JP2004052929A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Shinkatsu Kuroishi
黒石 真且
Masanori Iritani
入谷 昌徳
Naoki Moriguchi
森口 直樹
Toshishige Sano
佐野 敏成
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Abstract

【課題】伝達ローラと入力側又は出力側回転体との接触部分での発熱量に対応して、適切な潤滑冷却液を上記の接触部分に供給できるトロイダル型無段変速機を得る。
【解決手段】出力ディスク24とパワーローラ50との接触部分に潤滑油を噴き付ける二股の噴射ノズル70の基端には、調節バルブ72が設けられている。調節バルブ72はコントローラ74に接続されており、更に、コントローラ74はピストン64周りのトラニオン60の回動角度を検出する角度センサ76に接続されている。コントローラ74は角度センサ76が検出したトラニオン60の回動角度、すなわち、パワーローラ50の回動角度に応じて調節バルブ72を操作して、変速比が略1となるパワーローラ50の回動位置を境に角度変化に応じて噴射ノズル70への潤滑油の供給量を減少させる。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の変速機として用いられるトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の車両の変速機には所謂自動変速機が多く採用されている。また、自動変速機には様々な構造が適用されているが、近年では自動変速機における変速効率の更なる向上を目的として変速比を連続的に変化させる無段変速機が開発されており、その一例としては、所謂トロイダル無段変速機がある。
【0003】
トロイダル無段変速機は、駆動源側(例えば、トルクコンバータ側)からの回転力を受けて回転するシャフトに、入力ディスクが一体的且つ同軸的に取り付けられている。入力ディスクの軸方向中間部よりも一端側では、外周面が軸方向一方の側へ向けて略凹形状に縮径されている。また、入力ディスクの軸方向一端側側方には、出力ディスクがシャフトに同軸的に支持されている。出力ディスクは入力ディスクとは異なり、シャフトに対して相対回転自在とされている。出力ディスクは入力ディスクの軸方向端側と他端側を反転させた形状に近く、出力ディスクの軸方向中間部よりも入力ディスク側では、外周面が軸方向一方の側へ向けて略凹形状に縮径されている。
【0004】
これらの入力ディスクと出力ディスクとの間には、一対のパワーローラがシャフトを介して互いに対向する如く配置されている。各パワーローラは、シャフトの軸方向に対して傾斜した方向を軸方向として、この軸周りに回転自在にトラニオンに支持されている。また、各パワーローラは外周一部が入力ディスクの凹状部分に接触しており、別の外周一部が出力ディスクの凹状部分に接触している。
【0005】
したがって、入力ディスクが回転すると、入力ディスクとパワーローラとの間の摩擦でパワーローラが回転し、更に、パワーローラと出力ディスクとの間の摩擦で出力ディスクが回転する。
【0006】
このような構成の場合、パワーローラの回転速度は、入力ディスクとの接触部分における回転周速度に対応する。但し、パワーローラは入力ディスクの凹状部分(縮径部分)に接触しているため、接触位置により入力ディスクの回転周速度が異なるため、接触位置が変化することでパワーローラの回転速度は変化する。
【0007】
これに対して、出力ディスクのパワーローラとの接触部分における回転周速度はパワーローラの回転速度に対応する。但し、パワーローラは出力ディスクの凹状部分(縮径部分)に接触しているため、接触位置が変わることで出力ディスクの回転角速度が変化する。
【0008】
したがって、パワーローラを入力ディスク及び出力ディスクの双方に接触させたままの状態で入力ディスク及び出力ディスクとパワーローラとの各接触位置を変化させることで、入力ディスクの回転速度に対する出力ディスクの回転速度の比率、すなわち、変速比が連続的に変化する。
【0009】
ところで、以上のようなトロイダル型無段変速機において、パワーローラは常に両ディスク(すなわち、入力ディスク及び出力ディスク)に接触して回転する。このため。パワーローラと両ディスクとの接触部分には摩擦による発熱が生じる。また、パワーローラを支持するトラニオンにはスラストベアリングが設けられており、このスラストベアリングで円滑にパワーローラを回転させているが、パワーローラを回転させることで、スラストベアリングとパワーローラとの間に摩擦熱が生じる。
【0010】
このような摩擦による発熱は、パワーローラや両ディスクの耐久性やグロススリップの発生という観点からみると好ましくない。このため、潤滑油によってパワーローラを冷却することが考えられており、その一例が実開平1−119966号や特開2001−132808号等に開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
実開平1−119966号に開示されている構造では、トラニオンに潤滑油の供給路が形成されている。この供給路は一端がパワーローラの回転軸方向に沿ってパワーローラと対向する側のトラニオンの壁部で開口しており、この開口端から潤滑油をスラストベアリングに供給している。
【0012】
また、スラストベアリングでのパワーローラの発熱量は変速比によって変化する(図4参照)ことから、この供給路にバルブを設け、供給路に流れる潤滑油の流量を変化させている。
【0013】
このように、実開平1−119966号に開示された構造では、潤滑油をスラストベアリングに供給することで冷却を行なっている。しかしながら、このような構造の場合には、パワーローラと両ディスクとの接触部分での熱を充分に冷却することができず、適切且つ充分な冷却という観点からすると、改善の余地が多分に残されている。
【0014】
一方、特開2001−132808号に開示された構造では、給油ポンプで吸い上げられた潤滑油は、パワーローラと両ディスクとの接触部分に供給されている。また、給油ポンプから吸い上げられた潤滑油が通過する給油通路には流量調整弁が設けられており、エンジンの回転数やアクセルの開度に応じて制御機が流量調節弁を開閉してパワーローラと両ディスクとの接触部分に対する潤滑油の供給量を調整している。
【0015】
しかしながら、パワーローラと両ディスクとの接触部分での摩擦による発熱量は変速比により大きく変化する。仮に、発進加速時や高速巡航時等における発熱量を少なくするように設定した場合、変速比が実質的に1となった状態をピークに減少するように発熱量が変化すると考えられる(図4参照)。すなわち、エンジンの回転数と発熱量とは必ずしも対応しない。このため、特開2001−132808号に開示された構造では、充分な冷却が行なわれなかったり、また、過剰に潤滑油を供給することで動力損失が生じ、変速効率が低下するという恐れがある。
【0016】
本発明は、上記事実を考慮して、パワーローラ等の伝達ローラと両ディスク等の入力側又は出力側回転体との接触部分での発熱量に対応して、適切な潤滑冷却液を上記の接触部分に供給できるトロイダル型無段変速機を得ることが目的である。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のトロイダル型無段変速機は、自らの軸心周りに回転自在に設けられると共に、前記軸心方向一端に当該軸心方向一方への向きに対して前記回転の半径方向外方へ傾斜した入力面が形成された入力側回転体と、前記入力側回転体の前記軸心方向一方の側で前記入力側回転体から離間し、前記入力側回転体に対して同軸的で且つ回転自在に設けられると共に、前記軸心方向他端に当該軸心方向他方への向きに対して半径方向外方へ傾斜した出力面が形成された出力側回転体と、前記入力面と前記出力面との間で且つ前記軸心に対して偏心した位置で、前記軸心に対して傾斜した方向を中心軸方向として当該中心軸周りに回転自在に設けられると共に、外周部が前記入力面及び前記出力面それぞれ摺接し、前記入力側回転体の回転を前記入力面との摺接部位で受けて自らの軸周りに回転し、当該回転を前記出力面との摺接部位から前記出力側回転体に伝える伝達ローラと、前記伝達ローラを回転自在に支持すると共に、前記入力面及び前記出力面の少なくとも何れか一方の面と前記伝達ローラとの摺接部位を前記入力側及び出力側の両回転体の回転半径方向に沿って変位させる方向へ移動可能な支持手段と、前記入力面と前記出力面との間で且つ前記伝達ローラの外周部近傍に設けられ、前記伝達ローラの外周部へ向けて潤滑冷却液を噴き付ける噴付手段と、前記入力面及び前記出力面の少なくとも何れか一方の前記伝達ローラとの摺接部位における発熱量に応じて前記噴付手段へ流れる前記潤滑冷却液の流量を制御する流量制御手段と、を備えている。
【0018】
上記構成のトロイダル型無段変速機によれば、入力側回転体がその軸心周りに回転すると、入力側回転体の軸心方向一端に形成された入力面に外周部が摺接する伝達ローラが入力面との摺接部位での摩擦によって従動回転する。伝達ローラの外周部は入力側回転体の入力面のみならず、入力側回転体の軸心方向に沿って入力側回転体に対向配置された出力側回転体の出力面に摺接しているため、伝達ローラが回転すると伝達ローラの外周部と出力面との摩擦で出力側回転体がその軸心周りに回転する。このようにして、入力側回転体の回転が伝達ローラを介して出力側回転体に伝達されて出力側回転体が回転する。
【0019】
一方、上記の入力面は入力側回転体の軸心方向一端に形成され、出力面は出力側回転体の軸心方向に沿って入力側回転体の軸心方向一端と対向する側、すなわち、出力側回転体の軸心方向他端に形成され、しかも、この軸心方向に対して入力側回転体及び出力側回転体の回転半径方向外方へ傾斜した方向へ向いている。一方で、伝達ローラは、入力面及び出力面の少なくとも何れか一方の面との摺接部位が入力側回転体及び出力側回転体の回転半径方向に沿って変位する方向へ移動可能に支持手段に支持されている。
【0020】
ここで、伝達ローラが移動することで、前記何れか一方の面と伝達ローラの外周部との摺接部位が入力側及び出力側の両回転体の回転半径方向に沿って変位すると、入力面における伝達ローラの摺接軌道の長さと出力面における伝達ローラの摺接軌道の長さの比率が変化する。このため、入力側回転体の回転は両摺接軌道の長さの比率で出力側回転体に伝達される。したがって、伝達ローラを移動させて前記何れか一方と伝達ローラの外周部との摺接部位を変位させることで、入力側回転体の回転速度に対する出力側回転体の回転速度の速度比率が円滑に変更(すなわち、変速)される。
【0021】
一方、本トロイダル型無段変速機では、入力面と出力面との間で伝達ローラの外周部近傍には噴付手段が設けられており、この噴付手段に潤滑冷却液が供給されると、噴付手段から伝達ローラの外周部へ向けて潤滑冷却液が噴射されて、伝達ローラの外周部に潤滑冷却液が噴き付けられる。これにより、過剰な摩擦による両回転体並びに伝達ローラの劣化等が抑制若しくは防止されると共に、入力面及び出力面に摺接する際の摩擦で熱せられた伝達ローラの外周部が冷却される。
【0022】
ここで、上記のように噴付手段から潤滑冷却液が伝達ローラの外周部に噴き付けられるが、本トロイダル型無段変速機では、入力面及び出力面の少なくとも何れか一方の伝達ローラとの摺接部位における発熱量に応じて噴付手段へ流れる潤滑冷却液の流量が流量制御手段により制御される。
【0023】
これにより、例えば、入力面及び出力面の少なくとも一方との摺接による伝達ローラの外周部の発熱量が比較的小さくなった場合に流量制御手段によって噴付手段への潤滑冷却液の流量を減少させることで潤滑冷却液の抵抗に起因する変速効率の低下が効果的に抑制される。
【0024】
これに対して、入力面及び出力面の少なくとも一方との摺接による伝達ローラの外周部の発熱量が大きくなる位置では、流量制御手段によって噴付手段への潤滑冷却液の流量を増加させることで両回転体並びに伝達ローラ等の耐久性が向上すると共に、グロススリップが効果的に抑制される。
【0025】
なお、本発明において流量制限手段は、入力面及び出力面の少なくとも何れか一方の伝達ローラとの摺接部位における発熱量に応じて噴付手段への潤滑冷却液の流量を制御する構成でありさえすれば、その具体的な構成に限定されるものではない。
【0026】
また、流量制御手段は、例えば、温度センサ等の温度検出手段により入力面及び出力面の少なくとも何れか一方の伝達ローラとの摺接部位における発熱量を検出し、この検出結果に基づいて潤滑冷却液の流量を制御する構成であってもよいし、このように、直接的に発熱量に基づいて流量を制御する構成ではなく、間接的に発熱量に基づいて流量を制御する構成であってもよい。
【0027】
すなわち、例えば、流量制御手段が、支持手段の移動に伴う伝達ローラの変位量や伝達ローラの回転数やトルク等の発熱量に対応する動力伝達状態をセンサ等の検出手段で検出し、この検出結果に基づいて潤滑冷却液の流量を制御する構成としてもよい。また、このように、動力伝達状態を直接検出する構成ではなく、例えば、車両のECU等の制御装置から出力された変速を指示するための信号に基づいて潤滑冷却液の流量を制御する構成としてもよい。
【0028】
請求項2記載のトロイダル型無段変速機は、自らの軸心周りに回転自在に設けられると共に、前記軸心方向一端に当該軸心方向一方への向きに対して前記回転の半径方向外方へ傾斜した入力面が形成された入力側回転体と、前記入力側回転体の前記軸心方向一方の側で前記入力側回転体から離間し、前記入力側回転体に対して同軸的で且つ回転自在に設けられると共に、前記軸心方向他端に当該軸心方向他方への向きに対して半径方向外方へ傾斜した出力面が形成された出力側回転体と、前記入力面と前記出力面との間で且つ前記軸心に対して偏心した位置で、前記軸心に対して傾斜した方向を中心軸方向として当該中心軸周りに回転自在に設けられると共に、外周部が前記入力面及び前記出力面それぞれ摺接し、前記入力側回転体の回転を前記入力面との摺接部位で受けて自らの軸周りに回転し、当該回転を前記出力面との摺接部位から前記出力側回転体に伝える伝達ローラと、前記伝達ローラを回転自在に支持すると共に、前記入力面及び前記出力面の少なくとも何れか一方の面と前記伝達ローラとの摺接部位を前記入力側及び出力側の両回転体の回転半径方向に沿って変位させる方向へ移動可能な支持手段と、前記入力面と前記出力面との間で且つ前記伝達ローラの外周部近傍に設けられ、前記伝達ローラの外周部へ向けて潤滑冷却液を噴き付ける噴付手段と、前記支持手段の移動に伴い変化する前記伝達ローラの位置に応じて前記噴付手段へ流れる前記潤滑冷却液の流量を制御する流量制御手段と、を備えている。
【0029】
上記構成のトロイダル型無段変速機によれば、入力側回転体がその軸心周りに回転すると、入力側回転体の軸心方向一端に形成された入力面に外周部が摺接する伝達ローラが入力面との摺接部位での摩擦によって従動回転する。伝達ローラの外周部は入力側回転体の入力面のみならず、入力側回転体の軸心方向に沿って入力側回転体に対向配置された出力側回転体の出力面に摺接しているため、伝達ローラが回転すると伝達ローラの外周部と出力面との摩擦で出力側回転体がその軸心周りに回転する。このようにして、入力側回転体の回転が伝達ローラを介して出力側回転体に伝達されて出力側回転体が回転する。
【0030】
一方、上記の入力面は入力側回転体の軸心方向一端に形成され、出力面は出力側回転体の軸心方向に沿って入力側回転体の軸心方向一端と対向する側、すなわち、出力側回転体の軸心方向他端に形成され、しかも、この軸心方向に対して入力側回転体及び出力側回転体の回転半径方向外方へ傾斜した方向へ向いている。一方で、伝達ローラは、入力面及び出力面の少なくとも何れか一方の面との摺接部位が入力側回転体及び出力側回転体の回転半径方向に沿って変位する方向へ移動可能に支持手段に支持されている。
【0031】
ここで、伝達ローラが移動することで、前記何れか一方の面と伝達ローラの外周部との摺接部位が入力側及び出力側の両回転体の回転半径方向に沿って変位すると、入力面における伝達ローラの摺接軌道の長さと出力面における伝達ローラの摺接軌道の長さの比率が変化する。このため、入力側回転体の回転は両摺接軌道の長さの比率で出力側回転体に伝達される。したがって、伝達ローラを移動させて前記何れか一方と伝達ローラの外周部との摺接部位を変位させることで、入力側回転体の回転速度に対する出力側回転体の回転速度の速度比率が円滑に変更(すなわち、変速)される。
【0032】
一方、本トロイダル型無段変速機では、入力面と出力面との間で伝達ローラの外周部近傍には噴付手段が設けられており、この噴付手段に潤滑冷却液が供給されると、噴付手段から伝達ローラの外周部へ向けて潤滑冷却液が噴射されて、伝達ローラの外周部に潤滑冷却液が噴き付けられる。これにより、過剰な摩擦による両回転体並びに伝達ローラの劣化等が抑制若しくは防止されると共に、入力面及び出力面に摺接する際の摩擦で熱せられた伝達ローラの外周部が冷却される。
【0033】
ここで、上記のように噴付手段から潤滑冷却液が伝達ローラの外周部に噴き付けられるが、本トロイダル型無段変速機では、支持手段の移動に伴い変化する伝達ローラの位置に応じて流量制御手段が噴付手段へ流れる潤滑冷却液の流量を制御している。したがって、支持手段の移動によって変化する伝達ローラの位置、すなわち、入力面及び出力面と伝達ローラの外周部との摺接位置のうち、入力面及び出力面との摺接による伝達ローラの外周部の発熱量が比較的小さくなる位置では、流量制御手段によって噴付手段への潤滑冷却液の流量を減少させることで潤滑冷却液の抵抗に起因する変速効率の低下が効果的に抑制される。
【0034】
これに対して、支持手段の移動によって変化する伝達ローラの位置のうち、入力面及び出力面との摺接による伝達ローラの外周部の発熱量が大きくなる位置では、流量制御手段によって噴付手段への潤滑冷却液の流量を増加させることで両回転体並びに伝達ローラ等の耐久性が向上すると共に、グロススリップが効果的に抑制される。
【0035】
なお、本発明において流量制限手段は支持手段の移動に伴う伝達ローラの変位量に応じて噴付手段へ流れる潤滑冷却液の流量を制御する構成でありさえすれば、その具体的な構成に限定されるものではない。
【0036】
したがって、例えば、支持手段の移動に伴う伝達ローラの変位に関しては、変位センサ等の検出手段によって支持手段の移動や伝達ローラの変位を直接或いは間接的に検出する構成としてもよいし、支持手段を介して伝達ローラを変位させるための駆動手段の駆動量(例えば、駆動手段がモータであればモータ軸の回転位置、駆動手段がシリンダ−ピストン機構であればピストンの伸縮位置等)から間接的に伝達ローラの変位量(位置)を検出する構成としてもよい。
【0037】
さらには、上記のような駆動手段をコンピュータ(ECU等)から出力された駆動制御信号に基づいて制御する構成とする場合には、この駆動制御信号に基づいて間接的に伝達ローラの変位量(位置)を得る構成としてもよい。
【0038】
請求項3記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1又は請求項2記載の本発明において、前記入力側回転体の回転数と前記出力側回転体の回転数との比率が実質的に1となる前記伝達ローラの位置で、前記流量制御手段が前記噴付手段への前記潤滑冷却液の流量を最大とする、ことを特徴としている。
【0039】
上記構成のトロイダル型無段変速機では、支持手段が移動して、入力側回転体の回転数と出力側回転体の回転数との比率、すなわち、両回転体間での変速比が実質的に1となる位置に伝達ローラが達すると、流量制御手段によって最大量の潤滑冷却液が噴付手段に供給される。
【0040】
ここで、仮に、発進加速時等のように変速比が1よりも小さい状態や高速巡航時等のように変速比が1よりも大きい状態での入力面及び出力面と伝達ローラの外周部との摩擦で生じる発熱量を小さくするように設定すると、変速比が実質的に1になった状態で発熱量が最大になることが想定される。
【0041】
しかしながら、本トロイダル型無段変速機では、上記のように両回転体間での変速比が実質的に1となる位置に伝達ローラが達すると最大量の潤滑冷却液が噴付手段に供給されて伝達ローラの外周部に噴き付けられ、最も効果的に冷却される。これにより、両回転体並びに伝達ローラ等の耐久性を効果的に向上させることができると共に、グロススリップを効果的に抑制できる。
【0042】
請求項4記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記支持手段の移動に伴い変化する前記伝達ローラの位置を検出するローラ位置検出手段を含めて前記流量制御手段を構成し、前記ローラ位置検出手段における検出結果に基づいて前記噴付手段への前記潤滑冷却液の流量を制御する、ことを特徴としている。
【0043】
上記構成のトロイダル型無段変速機では、支持手段が移動し、これにより伝達ローラが変位すると、この状態での伝達ローラの位置が流量制御手段を構成するローラ位置検出手段によって検出される。流量制御手段は、このローラ位置検出手段での検出結果に基づいて噴付手段への潤滑冷却液の流量(供給量)を制御する。
【0044】
このように、本トロイダル型無段変速機では、伝達ローラの位置をローラ位置検出手段が検出し、この検出結果に基づいて潤滑冷却液の流量を制御している。このため、支持手段を移動させるための駆動手段を制御するための駆動制御信号に基づいて潤滑冷却液の流量を制御する構成のように、伝達ローラの位置を推定して潤滑冷却液の流量を制御する構成に比べて、噴付手段への潤滑冷却液の流量を適切に制御できる。
【0045】
請求項5記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記伝達ローラを回転自在に支持する支持体と、前記両回転体の回転軸方向及び前記伝達ローラの回転軸方向の双方に対して略直交する方向にスライド可能に前記支持部を保持すると共に、前記スライド方向を軸方向としてこの軸周りに回動可能に前記支持部を保持する保持部材と、を含めて前記支持手段を構成すると共に、前記噴付手段への前記潤滑冷却液の流路に介在した状態で前記支持手段に設けられ、前記保持部材に対する前記支持体の回動に連動して前記支持体の回動角度に応じて前記噴付手段側への前記潤滑冷却液の流量を調節する調節バルブを流量制御手段とした、ことを特徴としている。
【0046】
上記構成のトロイダル型無段変速機によれば、伝達ローラは支持手段を構成する支持体により回転自在に支持される。さらに、支持体は、支持体と共に支持手段を構成する保持部材により、両回転体の回転軸方向及び伝達ローラの回転軸方向の双方に対して略直交する方向にスライド可能で且つこのスライド方向を軸方向として、この軸周りに回動可能に支持される。
【0047】
支持体を保持部材に対してスライドさせると、支持体に支持された伝達ローラもまた支持体と共にスライドする。これにより、伝達ローラと両回転体との摺接位置が変化すると、摺接位置での両回転体の回転方向がスライドする前に比べて両回転体の回転軸と平行な軸周りに傾く。
【0048】
このように摺接位置での両回転体の回転方向がスライド前に比べて傾くことで、伝達ローラは両回転体から上記のスライド方向を軸方向とした所定の回転力を受け、この回転力によりスライド量に応じて所定角度伝達ローラが回動し、入力側回転体の回転速度に対する出力側回転体の回転速度の速度比率が円滑に変更(すなわち、変速)される。
【0049】
一方、本トロイダル型無段変速機では、調節バルブが支持手段に設けられており、上記のように支持体が回動すると、この回動に連動し、しかも、回動角度に応じて噴付手段側への潤滑冷却液の流量を調節する。上述したように、支持体の回動角度は上記のスライド方向周りの伝達ローラの回動角度であり、この回動角度は変速比に対応する。したがって、調節バルブが支持体の支持体の回動角度に応じて潤滑冷却液の流量を調節することにより、変速比に応じた量で潤滑冷却液を噴き付けることができる。
【0050】
また、このような調節バルブは、言わば、上記の伝達ローラの回動角度を検出するための手段が一体となった構成に等しいため、別途角度検出手段や制御装置等を設けなくてもよく、部品点数を少なくでき、コストを安価にできる。
【0051】
請求項6記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の本発明において、前記両回転体の回転半径方向外方から前記伝達ローラを回転自在に支持すると共に、内部を貫通して前記回転半径方向に沿って前記伝達ローラと対向する対向面にて一端が開口し、他端が前記潤滑冷却液の供給側に接続された供給路が形成され、前記伝達ローラを支持した状態で前記対向面と前記伝達ローラとの間に前記潤滑冷却液を供給可能な支持体を含めて前記支持手段を構成する、ことを特徴としている。
【0052】
上記構成のトロイダル型無段変速機によれば、伝達ローラは支持手段を構成する支持体によって両回転体の回転半径方向外方から回転自在に支持される。
【0053】
また、この支持体の内部では供給路が貫通している。供給路は一端が両回転体の回転半径方向に沿って伝達ローラと対向する支持体の対向面にて開口しており、他端は上述した潤滑冷却液の供給側に接続される。
【0054】
したがって、本トロイダル型無段変速機では、潤滑冷却液は噴付手段のみならず供給路にも供給され、供給路に供給されて供給路を通過した潤滑冷却液は支持体の対向面と伝達ローラとの間に供される。これにより、支持体における伝達ローラの支持部分に対して充分に潤滑冷却液を供給することが可能となる。
【0055】
請求項7記載のトロイダル型無段変速機は、請求項6記載の本発明において、前記噴付手段の基端側に設けられ、前記噴付手段の先端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量を調節する第1調節バルブと、前記供給路に設けられ、前記供給路の一端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量を調節する第2調節バルブと、前記第1調節バルブ及び前記第2調節バルブの双方へ接続され、前記支持手段の移動に伴い変化する前記伝達ローラの位置に応じて前記第1調節バルブ及び前記第2調節バルブをそれぞれ操作し、前記噴付手段の先端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量及び前記供給路の一端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量を調節するバルブ操作手段と、を含めて前記流量調節手段を構成したことを特徴としている。
【0056】
上記構成のトロイダル型無段変速機では、第1調節バルブによって噴付手段に流れる潤滑冷却液の流量が調節され、第2調節バルブによって供給路に流れる潤滑冷却液の流量が調節される。これらの第1調節バルブ及び第2調節バルブは共にバルブ調節手段に接続され、伝達ローラの位置の変化に伴いバルブ調節手段が第1調節バルブ及び第2調節バルブを個々に調節する。このため、噴付手段側へ流れる潤滑冷却液及び供給路へ流れる潤滑冷却液の各流量を適切な量に設定できる。
【0057】
請求項8記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の本発明において、前記支持手段に前記噴付手段を一体的に設け、前記支持手段と共に前記噴付手段を一体的に移動可能とした、ことを特徴としている。
【0058】
上記構成のトロイダル型無段変速機によれば、噴付手段が支持手段に一体的に設けられ、支持手段と共に噴付手段が一体的に移動する。ここで、上記のように、伝達ローラは支持手段の移動により変位するため、噴付手段が支持手段と共に移動することで支持手段が移動した際の噴付手段と伝達ローラとの相対変位が無くなるか、或いは、相対変位が極めて小さくなる。これにより、支持手段が移動しても、適切な位置に潤滑冷却液を噴き付けることができる。
【0059】
【発明の実施の形態】
<第1の実施の形態の構成>
図2には本発明の第1の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機10(以下、単に「無段変速機10」と称する)の構成が正面断面図により示されており、図3には本無段変速機の要部の平断面図が示されている。先ず、これらの図を用いて無段変速機10の全体構成の概略について説明する。
【0060】
図2に示されるように、本無段変速機10は上下一対のロアケーシング12とアッパケーシング14とにより構成されるケーシング16を備えている。ケーシング16を構成するロアケーシング12は図2及び図3の略上方側へ向けて開口した断面略凹形状の箱形状に形成されており、これとは反対にアッパケーシング14は図2及び図3の略下方側へ向けて開口した断面略凹形状の箱形状に形成されている。アッパケーシング14は開口端が、ロアケーシング12の開口端と対向した状態でロアケーシング12の開口端に当接し、例えば、溶接等によりアッパケーシング14及びロアケーシング12の両開口端が一体的に固着されている。
【0061】
このようなロアケーシング12とアッパケーシング14とにより形成されたケーシング16の内部にはシャフト18が設けられている。シャフト18はその軸方向がケーシング16の長手方向に沿うようにケーシング16の内部に配置されてケーシング16に設けられた軸受により回転自在に軸支されていると共に、その一端はケーシング16を貫通してケーシング16の外部に突出している。シャフト18の一端は図示しないトルクコンバータのシャフトへ同軸的且つ一体的に連結されており、トルクコンバータのシャフトの回転力を受けて自らの軸心周りに回転する構成となっている。
【0062】
また、ケーシング16の内部には入力側回転体としての入力ディスク20が配置されている。入力ディスク20はシャフト18の軸方向一端側からみてシャフト18に対して同軸の略円形に形成されている。また、入力ディスク20は、シャフト18と共に一体的に回転するようシャフト18に連結されているが、シャフト18の軸方向に対してシャフト18に対して所定範囲スライド可能とされている。
【0063】
さらに、シャフト18の軸方向に沿った入力ディスク20の中間部よりも他端側は漸次縮径されている。但し、シャフト18の中心軸線に沿って切った場合のこの縮径部分の断面形状は、単純なテーパ形状ではなく、シャフト18の軸方向他端側への方向に対してシャフト18の回転半径方向外方に傾斜した方向へ向けて所定の曲率で湾曲するように形成された出力面としての凹状部22とされている。
【0064】
また、入力ディスク20に対してシャフト18の軸方向一方の側には入力ディスク20から離間して出力側回転体としての出力ディスク24が設けられている。出力ディスク24は、シャフト18の軸方向一端側からみて略円形に形成されており、入力ディスク20に対して同軸的に対向した状態でシャフト18に対して相対回転自在にシャフト18に軸支されている。
【0065】
シャフト18の軸方向に沿った出力ディスク24の中間部よりも一端側は漸次縮径されている。但し、入力ディスク20と同様にシャフト18の中心軸線に沿って切った場合のこの縮径部分の断面形状は、単純なテーパ形状ではなく、シャフト18の軸方向一端側への方向に対してシャフト18の回転半径方向外方に傾斜した方向へ向けて所定の曲率で湾曲するように形成された出力面としての凹状部26とされている。全体的には入力ディスク20を反転させた形状となっている。
【0066】
また、出力ディスク24を介して入力ディスク20とは反対側には出力側回転体としての出力ディスク24に対して離間した状態で出力ディスク28が配置されている。出力ディスク28は概ね出力ディスク24を反転させた形状に形成されており、シャフト18の軸方向に沿った出力ディスク28の中間部よりも他端側には凹状部26が形成され、出力ディスク24と同様に入力ディスク20に対して同軸的で且つシャフト18に対して相対回転自在にシャフト18に軸支されている。
【0067】
さらに、出力ディスク28を介して出力ディスク24とは反対側には出力ディスク28に対して離間した状態で入力側回転体としての入力ディスク30が配置されている。入力ディスク30は概ね入力ディスク20を反転させた形状に形成されており、シャフト18の軸方向に沿った出力ディスク28の中間部よりも一端側には凹状部22が形成されている。また、入力ディスク20と同様に入力ディスク30はシャフト18と共に一体的に回転するようシャフト18に連結されているが、シャフト18の軸方向に対してシャフト18に対して所定範囲スライド可能とされている。
【0068】
一方、入力ディスク20の出力ディスク24とは反対側にはカムローラ32が設けられており、シャフト18の回転に伴う入力ディスク20の回転に応じて入力ディスク20を出力ディスク24へ押圧する。また、入力ディスク30の出力ディスク28とは反対側にはカムローラ34が設けられており、シャフト18の回転に伴う入力ディスク30の回転に応じて入力ディスク30を出力ディスク28へ押圧する。
【0069】
さらに、出力ディスク24の出力ディスク28の端面には円筒形状の軸部36が出力ディスク24に対して同軸的に一体形成されており、出力ディスク28の出力ディスク24の端面には円筒形状の軸部38が出力ディスク28に対して同軸的に一体形成されている。また、出力ディスク24と出力ディスク28との間には外歯のドライブギヤ40が設けられいる。ドライブギヤ40は略円筒形状に形成されており、その軸方向一端側からは軸部36が嵌合して同軸的且つ一体的に連結されており、他端からは軸部38が嵌合して同軸的且つ一体的に連結されている。
【0070】
ドライブギヤ40の半径方向外側側方にはドリブンギヤ42が設けられており、ドリブンギヤ42の外周部には外歯が形成されており、ドライブギヤ40に噛み合っている。また、ドリブンギヤ42にはカウンタシャフト44が同軸的且つ一体的に連結されており、ドライブギヤ40の回転力を受けてドリブンギヤ42が回転すると、カウンタシャフト44が自らの軸心周りに回転する構成となっている。
【0071】
一方、図2及び図3に示されるように、ケーシング16の内側には各々が伝達ローラとしての一対のパワーローラ50が設けられている。一方のパワーローラ50は、入力ディスク20の凹状部22と出力ディスク24の凹状部26との間に設けられており、他方のパワーローラ50は、シャフト18を介して一方のパワーローラ50とは反対側で入力ディスク20の凹状部22と出力ディスク24の凹状部26との間に設けられている。これらのパワーローラ50は、シャフト18の軸線方向に対して交差する方向(概ねシャフト18の回転半径方向)を軸方向として、この軸周りに回転自在に設けられており、その外周一部が入力ディスク20の凹状部22の一部に接触しており、凹状部22への接触部分とは他の外周一部が出力ディスク24の凹状部26の一部に接触している。
【0072】
これに対して、図2に示されるように、出力ディスク28と入力ディスク30との間にも同様に一対のパワーローラ50が配置されている。なお、この出力ディスク28と入力ディスク30との間のパワーローラ50は、入力ディスク20と出力ディスク24との間のパワーローラ50と基本的に同じ構成であるため、以下の入力ディスク20と出力ディスク24との間のパワーローラ50の説明を以って出力ディスク28と入力ディスク30との間のパワーローラ50の説明は省略する。
【0073】
また、図1に示されるように、これらのパワーローラ50の軸方向一方の側(パワーローラ50を介してシャフト18とは反対側)にはベースプレート52が設けられている。ベースプレート52はパワーローラ50と同軸の円盤若しくは円柱形状に形成されており、その軸心部分からはパワーローラ50側へ向けて支持シャフト54が突出している。支持シャフト54はパワーローラ50の軸心部分を貫通しており、パワーローラ50を回転自在に軸支している。
【0074】
さらに、支持シャフト54の周囲にはスラストベアリング56を構成する複数の鋼球58が配置されている。鋼球58はベースプレート52とパワーローラ50の互いに対向する面にそれぞれ接触していると共に、支持シャフト54周りに転動自在に設けられており、パワーローラ50が回転する際には、パワーローラ50との摩擦で鋼球58が支持シャフト54周りに転動する。これにより、パワーローラ50が円滑に回転する構成となっている。
【0075】
また、各パワーローラ50の側方には支持手段としてのトラニオン60が設けられている。各トラニオン60に各ベースプレート52が取り付けられている。各トラニオン60の下側側方には、シリンダ62が設けられている。シリンダ62は上端が開口しており、この開口端からピストン64が挿入されている。ピストン64はシリンダ62に対して上下方向に摺動自在で且つ自らの軸心周りに回動可能とされており、シリンダ62内の内圧の上昇及び下降により上下方向に移動する。各ピストン64の上端部は対応するトラニオン60に機械的に連結されており、ピストン64の上下動によってトラニオン60が上下動する構成となっている。
【0076】
さらに、トラニオン60の内部には供給路66が形成されている。供給路66は中空であり、トラニオン60の内部で適宜に屈曲している。供給路66の一端は、トラニオン60のベースプレート52と対向する側の面(より詳細には、ベースプレート52のパワーローラ50とは反対側の面と対向する面)で開口しており、他端はトラニオン60の下端側で図示しないパイプに接続され、このパイプを介して図示しないポンプに接続されている。さらに、ポンプは図示しない貯留槽に接続されており、貯留槽に貯留された潤滑冷却液としての潤滑油をポンプが吸引することで供給路66の他端側から供給路66内に潤滑油が供給される構成となっている。
【0077】
また、各シリンダ62の間には、噴付手段としての噴射ノズル70が設けられている。図3に示されるように、噴射ノズル70は、その上端側が二股に分かれており、二股に分かれた上端の一方は、一方のパワーローラ50の側へ向いており、二股に分かれた先端の他方は、他方のパワーローラ50の側へ向いている。
【0078】
また、噴射ノズル70の基端(下端)側はポンプを介して貯留槽(何れも図示省略)に接続されている。貯留槽には潤滑冷却液としての潤滑油が貯留されており、ポンプが作動すると貯留槽に貯留された潤滑油が吸い上げられて噴射ノズル70に供給され、噴射ノズル70の両上端から両パワーローラ50と出力ディスク24の接触部分へ潤滑油を噴き付ける構成となっている。なお、噴射ノズル70へ潤滑油を供給するポンプは、上述した供給路66に潤滑油を供給するポンプと同一のポンプでもよいし、別のポンプでもよい。また、噴射ノズル70に供給される潤滑油を貯留する貯留槽は、上述した供給路66に供給される潤滑油を貯留する貯留槽と同一でもよいし、別の貯留槽でもよい。
【0079】
さらに、図1に示されるように、噴射ノズル70の基端側には、流量制御手段を構成する調節バルブ72が設けられている。詳細な図示は省略するが、調節バルブ72は、内部に弁体が設けられた潤滑油の流路が形成されている。弁体は図示しないソレノイド等によって流路内を適宜に移動することができ、この移動により流路の開口面積を調節できるようになっている。
【0080】
また、調節バルブ72は、流量制御手段を構成するコントローラ74を介してローラ位置位置検出手段として流量制御手段を構成する角度センサ76に接続されている。角度センサ76は、例えば、ピストン64に設けられており、シリンダ62に対するピストン64の回動角度を検出し、ピストン64の回動量に対応した角度検出信号を出力している。これに対して、コントローラ74は、コンパレータ回路等を含めて構成される制御回路若しくはこのような制御回路と同等の機能を有するマイコンとされており、角度センサ76からの角度検出信号が入力される。コントローラ74では角度検出信号に基づいて調節バルブ72の弁体を操作する構成となっている。
【0081】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果を説明する。本無段変速機10では、トルクコンバータ側のシャフトが回転すると、この回転力はシャフト18に伝達されてシャフト18がその軸心周りに回転する。シャフト18が回転すると、シャフト18に一体的に連結された入力ディスク20、30が共に回転する。上記のように、入力ディスク20、30の凹状部22には、一対のパワーローラ50の外周部が接触しているため、入力ディスク20、30が回転すると、パワーローラ50の外周部と入力ディスク20、30の凹状部22との間の摩擦によってパワーローラ50が支持シャフト54周りに回転する。
【0082】
また、パワーローラ50の外周部は、入力ディスク20、30の凹状部22のみならず出力ディスク24、28の凹状部26にも接触しているため、パワーローラ50の外周部は、入力ディスク20、30の凹状部22のみならず出力ディスク24、28の凹状部26にも接触しているため、パワーローラ50の外周部と出力ディスク24、28の凹状部26との摩擦により出力ディスク24、28がシャフト18周りに回転する。
【0083】
出力ディスク24、28が回転することで、軸部36、38の双方に同軸的且つ一体的に嵌合したドライブギヤ40が回転し、更に、ドライブギヤ40に噛み合うドリブンギヤ42が回転する。ドリブンギヤ42が回転することでドリブンギヤ42と一体のカウンタシャフト44が回転し、出力される。
【0084】
また、以上のようなシャフト18〜カウンタシャフト44の回転状態では、ポンプが作動して貯留槽から潤滑油を吸い上げる。ポンプにより吸い上げられた潤滑油は、供給路66や噴射ノズル70(ここでは、出力ディスク24側の噴射ノズル70についてのみ説明する)に供給される。供給路66に供給された潤滑油は、供給路66の一端から噴射されてベースプレート52側で鋼球58に噴き付けられる。
【0085】
噴き付けられた潤滑油の潤滑作用により、鋼球58とベースプレート52及びパワーローラ50との間の摩擦抵抗が軽減されると共に、鋼球58とベースプレート52及びパワーローラ50との間の摩擦により生じた熱が噴き付けられた潤滑油により冷却される。
【0086】
また、噴射ノズル70に供給された潤滑油は、二股に分かれた上端からそれぞれ噴射される。一方の上端から噴射された潤滑油は一方のパワーローラ50と出力ディスク24との間の接触部位に噴き付けられて、他方の上端から噴射された潤滑油は他方のパワーローラ50と出力ディスク24との間の接触部位に噴き付けられる。噴き付けられた潤滑油の潤滑作用により、両パワーローラ50と出力ディスク24との間の摩擦抵抗が軽減されると共に、両パワーローラ50と出力ディスク24との間の摩擦により生じた熱が噴き付けられた潤滑油により冷却される。
【0087】
このように、潤滑油が供給路66から鋼球58に噴き付けられると共に、パワーローラ50と出力ディスク24との接触部位に噴き付けられることで、パワーローラ50や出力ディスク24、更には鋼球58の耐久性が向上する。
【0088】
また、このようなシャフト18〜カウンタシャフト44が回転している状態で、一方のパワーローラ50に対応したシリンダ62の内圧が上昇すると、このシリンダ62に収容されたピストン64が突出し、一方のパワーローラ50に対応したトラニオン60が上方へ移動する。
【0089】
このトラニオン60の上動により、一方のパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が上方に変化する。このように一方のパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が上方に変化することで接触位置における入力ディスク20、30の回転接線方向が変化するため、このときの入力ディスク20、30の回転力により、パワーローラ50がピストン64の軸方向に平行な軸周り方向に回動しようとし、これにより、パワーローラ50がピストン64の軸心周りに回動変位する。この回動変位によりパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が入力ディスク20、30の半径方向に変化する。
【0090】
さらに、一方のパワーローラ50に対応したシリンダ62の内圧が上昇に連動して他方のパワーローラ50に対応したシリンダ62の内圧を下降させ、一方のシリンダ62に収容されたピストン64の突出量と同じ量だけ他方のシリンダ62に収容されたピストン64がシリンダ62内に引き込まれる。
【0091】
一方のパワーローラ50に対応したトラニオン60が上動量と同じ量だけ他方のパワーローラ50に対応したトラニオン60が下方へ移動する。このトラニオン60の下降により、他方のパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が下方に変化する。このように他方のパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が下方に変化することで接触位置における入力ディスク20、30の回転接線方向が変化するため、このときの入力ディスク20、30の回転力により、パワーローラ50がピストン64の軸方向に平行な軸周り方向に回動しようとし、これにより、パワーローラ50がピストン64の軸心周りに回動変位する。この回動変位によりパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が入力ディスク20、30の半径方向に変化する。
【0092】
また、このように両パワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が入力ディスク20、30の半径方向に変化すると、入力ディスク20、30の回転半径方向に沿った両パワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置の変位方向とは略反対側へ向けて出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置が変位する。
【0093】
ここで、例えば、入力ディスク20、30と両パワーローラ50との接触位置が入力ディスク20、30の回転半径方向外側に変位すると、出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置が出力ディスク24、28の回転半径方向内側に変位する。パワーローラ50の回転速度は、入力ディスク20、30の回転周速度に比例するため、パワーローラ50と入力ディスク20、30との接触位置が入力ディスク20、30の回転半径方向外側ほどパワーローラ50の回転速度が早くなる。
【0094】
一方、出力ディスク24、28の回転周速度は、パワーローラ50の回転速度に比例するため、パワーローラ50と出力ディスク24、28との接触位置が出力ディスク24、28の回転半径方向内側ほど出力ディスク24、28の回転速度が早くなり、また、当然、パワーローラ50自体の回転速度が早いほど出力ディスク24、28の回転速度が早くなる。
【0095】
このため、入力ディスク20、30と両パワーローラ50との接触位置が入力ディスク20、30の回転半径方向外側に変位し、これに伴い出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置が出力ディスク24、28の回転半径方向内側に変位すると、入力ディスク20、30の回転速度に対する出力ディスク24、28の回転速度の比率、すなわち、変速比が大きくなる。
【0096】
これに対して、入力ディスク20、30と両パワーローラ50との接触位置を入力ディスク20、30の回転半径方向内側に変位させて、出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置が出力ディスク24、28の回転半径方向外側に変位させると、入力ディスク20、30の回転速度に対する出力ディスク24、28の回転速度の比率、すなわち、変速比が小さくなる。
【0097】
このように、入力ディスク20、30と両パワーローラ50との接触位置を入力ディスク20、30の回転半径方向内側若しくは外側に漸次変位させて、出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置を出力ディスク24、28の回転半径方向外側若しくは内側に漸次変位させることで、上記の変速比を連続的に変化させることができ、カウンタシャフト44の回転速度の変化率を連続的に増減させることができる。
【0098】
一方、上記のように、ピストン64が回動すると、この回動角度が角度センサ76によって検出される。角度センサ76からは、検出したピストン64の回動角度に応じた角度検出信号が出力され、角度センサ76から出力された角度検出信号はコントローラ74に入力される。コントローラ74では入力された角度検出信号に基づき調節バルブ72の弁体を操作して、調節バルブ72に形成された流路の開口面積を増減させる。このように、調節バルブ72の流路の開口面積が増減することで、調節バルブ72を通過する潤滑油が増減し、これにより、出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置に噴き付けられる潤滑油の量が増減する。
【0099】
ところで、仮に、発進加速時や高速巡航時等における発熱量を少なくするように設定した場合、図4に示されるように、パワーローラ50と入力ディスク20、30及び出力ディスク24、28との接触部位における摩擦による発熱量は、上記の変速比が実質的に1になると、すなわち、入力ディスク20、30の回転中心から入力ディスク20、30と両パワーローラ50との接触位置までの距離と、出力ディスク24、28の回転中心から出力ディスク24、28と両パワーローラ50との接触位置までの距離と、が略等しい場合に最大となると想定される。
【0100】
ここで、本無段変速機10では、上記の変速比が実質的に1である場合に調節バルブ72の流路の開口面積が最大となり、変速比が実質的に1の状態を境として変速比が増減するに従い漸次流路の開口面積が減少するようにコントローラ74が設定されている。
【0101】
これにより、発熱量が最大となる変速比が実質的に1の状態でパワーローラ50と出力ディスク24、28との接触部位への潤滑油の噴射量が最も多くなる。このため、発熱量が最大となる変速比が実質的に1の状態で、潤滑油を噴き付けることによる冷却効果を最も大きく得ることができ、パワーローラ50と入力ディスク20、30及び出力ディスク24、28との摩擦による熱の発生を効果的に抑制できる。
【0102】
このように、発熱量が最大となる状態で最も高い冷却効果を得ることができるため、パワーローラ50、入力ディスク20、30、及び出力ディスク24、28の耐久性を効果的に向上できると共に、グロススリップを効果的に抑制できる。
【0103】
ここで、図5には噴射ノズル70及び供給路66の各々へ潤滑油の流量と、パワーローラ50と出力ディスク24との接触部位における上昇温度との関係がグラフによって示されている。このグラフからも分かるように、潤滑油の供給量を増加するにつれて、パワーローラ50と出力ディスク24との接触部位に噴射ノズル70で潤滑油を噴き付ける方が顕著に温度の上昇を抑制できる。
【0104】
一方、上記のように、変速比が1の状態を境に変速比が増減すると、パワーローラ50と入力ディスク20、30及び出力ディスク24、28との接触部位における摩擦による発熱量が減少する。本無段変速機10では、上記の変速比が実質的に1を境に増減すると、これに伴い調節バルブ72の弁体によって調節バルブ72の流路の開口面積が漸次減少する。これにより、パワーローラ50と出力ディスク24、28との接触部位に対する潤滑油を噴付量が減少する。
【0105】
ここで、上記のように変速比が1の状態を境に変速比が増減するため、変速比が1の状態を境に変速比が増減した場合にパワーローラ50と出力ディスク24、28との接触部位に対する潤滑油の噴付量が減少したとしても、充分な冷却効果を得ることができる。しかも、このように、潤滑油の噴付量が減少させることで、潤滑油の撹拌抵抗による変速効率の低下が抑制される。これにより、入力ディスク20、30からパワーローラ50を介した出力ディスク24、28への回転力の伝達効率を向上させることができる。
【0106】
なお、これまでの説明では、相対的に出力ディスク24、28側に位置して出力ディスク24、28とパワーローラ50との接触部位に潤滑油を噴射する噴射ノズル70についてのみ説明したが、相対的に入力ディスク20、30側に位置して入力ディスク20、30とパワーローラ50との接触部位に潤滑油を噴射する噴射ノズル70についても同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができるのは言うまでもない。
【0107】
<第2の実施の形態>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0108】
図6には本発明の第2の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機90(以下、単に「無段変速機90」と称する)の構成の概略が図1に対応した断面図によって示されている。この図に示されるように、本無段変速機90では、トラニオン60とピストン64と接続部位に流量調節手段としての調節バルブ92が設けられている。調節バルブ92は、内部に潤滑油が通過する流路が形成されている点並びに弁体の移動によって流路の開口面積を増減する点に関しては前記第1の実施の形態における調節バルブ72と同じである。
【0109】
但し、調節バルブ72とは異なり、調節バルブ92はピストン64に設けられており、調節バルブ72とは異なり、シリンダ62の上端部に設けられており、ピストン64の回動に連動して図示しない弁体が移動し、流路の開口面積が増減する構成となっている。
【0110】
前記第1の実施の形態で説明したように、ピストン64が回動することで変速比が変更されるが、本実施の形態では、ピストン64が回動すると、このピストン64の回動に直接的に連動して調節バルブ92の弁体が移動し、調節バルブ92の流路の開口面積を増減させる。したがって、結果的には前記第1の実施の形態と同様に、変速比が実質的に1を境に増減することで、噴射ノズル70から両パワーローラ50と出力ディスク24との接触部位に噴き付けられる潤滑油の量が減少する。
【0111】
このように、本無段変速機90は基本的に前記第1の実施の形態に係る無段変速機10と同様の効果を得ることができる。
【0112】
また、上記のように本無段変速機90は基本的に前記第1の実施の形態に係る無段変速機10と同様の効果を得ることができるにも拘わらず、実質的な流量調節手段は調節バルブ92のみでコントローラ74や角度センサ76が不要であり、しかも、調節バルブ92は供給路66への潤滑油の供給調節用として併用されるため、供給路66に対する潤滑油の流量調節用の調節バルブを設けることを考慮すると、部品コストを極めて軽減できる。
【0113】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0114】
図7には本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機100(以下、単に「無段変速機100」と称する)の構成の概略が図1に対応した断面図によって示されている。この図に示されるように、本無段変速機100は、前記第1及び第2の実施の形態で用いた噴射ノズル70を備えておらず、代わりに、噴射ノズル102を備えている。噴射ノズル102は噴射ノズル70とは異なり二股に形成されておらず、上端(先端)は1箇所のみとなった普通の噴射ノズルである。
【0115】
また、噴射ノズル102は、パワーローラ50と出力ディスク24との接触部分との極近傍に上端(先端)が位置しており、基端部はパワーローラ50の半径方向外側側方でパワーローラ50と略対向するトラニオン60の壁部に固定されている。トラニオン60には、上記の供給路66とは別に供給路104が形成されている。
【0116】
供給路104は供給路66と同様にトラニオン60の内部を適宜に屈曲し、その一端は噴射ノズル102が固定されたトラニオン60の壁部で開口し、噴射ノズル102と連通している。これに対して、供給路104の他端はトラニオン60のピストン64側で開口し、パイプ106等の接続手段を介して調節バルブ72に接続され、調節バルブ72を介して図示しないポンプ更には貯留槽に接続されている。
【0117】
上記構成の本無段変速機100もまた、噴射ノズル102の構成が噴射ノズル70の構成と異なるだけで、調節バルブ72や角度センサ76、コントローラ74を備えている点に関しては、前記第1の実施の形態と同じ構成となっているため、前記第1の実施の形態と同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができる。
【0118】
但し、本無段変速機100では、前記第1の実施の形態とは異なり、噴射ノズル102がトラニオン60に固定されている。したがって、ピストン64が上下動及び回動し、これに伴いトラニオン60が上下動及び回動した場合には、噴射ノズル102がトラニオン60と一体に上下動及び回動する。これにより、トラニオン60が上下動及び回動に伴って、出力ディスク24とパワーローラ50との接触部位が変位しても、噴射ノズル102が同様に変位するために出力ディスク24とパワーローラ50との接触部位と噴射ノズル102との相対変位が基本的に生じないか仮に生じたとしてもその相対変位量は極めて小さい。
【0119】
このように、本無段変速機100では、出力ディスク24とパワーローラ50との接触部位と、噴射ノズル102との相対変位を無くし、或いは極めて小さくできることから、出力ディスク24とパワーローラ50との接触部位に的確に潤滑油を噴き付けることができ、潤滑油を噴き付けることで得られる潤滑作用及び冷却作用をより一層効果的に得ることができる。
【0120】
なお、本実施の形態では、供給路66と供給路104とを全く別に構成したが、例えば、トラニオン60の内部で供給路66を分岐させ、分岐した一方をそのまま供給路66とし、他方を供給路104としてもよい。
【0121】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0122】
図8には本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機110(以下、単に「無段変速機110」と称する)の構成の概略が図1に対応した断面図によって示されている。この図に示されるように、本無段変速機110は、特許請求の範囲の請求項6で言う第1調節バルブとしての調節バルブ72の他に、特許請求の範囲の請求項6で言う第2調節バルブとしての調節バルブ112を備えている。調節バルブ112は基本的に調節バルブ72と同じ構成であるが、調節バルブ72とは異なり、流路が噴射ノズル70に接続されておらず、供給路66へ接続されており、供給路66に流れる潤滑油の量を調節している。
【0123】
調節バルブ112はバルブ調節手段としてのコントローラ74へ接続されており、コントローラ74によって調節バルブ112の弁体が操作され、調節バルブ112の流路の開口面積が増減する構成となっている。
【0124】
すなわち、本無段変速機110では、ピストン64の回動角度に対応した角度センサ76からの角度検出信号がコントローラ74に入力されると、コントローラ74は、ピストン64の回動角度に応じて調節バルブ72の弁体を移動させて調節バルブ72の流路の開口面積を増減させるのみならず、調節バルブ72の弁体調節とは個別に調節バルブ112の弁体を移動させて調節バルブ112の流路の開口面積を増減させる。
【0125】
これにより、供給路66に流れる潤滑油の量がピストン64の回動角度、すなわち、上記の変速比に応じて増減する。これにより、鋼球58へ噴き付けられ、更には、鋼球58側から直接或いは鋼球58を介して間接的にパワーローラ50に塗布される潤滑油の量を噴射ノズル70から噴射される潤滑油と同様に調節できる。
【0126】
このため、例えば、変速比が実質的に1となり出力ディスク24とパワーローラ50との接触部位で生じる発熱量が最も大きい場合においてより一層効果的に冷却でき、変速比が実質的に1の状態から増減して出力ディスク24とパワーローラ50との接触部位で生じる発熱量が減少した最も大きい場合においてより回転力の伝達効率をより一層効果的に向上させることができる。
【0127】
また、このように、調節バルブ72とは別に調節バルブ112を設けることで、噴射ノズル70への潤滑油の流量と供給路66への潤滑油の流量を個別に変化させることができる。これにより、より一層適切な量の潤滑油をパワーローラ50等へ供給できる。
【0128】
なお、上記の各実施の形態は、直接的にピストン64の回動角度を角度センサ76や調節バルブ92で検出して潤滑油の流量を変化させる構成であった。しかしながら、基本的にはパワーローラ50と入力ディスク20、30との接触部位における発熱量に応じて潤滑油の流量を増減する構成であればよい。
【0129】
したがって、これまで説明したピストン64の回動角度に基づいて潤滑油の流量を制御する構成の他に、例えば、ピストン64の伸縮量を変位センサ等の検出手段で検出し、この検出結果に基づいて潤滑油の流量を制御する構成としてもよいし、パワーローラ50と入力ディスク20、30との接触部位での温度を温度センサで検出し、この検出結果に基づいて潤滑油の流量を制御する構成としてもよい。
【0130】
また、パワーローラ50の回転数やトルクを回転検出センサやトルクセンサで検出してこの検出結果に基づいて潤滑油の流量を制御する構成としてもよい。さらには、上述した実際の回動角度、伸縮量、温度等を直接検出しなくても、例えば、上記のピストン64の伸縮を制御するためのECU等の制御装置から出力された信号等に基づいて潤滑油の流量を制御する構成としてもよい。
【0131】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るトロイダル型無段変速機では、伝達ローラと入力側又は出力側回転体との接触部分での発熱量に応じて適切な量の潤滑冷却液を上記の接触部分に供給でき、その結果、変速効率の低下を招くことなく充分冷却を行なうことができ、伝達ローラや入力側及び出力側回転体の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の構造の概略を示す正断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の構造の概略を示す側断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の要部構成の概略を示す平断面図である。
【図4】出力側回転体と伝達ローラとの接触部分及びスラストベアリングの各部における変速比と発熱量との関係を示すグラフである。
【図5】噴付手段及び供給路のへの潤滑冷却液の供給量と、上昇温度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の構造の概略を示す図1に対応した側断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の構造の概略を示す図1に対応した側断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の構造の概略を示す図1に対応した側断面図である。
【符号の説明】
10  トロイダル型無段変速機
20  入力ディスク(入力側回転体)
22  凹状部(入力面)
24  出力ディスク(出力側回転体)
26  凹状部(出力面)
28  出力ディスク(出力側回転体)
30  入力ディスク(入力側回転体)
50  パワーローラ(伝達ローラ)
60  トラニオン(支持手段)
66  供給路
70  噴射ノズル(噴付手段)
72  調節バルブ(流量調整手段、第1調節バルブ)
74  コントローラ(流量調整手段、バルブ調節手段)
76  角度センサ(流量調整手段、位置検出手段)
90  トロイダル型無段変速機
92  調節バルブ(流量調整手段)
100  トロイダル型無段変速機
102  噴射ノズル(噴付手段)
104  供給路
110  トロイダル型無段変速機
112  調節バルブ(流量調整手段、第2調節バルブ)

Claims (8)

  1. 自らの軸心周りに回転自在に設けられると共に、前記軸心方向一端に当該軸心方向一方への向きに対して前記回転の半径方向外方へ傾斜した入力面が形成された入力側回転体と、
    前記入力側回転体の前記軸心方向一方の側で前記入力側回転体から離間し、前記入力側回転体に対して同軸的で且つ回転自在に設けられると共に、前記軸心方向他端に当該軸心方向他方への向きに対して半径方向外方へ傾斜した出力面が形成された出力側回転体と、
    前記入力面と前記出力面との間で且つ前記軸心に対して偏心した位置で、前記軸心に対して傾斜した方向を中心軸方向として当該中心軸周りに回転自在に設けられると共に、外周部が前記入力面及び前記出力面それぞれ摺接し、前記入力側回転体の回転を前記入力面との摺接部位で受けて自らの軸周りに回転し、当該回転を前記出力面との摺接部位から前記出力側回転体に伝える伝達ローラと、
    前記伝達ローラを回転自在に支持すると共に、前記入力面及び前記出力面の少なくとも何れか一方の面と前記伝達ローラとの摺接部位を前記入力側及び出力側の両回転体の回転半径方向に沿って変位させる方向へ移動可能な支持手段と、
    前記入力面と前記出力面との間で且つ前記伝達ローラの外周部近傍に設けられ、前記伝達ローラの外周部へ向けて潤滑冷却液を噴き付ける噴付手段と、
    前記入力面及び前記出力面の少なくとも何れか一方の前記伝達ローラとの摺接部位における発熱量に応じて前記噴付手段へ流れる前記潤滑冷却液の流量を制御する流量制御手段と、
    を備えるトロイダル型無段変速機。
  2. 自らの軸心周りに回転自在に設けられると共に、前記軸心方向一端に当該軸心方向一方への向きに対して前記回転の半径方向外方へ傾斜した入力面が形成された入力側回転体と、
    前記入力側回転体の前記軸心方向一方の側で前記入力側回転体から離間し、前記入力側回転体に対して同軸的で且つ回転自在に設けられると共に、前記軸心方向他端に当該軸心方向他方への向きに対して半径方向外方へ傾斜した出力面が形成された出力側回転体と、
    前記入力面と前記出力面との間で且つ前記軸心に対して偏心した位置で、前記軸心に対して傾斜した方向を中心軸方向として当該中心軸周りに回転自在に設けられると共に、外周部が前記入力面及び前記出力面それぞれ摺接し、前記入力側回転体の回転を前記入力面との摺接部位で受けて自らの軸周りに回転し、当該回転を前記出力面との摺接部位から前記出力側回転体に伝える伝達ローラと、
    前記伝達ローラを回転自在に支持すると共に、前記入力面及び前記出力面の少なくとも何れか一方の面と前記伝達ローラとの摺接部位を前記入力側及び出力側の両回転体の回転半径方向に沿って変位させる方向へ移動可能な支持手段と、
    前記入力面と前記出力面との間で且つ前記伝達ローラの外周部近傍に設けられ、前記伝達ローラの外周部へ向けて潤滑冷却液を噴き付ける噴付手段と、
    前記支持手段の移動に伴い変化する前記伝達ローラの位置に応じて前記噴付手段へ流れる前記潤滑冷却液の流量を制御する流量制御手段と、
    を備えるトロイダル型無段変速機。
  3. 前記入力側回転体の回転数と前記出力側回転体の回転数との比率が実質的に1となる前記伝達ローラの位置で、前記流量制御手段が前記噴付手段への前記潤滑冷却液の流量を最大とする、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトロイダル型無段変速機。
  4. 前記支持手段の移動に伴い変化する前記伝達ローラの位置を検出するローラ位置検出手段を含めて前記流量制御手段を構成し、前記ローラ位置検出手段における検出結果に基づいて前記噴付手段への前記潤滑冷却液の流量を制御する、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
  5. 前記伝達ローラを回転自在に支持する支持体と、
    前記両回転体の回転軸方向及び前記伝達ローラの回転軸方向の双方に対して略直交する方向にスライド可能に前記支持部を保持すると共に、前記スライド方向を軸方向としてこの軸周りに回動可能に前記支持部を保持する保持部材と、
    を含めて前記支持手段を構成すると共に、
    前記噴付手段への前記潤滑冷却液の流路に介在した状態で前記支持手段に設けられ、前記保持部材に対する前記支持体の回動に連動して前記支持体の回動角度に応じて前記噴付手段側への前記潤滑冷却液の流量を調節する調節バルブを流量制御手段とした、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
  6. 前記両回転体の回転半径方向外方から前記伝達ローラを回転自在に支持すると共に、内部を貫通して前記回転半径方向に沿って前記伝達ローラと対向する対向面にて一端が開口し、他端が前記潤滑冷却液の供給側に接続された供給路が形成され、前記伝達ローラを支持した状態で前記対向面と前記伝達ローラとの間に前記潤滑冷却液を供給可能な支持体を含めて前記支持手段を構成する、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
  7. 前記噴付手段の基端側に設けられ、前記噴付手段の先端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量を調節する第1調節バルブと、
    前記供給路に設けられ、前記供給路の一端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量を調節する第2調節バルブと、
    前記第1調節バルブ及び前記第2調節バルブの双方へ接続され、前記支持手段の移動に伴い変化する前記伝達ローラの位置に応じて前記第1調節バルブ及び前記第2調節バルブをそれぞれ操作し、前記噴付手段の先端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量及び前記供給路の一端側へ流れる前記潤滑冷却液の流量を調節するバルブ操作手段と、
    を含めて前記流量調節手段を構成したことを特徴とする請求項6記載のトロイダル型無段変速機。
  8. 前記支持手段に前記噴付手段を一体的に設け、前記支持手段と共に前記噴付手段を一体的に移動可能とした、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
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