JP2004056913A - 駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】貫通電流の発生を防止するとともに、放電期間を設けて駆動電力の低減を図り、且つ圧電素子の出力の低下を抑制することのできる駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法を提供する。
【解決手段】駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切替え、この切替えタイミングから時間t9後に信号Sc3をローからハイに切替えた後、時間t10後に信号Sc2をローからハイに切り替えると共に、信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切替え、この切替えタイミングから時間t11後に信号Sc1をローからハイに切替えた後、時間t12後に信号Sc4をローからハイに切替えるようにして、圧電素子28の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tを、放電時間t10又はt12のみとして、上記時間Tが貫通電流防止に要する時間と放電時間との和となる従来の制御より短くした。
【選択図】 図5
【解決手段】駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切替え、この切替えタイミングから時間t9後に信号Sc3をローからハイに切替えた後、時間t10後に信号Sc2をローからハイに切り替えると共に、信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切替え、この切替えタイミングから時間t11後に信号Sc1をローからハイに切替えた後、時間t12後に信号Sc4をローからハイに切替えるようにして、圧電素子28の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tを、放電時間t10又はt12のみとして、上記時間Tが貫通電流防止に要する時間と放電時間との和となる従来の制御より短くした。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧の印加による圧電素子の伸縮動作を利用して、駆動対象物を駆動する駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
駆動電圧の印加による圧電素子の伸縮動作を利用して、駆動対象物を一定の直線上で往復動させるインパクト型アクチュエータが知られている。
【0003】
このアクチュエータは、例えば図11に示すように、電気機械変換素子である圧電素子101と、圧電素子101により駆動される棒状の駆動部材102と、駆動部材102に所定の摩擦力で結合された係合部材103と、圧電素子101に駆動電圧を印加する駆動回路部104とを備えて構成され、圧電素子101の伸縮動作、さらには駆動回路部104からの制御信号に対応する上記伸縮動作のスピードに応じて、駆動部材102が係合部材103と連動して、あるいは係合部材103に対してスリップすることにより、係合部材103に固着された駆動対象物である撮影レンズ等を間欠的に軸方向に移動させるようになっている。
【0004】
この種のアクチュエータにおいて採用される駆動回路部104として、例えば図12に示す構成を備えたものがある。
【0005】
図12に示すように、駆動回路部104は、例えばNチャネルMOS−FET等のスイッチング素子Q1’〜Q4’を備えて構成される4つのスイッチ回路1041〜1044が圧電素子101に対してブリッジ接続され、各スイッチ回路1041〜1044に駆動制御信号Sc1,Sc2,Sc3,Sc4を供給する制御回路1045によって、ブリッジの対角に位置する一対のスイッチ回路でそれぞれ構成される2つの駆動回路(スイッチ回路1041,1044で構成される駆動回路とスイッチ回路1042,1043で構成される駆動回路)を交互にオンオフ制御することで、電源電圧Vpを交番する矩形波電圧に変換し、この矩形波電圧を圧電素子101に印加するものである。圧電素子101は、矩形波電圧が印加されることにより、その変位の波形が鋸歯形状を描くように伸縮する。
【0006】
また、圧電素子101は、上記交番電圧により充放電を繰り返すコンデンサとして動作する。すなわち、一方の駆動回路がON(他方の駆動回路はOFF)し、圧電素子101に一方向から駆動電圧が印加されると、圧電素子101の端子間電圧の大きさが略電源電圧Vpとなるまで圧電素子101の両端子に電荷が充電され、その後、他方の駆動回路がON(上記一方の駆動回路はOFF)し、圧電素子101に逆方向から駆動電圧が印加されると、圧電素子101の両端子に充電された上記電荷が放電して両端子が等電位(電圧0)となる状態を経て、圧電素子101の端子間電圧の大きさが略電源電圧Vpとなるまで圧電素子101の両端子に電荷が逆向きに充電される。
【0007】
その場合に、駆動回路のオンオフを切り替える際、一方の駆動回路へのハイレベル信号(ONさせるための信号)と他方の駆動回路へのローレベル信号(OFFさせるための信号)とを同じ出力タイミングに設定した場合、他方の駆動回路がOFFとなるタイミングが一方の駆動回路がONするタイミングより遅れることがあり、この場合、直列接続されたスイッチ回路間(図12では、スイッチ回路1041とスイッチ回路1042もしくはスイッチ回路1043とスイッチ回路1044)において電流が流れる(以下、この電流を貫通電流という)。貫通電流は、圧電素子101の駆動に関与するものではないため消費電力の浪費になるとともに、スイッチング素子の焼き付き等を起こす原因となることから、この貫通電流の発生を防止するために、図13に示すようなスイッチ回路1041〜1044に対する制御(以下、第1の制御という)を行う場合がある。
【0008】
図13は、制御回路1045からスイッチ回路1041〜1044に送出する駆動制御信号Sc1〜Sc4を示す図である。
【0009】
図13に示すように、第1の制御においては、駆動制御信号Sc1〜Sc4のうち、駆動制御信号Sc2,Sc3を、駆動制御信号Sc1,Sc4をハイからローに切り替えるタイミングよりも時間t1遅いタイミングでローからハイに切り替える。このとき、スイッチ回路1042,1043は、スイッチ回路1041,1044がオンからオフに切り替わってからオンすることになる。また、駆動制御信号Sc1,Sc4をローからハイに切り替えるタイミングよりも時間t2早いタイミングでハイからローに切り替える。このとき、スイッチ回路1041,1044は、スイッチ回路1042,1043がオンからオフに切り替わってからオンすることになる。
【0010】
このような制御により、スイッチ回路1041と1042とが同時に、あるいはスイッチ回路1043と1044とが同時にONする期間をなくして貫通電流の発生を防止するようにしている。
【0011】
なお、圧電素子101の両端子間の電圧Vsに着目すると、図13に示すように、該電圧Vsの正負について端子Aが高電位のときを正としたとき、駆動制御信号Sc2,Sc3をローからハイに切り替えたタイミングで+Vpから−Vpとなり、駆動制御信号Sc1,Sc4をローからハイに切り替えたタイミングで−Vpから+Vpとなる。
【0012】
更なる消費電力の低減を図ることを目的として、上記の駆動回路部104に対して図14に示すような制御(以下、第2の制御という)を行うことがある。なお、図14は、上記第1の制御の目的である貫通電流の防止を含む制御を示すものである。
【0013】
図14に示すように、第2の制御においては、駆動制御信号Sc1〜Sc4のうち、駆動制御信号Sc4をハイからローに切り替えるタイミングから時間t3後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切り替え、このタイミングから時間t4後に駆動制御信号Sc1をハイからローに切り替え、さらにこのタイミングから時間t5後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替える。また、駆動制御信号Sc2をハイからローに切り替えるタイミングから時間t6後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切り替え、このタイミングから時間t7後に駆動制御信号Sc3をハイからローに切り替え、さらにこのタイミングから時間t8後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替える。
【0014】
この制御によれば、時間差t3,t5,t6,t8を設けたことにより、スイッチ回路1041とスイッチ回路1042とが、もしくはスイッチ回路1043とスイッチ回路1044とが同時にONする期間がないため、貫通電流の発生を防止することができる。また、上記のような交番電圧の印加による圧電素子101の充放電に対して、上記第1の制御では放電期間にも電源電圧を印加していたところ、この第2の制御では、両端子をショートさせる期間(時間t4,t7の期間)を設けることにより、両端子に充電された電荷を放電させるための電力分だけ節電することができるので、貫通電流の発生を防止できることに加えて、駆動電力の低減を図ることもできる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この第2の制御においては、次のような改善すべき余地がある。
【0016】
第2の制御においては、圧電素子101の両端子AB間の端子間電圧Vsは、図14に示すように、駆動制御信号Sc3をローからハイに切り替えると端子A,Bはショートするため、このタイミングで0となり、駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替えたタイミングで0から−Vpとなる。また、駆動制御信号Sc1をローからハイに切り替えると再び端子A,Bはショートするため、このタイミングで0となり、駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替えたタイミングで+Vpとなる。
【0017】
圧電素子101は、矩形波電圧が印加されることで、その変位の波形が鋸歯形状を描くように伸縮する旨前述したが、上記第2の制御では、圧電素子101の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tが長いために、圧電素子101の変位波形の勾配が緩やかとなり、第1の制御に比してアクチュエータの出力が低減することとなる。
【0018】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、貫通電流の発生を防止するとともに、放電期間を設けて駆動電力の低減を図り、且つアクチュエータの出力低下を抑制することのできる駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子に電圧を供給するための電源と、前記電気機械変換素子の一方の端子と電源との間に接続された第1スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の一方の端子とグランドとの間に接続された第2スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子と電源との間に接続された第3スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子とグランドとの間に接続された第4スイッチ手段と、前記電気機械変換素子に交番電圧を印加するべく、前記第1、第4スイッチ手段と前記第2、第3スイッチ手段とを交互にオンオフさせる制御手段とを備える駆動装置において、前記制御手段は、前記各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子に電圧を供給するための電源と、前記電気機械変換素子の一方の端子と電源との間に接続された第1スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の一方の端子とグランドとの間に接続された第2スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子と電源との間に接続された第3スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子とグランドとの間に接続された第4スイッチ手段とを備え、前記電気機械変換素子に交番電圧を印加するべく、前記第1、第4スイッチ手段と前記第2、第3スイッチ手段とを交互にオンオフさせるように構成された駆動装置の駆動制御方法において、前記各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせることを特徴とするものである。
【0021】
これらの発明によれば、各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段をオンさせるようにしたので、すべてのスイッチ手段が同時にオフする期間が与えられる。したがって、電源から電気機械変換素子の同じ端子に接続されたスイッチ手段(第1スイッチ手段と第2スイッチ手段、第3スイッチ手段と第4スイッチ手段)を通ってグランドに流れる電流(貫通電流)の発生を防止することができる。
【0022】
また、オフしているスイッチ手段をオンさせる場合に、そのスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるようにしたので、電気機械変換素子の両端子が、第1スイッチ手段及び第3スイッチ手段を介して、あるいは第2スイッチ手段及び第4スイッチ手段を介してショートされる期間が与えられる。これにより、電気機械変換素子を正方向及び逆方向に充電する際、その充電に要する電力だけを供給すればよいから、放電に要する電力分、消費電力が低減される。
【0023】
さらに、オンしているスイッチ手段が両方オフにされても、オフしているスイッチ手段の少なくとも一方がオンされるまで、電気機械変換素子の端子間電圧の大きさは、略駆動電圧に維持され、オフしているスイッチ手段の一方がオンされると、両端子がショートされることにより、端子間電圧の大きさが駆動電圧より小さくなる。また、オフしているスイッチ手段の両方がオンされると、端子間電圧の大きさが駆動電圧となる。
【0024】
したがって、電気機械変換素子の端子間電圧の大きさが駆動電圧より小さくなる期間は、電気機械変換素子が放電する期間となるため、貫通電流防止に要する期間と放電期間との和となる従来の制御より短くなる。これにより、電気機械変換素子に印加する駆動電圧の波形の形状が矩形波により近似することになるから、従来の電気機械変換素子の変位波形の鈍りを抑制することができ、その結果、従来に比して駆動装置の出力が増加される。
【0025】
請求項2に記載の発明は、レンズと、前記レンズを所定の方向に駆動するための請求項1に記載の駆動装置と、前記電気機械変換素子の駆動力を前記レンズに伝達するための駆動力伝達部材とを備えるレンズユニットである。
【0026】
請求項3に記載の発明は、被写体の光像を撮影する撮影手段と、請求項1に記載の駆動装置により駆動されるレンズを含み、前記撮影手段に前記被写体の光像を導く光学系と、撮影の指示を行うための撮影指示手段とを備えてなる撮影装置である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1、図2に示すように、デジタルカメラ1は、カメラ本体部2に、レンズユニット3、シャッターボタン4、光学ファインダ5、フラッシュ6、LCD(Liquid Crystal Display)7、機能スイッチ8、電源ボタン9、カードスロット10及びモード設定スイッチ11を備えている。
【0029】
レンズユニット3は、カメラ本体部2の前面右側に配設されており、被写体の光像を取り込むものである。レンズユニット3は、後述するように、ズームレンズやフォーカスレンズ等からなり、駆動装置20(図5参照)の駆動によりズームや焦点調節を行う。
【0030】
シャッターボタン4は、カメラ本体部2の背面側の上面右端部に配設されており、撮影モード中に半押しされると、撮影準備処理(主として被写体輝度を検出して露出制御値を設定するとともに、被写体距離を検出してレンズユニット3の焦点調節を行う処理)が行われ、全押しされると、設定された露出制御値で撮影処理が行われる。
【0031】
光学ファインダ5は、カメラ本体部2の背面左側上部に配設されており、撮影者が撮影画角を視認する接眼窓である。
【0032】
フラッシュ6(内蔵フラッシュ)は、カメラ本体部2の前面中央上部に配設されており、被写体からの光量が不足する場合などに図略の放電灯を放電させることにより被写体に照明光を照射するものである。
【0033】
LCD7は、カメラ本体部2の背面略中央部に配設されており、撮影画像のモニタ表示及び記録画像の再生表示等を行うものである。
【0034】
機能スイッチ8は、LCD7の右側方に配設されており、レンズユニット3のワイド方向又はテレ方向のズーム駆動等を行うためのスイッチである。
【0035】
電源ボタン9は、カメラ本体部2の背面上部であって機能スイッチ8の左側に配設されており、押圧する毎に主電源のON/OFFが交互に切り換わるようになっている。
【0036】
カードスロット10は、カメラ本体部2の一方側面に設けられており、複数の半導体記憶素子からなるメモリカードMが装着される。
【0037】
モード設定スイッチ11は、カメラ本体部2の背面上部に配設されており、上下にスライドする2接点式のスライドスイッチからなる。モード設定スイッチ11をAの位置にセットすると、デジタルカメラ1は被写体の撮影を行う撮影モードに、Bの位置にセットするとメモリカードMに記録された撮影画像をLCD7に再生表示する再生モードに設定される。
【0038】
次に、レンズユニット3の構成について説明する。図3は、レンズユニット3の内部構成を示す斜視図である。
【0039】
図3に示すように、レンズユニット3は、被写体側から1群レンズ301、2群レンズ302、3群レンズ303が光軸を一致させて配列されてなり、これらのレンズ301〜303を介して撮像素子12(図4参照)に被写体の光像を導くように構成されている。
【0040】
レンズ301〜303は、それぞれ支持部材304〜306に支持されている。支持部材304,305には、棒状のガイド部材307が貫通されているとともに、支持部材304,305の適所に設けられた係合部304a,305aがカム部材308のガイド溝308a,308bに係合している。3群レンズ303及びその支持部材306は、撮像素子12を支持する固定部材13に固定されている。カム部材308に形成されている嵌合穴308cは、カメラ本体部2に固設された図略の軸に嵌合している。
【0041】
2群レンズ302を支持する支持部材305には、インパクト型圧電アクチュエータからなる後述の駆動ユニット21が取り付けられており、2群レンズ302はこの駆動ユニット21を含む後述の駆動装置20(図5参照)により支持部材305を介して光軸方向に駆動される。また、カム部材308のガイド溝308aは湾曲線状に、ガイド溝308bは直線状に形成され、且つ、ガイド溝308a,308bは、2群レンズ302の駆動に伴って、係合部305aとガイド溝308bとの係合構造を介してカム部材308が嵌合穴308cを中心として回動し、ガイド溝308a,308b内を移動する係合部304a,305aの離間距離が変化するように形成されている。これにより、1群レンズ301は、2群レンズ302の駆動に連動し、且つその駆動方向に応じて2群レンズ302に近接又は離反する。
【0042】
すなわち、図4において、(b)に示す状態を標準とすると、(a)に示すように駆動装置20により2群レンズ302をテレ(望遠)方向に駆動したとき、1群レンズ301は2群レンズ302に近接する一方、(c)に示すように駆動装置20により2群レンズ302をワイド(広角)方向に駆動したとき、1群レンズ301は2群レンズ302に離反する。ガイド部材308のガイド溝308a,308bの形状は、図4に示す1群レンズ301の軌跡R1及び2群レンズ302の軌跡R2に基づいて形成されている。
【0043】
図5は、駆動装置20の基本構成を概略的に示すブロック図である。この図において、駆動装置20は、駆動ユニット21と、駆動ユニット21を駆動する駆動回路部22と、駆動ユニット21に取り付けられている係合部材30の位置を検出する部材センサ23と、駆動ユニット21の基端に配設された基端センサ24と、駆動ユニット21の先端に配設された先端センサ25と、全体の動作を制御する制御部26とを備えている。
【0044】
図6は、駆動ユニット21のより具体的な構成を示す斜視図である。この図において、駆動ユニット21は、素子固定式構造のものであり、支持部材27、圧電素子28、駆動部材29及び係合部材30を備えて構成されている。
【0045】
支持部材27は、カメラ本体部2に固定され、圧電素子28及び駆動部材29を保持するものである。支持部材27は、円柱体の軸方向両端部271,272及び略中央の仕切壁273を残して内部を刳り貫くことにより形成された第1の収容空間274及び第2の収容空間275を有している。第1の収容空間274には、圧電素子28がその分極方向である伸縮方向を支持部材27の軸方向と一致させて収容されている。第2の収容空間275には、駆動部材29と係合部材30の一部とが収容されている。なお、図5においては、支持部材27は一部を表記している。
【0046】
圧電素子28は、例えば、所要の厚みを有する複数枚の圧電基板を各圧電基板間に図略の電極を介して積層することにより構成したものであり、その伸縮方向(積層方向)である長手方向の一方端面が第1の収容空間274の一方端部271側端面に固着されている。支持部材27の他方の端部272及び仕切壁273には中心位置に丸孔が穿設されると共に、この両丸孔を貫通して断面丸形状の棒状の駆動部材29が第2収容空間275に軸方向に沿って移動可能に収容されている。
【0047】
駆動部材29の第1の収容空間274内に突出した端部は圧電素子28の他方側面に固着され、駆動部材29の第2の収容空間275の外部に突出した端部は板ばね31により所要のばね圧で圧電素子28側に付勢されている。この板ばね31による駆動部材29への付勢は、圧電素子28の伸縮動作に基づく駆動部材29の軸方向変位を安定化させるためである。
【0048】
係合部材30は、駆動部材29の軸方向の両側に取付部30aを有する基部30bと、両取付部30aの間に装着される挟み込み部材30cとを備えており、基部30bが駆動部材29に遊嵌されると共に、挟み込み部材30cが板ばね30dにより押圧されることにより駆動部材29に接触することで係合部材30が所定の摩擦力で駆動部材29に結合され、係合部材30に対してその摩擦力よりも大きな駆動力が作用したときに駆動部材29の軸方向に沿って移動可能とされている。なお、係合部材30には駆動対象物である2群レンズ32(図3)が取り付けられている。
【0049】
図7は、駆動回路部22の構成例を示す図である。この図において、駆動回路部22は、図略の駆動電源から駆動電圧+Vpが供給される接続点aと、接地される接続点bとの間に、電界効果トランジスタの一例としてのMOS−FETであるスイッチング素子Q1やダイオードD1等からなる第1スイッチ回路221と、MOS−FETであるスイッチング素子Q2やダイオードD2等からなる第2スイッチ回路222との直列回路と、MOS−FETであるスイッチング素子Q3やダイオードD3等からなる第3スイッチ回路223と、MOS−FETであるスイッチング素子Q4やダイオードD4等からなる第4スイッチ回路224との直列回路とが並列接続されているとともに、各スイッチ回路221〜224に駆動制御信号Sc1,Sc2,Sc3,Sc4を供給する制御信号供給手段としての制御回路227が、MOSFETドライバ225を介して接続されて構成されている。MOSFETドライバ225は、制御回路227からの信号を電源電圧Vpより充分高い電圧にレベルシフトする回路である。
【0050】
スイッチング素子Q1〜Q4は、本実施形態ではNチャネルFETで構成されており、駆動制御信号がハイレベルのときにオンとなる。第1スイッチ回路221及び第2スイッチ回路222の接続点cと、第3スイッチ回路223及び第4スイッチ回路224の接続点dとの間に圧電素子28が接続されてブリッジ回路226が構成されている。なお、ダイオードD1及びダイオードD3は、アノードがスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q3のソースに、カソードがスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q3のドレインに接続されているとともに、ダイオードD2及びダイオードD4は、アノードがスイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q4のソースに、カソードがスイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q4のドレインに接続されている。
【0051】
このように構成された駆動回路部22において、第1スイッチ回路221及び第4スイッチ回路224は圧電素子28に対し、その一方側から駆動電圧+Vpを印加して端子間電圧Vsが+Vpとなるまで充電する第1の駆動回路を構成する。また、第2スイッチ回路222及び第3スイッチ回路223は圧電素子28に対し、その他方側から(すなわち、逆方向から)駆動電圧+Vpを印加して端子間電圧Vsが−Vpとなるまで充電する第2の駆動回路を構成する。
【0052】
このように第1〜第4スイッチ回路221〜224と圧電素子28とでブリッジ回路226を構成した場合、圧電素子25には−Vp〜+Vpの電圧が印加されるので、圧電素子28の駆動電圧が等価的に2Vpとなる結果、駆動電源が低電圧のものであっても変位量の大きい駆動装置20が得られる。
【0053】
図5に戻り、部材センサ23は、係合部材30の移動可能範囲内に配設されており、MRE(Magneto Resistive Effect)素子やPSD(Position SensitiveDevice)素子等のセンサにより構成されている。また、基端センサ24及び先端センサ25は、フォトインタラプタ等のセンサにより構成されている。これにより、係合部材30の所定位置への移動制御が可能となる一方、係合部材30の位置が基端センサ24及び先端センサ25で検出されることで係合部材30のそれ以上の移動が禁止される。
【0054】
制御部26は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、処理プログラム及びデータが記憶されたROM(Read Only Memory)及びデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)から構成されており、部材センサ23等から入力される信号に基づいて制御回路227から駆動パルスを出力させ、この駆動パルスにより第1の駆動回路及び第2の駆動回路を交互に駆動する。
【0055】
ここで、圧電素子28に印加される駆動電圧のパルス波形と、圧電素子28の伸縮による変位との対応関係について説明する。
【0056】
図8は、駆動電圧のパルス波形の一例と、この駆動電圧による圧電素子28の変位とを示す図である。なお、圧電素子28の変位は、レーザードップラー振動系により測定したものである。
【0057】
このように、圧電素子28に図8に示す駆動電圧が印加された場合、圧電素子28の変位波形は、鋸歯形状となることが確認されており、特に図8の場合にあっては、立ち上がり部は緩慢に、立ち下がり部は急峻となっている。なお、立ち上がり部及び立ち下がり部の勾配は、駆動電圧のパルス波形のONデューティ等のパラメータに応じて変化することも確認されている。
【0058】
圧電素子28の変位が図8に示すような緩慢な立ち上がり部を有する波形を呈するとき(すなわち、圧電素子28が緩やかに伸長するとき)は、係合部材30が駆動部材29とともに繰込方向(図3右方向)に移動する。一方、圧電素子28の変位急峻な立ち下がり部を有する波形を呈するとき(すなわち、圧電素子28が急激に縮小するとき)は、駆動部材29が戻り方向に移動しても係合部材30は駆動部材29上をスリップして略同位置に止まることになるため、図8に示す駆動電圧が圧電素子28に繰り返し印加されることで、係合部材30は繰込方向(図3右方向)に間欠的に移動することになる。
【0059】
なお、このように図8に示すような駆動電圧が圧電素子28に印加された場合に、圧電素子28の変位波形が鋸歯形状となるのは、次のような理由による。
【0060】
すなわち、矩形波は基本波である正弦波と複数次の高調波とからなるものであるが、駆動電圧の駆動周波数が圧電素子28の共振周波数に対して所定の範囲にあるとき、共振系における圧電素子28の共振周波数の影響を受けて矩形波を形成している高調波成分のうち3次以上の高次の高調波のゲインが大きく減衰し、圧電素子28に印加される駆動電圧が実質的に基本波と2次高調波とからなる波形(すなわち、略鋸歯形状の波形)を有するものとなるからである。
【0061】
図9は、本発明に係る駆動装置に適用される駆動回路部22の動作説明を行うための説明図で、図7に示す駆動回路部22を制御する制御回路227から出力されて各スイッチ回路221〜224に印加される駆動制御信号Sc1〜Sc4と、圧電素子28に印加される駆動電圧の波形とを示す図である。この図9に示す駆動電圧は矩形波からなるものである。
【0062】
図9に示すように、制御回路227は、第1の駆動回路(第1,第4スイッチ回路221,224)をオンしている状態(駆動制御信号Sc1,Sc4がハイ、駆動制御信号Sc2,Sc3がローの状態)から第1の駆動回路をオフし、第2の駆動回路をオンする場合、まず、駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切り替える。そして、この切替えタイミングから時間t9後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切替え、さらに時間t10後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替える。また、第2の駆動回路をオフし、第1の駆動回路をオンする場合、駆動制御信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切り替える。そして、この切替えタイミングから時間t11後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切替え、さらに時間t12後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替える。
【0063】
このように、駆動装置20の駆動時には、制御回路227から送出される駆動制御信号Sc1,Sc4としてハイレベル信号がスイッチ回路221,224に入力されるときには、制御回路227から送出される駆動制御信号Sc2,Sc3としてローレベル信号がスイッチ回路222,223に入力される一方、駆動制御信号Sc1,Sc2としてローレベル信号がスイッチ回路221,224に入力されるときには、駆動制御信号Sc3,Sc4としてハイレベル信号がスイッチ回路222,223に入力されることにより、スイッチ回路221,224とスイッチ回路222,223とが所定の周期で交互にオン、オフを繰り返す。
【0064】
すなわち、スイッチ回路221,224がオンのときには圧電素子28は+Vpに充電され、スイッチ回路222,223がオンのときには圧電素子28は−Vpに充電されることになる。その結果、圧電素子28には見掛け上電源電圧Vpの2倍(2Vp)の電圧が印加されたこととなり、係合部材30の移動速度を大きくすることができて駆動装置20を効率よく動作させることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、駆動制御信号Sc1,Sc2のハイからローへの切替わりタイミングから所定時間(時間t9)をおいて、駆動制御信号Sc2,Sc3をローからハイへ切り替えるとともに、駆動制御信号Sc2,Sc3のハイからローへの切替わりタイミングから所定時間(時間t11)をおいて、駆動制御信号Sc1,Sc4をローからハイへ切り替えるようにすることで、スイッチ回路223とスイッチ回路224とが同時にオンしないようにしている。
【0066】
これにより、スイッチ回路221及びスイッチ回路222を介して流れる貫通電流や、スイッチ回路221及びスイッチ回路222を介して流れる貫通電流の発生を防止することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、駆動回路を構成する2つのスイッチ回路に対する駆動制御信号について、ローからハイへの切替えタイミングをずらしている。
【0068】
すなわち、駆動制御信号Sc1〜Sc4のうち、駆動制御信号Sc2が、駆動制御信号Sc3がローからハイに切り替わるタイミングよりも遅いタイミング(時間差t10)でローからハイに切り替わるように設定されているとともに、駆動制御信号Sc4が、駆動制御信号Sc1がローからハイに切り替わるタイミングよりも遅いタイミング(時間差t12)でローからハイに切り替わるように設定されている。
【0069】
これにより、スイッチ回路221,224の駆動期間である圧電素子28に対する充電期間と、スイッチ回路222,223の駆動期間である圧電素子28に対する充電期間との間に、スイッチ回路222,223の駆動又はスイッチ回路221,224の駆動により圧電素子28に充電されている電荷を放電させる放電期間が設けられている。
【0070】
すなわち、スイッチ回路221,224が共にオンになって圧電素子28に正方向から駆動電圧Vpが印加されて充電が行われた後(Vs=+Vp)、スイッチ回路223のみがオンになる期間が設けられる。このとき、スイッチ回路221とスイッチ回路223とがショートされることにより、圧電素子28に充電されていた電圧+Vpに対応する電荷がスイッチ回路221,223を介して放電されることになる。
【0071】
また、スイッチ回路222,223が共にオンになって圧電素子28に逆方向から駆動電圧Vpが印加されて充電が行われた後(Vs=−Vp)、スイッチ回路221のみがオンになる期間が設けられる。このとき、スイッチ回路221とスイッチ回路223とが再びショートされることにより、圧電素子28に充電されていた電圧−Vpに対応する電荷がスイッチ回路221,223を介して放電されることになる。
【0072】
このように、スイッチ回路221,224の駆動期間とスイッチ回路222,223の駆動期間との間に、スイッチ回路221,223による放電期間が設けられたので、圧電素子28を正方向及び逆方向に充電する際、従来では放電にも要していた電力が不要となり、充電に要する電力だけを供給すればよいから、放電に要する電力分、消費電力を低減することができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切り替え、この切替えタイミングから時間t9後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切替え、さらに時間t10後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替えるとともに、駆動制御信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切り替え、この切替えタイミングから時間t11後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切替え、さらに時間t12後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替えるようにしたことにより、次のような利点がある。
【0074】
圧電素子28の端子間電圧Vsに着目すると、図9に示すように、スイッチ回路221,224が同時にオンからオフに切り替わっても、端子間電圧Vsは電圧+Vpに維持され、スイッチ回路223がオフからオンに切り替わるとスイッチ回路221,223がショートするため、端子間電圧Vsは降下する。その場合に、端子Aは端子BよりダイオードD1の順方向電圧Vd1分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、+Vd1となる。そして、スイッチ回路222がオフからオンに切り替わると端子間電圧Vsは−Vpとなる。
【0075】
その後、スイッチ回路222,223が同時にオフに切り替わっても端子間電圧Vsは電圧−Vpに維持され、スイッチ回路221がオフからオンに切り替わると、圧電素子28の両端子がスイッチ回路221及びダイオードD3を介してショートするため、端子間電圧Vsは上昇する。その場合に、端子Bは端子AよりダイオードD3の順方向電圧Vd3分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、−Vd3となる。そして、スイッチ回路224がオフからオンに切り替わると端子間電圧Vsは+Vpとなる。
【0076】
これによれば、圧電素子28の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tが、従来(前述した従来の第2の制御,図14参照)では、上述したように貫通電流防止に要する時間t5又はt8と放電時間t4又はt7との和となるのに対し、本実施形態では、放電時間t10又はt12のみとなる。放電時間t4,t7,t10,t12は、主に圧電素子28の電気容量で決定するもので、本実施形態と従来とで同じ長さであるものとする場合、時間Tは、本実施形態の方が従来の場合より短くなる。これにより、圧電素子28に印加する駆動電圧の波形の形状が矩形波により近似することになるから、従来の圧電素子28の変位波形の鈍りを抑制することができる。その結果、従来に比して駆動装置20の出力を増加することができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、次の(1)〜(4)の変形形態を採用し得る。
【0078】
(1)上記実施形態においては、各駆動回路を駆動させる際に、電源に接続されている側のスイッチ回路(スイッチ回路221,223)をグランドに接続されている側のスイッチ回路(スイッチ回路222,224)より先にオンするようにしているが、これに限らず、オンする順序を逆にして、スイッチ回路222,224によって圧電素子28の両端子をショートさせるようにしてもよい。
【0079】
すなわち、図10に示すように、駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切り替えると、この切替えタイミングから時間t13後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切替え、さらに時間t14後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切り替えるとともに、駆動制御信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切り替えると、この切替えタイミングから時間t15後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切替え、さらに時間t16後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切り替えるようにしてもよい。
【0080】
この場合、圧電素子28の端子間電圧Vsは、図10に示すように、スイッチ回路221,224が同時にオンからオフに切り替わっても電圧+Vpは維持され、スイッチ回路222がオフからオンに切り替わると圧電素子28の両端子がスイッチ回路222及びダイオードD4を介してショートするため、端子間電圧Vsは降下する。その場合に、端子Aは端子BよりダイオードD4の順方向電圧Vd4分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、+Vd4となる。そして、スイッチ回路223がオフからオンに切り替わると、端子間電圧Vsは−Vpとなる。
【0081】
その後、スイッチ回路222,223が同時にオフになっても端子間電圧Vsは電圧−Vpが維持され、スイッチ回路224がオフからオンに切り替わると、圧電素子28の両端子がスイッチ回路224及びダイオードD2を介してショートするため、端子間電圧Vsは上昇する。その場合に、端子Bは端子AよりダイオードD2の順方向電圧Vd2分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、−Vd2となる。そして、スイッチ回路221がオフからオンに切り替わると、端子間電圧Vsは+Vpとなる。
【0082】
この場合にも、貫通電流の発生を防止し、放電に要する電力分だけ消費電力を低減することができるとともに、圧電素子28の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tが、放電時間t14又はt16のみとなり従来の場合より短くなるから、従来の圧電素子28の変位波形の鈍りを抑制することができ、従来に比して駆動装置20の出力を増加することができる。
【0083】
(2)上記実施形態においては、スイッチ回路221,224のオンからオフへの切替え、又はスイッチ回路222,223のオンからオフへの切替えを同時に行っているが、同時でなくても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
(3)本発明に係る駆動装置を備えたレンズユニットは、デジタルカメラに限らず、撮影機能を搭載する、パーソナルコンピュータ、電子手帳、携帯電話、あるいはPDA(personal digital assistants)等の電子機器に搭載可能である。
【0085】
(4)上記実施形態においては、第1〜第4スイッチ回路221〜224のスイッチング素子Q1〜Q4としてMOS−FETを用いたが、これに限らず、スイッチング素子Q1〜Q4としてパワーMOS−FETを用いてもよい。この場合、パワーMOS−FETは、その構造上、ソース−ドレイン間にダイオードが等価的に内蔵されているため、第1〜第4スイッチ回路221〜224においてダイオードD1〜D4は不要となる。
【0086】
【発明の効果】
請求項1,4に記載の発明によれば、各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段をオンさせるとともに、オフしているスイッチ手段をオンさせる場合に、そのスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるようにしたので、すべてのスイッチ手段が同時にオフする期間が与えられ、貫通電流の発生を防止することができるとともに、電気機械変換素子の両端子が、第1スイッチ手段及び第3スイッチ手段を介して、あるいは第2スイッチ手段及び第4スイッチ手段を介してショートされる期間が与えられ、電気機械変換素子を正方向及び逆方向に充電する際の放電に要する電力分、消費電力を低減することができる。
【0087】
また、電気機械変換素子の端子間電圧の大きさが駆動電圧より小さくなる期間が、電気機械変換素子が放電する期間となるため、貫通電流防止に要する期間と放電期間との和となる従来の制御より短くなり、電気機械変換素子に印加する駆動電圧の波形の形状が矩形波により近似することになるから、従来の電気機械変換素子の変位波形の鈍りを抑制することができ、その結果、従来に比して駆動装置の出力を増加することができる。
【0088】
請求項2に記載の発明によれば、レンズと、前記レンズを所定の方向に駆動するための請求項1に記載の駆動装置と、前記電気機械変換素子の駆動力を前記レンズに伝達するための駆動力伝達部材とを備えるレンズユニットを構成することにより、貫通電流の発生を防止し、放電期間を設けて駆動電力の低減を図ることができる上に、高い駆動効率を有する駆動装置を備えたレンズユニットが得られる。
【0089】
請求項3に記載の発明によれば、被写体の光像を撮影する撮影手段と、請求項1に記載の駆動装置により駆動されるレンズを含み、前記撮影手段に前記被写体の光像を導く光学系と、撮影の指示を行うための撮影指示手段とを備えてなる撮影装置を構成することにより、貫通電流の発生を防止し、放電期間を設けて駆動電力の低減を図ることができる上に、高い駆動効率を有する駆動装置を備えた撮影装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデジタルカメラの正面図である。
【図2】同じくデジタルカメラの背面図である。
【図3】レンズユニットの内部構成を示す斜視図である。
【図4】駆動装置により駆動されるレンズの移動を示す図である。
【図5】駆動装置の構成を概略的に示す図である。
【図6】図5に示す駆動装置の駆動部の構成例を示す斜視図である。
【図7】図5に示す駆動装置の駆動回路の構成例を示す図である。
【図8】駆動電圧のパルス波形の一例と、この駆動電圧による圧電素子の変位とを示す図である。
【図9】各スイッチング素子に印加される駆動パルスと、圧電素子に印加される駆動電圧の波形とを示す図である。
【図10】本発明の変形例を示す図である。
【図11】従来の駆動装置の構成を概略的に示す図である。
【図12】従来の駆動装置の駆動回路の構成例を示す図である。
【図13】従来の制御を示す図である。
【図14】同じく従来の制御を示す図である。
【符号の説明】
20 駆動装置
21 駆動ユニット
22 駆動回路部
227 制御回路
221〜224 第1スイッチ回路〜第4スイッチ回路
226 ブリッジ回路
26 圧電素子
Q1〜Q4 スイッチング素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧の印加による圧電素子の伸縮動作を利用して、駆動対象物を駆動する駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
駆動電圧の印加による圧電素子の伸縮動作を利用して、駆動対象物を一定の直線上で往復動させるインパクト型アクチュエータが知られている。
【0003】
このアクチュエータは、例えば図11に示すように、電気機械変換素子である圧電素子101と、圧電素子101により駆動される棒状の駆動部材102と、駆動部材102に所定の摩擦力で結合された係合部材103と、圧電素子101に駆動電圧を印加する駆動回路部104とを備えて構成され、圧電素子101の伸縮動作、さらには駆動回路部104からの制御信号に対応する上記伸縮動作のスピードに応じて、駆動部材102が係合部材103と連動して、あるいは係合部材103に対してスリップすることにより、係合部材103に固着された駆動対象物である撮影レンズ等を間欠的に軸方向に移動させるようになっている。
【0004】
この種のアクチュエータにおいて採用される駆動回路部104として、例えば図12に示す構成を備えたものがある。
【0005】
図12に示すように、駆動回路部104は、例えばNチャネルMOS−FET等のスイッチング素子Q1’〜Q4’を備えて構成される4つのスイッチ回路1041〜1044が圧電素子101に対してブリッジ接続され、各スイッチ回路1041〜1044に駆動制御信号Sc1,Sc2,Sc3,Sc4を供給する制御回路1045によって、ブリッジの対角に位置する一対のスイッチ回路でそれぞれ構成される2つの駆動回路(スイッチ回路1041,1044で構成される駆動回路とスイッチ回路1042,1043で構成される駆動回路)を交互にオンオフ制御することで、電源電圧Vpを交番する矩形波電圧に変換し、この矩形波電圧を圧電素子101に印加するものである。圧電素子101は、矩形波電圧が印加されることにより、その変位の波形が鋸歯形状を描くように伸縮する。
【0006】
また、圧電素子101は、上記交番電圧により充放電を繰り返すコンデンサとして動作する。すなわち、一方の駆動回路がON(他方の駆動回路はOFF)し、圧電素子101に一方向から駆動電圧が印加されると、圧電素子101の端子間電圧の大きさが略電源電圧Vpとなるまで圧電素子101の両端子に電荷が充電され、その後、他方の駆動回路がON(上記一方の駆動回路はOFF)し、圧電素子101に逆方向から駆動電圧が印加されると、圧電素子101の両端子に充電された上記電荷が放電して両端子が等電位(電圧0)となる状態を経て、圧電素子101の端子間電圧の大きさが略電源電圧Vpとなるまで圧電素子101の両端子に電荷が逆向きに充電される。
【0007】
その場合に、駆動回路のオンオフを切り替える際、一方の駆動回路へのハイレベル信号(ONさせるための信号)と他方の駆動回路へのローレベル信号(OFFさせるための信号)とを同じ出力タイミングに設定した場合、他方の駆動回路がOFFとなるタイミングが一方の駆動回路がONするタイミングより遅れることがあり、この場合、直列接続されたスイッチ回路間(図12では、スイッチ回路1041とスイッチ回路1042もしくはスイッチ回路1043とスイッチ回路1044)において電流が流れる(以下、この電流を貫通電流という)。貫通電流は、圧電素子101の駆動に関与するものではないため消費電力の浪費になるとともに、スイッチング素子の焼き付き等を起こす原因となることから、この貫通電流の発生を防止するために、図13に示すようなスイッチ回路1041〜1044に対する制御(以下、第1の制御という)を行う場合がある。
【0008】
図13は、制御回路1045からスイッチ回路1041〜1044に送出する駆動制御信号Sc1〜Sc4を示す図である。
【0009】
図13に示すように、第1の制御においては、駆動制御信号Sc1〜Sc4のうち、駆動制御信号Sc2,Sc3を、駆動制御信号Sc1,Sc4をハイからローに切り替えるタイミングよりも時間t1遅いタイミングでローからハイに切り替える。このとき、スイッチ回路1042,1043は、スイッチ回路1041,1044がオンからオフに切り替わってからオンすることになる。また、駆動制御信号Sc1,Sc4をローからハイに切り替えるタイミングよりも時間t2早いタイミングでハイからローに切り替える。このとき、スイッチ回路1041,1044は、スイッチ回路1042,1043がオンからオフに切り替わってからオンすることになる。
【0010】
このような制御により、スイッチ回路1041と1042とが同時に、あるいはスイッチ回路1043と1044とが同時にONする期間をなくして貫通電流の発生を防止するようにしている。
【0011】
なお、圧電素子101の両端子間の電圧Vsに着目すると、図13に示すように、該電圧Vsの正負について端子Aが高電位のときを正としたとき、駆動制御信号Sc2,Sc3をローからハイに切り替えたタイミングで+Vpから−Vpとなり、駆動制御信号Sc1,Sc4をローからハイに切り替えたタイミングで−Vpから+Vpとなる。
【0012】
更なる消費電力の低減を図ることを目的として、上記の駆動回路部104に対して図14に示すような制御(以下、第2の制御という)を行うことがある。なお、図14は、上記第1の制御の目的である貫通電流の防止を含む制御を示すものである。
【0013】
図14に示すように、第2の制御においては、駆動制御信号Sc1〜Sc4のうち、駆動制御信号Sc4をハイからローに切り替えるタイミングから時間t3後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切り替え、このタイミングから時間t4後に駆動制御信号Sc1をハイからローに切り替え、さらにこのタイミングから時間t5後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替える。また、駆動制御信号Sc2をハイからローに切り替えるタイミングから時間t6後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切り替え、このタイミングから時間t7後に駆動制御信号Sc3をハイからローに切り替え、さらにこのタイミングから時間t8後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替える。
【0014】
この制御によれば、時間差t3,t5,t6,t8を設けたことにより、スイッチ回路1041とスイッチ回路1042とが、もしくはスイッチ回路1043とスイッチ回路1044とが同時にONする期間がないため、貫通電流の発生を防止することができる。また、上記のような交番電圧の印加による圧電素子101の充放電に対して、上記第1の制御では放電期間にも電源電圧を印加していたところ、この第2の制御では、両端子をショートさせる期間(時間t4,t7の期間)を設けることにより、両端子に充電された電荷を放電させるための電力分だけ節電することができるので、貫通電流の発生を防止できることに加えて、駆動電力の低減を図ることもできる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この第2の制御においては、次のような改善すべき余地がある。
【0016】
第2の制御においては、圧電素子101の両端子AB間の端子間電圧Vsは、図14に示すように、駆動制御信号Sc3をローからハイに切り替えると端子A,Bはショートするため、このタイミングで0となり、駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替えたタイミングで0から−Vpとなる。また、駆動制御信号Sc1をローからハイに切り替えると再び端子A,Bはショートするため、このタイミングで0となり、駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替えたタイミングで+Vpとなる。
【0017】
圧電素子101は、矩形波電圧が印加されることで、その変位の波形が鋸歯形状を描くように伸縮する旨前述したが、上記第2の制御では、圧電素子101の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tが長いために、圧電素子101の変位波形の勾配が緩やかとなり、第1の制御に比してアクチュエータの出力が低減することとなる。
【0018】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、貫通電流の発生を防止するとともに、放電期間を設けて駆動電力の低減を図り、且つアクチュエータの出力低下を抑制することのできる駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子に電圧を供給するための電源と、前記電気機械変換素子の一方の端子と電源との間に接続された第1スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の一方の端子とグランドとの間に接続された第2スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子と電源との間に接続された第3スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子とグランドとの間に接続された第4スイッチ手段と、前記電気機械変換素子に交番電圧を印加するべく、前記第1、第4スイッチ手段と前記第2、第3スイッチ手段とを交互にオンオフさせる制御手段とを備える駆動装置において、前記制御手段は、前記各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子に電圧を供給するための電源と、前記電気機械変換素子の一方の端子と電源との間に接続された第1スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の一方の端子とグランドとの間に接続された第2スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子と電源との間に接続された第3スイッチ手段と、前記電気機械変換素子の他方の端子とグランドとの間に接続された第4スイッチ手段とを備え、前記電気機械変換素子に交番電圧を印加するべく、前記第1、第4スイッチ手段と前記第2、第3スイッチ手段とを交互にオンオフさせるように構成された駆動装置の駆動制御方法において、前記各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせることを特徴とするものである。
【0021】
これらの発明によれば、各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段をオンさせるようにしたので、すべてのスイッチ手段が同時にオフする期間が与えられる。したがって、電源から電気機械変換素子の同じ端子に接続されたスイッチ手段(第1スイッチ手段と第2スイッチ手段、第3スイッチ手段と第4スイッチ手段)を通ってグランドに流れる電流(貫通電流)の発生を防止することができる。
【0022】
また、オフしているスイッチ手段をオンさせる場合に、そのスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるようにしたので、電気機械変換素子の両端子が、第1スイッチ手段及び第3スイッチ手段を介して、あるいは第2スイッチ手段及び第4スイッチ手段を介してショートされる期間が与えられる。これにより、電気機械変換素子を正方向及び逆方向に充電する際、その充電に要する電力だけを供給すればよいから、放電に要する電力分、消費電力が低減される。
【0023】
さらに、オンしているスイッチ手段が両方オフにされても、オフしているスイッチ手段の少なくとも一方がオンされるまで、電気機械変換素子の端子間電圧の大きさは、略駆動電圧に維持され、オフしているスイッチ手段の一方がオンされると、両端子がショートされることにより、端子間電圧の大きさが駆動電圧より小さくなる。また、オフしているスイッチ手段の両方がオンされると、端子間電圧の大きさが駆動電圧となる。
【0024】
したがって、電気機械変換素子の端子間電圧の大きさが駆動電圧より小さくなる期間は、電気機械変換素子が放電する期間となるため、貫通電流防止に要する期間と放電期間との和となる従来の制御より短くなる。これにより、電気機械変換素子に印加する駆動電圧の波形の形状が矩形波により近似することになるから、従来の電気機械変換素子の変位波形の鈍りを抑制することができ、その結果、従来に比して駆動装置の出力が増加される。
【0025】
請求項2に記載の発明は、レンズと、前記レンズを所定の方向に駆動するための請求項1に記載の駆動装置と、前記電気機械変換素子の駆動力を前記レンズに伝達するための駆動力伝達部材とを備えるレンズユニットである。
【0026】
請求項3に記載の発明は、被写体の光像を撮影する撮影手段と、請求項1に記載の駆動装置により駆動されるレンズを含み、前記撮影手段に前記被写体の光像を導く光学系と、撮影の指示を行うための撮影指示手段とを備えてなる撮影装置である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1、図2に示すように、デジタルカメラ1は、カメラ本体部2に、レンズユニット3、シャッターボタン4、光学ファインダ5、フラッシュ6、LCD(Liquid Crystal Display)7、機能スイッチ8、電源ボタン9、カードスロット10及びモード設定スイッチ11を備えている。
【0029】
レンズユニット3は、カメラ本体部2の前面右側に配設されており、被写体の光像を取り込むものである。レンズユニット3は、後述するように、ズームレンズやフォーカスレンズ等からなり、駆動装置20(図5参照)の駆動によりズームや焦点調節を行う。
【0030】
シャッターボタン4は、カメラ本体部2の背面側の上面右端部に配設されており、撮影モード中に半押しされると、撮影準備処理(主として被写体輝度を検出して露出制御値を設定するとともに、被写体距離を検出してレンズユニット3の焦点調節を行う処理)が行われ、全押しされると、設定された露出制御値で撮影処理が行われる。
【0031】
光学ファインダ5は、カメラ本体部2の背面左側上部に配設されており、撮影者が撮影画角を視認する接眼窓である。
【0032】
フラッシュ6(内蔵フラッシュ)は、カメラ本体部2の前面中央上部に配設されており、被写体からの光量が不足する場合などに図略の放電灯を放電させることにより被写体に照明光を照射するものである。
【0033】
LCD7は、カメラ本体部2の背面略中央部に配設されており、撮影画像のモニタ表示及び記録画像の再生表示等を行うものである。
【0034】
機能スイッチ8は、LCD7の右側方に配設されており、レンズユニット3のワイド方向又はテレ方向のズーム駆動等を行うためのスイッチである。
【0035】
電源ボタン9は、カメラ本体部2の背面上部であって機能スイッチ8の左側に配設されており、押圧する毎に主電源のON/OFFが交互に切り換わるようになっている。
【0036】
カードスロット10は、カメラ本体部2の一方側面に設けられており、複数の半導体記憶素子からなるメモリカードMが装着される。
【0037】
モード設定スイッチ11は、カメラ本体部2の背面上部に配設されており、上下にスライドする2接点式のスライドスイッチからなる。モード設定スイッチ11をAの位置にセットすると、デジタルカメラ1は被写体の撮影を行う撮影モードに、Bの位置にセットするとメモリカードMに記録された撮影画像をLCD7に再生表示する再生モードに設定される。
【0038】
次に、レンズユニット3の構成について説明する。図3は、レンズユニット3の内部構成を示す斜視図である。
【0039】
図3に示すように、レンズユニット3は、被写体側から1群レンズ301、2群レンズ302、3群レンズ303が光軸を一致させて配列されてなり、これらのレンズ301〜303を介して撮像素子12(図4参照)に被写体の光像を導くように構成されている。
【0040】
レンズ301〜303は、それぞれ支持部材304〜306に支持されている。支持部材304,305には、棒状のガイド部材307が貫通されているとともに、支持部材304,305の適所に設けられた係合部304a,305aがカム部材308のガイド溝308a,308bに係合している。3群レンズ303及びその支持部材306は、撮像素子12を支持する固定部材13に固定されている。カム部材308に形成されている嵌合穴308cは、カメラ本体部2に固設された図略の軸に嵌合している。
【0041】
2群レンズ302を支持する支持部材305には、インパクト型圧電アクチュエータからなる後述の駆動ユニット21が取り付けられており、2群レンズ302はこの駆動ユニット21を含む後述の駆動装置20(図5参照)により支持部材305を介して光軸方向に駆動される。また、カム部材308のガイド溝308aは湾曲線状に、ガイド溝308bは直線状に形成され、且つ、ガイド溝308a,308bは、2群レンズ302の駆動に伴って、係合部305aとガイド溝308bとの係合構造を介してカム部材308が嵌合穴308cを中心として回動し、ガイド溝308a,308b内を移動する係合部304a,305aの離間距離が変化するように形成されている。これにより、1群レンズ301は、2群レンズ302の駆動に連動し、且つその駆動方向に応じて2群レンズ302に近接又は離反する。
【0042】
すなわち、図4において、(b)に示す状態を標準とすると、(a)に示すように駆動装置20により2群レンズ302をテレ(望遠)方向に駆動したとき、1群レンズ301は2群レンズ302に近接する一方、(c)に示すように駆動装置20により2群レンズ302をワイド(広角)方向に駆動したとき、1群レンズ301は2群レンズ302に離反する。ガイド部材308のガイド溝308a,308bの形状は、図4に示す1群レンズ301の軌跡R1及び2群レンズ302の軌跡R2に基づいて形成されている。
【0043】
図5は、駆動装置20の基本構成を概略的に示すブロック図である。この図において、駆動装置20は、駆動ユニット21と、駆動ユニット21を駆動する駆動回路部22と、駆動ユニット21に取り付けられている係合部材30の位置を検出する部材センサ23と、駆動ユニット21の基端に配設された基端センサ24と、駆動ユニット21の先端に配設された先端センサ25と、全体の動作を制御する制御部26とを備えている。
【0044】
図6は、駆動ユニット21のより具体的な構成を示す斜視図である。この図において、駆動ユニット21は、素子固定式構造のものであり、支持部材27、圧電素子28、駆動部材29及び係合部材30を備えて構成されている。
【0045】
支持部材27は、カメラ本体部2に固定され、圧電素子28及び駆動部材29を保持するものである。支持部材27は、円柱体の軸方向両端部271,272及び略中央の仕切壁273を残して内部を刳り貫くことにより形成された第1の収容空間274及び第2の収容空間275を有している。第1の収容空間274には、圧電素子28がその分極方向である伸縮方向を支持部材27の軸方向と一致させて収容されている。第2の収容空間275には、駆動部材29と係合部材30の一部とが収容されている。なお、図5においては、支持部材27は一部を表記している。
【0046】
圧電素子28は、例えば、所要の厚みを有する複数枚の圧電基板を各圧電基板間に図略の電極を介して積層することにより構成したものであり、その伸縮方向(積層方向)である長手方向の一方端面が第1の収容空間274の一方端部271側端面に固着されている。支持部材27の他方の端部272及び仕切壁273には中心位置に丸孔が穿設されると共に、この両丸孔を貫通して断面丸形状の棒状の駆動部材29が第2収容空間275に軸方向に沿って移動可能に収容されている。
【0047】
駆動部材29の第1の収容空間274内に突出した端部は圧電素子28の他方側面に固着され、駆動部材29の第2の収容空間275の外部に突出した端部は板ばね31により所要のばね圧で圧電素子28側に付勢されている。この板ばね31による駆動部材29への付勢は、圧電素子28の伸縮動作に基づく駆動部材29の軸方向変位を安定化させるためである。
【0048】
係合部材30は、駆動部材29の軸方向の両側に取付部30aを有する基部30bと、両取付部30aの間に装着される挟み込み部材30cとを備えており、基部30bが駆動部材29に遊嵌されると共に、挟み込み部材30cが板ばね30dにより押圧されることにより駆動部材29に接触することで係合部材30が所定の摩擦力で駆動部材29に結合され、係合部材30に対してその摩擦力よりも大きな駆動力が作用したときに駆動部材29の軸方向に沿って移動可能とされている。なお、係合部材30には駆動対象物である2群レンズ32(図3)が取り付けられている。
【0049】
図7は、駆動回路部22の構成例を示す図である。この図において、駆動回路部22は、図略の駆動電源から駆動電圧+Vpが供給される接続点aと、接地される接続点bとの間に、電界効果トランジスタの一例としてのMOS−FETであるスイッチング素子Q1やダイオードD1等からなる第1スイッチ回路221と、MOS−FETであるスイッチング素子Q2やダイオードD2等からなる第2スイッチ回路222との直列回路と、MOS−FETであるスイッチング素子Q3やダイオードD3等からなる第3スイッチ回路223と、MOS−FETであるスイッチング素子Q4やダイオードD4等からなる第4スイッチ回路224との直列回路とが並列接続されているとともに、各スイッチ回路221〜224に駆動制御信号Sc1,Sc2,Sc3,Sc4を供給する制御信号供給手段としての制御回路227が、MOSFETドライバ225を介して接続されて構成されている。MOSFETドライバ225は、制御回路227からの信号を電源電圧Vpより充分高い電圧にレベルシフトする回路である。
【0050】
スイッチング素子Q1〜Q4は、本実施形態ではNチャネルFETで構成されており、駆動制御信号がハイレベルのときにオンとなる。第1スイッチ回路221及び第2スイッチ回路222の接続点cと、第3スイッチ回路223及び第4スイッチ回路224の接続点dとの間に圧電素子28が接続されてブリッジ回路226が構成されている。なお、ダイオードD1及びダイオードD3は、アノードがスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q3のソースに、カソードがスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q3のドレインに接続されているとともに、ダイオードD2及びダイオードD4は、アノードがスイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q4のソースに、カソードがスイッチング素子Q2及びスイッチング素子Q4のドレインに接続されている。
【0051】
このように構成された駆動回路部22において、第1スイッチ回路221及び第4スイッチ回路224は圧電素子28に対し、その一方側から駆動電圧+Vpを印加して端子間電圧Vsが+Vpとなるまで充電する第1の駆動回路を構成する。また、第2スイッチ回路222及び第3スイッチ回路223は圧電素子28に対し、その他方側から(すなわち、逆方向から)駆動電圧+Vpを印加して端子間電圧Vsが−Vpとなるまで充電する第2の駆動回路を構成する。
【0052】
このように第1〜第4スイッチ回路221〜224と圧電素子28とでブリッジ回路226を構成した場合、圧電素子25には−Vp〜+Vpの電圧が印加されるので、圧電素子28の駆動電圧が等価的に2Vpとなる結果、駆動電源が低電圧のものであっても変位量の大きい駆動装置20が得られる。
【0053】
図5に戻り、部材センサ23は、係合部材30の移動可能範囲内に配設されており、MRE(Magneto Resistive Effect)素子やPSD(Position SensitiveDevice)素子等のセンサにより構成されている。また、基端センサ24及び先端センサ25は、フォトインタラプタ等のセンサにより構成されている。これにより、係合部材30の所定位置への移動制御が可能となる一方、係合部材30の位置が基端センサ24及び先端センサ25で検出されることで係合部材30のそれ以上の移動が禁止される。
【0054】
制御部26は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、処理プログラム及びデータが記憶されたROM(Read Only Memory)及びデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)から構成されており、部材センサ23等から入力される信号に基づいて制御回路227から駆動パルスを出力させ、この駆動パルスにより第1の駆動回路及び第2の駆動回路を交互に駆動する。
【0055】
ここで、圧電素子28に印加される駆動電圧のパルス波形と、圧電素子28の伸縮による変位との対応関係について説明する。
【0056】
図8は、駆動電圧のパルス波形の一例と、この駆動電圧による圧電素子28の変位とを示す図である。なお、圧電素子28の変位は、レーザードップラー振動系により測定したものである。
【0057】
このように、圧電素子28に図8に示す駆動電圧が印加された場合、圧電素子28の変位波形は、鋸歯形状となることが確認されており、特に図8の場合にあっては、立ち上がり部は緩慢に、立ち下がり部は急峻となっている。なお、立ち上がり部及び立ち下がり部の勾配は、駆動電圧のパルス波形のONデューティ等のパラメータに応じて変化することも確認されている。
【0058】
圧電素子28の変位が図8に示すような緩慢な立ち上がり部を有する波形を呈するとき(すなわち、圧電素子28が緩やかに伸長するとき)は、係合部材30が駆動部材29とともに繰込方向(図3右方向)に移動する。一方、圧電素子28の変位急峻な立ち下がり部を有する波形を呈するとき(すなわち、圧電素子28が急激に縮小するとき)は、駆動部材29が戻り方向に移動しても係合部材30は駆動部材29上をスリップして略同位置に止まることになるため、図8に示す駆動電圧が圧電素子28に繰り返し印加されることで、係合部材30は繰込方向(図3右方向)に間欠的に移動することになる。
【0059】
なお、このように図8に示すような駆動電圧が圧電素子28に印加された場合に、圧電素子28の変位波形が鋸歯形状となるのは、次のような理由による。
【0060】
すなわち、矩形波は基本波である正弦波と複数次の高調波とからなるものであるが、駆動電圧の駆動周波数が圧電素子28の共振周波数に対して所定の範囲にあるとき、共振系における圧電素子28の共振周波数の影響を受けて矩形波を形成している高調波成分のうち3次以上の高次の高調波のゲインが大きく減衰し、圧電素子28に印加される駆動電圧が実質的に基本波と2次高調波とからなる波形(すなわち、略鋸歯形状の波形)を有するものとなるからである。
【0061】
図9は、本発明に係る駆動装置に適用される駆動回路部22の動作説明を行うための説明図で、図7に示す駆動回路部22を制御する制御回路227から出力されて各スイッチ回路221〜224に印加される駆動制御信号Sc1〜Sc4と、圧電素子28に印加される駆動電圧の波形とを示す図である。この図9に示す駆動電圧は矩形波からなるものである。
【0062】
図9に示すように、制御回路227は、第1の駆動回路(第1,第4スイッチ回路221,224)をオンしている状態(駆動制御信号Sc1,Sc4がハイ、駆動制御信号Sc2,Sc3がローの状態)から第1の駆動回路をオフし、第2の駆動回路をオンする場合、まず、駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切り替える。そして、この切替えタイミングから時間t9後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切替え、さらに時間t10後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替える。また、第2の駆動回路をオフし、第1の駆動回路をオンする場合、駆動制御信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切り替える。そして、この切替えタイミングから時間t11後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切替え、さらに時間t12後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替える。
【0063】
このように、駆動装置20の駆動時には、制御回路227から送出される駆動制御信号Sc1,Sc4としてハイレベル信号がスイッチ回路221,224に入力されるときには、制御回路227から送出される駆動制御信号Sc2,Sc3としてローレベル信号がスイッチ回路222,223に入力される一方、駆動制御信号Sc1,Sc2としてローレベル信号がスイッチ回路221,224に入力されるときには、駆動制御信号Sc3,Sc4としてハイレベル信号がスイッチ回路222,223に入力されることにより、スイッチ回路221,224とスイッチ回路222,223とが所定の周期で交互にオン、オフを繰り返す。
【0064】
すなわち、スイッチ回路221,224がオンのときには圧電素子28は+Vpに充電され、スイッチ回路222,223がオンのときには圧電素子28は−Vpに充電されることになる。その結果、圧電素子28には見掛け上電源電圧Vpの2倍(2Vp)の電圧が印加されたこととなり、係合部材30の移動速度を大きくすることができて駆動装置20を効率よく動作させることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、駆動制御信号Sc1,Sc2のハイからローへの切替わりタイミングから所定時間(時間t9)をおいて、駆動制御信号Sc2,Sc3をローからハイへ切り替えるとともに、駆動制御信号Sc2,Sc3のハイからローへの切替わりタイミングから所定時間(時間t11)をおいて、駆動制御信号Sc1,Sc4をローからハイへ切り替えるようにすることで、スイッチ回路223とスイッチ回路224とが同時にオンしないようにしている。
【0066】
これにより、スイッチ回路221及びスイッチ回路222を介して流れる貫通電流や、スイッチ回路221及びスイッチ回路222を介して流れる貫通電流の発生を防止することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、駆動回路を構成する2つのスイッチ回路に対する駆動制御信号について、ローからハイへの切替えタイミングをずらしている。
【0068】
すなわち、駆動制御信号Sc1〜Sc4のうち、駆動制御信号Sc2が、駆動制御信号Sc3がローからハイに切り替わるタイミングよりも遅いタイミング(時間差t10)でローからハイに切り替わるように設定されているとともに、駆動制御信号Sc4が、駆動制御信号Sc1がローからハイに切り替わるタイミングよりも遅いタイミング(時間差t12)でローからハイに切り替わるように設定されている。
【0069】
これにより、スイッチ回路221,224の駆動期間である圧電素子28に対する充電期間と、スイッチ回路222,223の駆動期間である圧電素子28に対する充電期間との間に、スイッチ回路222,223の駆動又はスイッチ回路221,224の駆動により圧電素子28に充電されている電荷を放電させる放電期間が設けられている。
【0070】
すなわち、スイッチ回路221,224が共にオンになって圧電素子28に正方向から駆動電圧Vpが印加されて充電が行われた後(Vs=+Vp)、スイッチ回路223のみがオンになる期間が設けられる。このとき、スイッチ回路221とスイッチ回路223とがショートされることにより、圧電素子28に充電されていた電圧+Vpに対応する電荷がスイッチ回路221,223を介して放電されることになる。
【0071】
また、スイッチ回路222,223が共にオンになって圧電素子28に逆方向から駆動電圧Vpが印加されて充電が行われた後(Vs=−Vp)、スイッチ回路221のみがオンになる期間が設けられる。このとき、スイッチ回路221とスイッチ回路223とが再びショートされることにより、圧電素子28に充電されていた電圧−Vpに対応する電荷がスイッチ回路221,223を介して放電されることになる。
【0072】
このように、スイッチ回路221,224の駆動期間とスイッチ回路222,223の駆動期間との間に、スイッチ回路221,223による放電期間が設けられたので、圧電素子28を正方向及び逆方向に充電する際、従来では放電にも要していた電力が不要となり、充電に要する電力だけを供給すればよいから、放電に要する電力分、消費電力を低減することができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切り替え、この切替えタイミングから時間t9後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切替え、さらに時間t10後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切り替えるとともに、駆動制御信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切り替え、この切替えタイミングから時間t11後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切替え、さらに時間t12後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切り替えるようにしたことにより、次のような利点がある。
【0074】
圧電素子28の端子間電圧Vsに着目すると、図9に示すように、スイッチ回路221,224が同時にオンからオフに切り替わっても、端子間電圧Vsは電圧+Vpに維持され、スイッチ回路223がオフからオンに切り替わるとスイッチ回路221,223がショートするため、端子間電圧Vsは降下する。その場合に、端子Aは端子BよりダイオードD1の順方向電圧Vd1分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、+Vd1となる。そして、スイッチ回路222がオフからオンに切り替わると端子間電圧Vsは−Vpとなる。
【0075】
その後、スイッチ回路222,223が同時にオフに切り替わっても端子間電圧Vsは電圧−Vpに維持され、スイッチ回路221がオフからオンに切り替わると、圧電素子28の両端子がスイッチ回路221及びダイオードD3を介してショートするため、端子間電圧Vsは上昇する。その場合に、端子Bは端子AよりダイオードD3の順方向電圧Vd3分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、−Vd3となる。そして、スイッチ回路224がオフからオンに切り替わると端子間電圧Vsは+Vpとなる。
【0076】
これによれば、圧電素子28の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tが、従来(前述した従来の第2の制御,図14参照)では、上述したように貫通電流防止に要する時間t5又はt8と放電時間t4又はt7との和となるのに対し、本実施形態では、放電時間t10又はt12のみとなる。放電時間t4,t7,t10,t12は、主に圧電素子28の電気容量で決定するもので、本実施形態と従来とで同じ長さであるものとする場合、時間Tは、本実施形態の方が従来の場合より短くなる。これにより、圧電素子28に印加する駆動電圧の波形の形状が矩形波により近似することになるから、従来の圧電素子28の変位波形の鈍りを抑制することができる。その結果、従来に比して駆動装置20の出力を増加することができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、次の(1)〜(4)の変形形態を採用し得る。
【0078】
(1)上記実施形態においては、各駆動回路を駆動させる際に、電源に接続されている側のスイッチ回路(スイッチ回路221,223)をグランドに接続されている側のスイッチ回路(スイッチ回路222,224)より先にオンするようにしているが、これに限らず、オンする順序を逆にして、スイッチ回路222,224によって圧電素子28の両端子をショートさせるようにしてもよい。
【0079】
すなわち、図10に示すように、駆動制御信号Sc1,Sc4を同時にハイからローに切り替えると、この切替えタイミングから時間t13後に駆動制御信号Sc2をローからハイに切替え、さらに時間t14後に駆動制御信号Sc3をローからハイに切り替えるとともに、駆動制御信号Sc2,Sc3を同時にハイからローに切り替えると、この切替えタイミングから時間t15後に駆動制御信号Sc4をローからハイに切替え、さらに時間t16後に駆動制御信号Sc1をローからハイに切り替えるようにしてもよい。
【0080】
この場合、圧電素子28の端子間電圧Vsは、図10に示すように、スイッチ回路221,224が同時にオンからオフに切り替わっても電圧+Vpは維持され、スイッチ回路222がオフからオンに切り替わると圧電素子28の両端子がスイッチ回路222及びダイオードD4を介してショートするため、端子間電圧Vsは降下する。その場合に、端子Aは端子BよりダイオードD4の順方向電圧Vd4分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、+Vd4となる。そして、スイッチ回路223がオフからオンに切り替わると、端子間電圧Vsは−Vpとなる。
【0081】
その後、スイッチ回路222,223が同時にオフになっても端子間電圧Vsは電圧−Vpが維持され、スイッチ回路224がオフからオンに切り替わると、圧電素子28の両端子がスイッチ回路224及びダイオードD2を介してショートするため、端子間電圧Vsは上昇する。その場合に、端子Bは端子AよりダイオードD2の順方向電圧Vd2分だけ電位が高くなるため、端子間電圧Vsは、−Vd2となる。そして、スイッチ回路221がオフからオンに切り替わると、端子間電圧Vsは+Vpとなる。
【0082】
この場合にも、貫通電流の発生を防止し、放電に要する電力分だけ消費電力を低減することができるとともに、圧電素子28の端子間電圧Vsの大きさが駆動電圧Vpより小さくなる時間Tが、放電時間t14又はt16のみとなり従来の場合より短くなるから、従来の圧電素子28の変位波形の鈍りを抑制することができ、従来に比して駆動装置20の出力を増加することができる。
【0083】
(2)上記実施形態においては、スイッチ回路221,224のオンからオフへの切替え、又はスイッチ回路222,223のオンからオフへの切替えを同時に行っているが、同時でなくても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
(3)本発明に係る駆動装置を備えたレンズユニットは、デジタルカメラに限らず、撮影機能を搭載する、パーソナルコンピュータ、電子手帳、携帯電話、あるいはPDA(personal digital assistants)等の電子機器に搭載可能である。
【0085】
(4)上記実施形態においては、第1〜第4スイッチ回路221〜224のスイッチング素子Q1〜Q4としてMOS−FETを用いたが、これに限らず、スイッチング素子Q1〜Q4としてパワーMOS−FETを用いてもよい。この場合、パワーMOS−FETは、その構造上、ソース−ドレイン間にダイオードが等価的に内蔵されているため、第1〜第4スイッチ回路221〜224においてダイオードD1〜D4は不要となる。
【0086】
【発明の効果】
請求項1,4に記載の発明によれば、各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段をオンさせるとともに、オフしているスイッチ手段をオンさせる場合に、そのスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるようにしたので、すべてのスイッチ手段が同時にオフする期間が与えられ、貫通電流の発生を防止することができるとともに、電気機械変換素子の両端子が、第1スイッチ手段及び第3スイッチ手段を介して、あるいは第2スイッチ手段及び第4スイッチ手段を介してショートされる期間が与えられ、電気機械変換素子を正方向及び逆方向に充電する際の放電に要する電力分、消費電力を低減することができる。
【0087】
また、電気機械変換素子の端子間電圧の大きさが駆動電圧より小さくなる期間が、電気機械変換素子が放電する期間となるため、貫通電流防止に要する期間と放電期間との和となる従来の制御より短くなり、電気機械変換素子に印加する駆動電圧の波形の形状が矩形波により近似することになるから、従来の電気機械変換素子の変位波形の鈍りを抑制することができ、その結果、従来に比して駆動装置の出力を増加することができる。
【0088】
請求項2に記載の発明によれば、レンズと、前記レンズを所定の方向に駆動するための請求項1に記載の駆動装置と、前記電気機械変換素子の駆動力を前記レンズに伝達するための駆動力伝達部材とを備えるレンズユニットを構成することにより、貫通電流の発生を防止し、放電期間を設けて駆動電力の低減を図ることができる上に、高い駆動効率を有する駆動装置を備えたレンズユニットが得られる。
【0089】
請求項3に記載の発明によれば、被写体の光像を撮影する撮影手段と、請求項1に記載の駆動装置により駆動されるレンズを含み、前記撮影手段に前記被写体の光像を導く光学系と、撮影の指示を行うための撮影指示手段とを備えてなる撮影装置を構成することにより、貫通電流の発生を防止し、放電期間を設けて駆動電力の低減を図ることができる上に、高い駆動効率を有する駆動装置を備えた撮影装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデジタルカメラの正面図である。
【図2】同じくデジタルカメラの背面図である。
【図3】レンズユニットの内部構成を示す斜視図である。
【図4】駆動装置により駆動されるレンズの移動を示す図である。
【図5】駆動装置の構成を概略的に示す図である。
【図6】図5に示す駆動装置の駆動部の構成例を示す斜視図である。
【図7】図5に示す駆動装置の駆動回路の構成例を示す図である。
【図8】駆動電圧のパルス波形の一例と、この駆動電圧による圧電素子の変位とを示す図である。
【図9】各スイッチング素子に印加される駆動パルスと、圧電素子に印加される駆動電圧の波形とを示す図である。
【図10】本発明の変形例を示す図である。
【図11】従来の駆動装置の構成を概略的に示す図である。
【図12】従来の駆動装置の駆動回路の構成例を示す図である。
【図13】従来の制御を示す図である。
【図14】同じく従来の制御を示す図である。
【符号の説明】
20 駆動装置
21 駆動ユニット
22 駆動回路部
227 制御回路
221〜224 第1スイッチ回路〜第4スイッチ回路
226 ブリッジ回路
26 圧電素子
Q1〜Q4 スイッチング素子
Claims (4)
- 電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、
前記電気機械変換素子に電圧を供給するための電源と、
前記電気機械変換素子の一方の端子と電源との間に接続された第1スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子の一方の端子とグランドとの間に接続された第2スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子の他方の端子と電源との間に接続された第3スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子の他方の端子とグランドとの間に接続された第4スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子に交番電圧を印加するべく、前記第1、第4スイッチ手段と前記第2、第3スイッチ手段とを交互にオンオフさせる制御手段とを備える駆動装置において、
前記制御手段は、前記各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせるように構成されていることを特徴とする駆動装置。 - レンズと、前記レンズを所定の方向に駆動するための請求項1に記載の駆動装置と、前記電気機械変換素子の駆動力を前記レンズに伝達するための駆動力伝達部材とを備えるレンズユニット。
- 被写体の光像を撮影する撮影手段と、請求項1に記載の駆動装置により駆動されるレンズを含み、前記撮影手段に前記被写体の光像を導く光学系と、撮影の指示を行うための撮影指示手段とを備えてなる撮影装置。
- 電圧が印加されることにより伸縮する電気機械変換素子と、
前記電気機械変換素子に電圧を供給するための電源と、
前記電気機械変換素子の一方の端子と電源との間に接続された第1スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子の一方の端子とグランドとの間に接続された第2スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子の他方の端子と電源との間に接続された第3スイッチ手段と、
前記電気機械変換素子の他方の端子とグランドとの間に接続された第4スイッチ手段とを備え、
前記電気機械変換素子に交番電圧を印加するべく、前記第1、第4スイッチ手段と前記第2、第3スイッチ手段とを交互にオンオフさせるように構成された駆動装置の駆動制御方法において、
前記各スイッチ手段のオンオフを切り替える際、オンしているスイッチ手段を両方オフしたタイミングから所定の時間をおいて、オフしているスイッチ手段を時間をずらして順にオンさせることを特徴とする駆動装置の駆動制御方法。
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---|---|---|---|
JP2002210663A JP2004056913A (ja) | 2002-07-19 | 2002-07-19 | 駆動装置及び駆動装置の駆動制御方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007049772A (ja) * | 2005-08-05 | 2007-02-22 | Seiko Epson Corp | 圧電アクチュエータの駆動制御装置、電子機器および圧電アクチュエータの駆動制御方法 |
JP2008253021A (ja) * | 2007-03-29 | 2008-10-16 | Fujinon Corp | 駆動装置 |
JP2014003469A (ja) * | 2012-06-19 | 2014-01-09 | Denso Corp | 車両用無線信号送信システム |
CN113375003A (zh) * | 2021-04-22 | 2021-09-10 | 维沃移动通信有限公司 | 拍摄模组、电子设备及其控制方法和控制装置 |
-
2002
- 2002-07-19 JP JP2002210663A patent/JP2004056913A/ja not_active Withdrawn
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