JP2004056979A - モーター制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モーターやインバーターが高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよびインバーターの発熱を抑制する。
【解決手段】モーター温度検出値が許容温度以上でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択する。
【選択図】 図5
【解決手段】モーター温度検出値が許容温度以上でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は交流モーターを駆動制御するモーター制御装置に関し、特に、運転効率を改善したものである。
【0002】
【従来の技術】
ベクトル制御により高精度のトルク制御と電流制御を可能にした交流モーターの制御装置が知られている(例えば特開平09−215397号公報参照)。
【0003】
この種のモーター制御装置では、3相交流モーターの回転に同期して回転する直交座標系、すなわちdq軸座標系においてモーターの基本波電流を制御する電流制御系を備えており、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するd軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*のデータマップから、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対応するdq軸電流指令値id*、iq*を表引き演算し、3相交流モーターの基本波電流を制御している。
【0004】
図7に、モーターの出力トルクとd軸電流id、q軸電流iqの関係を示す。同一のトルクが得られるd軸電流id1とq軸電流iq1の組み合わせは無限にある。3相交流モーターを駆動するインバーターの直流入力電力に対するモーターの機械出力が最大となるようなd軸電流id1とq軸電流iq1の組み合わせでモーターを駆動すれば、常に最大の効率で運転を行うことができる。
【0005】
従来のモーター制御装置では、インバーターとモーターを含むモーター駆動制御系全体の総合的な運転効率が最大となるデータマップを用い、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id*、iq*を決定している。
【0006】
ところで、モーター駆動制御系で発生する主な損失には、インバーターで発生する損失とモーターで発生する損失がある。図8に、インバーターの直流入力電力Pinがモーターの機械出力Poに変換されるまでのパワーフローを示す。入力Pinから出力Poまでエネルギーの変換途中において、上述したインバーター損失Pinv_lossとモーター損失Pm_lossとが発生し、入力電力Pinのすべてが機械出力Poに変換されない。
【0007】
インバーターとモーターを含むモーター駆動制御系全体の総合的な効率を最大にするには、インバーター損失Pinv_lossとモーター損失Pm_lossとの和である総合損失Pt_loss(=Pinv_loss+Pm_loss)を最少にする必要がある。
【0008】
図9は、モーターの出力トルクを一定に保つ条件の基で|(d軸電流)/(q軸電流)|に対するインバーター損失Pinv_loss、モーター損失Pm_lossおよび総合損失Pt_lossの変化を示す。この図から明らかなように、総合損失Pt_lossが最少となる|id/iq|の値Ktと、インバーター損失Pinv_lossが最少となる|id/iq|の値Kiと、モーター損失Pm_lossが最少となる|id/iq|の値Kmとは必ずしも一致しない。つまり、従来のモーター制御装置で行われているように、総合損失Pt_lossを最少とするd軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*でモーターを駆動しても、インバーターとモーターがそれぞれ最少の損失Pinv_loss、Pm_lossで駆動されるとは限らない。
【0009】
損失の大部分は熱となるため、電気自動車やハイブリッド車両などに用いられる出力の大きなモーター駆動制御系では、モーターとインバーターを冷却する必要がある。近年、モーターの出力密度が高くなるにつれて熱の発生密度が高くなっているので、冷却系の性能が追いつかず、モーターとインバーターを余裕を持って常時冷却することは困難になっている。このようなモーター駆動制御系では、熱環境によってはモーターが高温になったり、あるいはインバーターが高温になったりする。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のモーター制御装置では、モーターとインバーターを含むモーター駆動制御系全体の総合的な運転効率が最大となるデータマップを用いて、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id*、iq*を決定しているので、モーターまたはインバーターが高温になったときに、モーターの出力を低減せずに、モーターおよびインバーターの損失を低減して発熱を抑制することができないという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、モーターやインバーターが高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよびインバーターの発熱を抑制することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モーター温度検出値が許容温度以上でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択する。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、モーター温度およびインバーター温度に応じた最適な電流でモーターを駆動することができ、モーターやインバーターが高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよびインバーターの発熱を抑制できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
《発明の第1の実施の形態》
図1は第1の実施の形態の構成を示す。第1の実施の形態のモーター制御装置は、ベクトル制御により高精度のトルク制御と電流制御を行う。この一実施の形態では埋め込み磁石式の3相同期モーターを駆動制御する例を示すが、モーターは埋め込み磁石式3相同期モーターに限定されず、例えば3相誘導モーターなどの他の形式の交流モーターを用いることができる。
【0015】
第1の実施の形態のモーター制御装置は、トルク制御部1、電流制御部2、加算器3、dq/3相変換部4、PWM生成部5、3相/dq変換部6、非干渉制御部7、位相・速度演算部8、電力変換部9、電流センサー10、メインバッテリー13を備えている。
【0016】
なお、電力変換部9には、電力変換素子の温度を計測するための温度センサー14が設けられている。一方、3相同期モーター11には、モーター回転を計測するための回転センサー12とモーター巻線温度を計測するための温度センサー15が設けられている。モーター11と電力変換部9で発生する電気的な損失はその大部分が熱になり、モーター11の巻線と電力変換部9の電力変換素子の温度を上昇させる。そこで、この一実施の形態では、モーター11と電力変換部9の損失を検出する代わりに、温度センサー15によりモーター11の温度を検出するとともに、温度センサー14により電力変換部9の温度を検出する。
【0017】
トルク制御部1は、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに加え、電力変換部温度tmp_iとモーター巻線温度tmp_mを入力し、これらの入力信号に基づいてd軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*を演算する。このトルク制御部1の詳細については後述する。なお、上述したように、dq軸座標系はモーター11の回転に同期して回転する直交座標系であり、dq軸電流指令値id*、iq*はこのdq軸座標系における3相同期モーター11の基本波電流の指令値である。
【0018】
位相・速度演算部8は、回転センサー12により検出したモーター回転θmに基づいて、モーター11の回転速度ωeを演算するとともに、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeを演算する。
【0019】
3相/dq変換部6は、電流センサー10により検出した3相同期モーター11のU相電流iuとV相電流ivからW相電流iwを求め、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeに基づいてモーター11に流れる3相交流電流iu、iv、iwをdq軸座標系の実電流id、iqへ変換する。
【0020】
電流制御部2は、dq軸座標系において3相交流モーター11の基本波電流を制御する。具体的には、上述したdq軸の実電流id、iqとメインバッテリー13の電圧Vdcをフィードバックし、実電流id、iqを電流指令値id*、iq*に一致させるためのバッテリー電圧Vdcに応じたdq軸電圧指令値vd*、vq*を演算する。
【0021】
非干渉制御部7は、dq軸に存在する速度起電力を補償してdq軸電流の応答性を改善するためのdq軸補償電圧Vd_cmp、Vq_cmpを演算する。加算器3は、dq軸補償電圧vd_cmp、vq_cmpをdq軸電圧指令値vd*、vq*に加算して電圧指令値vdo*、vqo*を算出する。
【0022】
dq/3相変換部4は、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeに基づいて、dq軸電圧指令値vdo*、vqo*を3相交流電圧指令値vu*、vv*、vw*へ変換する。PWM生成部5は、3相交流電圧指令値vu*、vv*、vw*に基づいて電力変換部9の電力変換素子をオン、オフするための3相PWM信号を生成する。
【0023】
電力変換部9は電力変換素子としてIGBTを備えたインバーターであり、3相PWM信号にしたがって各相のIGBTのスイッチングを行い、3相同期モーター11へPWM波形の3相交流疑似正弦波電圧を印加する。
【0024】
図2に第1の実施の形態のトルク制御部1の詳細な構成を示す。トルク制御部1は、d軸電流用総合損失最少マップ21、q軸電流用総合損失最少マップ22、d軸電流用インバーター損失最少マップ23、q軸電流用インバーター損失最少マップ24、d軸電流用モーター損失最少マップ25およびq軸電流用モーター損失最少マップ26を備えている。
【0025】
総合損失最少マップ21、22は、電力変換部(インバーター)9とモーター11を含むモーター駆動制御系全体の総合損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id_t*、iq_t*のデータマップである。図9には特定のモーター回転速度と出力トルクを一定に保った場合のdq軸電流比|id/iq|と総合損失との関係を示すが、モーター回転速度と出力トルクの全領域において総合損失が最少となる|id/iq|=Ktのデータを求め、総合損失最少のデータマップとしてトルク制御部1のメモリ(不図示)に記憶する。
【0026】
上述したように、モーター駆動制御系で発生する損失は、主に電力変換部(インバーター)9で発生するインバーター損失Pinv_lossと、モーター11で発生するモーター損失Pm_lossである。電力変換部9とモーター11を含むモーター駆動制御系全体の総合的な効率を最大にするには、インバーター損失Pinv_lossとモーター損失Pm_lossとの和である総合損失Pt_loss(=Pinv_loss+Pm_loss)を最少にすればよい。
【0027】
同様に、インバーター損失最少マップ23、24は、電力変換部(インバーター)9の損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id_i*、iq_i*のデータマップである。図9には特定のモーター回転速度と出力トルクを一定に保った場合のdq軸電流比|id/iq|とインバーター損失との関係を示すが、モーター回転速度と出力トルクの全領域においてインバーター損失が最少となる|id/iq|=Kiのデータを求め、インバーター損失最少のデータマップとしてトルク制御部1のメモリ(不図示)に記憶する。
【0028】
さらに、モーター損失最少マップ25、26は、3相同期モーター11の損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id_m*、iq_m*のデータマップである。図9には特定のモーター回転速度と出力トルクを一定に保った場合のdq軸電流比|id/iq|とモーター損失との関係を示すが、モーター回転速度と出力トルクの全領域においてモーター損失が最少となる|id/iq|=Kmのデータを求め、モーター損失最少のデータマップとしてトルク制御部1のメモリ(不図示)に記憶する。
【0029】
指令値選択部27は、電力変換部9のIGBTチップの温度tmp_iとモーター11の巻線温度tmp_mに基づいて、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*、およびモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*の内のいずれかを選択し、指令値選択信号s_comを切換スイッチ28,29へ出力する。
【0030】
モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部(インバーター)9およびモーター11のどちらも温度上昇を許容できる状態にあるので、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、指令値選択信号s_comを2とする。
【0031】
ここで、モーター巻線温度tmp_mの許容値TM_MAXとは、モーター巻線温度tmp_mがこの値以上に上昇しないようにモーター損失を最少にしなければならない限界温度である。また、IGBTチップ温度tmp_iの許容値TI_MAXとは、電力変換部(インバーター)9のIGBTチップ温度tmp_iがこの値以上に上昇しないようにインバーター損失を最少にしなければならない限界温度である。
【0032】
また、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAX以上の場合は、モーター11は温度上昇を許容できるが、電力変換部9はこれ以上の温度上昇を許容できない状態にあるので、電力変換部9の損失(インバーター損失)を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*を選択し、指令値選択信号s_comを1とする。
【0033】
さらに、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAX以上で、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部9は温度上昇を許容できるが、モーター11は温度上昇を許容できない状態にあるので、モーター11の損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*を選択し、指令値選択信号s_comを0とする。
【0034】
なお、モーター巻線温度tmp_mとIGBTチップ温度tmp_iとがともにそれらの許容値TM_MAX、TI_MAX以上の場合には、モーター11も電力変換部9も温度上昇を許容できない状態にあるので、指令値選択信号s_comを2にして総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択するとともに、モーター11の出力を低減する。
【0035】
切換スイッチ28、29は、指令値選択信号s_comにしたがって、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*、およびモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*の内のいずれかを選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0036】
指令値選択信号s_comが2の場合は総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、指令値選択信号s_comが1の場合はインバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*を選択し、指令値選択信号s_comが0の場合はモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*を選択する。
【0037】
図3は第1の実施の形態の動作を示すタイムチャートである。時刻t1まではIGBTチップ温度tmp_iとモーター巻線温度tmp_mとがともにそれらの許容値TI_MAX、TM_MAXより低いので、指令値選択信号s_comに2を設定して総合効率を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0038】
時刻t1において、IGBTチップ温度tpm_iがその許容値TI_MAX以上になると、指令値選択信号s_comに1を設定してインバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。これにより、インバーター損失が減少し、電力変換部9のIGBTチップ温度tmp_iの上昇が抑制される。なお、インバーター損失を低減すると、図9に示すインバーター損失とモーター損失の関係から明らかなように、モーター損失が増加する。時刻t2で、IGBTチップ温度tpm_iがその許容値TI_MAXより低くなると、ふたたび指令値選択信号s_comに2を設定して総合効率を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0039】
時刻t3において、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAX以上になると、指令値選択信号s_comに0を設定してモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。これにより、モーター損失が減少し、モーター11の巻線温度tmp_mの上昇が抑制される。なお、モーター損失を低減すると、図9に示すモーター損失とインバーター損失の関係から明らかなように、インバーター損失が増加する。時刻t4で、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低くなると、ふたたび指令値選択信号s_comに2を設定して総合効率を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0040】
このように、第1の実施の形態によれば、モーター巻線温度が許容値以上でかつIGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値未満のときはモーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値以上のときはインバーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択するようにした。これにより、従来の総合損失を最少にするdq軸電流で常時、モーターを駆動するのに比べ、モーター損失を最少にするdq軸電流でモーターを駆動したり、インバーター損失を最少にするdq軸電流でモーターを駆動することが可能になり、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度に応じた最適な電流でモーターを駆動することができ、モーターや電力変換部(インバーター)が高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよび電力変換部(インバーター)の発熱を抑制できる。
【0041】
特許請求の範囲の構成要素と第1の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。電流制御部2が電流制御回路を、電力変換部9が電力変換器を、トルク制御部1が総合損失最少dq軸電流指令値生成回路、モーター損失最少dq軸電流指令値生成回路、電力変換損失最少dq軸電流指令値生成回路および指令値選択回路を、温度センサー15がモーター損失検出器を、温度センサー14が電力変換器損失検出器をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0042】
なお、上述した第1の実施の形態では、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id*、iq*のデータマップを用いて、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対応するdq軸電流指令値id*、iq*を決定する例を示したが、トルク指令値Te*のみに対するdq軸電流指令値id*、iq*のデータマップを用意し、そのデータマップからトルク指令値Te*に対応するdq軸電流指令値id*、iq*を表引き演算するようにしてもよい。
【0043】
また、上述した第1の実施の形態では、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度(電力変換部温度)に応じて、総合損失最少dq軸電流指令値、モーター損失最少dq軸電流指令値、およびインバーター損失最少dq軸電流指令値の内のいずれかを選択する例を示したが、総合損失最少dq軸電流指令値データマップとモーター損失最少dq軸電流指令値データマップだけを用意し、モーター巻線温度が許容値以上のときはモーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択するようにしてもよい。また、総合損失最少dq軸電流指令値データマップとインバーター損失最少dq軸電流指令値データマップだけを用意し、IGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値以上のときはインバーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、IGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択するようにしてもよい。
【0044】
《発明の第2の実施の形態》
第1の実施の形態に基本波電流制御系の他に、高調波電流制御系を備えたモーター制御装置に対して本願発明を適用した第2の実施の形態を説明する。
【0045】
基本波電流制御系のみで3相同期モーター11を駆動制御すると、モーター電流iu、iv、iwに高調波成分が含まれる。高調波電流制御系は、モーター電流iu、iv、iwに含まれる所定次数の高調波成分の周波数で回転する直交座標系(以下、高調波座標系またはdhqh軸座標系という)、換言すれば、モーター電流iu、iv、iwの基本波成分の周波数の整数倍の周波数で回転する高調波座標系(dhqh軸座標系)でモーター電流iu、iv、iwに含まれる高調波成分を制御する回路である。
【0046】
図4は第2の実施の形態の構成を示す。なお、図1に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。上述したように、基本波電流制御系は、電流制御部2、加算器3、dq/3相変換部4、3相/dq変換部6および非干渉制御部7により構成される。これに対し高調波電流制御系は、ハイパスフィルター(HPF)16、dq/dhqh変換部17、dhqh軸電流制御部18、dhqh/dq変換部19および加算器20により構成される。
【0047】
トルク制御部1は、dq軸基本波電流指令値id*、iq*の他に、dhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*を演算、出力する。このトルク制御部1については詳細を後述する。位相・速度演算部8は、回転センサー12により検出したモーター回転θmに基づいて、モーター11の回転速度ωeを演算するとともに、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeと高調波電流座標系(dhqh軸座標系)の位相θehを演算する。
【0048】
ハイパスフィルター(HPF)16は、dq軸実電流id、iqに含まれている高調波成分を抽出する。dq/dhqh変換部17は、dq軸の高調波電流をdhqh軸座標系の高調波電流idh、iqhへ変換する。
【0049】
dhqh軸電流制御部18は、高調波電流制御系(dhqh軸座標系)において3相同期モーター11に流れる高調波電流を制御する。具体的には、dhqh軸高調波電流idh、iqhとメインバッテリー13の電圧Vdcをフィードバックし、高調波実電流idh、iqhを高調波電流指令値idh*、iqh*に一致させるためのバッテリー電圧Vdcに応じたdhqh軸電圧指令値vdh*、vqh*を演算する。
【0050】
dhqh/dq変換部19は、dhqh軸電圧指令値vdh*、vqh*をdq軸座標系の高調波電圧指令値vd1*、vq1*に変換する。加算器20は、dq軸電圧指令値vd*、vq*とdq軸補償電圧Vd_cmp、Vq_cmpとの加算値に、dq軸座標系の高調波電圧指令値vd1*、vq1*を加算してdq軸電圧指令値vdo*、vwo*を生成する。
【0051】
図5に第2の実施の形態のトルク制御部1の詳細を示す。なお、図2に示すデータマップおよび機器と同様なデータマップおよび機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。
【0052】
トルク制御部1は、d軸電流用総合損失最少マップ21、q軸電流用総合損失最少マップ22、d軸電流用インバーター損失最少マップ23、q軸電流用インバーター損失最少マップ24、d軸電流用モーター損失最少マップ25およびq軸電流用モーター損失最少マップ26の他に、dh軸電流用総合損失最少マップ31、qh軸電流用総合損失最少マップ32、dh軸電流用インバーター損失最少マップ33、qh軸電流用インバーター損失最少マップ34、dh軸電流用モーター損失最少マップ35およびqh軸電流用モーター損失最少マップ36を備えている。
【0053】
dhqh軸電流用総合損失最少マップ31、32は、電力変換部(インバーター)9とモーター11を含むモーター駆動制御系全体の高調波電流による総合損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*のデータマップである。同様に、インバーター損失最少マップ33、34は、電力変換部(インバーター)9の高調波電流による損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*のデータマップである。さらに、モーター損失最少マップ35、36は、3相同期モーター11の高調波電流による損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*のデータマップである。
【0054】
指令値選択部27は、電力変換部9のIGBTチップの温度tmp_iとモーター11の巻線温度tmp_mに基づいて、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*、モーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*の内のいずれかを選択し、指令値選択信号s_comを切換スイッチ28,29、37,38へ出力する。
【0055】
モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部(インバーター)9およびモーター11のどちらも温度上昇を許容できる状態にあるので、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*を選択し、指令値選択信号s_comを2とする。
【0056】
また、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAX以上の場合は、モーター11は温度上昇を許容できるが、電力変換部9はこれ以上の温度上昇を許容できない状態にあるので、電力変換部9の損失(インバーター損失)を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*を選択し、指令値選択信号s_comを1とする。
【0057】
さらに、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAX以上で、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部9は温度上昇を許容できるが、モーター11は温度上昇を許容できない状態にあるので、モーター11の損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*を選択し、指令値選択信号s_comを0とする。
【0058】
なお、モーター巻線温度tmp_mとIGBTチップ温度tmp_iとがともにそれらの許容値TM_MAX、TI_MAX以上の場合には、モーター11も電力変換部9も温度上昇を許容できない状態にあるので、指令値選択信号s_comを2にして総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*を選択するとともに、モーター11の出力を低減する。
【0059】
切換スイッチ28、29、37、38は、指令値選択信号s_comにしたがって、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*、モーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*の内のいずれかを選択し、dq軸電流指令値id*、iq*およびdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*として出力する。
【0060】
指令値選択信号s_comが2の場合は総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*を選択し、指令値選択信号s_comが1の場合はインバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*を選択し、指令値選択信号s_comが0の場合はモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*を選択する。
【0061】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、通常は総合損失が最少になるようにモーター11が駆動制御され、またモーター巻線温度tmp_mが許容値TM_MAX以上の場合にはモーター損失が最少になるようにモーター11が駆動制御され、さらにIGBTチップ温度tmp_iが許容値TI_MAX以上の場合にはインバーター損失が最少になるようにモーター11が駆動制御される。
【0062】
図6は、dh軸高調波電流idhに対する総合効率、モーター効率およびインバーター効率の関係を示す。この図から明らかなように、総合効率、モーター効率およびインバーター効率が最大となるdh軸高調波電流idhの値は異なる。電力変換部(インバーター)9およびモーター11の種類や構成によっては、モーター効率変化量Δηm、インバーター効率変化量Δηiが1%程度の大きな値になることがある。この一実施の形態によれば、モーター損失Pm_lossとインバーター損失Pinv_lossを通常の駆動状態よりも低減することができる。
【0063】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、モーター巻線温度が許容値以上でかつIGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値以上のときはインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択するようにした。これにより、従来の総合損失を最少にする基本波電流で常時、モーターを駆動するのに比べ、モーター損失を最少にする基本波および高調波電流でモーターを駆動したり、インバーター損失を最少にする基本波および高調波電流でモーターを駆動することが可能になり、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度に応じた最適な電流でモーターを駆動することができ、モーターや電力変換部(インバーター)が高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよび電力変換部(インバーター)の発熱を抑制できる。
【0064】
近年、モーター駆動制御系全体の運転効率向上に対する強い要求があり、磁石トルクとリラクタンストルクを併用する埋め込み磁石式モーター(IPMモーター)が広く用いられるようになってきた。また、従来からの巻線方式である分布巻に代わって低コスト化や小型化を実現しやすい集中巻方式のモーターが登場するようになった。この種のモーターでは空間的な歪み、すなわち空間高調波成分が大きいため、上述した第2の実施の形態により基本波成分であるdq軸電流だけでなく、高調波成分であるdhqh軸電流を制御することによって、基本波成分であるdq軸電流のみを制御する場合に比べ、総合損失、インバーター損失、モーター損失をさらに低減することができる。
【0065】
特許請求の範囲の構成要素と第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。電流制御部2が基本波電流制御回路を、dhqh軸電流制御部18が高調波電流制御回路を、電力変換部9が電力変換器を、トルク制御部1が総合損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路、モーター損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路、電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路、および指令値選択回路を、温度センサー15がモーター損失検出器を、温度センサー14が電力変換器損失検出器をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0066】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*のデータマップを用いて、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対応するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*を決定する例を示したが、トルク指令値Te*のみに対するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*のデータマップを用意し、そのデータマップからトルク指令値Te*に対応するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*を表引き演算するようにしてもよい。
【0067】
また、上述した第2の実施の形態では、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度(電力変換部温度)に応じて、総合損失最少基本波および高調波電流指令値、モーター損失最少基本波および高調波電流指令値、およびインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値の内のいずれかを選択する例を示したが、総合損失最少基本波および高調波電流指令値データマップとモーター損失最少基本波および高調波電流指令値データマップだけを用意し、モーター巻線温度が許容値以上のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択するようにしてもよい。また、総合損失最少基本波および高調波電流指令値データマップとインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値データマップだけを用意し、IGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値以上のときはインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、IGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態のトルク制御部の詳細な構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の動作を示すタイムチャートである。
【図4】第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図5】第2の実施の形態のトルク制御部の詳細な構成を示す図である。
【図6】dh軸高調波電流idhに対する総合効率、モーター効率およびインバーター効率の関係を示す図である。
【図7】モーターの出力トルクとdq軸電流id、iqとの関係を示す図である。
【図8】インバーターの直流入力電力がモーターの機械出力に変換されるまでのパワーロスを示す図である。
【図9】モーターの出力トルクを一定に保つ条件の基で|(d軸電流)/(q軸電流)|に対するインバーター損失Pinv_loss、モーター損失Pm_lossおよび総合損失Pt_lossの変化を示す図である。
【符号の説明】
1 トルク制御部
2 電流制御部
3 加算器
4 dq/3相変換部
5 PWM生成部
6 3相/dq変換部
7 非干渉制御部
8 位相・速度演算部
9 電力変換部
10 電流センサー
11 モーター
12 回転センサー
13 メインバッテリー
14、15 温度センサー
16 ハイパスフィルター(HPF)
17 dq/dhqh変換部
18 dhqh軸電流制御部
19 dhqh/dq変換部
20 加算器
21〜26、31〜36 データマップ
27 指令値選択部
28,29,37,38 切換スイッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は交流モーターを駆動制御するモーター制御装置に関し、特に、運転効率を改善したものである。
【0002】
【従来の技術】
ベクトル制御により高精度のトルク制御と電流制御を可能にした交流モーターの制御装置が知られている(例えば特開平09−215397号公報参照)。
【0003】
この種のモーター制御装置では、3相交流モーターの回転に同期して回転する直交座標系、すなわちdq軸座標系においてモーターの基本波電流を制御する電流制御系を備えており、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するd軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*のデータマップから、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対応するdq軸電流指令値id*、iq*を表引き演算し、3相交流モーターの基本波電流を制御している。
【0004】
図7に、モーターの出力トルクとd軸電流id、q軸電流iqの関係を示す。同一のトルクが得られるd軸電流id1とq軸電流iq1の組み合わせは無限にある。3相交流モーターを駆動するインバーターの直流入力電力に対するモーターの機械出力が最大となるようなd軸電流id1とq軸電流iq1の組み合わせでモーターを駆動すれば、常に最大の効率で運転を行うことができる。
【0005】
従来のモーター制御装置では、インバーターとモーターを含むモーター駆動制御系全体の総合的な運転効率が最大となるデータマップを用い、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id*、iq*を決定している。
【0006】
ところで、モーター駆動制御系で発生する主な損失には、インバーターで発生する損失とモーターで発生する損失がある。図8に、インバーターの直流入力電力Pinがモーターの機械出力Poに変換されるまでのパワーフローを示す。入力Pinから出力Poまでエネルギーの変換途中において、上述したインバーター損失Pinv_lossとモーター損失Pm_lossとが発生し、入力電力Pinのすべてが機械出力Poに変換されない。
【0007】
インバーターとモーターを含むモーター駆動制御系全体の総合的な効率を最大にするには、インバーター損失Pinv_lossとモーター損失Pm_lossとの和である総合損失Pt_loss(=Pinv_loss+Pm_loss)を最少にする必要がある。
【0008】
図9は、モーターの出力トルクを一定に保つ条件の基で|(d軸電流)/(q軸電流)|に対するインバーター損失Pinv_loss、モーター損失Pm_lossおよび総合損失Pt_lossの変化を示す。この図から明らかなように、総合損失Pt_lossが最少となる|id/iq|の値Ktと、インバーター損失Pinv_lossが最少となる|id/iq|の値Kiと、モーター損失Pm_lossが最少となる|id/iq|の値Kmとは必ずしも一致しない。つまり、従来のモーター制御装置で行われているように、総合損失Pt_lossを最少とするd軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*でモーターを駆動しても、インバーターとモーターがそれぞれ最少の損失Pinv_loss、Pm_lossで駆動されるとは限らない。
【0009】
損失の大部分は熱となるため、電気自動車やハイブリッド車両などに用いられる出力の大きなモーター駆動制御系では、モーターとインバーターを冷却する必要がある。近年、モーターの出力密度が高くなるにつれて熱の発生密度が高くなっているので、冷却系の性能が追いつかず、モーターとインバーターを余裕を持って常時冷却することは困難になっている。このようなモーター駆動制御系では、熱環境によってはモーターが高温になったり、あるいはインバーターが高温になったりする。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のモーター制御装置では、モーターとインバーターを含むモーター駆動制御系全体の総合的な運転効率が最大となるデータマップを用いて、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id*、iq*を決定しているので、モーターまたはインバーターが高温になったときに、モーターの出力を低減せずに、モーターおよびインバーターの損失を低減して発熱を抑制することができないという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、モーターやインバーターが高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよびインバーターの発熱を抑制することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、モーター温度検出値が許容温度以上でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択する。
【0013】
【発明の効果】
本発明によれば、モーター温度およびインバーター温度に応じた最適な電流でモーターを駆動することができ、モーターやインバーターが高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよびインバーターの発熱を抑制できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
《発明の第1の実施の形態》
図1は第1の実施の形態の構成を示す。第1の実施の形態のモーター制御装置は、ベクトル制御により高精度のトルク制御と電流制御を行う。この一実施の形態では埋め込み磁石式の3相同期モーターを駆動制御する例を示すが、モーターは埋め込み磁石式3相同期モーターに限定されず、例えば3相誘導モーターなどの他の形式の交流モーターを用いることができる。
【0015】
第1の実施の形態のモーター制御装置は、トルク制御部1、電流制御部2、加算器3、dq/3相変換部4、PWM生成部5、3相/dq変換部6、非干渉制御部7、位相・速度演算部8、電力変換部9、電流センサー10、メインバッテリー13を備えている。
【0016】
なお、電力変換部9には、電力変換素子の温度を計測するための温度センサー14が設けられている。一方、3相同期モーター11には、モーター回転を計測するための回転センサー12とモーター巻線温度を計測するための温度センサー15が設けられている。モーター11と電力変換部9で発生する電気的な損失はその大部分が熱になり、モーター11の巻線と電力変換部9の電力変換素子の温度を上昇させる。そこで、この一実施の形態では、モーター11と電力変換部9の損失を検出する代わりに、温度センサー15によりモーター11の温度を検出するとともに、温度センサー14により電力変換部9の温度を検出する。
【0017】
トルク制御部1は、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに加え、電力変換部温度tmp_iとモーター巻線温度tmp_mを入力し、これらの入力信号に基づいてd軸電流指令値id*とq軸電流指令値iq*を演算する。このトルク制御部1の詳細については後述する。なお、上述したように、dq軸座標系はモーター11の回転に同期して回転する直交座標系であり、dq軸電流指令値id*、iq*はこのdq軸座標系における3相同期モーター11の基本波電流の指令値である。
【0018】
位相・速度演算部8は、回転センサー12により検出したモーター回転θmに基づいて、モーター11の回転速度ωeを演算するとともに、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeを演算する。
【0019】
3相/dq変換部6は、電流センサー10により検出した3相同期モーター11のU相電流iuとV相電流ivからW相電流iwを求め、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeに基づいてモーター11に流れる3相交流電流iu、iv、iwをdq軸座標系の実電流id、iqへ変換する。
【0020】
電流制御部2は、dq軸座標系において3相交流モーター11の基本波電流を制御する。具体的には、上述したdq軸の実電流id、iqとメインバッテリー13の電圧Vdcをフィードバックし、実電流id、iqを電流指令値id*、iq*に一致させるためのバッテリー電圧Vdcに応じたdq軸電圧指令値vd*、vq*を演算する。
【0021】
非干渉制御部7は、dq軸に存在する速度起電力を補償してdq軸電流の応答性を改善するためのdq軸補償電圧Vd_cmp、Vq_cmpを演算する。加算器3は、dq軸補償電圧vd_cmp、vq_cmpをdq軸電圧指令値vd*、vq*に加算して電圧指令値vdo*、vqo*を算出する。
【0022】
dq/3相変換部4は、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeに基づいて、dq軸電圧指令値vdo*、vqo*を3相交流電圧指令値vu*、vv*、vw*へ変換する。PWM生成部5は、3相交流電圧指令値vu*、vv*、vw*に基づいて電力変換部9の電力変換素子をオン、オフするための3相PWM信号を生成する。
【0023】
電力変換部9は電力変換素子としてIGBTを備えたインバーターであり、3相PWM信号にしたがって各相のIGBTのスイッチングを行い、3相同期モーター11へPWM波形の3相交流疑似正弦波電圧を印加する。
【0024】
図2に第1の実施の形態のトルク制御部1の詳細な構成を示す。トルク制御部1は、d軸電流用総合損失最少マップ21、q軸電流用総合損失最少マップ22、d軸電流用インバーター損失最少マップ23、q軸電流用インバーター損失最少マップ24、d軸電流用モーター損失最少マップ25およびq軸電流用モーター損失最少マップ26を備えている。
【0025】
総合損失最少マップ21、22は、電力変換部(インバーター)9とモーター11を含むモーター駆動制御系全体の総合損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id_t*、iq_t*のデータマップである。図9には特定のモーター回転速度と出力トルクを一定に保った場合のdq軸電流比|id/iq|と総合損失との関係を示すが、モーター回転速度と出力トルクの全領域において総合損失が最少となる|id/iq|=Ktのデータを求め、総合損失最少のデータマップとしてトルク制御部1のメモリ(不図示)に記憶する。
【0026】
上述したように、モーター駆動制御系で発生する損失は、主に電力変換部(インバーター)9で発生するインバーター損失Pinv_lossと、モーター11で発生するモーター損失Pm_lossである。電力変換部9とモーター11を含むモーター駆動制御系全体の総合的な効率を最大にするには、インバーター損失Pinv_lossとモーター損失Pm_lossとの和である総合損失Pt_loss(=Pinv_loss+Pm_loss)を最少にすればよい。
【0027】
同様に、インバーター損失最少マップ23、24は、電力変換部(インバーター)9の損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id_i*、iq_i*のデータマップである。図9には特定のモーター回転速度と出力トルクを一定に保った場合のdq軸電流比|id/iq|とインバーター損失との関係を示すが、モーター回転速度と出力トルクの全領域においてインバーター損失が最少となる|id/iq|=Kiのデータを求め、インバーター損失最少のデータマップとしてトルク制御部1のメモリ(不図示)に記憶する。
【0028】
さらに、モーター損失最少マップ25、26は、3相同期モーター11の損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id_m*、iq_m*のデータマップである。図9には特定のモーター回転速度と出力トルクを一定に保った場合のdq軸電流比|id/iq|とモーター損失との関係を示すが、モーター回転速度と出力トルクの全領域においてモーター損失が最少となる|id/iq|=Kmのデータを求め、モーター損失最少のデータマップとしてトルク制御部1のメモリ(不図示)に記憶する。
【0029】
指令値選択部27は、電力変換部9のIGBTチップの温度tmp_iとモーター11の巻線温度tmp_mに基づいて、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*、およびモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*の内のいずれかを選択し、指令値選択信号s_comを切換スイッチ28,29へ出力する。
【0030】
モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部(インバーター)9およびモーター11のどちらも温度上昇を許容できる状態にあるので、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、指令値選択信号s_comを2とする。
【0031】
ここで、モーター巻線温度tmp_mの許容値TM_MAXとは、モーター巻線温度tmp_mがこの値以上に上昇しないようにモーター損失を最少にしなければならない限界温度である。また、IGBTチップ温度tmp_iの許容値TI_MAXとは、電力変換部(インバーター)9のIGBTチップ温度tmp_iがこの値以上に上昇しないようにインバーター損失を最少にしなければならない限界温度である。
【0032】
また、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAX以上の場合は、モーター11は温度上昇を許容できるが、電力変換部9はこれ以上の温度上昇を許容できない状態にあるので、電力変換部9の損失(インバーター損失)を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*を選択し、指令値選択信号s_comを1とする。
【0033】
さらに、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAX以上で、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部9は温度上昇を許容できるが、モーター11は温度上昇を許容できない状態にあるので、モーター11の損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*を選択し、指令値選択信号s_comを0とする。
【0034】
なお、モーター巻線温度tmp_mとIGBTチップ温度tmp_iとがともにそれらの許容値TM_MAX、TI_MAX以上の場合には、モーター11も電力変換部9も温度上昇を許容できない状態にあるので、指令値選択信号s_comを2にして総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択するとともに、モーター11の出力を低減する。
【0035】
切換スイッチ28、29は、指令値選択信号s_comにしたがって、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*、およびモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*の内のいずれかを選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0036】
指令値選択信号s_comが2の場合は総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、指令値選択信号s_comが1の場合はインバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*を選択し、指令値選択信号s_comが0の場合はモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*を選択する。
【0037】
図3は第1の実施の形態の動作を示すタイムチャートである。時刻t1まではIGBTチップ温度tmp_iとモーター巻線温度tmp_mとがともにそれらの許容値TI_MAX、TM_MAXより低いので、指令値選択信号s_comに2を設定して総合効率を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0038】
時刻t1において、IGBTチップ温度tpm_iがその許容値TI_MAX以上になると、指令値選択信号s_comに1を設定してインバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。これにより、インバーター損失が減少し、電力変換部9のIGBTチップ温度tmp_iの上昇が抑制される。なお、インバーター損失を低減すると、図9に示すインバーター損失とモーター損失の関係から明らかなように、モーター損失が増加する。時刻t2で、IGBTチップ温度tpm_iがその許容値TI_MAXより低くなると、ふたたび指令値選択信号s_comに2を設定して総合効率を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0039】
時刻t3において、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAX以上になると、指令値選択信号s_comに0を設定してモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。これにより、モーター損失が減少し、モーター11の巻線温度tmp_mの上昇が抑制される。なお、モーター損失を低減すると、図9に示すモーター損失とインバーター損失の関係から明らかなように、インバーター損失が増加する。時刻t4で、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低くなると、ふたたび指令値選択信号s_comに2を設定して総合効率を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*を選択し、dq軸電流指令値id*、iq*として出力する。
【0040】
このように、第1の実施の形態によれば、モーター巻線温度が許容値以上でかつIGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値未満のときはモーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値以上のときはインバーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択するようにした。これにより、従来の総合損失を最少にするdq軸電流で常時、モーターを駆動するのに比べ、モーター損失を最少にするdq軸電流でモーターを駆動したり、インバーター損失を最少にするdq軸電流でモーターを駆動することが可能になり、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度に応じた最適な電流でモーターを駆動することができ、モーターや電力変換部(インバーター)が高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよび電力変換部(インバーター)の発熱を抑制できる。
【0041】
特許請求の範囲の構成要素と第1の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。電流制御部2が電流制御回路を、電力変換部9が電力変換器を、トルク制御部1が総合損失最少dq軸電流指令値生成回路、モーター損失最少dq軸電流指令値生成回路、電力変換損失最少dq軸電流指令値生成回路および指令値選択回路を、温度センサー15がモーター損失検出器を、温度センサー14が電力変換器損失検出器をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0042】
なお、上述した第1の実施の形態では、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸電流指令値id*、iq*のデータマップを用いて、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対応するdq軸電流指令値id*、iq*を決定する例を示したが、トルク指令値Te*のみに対するdq軸電流指令値id*、iq*のデータマップを用意し、そのデータマップからトルク指令値Te*に対応するdq軸電流指令値id*、iq*を表引き演算するようにしてもよい。
【0043】
また、上述した第1の実施の形態では、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度(電力変換部温度)に応じて、総合損失最少dq軸電流指令値、モーター損失最少dq軸電流指令値、およびインバーター損失最少dq軸電流指令値の内のいずれかを選択する例を示したが、総合損失最少dq軸電流指令値データマップとモーター損失最少dq軸電流指令値データマップだけを用意し、モーター巻線温度が許容値以上のときはモーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択するようにしてもよい。また、総合損失最少dq軸電流指令値データマップとインバーター損失最少dq軸電流指令値データマップだけを用意し、IGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値以上のときはインバーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、IGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択するようにしてもよい。
【0044】
《発明の第2の実施の形態》
第1の実施の形態に基本波電流制御系の他に、高調波電流制御系を備えたモーター制御装置に対して本願発明を適用した第2の実施の形態を説明する。
【0045】
基本波電流制御系のみで3相同期モーター11を駆動制御すると、モーター電流iu、iv、iwに高調波成分が含まれる。高調波電流制御系は、モーター電流iu、iv、iwに含まれる所定次数の高調波成分の周波数で回転する直交座標系(以下、高調波座標系またはdhqh軸座標系という)、換言すれば、モーター電流iu、iv、iwの基本波成分の周波数の整数倍の周波数で回転する高調波座標系(dhqh軸座標系)でモーター電流iu、iv、iwに含まれる高調波成分を制御する回路である。
【0046】
図4は第2の実施の形態の構成を示す。なお、図1に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。上述したように、基本波電流制御系は、電流制御部2、加算器3、dq/3相変換部4、3相/dq変換部6および非干渉制御部7により構成される。これに対し高調波電流制御系は、ハイパスフィルター(HPF)16、dq/dhqh変換部17、dhqh軸電流制御部18、dhqh/dq変換部19および加算器20により構成される。
【0047】
トルク制御部1は、dq軸基本波電流指令値id*、iq*の他に、dhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*を演算、出力する。このトルク制御部1については詳細を後述する。位相・速度演算部8は、回転センサー12により検出したモーター回転θmに基づいて、モーター11の回転速度ωeを演算するとともに、3相交流座標系から見たdq軸座標系の位相θeと高調波電流座標系(dhqh軸座標系)の位相θehを演算する。
【0048】
ハイパスフィルター(HPF)16は、dq軸実電流id、iqに含まれている高調波成分を抽出する。dq/dhqh変換部17は、dq軸の高調波電流をdhqh軸座標系の高調波電流idh、iqhへ変換する。
【0049】
dhqh軸電流制御部18は、高調波電流制御系(dhqh軸座標系)において3相同期モーター11に流れる高調波電流を制御する。具体的には、dhqh軸高調波電流idh、iqhとメインバッテリー13の電圧Vdcをフィードバックし、高調波実電流idh、iqhを高調波電流指令値idh*、iqh*に一致させるためのバッテリー電圧Vdcに応じたdhqh軸電圧指令値vdh*、vqh*を演算する。
【0050】
dhqh/dq変換部19は、dhqh軸電圧指令値vdh*、vqh*をdq軸座標系の高調波電圧指令値vd1*、vq1*に変換する。加算器20は、dq軸電圧指令値vd*、vq*とdq軸補償電圧Vd_cmp、Vq_cmpとの加算値に、dq軸座標系の高調波電圧指令値vd1*、vq1*を加算してdq軸電圧指令値vdo*、vwo*を生成する。
【0051】
図5に第2の実施の形態のトルク制御部1の詳細を示す。なお、図2に示すデータマップおよび機器と同様なデータマップおよび機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。
【0052】
トルク制御部1は、d軸電流用総合損失最少マップ21、q軸電流用総合損失最少マップ22、d軸電流用インバーター損失最少マップ23、q軸電流用インバーター損失最少マップ24、d軸電流用モーター損失最少マップ25およびq軸電流用モーター損失最少マップ26の他に、dh軸電流用総合損失最少マップ31、qh軸電流用総合損失最少マップ32、dh軸電流用インバーター損失最少マップ33、qh軸電流用インバーター損失最少マップ34、dh軸電流用モーター損失最少マップ35およびqh軸電流用モーター損失最少マップ36を備えている。
【0053】
dhqh軸電流用総合損失最少マップ31、32は、電力変換部(インバーター)9とモーター11を含むモーター駆動制御系全体の高調波電流による総合損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*のデータマップである。同様に、インバーター損失最少マップ33、34は、電力変換部(インバーター)9の高調波電流による損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*のデータマップである。さらに、モーター損失最少マップ35、36は、3相同期モーター11の高調波電流による損失を最少にする、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*のデータマップである。
【0054】
指令値選択部27は、電力変換部9のIGBTチップの温度tmp_iとモーター11の巻線温度tmp_mに基づいて、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*、モーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*の内のいずれかを選択し、指令値選択信号s_comを切換スイッチ28,29、37,38へ出力する。
【0055】
モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部(インバーター)9およびモーター11のどちらも温度上昇を許容できる状態にあるので、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*を選択し、指令値選択信号s_comを2とする。
【0056】
また、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAXより低く、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAX以上の場合は、モーター11は温度上昇を許容できるが、電力変換部9はこれ以上の温度上昇を許容できない状態にあるので、電力変換部9の損失(インバーター損失)を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*を選択し、指令値選択信号s_comを1とする。
【0057】
さらに、モーター巻線温度tmp_mがその許容値TM_MAX以上で、かつIGBTチップ温度tmp_iがその許容値TI_MAXより低い場合は、電力変換部9は温度上昇を許容できるが、モーター11は温度上昇を許容できない状態にあるので、モーター11の損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*を選択し、指令値選択信号s_comを0とする。
【0058】
なお、モーター巻線温度tmp_mとIGBTチップ温度tmp_iとがともにそれらの許容値TM_MAX、TI_MAX以上の場合には、モーター11も電力変換部9も温度上昇を許容できない状態にあるので、指令値選択信号s_comを2にして総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*を選択するとともに、モーター11の出力を低減する。
【0059】
切換スイッチ28、29、37、38は、指令値選択信号s_comにしたがって、総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*、インバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*、モーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*の内のいずれかを選択し、dq軸電流指令値id*、iq*およびdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*として出力する。
【0060】
指令値選択信号s_comが2の場合は総合損失を最少にするdq軸電流指令値id_t*、iq_t*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_t*、iqh_t*を選択し、指令値選択信号s_comが1の場合はインバーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_i*、iq_i*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_i*、iqh_i*を選択し、指令値選択信号s_comが0の場合はモーター損失を最少にするdq軸電流指令値id_m*、iq_m*およびdhqh軸高調波電流指令値idh_m*、iqh_m*を選択する。
【0061】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、通常は総合損失が最少になるようにモーター11が駆動制御され、またモーター巻線温度tmp_mが許容値TM_MAX以上の場合にはモーター損失が最少になるようにモーター11が駆動制御され、さらにIGBTチップ温度tmp_iが許容値TI_MAX以上の場合にはインバーター損失が最少になるようにモーター11が駆動制御される。
【0062】
図6は、dh軸高調波電流idhに対する総合効率、モーター効率およびインバーター効率の関係を示す。この図から明らかなように、総合効率、モーター効率およびインバーター効率が最大となるdh軸高調波電流idhの値は異なる。電力変換部(インバーター)9およびモーター11の種類や構成によっては、モーター効率変化量Δηm、インバーター効率変化量Δηiが1%程度の大きな値になることがある。この一実施の形態によれば、モーター損失Pm_lossとインバーター損失Pinv_lossを通常の駆動状態よりも低減することができる。
【0063】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、モーター巻線温度が許容値以上でかつIGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値以上のときはインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満でかつIGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択するようにした。これにより、従来の総合損失を最少にする基本波電流で常時、モーターを駆動するのに比べ、モーター損失を最少にする基本波および高調波電流でモーターを駆動したり、インバーター損失を最少にする基本波および高調波電流でモーターを駆動することが可能になり、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度に応じた最適な電流でモーターを駆動することができ、モーターや電力変換部(インバーター)が高温になった場合でも、モーター出力を低減することなくモーターおよび電力変換部(インバーター)の発熱を抑制できる。
【0064】
近年、モーター駆動制御系全体の運転効率向上に対する強い要求があり、磁石トルクとリラクタンストルクを併用する埋め込み磁石式モーター(IPMモーター)が広く用いられるようになってきた。また、従来からの巻線方式である分布巻に代わって低コスト化や小型化を実現しやすい集中巻方式のモーターが登場するようになった。この種のモーターでは空間的な歪み、すなわち空間高調波成分が大きいため、上述した第2の実施の形態により基本波成分であるdq軸電流だけでなく、高調波成分であるdhqh軸電流を制御することによって、基本波成分であるdq軸電流のみを制御する場合に比べ、総合損失、インバーター損失、モーター損失をさらに低減することができる。
【0065】
特許請求の範囲の構成要素と第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。電流制御部2が基本波電流制御回路を、dhqh軸電流制御部18が高調波電流制御回路を、電力変換部9が電力変換器を、トルク制御部1が総合損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路、モーター損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路、電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路、および指令値選択回路を、温度センサー15がモーター損失検出器を、温度センサー14が電力変換器損失検出器をそれぞれ構成する。なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、各構成要素は上記構成に限定されるものではない。
【0066】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*のデータマップを用いて、トルク指令値Te*とモーター回転速度ωeに対応するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*を決定する例を示したが、トルク指令値Te*のみに対するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*のデータマップを用意し、そのデータマップからトルク指令値Te*に対応するdq軸基本波電流指令値id*、iq*とdhqh軸高調波電流指令値idh*、iqh*を表引き演算するようにしてもよい。
【0067】
また、上述した第2の実施の形態では、モーター巻線温度およびIGBTチップ温度(電力変換部温度)に応じて、総合損失最少基本波および高調波電流指令値、モーター損失最少基本波および高調波電流指令値、およびインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値の内のいずれかを選択する例を示したが、総合損失最少基本波および高調波電流指令値データマップとモーター損失最少基本波および高調波電流指令値データマップだけを用意し、モーター巻線温度が許容値以上のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター巻線温度が許容値未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択するようにしてもよい。また、総合損失最少基本波および高調波電流指令値データマップとインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値データマップだけを用意し、IGBTチップ温度(電力変換部温度)が許容値以上のときはインバーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、IGBTチップ温度が許容値未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態のトルク制御部の詳細な構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の動作を示すタイムチャートである。
【図4】第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図5】第2の実施の形態のトルク制御部の詳細な構成を示す図である。
【図6】dh軸高調波電流idhに対する総合効率、モーター効率およびインバーター効率の関係を示す図である。
【図7】モーターの出力トルクとdq軸電流id、iqとの関係を示す図である。
【図8】インバーターの直流入力電力がモーターの機械出力に変換されるまでのパワーロスを示す図である。
【図9】モーターの出力トルクを一定に保つ条件の基で|(d軸電流)/(q軸電流)|に対するインバーター損失Pinv_loss、モーター損失Pm_lossおよび総合損失Pt_lossの変化を示す図である。
【符号の説明】
1 トルク制御部
2 電流制御部
3 加算器
4 dq/3相変換部
5 PWM生成部
6 3相/dq変換部
7 非干渉制御部
8 位相・速度演算部
9 電力変換部
10 電流センサー
11 モーター
12 回転センサー
13 メインバッテリー
14、15 温度センサー
16 ハイパスフィルター(HPF)
17 dq/dhqh変換部
18 dhqh軸電流制御部
19 dhqh/dq変換部
20 加算器
21〜26、31〜36 データマップ
27 指令値選択部
28,29,37,38 切換スイッチ
Claims (12)
- 交流モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系において、交流モーターのdq軸電流をdq軸電流指令値に一致させるための電圧指令値を演算する電流制御回路と、
電圧指令値にしたがって直流電力を交流電力に変換して交流モーターに印加する電力変換器とを備えたモーター制御装置において、
交流モーターと電力変換器を含むモーター駆動制御系全体の総合的な損失を最少にする総合損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
交流モーターの損失を最少にするモーター損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
モーターの損失を検出するモーター損失検出器と、
モーター損失検出値に応じて総合損失最少dq軸電流指令値とモーター損失最少dq軸電流指令値との内のいずれかを選択する指令値選択回路とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項1に記載のモーター制御装置において、
前記モーター損失検出器はモーターの温度を検出し、
前記指令値選択回路は、モーター温度検出値が許容温度以上のときはモーター損失最少dq軸電流指令値を選択することを特徴とするモーター制御装置。 - 交流モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系において、交流モーターのdq軸電流をdq軸電流指令値に一致させるための電圧指令値を演算する電流制御回路と、
電圧指令値にしたがって直流電力を交流電力に変換して交流モーターに印加する電力変換器とを備えたモーター制御装置において、
交流モーターと電力変換器を含むモーター駆動制御系全体の総合的な損失を最少にする総合損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
電力変換器の損失を最少にする電力変換損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
電力変換器の損失を検出する電力変換器損失検出器と、
電力変換器損失検出値に応じて総合損失最少dq軸電流指令値と電力変換損失最少dq軸電流指令値の内のいずれかを選択する指令値選択回路とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項3に記載のモーター制御装置において、
前記電力変換器損失検出器は電力変換器の温度を検出し、
前記指令値選択回路は、電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少dq軸電流指令値を選択することを特徴とするモーター制御装置。 - 交流モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系において、交流モーターのdq軸電流をdq軸電流指令値に一致させるための電圧指令値を演算する電流制御回路と、
電圧指令値にしたがって直流電力を交流電力に変換して交流モーターに印加する電力変換器とを備えたモーター制御装置において、
交流モーターと電力変換器を含むモーター駆動制御系全体の総合的な損失を最少にする総合損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
交流モーターの損失を最少にするモーター損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
電力変換器の損失を最少にする電力変換損失最少dq軸電流指令値を生成する回路と、
モーターの損失を検出するモーター損失検出器と、
電力変換器の損失を検出する電力変換器損失検出器と、
モーター損失検出値および電力変換器損失検出値に応じて、総合損失最少dq軸電流指令値、モーター損失最少dq軸電流指令値、および電力変換損失最少dq軸電流指令値の内のいずれかを選択する指令値選択回路とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項5に記載のモーター制御装置において、
前記モーター損失検出器はモーターの温度を検出するとともに、前記電力変換器損失検出器は電力変換器の温度を検出し、
前記指令値選択回路は、モーター温度検出値が許容温度以上でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときはモーター損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少dq軸電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときは総合損失最少dq軸電流指令値を選択することを特徴とするモーター制御装置。 - 交流モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系において、交流モーターの基本波電流を基本波電流指令値に一致させるための基本波電圧指令値を演算する基本波電流制御回路と、
交流モーターに流れる電流に含まれる所定次数の高調波成分の周波数で回転する高調波座標系において、交流モーターの高調波電流を高調波電流指令値に一致させるための高調波電圧指令値を演算する高調波電流制御回路と、
基本波電圧指令値と高調波電圧指令値にしたがって直流電力を交流電力に変換して交流モーターに印加する電力変換器とを備えたモーター制御装置において、
交流モーターと電力変換器を含むモーター駆動制御系全体の総合的な損失を最少にする総合損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
交流モーターの損失を最少にするモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
モーターの損失を検出するモーター損失検出器と、
モーター損失検出値に応じて総合損失最少基本波および高調波電流指令値とモーター損失最少基本波および高調波電流指令値との内のいずれかを選択する指令値選択回路とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項7に記載のモーター制御装置において、
前記モーター損失検出器はモーターの温度を検出し、
前記指令値選択回路は、モーター温度検出値が許容温度以上のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択することを特徴とするモーター制御装置。 - 交流モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系において、交流モーターの基本波電流を基本波電流指令値に一致させるための基本波電圧指令値を演算する基本波電流制御回路と、
交流モーターに流れる電流に含まれる所定次数の高調波成分の周波数で回転する高調波座標系において、交流モーターの高調波電流を高調波電流指令値に一致させるための高調波電圧指令値を演算する高調波電流制御回路と、
基本波電圧指令値と高調波電圧指令値にしたがって直流電力を交流電力に変換して交流モーターに印加する電力変換器とを備えたモーター制御装置において、
交流モーターと電力変換器を含むモーター駆動制御系全体の総合的な損失を最少にする総合損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
電力変換器の損失を最少にする電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
電力変換器の損失を検出する電力変換器損失検出器と、
電力変換器損失検出値に応じて総合損失最少基本波および高調波電流指令値と電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値の内のいずれかを選択する指令値選択回路とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項9に記載のモーター制御装置において、
前記電力変換器損失検出器は電力変換器の温度を検出し、
前記指令値選択回路は、電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を選択することを特徴とするモーター制御装置。 - 交流モーターの回転に同期して回転するdq軸座標系において、交流モーターの基本波電流を基本波電流指令値に一致させるための基本波電圧指令値を演算する基本波電流制御回路と、
交流モーターに流れる電流に含まれる所定次数の高調波成分の周波数で回転する高調波座標系において、交流モーターの高調波電流を高調波電流指令値に一致させるための高調波電圧指令値を演算する高調波電流制御回路と、
基本波電圧指令値と高調波電圧指令値にしたがって直流電力を交流電力に変換して交流モーターに印加する電力変換器とを備えたモーター制御装置において、
交流モーターと電力変換器を含むモーター駆動制御系全体の総合的な損失を最少にする総合損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
交流モーターの損失を最少にするモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
電力変換器の損失を最少にする電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を生成する回路と、
モーターの損失を検出するモーター損失検出器と、
電力変換器の損失を検出する電力変換器損失検出器と、
モーター損失検出値および電力変換器損失検出値に応じて、総合損失最少基本波および高調波電流指令値、モーター損失最少基本波および高調波電流指令値、および電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値の内のいずれかを選択する指令値選択回路とを備えることを特徴とするモーター制御装置。 - 請求項11に記載のモーター制御装置において、
前記モーター損失検出器はモーターの温度を検出するとともに、前記電力変換器損失検出器は電力変換器の温度を検出し、
前記指令値選択回路は、モーター温度検出値が許容温度以上でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときはモーター損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度以上のときは電力変換損失最少基本波および高調波電流指令値を選択し、モーター温度検出値が許容温度未満でかつ電力変換器温度検出値が許容温度未満のときは総合損失最少基本波および高調波電流指令値を選択することを特徴とするモーター制御装置。
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JP2009035419A (ja) * | 2007-08-06 | 2009-02-19 | Aichi Corp | 高所作業車 |
JP2009171641A (ja) * | 2008-01-10 | 2009-07-30 | Toyota Motor Corp | モータ駆動装置 |
CN114365413A (zh) * | 2020-07-30 | 2022-04-15 | 华为技术有限公司 | 一种温度的预测方法以及装置 |
-
2002
- 2002-07-24 JP JP2002214935A patent/JP2004056979A/ja active Pending
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