JP2004058195A - マイクロアクチュエータ、並びに、これを用いた光変調素子及び光変調素子アレー - Google Patents

マイクロアクチュエータ、並びに、これを用いた光変調素子及び光変調素子アレー Download PDF

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Yoshihiko Suzuki
鈴木 美彦
Toru Ishizuya
石津谷 徹
Junji Suzuki
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Abstract

【課題】電力を消費することなく停電時においても可動部を所望の位置に保持することができる完全自己保持性を、持たせる。
【解決手段】可動部は、固定端が脚部13,14を介して固定された片持ち梁構造をなす梁部15,16及び自由端においてこれらの間を接続する接続部17から構成される。梁部15,16のバネ力によって、可動部は上方へ付勢される。固定部側には、係合部25が設けられる。梁部15,16には、係合部25と係合し得る係合部26,27が設けられる。係合部26,27は、弾性変形可能に構成される。係合部26,27と係合部25とが互いに係合することにより、梁部15,16のバネ力に抗して、可動部が固定部側の位置に保持される。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータ、並びに、これを用いた光変調素子及び光変調素子アレーに関するものである。この光変調素子及び光変調素子アレーは、例えば、光通信装置や光伝送装置等で用いることができるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の製造技術を利用して製作されるMEMS(Micro−Electro−Mechanical System)が、光通信などの種々の応用分野にて大きな注目を集めている。この中でも特に注目されているのが、基板面上に複数のマイクロアクチュエータをアレイ化した素子であり、光スイッチやアッテネータなどの二次元MEMS光変調素子として知られている。
【0003】
マイクロアクチュエータは、一般的に、固定部としての基板と、これに対して移動可能とされた可動部とを有し、可動部に作用するバネ力による付勢力に抗して可動部に静電力等の駆動力を与えることで可動部を基板側に位置させた状態と、前記駆動力を与えないことで可動部を前記付勢力により基板から離れた側に位置させた状態とを、切り替えるように構成されている。
【0004】
このようなマイクロアクチュエータでは、可動部が基板側に位置した状態を保持する場合には、基板側と可動部側との間に電界を印加して、静電力でラッチしているのが一般的である。静電力によるラッチが用いられる理由は、他の駆動力によりラッチする場合に比べて、消費電力が少ないためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のマイクロアクチュエータのラッチ方法では、静電力によるラッチのため、消費電力は少ないが、さらなる低消費電力化が望まれている。さらに、希では有るが、停電対策のなされていないシステムでは停電時にラッチが解除されてしまう。例えば、従来のマイクロアクチュエータを用いた光スイッチでは、停電時に光路の切り替え状態が変わってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、電力を消費することなく停電時においても可動部を所望の位置に保持することができる完全自己保持性を持つマイクロアクチュエータ、並びに、これを用いた光変調素子及び光変調素子アレーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様によるマイクロアクチュエータは、固定部と、該固定部に対して第1の方向及び該第1の方向とは逆向きの第2の方向に移動し得る可動部とを有し、前記可動部が前記第2の方向の側に位置しているときに前記可動部に前記第1の方向へ付勢力が作用するように、かつ、前記可動部に前記第1及び第2の方向へ駆動力を印加し得るように構成されたマイクロアクチュエータであって、前記固定部に設けられた第1の係合部と、前記第1の係合部と係合し得るように前記可動部に設けられた第2の係合部と、を備え、前記第1及び第2の係合部のうちの少なくとも一方の係合部が、弾性変形可能に構成されたものである。
【0008】
本発明の第2の態様によるマイクロアクチュエータは、前記第1の態様において、前記少なくとも一方の係合部は、(a)前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第1の方向の側に位置している状態で前記可動部に前記第2の方向へ所定の駆動力が印加されたときに、前記可動部が前記第2の方向へ移動して前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第2の方向の側へ移動するように、(b)前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第2の方向の側に位置している状態で前記可動部に駆動力が印加されていないときに、前記第1及び第2の係合部が互いに係合して、前記付勢力による前記可動部の前記第1の方向への移動が阻止されるように、かつ、(c)前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第2の方向の側に位置している状態で前記可動部に前記第1の方向へ所定の駆動力が印加されたときに、前記第1及び第2の係合部間の係合が外れて、前記可動部が前記第1の方向へ移動するように、弾性変形可能に構成されたものである。
【0009】
本発明の第3の態様によるマイクロアクチュエータは、前記第1又は第2の態様において、前記可動部が、前記固定部に対して固定端が固定された片持ち梁構造を持つものである。
【0010】
本発明の第4の態様によるマイクロアクチュエータは、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記可動部は、磁界内に配置されて通電によりローレンツ力を前記駆動力として生ずる電流経路を有するものである。
【0011】
本発明の第5の態様によるマイクロアクチュエータは、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記第1及び第2の係合部のいずれか一方又は両方、及び、前記可動部が、薄膜で構成されたものである。
【0012】
本発明の第6の態様による光変調素子は、前記第1乃至第5のいずれかの態様によるマイクロアクチュエータと、前記可動部に設けられたミラーと、を備えたものである。
【0013】
本発明の第7の態様による光変調素子アレーは、前記第6の態様による光変調素子を複数備え、該複数の光変調素子が2次元状に配置されたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるマイクロアクチュエータ、並びに、これを用いた光変調素子及び光変調素子アレーについて、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態による光スイッチアレー1を備えた光スイッチシステムの一例を示す概略構成図である。説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する(後述する図についても同様である。)。光スイッチアレー1の基板11の面がXY平面と平行となっている。なお、説明の便宜上、Z軸方向の+の向きを上方向、Z軸方向の+側を上側(上方向側)、Z軸方向の−の向きを下方向、Z軸方向の−側を下側(下方向側)という。
【0016】
この光スイッチシステムは、図1に示すように、光スイッチアレー1と、M本の光入力用光ファイバ2と、M本の光出力用光ファイバ3と、N本の光出力用光ファイバ4と、光スイッチアレー1に対して後述するように磁界を発生する磁界発生部としての磁石5と、光路切替状態指令信号に応答して、当該光路切替状態指令信号が示す光路切換状態を実現するための制御信号を光スイッチアレー1に供給する外部制御回路6と、を備えている。図1に示す例では、M=3、N=3となっているが、M及びNはそれぞれ任意の数でよい。
【0017】
本実施の形態では、磁石5は、図1に示すように、Y軸方向の+側がN極に−側がS極に着磁された板状の永久磁石であり、光スイッチアレー1の下側に配置され、光スイッチアレー1に対して磁力線5aで示す磁界を発生している。すなわち、磁石5は、光スイッチアレー1に対して、Y軸方向に沿ってその−側へ向かう略均一な磁界を発生している。もっとも、磁界発生部として、磁石5に代えて、例えば、他の形状を有する永久磁石や、電磁石などを用いてもよい。
【0018】
光スイッチアレー1は、図1に示すように、シリコン基板等の基板11と、基板11上に配置されたM×N個のミラー12とを備えている。M本の光入力用光ファイバ2は、基板11に対するX軸方向の一方の側からX軸方向に入射光を導くように、XY平面と平行な面内に配置されている。M本の光出力用光ファイバ3は、M本の光入力用光ファイバ2とそれぞれ対向するように基板11に対する他方の側に配置され、光スイッチアレー1のいずれのミラー12によっても反射されずにX軸方向に進行する光が入射するように、XY平面と平行な面内に配置されている。N本の光出力用光ファイバ4は、光スイッチアレー1のいずれかのミラー12により反射されてY軸方向に進行する光が入射するように、XY平面と平行な面内に配置されている。光ファイバに限らず光導波路を用いてもよい。M×N個のミラー12は、M本の光入力用光ファイバ2の出射光路と光出力用光ファイバ4の入射光路との交差点に対してそれぞれ、後述するマイクロアクチュエータにより進出及び退出可能にZ軸方向に直線移動し得るように、2次元マトリクス状に基板11上に配置されている。なお、本例では、ミラー12の向きは、その法線がXY平面と平行な面内においてX軸と45゜をなすように設定されている。もっとも、その角度は適宜変更することも可能であり、ミラー12の角度を変更する場合には、その角度に応じて光出力用光ファイバ4の向きを設定すればよい。
【0019】
この光スイッチシステムの光路切替原理自体は、従来の2次元光スイッチの光路切替原理と同様である。
【0020】
次に、図1中の光スイッチアレー1の単位素子としての1つの光スイッチ10の構造について、図2乃至図6を参照して説明する。図2は、1つの光スイッチ10を示す概略平面図である。図3は、図2中のX1−X2線付近を拡大した概略拡大図である。図4は、図2中のY1−Y2線に沿った概略断面図である。図2乃至図4は、ミラー12が下側に保持された状態を示している。図5は、図4に対応する概略断面図であり、ミラー12が上側に保持された状態を示している。図6は、図2及び図3中のX1−X2線に沿った概略断面図である。図6(a)はミラー12が上側に保持された状態(図5と同じ状態)、図6(b)はミラー12が上側から下側へ移動する途中の状態、図6(c)はミラー12が下側に保持された状態(図2、図3及び図4と同じ状態)、図6(d)はミラー12が下側から上側へ移動する途中の状態を、それぞれ示している。
【0021】
この光スイッチ10は、前述したミラー12及び固定部としての前記基板11の他に、脚部13,14と、主としてX軸方向に延びた2本の帯板状の梁部15,16と、梁部15,16の先端(自由端、+X方向の端部)に設けられそれらの間を機械的に接続する平面視で長方形状の接続部17と、を備えている。
【0022】
梁部15,16はそれぞれ、下側のSiN膜21と上側のAl膜22とが積層された2層の薄膜で構成されている。梁部15,16の材料や層数はこれに限定されるものではなく、例えば、SiN膜21に代えて他の絶縁膜を用いてもよいし、Al膜22に代えて他の導電膜を用いてもよい。また、梁部15,16は、図5及び図6(a)に示すように、後述する係合部25,26と係合部27とが係合していないとともに駆動信号が供給されていない状態において、上方(基板11と反対側)に反っている。したがって、梁部15,16及び接続部17は、この位置より下側に位置しているときは、梁部15,16のバネ力(内部応力)が付勢力として上方向に作用することになる。
【0023】
接続部17は、梁部15,16を構成するSiN膜21及びAl膜22がそのまま連続して延びることによって構成されている。接続部17のほぼ全体に渡るAl膜22の長方形状領域が、ここにX軸方向に流れる電流と前述した図1中の磁力線5a(Y軸方向の磁界)とにより、上方向又は下方向(いずれの方向かは電流の向きによる。)に、駆動力としてのローレンツ力を生ずる電流経路となっている。また、接続部17には、被駆動体としてのAu、Ni又はその他の金属からなるミラー12が設けられている。図面には示していないが、必要に応じて、ミラー12とAl膜22との間には絶縁膜が形成される。
【0024】
図2、図4及び図5に示すように、梁部15,16の+Y方向の端部(固定端)は、基板11上のシリコン酸化膜等の絶縁膜23上に形成されたAl膜からなる配線パターン24(図1では省略)を介して基板11から立ち上がる立ち上がり部を持つ脚部13,14をそれぞれ介して、基板11に機械的に接続されている。本実施の形態では、脚部13,14は、梁部15,16を構成するSiN膜21及びAl膜22がそのまま連続して延びることによって構成されている。Al膜22は、接続部17の前記電流経路を配線パターン24に電気的に接続する配線としても兼用され、脚部13,14においてSiN膜21に形成された開口を介して配線パターン24にそれぞれ電気的に接続されている。配線パターン24を利用することによって、接続部17の前記電流経路に電流を、駆動信号として印加できるようになっている。前記電流経路に一方の向きに電流を流すと、接続部17に下方向のローレンツ力(駆動力)が作用し、この駆動力が梁部15,16の上方向のバネ力(内部応力)と反対方向に作用することになる。一方、この電流を他方の向きに流すと、接続部17に上方向のローレンツ力(駆動力)が作用し、この駆動力が梁部15,16の上方向のバネ力と同方向に作用することになる。基板11には、外部からの制御信号に応じてこの駆動信号を生成する駆動回路を搭載しておいてもよい。
【0025】
以上の説明からわかるように、本実施の形態では、梁部15,16及び接続部17が、全体として、上方向及び下方向に移動し得る可動部としての片持ち梁を構成している。また、本実施の形態では、基板11及び絶縁膜23が、固定部を構成している。本実施の形態では、2本の梁部15,16を用いることにより機械的に安定した支持が可能となっているが、梁部の数は1本でもよいし、3本以上でもよい。また、本実施の形態では、図2に示すように、梁部15,16の途中がX軸方向に折れ曲がったような形状を有しており、図7に示すように、複数の光スイッチ10を基板11上に2次元状に配置する場合、その配置密度を高めることがようになっている。もっとも、本発明では、梁部15,16は折れ曲がっていなくてもよいし、また、基板11上に搭載する光スイッチ10の数(したがって、マイクロアクチュエータの数)は1つ以上の任意の数でよい。図7は、複数の光スイッチ10の配置例を模式的に示す概略平面図である。ただし、図7において、ミラー12や後述する係合部25〜27等の図示は省略している。なお、本発明では、可動部は必ずしも片持ち梁に限定されるものではなく、例えば、両持ち構造等を採用することができる。
【0026】
そして、図2、図3及び図6に示すように、係合部25が絶縁膜23を介して基板11に設けられている。本実施の形態では、係合部25は、SiN等からなる薄膜で構成され、絶縁膜23から立ち上がる立ち上がり部25aと、立ち上がり部25aの上部から連続して立ち上がり部25aの上部を取り巻くように基板11と平行に延びる平行部25bとから構成されている。平行部25bの+X側及び−X側の下面が、ミラー12を下側に保持する際の、後述する係合部26,27との係合面となっている。平行部25bの幅は十分に短く、係合部25は実際上剛性体になっている。なお、平行部25bが本来の意味での係合部であり、立ち上がり部25aはその支持部となっている。
【0027】
また、梁部15,16には、図2、図3及び図6に示すように、係合部26,27が係合部25と係合し得るようにそれぞれ設けられている。本実施の形態では、係合部26は、梁部15を構成する薄膜のSiN膜21がそのまま+X方向に細い帯状に延びたものとなっており、その先端部が固定部側の係合部25の平行部25bとオーバーラップしている。同様に、係合部27は、梁部16を構成する薄膜のSiN膜21がそのまま−X方向に細い帯状に延びたものとなっており、その先端部が固定部側の係合部25の平行部25bとオーバーラップしている。このように、係合部26,27は、細長く帯状に延びた薄膜で構成されているので、板バネとなっており、後述する動作が実現されるように上下方向に弾性変形可能となっている。すなわち、係合部26,27のバネ力は、梁部15,16のバネ力との関係で、後述する動作が実現されるように設定されている。
【0028】
なお、本実施の形態では、安定性を高めるために2つの係合部26,27が設けられているが、いずれか一方のみとしてもよい。また、係合部26,27を梁部15,16の構成膜と異なる材質の膜で構成してもよい。さらに、係合部25〜27の位置も図示の位置に限定されるものではないことは、言うまでもない。さらにまた、本実施の形態では、前述したように、固定部側の係合部25が実際上剛性体で可動部側の係合部26,27が弾性変形可能となっているが、係合部25〜27をすべて弾性変形可能に構成してもよいし、係合部26,27を剛性体にして係合部25を弾性変形可能に構成してもよい。
【0029】
なお、前述した光スイッチ10の構造のうちミラー12以外の構成要素によって、ミラー12を駆動するマイクロアクチュエータが構成されている。
【0030】
次に、本実施の形態による光スイッチ10、特にそのマイクロアクチュエータの動作について、説明する。
【0031】
まず、図6(a)及び図5に示すように、可動部及びミラー12が上側位置に保持されているものとする。この状態では、前記駆動力(ローレンツ力)は印加されていないとともに、係合部26,27と係合部25とが係合しておらず、梁部15,16のバネ力によって可動部が上側位置に保持されている。この状態は、いわば自立状態である。
【0032】
この状態から可動部及びミラー12を下側位置へ移動させる場合には、前述したように電流を流して接続部17に下向きの所定の大きさの駆動力(ローレンツ力)を印加する。すると、梁部15,16のバネ力に抗して、可動部及び係合部26,27が下方に移動していく。そして、係合部26,27が、係合部25の平行部25bに当接して図6(b)に示すように弾性変形し、やがて、係合部26,27の先端部が係合部25の平行部25bの下側に位置し、係合部26,27は元の形状に復帰する。このとき、可動部及び係合部26,27は図6(c)に示す位置より下側へ移動している。その後、前記電流の通電を停止すると、可動部及びミラー12は、梁部15,16のバネ力によって可動部及び係合部26,27が上方向へ戻り、図6(c)、図2及び図3に示すように、係合部26,27が係合部25の平行部25bの下面と係合した状態で停止すなわちラッチされる。係合部26,27の係合力は、梁部15,16のバネ力のみでは、このラッチが解除されない程度の強度を持っている。
【0033】
この状態から可動部及びミラー12を上側位置へ移動させる場合には、逆方向に電流を流して接続部17に上向きの所定の大きさの駆動力(ローレンツ力)を印加する。すると、梁部15,16のバネ力に加えてこの駆動力が上方向に掛かるので、図6(d)に示すように係合部26,27が弾性変形し、やがて、係合部26,27の先端部が係合部25の平行部25bの上側に位置し、係合部26,27は元の形状に復帰する。そして、可動部及びミラー12は更に上方向へ移動していき、最後に図6(a)及び図5に示す上側位置に保持される。なお、上向きの駆動力(ローレンツ力)の印加は、係合部26,27が係合部25の平行部25bの上側に位置した後に、適宜のタイミングで停止すればよい。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、係合部25〜27を備えていることによって、電力を消費することなく停電時においても可動部及びミラー12を、図6(a)及び図5に示す上側位置及び図6(c)、図2及び図3に示す下側位置に保持することができる。すなわち、完全自己保持性が得られる。
【0035】
次に、本実施の形態による光スイッチアレー1の製造方法の一例について、図8乃至図12を参照して説明する。図8乃至図12は、この製造方法の各工程を模式的に示す図である。図8、図9、図10(a)、図11(a)、図12(a)は、図2中のY1−Y2線に沿った断面に対応する概略断面図である。図10(b)、図11(b)、図12(b)は、図2及び図3中のX1−X2線に沿った断面に対応する概略断面図であり、それぞれ図10(a)、図11(a)、図12(a)と同じ工程を示している。
【0036】
まず、シリコン基板11の上面に熱酸化によってシリコン酸化膜23を成膜し、Al膜を蒸着又はスパッタ法等によりデポした後に、フォトリソエッチング法により、そのAl膜を配線パターン24の形状にパターニングする(図8)。
【0037】
次に、基板の全面に犠牲層となるレジスト31を塗布し、このレジスト31に、脚部13,14のコンタクト部に応じた開口31aをパターニングする(図9)。
【0038】
その後、脚部13,14、梁部15,16、接続部17及び係合部26,27となるべきSiN膜21をプラズマCVD法等により形成した後、フォトリソエッチング法によりそれらの形状にパターニングする。このとき、脚部13,14における配線パターン24とAl膜22(後に形成する)のコンタクト部には開口を形成しておく。次いで、脚部13,14、梁部15,16及び接続部17となるべきAl膜22を蒸着又はスパッタ法等によりデポした後に、フォトリソエッチング法によりそれらの形状にパターニングする(図10(a)(b))。
【0039】
次に、図10(a)(b)に示す状態の基板の全面に犠牲層となるレジスト32を塗布する。次いで、レジスト32を用いたフォトリソエッチング法により、レジスト31,32に係合部25の立ち上がり部25bに応じた開口を形成する。その後、その全面に係合部25となるべきSiN膜をプラズマCVD法等により形成した後、フォトリソエッチング法により係合部25の形状にパターニングする(図11(a)(b))。
【0040】
次いで、図11(a)(b)に示す状態の基板の全面に犠牲層となるレジスト33を厚塗りする(図12)。ここで、レジスト33を露光、現像してミラー12が成長される領域をレジスト33に形成した後、電解メッキによりミラー12となるべきAu、Ni又はその他の金属を成長させる。最後に、レジスト31〜33をプラズマアッシング法等により除去する。これにより、本実施の形態による光スイッチアレー1が完成する。
【0041】
なお、前述したようにSiN膜21及びAl膜22の成膜は、レジスト31〜33を除去した際に、係合部25が存在しないとすれば、前記梁部15,16が成膜時のストレスによって上方に反るような条件で、行う。
【0042】
なお、寸法の一例を挙げると、SiN膜21の厚さは約0.3μm、Al膜22の厚さは約0.2μm、係合部25を構成するSiN膜の厚さは約0.2μm、係合部26,27のX軸方向の長さは約50μm、係合部25の平行部25bと重なる係合部26,27の先端部のX軸方向の長さは約15μm、平行部25bの幅は約50μm、梁部15,16のY方向の長さは約0.6mmとすることができる。
【0043】
なお、各部の寸法や材質が前述した例に限定されるものではないことは、言うまでもない。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、前記実施の形態は、本発明を光変調素子の一例としての光スイッチに適用した例であったが、光スイッチ以外の光変調素子、例えばアッテネータにも適用することができる。アッテネータは、通過する光量を調整するものである。アッテネータでは、例えば、ミラーを基板側へ引っ込めたときに100%の光が通過し、ミラーの位置を基板側とは逆方向に調節することによって、通過する光量を調整する。これまでは、100%通過させるときは、静電力によってラッチさせていたが、本発明を用いれば、これが不要となるので、やはり低消費電力に寄与する。
【0046】
また、本発明によるマイクロアクチュエータは、光変調素子以外の種々の用途にも用いることができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電力を消費することなく停電時においても可動部を所望の位置に保持することができる完全自己保持性を持つマイクロアクチュエータ、並びに、これを用いた光変調素子及び光変調素子アレーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による光スイッチアレーを備えた光スイッチシステムの一例を示す概略構成図である。
【図2】図1中の光スイッチアレーの単位素子としての1つの光スイッチを示す概略平面図である。
【図3】図2中のX1−X2線付近を拡大した概略拡大図である。
【図4】図2中のY1−Y2線に沿った概略断面図である。
【図5】図4に対応する概略断面図である。
【図6】図2及び図3中のX1−X2線に沿った概略断面図である。
【図7】複数の光スイッチの配置例を模式的に示す概略平面図である。
【図8】図1に示す光スイッチアレーの製造工程を模式的に示す図である。
【図9】図1に示す光スイッチアレーの他の製造工程を模式的に示す図である。
【図10】図1に示す光スイッチアレーの更に他の製造工程を模式的に示す図である。
【図11】図1に示す光スイッチアレーの更に他の製造工程を模式的に示す図である。
【図12】図1に示す光スイッチアレーの更に他の製造工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 光スイッチアレー
2 光入力用光ファイバ
3,4 光出力用光ファイバ
5 磁石
6 外部制御回路
10 光スイッチ
11 基板
12 ミラー
13,14 脚部
15,16 梁部
17 接続部
25 係合部(固定部側)
26,27 係合部(可動部側)

Claims (7)

  1. 固定部と、該固定部に対して第1の方向及び該第1の方向とは逆向きの第2の方向に移動し得る可動部とを有し、前記可動部が前記第2の方向の側に位置しているときに前記可動部に前記第1の方向へ付勢力が作用するように、かつ、前記可動部に前記第1及び第2の方向へ駆動力を印加し得るように構成されたマイクロアクチュエータであって、
    前記固定部に設けられた第1の係合部と、
    前記第1の係合部と係合し得るように前記可動部に設けられた第2の係合部と、
    を備え、
    前記第1及び第2の係合部のうちの少なくとも一方の係合部が、弾性変形可能に構成されたことを特徴とするマイクロアクチュエータ。
  2. 前記少なくとも一方の係合部は、(a)前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第1の方向の側に位置している状態で前記可動部に前記第2の方向へ所定の駆動力が印加されたときに、前記可動部が前記第2の方向へ移動して前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第2の方向の側へ移動するように、(b)前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第2の方向の側に位置している状態で前記可動部に駆動力が印加されていないときに、前記第1及び第2の係合部が互いに係合して、前記付勢力による前記可動部の前記第1の方向への移動が阻止されるように、かつ、(c)前記第2の係合部が前記第1の係合部に対して前記第2の方向の側に位置している状態で前記可動部に前記第1の方向へ所定の駆動力が印加されたときに、前記第1及び第2の係合部間の係合が外れて、前記可動部が前記第1の方向へ移動するように、弾性変形可能に構成されたことを特徴とする請求項1記載のマイクロアクチュエータ。
  3. 前記可動部が、前記固定部に対して固定端が固定された片持ち梁構造を持つことを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロアクチュエータ。
  4. 前記可動部は、磁界内に配置されて通電によりローレンツ力を前記駆動力として生ずる電流経路を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロアクチュエータ。
  5. 前記第1及び第2の係合部のいずれか一方又は両方、及び、前記可動部が、薄膜で構成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロアクチュエータ。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロアクチュエータと、前記可動部に設けられたミラーと、を備えたことを特徴とする光変調素子。
  7. 請求項6記載の光変調素子を複数備え、該複数の光変調素子が2次元状に配置されたことを特徴とする光変調素子アレー。
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