JP2004055458A - 燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一対の電極及び固体電解質膜からなる電極構造体を一対のカーボンセパレータで挟み、電極構造体とカーボンセパレータを液状シールにより接合する本発明の燃料電池の製造方法は、カーボンセパレータの冷媒面(電極面とは反対側の面)が凹面となる反りを発生させることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は反りによるセパレータの割れがなく、積層位置精度が良好で生産効率の高い燃料電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池は、リン酸型燃料電池等の燃料電池と比較して低温でかつ高出力密度の発電が可能であるため、自動車の電源をはじめ小型の移動型電源として期待されている。固体高分子型燃料電池(単位燃料電池)は電極構造体(膜・電極接合体)と一対のセパレータから構成され、電極構造体は通常スルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜等の高分子イオン交換膜からなる電解質膜とその両面に白金触媒を担持した触媒電極とから構成される。固体高分子型燃料電池は、通常単位燃料電池が複数積層された燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池の構成部品の中でセパレータは燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(酸素又は空気)とを分離すると共に、ガス及び冷却水を供給する流路を確保し、さらに燃料電池で発電した電気を外部へ伝達する役割を担っている。ガス及び冷却水を供給するため、セパレータの表面にはガス及び冷却水の流路が形成されている。セパレータとしては、耐蝕性及び導電性を両立させる観点から炭素材料又は炭素複合材料を構成材料とするカーボンセパレータが一般的に用いられている。
【0004】
燃料電池は自動車への搭載等を目的として小型化、軽量化が進められており、このためセパレータも薄く軽いものが求められている。しかしながら、冷却水流路等の溝を有するセパレータは、その厚さを薄くすることにより薄肉部分で反りや割れが生じやすくなるという問題がある。このため、セパレータの外周にリブを立てる、又は溝を彫る等の加工を施し反りを抑える方法が知られているが、これらの方法は反りの抑制を目的としてセパレータの形状を設計するため、流路設計が制約されるという問題がある。
【0005】
モールド成形では金型から取り出すと同時に反りが発生するため、成形直後に治具で常温まで冷却しながら反り矯正(プレスアニーリング)を行うことが知られているが、実際には燃料電池の組立てまでの保管中、別工程への移動時間中等に反りの程度が次第に大きくなり、燃料電池の組立てに不具合をきたす等の問題がある。またセパレータに液状タイプのシールを用いる場合、セパレータに直接機械を用いてシール剤を塗布するが、セパレータの反りにより塗布機のノズル先端とセパレータ塗布面との隙間を所定の距離に保てなくなるため、所望の線径が得られない等の問題がある。さらに燃料電池を組立てた後においてもセパレータの反りが経時的に増大するため、燃料電池スタックを形成する際に積層位置精度が悪化したり、締結荷重の印加によりセパレータの割れを生じるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、反りよるセパレータの割れがなく、積層位置精度が良好で生産効率の高い燃料電池の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、カーボンセパレータの反りを設計上で抑えるのはレイアウトの制約が発生し自由度が失われること、矯正により反りを完全に無くそうとするのは困難であるばかりでなく生産性の低下を招くことから、カーボンセパレータに冷媒面が凹面となる反りを残し、反りを矯正しながら電極面に液状シールを塗布し、一対のカーボンセパレータの電極面同士を対向させて電極構造体を挟み、カーボンセパレータと電極構造体を接合することにより、経時的に発生する反りを抑え、燃料電池の組立て及びスタックの形成を生産性よく行うことができることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、一対の電極及び固体電解質膜からなる電極構造体を一対のカーボンセパレータで挟み、前記電極構造体と前記カーボンセパレータを液状シールにより接合する本発明の燃料電池の製造方法は、カーボンセパレータの冷媒面(電極面とは反対側の面)が凹面となる反りを発生させることを特徴とする。
【0009】
燃料電池の製造方法は、上型に冷媒面となる冷媒流路の溝が形成され、下型に電極面となる反応ガス流路の溝が形成された金型を用い、この金型に炭素及び樹脂を含有する材料を投入し、加圧圧縮することによりカーボンセパレータを成形し、次いで金型を開き、下型に残されたセパレータの冷媒面を大気により急激に冷却するのが好ましい。
【0010】
カーボンセパレータの反りは、電極構造体をカーボンセパレータに取り付ける前6時間以内に熱処理により矯正するのが好ましく、カーボンセパレータの縁に位置決め孔を開ける工程の前に熱処理により矯正するのが好ましく、さらに液状シールの硬化と同時に熱処理により矯正するのが好ましい。
【0011】
カーボンセパレータの反りを熱処理により矯正する工程は、セパレータの表面を0.5〜10 kPaで加圧しながら、80〜150℃に加熱するのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
[1] 燃料電池
燃料電池は図1に示すように電極構造体3と1対のカーボンセパレータ4、5により構成されている。電極構造体3はアノード電極3a、カソード電極3b及び電解質膜3cから構成されている。アノード電極3a及びカソード電極3bはガス拡散層と触媒層とからなり、ガス拡散層上には、カーボンブラックに白金粒子又は白金合金粒子を担持させてなる触媒粒子が塗布され、触媒層が形成されている。電解質膜3cは、パーフルオロアルキルスルホン酸等のフッ素系高分子膜、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等のスルホン化非フッ素系高分子膜等により形成されたイオン交換膜である。電極構造体3は、電解質膜3cの両側に触媒層が対向するようにアノード電極とカソード電極が接合されている。またセパレータの内側の面(電極面)には反応ガス流路4a、5aが形成されており、セパレータの外側の面(冷媒面)には冷媒流路4b、5bが形成されている。
【0013】
図2はカーボンセパレータの電極面を示し、図3はカーボンセパレータの冷媒面を示す。電極面には反応ガス流路11が形成されており、反対側の冷媒面には冷媒流路12が形成されている。反応ガス流路11は燃料ガス又は酸化剤ガス(酸素又は空気)の流路から構成され、電極との接触部分に形成されている。セパレータ1の外周部には供給・排出口からなる連通孔22〜27、ボルト孔13、及び位置決め孔14が形成されている。供給・排出口からなる連通孔は、燃料ガスの供給口24及び排出口26、酸化剤ガスの供給口25及び排出口27、並びに冷却媒体の供給口22及び排出口23から構成されている。セパレータ上の流路11、12と連通孔22〜27、ボルト孔13及び位置決め孔14の間、並びに連通孔同士の間はシール30によって区切られている。
【0014】
シール30は、フッ素系、シリコーン系、エチレンプロピレン系等の有機ゴム等の弾性材料(シート状、Oリング状、接着硬化タイプの液状シール材等)、無機系シート(黒鉛、セラミック系繊維シート等)等の材料により形成される。なかでもカーボン系の脆い材料でできているセパレータの割れを防止し、気密性を確保するためシリコーン系、有機ゴム等の柔らかく適度に反発力のあるシール材により形成されるのが好ましい。具体的には電極構造体とセパレータを接着するためセパレータの電極面に液状シール材が使用され、冷媒面に有機ゴム、シリコーン等の固形シール材が使用されるのが好ましい。
【0015】
カーボンセパレータの構成材料としては、炭素粉末と樹脂(熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)を含む炭素複合材料が挙げられる。炭素粉末は特に限定されず、例えば人造黒鉛、燐片状黒鉛、土塊状黒鉛、膨張黒鉛、キッシュ黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、コークス粉、これらの混合物等が使用可能である。
【0016】
樹脂は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フルフリルアルコール樹脂、セルロース等が挙げられる。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキサメチレン、ポリアリレート、アラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、これらの混合物等が挙げられる。
【0018】
[2] 燃料電池の製造方法
(1) カーボンセパレータの作製
本発明の製造方法はカーボンセパレータの冷媒面が凹面となる反りを発生させることを特徴とする。カーボンセパレータは以下の方法により作製することができる。
【0019】
まず炭素粉末と樹脂(熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)を、炭素粉末/樹脂の体積比で好ましくは70/30〜98/2、より好ましくは85/15〜98/2となるように混合して混練する。混合はニーダー、加圧ニーダー、二軸スクリュー式混練機、ボールミル、ミキサー等の通常の混練機により行うことができる。その際樹脂をアルコールやエーテル等の適宜な有機溶媒に溶解して粘度を下げて混練した後、必要に応じて有機溶媒を除去する方法を用いてもよい。得られた混練物から燃料電池用セパレータに成形する方法は、公知の成形方法を用いてよく、例えば加圧成形、射出成形、静水圧成形等のモールド成形を用いることができる。
【0020】
モールド成形は金型に上記炭素及び樹脂を含有する材料を投入し、加圧圧縮することにより行う。金型は好ましくは上型に冷媒面となる冷媒流路の溝が形成され、下型に電極面となる反応ガス流路の溝が形成されているものを用いる。モールド成形した後金型を開くと下型に残されたセパレータの冷媒面が大気により急激に冷却され、大気に曝されたセパレータの冷媒面が凹面となる反りを生じる。その際電極面側の金型とセパレータとの接触面積を多くすることにより(反応ガス流路に対して冷媒流路の溝を太く設計することにより)上型にセパレータが貼り付く現象を排除することができる。このように冷媒面の溝を上型で成形することにより、必ず冷媒面が凹面となる反りを発生させることが可能である。
【0021】
発生させるセパレータの反り量は1.1 mm以下が好ましく、0.5〜1.0 mmがより好ましい。反り量が1.1 mmより大きいと液状シールの塗布、電極構造体の取り付け等を精度よく行うことができない。ここで反り量とは、図4に示すようにセパレータ41を反り方向を上にして定盤42上に置いたときセパレータの各隅の高さの平均値h1からセパレータの厚さh2を差し引いた値(h1−h2)を意味する。このように適切な反り量を発生させるためには金型を開いたときの下型の底面とセパレータの冷媒面との温度差を10〜80℃の範囲で0.2〜5分間保持するのが好ましい。
【0022】
(2) 燃料電池の組立て
燃料電池の組立て方法は公知の方法を適宜採用してよい。例えば、(a) 熱処理により成形したセパレータの反り矯正を行う工程と、(b) 機械加工によりセパレータの外周部に供給・排出口(冷却媒体、燃料ガス及び酸化剤ガス用)、ボルト孔、及び位置決め孔を開ける工程と、(c) セパレータ表面を荒す表面処理工程と、(d) 煮沸によりセパレータ内に含まれる不純物を除去する工程と、(e) 熱処理によりセパレータの反り矯正を行う工程と、(f) 電極構造体をセパレータに取り付ける工程と、(g) 液状シールの硬化とともに反り矯正を行う工程とを有する方法により組立てることができる。
【0023】
セパレータの外周部に供給・排出口(冷却媒体、燃料ガス及び酸化剤ガス用)、ボルト孔、及び位置決め孔を形成する工程はセパレータをモールド成形した後、ドリル等の機械加工により行う。このため成形後の反りの影響を受け位置精度が低下しやすい。従って位置決め孔等を開ける前に予め熱処理により反りを矯正しておくのが好ましい。表面処理工程は研磨処理等の通常の方法により行う。セパレータ表面の樹脂を研削することにより電極との接触抵抗を低減することができる。煮沸工程はセパレータを加熱水に浸漬してセパレータ中の不純物を溶出させ、加熱水をイオン交換樹脂に通すことにより不純物を除去する。煮沸工程により汚染された冷却媒体を原因とする短絡の発生を防止することができる。
【0024】
図5及び図6にセパレータの表面に液状シールを塗布する工程の一例を示す。まずセパレータの電極面に液状シールを塗布する。セパレータは金型開放時にセパレータの一方の面と他方の面との間で温度差により冷媒面が凹面となる反りが生じる。この状態のまま液状シールを塗布すると、塗布装置のノズルとセパレータの距離が不均一になり、シールの塗り幅に誤差を生じる。このため、例えば図5(a)に示すようにセパレータ51の冷媒面(凹面)を下にして平板53上に置き、背面にセパレータより小さいおもり52を載せてセパレータ51を平坦にした後、(b)に示すように塗布機のノズル54をセパレータ51から好ましくは0.3〜1.1 mm、より好ましくは0.5〜1.0 mmの高さに設置し、電極面の外周部(おもりの外側)の所定の位置に液状シールを塗布する。ところがセパレータの電極面が凹面であると、図6(a)に示すようにセパレータにおもりを載せても十分に矯正することができず、(b)に示すようにノズルとセパレータの距離が不均一になりシールを均一な塗り幅に塗布することができない。従って上述のようにセパレータの冷媒面が凹面となるように(電極面が凸面となるように)予めセパレータを作製しておくことが重要である。
【0025】
図7に電極構造体の取り付け工程の一例を示す。装置70はセパレータ76を載せるベース部71と、その上部に設けられた吸引吸着機72とからなり、吸引吸着機72には吸引により電極構造体77を吸着させるための段差部74が設けられている。ベース部71の両側にはストッパー73が設置され、ストッパーの高さを調節することによりセパレータ76上に塗布した液状シール78と吸引吸着機72に吸着された電極構造体77との間の間隔Lを一定に設定できるようにしている。電極構造体の取り付け工程は、まず、吸引吸着機72の段差部74の所定の位置に電極構造体77を吸着させ、表面に液状シール78を塗布したセパレータをMEA面を上にしてベース部71の上に設置する。次に吸引吸着機72を下降させ、電極構造体77をセパレータ76上に載置する。このとき電極構造体77の膜部分がセパレータ76に形成された反応ガスの供給口及び排出口を塞ぐことなく、かつ液状シールによって燃料電池内を密閉できるように電極構造体77をセパレータ76上の所定の位置に正確に載置することが必要である。そのためには電極構造体を載置するときに間隔Lを0.3〜1.1 mmとするのが好ましく、0.5〜1.0 mmとするのがより好ましい。従って、ストッパー73の高さを間隔Lが上記範囲となるように設定し、ストッパー73の高さまで吸引吸着機72を下降させ、吸引を止めて電極構造体77をセパレータ76上の所定の位置に載置する。
【0026】
ここでセパレータが反りを有する場合、ベース部71上に設置したセパレータ76の電極構造体77を載置する側の面(電極面)は凸面になっている。反り量が大きいと電極構造体をセパレータに取り付けるときにセパレータの中央部により電極構造体77が吸引吸着機72に押し付けられ、電極構造体77が吸引吸着機72から離れにくくなる。また反りによりセパレータが歪むため取り付けた電極構造体77の位置精度が悪くなる。このため、電極構造体をセパレータに取り付ける前6時間以内に熱処理によりセパレータの反りを矯正するのが好ましい。
【0027】
セパレータに電極構造体を取り付けた後、この電極構造体に液状シールを塗布した別のセパレータを接合して燃料電池を形成する。図8はセパレータの反り方向により生じる燃料電池の各種パターンを示す。(a)はセパレータの冷媒面が凹面となる本発明の方法による場合を示す。この場合一対のセパレータの電極面61(凸面)を向かい合わせ電極構造体(図示せず)を挟持し、液状シールにより接合している。外周部分が液状シール65により接着されているため反りの反力が打ち消し合い反りの少ない燃料電池を形成することができる。これに対し(b)は一対のセパレータの一方のセパレータの冷媒面63が凹面であり、他方のセパレータの冷媒面63が凸面である場合を示す。これらの場合、液状シールにより接着してもセパレータの反りがそのまま燃料電池に残り、しかも反り量は経時的に増大する。また(c)は一対のセパレータの冷媒面63が両方とも凸面となる場合を示す。この場合液状シールによりセパレータ同士を接着すると中央部が外側に膨らんだ形状の燃料電池が形成される。しかも反り量は経時的に増大する。従って、(a)の燃料電池は精度よく積層してスタックを形成することができるが、(b)及び(c)の燃料電池はセパレータの割れや積層位置精度悪化等を引き起こし生産性よく燃料電池スタックを形成することができない。
【0028】
セパレータの反りは熱処理等の矯正により一旦は除くことができるが、長時間の放置や運転により徐々にまた反りが発生する。その反りの方向は成形直後に発生した向きに発生するため、上記(a)の燃料電池を作製できるように成形時にセパレータに意図した反り方向を付与することが重要となる。
【0029】
熱処理により反りを矯正する工程は、セパレータの表面を加圧しながら加熱して反り方向と逆方向へたわませることにより行うのが好ましい。具体的には、セパレータの表面を好ましくは0.5〜10 kPa、より好ましくは1〜5 kPaで加圧し、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜130℃で2〜10時間加熱して行う。
【0030】
例えば、図9(a)に示すようにセパレータ81を反り方向を下にして恒温槽80内の平板83上に設置し、セパレータ81の背面に2〜5kgのおもり82を載せ、1〜5kPaで加圧しながら加熱することにより反りを矯正するのが好ましい。その際セパレータ81を反り方向(凹面)を下にして複数枚重ね、その上におもり82を載せて行ってもよい。このようにセパレータの反り方向の背面(凸面)から荷重を加えながら加熱することにより反りを効果的に矯正することができる。
【0031】
加圧手段はおもり82に限られず、例えば図10に示すように恒温槽80内にセパレータ81を平板83を介して複数枚立てて並べ、締具85により反り方向の背面から締め付けて加圧してもよい。加圧はセパレータのサイズより大きい平板により行うのが好ましい。これによりセパレータの形状に制約されず反り矯正の効果を発揮することができる。加熱手段は特に制限されず、所定の温度範囲に保持できるものであればよい。例えば、図11に示すようにセパレータ81をヒータ90上に置いて加熱してもよい。
【0032】
さらにセパレータの反り矯正温度及び時間が液状シールの硬化条件とほぼ同じであるため、恒温層80の温度設定を変えずに液状シールの硬化とセパレータの反り矯正を同時に行うことができる。例えば、電極構造体を取り付けたセパレータにさらに別のセパレータを取り付けて燃料電池を組立てた後、図9(b)に示すように恒温槽80内で電極構造体87を挟持した一対のセパレータ81の上におもり82を載せ、加圧しながら加熱し液状シール86の硬化と同時に反り矯正を行うのが好ましい。
【0033】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
(1) カーボンセパレータの作製
炭素粉末として燐片状黒鉛粉末(平均粒径50μm)及び熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を黒鉛/樹脂=90/10の体積比で混合し、加圧ニーダーにより十分に混練した。次に上型に冷媒面となる冷媒流路の溝が形成され、下型に電極面となる反応ガス流路の溝が形成された金型内に得られた混練物を投入し、加圧成形した。成形後金型を開くことによりセパレータの冷媒面を急激に冷却し、冷却面が凹面となるセパレータ(サイズ:312×191×1.2 mm)を作製した。
【0035】
(2) 反り矯正
図9(a)に示すように、(1)で作製したセパレータ81(10枚)をそれぞれ冷媒面(凹面)を下にして恒温槽80内の平板83上に置き、セパレータの背面に4kgのおもり82を載せ、荷重を加えながら120℃で3時間加熱した。矯正後のセパレータの反り量を測定したところ、反り矯正したセパレータの反り量は0.2〜0.9 mmであり全数が1.1 mm以下であった。ここで反り量は図4に示すようにセパレータを冷媒面を上にして定盤42上に置き、セパレータ41の各隅の高さ及びセパレータの厚さをレーザー変位計(キーエンス社製)により測定し、各隅の高さの平均値h1からセパレータの厚さh2(1.2 mm)を差し引いた値(h1−h2)として求めた。
【0036】
(3) 燃料電池の組立て
反り矯正したセパレータを用い、図5に示すようにセパレータの電極面(凸面)におもりを置き塗布機により厚さ約0.8 mmの液状シールを塗布した。次に図7に示すようにセパレータ76(厚さ1.2 mm)を装置70のベース部71(高さ12 mm)上の所定の位置に電極面を上にして置き、高さ20 mmのストッパー73をベース部71の両側に設置した。次いで吸引吸着機72の段差部74(高さ4mm)に電極構造体77(厚さ約0.7 mm)を設置し、吸引吸着機72で吸引した。次に吸引吸着機72をストッパー73の高さまで下降させ、吸引を止めて電極構造体77をセパレータ76上に載置した。
【0037】
電極構造体を取り付けたセパレータにさらに液状シールを塗布した別のセパレータを取り付け、図8(a)に示すように一対のセパレータで電極構造体を挟持し、燃料電池を組立てた。次にこの燃料電池を図9(b)に示すように恒温槽内の平板上に置き、セパレータに4kgのおもりを載せ、120℃で3時間加熱して液状シールを硬化させるとともに、反り矯正を行った。得られた燃料電池は反りがほとんどなく、また硬化処理したセパレータは反り量の増加が見られなかった。
【0038】
比較例1
上型に冷媒流路の溝が形成され、下型に反応ガス流路の溝が形成された金型と、上型に反応ガス流路の溝が形成され、下型に冷媒流路の溝が形成された金型の両方を用い、冷媒面が凹面となるセパレータと冷媒面が凸面となるセパレータの一対のセパレータを作製した以外実施例1と同様にして燃料電池を作製した。図8(b)に示すように得られた燃料電池は反りが残り、また硬化処理したセパレータは反り量の経時的な増加がみられた。
【0039】
比較例2
上型に反応ガス流路の溝が形成され、下型に冷媒流路の溝が形成された金型のを用い、冷媒面が凸面となるセパレータを作製した以外実施例1と同様にして燃料電池を作製した。図8(c)に示すように得られた燃料電池は中央部に膨らみがみられ、また硬化処理したセパレータは反り量の経時的な増加がみられた。
【0040】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の燃料電池の製造方法は、カーボンセパレータに冷媒面が凹面となる反りを発生させ、一対のセパレータの電極面(凸面)同士を対向させ、液状シールにより接着して燃料電池を作製するので、燃料電池の生産効率が高く、セパレータの割れがなく積層位置精度の良好な燃料電池スタックを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】電極構造体を燃料電池用セパレータで挟持した燃料電池を示す概略断面図である。
【図2】燃料電池用セパレータの電極面を示す概略図である。
【図3】燃料電池用セパレータの冷媒面を示す概略図である。
【図4】反り量を示すセパレータの概略断面図である。
【図5】液状シールの塗布工程の一例を示す概略断面図である。
【図6】液状シールの塗布工程の別の例を示す概略断面図である。
【図7】電極構造体の取り付け工程の一例を示す概略断面図である。
【図8】反りが発生したセパレータにより形成した燃料電池のパターンを示す概略図である。
【図9】セパレータの反りを矯正する熱処理工程の一例を示す概略断面図である。
【図10】セパレータの反りを矯正する熱処理工程の別の例を示す概略断面図である。
【図11】セパレータの反りを矯正する熱処理工程のさらに別の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1、4、5・・・カーボンセパレータ
11、4a、5a・・・反応ガス流路
12、4b、5b・・・冷却媒体流路
22・・・冷却媒体供給口
23・・・冷却媒体排出口
24・・・燃料ガス供給口
25・・・酸化剤ガス供給口
26・・・燃料ガス排出口
27・・・酸化剤ガス排出口
32・・・電極構造体
32a・・・アノード電極
32b・・・カソード電極
32c・・・電解質膜
70・・・電極構造体取り付け装置
71・・・ベース部
72・・・吸引吸着機
73・・・ストッパー
74・・・段差部
76、81・・・セパレータ
77・・・電極構造体
78・・・液状シール
80・・・恒温槽
82・・・おもり
83・・・平板
85・・・締具
90・・・ヒータ
Claims (6)
- 一対の電極及び固体電解質膜からなる電極構造体を一対のカーボンセパレータで挟み、前記電極構造体と前記カーボンセパレータを液状シールにより接合する燃料電池の製造方法において、前記カーボンセパレータの冷媒面(電極面とは反対側の面)が凹面となる反りを発生させることを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 請求項1に記載の燃料電池の製造方法において、上型に冷媒面となる冷媒流路の溝が形成され、下型に電極面となる反応ガス流路の溝が形成された金型を用い、前記金型に炭素及び樹脂を含有する材料を投入し、加圧圧縮することにより前記カーボンセパレータを成形し、次いで前記金型を開き、前記下型に残された前記セパレータの冷媒面を大気により急激に冷却することを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の燃料電池の製造方法において、前記電極構造体を前記カーボンセパレータに取り付ける前6時間以内に前記カーボンセパレータの反りを熱処理により矯正することを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 請求項3に記載の燃料電池の製造方法において、前記カーボンセパレータの縁に位置決め孔を開ける工程の前に前記カーボンセパレータの反りを熱処理により矯正することを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 請求項3又は4に記載の燃料電池の製造方法において、前記液状シールの硬化と同時に前記カーボンセパレータの反りを熱処理により矯正することを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 請求項3〜5のいずれかに記載の燃料電池の製造方法において、前記熱処理は、前記カーボンセパレータの表面を0.5〜10 kPaで加圧しながら、80〜150℃に加熱することを特徴とする燃料電池の製造方法。
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