JP2004051963A - 水性顔料分散体の製造方法及び水性顔料記録液の製造方法 - Google Patents

水性顔料分散体の製造方法及び水性顔料記録液の製造方法 Download PDF

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土屋 幾久郎
Masao Tanaka
田中 正夫
Harumi Sadakuni
定國 治美
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Abstract

【課題】製品設計における原料等の組成を変更することなく、高温の履歴を受けてもあまり増粒せず、記録液のノズル目詰まりや吐出不良等が生じない高度な分散安定性を有し、印字物の耐光性に優れ、かつ生産性にも優れたフタロシアニン顔料の水性顔料分散体及び水性顔料記録液の製造方法を提供する。
【解決手段】フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と有機溶剤と水とを、微分散する第1工程と、第1工程で得た水性顔料分散体から前記有機溶剤を除去する第2工程とを有する水性顔料分散体の製造方法において、前記溶剤として、前記高分子化合物を溶解し、かつ、常圧における沸点が100℃以下のアルコール系溶剤又はケトン系溶剤を用い、前記第1工程と前記第2工程との間に、前記溶剤を含有する水性顔料分散体を閉鎖系で100℃を超え150℃以下で加熱する工程を設ける。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製品設計における原料等の組成を変更することなく、印字物の耐光性に優れた水性顔料分散体と水性顔料記録液を生産性高く得ることが出来る、水性顔料分散体の製造方法及び水性顔料記録液の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フタロシアニン顔料はシアン色有機顔料であり、印刷インキ、塗料、着色成形品、静電荷現像用トナー等、その使用分野も多岐に亘っている。最近では、顔料としての優れた特徴を活かして、インクジェット記録用水性インク等の水性顔料記録液への適用を考慮したフタロシアニン顔料を含む水性顔料分散体の開発が進められている。
【0003】
この様な水性顔料分散体としては、例えば、1)スチレン−アクリル系樹脂水性エマルジョンに銅フタロシアニン顔料を機械的に強制分散した水性顔料分散体、2)銅フタロシアニン顔料の存在下の水中で分散剤を用いてスチレンやアクリル系モノマーを重合させ必要に応じて会合させた水性顔料分散体、3)銅フタロシアニン顔料と酸基を有するスチレン−アクリル系樹脂と有機溶剤の混合物を、水と塩基性物質を用いて徐徐に油相から水相に転相させて脱溶剤して得た、銅フタロシアニン顔料がスチレン−アクリル系樹脂で被覆されたマイクロカプセル型顔料の水性顔料分散体、4)銅フタロシアニン顔料と酸価を有するスチレン−アクリル系樹脂と塩基性物質と有機溶剤と水との均一混合物から脱溶剤を行い、酸性物質を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質と共に水性媒体に分散させて得た、銅フタロシアニン顔料がスチレン−アクリル系樹脂で被覆されたマイクロカプセル型顔料の水性顔料分散体等が知られている。
【0004】
この様な従来技術としては、例えば特許文献1及び2等が知られている。
そして特許文献1の実施例1及び2には、マイクロカプセル型でない顔料又はマイクロカプセル型顔料を含む水性顔料分散体を得た後、そこに含まれるメチルエチルケトン(本発明における常圧における沸点が100℃以下のケトン系溶剤に相当する。以下同様。)を、ガラス製蒸留装置に入れ開放系にて常圧蒸留除去することが記載されている。メチルエチルケトンと水とは共沸するので、この蒸留の操作により、実施例2のマイクロカプセル型顔料せよ、実施例1のマイクロカプセル型でない顔料にせよ、不可避的に、理論上では最大100℃の温度履歴を受ける。
【0005】
特許文献2には、顔料と酸価90以下のアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と水とを含有する水性顔料分散体を65〜75℃で20〜50時間にわたって加熱処理する水性顔料分散体の製造方法が記載されている。この実施例1には、有機溶剤を含まない、未加熱処理の水性顔料分散体を、開放系の70℃にて20時間加熱することが記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの製造方法で得られた水性顔料分散体を用いてインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を調製すると、いずれも調製直後では分散粒子の大きさは適当であるが、高温では短期間で必要以上に分散粒子が大きくなる(増粒する)という特徴を有しており、記録液のノズル目詰まりや吐出不良の原因となりうる。この分散粒子の増粒は、水性顔料記録液の調整時に添加される水溶性有機溶剤と顔料、樹脂との相互作用による水性顔料分散体中の分散粒子の粒子成長と密接に関連していると考えられるが、その詳細は未だ明らかにされていない。同様の傾向は、水性顔料分散体、特に水溶性有機溶剤を含んでいる水性顔料分散体に於いても多少なりとも現れる。
【0007】
また、前記のインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を用いてインクジェット記録を行った印字物の耐光性についても十分に満足のいくレベルではなく、光の作用により変色を起こし、光照射により印字濃度が低下するという問題を有していた。
【0008】
フタロシアニン顔料は公知物質であり、一般的に熱や光に対して安定な顔料として知られている。しかし、結晶型として、準安定型であるα型と、安定型のβ型等を有することが知られており、フタロシアニン顔料の一つであるα型銅フタロシアニン顔料は、例えば熱により色相が変化しやすく耐熱性が不充分であるため、熱履歴を受ける用途においては、より耐熱性に優れるβ型銅フタロシアニン顔料が使用される。
上記耐熱性以外の特性、例えば光、機械的応力等の存在下での安定性もβ型の方が良好である場合が多いため、一般的にはβ型銅フタロシアニン顔料が用いられている。また、銅フタロシアニン顔料はその粒子径が小さくなるにつれ、熱や光に対する安定性が損なわれていくことも知られている。その為、銅フタロシアニン顔料はその用途に応じて適正な粒子径となる様に設計されている。
【0009】
そこで、本発明者らは、この様な安定性に優れたフタロシアニン顔料を専ら用いた場合であっても、水性顔料分散体の製造工程中の分散工程で何らかの要因により、フタロシアニン顔料粒子の表面がアモルファス状になることで表面活性が高くなり、α型への結晶転移や過度に微細な銅フタロシアニン顔料粒子の生成が起こり、熱や光に対する安定性が低下すると仮定し、その原因を探るべく種種の実験を行った。
【0010】
その結果、耐光性に優れた印字物を与える水性顔料分散体を得るには、密閉系で100℃を超え150℃以下となる様に加熱する工程を付加することが有効であることがわかった。こうして得られた水性顔料分散体から調製した水性顔料記録液が、常態と高温長時間の履歴を受けた後の各分散粒子の平均粒子径の差が小さく、光による印字物の変色の度合いが小さいことがわかった。
【0011】
一方で、前記した特許文献2には、水溶性有機溶剤を含まない加熱処理されていない水性顔料分散体に湿潤剤、低沸点有機溶剤、水等を更に加えて得た水性顔料記録液を得た後、この水性顔料記録液を65〜75℃で20〜50時間にわたって加熱処理する水性顔料記録液の製造方法も記載されている。この実施例2には、未加熱処理の水性顔料分散体に、グリセリン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の湿潤剤と水を加えて希釈し水性顔料記録液を得た後、開放系の70℃にて20時間加熱することが記載されている。
【0012】
しかしながら、この様な水性顔料記録液を加熱する方法では、前記した水性顔料分散体での加熱に比べて、有機顔料の濃度がより低い状態において加熱が行われること、かつ、比較的低温で加熱が行われることから、印字の耐光性に優れた水性顔料記録液が得られにくいし、たとえ印字の耐光性に優れた水性顔料記録液が得られるにしても、水性顔料記録液の生産性は著しく劣ったものとなる。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−191974号公報(第9頁段落番号0072〜0075参照)
【特許文献2】
特開2000−345093号公報(第5頁段落番号0040〜第6頁0046参照)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製品設計における原料等の組成を変更することなく、高温の履歴を受けてもあまり増粒せず、インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に用いても記録液のノズル目詰まりや吐出不良等が生じない高度な分散安定性を有し、印字物の耐光性に優れ、かつ生産性にも優れたフタロシアニン顔料の水性顔料分散体の製造方法及び水性顔料記録液の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、増粒、耐光変色の一因は水性顔料分散体もしくは水性顔料記録液中に含まれるフタロシアニン顔料粒子の表面活性が高くなっていることにあると推定し、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と有機溶剤と水とを微分散して水性顔料分散体を製造する工程と、この水性顔料分散体から前記有機溶剤を除去する工程とを有する水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法において、有機溶剤として特定の有機溶剤を用い、かつ、前記二つの工程の間において水性顔料分散体を閉鎖系で100℃を超え150℃以下で加熱する様にして、フタロシアニン顔料の表面を改質することで、高温の履歴を受けてもあまり増粒せず、印字物の耐光性に優れる水性顔料記録液を調製し得る水性顔料分散体が、開放系で100℃以下で加熱される場合より、より生産性高く得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
また、この様な水性顔料分散体の段階で加熱処理を行い、水を必須成分として希釈して調製した水性顔料記録液は、水性顔料分散体の段階で加熱処理を行わず水性顔料記録液で初めて加熱をする場合よりも、生産性高く水性顔料記録液を製造することが出来ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち本発明は、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と有機溶剤と水とを、微分散して、前記フタロシアニン顔料及び前記アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物からなる分散粒子で、かつ、平均粒子径が200nm以下の分散粒子と前記有機溶剤とを含有する水性顔料分散体を製造する第1工程と、第1工程で得た水性顔料分散体から前記有機溶剤を除去する第2工程とを有する水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法において、
(1)前記有機溶剤として、前記アニオン性基含有非架橋性高分子化合物を溶解し、かつ、常圧における沸点が100℃以下のアルコール系溶剤又はケトン系溶剤を用いること、
及び
(2)前記第1工程と前記第2工程との間に、前記有機溶剤を含有する水性顔料分散体を閉鎖系で100℃を超え150℃以下で加熱する工程を設けること
を特徴とする水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法を提供する。
【0018】
また本発明は、前記水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法で得られた水性顔料分散体に、少なくとも水を更に加えて希釈する水性顔料記録液の製造方法を提供する。
【0019】
【発明の実施形態】
本発明において、第1工程では、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と特定有機溶剤と水とを、微分散して、フタロシアニン顔料及びアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物からなる分散粒子で、かつ、平均粒子径が200nm以下の分散粒子と特定有機溶剤とを含有する水性顔料分散体を製造する。
【0020】
本発明では、この特定有機溶剤として、前記アニオン性基含有非架橋性高分子化合物を溶解し、かつ、常圧における沸点が100℃以下のアルコール系溶剤又はケトン系溶剤(以下、特定有機溶剤という。)が選択して用いられる。
【0021】
この第1工程で製造された水性顔料分散体は、以下、均一混合物という。この均一混合物は、後記する加熱工程を経ているか否かの点を除き、水性顔料分散体と同義である。
【0022】
本発明において水性媒体とは、水のみまたは水と特定有機溶剤との混合物で質量換算で60%以上の水を含んでいるものを言う。
前記均一混合物及び本発明の製造方法で得られる前記水性顔料分散体の水性媒体に分散している粒子(以下、分散粒子という。)は、フタロシアニン顔料及びアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物からなる。これら顔料と有機高分子化合物とは独立した粒子であっても良いが、アニオン性基含有非架橋有機高分子化合物で被覆されたフタロシアニン顔料である、マイクロカプセル型複合粒子であっても良い。また、これらの混合物であっても良い。以下、前記した各粒子を総括して分散粒子という。
【0023】
そして、前記均一混合物及び本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体には、いずれの粒子形態にせよ前記分散粒子が、平均粒子径が200nm以下、好ましくは50〜200nmとなる様に分散している。
【0024】
ここで、本発明における分散粒子の平均粒子径は、動的光散乱法(ドップラー散乱光解析)によるもので、レーザードップラ型粒度分析計マイクロトラック〔MICROTRAC(登録商標)UPA150型、リーズ&ノースロップ社製〕で測定したメディアン径を持って表すことが出来る。本発明における好適な実施形態、例えば実施例における分散粒子における平均粒子径は、フタロシアニン顔料粒子とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物粒子とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物で被覆されたフタロシアニン顔料たるマイクロカプセル型複合粒子全体の平均粒子径である。
【0025】
本発明で用いる有機顔料は、フタロシアニン顔料である。フタロシアニン顔料としては、例えば、β型銅フタロシアニン顔料とα型銅フタロシアニン顔料のいずれも使用できるが、最適にはα型を含まないβ型銅フタロシアニン顔料を用いる。
【0026】
この様なフタロシアニン顔料は、前記均一混合物及び本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体中、質量換算によるフタロシアニン顔料含有率8%を超え40%以下となる様に、好ましくは、8.5〜30%となる様に調製する。
【0027】
本発明の製造方法によれば、第1工程で製造された均一混合物は、後に詳記する加熱工程を経ると、前記した印字耐光性のみならず、高温の履歴を受けても増粒せず、分散粒子の平均粒子径の変化が小さく、インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に用いても記録液のノズル目詰まりや吐出不良等が生じない高度な分散安定性を有した水性顔料分散体となる。
【0028】
従来、当業界では水性顔料分散体や水性顔料記録液の原料、化学組成等の変更やそれら使用量の増減の微調整にて、前記した特性を得るべく研究開発が進められて来たが、本発明の製造方法によれば、対症療法的な、煩雑な変更や微調整を行わず実質的に物理的操作のみで、前記した特性を得ることが出来る。
【0029】
本発明において、第2工程では、こうして加熱工程を経て製造された水性顔料分散体から特定有機溶剤を除去することで、水性顔料記録液用水性顔料分散体を製造することが出来る。
【0030】
フタロシアニン顔料の水性顔料分散体の製造方法は、上記の従来の技術の欄に記載した1)〜4)の様に、幾つもの製造方法が知れられている。本発明の製造方法は、これらの製造方法のいずれにも適用することが出来るが、従来技術4)に上記加熱工程を適用する際には、次の様に行うことが出来る。この方法は好適な方法である。
【0031】
まず、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と有機溶剤と水とを微分散して水性顔料分散体(均一混合物)を製造し、この均一混合物から脱溶剤を行い、酸性物質を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質と共に水性媒体に分散させる、前記マイクロカプセル型複合粒子の水性顔料分散体の製造方法に従って、第1工程に当たる前記水性顔料分散体(均一混合物)を製造する工程で、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と特定有機溶剤と水とを、前記所定平均粒子径なる様に、後記する分散装置を用いて微分散する。
【0032】
この微分散は、好適には、例えば、後に詳記する様に、粉砕媒体と回転数と時間を選択し、攪拌羽根等を必要に応じて併用し、粉砕媒体の運動エネルギーにより被分散物の混合分散を行い、均一な分散物を調製する装置(以下、メディアミルという。)を用いて行う。
【0033】
本発明の製造方法における、特定有機溶剤を含有する水性顔料分散体を加熱した後に得られる水性顔料分散体中において、フタロシアニン顔料は、アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と別個の粒子として存在している場合より、前記マイクロカプセル型複合粒子として存在しているのが好ましく、前記した状態となる様に分散させた場合に、より分散レベルおよび分散安定性に優れた水性顔料分散体を得ることができる。
【0034】
本発明におけるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物は、架橋性を有さずしかも架橋した部分も有さないが、アニオン性基を有するものである。本発明における非架橋性とは、熱や光等の作用があっても架橋せず、しかも結果的にも架橋した部分を含まないことを意味する。この様なアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物としては、例えばカルボキシル基、スルホン基、ホスホ基、チオカルボキシル基等を含有するアニオン性基含有モノマーとこれらアニオン性基含有モノマーと共重合し得るその他のモノマーを共重合させて得られるアニオン性基含有非架橋有機高分子化合物が挙げられる。
【0035】
しかしながら、原料モノマーの入手のしやすさ、価格等を考慮すると、カルボキシル基またはスルホン基を含有するアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物が好ましく、電気的中性状態とアニオン状態の共存範囲を広く制御できる点でカルボキシル基を含有するアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物が特に好ましい。
【0036】
本発明の第1工程で用いられる好適なアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物は、アニオン性基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって架橋性を有さないものである。本発明においては、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの両方を包含して(メタ)アクリル酸エステルと呼ぶものとする。また(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として重合した重合体を意味する。
【0037】
最適なアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物は、カルボキシル基およびカルボキシラート基の両方を含有するアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物である。
【0038】
前記アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物を調製する際のアニオン性基含有モノマーとしては、カルボキシル基またはスルホン基を含有するモノマーが挙げられる。
【0039】
ここで、カルボキシル基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、4−ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸類;コハク酸ビニル、マレイン酸アリル、テレフタル酸ビニル、トリメリット酸アリル等の多塩基酸不飽和エステル類が挙げられる。またスルホン酸基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸2−スルホエチル、メタクリル酸4−スルホフェニル等の不飽和カルボン酸スルホ置換アルキルまたはアリールエステル類;スルホコハク酸ビニル等のスルホカルボン酸不飽和エステル類;スチレン−4−スルホン酸等のスルホスチレン類を挙げることができる。
【0040】
アニオン性基含有モノマーと共重合し得るその他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルの様な(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルの様な(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等の不飽和脂肪酸エステル類;(メタ)アクリルアミドの様な不飽和脂肪酸アミド類;(メタ)アクリロニトリルの様な不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルの様なカルボン酸不飽和エステル類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルの様なの不飽和エーテル類;スチレン、α−メチルスチレンの様なスチレン類;上記例示モノマー中のカルボキシル基、水酸基、アミノ基等活性水素を有する置換基を含有するモノマーとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シキロヘキセンオキシド等、エポキシド類との反応生成物;上記例示モノマー中の水酸基、アミノ基等を有する置換基を含有するモノマーと酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸等カルボン酸類との反応生成物等を挙げることができる。
【0041】
かかるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の従来より公知の種々の反応方法によって合成することができる。
【0042】
本発明の第1工程で用いられるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の重量平均分子量は2,000〜100,000の範囲にあることが好ましく、5,000〜50,000の範囲にあることが特に好ましい。重量平均分子量が小さすぎると均一混合物又は本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体自体の分散安定性が低下し、大きすぎると分散体の粘度が高くなるだけでなく、分散性が低下する傾向が認められる。また重量平均分子量が小さすぎたり大きすぎる場合には、水性顔料分散体を例えばインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に適用した場合に、印字特性に関して悪影響を及ぼし、長期間安定した印字を行わせることが困難になることもがあるので好ましくない。
【0043】
また本発明の第1工程に用いられるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の酸価およびガラス転移点はそれぞれ30〜220mgKOH/gおよび−20〜200℃の範囲にあることが好ましい。前記調製に用いるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の酸価が低すぎる場合には、それを含む均一混合物又は本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体の分散性や分散安定性が低下し、またそれを含む均一混合物又は本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体をインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に適用した場合の印字安定性が悪くなるので好ましくない。前記調製に用いるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の酸価が高すぎる場合には、それを含む均一混合物又は本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体をインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に適用した場合に印字の耐水性が低下するので好ましくない。
【0044】
アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物のガラス転移点が高すぎる場合には、それを含む均一混合物又は本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体をインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に適用した場合に安定した印字が得にくく、低すぎる場合には、記録液からの印字の耐摩擦性、耐棒積み性等の印字保存性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明におけるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物は、アニオン性基の少なくとも一部が塩基性物質によってイオン化された形態をとっていることが分散性、分散安定性の発現のうえで好ましい。アニオン性基のうちイオン化された基の最適割合は、用いるアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の組成、分子量、酸価等により変化するため一意的に限定されるものではないが、所望の分散性、分散安定性が発現される範囲であればよく、通常30〜100%、特に70〜100%の範囲に設定されることが好ましい。このイオン化された基の割合はアニオン性基と塩基性物質のモル比を意味しているのではなく、解離平衡を考慮に入れたものである。例えばアニオン性基がカルボキシル基の場合、化学量論的に等量の強塩基性物質を用いても解離平衡によりイオン化された基の割合は100%未満であって、カルボキシラート基とカルボキシル基の混在状態である。
【0046】
このように、アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の、アニオン性基の少なくとも一部をイオン化するために用いる塩基性物質としては、公知慣用のものが挙げられが、例えばアンモニア、第一級、第二級もしくは第三級の有機アミン(塩基性含窒素複素環化合物を含む)、水酸化アルカリ金属からなる群から選ばれる化合物が好適には挙げられる。これらの例示した好適な塩基性物質でアニオン性基の少なくとも一部をイオン化することにより、カルボキシラート基の対イオンは、アンモニウムイオン(塩基性含窒素複素環化合物のプロトン化カチオンを含む)、アルカリ金属イオンからなる群から選ばれるカチオンとなる。
【0047】
本発明の製造方法においてフタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の比率は、質量換算でフタロシアニン顔料100部に対しアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物(不揮発分)10〜200部が好ましい。アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の比率が低すぎる場合には、それを含む均一混合物又は本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体をインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に適用した場合に、その記録液からの印字の耐摩擦性が低下する傾向があり、一方、同比率が逆に高すぎる場合にはインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に適用した場合に、記録液の粘度が高くなる傾向が認められる。
【0048】
本発明において第1工程で均一混合物を得る際の特定有機溶剤の量は、特に制限されないが、好ましくは、質量換算で、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と特定有機溶剤と水の合計を100%とした時、2〜20%となる量である。
【0049】
前記第1工程において用いることのできる分散装置としては、例えばビーズ、ロッド、ボールと呼ばれる大小かつ種種の形状の金属やセラミックやガラス製の粉砕媒体(メディア)の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌による剪断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の各種分散方式の分散装置を用いることができるが、好適にはメディアミルが用いられる。
【0050】
このメディアミルとしては、例えば、サンドミル、ビースミル、アトライタ(登録商標)等がある。具体的には、SCミル(三井鉱山(株)製)、ドライスミル(ドライスベルゲ社製)等が挙げられる。
【0051】
前記第1工程においては特定有機溶剤を併用するが、それによりこの分散工程における均一混合物の液粘度を低下させることができる場合がある。
【0052】
本発明においては、特定有機溶剤が用いられる。この特定有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が挙げられる。この特定有機溶剤は、アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物を溶解するので、第1工程において製造される均一混合物の粘度を比較的低くすることが出来、かつ常圧における沸点も比較的低いので、第2工程における水性顔料分散体からの除去も容易である。
【0053】
こうしてフタロシアニン顔料及びアニオン性基含有非架橋有機高分子化合物とを含み、かつ、分散粒子が平均粒子径200nm以下の均一混合物が調製される。
【0054】
本発明においては、前記第1工程と後記第2工程の間に、特定有機溶剤を含有する均一混合物を閉鎖系で100℃を超え150℃以下で加熱する工程(加熱工程)を設ける。
【0055】
上記好適な方法の場合には、上記均一混合物からの脱溶剤に引き続き、酸を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質と共に水性媒体に再分散させる。
【0056】
加熱工程より前の工程で失われた特定有機溶剤は、次の加熱工程を行う前に適宜補うことが出来るし、加熱工程で必要とするより多量の特定有機溶剤が含まれる場合には、イオン交換水を加えて希釈するか又は一部脱溶剤をしてからこの加熱工程を行うことも出来る。
【0057】
加熱工程での特定有機溶剤の揮散を防止し、より短時間で所望の効果を得るためには、例えば、所定平均粒子径に微分散した均一混合物をオートクレーブの様な耐圧容器で、閉鎖系となる様にして加熱する。この閉鎖系での加熱により、結果的に系内には加圧状態が形成される。
【0058】
ここで用いる特定有機溶剤は、100℃を超えて150℃以下の温度範囲での加熱において有機顔料の粒子形状変化や結晶転移等が急激に起こらない水溶性有機溶剤であること、および有機溶剤を含まない均一混合物を調製する際の溶剤除去の際の除去容易性が要求される。これらを考慮して、この加熱工程では、特定有機溶剤としては、例えば、2−プロパノールやメチルエチルケトンの様な、常圧における沸点120℃以下の常温で液体のアルコール系溶剤またはケトン系溶剤を選択して用いる。
【0059】
この加熱工程において、水と前記特定有機溶剤とは、溶解状態にあり均一相を呈していることが好ましい。20℃における水への溶解度が比較的低い特定有機溶剤であっても、より高温に加熱することで均一相を呈する様にすることが出来る。また、より高温に加熱することでも均一相を呈する様にすることが難しい特定有機溶剤の場合は、その使用量を固定しておいて水の量を増すか、水の量を固定しておいて、特定有機溶剤をより少ない量含ませる様にする。
【0060】
本発明においては、第1工程で、液媒体としての、水と前記特定有機溶剤とが均一混合物に含められ、第1工程と第2工程の間に設けた加熱工程で、均一混合物が、100℃を超えて150℃以下となる温度に、加熱される。開放系でこの加熱を行うと、共沸点以上で、これらは気体として系外に揮散する。しかしながら、本発明では閉鎖系で加熱が行われることから、水と前記特定有機溶剤とはそのまま系内に保たれることになり、加熱中の系内の液媒体の化学組成の経時変化は起こり得ない。よって閉鎖系では、開放系での、揮散により減量した前記特定有機溶剤を逐次添加したりする手間もなく、安定的に加熱工程を実施できる。
【0061】
また、特定有機溶剤は、水との共沸点が100℃未満となるが、前記した様な均一混合物は、共沸点〜温度100℃未満での加熱では、本発明における様な、優れた印字耐光性の改良は認められないし、150℃を超える温度での加熱は、極めて耐圧性の高い加熱のための容器が必要となるし、多くのエネルギーを消費する等、本発明で規定する温度範囲外での均一混合物の加熱処理は現実的ではない。
【0062】
ちなみに、常圧における沸点が120℃を超える、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の水溶性有機溶剤を用いて、100℃を超えて150℃以下に開放系において加熱すると、有機顔料の粒子形状変化や結晶転移等が急激に起こる結果、制御不能な短時間で、印字の色相等が変化してしまう。密閉系では、この現象が更に急激に起こるため、印字の色相や耐光性の制御は極めて困難なものとなる。また、この様な水溶性有機溶剤を用いた加熱処理では、容易にそれを除去することが出来ないため、一旦作成された化学組成を変更することも出来ない。
【0063】
この加熱工程において、加熱処理するための均一混合物に含める特定有機溶剤の量は、制限されないが、特定有機溶剤の添加量が少なすぎると所望の効果が得られないし、多すぎるとフタロシアニン顔料粒子が結晶成長しすぎ、印字濃度の低下などの悪影響を及ぼす場合があるので適当な添加量を選定して加熱工程を行う。
【0064】
この加熱工程に用いる均一混合物中における特定有機溶剤の量は、好ましくは、質量換算で、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と特定有機溶剤と水のと合計を100%とした時、1〜10%となる量である。アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物及び有機溶剤として、前記有機高分子化合物の特定有機溶剤溶液を用いた場合には、この際に新たに加える特定有機溶剤の量を減らすことが出来る。
【0065】
この際の加熱時の温度と時間は、本発明の製造方法における加熱工程に用いる均一混合物に含有する特定有機溶剤の種類と量により相違するが、通常100℃を超え150℃以下で1〜10時間である。温度が低すぎると所望の効果が得られにくく、高すぎるとフタロシアニン顔料粒子が結晶成長しすぎ、印字濃度の低下などの悪影響を及ぼす場合がある。時間が短すぎると所望の効果が得られにくく、長すぎるとフタロシアニン顔料粒子が結晶成長しすぎ、印字濃度の低下などの悪影響を及ぼす場合がある。
【0066】
前記均一混合物でなく、後記する水性顔料記録液において加熱処理をすることは可能ではあるが、前記均一混合物を加熱処理することに比べて、より大きな容量の処理のための容器が必要となるし、その容量が大きくなる程、より大きな圧力の負荷に耐え得る耐圧容器が必要となる。また、容量が大きくなる程、この加熱処理に要する時間もより長時間となるし、加熱処理に要する総エネルギーもより大きくなる。従って、水性顔料記録液における加熱処理では、水性顔料記録液の生産性が著しく劣ったものとなるので現実的ではない。
【0067】
本発明の水性顔料分散体の製造プロセスに組み込み得る分散工程、加熱工程以外の工程の例としては、予備分散工程、溶解工程、希釈工程、蒸留工程、遠心分離工程、酸析工程、濾過工程、再分散工程、pH調整工程、充填工程等が挙げられる。
【0068】
予備分散工程の例には、溶液状態または溶融状態のアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物とフタロシアニン顔料を混合、分散し、スラリー状、ペースト状もしくはマスターバッチまたはチップと呼ばれる固体状態にする工程等がある。溶解工程の例には、固体状のアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物を有機溶剤、好ましくは特定有機溶剤中、または塩基性物質を含む水性媒体中に溶解させる工程、もしくはアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物の特定有機溶剤溶液を塩基性物質を含む水性媒体中に溶解させる工程等がある。
【0069】
蒸留工程としては、第1工程としての均一混合物調製のための分散工程において使用した有機溶剤や、第1工程と第2工程との間に設ける加熱工程において使用した特定有機溶剤を除去する工程、所望の不揮発分濃度にするため余剰の水を除去する工程等がある。
【0070】
本発明においては、加熱工程を経て製造された水性顔料分散体から、特定有機溶剤を除去する第2工程を有する。このために、一般的には蒸留が行われる。必要であれば、減圧蒸留を行う様にしても良い。
【0071】
本発明の製造方法に従って、印字耐光性に優れているだけでなく、分散到達レベル、分散所要時間および分散安定性の全ての面で、より優れた特性の水性顔料分散体を得るに当たっては、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物とが別個に水性媒体中に分散している場合よりも、前記マイクロカプセル型複合粒子が水性媒体中に分散していることが好ましい。マイクロカプセル型複合粒子を形成させるためには、前記加熱工程の後に、水性顔料分散体中のフタロシアニン顔料をアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物で被覆する工程を含ませることが好ましい。この被覆工程は、前記加熱工程を実施し特定有機溶剤を除去する第2工程の後に実施することが好ましい。
【0072】
この被覆工程としては、加熱工程後の水性顔料分散体に分散しているアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物を、酸性化することにより析出させる(酸析)工程が好ましい。
【0073】
酸析工程では、水性顔料分散体に塩酸、硫酸、酢酸等の酸性物質を加えて酸性化し、アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物をフタロシアニン顔料粒子表面に析出させる。この工程によりフタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋有機高分子化合物との相互作用を高めることができる。
【0074】
濾過工程としては、前記した酸析工程後に不揮発分をフィルタープレス、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置等により濾過する工程、後記遠心分離工程と同様に分散体中の粗大粒子をカートリッジフィルターやメンブランフィルターにより除去する工程、等がある。濾過工程の後に水洗工程を設けることで、塩基性物質と酸性物質との間で形成される塩を除去することが出来るので好ましい。
【0075】
再分散工程は、前記酸析工程、濾過工程によって得られた不揮発分に塩基性物質および必要により水や添加剤を加えて再び水性顔料分散体とする工程である。
【0076】
前記酸析工程と濾過工程と再分散工程とを組み合わせることで、前記マイクロカプセル型複合粒子が、実質的に水のみに安定的な分散した水性顔料分散体を得ることが出来る。再分散工程の際の塩基性物質として、第1工程の分散工程で用いたものと異なる塩基性物質を用いることで、アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物中のイオン化したアニオン性基の対イオンを変更することもできる。
【0077】
また、前記工程に更に遠心分離工程を含めることで、水性顔料記録液としての使用適性に悪影響を及ぼす水性顔料分散体中の粗大粒子を、効果的に除去することが出来る。
【0078】
本発明の製造方法は、アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物を用いることを特徴としている。エポキシ基等の架橋性基を有するアニオン性基含有架橋性有機高分子化合物を用いて上記従来技術4)の製造方法で、架橋された有機高分子化合物で顔料粒子が被覆されたマイクロカプセル型複合粒子を含む水性顔料分散体を製造する方法も考えられ、この場合には、このエポキシ基の架橋を遂行する際に、脱溶剤での条件を超える厳しい加熱が不可避的に行われる(特許文献1実施例13参照)。しかしながら、本発明で用いられるのは、加熱による架橋性を有さないし結果的に架橋もしていないアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物であるため、架橋に要する加熱工程を設ける必然性はない。従って、非架橋性の有機高分子化合物を用いた均一混合物からなる水性顔料分散体を、脱溶剤での条件を超えた厳しい条件で加熱する工程を付加的に設けること自体必然性がなく、当業者の常識を逸脱しており、本発明の加熱工程で奏される技術的効果は、当業者が予想出来なかったものである。
【0079】
本発明の前記製造方法で得られたフタロシアニン顔料を含む水性顔料分散体に、少なくとも水を更に加えて希釈することで水性顔料記録液を製造することが出来る。この際は、質量換算によるフタロシアニン顔料含有率1〜8%となる様に調製することが出来る。具体的には、水性顔料記録液に水及びインクジェット記録用水性インクのための添加剤を加えることにより、サーマル方式或いはピエゾ方式のいずれの吐出ノズルのインクジェットプリンターのインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液も調製することが出来る。本発明の製造方法で得られる水性顔料分散体は、印字耐光性に優れるばかりでなく、高温長時間の履歴を受けても常態における粘度とあまり変わらず、しかも粒子径もあまり変動しない。従って、この水性顔料分散体は、一度濾過を行えば、インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製時に添加する水や添加剤等による不溶分の発生を除けば、インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液調製工程での粒子径はほとんど変動しない。
【0080】
インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を調製するに当たり、本発明の製造方法で得られた水性顔料分散体に加えられる添加剤としては、例えば界面活性剤、水溶性有機溶剤、水溶性樹脂、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、湿潤剤等が挙げられる。尚、水溶性有機溶剤としては、上記加熱処理に用いることできるものがいずれも使用できるが、沸点100℃以上のアルコール類、多価アルコール類、アミド類、エーテル類が好ましい。
【0081】
水性顔料記録液に添加しても良い界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれでも良い。
【0082】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ベンゼンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類、ポリオキシエチレン硫酸エステル塩類、リン酸エステル塩類等が挙げられる。カチオン性界面活性剤剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン類、アミンオキシド類等が挙げられる。非イオン(ノニオン)性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンフェニルエーテル類、アセチレンアルコールエチレンオキサイド付加物類、オキシラン重合体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤の中でもHLBが14以上のものが特に好ましい。
【0083】
水性顔料記録液に添加されても良い水溶性樹脂としては、例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリュー、アルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ酸化エチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0084】
【実施例】
次に本発明を実施例及び比較例により詳細に説明する。以下、%及び部は特に断りのない限り質量基準である。
【0085】
(合成例1):スチレン/アクリル系共重合体の合成
滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を備えた容量3リットルの四つ口フラスコに、メチルエチルケトン1,000部を仕込み、窒素シール下に、攪拌しながら液温を78℃まで昇温させた後、下記から成る混合液を4時間かけて滴下した。更に、同温度で8時間反応を続けた。反応混合物を室温まで放冷した後、不揮発分が50%になるようにメチルエチルケトン(MEK)を加えて希釈して、酸価130、ガラス転移点(計算値)53℃、水酸基価32、重量平均分子量20,000の非架橋性有機高分子化合物のMEK溶液(A)を得た。
【0086】
スチレン               200部
メタクリル酸n−ブチル        500部
アクリル酸n−ブチル          25部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル    75部
メタクリル酸             200部
パーブチル(登録商標)O        80部
(日本油脂(株)製のtert−ブチルパーオキシオクトエート)
【0087】
(合成例2)
メチルエチルケトンの代わりに2−プロパノール(IPA)を用いた以外は合成例1と同様にして、酸価130、ガラス転移点(計算値)53℃、水酸基価32、重量平均分子量24,000の有機高分子化合物のIPA溶液(B)を得た。
【0088】
<実施例1>
(1)顔料分散工程
25%水酸化ナトリウム37部にイオン交換水563部を加えて攪拌し、均一になったところへ、更に合成例1で得られた有機高分子化合物のMEK溶液(A)200部を加え、有機高分子化合物中のカルボキシル基を100%中和すると共に、有機高分子化合物を溶解させた。
次いで、Fastogen(登録商標)Blue TGR(大日本インキ化学工業(株)社製C.I.Pigment Blue 15:3。β型銅フタロシアニン顔料)200部を攪拌を続けながらゆっくりと添加し、添加終了後更に30分間よく攪拌してβ型銅フタロシアニン顔料の懸濁液を得た。
このフタロシアニン顔料の懸濁液を、0.3mmのジルコニアビーズをローターとベッセル間の空隙に対して105容量%充填した充填した分散装置(SCミル450/140型、三井鉱山(株)製)を用いて、794回転/分(周速18.7m/s)にて10時間分散し、平均粒径が140nm以下の、塩基性物質で中和されたカルボキシル基を有する非架橋性有機高分子化合物とフタロシアニン顔料とMEKと水からなる均一混合物を得た。これは安定な水性顔料分散体の状態であった。
【0089】
(2)加圧加熱処理工程
得られた均一混合物の不揮発分が15%になるようにイオン交換水で希釈した後、液中のメチルエチルケトン濃度をガスクロマトグラフ((株)島津製作所製GC−14B)により分析し、その濃度が6.4%になるようにMEKを追加した。この均一混合物を閉鎖系のオートクレーブ中に仕込み、110℃で4時間攪拌加熱した。
(3)溶剤蒸留除去工程
得られた水性顔料分散体にイオン交換水を加え、不揮発分が10%になるように希釈した後、常圧蒸留によってMEKと水の一部を留去した。
(4)酸析工程
攪拌しながら溶剤蒸留後の水性顔料分散体に2%塩酸を徐々に加えて、pHを3〜5とし、非架橋性有機高分子化合物を析出させ、カルボキシル基を有する非架橋性有機高分子化合物でフタロシアニン顔料を被覆した。
(5)濾過工程及び水洗工程
カルボキシル基を有する非架橋性有機高分子化合物で被覆されたフタロシアニン顔料スラリーを濾過、水洗して、ウェットケーキを得た。
【0090】
(6)再分散工程
ウエットケーキにイオン交換水を加え不揮発分23%に調整し、ディスパーで攪拌下、水酸化カリウムの10%水溶液を加え分散体のpHを8.5〜9.5とした。更に、1時間攪拌を続けて再分散した。
(7)遠心分離工程
遠心分離機(50A−IV型、(株)佐久間製作所製)にて粗大粒子を除去した後、水を加えて、不揮発分が20%になるように調整して、塩基性物質で中和されたカルボキシル基を有する非架橋性有機高分子化合物でフタロシアニン顔料が被覆されてなる顔料(マイクロカプセル型複合粒子)を含む水性顔料分散体を得た。
【0091】
(8)インクジェット記録用水性インクの調整
上記水性顔料分散体を用い、特開平7−228808号報記載の実施例1を参考にして、下記組成でピエゾ方式のインクジェットプリンターのインクジェット記録用水性インクのための水性顔料記録液を調整した。この様にして調整した水性顔料記録液について分散安定性と耐光性を評価した。
【0092】
上記水性顔料分散体                 25.0部
イオン交換水                    49.2部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル      10.0部
ジエチレングリコール                15.0部
エタノール                      5.0部
サーフィノール(登録商標)465           0.8部
(エアプロダクツアンドケミカルス社製界面活性剤)
【0093】
(9)分散安定性の評価
得られた水性顔料記録液を80℃1日間貯蔵し、その前後での平均粒子径を比較した。平均粒子径はレーザードップラ型粒度分析計マイクロトラック〔MICROTRAC(登録商標)UPA150型、リーズ&ノースロップ社製〕で測定したメディアン径を持って平均粒子径とした。粘度はR型粘度計(R−500型、東機産業(株)製)を用い、20℃にて測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(10)耐光性の評価
得られた水性顔料記録液を用い、ピエゾ方式のインクジェットプリンタ(MJ−8000C型、セイコーエプソン(株)製)にてカラーBJペーパー(キャノン(株)製)に印字を行った。得られた印字物を耐光試験機(FAL−5H型、スガ試験機(株)製)で300時間の耐光試験を行い、試験前後の印字濃度を比較した。印字濃度はグレタグ濃度計〔GRETAG(登録商標)D186型、グレタグ社製〕を用いてブルースケールにて測定した。結果を表1に示す。
表1から分かるように、本実施例で得られた水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に優れたものであった。
【0095】
<実施例2>
実施例1で得た水性顔料分散体を用い、特開平6−122846号公報記載の実施例2を参考にして、下記組成にて水性顔料記録液を調整し、サーマル式のインクジェットプリンタ(BJC−600J型、キヤノン(株)製)にて印字を行った以外は、実施例1と同様にして、分散安定性及び耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。この水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に優れるものであった。
【0096】
上記水性顔料分散体            25部
グリセリン                 8部
エチレングリコール             5部
エタノール                 5部
エマルゲン(登録商標)120     0.05部
(花王(株)製界面活性剤)
イオン交換水               57部
【0097】
<実施例3>
加熱工程において、MEKの濃度を4.5%とし、120℃で攪拌加熱した以外は実施例1と同様にして水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。この水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に優れるものであった。
【0098】
<実施例4>
顔料分散工程において、分散装置として0.3mmジルコニアビーズを充填したパールミル(登録商標)PM−DCP3型(ドライスベルケ社製)を用いて、675回転/分にて12時間分散させ、加熱工程において、140℃で攪拌加熱した以外は実施例1と同様にして水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。この水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に優れるものであった。
【0099】
<実施例5>
有機高分子化合物溶液(A)の代わりに合成例2で得た有機高分子化合物溶液(B)を用い、メチルエチルケトンの代わりに2−プロパノールを用いた以外は実施例1と同様にして水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。この水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に優れるものであった。
【0100】
<実施例6>
溶剤蒸留除去工程において水性顔料分散体の不揮発分が23%になる様にMEKと水の一部を留去し、酸析工程、濾過工程、水洗工程、再分散工程のいずれも省略した以外は、実施例1と同様にして、分散粒子が、実質的にフタロシアニン顔料粒子とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物粒子のみである水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。この水性顔料分散体は、実施例1の場合に比べれば、やや劣るものの、以下の各比較例のいずれと比較してみても、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性には優れるものであった。
【0101】
<比較例1>
加圧加熱処理工程を省略した以外は実施例1と同様にして水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。この水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に劣るものであった。
【0102】
<比較例2>
加圧加熱処理工程を省略した以外は実施例4と同様にして水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。結果を表1に示す。この水性顔料分散体は、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に劣るものであった。
【0103】
<比較例3>
加熱処理工程を、開放系で共沸温度で4時間行う以外は実施例1と同様にして水性顔料分散体を得、分散安定性及び耐光性の評価を行った。この水性顔料分散体は、比較例1の水性顔料分散体よりは、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性にはやや優れているものの、実施例1の水性顔料分散体に比べれば、水性顔料記録液とした際の分散安定性、印字物の耐光性に劣るものであった。
【0104】
【表1】
表 1
Figure 2004051963
【0105】
表1からわかるとおり、各実施例の様な本発明の製造方法で得られた水性顔料分散体から得られた水性顔料記録液は、各比較例のそれらに対比して、印字物の耐光性に優れ、印字物が光に長時間曝されても印字濃度の低下が小さいことが明らかである。しかも高温の熱履歴を経ても分散粒子の平均粒子径の変動は、いずれも小さいことが明らかである。
【0106】
【発明の効果】
本発明の水性顔料分散体の製造方法は、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と有機溶剤と水とを、微分散して、前記フタロシアニン顔料及び前記アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物からなる分散粒子で、かつ、平均粒子径が200nm以下の分散粒子と前記有機溶剤とを含有する水性顔料分散体を製造する第1工程と、第1工程で得た水性顔料分散体から前記有機溶剤を除去する第2工程とを有する水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法において、(1)前記有機溶剤として特定有機溶剤を用い、かつ(2)前記第1工程と前記第2工程との間に、前記有機溶剤を含有する水性顔料分散体を閉鎖系で100℃を超え150℃以下で加熱する工程を設けるので、得られた水性顔料記録液用水性顔料分散体は、その分散体調製のための原料等の組成を変更することなく、高温で長時間放置しても、分散粒子の粒子径の変動が小さく、光に長時間曝されても常態と同様の着色濃度がほぼ保持され、耐光性に優れた着色が行える水性顔料分散体を生産性高く製造することが出来るという格別顕著な効果を奏する。
【0107】
この水性顔料分散体に少なくとも水を更に加えて希釈することで、そのインク調製のための原料等の組成を変更することなく、生産性高く水性顔料記録液が得られ、そこで得られる水性顔料記録液は、高温で長時間放置しても、分散粒子の粒子径の変動が小さく、インクジェット記録を行った場合の印字耐光性にも優れるという格別顕著な効果を奏する。

Claims (6)

  1. フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と塩基性物質と有機溶剤と水とを、微分散して、前記フタロシアニン顔料及び前記アニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物からなる分散粒子で、かつ、平均粒子径が200nm以下の分散粒子と前記有機溶剤とを含有する水性顔料分散体を製造する第1工程と、第1工程で得た水性顔料分散体から前記有機溶剤を除去する第2工程とを有する水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法において、
    (1)前記有機溶剤として、前記アニオン性基含有非架橋性高分子化合物を溶解し、かつ、常圧における沸点が100℃以下のアルコール系溶剤又はケトン系溶剤を用いること、
    及び
    (2)前記第1工程と前記第2工程との間に、前記有機溶剤を含有する水性顔料分散体を閉鎖系で100℃を超え150℃以下で加熱する工程を設けること
    を特徴とする水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法。
  2. 前記有機溶剤を含有する水性顔料分散体として、フタロシアニン顔料とアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物と水と前記溶剤との合計を100%とした時、質量換算で1〜10%の前記溶剤を含む水性顔料分散体を用いる請求項1記載の水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法。
  3. 質量換算によるフタロシアニン顔料含有率が8%を超え40%以下の水性顔料分散体を用いて前記加熱を行う請求項1記載の水性顔料記録液用水性顔料分散体の製造方法。
  4. フタロシアニン顔料をアニオン性基含有非架橋性有機高分子化合物で被覆する工程を含む請求項1記載の水性顔料分散体の製造方法。
  5. 請求項1、2、3または4のいずれかに記載の方法で得られた水性顔料分散体に、少なくとも水を更に加えて希釈する水性顔料記録液の製造方法。
  6. 質量換算によるフタロシアニン顔料含有率1〜8%となる様に希釈する請求項5記載の水性顔料記録液の製造方法。
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