JP2004053345A - 平面型フローセル、その製造方法、及び測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】石英ガラス1の表面にクロム膜2を形成し、石英ガラス表面にフォトエッチングで流路3となる溝を形成する。流路3の形状は渦巻き状にして一定面積内の流路長が長くなるようにする。鏡面加工した石英ガラスを蓋として溶着し、フローセルを形成する。流路3以外はクロム膜によって遮光され、流路3部だけに光が透過するようにする。照射光を流路3に対して直角に照射し、一定面積の光を受光することにより微量の試料によって測定可能とすると共に機器のマイクロ化を可能とする。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石英ガラス等の透明体で形成したフローセルに関し、特に、液体クロマトグラフ装置により分離された物質を光により検出、確認する液体、気体測定用石英ガラスフローセル、その製造方法及びフローセルを使用した測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、電気泳動等の測定において、検出感度を上げるため、従来の角型フローセルでは、図4に示すようにフローセルの流路に平行に光を照射し、光が透過する距離を延ばして検出感度を上げていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、測定サンプルの少量化に対応して機器のマイクロ化が進められ、フローセルの小型化が図られてきているが、サンプルが少量になると検出感度が低下し、また、従来の製造法ではフローセルをマイクロ化することが困難であった。
本発明は、微量試料であっても十分な検出感度が得られるようにすると共に、マイクロ化した平面型フローセルを効率的に製造できるようにするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
フローセルの流路以外の部分を遮光し、流路部分だけ光が透過するようにすると共に、フローセルを平面型として照射光を流路に対して直角に照射し、また、照射光をある程度の面積の広がりを有するようにすることにより、従来の流路に平行に照射した場合と同じ検出感度が得られるようにしたものである。
【0005】
フローセルの材質は、遠紫外線、紫外線、可視光線、赤外線及び遠赤外線の全域、またはその一部帯域の光透過性を有する透明ガラスが好ましく、特に、透過特性に優れた石英ガラスとすることが好ましい。
遮光部は酸化クロム及び金属クロム、また、シリコン等からなる複合膜を石英ガラス表面に形成したものである。遮光膜は、照射光の波長を遮光すると共にエッチングによって石英ガラス表面に試料の流路となる溝を形成できるものであれば、金属、酸化金属、非金属、酸化非金属等どのような物質でも使用できる。
【0006】
また、石英ガラス面に遮光膜を形成せず、黒色ガラスを石英ガラスに接着して遮光部とすることも可能である。
黒色石英ガラスは、膨張係数が透明石英ガラスとほぼ同一であり、両者の接着性が良好なので、接合してフローセルを形成しても剥離の恐れがなく、また、強固な接合状態が得られ、歪が残存しない。
黒色石英ガラスは、透明石英ガラスと加工性が変わらず、研削、研磨などの機械加工条件を同一にできるという点で、他の光遮光材料と比較して好ましく、更に、化学的安定性が高く、加工、洗浄によって変質することがなく、加工が容易であり、成分の溶出がないので、各種の光学製品に対し影響を及ぼすことがない。
【0007】
接合方法は、透明石英ガラスと黒色石英ガラスの接合面とを予め鏡面加工し、双方の接合面を合わせ、900℃〜石英ガラスの軟化点(約1300℃)に加熱して溶着して一体接合する。
このとき、両者を加圧すると溶着温度を下げることができると共に、強固な接合状態を得ることができる。
酸水素火炎や電気加熱による溶接方法では、加熱温度が1,700〜1,800℃といった石英ガラスの軟化点以上の温度が必要となるため、接合部は流動変形を起こして面ダレなどを生じ、要求される一体ものの厚さや透明部と黒色部との夫々の厚さの制御、まして0.5mmや1mm厚の薄物を溶着する場合などには、超高寸法精度の制御や、接合部の境界面の制御は不可能である。
【0008】
接合面は、光透過部と光遮蔽部分とに別れる境界面となるので、フローセル等の光学部品を機械・装置にセットするときの位置決めの基準面ともすることができる。そして、黒色石英ガラスは、失透性がなく、かつ、ガラスとして均質であり、透明石英ガラスと接合しても透明石英ガラスを失透させるなどの悪影響を与えることがない。
【0009】
黒色石英ガラスは、特許第3,112,111号公報、及び特許第3,156,733号公報に開示されているように、着色源としてTi,Zr,V,Cr,Mo,Co,Fe,Mn,Nb,及びSiCの群から選ばれた少なくとも1種の金属成分を含むものとすることが好ましい。なかでも、黒色化に対して安定性があり、1mm以下の薄い板厚のものでも、遠紫外域から遠赤外域に至る広範囲な領域において遮光性に優れていることから、Nb,SiCを着色源とすることが好ましい。
黒色石英ガラスの製造方法は、SiCの場合は、炭化珪素をシリカ微粉末に炭素量換算で0.05〜0.3重量%で混合して原料微粉末とし、それを成型、焼結してガラス化させると、色むらがなく耐蝕性に優れた黒色ガラスを得ることができる。
Nbの場合は、ニオブ塩化物をアルコール溶液中に溶解し、この溶液をシリカ粉が湿潤状態となるように混合し、乾燥させて微粉末として還元雰囲気中で高温熱処理した後に、溶融ガラス化することにより、185〜25,000nmの波長域で、1mm厚さでの透過度を測定してもほとんど零であるという遮光性に優れた黒色石英ガラスを得ることができる。
【0010】
黒色石英ガラスの厚みは、遮光性及び溝やザグリなどの追加加工をするため、0.01mm以上が好ましく、また、光透過性を付与するために、最大、加工品本体(透明石英ガラス)までの厚さまで加工することができる。
黒色石英ガラスの厚みは、好ましくは0.1mm〜加工品本体厚さである。
【0011】
クロム膜(酸化クロム−金属クロム複合膜)、あるいは、黒色石英ガラスを遮光部とした石英ガラス製フローセルは、従来の酸化チタン系の遮蔽膜を形成したフローセルと比べて、剥がれにくく、遮光性に優れている。
なお、用途によっては遮光は必ずしも必要ではなく、感度が要求されない場合には遮光部を形成しなくてもよい。
【0012】
遮光部が酸化クロム及び金属クロムの複合膜の場合、通常のスパッタリングで成膜する。透明石英ガラスと金属クロムとの膨張係数の差異による剥離を防止するため、中間干渉層として酸化珪素成分を順次少なくなるようにスパッタ条件を設定して酸化クロム層から最終的に金属クロム層を透明石英ガラス表面にコーティングする。
スパッタリングの条件は、例えばプレーナーマグネトロンスパッタ装置を使用する場合は、透明石英ガラスを装置内へ設置し、真空槽内部を3×10−3Paまで排気し、スパッタ用ガスとして、Ar、N2 、O2を導入すると共に、透明石英ガラスを回転台に載せ、10rpmで回転させる。クロムターゲットに負電圧をかけ、ターゲットと透明石英ガラスの間にグロー放電を発生させ、スパッタ電力700wで酸化クロム層をまずコーティングする。次いで、スパッタ電力を上げていきながら必要な膜厚となるように金属クロム層を成膜する。
なお、酸化クロム膜は、透明石英ガラスに対して圧縮応力となる内部応力を持ち、また金属クロム膜は、引張り応力となる内部応力を持つことから、両者を一定の膜厚比となるように組合せ、応力を互いに打消し合う構造とすると膜ストレスが解消されて高平面度を保持した膜が形成される。
【0013】
酸化クロム及び金属クロムの複合膜の厚みは、遮光性を持つ50オングストローム以上が必要である。この場合、酸化クロムを主体とする膜であっても、金属クロムを主体とする膜であっても、その比率に関係なく、複合膜の厚さは、遮光性の面から50オングストローム以上が必要である。そして、膜本体の変形、膜剥がれなどの悪影響を受けない程度の厚さより薄いことが好ましく、複合膜の厚みは、好ましくは50〜10,000オングストロームであり、より好ましいのは500〜2,000オングストロームである。 なお、成膜法は、蒸着法でもかまわない。
次に、蓋とする透明石英ガラスを接着するため、金属クロム膜上にスパッタリングでSiO2膜を形成し、透明石英ガラス板を押しつけ、加圧しながら加熱して流路を形成する。
【0014】
【実施例】
液体クロマトグラフ用のフローセルの平面図を図1に示す。
図2の断面図に示すように2つの透明石英ガラス1、11を溶着してフローセルの外形寸法となるように切削加工するものであり、接合面は鏡面加工をするため、その加工しろ分だけ予め大きくした寸法としてある。
2つの透明石英ガラス1、11は切削加工後に焼仕上げをおこなう。後に鏡面仕上げした面を電気加熱接合する際に、鏡面と接する面がマイクロクラックなどを有する砂目面であると、加圧接合の際にマイクロクラックの伸展などの影響で、接合強度が低下する恐れがあるため、少なくとも鏡面と接するエッジ部分を酸水素炎により焼仕上げする。焼仕上げ後は電気加熱接合時の歪などの応力を除去し、また、研磨時の破損防止のため、アニール処理をおこない、接合部分となる平面をラッピング、ポリシングして鏡面とする。
【0015】
透明石英ガラス1板上に金属クロム膜2をスパッタリングにより形成し、フォトレジストをスピンコートし、流路形状を描いたフォトマスクを設置して流路をフォトレジスト上に露光描画し、パターニング形成をおこなう。
流路部分の金属クロム膜2をKOHエッチングにより除去して透明石英ガラス1を露出させ、この部分をフッ酸でエッチングをおこない、流路3となる溝を石英ガラス1表面に形成する。アルゴン中RIE(反応性イオンエッチング)によって金属クロム膜の流路3への張り出し(傘)を除去した。
フッ酸によるウェットエッチングの代わりに、SF6とCHF3などのフッ素系ガスとArガス等との混合ガス中で高周波プラズマを用いたドライエッチングで溝を形成してもよい。
【0016】
更に、KOHにより溝に残るシリコンを除去した後、レジストを除去する。
その後、石英ガラス(SiO2膜)を金属クロム膜上にスパッタリングして石英ガラス製の蓋とのより強固な密着が可能なようにし、透明石英ガラス11を圧力を加えながら加熱して接合し、流路3を形成する。
溝を形成した部材と蓋となる部材の鏡面研磨面を合わせ、電気炉内で加圧加熱して接合し、流路3を形成して平面型のフローセルを完成させる。
【0017】
接合温度は900〜1300℃とする。接合強度は温度と圧力に比例するので、圧力は温度に応じて、例えば1000℃のときは40Kg/cm2(3.92MPa)、1200℃のときは20Kg/cm2(1.92MPa)とする。また、接合部材の材質、形状等に応じて温度と圧力を適宜決定する。
【0018】
接合面が清浄でないと接合強度が低下するので、接合は、清浄雰囲気下でおこなう必要がある。このため溶着する電気炉の炉内雰囲気を高純度の酸素ガス、窒素ガス、準医学用空気、ヘリウムガス、アルゴンガス、塩素存在下のガスのいずれかの清浄なガス雰囲気とし、接着強度を増大させ、接着痕や炉内汚染からの金属不純物による接合面での蛍光の発生を抑止する。
また、接合面に予め液状の界面可溶性の活性剤(エポキシ樹脂などの有機系剤やフッ化水素酸などのガラス可溶性剤など)を滴下、拡散しておくことも、接合界面を活性化させると共により均一に密着させ接合強度を高める効果がある。
加熱接合時に石英ガラス表面に傷がつくことがあるので、この部分は再研磨をおこなう。石英ガラスの接合には、場合によっては低温での接合により再研磨をしない場合もある。
【0019】
なお、断面半円形の溝を形成した2つの石英ガラス部材を用い、鏡面加工面を合わせて円形の流路が形成されるようにし、流路3の断面を大きなものとしてもよい。
【0020】
流路3は、上述したリソグラフィー技術を用いたエッチング加工のほか、用途に応じて研削加工によって形成することもできる。
研削加工は、シリコンウエハーなどを切削加工する際などに使用される先端が円形のR形状のダイヤで溝加工をおこなう。温度制御などの研削条件を安定させることで、1,000分の数ミリ程度の寸法公差の溝であれば、製造することが可能である。
石英ガラス部材は、失透性、すなわちガラスの結晶化がなく、かつ、ガラスとして均質なので、研磨、研削、エッチングによって得られる表面が滑らかになるという大きな利点をもっており、この研削加工により、高精度かつ良好な光の透過に必要な表面粗さを持つ溝が得られる。
【0021】
流路3は、直線とは限らず、リソグラフィー技術を用いた溝形成では、任意の形状の流路3を形成することができる。図1に示すように、渦状にして一定の面積内に配置される流路長をより長くし、更に、流路3以外の部分を遮光することによって感度を上げる。流路3全体に特定波長の光を垂直に照射し、流路3を透過した光を面(一定面積)で受光して吸光度を測定するので、微量試料であっても高感度、高精度な測定が可能となる。
【0022】
実験例
石英ガラス表面上に酸化クロム膜をスパッタリングで形成し、更に金属クロムをスパッタリングで形成した。この金属クロムの表面にフォトレジストを塗布し、流路をマスクにより描画した。ウェットエッチングによって石英ガラス表面に流路となる溝を形成した。
完成した流路パターン表面に石英のスパッタリングをおこない、接合面を研磨して鏡面とした石英ガラスを加圧しながら1,100℃に加熱して溶着した。
【0023】
図4に示すような、光の入射面及び出射面となるセルの対向面を、夫々試料の流路に相当する部分を透明石英ガラスとして透光部を形成し、他の部分を黒色石英ガラスとして遮光部とした12.5×12.5×47(mm)の標準枝付きフローセルに液体試料を入れ、分光光度計で300nmの波長で、流路に対して平行に光を照射して透過率を測定する従来の測定方法で測定し、吸光度79.2%の液体を基準にした。
実験例のフローセルに注射筒で標準フローセルに注入したものと同一液体試料を注入し、受光素子であるフォトマルの吸光度に対する電圧を求めて、その点を吸光度79.2%とした。同様の方法で吸光度21.3%の液体を基準にして、21.3%の点を決定した。
この2点により受光部の測定値の補正をし、実験例のフローセルを使用し、従来の手法で測定し吸光度52.4%を示す物質を測定したところ、以下のようになった。
【0024】
【表1】
流路幅がミリメートル単位の大容量の試料が必要な従来の角型標準フローセルで測定した場合と、流路幅がミクロン単位の極微量な試料の本発明の平面型フローセルで測定した場合でも、数値が同じであり、測定結果は変わらない。
【0025】
【発明の効果】
流路以外の部分を遮光することによって測定感度を向上させ、少量の試料であっても高精度で測定することが可能となった。
フォトリソグラフィーによって石英ガラス面に溝を形成する方法によって、微細な流路の形成を可能とし、測定機器のマイクロ化にフローセルが対応できるようにした。また、平面型フローセルとして液体、気体の流路を直線以外にも自由な形状に設計することを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフローセルの平面図。
【図2】フローセルの断面図。
【図3】遮光部を黒色ガラスとしたフローセルの斜視図。
【図4】従来の角型フローセルの断面図。
【符号の説明】
1 石英ガラス
11 石英ガラス(蓋)
12 黒色ガラス
2 遮光部(クロム膜)
3 流路(溝)
Claims (6)
- 流路以外の部分を遮光して流路部分だけに照射光が透過するようにした平面型フローセル。
- 請求項1において、フローセルは石英ガラス製であり、遮光部が、石英ガラス面に金属もしくはその酸化物からなる複合膜を形成したものである平面型フローセル。
- 請求項2において、遮光部分が、黒色ガラスであり、透明石英ガラスに黒色ガラスを接着したものである平面型フローセル。
- フォトリソグラフィーによって金属膜を形成した石英ガラス表面に溝を形成し、石英ガラスで蓋をして流路を形成する平面型フローセルの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかの平面型フローセル流路に対して光を直角に照射する測定方法。
- 請求項5において、照射光が一定の広がりを有するものである測定方法。
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