JP2004052793A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】高密封性に優れ、且つ安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】本発明の転がり軸受10は、一対の軌道輪11,12と、一対の軌道輪間に配された保持器13と、保持器13によって保持された複数の転動体14と、いずれか一方の軌道輪11に一端側を固定するとともに他端側が他方の軌道輪12の周面との間でラビリンスすきまaを形成して配設された非接触型の密封板15とからなる。この転がり軸受10は、密封板15と対向する軌道輪周面位置に、軸受径方向に深さを有して潤滑油を保持する凹状溝21が形成されている。また、凹状溝21は、溝深さとラビリンスすきまとの比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれている。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の転がり軸受10は、一対の軌道輪11,12と、一対の軌道輪間に配された保持器13と、保持器13によって保持された複数の転動体14と、いずれか一方の軌道輪11に一端側を固定するとともに他端側が他方の軌道輪12の周面との間でラビリンスすきまaを形成して配設された非接触型の密封板15とからなる。この転がり軸受10は、密封板15と対向する軌道輪周面位置に、軸受径方向に深さを有して潤滑油を保持する凹状溝21が形成されている。また、凹状溝21は、溝深さとラビリンスすきまとの比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ用の軸受や高密封性を要求される軸受のうち、特に、ブラシ粉やダスト粉が発生する使用環境で用いられる転がり軸受及び、潤滑油の漏れによる不具合が懸念される環境で用いられる転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転がり軸受として、例えば特開平11−2252号公報や特開平11−62999号公報に開示されたものがある。
図2に示すように、従来の転がり軸受30は、全体を円輪状に形成し、外周縁部に断面形状が略円形の折り返し部32を全周に亙って形成した密封板であるシールド板31を備えている。シールド板31の外周縁を装着する外輪33の端部内周面に、係止溝34を全周に形成している。係止溝34の左右両側を仕切る一対の側面のうち、外輪軌道側の側面は、端面寄りの側面よりも高くしている。シールド板31の直径方向中央部に形成した段部傾斜部35と折り返し部32との間に、平坦部36を形成している。
【0003】
このような転がり軸受30は、平坦部36の内側面と係止溝34の内側側面との間で弾性的に挟持されたシール材37が、外輪33の内周面と内輪38の外周面との間に存在して複数の転動体39を設けた軸受空間からグリース又はグリース中の基油成分が漏出することを防止する。
【0004】
また、図3に示したように、別の従来の転がり軸受40は、軸受空間内で、転動体であるボール42に対面する平板状部43を有し、平板状部43から径方向外向きに延びて外輪44の段部45の底面に圧接している圧接底部46を有する密封板であるシールド板41を備えている。
また、圧接底部46から軸方向外向きに湾曲するカール部47が形成されている。カール部47は、外輪段部45の肩部に固定される。シールド板41には、外輪段部45と圧接する底部46を径方向に越えた位置からカール部47を外向きに延びる切欠き48が形成されている。
【0005】
このような転がり軸受40は、シールド板41に、カール部47を設けることにより、シールド板41を外輪板みぞに加締め装着する場合、カール部47が外輪板みぞの変形に追随して加締めが行われる。
一般的に、低トルクが要求される転がり軸受においては、上記のような非接触のシールド板(密封板)が用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常、転がり軸受においては、回転速度変化に応じた内部空気温度変化などから、軸受内部に負圧が発生することが知られており、密封板の端部と軌道輪周面とに間に、呼吸作用を行うためのラビリンスすきまが設けられている。
しかしながら、上記転がり軸受30,40では、運転中に軸受空間内で発生した負圧により、密封板と内輪の周面との間に形成されるラビリンスすきまを通じてブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入する心配がある。
そして、異物が軸受空間内に侵入すると、異物が混入した潤滑油によって潤滑が行われるため、軌道面と転動体とが早期に焼き付き、安定性及び耐久性を長期にわたって維持することが困難になる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高密封性に優れ、且つ安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる転がり軸受を提供することを目的する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の転がり軸受は、一対の軌道輪と、前記一対の軌道輪間に配された保持器と、前記保持器によって保持された複数の転動体と、いずれか一方の前記軌道輪に一端側を固定するとともに他端側が他方の軌道輪周面との間でラビリンスすきまを形成して配設された非接触型の密封板とからなる転がり軸受において、前記密封板と対向する軌道輪周面位置に、軸受径方向に深さを有して潤滑油を保持する凹状溝が形成されており、該凹状溝は、溝深さと前記ラビリンスすきまとの比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれていることを特徴とする。
【0009】
前記構成の転がり軸受によれば、密封板と対向する軌道輪周面位置に、溝深さとラビリンスすきまと比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれた凹状溝が形成されている。そのため、軸受空間内に封入された潤滑油は、ラビリンスすきまの位置で凹状溝に入り込んで滞留し、軌道輪周面上に盛り上がってラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。
したがって、軸受の運転中に、ブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入せずに、軸受空間の高密封性を高く維持することができる。
また、ラビリンスすきまが潤滑油によって塞がれるため、軸受空間内に封入されている潤滑油が軸受外部に漏れ出ることがないので、安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる。
【0010】
また、請求項2記載の転がり軸受は、前記凹状溝が、軌道輪周面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
【0011】
前記構成の転がり軸受によれば、凹状溝は、軌道輪周面の少なくとも一方に設けられれば良い。軌道輪周面の一方にのみ凹状溝を設けた場合、凹状溝が設けられた軸受側面側を、モータシャフト上のコンミュテータ等のブラシ粉やダスト粉等の異物を多く発生する部位側に配置するのが好ましい。
したがって、軸受空間内に封入された潤滑油が、ラビリンスすきまの位置で凹状溝に入り込んで滞留し、軌道輪周面上に盛り上がってラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。凹状溝が、軌道輪周面の両方に設けられた場合、組付けに係わる方向の勝手がなくなり、誤組み込み等を解消することができる。
【0012】
更に、請求項3記載の転がり軸受は、前記密封板の他端部に、前記凹状溝に対向する位置で他方の軌道輪周面に沿って配置された環状部が形成されている請求項1又は2記載の転がり軸受。
【0013】
前記構成の転がり軸受によれば、密封板の他端部に、凹状溝に略対向する位置で他方の軌道輪の周面に沿って配置された環状部を形成すれば、内輪回転で運転される際及び、外輪回転で運転される際に、環状部により凹状溝に入り込んだ潤滑油が流れ出ないようにせき止められる。
したがって、凹状溝に入り込んだ潤滑油が、環状部によって保持されてラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転がり軸受の一実施形態を図1に基づいて説明する。図1(a)は本実施形態の転がり軸受を示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)における拡大図である。
図1(a)に示すように、本実施形態の転がり軸受10は、深溝玉軸受であって、軌道輪である外輪11と、軌道輪である内輪12と、外輪11及び内輪12間に配されたもみぬき保持器13と、もみぬき保持器13の周方向に転動自在に保持された複数の転動体である玉14と、玉14に対して軸方向両側に配された環状で非接触の密封板であるシール部材15とを備えている。
【0015】
外輪11の外輪軌道面16に連設する外輪周面部17の両端部には、軸受径方向に凹状をなすシール部材固定部18が形成されている。
内輪12の内輪軌道面19に連設する内輪周面部20の一方の端部寄りには、軸受径方向に深さを有する断面視四角形の凹状溝21が形成されている。凹状溝21は、内輪周面部20の周方向に連続して形成されている。
【0016】
シール部材15は、例えば、JIS SPCC等の鋼板よりプレス加工して製作した金属製板を用いて環状に形成されている。
シール部材15の一端側である外周縁部には、折り返し部22が形成されている。折り返し部22は、外輪11のシール部材固定部18に加締め固定される。シール部材15には、折り返し部22から内輪12の内輪周面部20に向けて平坦状をなす板部23が形成されている。板部23は、軸受空間を覆うように配置されている。このシール部材15は、内輪12の内輪周面部20に接触しない非接触型である。
【0017】
シール部材15の他端側である内周縁部には、板部23の内周側端部から軸受内部に向けて延出されていて内輪12の内輪周面部20に沿って配置された環状の環状部24が形成されている。
環状部24は、内輪12の内輪周面部20に沿って配置されているため、この環状部24と内輪12の内輪周面部20との間に、軸受内部と軸受外部とを連通するラビリンスすきまaが形成されている。環状部24の先端部は、内輪12の凹状溝21の中央部に対応して位置している。
【0018】
一対のシール部材15によって外部から仕切られた軸受内部空間に、潤滑油であるグリースが封入されており、そのグリースによって玉14と外輪11の外輪軌道面16及び内輪12の内輪軌道面19との間や、玉14ともみぬき保持器13との間が潤滑される。
【0019】
図1(b)に示すように、凹状溝21は、シール部材15の環状部24の先端部に対応した内輪周面部20の位置に形成されている。凹状溝21は、溝深さeが、ラビリンスすきまaよりも大きく形成され、溝幅fが、ラビリンスすきまaよりも大きく形成されている。
具体的には、凹状溝21の溝深さeとラビリンスすきまaとの比は、e/a≧1に選ばれている。そのため、軸受の運転中に、軸受空間内に封入された潤滑油25の一部が、凹状溝21内に入り込んで盛り上がり、シール部材15の環状部2 4の先端部に架橋されるようにしてラビリンスすきまaを塞ぐことができる。
【0020】
このような転がり軸受10は、外輪11が、モータヨークやモータケースに保持され、内輪12が、モータシャフトやモータシャフトに結合された回転軸に嵌合される。そして、凹状溝21が設けられた軸受側面側が、モータシャフト上のコンミュテータ等のブラシ粉やダスト粉等の異物を多く発生する部位側に配置されてモータ内に装着される。軸受空間内に封入された潤滑油25は、凹状溝21内に入り込んでいる。
したがって、モータが運転中に、凹状溝21内に入り込んだ潤滑油25が盛り上がり、シール部材15の環状部24の先端部に架橋されるようにして、ラビリンスすきまaを塞ぐ。
【0021】
そのため、モータの運転中に、コンミュテータとブラシとの接触等によりモータ内部で飛散するブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入しない。もちろん、ラビリンスすきまaが閉塞されているため、軸受空間内に封入されている潤滑油25が軸受外部に漏れ出ることもない。
【0022】
上記構成の転がり軸受10によれば、シール部材15と対向する内輪周面部20に、溝深さeとラビリンスすきまaとの比が、e/a≧1に選ばれた凹状溝21が内輪周面部20の一方に形成され、シール部材15の他端部に、凹状溝21に略対向する位置で内輪12の内輪周面部20に沿って配置された環状部24が形成されている。そのため、軸受空間内に封入された潤滑油25が、ラビリンスすきまaの位置で凹状溝21に入り込んで滞留して内輪周面部20上に盛り上がり、環状部25に架橋されてラビリンスすきまaを確実に閉塞する。
したがって、運転中に、ブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入せずに、軸受空間の高密封性を高く維持することができる。そして、ラビリンスすきまaが潤滑油によって塞がれるため、軸受空間内に封入されている潤滑油25が軸受外部に漏れ出ることがないので、安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる。
【0023】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、深溝玉軸受に代えて、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円す いころ軸受等に適用しても良い。
また、凹状溝21を、内輪周面部20のシール部材15側に一対に設けても良く、凹状溝21の形状を、潤滑油25が入り込み易い形状であれば、湾曲凹、半円凹状、半球凹状等にしても良い。
また、凹状溝21は、内輪周面部20の周方向に連続せずに、内輪周面部20の周方向上のある範囲に連続的或いは断続的に設けても良く、凹状溝21の溝幅は、潤滑油25が入り込み易い大きさに任意に設定することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の転がり軸受によれば、密封板と対向する軌道輪周面位置に、溝深さとラビリンスすきまと比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれた凹状溝が形成されているので、軸受空間内に封入された潤滑油によりラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。
したがって、軸受空間内に異物が侵入するようなことはなく、軸受空間の高密封性を高く維持することができる。
また、ラビリンスすきまが潤滑油によって塞がれるため、軸受空間内に封入されている潤滑油が軸受外部に漏れ出ることがないので、高密封性に優れ、且つ安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の転がり軸受の一実施形態を示す断面図、(b)は(a)における要部の拡大図である。
【図2】従来の転がり軸受を示す断面図である。
【図3】従来の別の転がり軸受を示す断面図である。
【符号の説明】
10 転がり軸受
11 外輪(軌道輪)
12 内輪(軌道輪)
13 もみぬき保持器(保持器)
14 玉(転動体)
15 シール部材(密封板)
21 凹状溝
24 環状部
25 潤滑油
a ラビリンスすきま
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ用の軸受や高密封性を要求される軸受のうち、特に、ブラシ粉やダスト粉が発生する使用環境で用いられる転がり軸受及び、潤滑油の漏れによる不具合が懸念される環境で用いられる転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転がり軸受として、例えば特開平11−2252号公報や特開平11−62999号公報に開示されたものがある。
図2に示すように、従来の転がり軸受30は、全体を円輪状に形成し、外周縁部に断面形状が略円形の折り返し部32を全周に亙って形成した密封板であるシールド板31を備えている。シールド板31の外周縁を装着する外輪33の端部内周面に、係止溝34を全周に形成している。係止溝34の左右両側を仕切る一対の側面のうち、外輪軌道側の側面は、端面寄りの側面よりも高くしている。シールド板31の直径方向中央部に形成した段部傾斜部35と折り返し部32との間に、平坦部36を形成している。
【0003】
このような転がり軸受30は、平坦部36の内側面と係止溝34の内側側面との間で弾性的に挟持されたシール材37が、外輪33の内周面と内輪38の外周面との間に存在して複数の転動体39を設けた軸受空間からグリース又はグリース中の基油成分が漏出することを防止する。
【0004】
また、図3に示したように、別の従来の転がり軸受40は、軸受空間内で、転動体であるボール42に対面する平板状部43を有し、平板状部43から径方向外向きに延びて外輪44の段部45の底面に圧接している圧接底部46を有する密封板であるシールド板41を備えている。
また、圧接底部46から軸方向外向きに湾曲するカール部47が形成されている。カール部47は、外輪段部45の肩部に固定される。シールド板41には、外輪段部45と圧接する底部46を径方向に越えた位置からカール部47を外向きに延びる切欠き48が形成されている。
【0005】
このような転がり軸受40は、シールド板41に、カール部47を設けることにより、シールド板41を外輪板みぞに加締め装着する場合、カール部47が外輪板みぞの変形に追随して加締めが行われる。
一般的に、低トルクが要求される転がり軸受においては、上記のような非接触のシールド板(密封板)が用いられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通常、転がり軸受においては、回転速度変化に応じた内部空気温度変化などから、軸受内部に負圧が発生することが知られており、密封板の端部と軌道輪周面とに間に、呼吸作用を行うためのラビリンスすきまが設けられている。
しかしながら、上記転がり軸受30,40では、運転中に軸受空間内で発生した負圧により、密封板と内輪の周面との間に形成されるラビリンスすきまを通じてブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入する心配がある。
そして、異物が軸受空間内に侵入すると、異物が混入した潤滑油によって潤滑が行われるため、軌道面と転動体とが早期に焼き付き、安定性及び耐久性を長期にわたって維持することが困難になる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高密封性に優れ、且つ安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる転がり軸受を提供することを目的する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の転がり軸受は、一対の軌道輪と、前記一対の軌道輪間に配された保持器と、前記保持器によって保持された複数の転動体と、いずれか一方の前記軌道輪に一端側を固定するとともに他端側が他方の軌道輪周面との間でラビリンスすきまを形成して配設された非接触型の密封板とからなる転がり軸受において、前記密封板と対向する軌道輪周面位置に、軸受径方向に深さを有して潤滑油を保持する凹状溝が形成されており、該凹状溝は、溝深さと前記ラビリンスすきまとの比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれていることを特徴とする。
【0009】
前記構成の転がり軸受によれば、密封板と対向する軌道輪周面位置に、溝深さとラビリンスすきまと比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれた凹状溝が形成されている。そのため、軸受空間内に封入された潤滑油は、ラビリンスすきまの位置で凹状溝に入り込んで滞留し、軌道輪周面上に盛り上がってラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。
したがって、軸受の運転中に、ブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入せずに、軸受空間の高密封性を高く維持することができる。
また、ラビリンスすきまが潤滑油によって塞がれるため、軸受空間内に封入されている潤滑油が軸受外部に漏れ出ることがないので、安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる。
【0010】
また、請求項2記載の転がり軸受は、前記凹状溝が、軌道輪周面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
【0011】
前記構成の転がり軸受によれば、凹状溝は、軌道輪周面の少なくとも一方に設けられれば良い。軌道輪周面の一方にのみ凹状溝を設けた場合、凹状溝が設けられた軸受側面側を、モータシャフト上のコンミュテータ等のブラシ粉やダスト粉等の異物を多く発生する部位側に配置するのが好ましい。
したがって、軸受空間内に封入された潤滑油が、ラビリンスすきまの位置で凹状溝に入り込んで滞留し、軌道輪周面上に盛り上がってラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。凹状溝が、軌道輪周面の両方に設けられた場合、組付けに係わる方向の勝手がなくなり、誤組み込み等を解消することができる。
【0012】
更に、請求項3記載の転がり軸受は、前記密封板の他端部に、前記凹状溝に対向する位置で他方の軌道輪周面に沿って配置された環状部が形成されている請求項1又は2記載の転がり軸受。
【0013】
前記構成の転がり軸受によれば、密封板の他端部に、凹状溝に略対向する位置で他方の軌道輪の周面に沿って配置された環状部を形成すれば、内輪回転で運転される際及び、外輪回転で運転される際に、環状部により凹状溝に入り込んだ潤滑油が流れ出ないようにせき止められる。
したがって、凹状溝に入り込んだ潤滑油が、環状部によって保持されてラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転がり軸受の一実施形態を図1に基づいて説明する。図1(a)は本実施形態の転がり軸受を示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)における拡大図である。
図1(a)に示すように、本実施形態の転がり軸受10は、深溝玉軸受であって、軌道輪である外輪11と、軌道輪である内輪12と、外輪11及び内輪12間に配されたもみぬき保持器13と、もみぬき保持器13の周方向に転動自在に保持された複数の転動体である玉14と、玉14に対して軸方向両側に配された環状で非接触の密封板であるシール部材15とを備えている。
【0015】
外輪11の外輪軌道面16に連設する外輪周面部17の両端部には、軸受径方向に凹状をなすシール部材固定部18が形成されている。
内輪12の内輪軌道面19に連設する内輪周面部20の一方の端部寄りには、軸受径方向に深さを有する断面視四角形の凹状溝21が形成されている。凹状溝21は、内輪周面部20の周方向に連続して形成されている。
【0016】
シール部材15は、例えば、JIS SPCC等の鋼板よりプレス加工して製作した金属製板を用いて環状に形成されている。
シール部材15の一端側である外周縁部には、折り返し部22が形成されている。折り返し部22は、外輪11のシール部材固定部18に加締め固定される。シール部材15には、折り返し部22から内輪12の内輪周面部20に向けて平坦状をなす板部23が形成されている。板部23は、軸受空間を覆うように配置されている。このシール部材15は、内輪12の内輪周面部20に接触しない非接触型である。
【0017】
シール部材15の他端側である内周縁部には、板部23の内周側端部から軸受内部に向けて延出されていて内輪12の内輪周面部20に沿って配置された環状の環状部24が形成されている。
環状部24は、内輪12の内輪周面部20に沿って配置されているため、この環状部24と内輪12の内輪周面部20との間に、軸受内部と軸受外部とを連通するラビリンスすきまaが形成されている。環状部24の先端部は、内輪12の凹状溝21の中央部に対応して位置している。
【0018】
一対のシール部材15によって外部から仕切られた軸受内部空間に、潤滑油であるグリースが封入されており、そのグリースによって玉14と外輪11の外輪軌道面16及び内輪12の内輪軌道面19との間や、玉14ともみぬき保持器13との間が潤滑される。
【0019】
図1(b)に示すように、凹状溝21は、シール部材15の環状部24の先端部に対応した内輪周面部20の位置に形成されている。凹状溝21は、溝深さeが、ラビリンスすきまaよりも大きく形成され、溝幅fが、ラビリンスすきまaよりも大きく形成されている。
具体的には、凹状溝21の溝深さeとラビリンスすきまaとの比は、e/a≧1に選ばれている。そのため、軸受の運転中に、軸受空間内に封入された潤滑油25の一部が、凹状溝21内に入り込んで盛り上がり、シール部材15の環状部2 4の先端部に架橋されるようにしてラビリンスすきまaを塞ぐことができる。
【0020】
このような転がり軸受10は、外輪11が、モータヨークやモータケースに保持され、内輪12が、モータシャフトやモータシャフトに結合された回転軸に嵌合される。そして、凹状溝21が設けられた軸受側面側が、モータシャフト上のコンミュテータ等のブラシ粉やダスト粉等の異物を多く発生する部位側に配置されてモータ内に装着される。軸受空間内に封入された潤滑油25は、凹状溝21内に入り込んでいる。
したがって、モータが運転中に、凹状溝21内に入り込んだ潤滑油25が盛り上がり、シール部材15の環状部24の先端部に架橋されるようにして、ラビリンスすきまaを塞ぐ。
【0021】
そのため、モータの運転中に、コンミュテータとブラシとの接触等によりモータ内部で飛散するブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入しない。もちろん、ラビリンスすきまaが閉塞されているため、軸受空間内に封入されている潤滑油25が軸受外部に漏れ出ることもない。
【0022】
上記構成の転がり軸受10によれば、シール部材15と対向する内輪周面部20に、溝深さeとラビリンスすきまaとの比が、e/a≧1に選ばれた凹状溝21が内輪周面部20の一方に形成され、シール部材15の他端部に、凹状溝21に略対向する位置で内輪12の内輪周面部20に沿って配置された環状部24が形成されている。そのため、軸受空間内に封入された潤滑油25が、ラビリンスすきまaの位置で凹状溝21に入り込んで滞留して内輪周面部20上に盛り上がり、環状部25に架橋されてラビリンスすきまaを確実に閉塞する。
したがって、運転中に、ブラシ粉やダスト粉等の異物が軸受空間内に侵入せずに、軸受空間の高密封性を高く維持することができる。そして、ラビリンスすきまaが潤滑油によって塞がれるため、軸受空間内に封入されている潤滑油25が軸受外部に漏れ出ることがないので、安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる。
【0023】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、深溝玉軸受に代えて、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円す いころ軸受等に適用しても良い。
また、凹状溝21を、内輪周面部20のシール部材15側に一対に設けても良く、凹状溝21の形状を、潤滑油25が入り込み易い形状であれば、湾曲凹、半円凹状、半球凹状等にしても良い。
また、凹状溝21は、内輪周面部20の周方向に連続せずに、内輪周面部20の周方向上のある範囲に連続的或いは断続的に設けても良く、凹状溝21の溝幅は、潤滑油25が入り込み易い大きさに任意に設定することができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の転がり軸受によれば、密封板と対向する軌道輪周面位置に、溝深さとラビリンスすきまと比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれた凹状溝が形成されているので、軸受空間内に封入された潤滑油によりラビリンスすきまを確実に塞ぐことができる。
したがって、軸受空間内に異物が侵入するようなことはなく、軸受空間の高密封性を高く維持することができる。
また、ラビリンスすきまが潤滑油によって塞がれるため、軸受空間内に封入されている潤滑油が軸受外部に漏れ出ることがないので、高密封性に優れ、且つ安定性及び耐久性を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の転がり軸受の一実施形態を示す断面図、(b)は(a)における要部の拡大図である。
【図2】従来の転がり軸受を示す断面図である。
【図3】従来の別の転がり軸受を示す断面図である。
【符号の説明】
10 転がり軸受
11 外輪(軌道輪)
12 内輪(軌道輪)
13 もみぬき保持器(保持器)
14 玉(転動体)
15 シール部材(密封板)
21 凹状溝
24 環状部
25 潤滑油
a ラビリンスすきま
Claims (3)
- 一対の軌道輪と、前記一対の軌道輪間に配された保持器と、前記保持器によって保持された複数の転動体と、いずれか一方の前記軌道輪に一端側を固定するとともに他端側が他方の軌道輪周面との間でラビリンスすきまを形成して配設された非接触型の密封板とからなる転がり軸受において、
前記密封板と対向する軌道輪周面位置に、軸受径方向に深さを有して潤滑油を保持する凹状溝が形成されており、該凹状溝は、溝深さと前記ラビリンスすきまとの比が、e/a≧1(但し、eは溝深さ、aはラビリンスすきま)に選ばれていることを特徴とする転がり軸受。 - 前記凹状溝が、軌道輪周面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
- 前記密封板の他端部に、前記凹状溝に対向する位置で他方の軌道輪周面に沿って配置された環状部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の転がり軸受。
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2002
- 2002-07-16 JP JP2002207048A patent/JP2004052793A/ja active Pending
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