JP4181339B2 - 燃料電池の組立て方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は反りの少ないセパレータ及びそれを用いた生産効率の高い燃料電池の組立て方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池は、リン酸型燃料電池等の燃料電池と比較して低温でかつ高出力密度の発電が可能であるため、自動車の電源をはじめ小型の移動型電源として期待されている。固体高分子型燃料電池は、通常スルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜等の高分子イオン交換膜からなる電解質膜とその両面に白金触媒を担持した触媒電極とから形成される電極構造体(膜・電極接合体)を、セパレータを介して積層したスタック等により構成される。
【0003】
これら構成部品の中でセパレータは燃料ガス(水素)と酸化剤ガス(酸素又は空気)とを分離すると共に、ガス及び冷却水を供給する流路を確保し、さらに燃料電池で発電した電気を外部へ伝達する役割を担っている。セパレータの構成材料としては、耐蝕性及び導電性を両立させる観点から炭素材料又は炭素複合材料が一般的に用いられている。またセパレータ表面には、炭素材料又は炭素複合材料に研削加工、モールド成形等を施すことによりガス及び冷却水の流路が形成されている。
【0004】
燃料電池は自動車への搭載等を目的として小型化、軽量化が進められており、このためセパレータも薄く軽いものが求められている。しかしながら、冷却水流路等の溝を有するセパレータは、その厚さを薄くすることにより薄肉部分で反りや割れが生じやすくなるという問題が発生する。このため、セパレータの外周にリブを立てる、又は溝を彫る等の加工を施し反りを抑える方法が知られているが、これらの方法は反りの抑制を目的としてセパレータの形状を設計するため流路設計が制約されるという問題がある。
【0005】
また、モールド成形では金型から取り出すと同時に反りが発生するため、成形直後に治具で常温まで冷却しながら反り矯正(プレスアニーリング)を行うことが知られているが、実際には燃料電池の組立てまでの保管中、又は別工程への移動時間中等に反りの程度が次第に大きくなり、燃料電池の組立てに不具合をきたす等の問題がある。またセパレータに液状タイプのシールを用いる場合、セパレータに直接機械を用いてシール剤を塗布するが、セパレータの反りにより塗布機のノズル先端とセパレータ塗布面との隙間を所定の距離に保てなくなるため、所望の線径が得られない等の問題がある。さらに反りが残った状態で積層し、締結荷重を印加するとセパレータが割れてしまう等の問題がある。このため燃料電池を組立てる前にセパレータの反りを測定し、選別しなければならないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、電極構造体の取り付け時に反りが少ないセパレータ及びそれを用いた生産効率の高い燃料電池の組立て方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、電極構造体をセパレータに取り付ける直前にセパレータの表面を加圧しながら加熱することによりセパレータの設計に制約を与えずに反り量を低減し、燃料電池組立てに不具合を生じないセパレータが得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、炭素粉末と熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂とを含む炭素複合材料からなる本発明の燃料電池用セパレータは、熱処理により反り量が1.1 mm以下に矯正されたことを特徴とする。
【0009】
電極構造体を炭素粉末と熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む炭素複合材料からなる1対の燃料電池用セパレータにより挟持してなる本発明の燃料電池の組立て方法は、前記電極構造体を前記セパレータに取り付ける前6時間以内に前記セパレータの反りを熱処理により矯正することを特徴とする。
【0010】
さらに、セパレータの縁に位置決め孔を開ける工程の前にセパレータの反りを熱処理により矯正するのが好ましく、電極構造体をセパレータに取り付け、液状シールを硬化させるとともにセパレータの反りを熱処理により矯正するのが好ましい。
【0011】
セパレータの反りを熱処理により矯正する工程は、セパレータの表面を0.5〜10 kPaで加圧しながら、80〜150℃に加熱して矯正するのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
[1] 燃料電池用セパレータ
燃料電池用セパレータは、少なくとも一方の面に反応ガス及び冷却媒体の流路をなす溝を有する。図1及び図2に本発明のセパレータの一例を示す。この例ではセパレータの一方の面に反応ガス流路11が形成され、他方の面に冷却媒体流路12が形成されている。反応ガス流路11は燃料ガス又は酸化剤ガス(酸素又は空気)の流路から構成され、電極との接触部分に形成されている。セパレータ1の外周部には供給・排出口からなる連通孔、ボルト孔13、及び位置決め孔14が形成されている。供給・排出口からなる連通孔は、燃料ガスの供給口24及び排出口26、酸化剤ガスの供給口25及び排出口27、並びに冷却媒体の供給口22及び排出口23から構成されている。セパレータ上の流路11、12と連通孔22〜27、ボルト孔13及び位置決め孔14の間、及び連通孔同士の間はシール30によって区切られている。
【0013】
シール30は、フッ素系、シリコーン系、エチレンプロピレン系等の有機ゴム等の弾性材料(シート状、Oリング状、接着硬化タイプの液状シール材等)、無機系シート(黒鉛、セラミック系繊維シート等)等の材料により形成される。なかでもカーボン系の脆い材料でできているセパレータの割れを防止し、気密性を確保するため有機ゴム等の柔らかく適度に反発力のあるシール材により形成されるのが好ましい。
【0014】
図3に示すように電極構造体32は、アノード電極32a、カソード電極32b及び電解質膜32cから構成されている。アノード電極32a及びカソード電極32bはガス拡散層と触媒層とからなり、ガス拡散層上には、カーボンブラックに白金粒子又は白金合金粒子を担持させてなる触媒粒子が塗布され、触媒層が形成されている。電解質膜32cは、パーフルオロアルキルスルホン酸等のフッ素系高分子膜、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン等のスルホン化非フッ素系高分子膜等により形成されたイオン交換膜であり、電解質膜32cの両側に触媒層が対向するようにアノード電極とカソード電極が接合して電極構造体32が構成されている。
【0015】
燃料電池は電極構造体32を1対のセパレータ31、33により挟持して形成される。一方のセパレータ31のアノード側の反応ガス流路31aには燃料ガスが供給され、他方のセパレータ33のカソード側の反応ガス流路33aには酸化剤ガスが供給される。このような反応ガスの供給の結果、電気化学的反応の進行に伴い電子が発生し、この電子を外部回路に取り出すことにより、電気エネルギーを発生する。またセパレータの裏面の冷却媒体流路31b、33bに冷却媒体を流し電池反応により発生する熱を除去する。
【0016】
本発明の燃料電池用セパレータは、構成材料として炭素粉末と樹脂(熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)とを含む炭素複合材料を用いる。炭素粉末は特に限定されず、例えば人造黒鉛、燐片状黒鉛、土塊状黒鉛、膨張黒鉛、キッシュ黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、コークス粉、これらの混合物等を用いることができる。
【0017】
樹脂は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フルフリルアルコール樹脂、セルロース等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキサメチレン、ポリアリレート、アラミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、これらの混合物等が挙げられる。
【0019】
燃料電池用セパレータは以下の方法により作製することができる。まず炭素粉末と樹脂(熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)を、炭素粉末/樹脂の体積比で好ましくは70/30〜98/2、より好ましくは85/15〜98/2となるように混合して混練する。混合はニーダー、加圧ニーダー、二軸スクリュー式混練機、ボールミル、ミキサー等の通常の混練機により行うことができる。その際樹脂をアルコールやエーテル等の適宜な有機溶媒に溶解して粘度を下げて混練した後、必要に応じて有機溶媒を除去する方法を用いてもよい。得られた混練物から任意の燃料電池用セパレータに成形する方法は、公知の成形方法を用いてよい。一般には生産性の観点からモールド成形によるのが好ましく、例えば加圧成形、射出成形、静水圧成形等を用いることができる。また一旦半硬化物のシートを形成した後、さらに加圧成形することにより所望の形状のセパレータを形成してもよい。
【0020】
燃料電池用セパレータは軽量化の観点から、強度を保持できる範囲でできるだけ薄い方が好ましい。しかし、炭素複合材料により薄く成形されたセパレータは反りを生じやすい。セパレータに反りが発生すると割れを生じやすく、また電極構造体を取り付ける際の位置精度が低下する。このため、本発明のセパレータは熱処理により反り量が1.1 mm以下に矯正されている。ここで反り量とは、図4に示すようにセパレータ41を反り方向を上にして定盤42上に置いたときセパレータの各隅の高さの平均値h1からセパレータの厚さh2を差し引いた値(h1−h2)を意味する。また図5はセパレータ41を反り方向を下にして定盤42上に置いたとき、セパレータの中央部の定盤からの高さ(以下「中央高さ」という)h3を示す。図6に示すように反り量は中央高さに相関し、セパレータの反り量が1.1 mmのとき中央高さは約2.3 mmとなる。従って、反り量又は中央高さを一定の範囲内に保つことによりセパレータの反りを一定の範囲内に抑えることができる。
【0021】
本発明ではセパレータの反り量を1.1 mm以下、好ましくは1.0 mm以下にする。これによりセパレータに塗布する液状シールの線幅の精度、及び電極構造体をセパレータに取り付けるときの位置精度が向上し、反応ガスや冷却媒体の漏れを防止することができる。さらに燃料電池を積層したときの割れを防止することができ、燃料電池の生産性を向上させることができる。
【0022】
[2] 燃料電池の組立て方法
燃料電池は電極構造体32を1対のセパレータ31、33で挟持することにより組立てる。通常この燃料電池を複数積層し、燃料電池スタックを形成した後両側にエンドプレートを装着する。さらにボルト孔13によって形成された連通孔にボルトを通し、両側から締め付けて燃料電池スタックを固定する。
【0023】
燃料電池の組立て方法は公知の方法を適宜採用してよいが、(a) 熱処理により成形したセパレータの反り矯正を行う工程と、(b) 機械加工によりセパレータの外周部に供給・排出口(冷却媒体、燃料ガス及び酸化剤ガス用)、ボルト孔、及び位置決め孔を開ける工程と、(c) セパレータ表面を荒す表面処理工程と、(d) 煮沸によりセパレータ内に含まれる不純物を除去する工程と、(e) 熱処理によりセパレータの反り矯正を行う工程と、(f) 電極構造体をセパレータに取り付ける工程と、(g) 液状シールの硬化とともに反り矯正を行う工程とを有するのが好ましい。
【0024】
セパレータの外周部に供給・排出口(冷却媒体、燃料ガス及び酸化剤ガス用)、ボルト孔、及び位置決め孔を形成する工程はセパレータをモールド成形した後、ドリル等の機械加工により行う。このため成形後の反りの影響を受け位置精度が低下しやすい。従って位置決め孔等を開ける前に予め熱処理により反りを矯正しておくのが好ましい。表面処理工程は研磨処理等の通常の方法により行う。セパレータ表面の樹脂を研削することにより電極との接触抵抗を低減することができる。煮沸工程はセパレータを加熱水に浸漬してセパレータ中の不純物を溶出させ、加熱水をイオン交換樹脂に通すことにより不純物を除去する。煮沸工程により汚染された冷却媒体を原因とする短絡の発生を防止することができる。
【0025】
モールド成形したセパレータは熱処理を行うことにより一旦反りを矯正することができるが、その後上記工程を経ることにより再び反り量が増大してくる。またセパレータの反り量はロットによっても異なる。このため、本発明の燃料電池の組立て方法は、電極構造体をセパレータに取り付ける前6時間以内に熱処理によりセパレータの反りを矯正する工程を行う。このように電極構造体をセパレータに取り付ける直前に熱処理を行うことにより、すべてのセパレータの反り量を電極構造体取り付け時に1.1 mm以下にすることができ、これにより電極構造体の位置精度を向上させることができる。
【0026】
反り矯正は電極構造体をセパレータに取り付ける前6時間以内に少なくとも一度行えばよい。従って、位置決め孔等を開ける機械加工前の反り矯正を兼ねてもよいし、これらの工程の前にそれぞれ反り矯正を行ってもよい。
【0027】
図7に本発明の一実施例による燃料電池用セパレータの反り矯正後の戻り量の経時変化を示す。セパレータ矯正後反り量は経時的に増大し、室温7日間で約0.6 mm増大する。従って、一度反り矯正した後保管等により反り量が1.1 mmを超えた場合は、電極構造体を取り付ける前6時間以内に再度反り矯正を行うことが必要となる。このような再度の反り矯正は必要に応じて何度でも行ってよい。
【0028】
図8にセパレータの表面に液状シールを塗布する工程の一例を示す。金型を用いてセパレータを成形すると、金型開放時にセパレータの一方の面と他方の面との間で温度差が生じ、金型が開放された方向に反りを生じる。セパレータに反りが生じたまま液状シールを塗布すると、塗布装置のノズルとセパレータの距離が不均一になり、シールの塗り幅に誤差を生じる。このため、例えば図8(a)に示すようにセパレータ51を反り方向を下にして(MEA面を上にして)平板53上に置き、背面にセパレータより小さいおもり52を載せてセパレータ51を平坦にした後、図8(b)に示すように塗布機のノズル54をセパレータ51から好ましくは0.3〜1.1 mm、より好ましくは0.5〜1.0 mmの高さに設置し、セパレータ51の外周部(おもりの外側)の所定の位置に液状シールを塗布する。
【0029】
図9に電極構造体の取り付け工程の一例を示す。装置70はセパレータ76を載せるベース部71と、その上部に設けられた吸引吸着機72とからなり、吸引吸着機72には吸引により電極構造体77を吸着させるための段差部74が設けられている。ベース部71の両側にはストッパー73が設置され、ストッパーの高さを調節することによりセパレータ76上に塗布した液状シール78と吸引吸着機72に吸着された電極構造体77との間の間隔Lを一定に設定できるようにしている。電極構造体の取り付け工程は、まず、吸引吸着機72の段差部74の所定の位置に電極構造体77を吸着させ、表面に液状シール78を塗布したセパレータをMEA面を上にしてベース部71の上に設置する。次に吸引吸着機72を下降させ、電極構造体77をセパレータ76上に載置する。このとき電極構造体77の膜部分がセパレータ76に形成された反応ガスの供給口及び排出口を塞ぐことなく、かつ液状シールによって燃料電池内を密閉できるように電極構造体77をセパレータ76上の所定の位置に正確に載置することが必要である。そのためには電極構造体を載置するときに間隔Lを0.3〜1.1 mmとするのが好ましく、0.5〜1.0 mmとするのがより好ましい。従って、ストッパー73の高さを間隔Lが上記範囲となるように設定し、ストッパー73の高さまで吸引吸着機72を下降させ、吸引を止めて電極構造体77をセパレータ76上の所定の位置に載置する。
【0030】
ここでセパレータが反りを有する場合、ベース部71上に設置したセパレータ76の電極構造体77を載置する側の面(MEA面)は通常中央が凸に湾曲する。反り量が大きいと電極構造体をセパレータに取り付けるときにセパレータの中央部により電極構造体77が吸引吸着機72に押し付けられ、電極構造体77が吸引吸着機72から離れにくくなる。また反りによりセパレータが歪むため取り付けた電極構造体77の位置精度が悪くなる。このため電極構造体を取り付ける直前にセパレータを熱処理し、セパレータの反り量を1.1 mm以下、好ましくは1.0 mm以下にする。
【0031】
熱処理により反りを矯正する工程は、セパレータの表面を加圧しながら加熱して反り方向と逆方向へたわませることにより行うのが好ましい。具体的には、セパレータの表面を好ましくは0.5〜10 kPa、より好ましくは1〜5kPaで加圧し、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜130℃で2〜10時間加熱して行う。
【0032】
例えば、図10(a)に示すようにセパレータ81を反り方向を下にして恒温槽80内の平板83上に設置し、セパレータ81の背面に2〜5kgのおもり82を載せ、1〜5kPaで加圧しながら加熱することにより反りを矯正するのが好ましい。その際セパレータ81を反り方向を下にして複数枚重ね、その上におもり82を載せて行ってもよい。このようにセパレータの反り方向の背面から荷重を加えながら加熱することにより反りを効果的に矯正することができる。
【0033】
加圧手段はおもり82に限られず、例えば図11に示すように恒温槽80内にセパレータ81を平板83を介して複数枚立てて並べ、締具85により反り方向の背面から締め付けて加圧してもよい。加圧はセパレータのサイズより大きい平板により行うのが好ましい。これによりセパレータの形状に制約されず反り矯正の効果を発揮することができる。加熱手段は特に制限されず、所定の温度範囲に保持できるものであればよい。例えば、図12に示すようにセパレータ81をヒータ90上に置いて加熱してもよい。
【0034】
さらにセパレータの反り矯正温度及び時間が液状シールの硬化条件とほぼ同じであるため、恒温層80の温度設定を変えずに液状シールの硬化とセパレータの反り矯正を同時に行うことができる。例えば、電極構造体を取り付けたセパレータにさらに別のセパレータを取り付けて燃料電池を組立てた後、図10(b)に示すように恒温槽80内で電極構造体87を挟持した一対のセパレータ81の上におもり82を載せ、加圧しながら加熱し液状シール86の硬化と同時に反り矯正を行うのが好ましい。このように液状シールの硬化時に反り矯正を併せて行うことにより、電極構造体を挟みそれぞれ外側に反り上がるセパレータの反りを矯正することができる。
【0035】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
(1) セパレータの作製
炭素粉末として燐片状黒鉛粉末(平均粒径50μm)及び熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を黒鉛/樹脂=90/10の体積比で混合し、加圧ニーダーにより十分に混練した。次に得られた混練物をセパレータ成形用金型内に投入し、加圧成形することによりサイズが312×191×1.2 mmで一方の面にガスの給排流路を有し、他方の面に冷却水の給排流路を有するセパレータを作製した。
【0037】
得られた10枚のセパレータを図4に示すように反り方向を上にして定盤42上に置き、セパレータ41の各隅の高さ及びセパレータの厚さをレーザー変位計(キーエンス社製)により測定し、各隅の高さの平均値h1からセパレータの厚さh2(1.2 mm)を差し引いて反り量(h1−h2)を求めた。結果を図13に示す。反り矯正をしていないセパレータの反り量は0.3〜3.0 mmであり半数以上が1.1 mmより大きな値を示した。
【0038】
(2) 反り矯正
図10(a)に示すように、(1)で作製したセパレータ81を反り方向を下にして恒温槽80内の平板83上に置き、セパレータの背面に4kgのおもり82を載せ、荷重を加えながら120℃で3時間加熱した。矯正後のセパレータの反り量を(1)と同様にして測定した。結果を図13に示す。反り矯正したセパレータの反り量は0.2〜0.9 mmであり全数が1.1 mm以下であった。
【0039】
熱処理前の反り量が2.8 mm、熱処理後の反り量が0.3 mmのセパレータを室温で10日間保管し、反り量を経時的に測定したところ反り量の増大が認められた。結果を表1及び図7に示す。次に保管後のセパレータについて上記と同様の熱処理を行った。反り矯正したセパレータの反り量を(1)と同様にして測定したところ0.3 mmであった。
【0040】
【表1】
Figure 0004181339
【0041】
反り矯正したセパレータを用い、熱処理後6時間以内に電極構造体を取り付ける工程を行った。まず図8に示すようにセパレータの表面(MEA面)に塗布機により厚さ約0.8 mmの液状シールを塗布した。次に図9に示すようにセパレータ76(厚さ1.2 mm)を装置70のベース部71(高さ12 mm)上の所定の位置にMEA面を上にして置き、高さ20 mmのストッパー73をベース部71の両側に設置した。次いで吸引吸着機72の段差部74(高さ4mm)に電極構造体77(厚さ約0.7 mm)を設置し、吸引吸着機72で吸引した。次に吸引吸着機72をストッパー73の高さまで下降させ、吸引を止めて電極構造体77をセパレータ76上に載置した。電極構造体77はセパレータ76の所定の位置に精度よく載置されていた。
【0042】
電極構造体を取り付けたセパレータにさらに液状シールを塗布した別のセパレータを取り付け、一対のセパレータで電極構造体を挟持して燃料電池を組立てた。次にこの燃料電池を図10(b)に示すように恒温槽内の平板上に置き、セパレータに4kgのおもりを載せ、120℃で3時間加熱して液状シールを硬化させるとともに、反り矯正を行った。硬化処理したセパレータは反り量の増加が見られなかった。
【0043】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の燃料電池用セパレータは、熱処理により反り量が1.1 mm以下に矯正されているため、セパレータ上に設けられた電極構造体は優れた位置精度を有し、またセパレータに割れを生じることがない。そのため生産性よく燃料電池を組立てることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による燃料電池用セパレータの一方の面を示す図である。
【図2】 本発明の一実施例による燃料電池用セパレータの他の面を示す図である。
【図3】 電極構造体を本発明の燃料電池用セパレータで挟持した燃料電池を示す概略断面図である。
【図4】 反り量を示すセパレータの概略断面図である。
【図5】 中央高さを示すセパレータの概略断面図である。
【図6】 反り量と中央高さとの関係を示すグラフである。
【図7】 反り矯正後のセパレータの反り戻り量を示すグラフである。
【図8】 液状シールの塗布工程の一例を示す概略断面図である。
【図9】 電極構造体の取り付け工程の一例を示す概略断面図である。
【図10】 セパレータの反りを矯正する熱処理工程の一例を示す概略断面図である。
【図11】 セパレータの反りを矯正する熱処理工程の別の例を示す概略断面図である。
【図12】 セパレータの反りを矯正する熱処理工程のさらに別の例を示す概略断面図である。
【図13】 実施例1において熱処理前後のセパレータの反り量を示すグラフである。
【符号の説明】
1、31、33・・・セパレータ
11、31a、31b・・・反応ガス流路
12、31b、33b・・・冷却媒体流路
22・・・冷却媒体供給口
23・・・冷却媒体排出口
24・・・燃料ガス供給口
25・・・酸化剤ガス供給口
26・・・燃料ガス排出口
27・・・酸化剤ガス排出口
32・・・電極構造体
32a・・・アノード電極
32b・・・カソード電極
32c・・・電解質膜
70・・・電極構造体取り付け装置
71・・・ベース部
72・・・吸引吸着機
73・・・ストッパー
74・・・段差部
76、81・・・セパレータ
77・・・電極構造体
78・・・液状シール
80・・・恒温槽
82・・・おもり
83・・・平板
85・・・締具
90・・・ヒータ

Claims (3)

  1. 電極構造体を炭素粉末と熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む炭素複合材料からなる1対の燃料電池用セパレータにより挟持してなる燃料電池の組立て方法において、前記セパレータの反りを 0.5 10 kPa で加圧しながら、 80 150 ℃で第1の熱処理することにより反り量を 1.1 mm 以下に矯正する工程、その後6時間以内に前記電極構造体を前記セパレータに取り付ける工程、及び次に液状シールを硬化させるとともに前記セパレータの反りを 0.5 10 kPa で加圧しながら、 80 150 ℃で第2の熱処理により反り量を 1.1 mm 以下に矯正する工程を有することを特徴とする燃料電池の組立て方法。
  2. 請求項1に記載の燃料電池の組立て方法において、前記第1の熱処理工程と前記電極構造体をセパレータに取り付ける工程との間に、機械加工によりセパレータの外周部に供給・排出口、ボルト孔、及び位置決め孔を開ける工程を有することを特徴とする燃料電池の組立て方法。
  3. 請求項1又は2に記載の燃料電池の組立て方法において、前記第1の熱処理工程と前記電極構造体をセパレータに取り付ける工程との間に、前記セパレータの表面を荒らす表面処理工程、及び煮沸によりセパレータ内に含まれる不純物を除去する工程を有することを特徴とする燃料電池の組立て方法。
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