ポイントとワークWとの間の相対位置の誤差はほとんど生じない。
【0023】
以上のような構成を有するビーム加工装置を用い、一般的な加工処理環境下でX軸方向の長さが1mのワークWについて透明電極パターン形成処理を行った。スケール部材にアルミニウムを使用した場合、3℃の温度変化で約70μmの誤差が生じていたところ、本実施形態のビーム加工装置では±2μm以下の誤差に抑えることができた。
【0024】
以上、本実施形態によれば、XYテーブル4による位置決め精度が高まったため、高い精度で透明電極のパターン形成を行うことができる。
なお、本実施形態では、照射ポイントとワークWとを相対移動させる相対移動手段として、照射ポイントを固定してワークW側を移動させるXYテーブル4を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。例えば、照射ポイント側をY軸方向にのみ移動させ、ワークW側をX軸方向にのみ移動させる構成としたり、ワークW側を固定して照射ポイント側を移動させる構成としたりしてもよい。
また、本実施形態では、YAGレーザを用いてワークWを加工する装置について説明したが、これに限られるものではなく、COレーザやエキシマレーザを用いることもできる。
また、本実施形態では、ワークWとして表面にITO薄膜が形成されたガラス基板を例について説明したが、これに限られるものではなくセラミックス材料や金属材料からなるものであっても可能である。
また、本実施形態では、ワークWに対して加工処理を行う場合について説明したが、これに限られるものではなく高い位置決め精度を必要とする処理であればどのような処理にも同様に適用できる。例えば、ワークWの状態を変化させない検査でも適用できる。
【0025】
【発明の効果】
請求項1乃至6の発明によれば、周囲の温度が変化しても、従来生じていた処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差が生じにくいので、周囲の温度変化による処理対象物の熱膨張作用により生じ得る処理位置と処理対象物との間の相対位置の誤差を抑制できるという優れた効果がある。
特に、請求項2及び3の発明によれば、目盛り方向における熱膨張率が相対移動方向における処理対象物のものと同じであるスケール部材を簡便に製作できるという優れた効果がある。
また、請求項3の発明によれば、処理対象物として用いる物を利用してスケール部材を形成できるので、本位置決め装置を不特定の処理対象物に対して容易に利用することが可能となるという優れた効果がある。
また、請求項4及び5の発明によれば、処理対象物上の処理手段により処理すべき箇所と実際に処理された箇所との間に誤差が生じにくいので、処理対象物に対して高い位置精度で処理を行うことができるという優れた効果がある。
また、請求項5の発明によれば、エネルギービームの照射ポイントと処理対象物との相対位置の位置決め精度を高めることができるので、高い位置精度でビーム加工処理を行うことができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るレーザ加工装置のリニアスケール46を示す斜視図。
【図2】同レーザ加工装置全体の概略構成図。
【図3】同レーザ加工装置のYAGレーザ装置の概略構成図。
【図4】同レーザ加工装置のワーク保持装置を図2中の上側から見た平面図。
【図5】同レーザ加工装置のXYテーブルの要部の概略構成を示す側面図。
【図6】従来のビーム加工装置の要部を示す側面図。
【符号の説明】
1  YAGレーザ装置
2  ワーク保持装置
3  ワーク移載装置
4  XYテーブル
5  メインコントローラ
20 ワーク台
43 リニアモータ
44 ガイド
45 移動台
46 リニアスケール
46a 目盛り板
46b スケール基体
47 スケール保持部
47a バネ
48 位置検出センサ
49 センサ保持部
W  ワーク

Claims (6)

  1. 処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行う処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を検出するためのスケール部材と、
    該スケール部材上の目盛りを読み取る目盛り読取手段と、
    該目盛り読取手段による読み取り結果に基づいて、上記処理位置と上記処理対象物とを相対移動させる相対移動手段とを備え、
    上記処理位置と上記処理対象物との間の相対位置を位置決めする位置決め装置において、
    上記スケール部材として、その目盛り方向における熱膨張率が上記相対移動手段による相対移動方向における上記処理対象物の熱膨張率と同じであるものを用いたことを特徴とする位置決め装置。
  2. 請求項1の位置決め装置において、
    上記スケール部材の少なくとも一部に、上記処理対象物と同じ材料を用いたことを特徴とする位置決め装置。
  3. 請求項2の位置決め装置において、
    上記スケール部材は、目盛りが付されたシート部材と、該シート部材と密着して該シート部材を固定するための固定部材とを有し、
    該固定部材を上記処理対象物と同じ材料で構成したことを特徴とする位置決め装置。
  4. 処理対象物上の所定箇所に、加工、検査などの処理を行う処理手段と、
    該処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を検出し、その検出結果に基づいて該処理位置と該処理対象物とを相対移動させ、該処理位置と該処理対象物との間の相対位置を位置決めする位置決め装置とを備えた加工、検査などの処理を行う処理装置において、
    上記位置決め装置として、請求項1、2又は3の位置決め装置を用いたことを特徴とする処理装置。
  5. 請求項4の処理装置において、
    上記処理手段は、パルス状のエネルギービームを繰り返し出射するビーム源と、該ビーム源から出射されたエネルギービームを処理対象物に案内して照射するビーム照射手段と、処理制御データに基づいて該ビーム源及び上記位置決め装置を制御する制御手段とから構成されており、
    上記位置決め装置は、上記処理対象物に対する上記エネルギービームの照射ポイントと該処理対象物との相対位置を位置決めするものであることを特徴とする処理装置。
  6. 処理対象物上の所定箇所に加工、検査などの処理を行う処理手段による処理位置と該処理対象物との相対位置を検出するためのスケール部材と、
    該スケール部材上の目盛りを読み取る目盛り読取手段と、
    該目盛り読取手段による読み取り結果に基づいて、上記処理位置と上記処理対象物とを相対移動させる相対移動手段とを備えた位置決め装置を用いて、上記処理位置と上記処理対象物との間の相対位置を位置決めする位置決め方法において、上記スケール部材として、その目盛り方向における熱膨張率が、上記相対移動手段による相対移動方向における上記処理対象物の熱膨張率と同じであるものを使用して上記位置決めを行うことを特徴とする位置決め方法。
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