JP4423532B2 - 水性顔料分散体、その製造方法及び水性顔料記録液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料分散体、その製造方法及び水性顔料記録液に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録用水性インクの調製に適した水性顔料分散体としては、分散剤としてアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の各種有機高分子化合物を用いたものが知られている。
【0003】
アクリル系有機高分子化合物を含む水性顔料分散体は、着色画像の耐水性に比較的優れるために盛んに技術開発が進められている。この様な水性顔料分散体のアクリル系有機高分子化合物の酸価とそれに併用する塩基性物質の使用量に着眼した先行技術としては、例えば、特開平8−183920号公報、特開平8−218013号公報、特開平8−231906号公報及び特開平10−292143号公報等が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの水性顔料分散体から得られたインクジェット記録用水性インクは、有機高分子化合物の酸価とそれに併用する塩基性物質の使用量の相対的割合のみについて検討した結果に基づくものであり、確かに着色画像の耐水性には優れているものの、いずれにしても依然として着色画像の光沢又は発色濃度は不充分のままであった。中でも、特に写真用紙の様な専用紙における着色画像の光沢、普通紙における着色画像の発色濃度について改善が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、着色画像の耐水性と、光沢又は発色濃度のいずれにも優れたインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液及びそれを調製するのに適した水性顔料分散体を提供することを目的とする。
本発明は、着色画像の耐水性と、光沢又は発色濃度のいずれにも優れたインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を調製するのに適した水性顔料分散体の好適な製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者等は上記実状に鑑みて鋭意検討したところ、前記二者の相対的割合だけでなく、フリーカルボキシル基と中和されたカルボキシル基(カルボン酸塩)の絶対量が特定範囲となるものが、着色画像の耐水性のみならず、光沢または発色濃度或いはこれらの両方が良好となることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明を解決しようとする手段】
即ち本発明は、顔料(A)と、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)と、塩基性物質(C)と、水性媒体(D)とを含有する水性顔料分散体において、
1)有機高分子化合物(B)が、酸価167〜220KOHmg/gの有機高分子化合物であり、
2)分散体に含まれる塩基性物質(C)の含有量が、有機高分子化合物(B)の酸価25〜30%を中和する量であり、
3)分散体に含まれる有機高分子化合物(B)の中和されていないフリーカルボキシル基含有量が、前記1)の酸価で117〜170KOHmg/gであり、かつ4)分散体に含まれる有機高分子化合物(B)の中和されたカルボン酸塩含有量が、前記1)の酸価に換算して50〜80mgKOH/g相当量である、
ことを特徴とする水性顔料分散体を提供する。
【0008】
また本発明は、顔料(A)と、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)と、前記有機高分子化合物(B)のカルボキシル基全てを中和するために必要な量以上の塩基性物質(C)と、水性媒体(D)とで予備的な水性顔料分散体を調製する工程、次いで酸析によりこの予備的水性顔料分散体中の有機高分子化合物(B)を析出させる工程、さらに前記有機高分子化合物(B)のカルボキシル基の一部だけを中和するために必要な量の塩基性物質(C)を加えて再分散する工程を含む、前記した特徴を有する水性顔料分散体の製造方法を提供する。
【0009】
さらに本発明は、前記した水性顔料分散体を用い、質量換算による分散粒子含有率1〜10%に調製した水性顔料記録液を提供する。
【0010】
本発明に用いる顔料(A)としては、公知慣用の有機顔料又は無機顔料がいずれも挙げられる。有機顔料としては、例えばアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。無機顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化珪素、酸化チタン等が挙げられる。
【0011】
顔料(A)として、キナクリドン系顔料を用いた場合には、後記するカルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)と塩基性物質(C)との組み合わせにおいて、被記録媒体上の着色画像の光沢を顕著に高めることが出来、さらに、水性顔料分散液自体の粘度をより低下させることが出来る。顔料(A)として、フタロシアニン系顔料を用いた場合には、被記録媒体上の着色画像の発色濃度を顕著に高めることが出来る。尚、キナクリドン系顔料を用いる場合は、前記要件1)における酸価100以上が、光沢だけでなく、光沢と発色濃度との両方を向上させることが出来る領域である。
【0012】
前記した様な有機顔料に対応する顔料誘導体を併用することが出来る。この様な顔料誘導体としては、例えば対応する顔料のスルホン酸またはその塩からなる誘導体、同アミノアルキル基を有する誘導体、同フタルイミドアルキル基を有する誘導体等が挙げられる。顔料を主成分として顔料誘導体を併用することにより、着色画像の発色濃度は低下する傾向にあるが、逆に水性顔料分散体や水性顔料記録液の分散安定性は増す傾向にある。よって、発色濃度だけを最高値となる様にすれば良い場合には、これら顔料誘導体の併用は好ましくないが、発色濃度と光沢を高水準としたまま優れた分散安定性を兼備させる場合には、顔料に対して適当な量の顔料誘導体を併用することが出来る。
【0013】
本発明は、前記1)〜4の要件を満足する様に、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)と塩基性物質(C)を用いることが最大の特徴である。
【0014】
本発明において、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)とは、アクリル酸エステル及び/又はメタアクリル酸エステルの重合単位と側鎖にカルボキシル基を有する高分子化合物をいう。本発明においてこの化合物(B)は、酸価167〜220である。ここで酸価とは前記化合物(B)1gを中和するのに必要な水酸価カリウムのmg数を意味する(以下、同様。)。この化合物(B)は、前記した要件を満足していれば、その他の必要な重合単位を含んでいても良い。以下、本発明においては、アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの両方を包含する用語として(メタ)アクリル酸エステルを用いる。
【0015】
本発明においてこの化合物(B)は、酸価167〜220である。これが前記1)の要件である。
【0016】
本発明の水性顔料分散体は、顔料(A)と、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)と、塩基性物質(C)と、水性媒体(D)とを含有する。塩基性物質(C)は、前記化合物(B)のカルボキル基を中和してイオン化した塩とするために用いられるものである。こうして前記化合物(B)のカルボキシル基の少なくとも一部分を塩とすることで、化合物(B)を水性媒体(D)中に安定的に存在させることが出来る。
【0017】
水性媒体(D)とは、水のみまたは水と水溶性有機溶剤との混合物で質量換算で60%以上の水を含んでいるものを言う。前記化合物(B)の水性媒体(D)中の状態は溶解または分散のいずれを選択することも可能だが、分散状態とするのが、水性顔料分散体またはそれから調製される水性顔料記録液の被記録媒体上における着色画像の特性を優れたものと出来る点で好ましい。
【0018】
その水性媒体(D)に分散している粒子(分散粒子)は、顔料(A)粒子と、前記化合物(B)の粒子であっても良いが、顔料(A)が前記化合物(B)で被覆された粒子である、マイクロカプセル型複合粒子であっても良い。本発明の水性顔料分散体では、前記分散粒子が、平均粒子径が50〜200nmであることが好ましい。
【0019】
顔料(A)と共に用いる化合物(B)は、例えば(メタ)アクリル酸エステルを必須成分かつ主成分として、これとカルボキシル基含有モノエチレン性不飽和単量体とを共重合することにより得ることが出来る。
【0020】
この化合物(B)を製造する際に用いることが出来る、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を挙げることができる。
【0021】
また化合物(B)を製造する際に用いることが出来る、カルボキシル基を含有するモノエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、4−ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸類;コハク酸ビニル、マレイン酸アリル、テレフタル酸ビニル、トリメトリット酸アリル等の多塩基酸不飽和エステル類が挙げられる。
【0022】
さらに化合物(B)を製造する際に用いることが出来る、前記と共重合し得るその他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、等の不飽和脂肪酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和脂肪酸アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エーテル類;スチレン、α―メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン、等スチレン類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、等の不飽和炭化水素類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、3−クロロプロピレン、等の不飽和ハロゲン化炭化水素類;4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、等のビニル置換複素環化合物類;上記例示単量体中のカルボキシル基、水酸基、アミノ基、等活性水素を有する置換基を含有する単量体とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等、エポキシド類との反応生成物;上記例示単量体中の水酸基、アミノ基等を有する置換基を含有する単量体と酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸等のカルボン酸類との反応生成物等を挙げることができる。
【0023】
前記化合物(B)としては、少なくとも(メタ)アクリル酸の炭素原子数3〜5のアルキルエステルからなる群から選ばれる1以上の単量体を構成要素とし、その他の単量体と重合した共重合体を選択するか、または、少なくとも(メタ)アクリル酸の炭素原子数3〜5のアルキルエステルからなる群から選ばれる1以上の化合物を構成要素とすると共に、スチレンをも構成要素として含有する共重合体を選択するのが性能上も好ましい。
【0024】
かかる化合物(B)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の従来より公知の種々の反応方法によって合成することができる。
【0025】
本発明に用いられる化合物(B)は、ガラス転移温度(点)Tgが、−20〜100℃の範囲にあることが、分散体の分散性や分散安定性が良好で、またインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液に適用した場合の印字安定性が良く、画像の耐水性も良好な上、耐摩擦性、耐棒積み性等の画像保存性も良好となるので好ましい。
【0026】
本発明に用いられる化合物(B)の重量平均分子量は、分散体の粘度が低く、分散安定性も良好で、インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液に適用した場合に長期間安定した印字を行わせることが容易な点で、5,000〜100,000の範囲にあることが好ましく、10,000〜70,000の範囲にあることが特に好ましい。
【0027】
本発明の水性顔料分散体中における化合物(B)は、そのカルボキシル基の少なくとも一部が塩基性物質(C)によってイオン化された形態(カルボン酸塩、またはカルボキシラート基という)をとっていることが分散性、分散安定性の発現のうえで好ましい。
【0028】
本発明においては、分散体中における化合物(B)をこの様な形態とするために、用いる前記化合物(B)の酸価絶対値の25〜30%を中和する量の塩基性物質(C)を用いる。これが前記2)の要件である。
【0029】
かかる塩基性物質(C)としては、公知慣用のものが挙げられるが、例えばアンモニア、第一級、第二級もしくは第三級の有機アミン(塩基性含窒素複素環化合物を含む)、水酸化アルカリ金属からなる群から選ばれる化合物が好適には挙げられる。これらの例示した好適な塩基性物質でアニオン性基の少なくとも一部をイオン化することにより、カルボキシラート基の対イオンは、アンモニウムイオン(塩基性含窒素複素環化合物のプロトン化カチオンを含む)アルカリ金属イオンからなる群から選ばれるカチオンが挙げられる。
【0030】
前記1)及び2)の要件については、従来の先行技術文献に記載された範囲と同様であるが、本発明においては、これら要件に加えて下記の3)及び4)の要件を全て充足させることで、先行技術文献からは予想出来ない顕著な、被記録媒体上における着色画像の発色濃度を得ることが出来る。
【0031】
水性顔料分散体中の化合物(B)のイオン化された形態(カルボキシラート基)の割合は、化合物(B)のカルボキシル基と塩基(C)との理論モル比ではなく、解離平衡を考慮に入れる必要がある。カルボキシル基の場合、化学量論的に当量の強塩基性物質を用いても解離平衡によりカルボキシラート基の割合は100%未満であって、カルボキシラート基とカルボキシル基の混在状態となる。
【0032】
そこで本発明では、分散体に含まれる化合物(B)の中和されていないフリーカルボキシル基含有量を、前記化合物(B)の酸価で絶対値117〜170となる様にする。勿論、この場合の酸価は前記1)で用いた化合物(B)の酸価を越えることはない。これが前記3)の要件である。
【0033】
また、分散体に含まれる化合物(B)の中和されたカルボン酸塩含有量を、化合物(B)の酸価に換算した時の絶対値で50〜80相当量となる様にする。これが前記4)の要件である。ところで、カルボン酸塩自体は酸価を有さないため、そのままではカルボン酸塩の含有量絶対値を特定することは出来ない。そこで、このカルボン酸塩だけをもとのフリーカルボキシル基に換算した場合に、化合物(B)のカルボキシル基に基づく酸価80〜220のうち、絶対値にしてどの程度のカルボキシル基がカルボン酸塩となっていたかを確認することが出来る。
【0034】
尚、本発明では化合物(B)のカルボキシル基は、中和された状態(カルボン酸塩)と中和されていない状態(フリーカルボキシル基)の二つの状態しかとり得ないから、前記3)におけるフリーカルボキシル基に基づく酸価と、前記4)のカルボン酸塩だけを未中和の状態に戻した時の酸価との合計値は、前記1)の化合物(B)の酸価となる。
【0035】
化合物(B)の塩基性物質(C)によるイオン化は、例えば、化合物(B)と塩基性物質(C)とを予め前記1)〜4)の要件を充足する様に混合してから、その混合物を水性媒体(D)に加える方法、前記1)〜4)の要件を充足する様に化合物(B)と塩基性物質(C)とを水性媒体(D)に加える方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の水性顔料分散体の製造方法は、例えば下記する様な1)〜4)の方法に基づき実施することが出来る。
1)上記化合物(B)と塩基性物質(C)を含む水性エマルジョンに顔料(A)を機械的に強制分散する水性顔料分散体の製造方法。
2)顔料(A)の存在下の水中で分散剤を用いて上記した各単量体を重合させ化合物(B)とし、必要に応じて会合させ、任意の工程で塩基性物質(C)を含める水性顔料分散体の製造方法。
3)顔料(A)と上記化合物(B)と有機溶剤の混合物を、水と塩基性物質(C)を用いて徐徐に油相から水相に転相させてから脱溶剤して、顔料(A)が上記化合物(B)で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子とする、同複合粒子を含む水性顔料分散体の製造方法。
4)顔料(A)と上記化合物(B)と塩基性物質(C)と有機溶剤と水との均一混合物から脱溶剤して、酸性物質を加えて酸析し析出物を洗浄後、この析出物を塩基性物質(C)と共に水に分散させる、顔料が上記アニオン性基含有の架橋された有機高分子化合物で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子とする、同複合粒子を含む水性顔料分散体の製造方法。
【0037】
本発明では、上記いずれの製造方法をとるにせよ、顔料(A)、化合物(B)、塩基性物質(C)および水性媒体(D)からなる混合物を分散する工程を必須として含ませることが好ましい。この混合物には水溶性有機溶剤を含めるのが好ましい。より具体的には、少なくとも顔料(A)、化合物(B)、塩基性物質(C)、水溶性有機溶剤および水からなる混合物を分散する工程(分散工程)を含ませることが好ましい。
【0038】
また、分散工程において水溶性有機溶剤を併用することができ、それにより分散工程における液粘度を低下させることができる場合がある。水溶性有機溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素原子数が3〜6のケトンおよび炭素原子数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は化合物(B)溶液として用いられても良く、別途独立に分散混合物中に加えられても良い。
【0039】
本発明の水性顔料分散体の製造方法においては、顔料(A)/化合物(B)(不揮発分換算)=100/10〜100/100とするのが好ましい。最適には、質量換算で顔料(A)100部当たり、化合物(B)の不揮発分20〜65部かつ水性媒体835〜880部となる様に、上記した原料を用いて製造することが出来る。
【0040】
分散工程において用いることのできる分散装置として、既に公知の種々の方式による装置が使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、スチール、ステンレス、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、ガラス等でできた直径0.1〜10mm程度の球状分散媒体の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌による剪断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の分散方式を採ることができる。
【0041】
本発明の水性顔料分散体としては、分散到達レベル、分散所要時間および分散安定性の全ての面で、より優れた特性を発揮させるに当たっては、顔料(A)が化合物(B)で被覆された粒子(即ち前記したマイクロカプセル型複合粒子)という形態で水性媒体中に分散していることが好ましい。
【0042】
このような状態を形成するため、化合物(B)が溶解した液媒体中に顔料(A)が分散している状態において、前記の分散工程の後工程として、溶解状態にある化合物(B)を用いて顔料(A)表面を被覆する工程を組み込むことが好ましい。
【0043】
溶解状態にある化合物(B)を顔料(A)表面に被覆させる工程としては、塩基性物質(C)により溶解している化合物(B)を、その溶液を酸性物質により酸性化することにより析出させる工程(酸析工程)が好ましい。
【0044】
その他、蒸留工程の例には、分散工程において有機溶剤を使用した場合に、これを除去する工程、所望の固形分濃度にするため余剰の水を除去する工程等がある。
【0045】
酸析工程の例には、分散工程で得られた水性顔料分散体に塩酸、硫酸、酢酸等の酸性物質を加えて酸性化し、塩基性物質と塩を形成することによって溶解状態にある化合物(B)を顔料(A)粒子表面に析出させる工程等がある。この工程により、顔料(A)と化合物(B)との相互作用を高めることができる。
【0046】
本発明の製造方法においては、顔料(A)と化合物(B)と塩基性物質(C)と水性媒体(D)とを混合し分散させた後、酸性物質を加えて酸析し次いで塩基性物質(C)を再度を加えて水に再分散する工程を含ませ、顔料(A)が化合物(B)で被覆された粒子を含有する水性顔料分散体を製造するのが好ましい。
【0047】
この結果、前記した様なマイクロカプセル型複合粒子が水性分散媒中に分散している形態を取らせることができ、水性顔料分散体として、分散到達レベルや分散安定性等の物性面や耐溶剤性等の使用適性の面で、より優れた特性を発揮させることができる。
【0048】
尚、顔料(A)と、化合物(B)と、前記化合物(B)のカルボキシル基全てを中和するために必要な量以上の塩基性物質(C)と、水性媒体(D)とで予備的な水性顔料分散体を調製する工程、次いで酸析によりこの予備的水性顔料分散体中の化合物(B)を析出させる工程、さらに前記化合物(B)のカルボキシル基の一部だけを中和するために必要な量の塩基性物質(C)を加えて再分散する工程を含む様にして、好ましくはさらに酸析後の濾過・洗浄を含める様にして、この順にこれら工程を実施することにより、前記した様なマイクロカプセル型複合粒子が水性分散媒中に分散している形態であって、マイクロカプセル型複合粒子を含まない水性顔料分散体に比べれば、より光沢に優れた着色画像となる水性顔料分散体をより容易に製造することが出来る。
【0049】
濾過工程の例には、前述した酸析工程後の固形分をフィルタープレス、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置等により濾過する工程等がある。再分散工程の例には、酸析工程、濾過工程によって得られた固形分に塩基性物質(C)および必要により水や添加物を加えて再び分散液とする工程がある。それにより化合物(B)中のイオン化したカルボキシル基の対イオンを分散工程で用いたものから変更することができる。
【0050】
こうして得られた本発明の水性顔料分散体は、例えば、水性インク、水性塗料等の各種着色用途において、着色濃度が高く、耐擦過性に優れた着色物を得ることが出来る。
【0051】
本発明の水性顔料分散体は、質量換算による分散粒子含有率1〜10%となる様に調製し水性顔料記録液とすることが出来る。この際には、上記したより濃厚な水性顔料分散体に対して必要に応じて水や水溶性有機溶剤加えて必要な分散粒子含有率となる様に希釈したり、湿潤剤、防かび剤等の水性インクの調製に必要な各種添加剤を併用することが出来る。また得られた水性顔料記録液は、必要に応じてミクロフィルターにより濾過をすることにより、インクジェット記録用に適したノズル目詰まり等の極めて少ない水性記録液とすることが出来る。
【0052】
また、吐出方式に応じた組成に適宜調製することにより、ピエゾ方式でもサーマル方式でもいずれの方式にも対応できる水性顔料記録液を得ることが出来る。本発明の水性顔料記録液は、公知慣用の被記録媒体への記録に使用することが出来る。この様な被記録媒体としては、例えば普通紙、樹脂コート紙、混抄紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、本発明の水性顔料記録液は、写真用紙の様な専用紙においてより光沢の高い着色画像が得られるか、または普通紙においてより鮮明な発色濃度が高い着色画像が得られる。
【0053】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を具体的に説明するものであり、実施の態様がこれにより限定されるものではない。
【0054】
【実施例】
以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量換算である。
以降、文中及び表中における、実施例1〜2を参考例1〜2に、実施例3を実施例1に各々読み替えるものとする。また同様に、実施例4〜7を参考例3〜6に、比較例1〜6を参考例7〜12に各々読み替えるものとする。
【0055】
[合成例1](酸価130のカルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物)
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、および上部に窒素導入装置を有する環流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(重合試験機DSL−2AS型、轟産業(株)製)の反応容器にメチルエチルケトン1,100部を仕込み、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタアクリル酸ブチル503部、アクリル酸n−ブチル23部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、メタアクリル酸199部、スチレン200部、および「パーブチル O」(有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製)80部の混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で15時間反応を継続させて、酸価130、重量平均分子量20,400のアニオン性基含有有機高分子化合物(B−1)の溶液を得た。
【0056】
[合成例2](酸価200のカルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物)
メチルエチルケトン1,200部を用い、かつメタアクリル酸ブチル304部、アクリル酸n−ブチル114部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、メタアクリル酸307部、スチレン200部、および「パーブチル O」(有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製)140部の混合液を用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、酸価200、重量平均分子量14350のアニオン性基含有有機高分子化合物(B−2)の溶液を得た。
【0057】
[合成例3](酸価90のカルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物)
メチルエチルケトン1,100部を用い、かつメタアクリル酸ブチル549部、アクリル酸n−ブチル38部、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、メタアクリル酸138部、スチレン200部、および「パーブチル O」(有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製)80部の混合液を用いる以外は合成例1と同様の操作を行い、酸価90、重量平均分子量18,700のアニオン性基含有有機高分子化合物(B−3)の溶液を得た。
【0058】
[実施例1]
気密性が保てるパッキンの付いた蓋のあるポリ容器に、合成例1で得た高分子化合物(B−1)、5%水酸化カリウム水溶液、水、メチルエチルケトン、直径0.5mmのジルコニアビーズ、およびジメチルキナクリドン顔料(Fastogen Super Magenta RTS、C.I.Pigment Red 122、大日本インキ化学工業(株)製)を仕込み、攪拌、混合した。ここでそれぞれの仕込量は、樹脂は前記キナクリドン系顔料に対して不揮発分で20質量%の比率となる量、5%水酸化カリウム水溶液は高分子化合物Bの酸価が50%中和される量、水は混合液の中の顔料分を20%とするのに必要な量、メチルエチルケトンは前記キナクリドン系顔料に対し30質量%、ジルコニアビーズは前記キナクリドン系顔料に対して重量で25倍となる量である。
【0059】
この混合物の入ったポリ容器に、ペイントシェーカーミルにセットして、2時間分散した。分散時は室温を25℃にコントロールした。分散終了後、200メッシュシートを用いてビーズと分散液とを分離し、マゼンタ顔料分散液を得た。この分散液を、遠心分離機(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去し、水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0060】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは8.57、不揮発分12.2%、粒度分析計(マイクロトラック UPA150型、日機装(株)社製)で測定した平均分散粒径(メディアン径)は135.9nmであった。R型粘度計(モデルR−L、東機産業(株)製)で測定した粘度は2.48mPa/sであった。これらの測定については、以下、同様の測定装置を同様に使用したものとする。
【0061】
[実施例2]
中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率40%とした以外は、実施例1と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0062】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは8.30、不揮発分12.2%、平均分散粒径(メディアン径)は140nmであった。粘度は2.28 mPa/sであった。
【0063】
[実施例3]
合成例2で得た樹脂(B−2)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率30%とした以外は、実施例1と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0064】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは7.66、不揮発分12.2%、平均分散粒径(メディアン径)は135nmであった。粘度は2.08 mPa/sであった。
【0065】
[実施例4]
合成例2で得た樹脂(B−2)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率40%とした以外は、実施例1と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0066】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは7.86、不揮発分12.2%、平均分散粒径(メディアン径)は134nmであった。粘度は2.26 mPa/sであった。
【0067】
[実施例5]
合成例3で得た樹脂(B−3)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率60%とした以外は、実施例1と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0068】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは8.85、不揮発分11.3%、平均分散粒径(メディアン径)は138nmであった。粘度は2.10 mPa/sであった。
【0069】
[実施例6]
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、合成例1で得た樹脂(B−1)、20%水酸化ナトリウム水溶液、水および2、9−ジメチルキナクリドン(Fastogen Super RTS、大日本インキ化学工業(株)社製)850部、顔料誘導体であるフタルイミドメチル化−3,10−ジクロロキナクリドン(平均フタルイミドメチル基数1.4、大日本インキ化学工業(株)社製)50部、顔料誘導体である3、10−ジクロロキナクリドンスルホン酸ナトリウム(大日本インキ化学工業(株)社製)のスラリー1250部(固形分換算で100部)、メチルエチルケトン300部、水を仕込み、攪拌、混合した。ここでそれぞれの仕込量は、キナクリドン顔料(顔料誘導体混みの量)が1,000部、樹脂はキナクリドン顔料(顔料誘導体混みの量)に対して不揮発分で20重量%の比率となる量、20%水酸化ナトリウム水溶液はアニオン性基含有有機高分子化合物の酸価が100%中和される量、水は混合液の不揮発分を30%とするのに必要な量である。
【0070】
混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(SCミル SC100/32型、三井鉱山(株)製)に通し、循環方式により6時間分散した。分散装置の回転数は2700回転/分とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。
分散終了後、混合槽より分散原液を抜き採り、次いで水10,000部で混合槽および分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。希釈分散液をガラス製蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を常圧蒸留で除いた。
【0071】
メチルエチルケトンの除かれた分散液を冷却し、その後、攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整したのち、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ケーキを容器に採り、アニオン性基含有有機高分子化合物の酸価が50%中和される量の20%水酸化カリウム水溶液と水を加え、分散攪拌機(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)にて再度分散した。
【0072】
この分散液に、純水を加えて不揮発分23%に調整した。この分散液を、遠心分離機(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去したのち、純水を加えて不揮発分を調整し、不揮発分20%の水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0073】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは7.93、不揮発分20%、平均分散粒径(メディアン径)は190nmであった。粘度は7.93 mPa/sであった。尚、水性顔料分散体の平均粒子径及び粘度に関する初期と経時及び促進時の分散安定性の対比では、実施例6の水性顔料分散体は、顔料のみで対応する顔料誘導体を含有しないその他の実施例の水性顔料分散体よりも、分散安定性が明らかに優れていた。
【0074】
[実施例7]
気密性が保てるパッキンの付いた蓋のあるポリ容器に、合成例1で得た高分子化合物(B−1)、5%水酸化カリウム水溶液、水、メチルエチルケトン、直径0.5mmのジルコニアビーズ、およびフタロシアニン系顔料(Fastogen Blue TGR、C.I.Pigment Blue 15:3、大日本インキ化学工業(株)製)を仕込み、攪拌、混合した。ここでそれぞれの仕込量は、樹脂は前記フタロシアニン系顔料に対して不揮発分で30質量%の比率となる量、5%水酸化カリウム水溶液は高分子化合物Bの酸価が50%中和される量、水は混合液の中の顔料分を20%とするのに必要な量、メチルエチルケトンは前記フタロシアニン系顔料に対し20質量%、ジルコニアビーズは前記フタロシアニン系顔料に対して重量で25倍となる量である。
【0075】
この混合物の入ったポリ容器に、ペイントシェーカーミルにセットして、2時間分散した。分散時は室温を25℃にコントロールした。分散終了後、200メッシュシートを用いてビーズと分散液とを分離し、ブルー顔料分散液を得た。この分散液を、遠心分離機(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去し、水性ブルー顔料分散体を得た。
【0076】
得られた水性ブルー顔料分散体のpHは8.43、不揮発分13.9%、平均分散粒径(メディアン径)は227nmであった。粘度は2.32 mPa/sであった。これらのの測定については、以下、同様の測定装置を同様に使用したものとする。
【0077】
[比較例1]
合成例1で得た樹脂(B−1)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率70%とした以外は、実施例1と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0078】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは8.45、不揮発分12.4%、平均分散粒径(メディアン径)は208nmであった。粘度は3.42 mPa/sであった。
【0079】
[比較例2]
気密性が保てるパッキンの付いた蓋のあるポリ容器に、合成例3で得た高分子化合物(B−3)、5%水酸化カリウム水溶液、水、メチルエチルケトン、直径0.5mmのジルコニアビーズ、および有機顔料にジメチルキナクリドン(Fastogen Super Magenta RTS、C.I.PigmentRed 122、大日本インキ化学工業(株)製)を仕込み、攪拌、混合した。ここでそれぞれの仕込量は、樹脂はキナクリドンに対して不揮発分で20質量%の比率となる量、5%水酸化カリウム水溶液は高分子化合物Bの酸価が50%中和される量、水は混合液の中の顔料分を20%とするのに必要な量、メチルエチルケトンはキナクリドン顔料に対し30質量%、ジルコニアビーズはキナクリドンに対して重量で25倍となる量である。
【0080】
この混合物の入ったポリ容器に、ペイントシェーカーミルにセットして、2時間分散した。分散時は室温を25℃にコントロールした。分散終了後、200メッシュシートを用いてビーズと分散液とを分離し、マゼンタ顔料分散液を得た。
【0081】
攪拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整したのち、固形分をヌッチェ式濾過装置で濾過、水洗した。ケーキを容器に採り、アニオン性基含有有機高分子化合物の酸価が50%中和される量の20%水酸化カリウム水溶液と水を加え、分散攪拌機(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)にて再度分散した。
【0082】
この分散液に、純水を加えて不揮発分23%に調整した。この分散液を、遠心分離機(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去したのち、純水を加えて不揮発分を調整し、不揮発分21.1%の水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0083】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは8.16、不揮発分21.1%、平均分散粒径(メディアン径)は178nmであった。粘度は35.00 mPa/sであった。
【0084】
[比較例3]
気密性が保てるパッキンの付いた蓋のあるポリ容器に、合成例1で得た樹脂(B−1)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率20%とした以外は、実施例1と同じ組成で仕込み、混合、攪拌した。
【0085】
この混合物の入ったポリ容器に、ペイントシェーカーミルにセットして、2時間分散した。分散時は室温を25℃にコントロールした。分散終了後、200メッシュシートを用いてビーズと分散液とを分離し、マゼンタ顔料分散液を得た(平均粒径510nm)。この分散液を、遠心分離機(50A−IV型、(株)佐久間製作所)にて6000G、30分間かけて粗大粒子を除去する操作を実施すると、大部分が沈降してしまい最終水性マゼンタ顔料分散液を得ることは出来なかった。
【0086】
[比較例4]
合成例2で得た樹脂(B−2)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率60%とした以外は、実施例1と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0087】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは8.20、不揮発分10.9%、平均分散粒径(メディアン径)は142nmであった。粘度は2.72 mPa/sであった。
【0088】
[比較例5]
中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率90%とした以外は、実施例7と同じ操作で水性ブルー顔料分散体を得た。
【0089】
得られた水性ブルー顔料分散体のpHは9.15、不揮発分15.8%、平均分散粒径(メディアン径)は143nmであった。粘度は3.32 mPa/sであった。
【0090】
[比較例6]
合成例1で得た樹脂(B−1)を使用し、中和する5%水酸化カリウムの添加量を中和率85%とした以外は、実施例6と同じ操作で水性マゼンタ顔料分散体を得た。
【0091】
得られた水性マゼンタ顔料分散体のpHは9.32、不揮発分20.2%、平均分散粒径(メディアン径)は132nmであった。粘度は5.54 mPa/sであった。
【0092】
[実施例8]
以上の実施例または比較例で得られた分散液を、特開2002−20673号公報の実施例1(3)インクジェット用記録液の調製に従いインクジェット記録用水性インクを調整した。本インクを用いてインクジェットプリンターで幾つかの記録媒体にベタ印字し、普通紙での発色濃度と写真用紙での光沢を測定した。
【0093】
普通紙には、Canon(株)製Canon PBペーパー、Xerox社製Xerox PPP、同社製Xerox4024、Hammermill社製CopyPlusの4種類を使用し、4紙の値を平均した数字を普通紙の発色濃度とした。写真用紙にはPM写真用紙(セイコーエプソン(株)製)を使用した。
【0094】
発色濃度の測定にはグレタグマクベス社製GRETAG D196を使用し、単一サンプルについて5点測定し、平均した値をそのサンプルの測定値にした。光沢は、BYK Gardner社製haze−glossメーターを使用し、60°光沢を3回測定し、平均の値を光沢の測定値とした。
【0095】
測定した結果を以下の表1にまとめた。
【0096】
【表1】
表 1
【0097】
*)上記表1中の顔料の欄“R122+α“の標記は、主成分のジメチルキナクリドン顔料に顔料誘導体が添加されていることを表す。また、酸価は本発明の技術的要件1)に、中和率は同技術的要件2)に、フリーカルボキシル基は同技術的要件3)に、中和されたカルボキル基は同技術的要件4)に各々対応している。
【0098】
各実施例及び各比較例で得られた水性顔料分散体から調製した水性顔料記録液は、満足できる水準の着色画像の耐水性をいずれも有していた。
【0099】
キナクリドン系顔料の水性顔料分散体に関する実施例1及び2と比較例1又は3との対比、実施例3及び4と比較例4との対比、実施例5と比較例2との対比、実施例6と比較例6との対比からわかる様に、対応する実施例と比較例同士を着色画像の光沢の点で対比すると、本発明の水性顔料記録液の方がより光沢に優れていることがわかる。さらに、本亜発明の前記要件1)の値がより高い場合には、光沢と発色濃度を共に向上できていることがわかる。
【0100】
また、フタロシアニン系顔料の水性顔料分散体に関する実施例7と比較例5との対比からわかる様に、対応する実施例と比較例同士を着色画像の着色画像の発色濃度の点で対比すると、本発明の水性顔料記録液の方がより発色濃度に優れていることがわかる。
【0101】
尚、水性顔料記録液の平均粒子径及び粘度に関する初期と経時及び促進時の分散安定性の対比では、実施例6の水性顔料分散体で調製した水性顔料記録液は、顔料のみで対応する顔料誘導体を含有しないその他の実施例の水性顔料分散体から調製した水性顔料記録液よりも優れていた。
【0102】
本発明の要件1)〜4)をいずれも満足する実施例の水性顔料分散体を使用した水性顔料記録液は、同種顔料かつ同樹脂酸価での対比における比較例の水性顔料記録液に対して着色画像の光沢及び/又は発色濃度が高くなっている。また、キナクリドン系顔料に至っては、光沢の改良程度はもとよりその絶対値も優れている。
【発明の効果】
本発明の水性顔料分散体は、樹脂酸価とその酸価の中和率だけでなく、中和されたカルボキシル基と遊離カルボキシル基の量についても特定範囲となる様に数値限定を設けたので、着色画像の耐水性のみならず、光沢及び/又は発色濃度にも優れたインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を提供することができるという格別顕著な効果を奏する。
Claims (4)
- 顔料(A)と、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)と、塩基性物質(C)と、水性媒体(D)とを含有する水性顔料分散体において、
1)有機高分子化合物(B)が、酸価167〜220KOHmg/gの有機高分子化合物であり、
2)分散体に含まれる塩基性物質(C)の含有量が、有機高分子化合物(B)の酸価25〜30%を中和する量であり、
3)分散体に含まれる有機高分子化合物(B)の中和されていないフリーカルボキシル基含有量が、前記1)の酸価で117〜170KOHmg/gであり、かつ4)分散体に含まれる有機高分子化合物(B)の中和されたカルボン酸塩含有量が、前記1)の酸価に換算して50〜80mgKOH/g相当量である、
ことを特徴とする水性顔料分散体。 - 顔料(A)と、カルボキシル基含有アクリル系有機高分子化合物(B)とが、顔料がカルボキシル基含有有機高分子化合物で被覆された粒子として含まれる請求項1記載の水性顔料分散体。
- 顔料(A)が、キナクリドン系顔料である請求項1記載の水性顔料分散体。
- 請求項1、2または3のいずれか記載の水性顔料分散体を用い、質量換算による分散粒子含有率1〜10%に調製した水性顔料記録液。
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