JP2004051459A - 窒化ケイ素質焼結体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の窒化ケイ素焼結体は1000℃以上の高温環境下で使用する場合、粒界に存在するガラス成分が軟化して強度が急激に低下するという問題があった。本発明は、高温強度、耐クリープ性、耐酸化性に優れた窒化ケイ素焼結体材料とその製造方法を提供しようと言うものである。
【解決手段】窒化ケイ素焼結体の材料設計を、粒界相がSi、Hf、O、N及び稀土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、稀土類元素を0.1〜6重量%含むよう設定することによって解決する。
【選択図】 図1
【解決手段】窒化ケイ素焼結体の材料設計を、粒界相がSi、Hf、O、N及び稀土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、稀土類元素を0.1〜6重量%含むよう設定することによって解決する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、機械装置、化学装置、宇宙航空機器などの広い分野において使用される各種構造部品の素材として利用でき、特に高温において高い強度と優れた耐クリープ特性を有する、ファインセラミックス材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、常温および高温で化学的に安定であり、高い機械的強度を有するため、軸受などの摺動部材、ターボチャージャロータなどのエンジン部材として好適な材料である。従来より、高強度な窒化ケイ素焼結体は、窒化ケイ素原料粉末に酸化物の焼結助剤を添加して1600℃以上の温度で焼成する手法である液相焼結により製造されてきた。焼結助剤として有効な助剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、希土類元素酸化物である。焼結助剤は窒化ケイ素原料粉末の表面の酸化層である酸化ケイ素と焼成中に反応して液相を生成する。この液相内を窒化ケイ素が拡散することによって焼結が進行する。焼結後に冷却すると、液相の一部は結晶化するが大部分はガラス相として粒界に残存する。
【0003】
しかし、このような焼結体を1000℃以上の高温環境下で使用する場合、粒界にあるガラスが軟化して強度が急激に低下するという問題があった。高温における強度低下の程度は、粒界相の化学組成に大きく依存する。このため、酸化マグネシウムを添加した焼結体よりも酸化イットリウムと酸化アルミニウムの混合物を添加したものの方が高温強度は高い。最近では、希土類酸化物と酸化ケイ素の混合物を助剤とした系が研究されている。
【0004】
例えば、J.Am.Ceram.Soc.75号、2050ページ、1992年では、酸化イットリウム−酸化ケイ素系の助剤を添加して、粒界に高融点であるY2Si2O7を析出させた焼結体が報告されている。この系では、窒素含有アパタイト(H相、Y10Si7O22N4)またはK相(YSiO2N)あるいはそれに近い組成のガラス相がY2Si2O7につぐ第二の粒界相であった。しかし、H相やK相の軟化温度は1500℃以下であるので耐クリープ特性は十分なものとは言えなかった。そこで、Si3N4−Y2Si2O2−Si2N2Oの三角形内の組成が検討された。
【0005】
しかし、この組成では、RE2Si2O7の融点が十分には高くなく、さらにRE2Si2O7の結晶化速度が遅いため長時間の熱処理が必要であり、熱処理を施した場合でも粒界の30%程度は非晶質のままであった。このため、耐クリープ特性は十分とは言えなかった。
その他結晶相としては、特開平4−15466号公報にSi3N4−SiO2−RE2O3系に関して、J相(RE4Si2O7N2)、H相、K相を析出させる発明や、特開平4−243972号公報にJ相と希土類窒化物を析出させる発明、特開平4−292465号公報にRE2SiO5を析出させる発明が提案、報告されている。
【0006】
また、特開平8−48565号公報には、粒界相としてJ相または、J相とRE2SiO5の2相を析出させる発明が報告されている。さらに、Lu2O3を焼結助剤として用いることによって、Lu2SiO5やLu4Si2O7N2を粒界相として析出させる発明が報告、あるいは提案(本発明者等研究グループによって提案され、特許願2000−258568号、特許願2000−324327号として特許出願中)されている。
しかしながら、窒化ケイ素原料粉末には通常1〜2重量%の酸素が不純物として含まれているため、RE2SiO5やJ相(RE4Si2O7N2)などのSiO2/RE2O3比が低い結晶相となるように液相の組成を制御するためには、多量の希土類酸化物を添加する必要があった。
【0007】
ここにSiO2/RE2O3比なる意義は、希土類酸窒化ケイ素をRE2O3とSiO2とSi3N4の3成分で表したときのSiO2とRE2O3の比を指しているものである。例えば、J相の鉱物組成Lu4Si2O7N2は、Si3N4−SiO2−4Lu2O3と表され、SiO2/RE2O3比は0.25ということになる。
従来技術において、低SiO2/RE2O3比の組成とするためには多量のRE2O3を添加する必要があったため〔その理由については(0009)において後述する〕、従来の発明ではRe2SiO5やJ相(RE4Si2O7N2)に基づいた粒界相に設計しようとすると、総じて粒界相の量が増加する結果となり、高温で酸化されやすくなるといった新たな問題、あるいはさらに結晶化のために特別な熱処理を必要とするといった新たな問題が生じた。
【0008】
【解決しようとする課題】
本発明は、上述したように希土類酸化物添加法による従来技術においては、何れにしても基本的に問題が残っている、ないしは新たな問題が発生することから、かかる問題の生ずることのない、少量の希土類酸化物焼結助剤の添加においても、SiO2/RE2O3比の低いRE2SiO5やRE4Si2O7N2の結晶相を効率よく析出させる手法を提案しようというものであり、これによって高温強度、耐クリープ特性および耐酸化特性に優れた材料を提供しようというものである。そしてさらには、希土類元素の違いによる上記特性等に関する効果上の差異に関しても検討し、特に高温特性に優れる材料を提供しようというものである。
【0009】
ここに、従来技術において、希土類酸化物(RE2O3)を焼結助剤として用いた焼結では、添加した焼結助剤は、焼結体の主成分原料である窒化ケイ素原料粉末中に不純物として含まれている酸化ケイ素(SiO2)と反応して液相を生成し、焼結を促進し、焼結後にはこの組成のアモルファス相または結晶相として残留するものである。すなわち、粒界相の組成は原料配合中のSiO2とRE2O3の比によって支配され、決定される。しかも、原料中に一定量のSiO2不純物が含まれていると、ある程度の量以上のRE2O3を添加しないと目的とする液相組成に調整することできなかった。特にSiO2/RE2O3比が低いRE2SiO5やRE4Si2O7N2などの組成の結晶相を粒界に析出させるためには、SiO2量に見合った量のRE2O3を充分に添加する必要があり、そのために組成制御上、焼結助剤を必要以上に添加せざるを得なかった所以である。因みに、RE2O3を焼結助剤として添加する場合、その添加量を減らしていくと、SiO2/RE2O3比は当然ながら相対的に大きくなっていくが、それにつれて粒界相組成にも変化が生じ、RE4Si2O7N2→RE2SiO5→RE2Si2O7→アモルファスと変化する。
すなわち、本来、助剤の使用量は少ない方が好ましいが、粒界の材料設計を所定の組成に設計しようとすると多量のRE2O3を添加する必要があったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上述べた技術手段を前提従来技術とし、これら前提従来技術においては、前示したように諸点において問題があったことから、問題のない窒化ケイ素焼結体とその製造方法を提供しようと言うものである。そのため本発明者においては鋭意研究を進めた結果、焼結助剤として希土類酸化物と窒化ハフニウムを用いることによって、窒化ケイ素原料粉末にSiO2不純物が含まれていても、従来に比し希土類酸化物の添加量を少なくしても、RE4Si2O7N2やRE2SiO5を効率よく析出することが出来ること、これにより粒界相の組成を目的とする組成に精密に制御しうることを見いだし、成功したものである。そして、これにより耐クリープ特性に優れた焼結体を得ることに成功したものである。
本発明は、これらの一連の知見、成功に基づいてなされたものであり、その構成は以下の通りである。これによって、上記目的とする窒化ケイ素焼結体とその製造方法を提供することに成功した。
【0011】
すなわち、本発明において講じた解決手段は下記(1)〜(9)の通りである。
(1) 窒化ケイ素粒子と粒界相とから構成される窒化ケイ素質焼結体であって、粒界相がSi、Hf、O、N、および1種又は2種以上の希土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、希土類元素を0.1〜6重量%含むことを特徴とする窒化ケイ素質焼結体。
(2) 粒界相の60%以上がRE4Si2O7N2またはRE2SiO5で示される結晶質あるいはHf含有酸窒化物であることを特徴とする前記(1)項に記載の窒化ケイ素質焼結体。
(3) 希土類元素がYbであることを特徴とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の窒化ケイ素質焼結体。
(4) 希土類元素がLuであることを特徴とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の窒化ケイ素質焼結体。
(5) 窒化ケイ素粉末に、0.1〜6重量%の希土類酸化物および0.5〜5重量%の窒化ハフニウムを添加して、混合し、次いで窒素雰囲気中で1700℃〜2200℃において焼結することを特徴とする、窒化ケイ素粒子と粒界相とから構成される窒化ケイ素質焼結体であって、粒界相がSi、Hf、O、N、および1種又は2種以上の希土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、希土類元素を0.1〜6重量%含んで成る窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(6)焼成を1〜100気圧の窒素ガス圧下で行うことを特徴とする前記(5)項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(7)焼成をホットプレスで行うことを特徴とする前記(5)又は(6)のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(8)希土類酸化物が酸化イッテルビウムであることを特徴とする前記(5)から(7)のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(9)希土類酸化物が酸化ルテチウムであることを特徴とする前記(5)から(7)のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
【0012】
上記解決手段においてその技術的骨子とするところは、窒化ハフニウムの添加にあると言える。すなわち、窒化ハフニウムの作用効果は、窒化ケイ素原料中の酸素不純物を取り込む性質があり、また窒化ハフニウム自体は焼結に関与しないので、結果として液相の組成におけるSiO2/RE2O3比を低く保つことができ、これにより、少量のRE2O3添加でもRE4Si2O7N2やRE2SiO5を粒界相に析出させることができるものである。
【0013】
上記構成において、第1ないし第4の構成は、本発明の窒化ケイ素焼結体を開示し、規定しているものである。ここに、第1の構成は、本発明の基本となる窒化ケイ素質焼結体を規定するものであり、その希土類元素の含有量を0.1重量%〜6重量%、Hfの含有量を0.5重量%〜5重量%と各規定した理由は、これらの範囲が耐熱性も含め諸点において最も適した量であるからである。すなわち、希土類元素の含有量が0.1重量%未満では焼結性が低下して緻密な焼結体が得られず、また、6重量%以上では耐酸化特性が低下することから前示範囲に規定したものである。また、Hfの含有量が0.5重量%未満では液相からの酸素除去の効果が少なく、5重量%以上では、焼結性が低下することより前示範囲に規定したものである。
【0014】
また、第2の構成において粒界相の60%以上をRE4Si2O7N2とRE2SiO5とする点は、これによって耐熱性が向上し、これ以外の組成では、窒化ケイ素焼結体の耐酸化性や耐熱性が低下する。例えば、これらの量が60%以下になると、例えば、RE2Si3O3N4(メリライト)が析出すると耐酸化性が低下する。K相が析出すると耐熱性が低下する。H相(アパタイト)が析出すると耐熱性が低下する。
【0015】
第3、第4の構成は、Hf成分を要件事項としている第1又は第2の構成要件中、その希土類元素をYbあるいはLuに選定する場合を規定しているものであるが、これによって、Hf成分とYbあるいはLu成分との両成分が相俟って、高温強度特性あるいは耐クリープ特性に優れた特有な作用効果が奏せられるものである。
【0016】
以上は、本発明を構成する窒化ケイ素焼結体の成分組成とその意義について記載したが、そこに記載のない成分、すなわち焼結助剤成分に、Si、Hf、O、N、RE(希土類元素)以外の成分、たとえば、Mg、Al、Ca、などの元素については、これらが含まれていると耐熱性が低下し、好ましくない。
【0017】
次に、第5ないし第9の構成は、本発明のねらいとする窒化ケイ素質焼結体の製造方法を開示し、規定しているものである。すなわち、窒化ケイ素粉末に、0.1〜5重量%の希土類酸化物および0、5〜6重量%の窒化ハフニウムを添加して、混合し、次いで窒素雰囲気中で1700℃〜2200℃において焼結することを特徴としているものである。ここで、焼成雰囲気は、1〜100気圧の窒素ガス圧下で行うのが良く、また、焼結性が低い場合は、ホットプレス法を用いるのがよい。添加する希土類酸化物として、Yb2O3を用いると特に高温強度が向上し、Lu2O3を用いると特に耐クリープ特性が向上する。
【0018】
上記本発明の製造方法は、粒界が結晶化しやすい手法を提案するものであるが、焼成だけで不十分な場合は、1200℃以上1800℃以下の温度で熱処理を施すことにより結晶化が促進される。窒化ケイ素粉末は、α型、β型、アモルファス、およびこれらの混合物を用いることができる。ここに、窒化ケイ素原料中の酸素含有量は少ない方が好ましいことは言うまでもないことである。
また、希土類酸化物の添加量については、0.1重量%未満では焼結性が低下して緻密な焼結体が得られず、6重量%を超えると耐酸化性が低下することから、0.1〜6重量%が適正な範囲である。そしてまた、窒化ハフニウムの添加量については、0.5重量%未満では液相から酸素除去の効果が少なく、5重量%を超えると焼結性が低下することから、0.5〜5重量%の範囲が適正な範囲である。
【0019】
反応混合物の調製、すなわち窒化ケイ素原料と焼結助剤との混合操作は、通常のボールミルにより行う。そして、反応混合物を調製後、焼結体を得る一連の成形、焼成等の諸工程は、従来法と同様の通常の手段、プロセスによって行われ、特段変わるところはない。ただし、焼結温度は、1700℃より低いと緻密化が達成されず、2200℃より高いと、粒成長が激しくなり強度が低下することから1700〜2200℃の温度範囲が適正である。焼成雰囲気及びその圧力については、使用する窒化ケイ素粉末の分解を避けるため、適正な圧力の窒素ガス雰囲気にて行うことが必要である。そのガス圧が1気圧より低いと、焼成中に窒化ケイ素が熱分解が生じるので好ましくないし、また、100気圧より高いと焼成が阻害されることから、1〜00気圧が適正な圧力範囲ということができる。
ただし、最適な窒素ガス圧については、一律に規定すべきではなく、適用する焼成温度範囲によりむしろ異なるものである。すなわち、焼成温度が高いほど高圧のガス圧中で焼成することが好ましい。焼結助剤として用いる希土類酸化物についても、得られる特化ケイ素焼結体の特性は、必ずしも一様に均等であるとはいえず、その種類によってそこに若干の差違が生じることが明らかとされた。
すなわち、Yb2O3を用いると特に高温強度が向上し、Lu2O3を用いると特に耐クリープ特性が向上するといった差違が生じ、焼結体の設計に当たっては、希土類酸化物の種類に基づく特性上の差違についても充分に考慮に入れ、配慮すべきである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の態様を以下、図面及び実施例に基づいて説明する。
図1は、Hfを粒界相に有する本発明の窒化ケイ素焼結体を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した微細構造を模式的に示した組織図である。すなわち、焼結体から薄片を切り出し、アルゴンイオンミル処理の後、TEMでその微細構造を観察した結果、焼結体の微細構造は、窒化ケイ素粒子、粒界相(二粒子間の粒界相、多粒子間の粒界相)とから構成された窒化ケイ素焼結体が、微細組織レベルで生成している様子が確認、観察された。ここでアルゴンイオンミル処理は試験片をTEM観察に適した数十nmの厚さに加工するために使用した。また、図面の倍率は約40万倍である。
【0021】
次に、本発明を容易に理解し、且つ実施し得るように記載、説明するものとして、以下、実施例を示すが、その意義はあくまでも前示したとおりであり、本発明をこれによって限定する趣旨では決してない。
【0022】
(実施例1);
平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%のα型含有量92%の窒化ケイ素粉末(粉末P1)に酸化ルテチウム2.837wt%および1.372wt%の窒化ハフニウムを添加し、エタノールを添加した湿式ボールミルにより2時間混合粉砕した(混合組成1)。
次いで、空気中にロータリエバポレータを用いて乾燥後、20MPaの圧力で金型成形により、80mm×45mm×10mmの成形体を得た。この成形体を窒化ホウ素を塗布した黒鉛の型に入れてガス圧ホットプレス炉を用いて焼成した。まず、拡散ポンプによる真空中で室温から1300℃まで毎時500℃の速度で加熱し、この温度で10気圧の窒素ガスを導入し、平方センチメートル当たり200kgの圧力を負荷し、毎時500℃で2000℃まで昇温し、2000℃で3時間保持した。
その得られた焼結体の密度を水中のアルキメデス法で測定したところ、3.24g/cm3であり99%以上に緻密化が進行していた。
【0023】
これを、800メッシュのダイヤモンドホイールで平面研削することにより3mm×4mm×40mmの形状に加工した後に、1500℃の温度でJISR1601に準じて4点曲げ強度を測定したところ850MPaであり、高温強度が高い材料が得られた。
さらにこの材料を20mm×70mm×2.5mmの板状で中央部の最大応力部が4mmとなる引張り試験片形状に加工し、1500℃で150MPaの応力で引っ張りクリープ試験を行ったところ、変形速度は毎秒1.5×10−9であり、優れた耐クリープ特性を示した。さらに3mm×4mm×40mmの形状の試験片を大気炉にセットし、空気を毎分1リットル送りながら1500℃で1000時間保持したところ質量の増加は200μgであり、耐酸化特性に優れていた。
【0024】
前示(0020)でも述べたが、この焼結体から薄片を切り出し、アルゴンイオンミル処理の後、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ図1に示すように、窒化ケイ素粒子、粒間同士の二粒子粒界及び多粒子粒界とからなる微細組織が形成されていることが明らかとなった。さらに、ランダムに選んだ50個の多粒子粒界に関してTEM付属のエネルギー分散型元素分析装置(EDX)により元素分布および電子線回折により結晶相の同定をおこなったところ、Hfの濃度が高い部分が30%、Lu2SiO5が20%、Lu4Si2O7N2が30%の割合であった。
【0025】
また、X線回折により焼結体の結晶相を調べたところ、β型窒化ケイ素とLu2SiO5とLu4Si2O7N2が検出された。
焼結体を粉砕してフッ化水素酸と硝酸の混合溶液中に入れて、テフロン(登録商標)容器中で180℃にて10時間加熱溶解処理をした後、ICPで溶液中のSiとLu濃度を定量した。次に、焼結体を粉砕して炭素粉末とともにスズカプセルに封入し、炭素るつぼ中で加熱溶解して発生した窒素と一酸化炭素を定量することにより試料中の酸素と窒素量を定量した。定量値から計算した焼結体の組成は、Lu:2.5wt%、Si:58wt%、0:1.0wt%、N:38.5wt%であった。
このように、Lu2O3に加えて窒化ハフニウムを添加することにより、少量の希土類酸化物添加においてもLu2SiO5とLu4Si2O7N2を効率よく結晶化させることに成功し、高温において耐熱性と耐酸化特性を兼ね備えた窒化ケイ素焼結体を得た。
【0026】
(実施例2〜16);
実施例1と同様の手法で配合、混合した表1のNo.2〜16(No.1は実施例1)に記載の混合物を用いて、これを表2に示す焼成条件に基づいて実施例1と同様の手法にて窒化ケイ素質焼結体を製造した。これを実施例1と同様の手法で高温強度と高温クリープ特性と耐酸化特性等を測定したところ、表2に示すように耐熱性と耐酸化特性を兼ね備えた窒化ケイ素焼結体を得た。また、焼結体の組成は表1に示す通りであった。
これらの表に記載されたデータによれば、希土類酸化物に加えて窒化ハフニウムを添加した本発明の各実施例による窒化ケイ素焼結体は、その何れも高温における強度、耐クリープ特性、耐酸化特性が一定の以上の優れた性能を有していることが明らかとされた。そして、特に、希土類酸化物として酸化イッテルビウムを用いると高温における強度が高くなり、また酸化ルテチウムを用いると高温における耐クリープ特性が向上することを明らかにしている。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
(比較例1〜24);
以上は本発明の実施例に基づいて説明したものである。これに対し、実施例1と同様の方法で配合、混合した表3に示す混合粉末No.17〜36(ただし、No.17〜32は、焼結助剤として希土類酸化物を単独添加した窒化ケイ素焼結体混合物、No.33は焼結助剤としてMgOと窒化ハフニウムHfNとを併用添加した窒化ケイ素焼結体混合物、No.34〜36は、焼結助剤として希土類酸化物と窒化ハフニウムHfNとを併用添加した窒化ケイ素焼結体混合物である。)を用いて、これを表4に示す焼成条件に基づき実施例1と同様の手法にて窒化ケイ素質焼結体を製造した(比較例1〜比較例24)。そしてこれを実施例1と同様の手法で高温強度と高温クリープ特性と耐酸化特性を測定したところ、表4に示す高温特性を持つ材料であった。その焼結体の組成は表3に示す通りであった。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
その結果は、比較例1〜4(焼結助剤として希土類酸化物の中、Lu2O3を配合添加したもの)に示されているように、焼成温度が1700℃よりも低いと緻密化が達成されず、2200℃より高いと、粒成長が激しくなり強度が低下することが明らかにされた。
焼成雰囲気の窒素ガス圧が1気圧より低いと、焼成中に窒化ケイ素が熱分解することが、また、100気圧より高いと焼成が阻害されることがそれぞれ明らかにされた。比較例5〜20に示すように、焼結助剤として窒化ハフニウムを添加しないと、添加した場合(実施例1〜16)と比べて、高温強度、耐クリープ特性、耐酸化特性が低下することが明らかにされた。比較例21〜24に示すように、希土類酸化物の添加量と窒化ハフニウムの添加量が適切でないと、焼結性が低下し、あるいは耐熱性が低下することが明らかにされた。
【0033】
【発明の効果】
窒化ケイ素焼結体では酸化物の焼結助剤が焼結後に多粒子粒界に残留するため耐熱性に乏しい材料であった。また、耐熱性に優れる粒界相を析出させるためには、多量の希土類酸化物を添加する必要があり、高温強度は向上するものの耐酸化特性が低下する問題があった。上述する様に、この発明によれば、窒化ケイ素原料粉末に添加する焼結助剤の量や種類および焼成条件を制御することにより、窒化ケイ素とRE2SiO5組成またはRE4Si2O7N2粒界相とから構成される焼結体を製造することにより、少量の希土類酸化物添加においても粒界が完全に結晶化した材料が得られ、高温強度、耐クリープ特有に加えて耐酸化特性に優れた材料を提供することができ、その意義は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過型電子顕微鏡像の模式図
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、機械装置、化学装置、宇宙航空機器などの広い分野において使用される各種構造部品の素材として利用でき、特に高温において高い強度と優れた耐クリープ特性を有する、ファインセラミックス材料およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、常温および高温で化学的に安定であり、高い機械的強度を有するため、軸受などの摺動部材、ターボチャージャロータなどのエンジン部材として好適な材料である。従来より、高強度な窒化ケイ素焼結体は、窒化ケイ素原料粉末に酸化物の焼結助剤を添加して1600℃以上の温度で焼成する手法である液相焼結により製造されてきた。焼結助剤として有効な助剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、希土類元素酸化物である。焼結助剤は窒化ケイ素原料粉末の表面の酸化層である酸化ケイ素と焼成中に反応して液相を生成する。この液相内を窒化ケイ素が拡散することによって焼結が進行する。焼結後に冷却すると、液相の一部は結晶化するが大部分はガラス相として粒界に残存する。
【0003】
しかし、このような焼結体を1000℃以上の高温環境下で使用する場合、粒界にあるガラスが軟化して強度が急激に低下するという問題があった。高温における強度低下の程度は、粒界相の化学組成に大きく依存する。このため、酸化マグネシウムを添加した焼結体よりも酸化イットリウムと酸化アルミニウムの混合物を添加したものの方が高温強度は高い。最近では、希土類酸化物と酸化ケイ素の混合物を助剤とした系が研究されている。
【0004】
例えば、J.Am.Ceram.Soc.75号、2050ページ、1992年では、酸化イットリウム−酸化ケイ素系の助剤を添加して、粒界に高融点であるY2Si2O7を析出させた焼結体が報告されている。この系では、窒素含有アパタイト(H相、Y10Si7O22N4)またはK相(YSiO2N)あるいはそれに近い組成のガラス相がY2Si2O7につぐ第二の粒界相であった。しかし、H相やK相の軟化温度は1500℃以下であるので耐クリープ特性は十分なものとは言えなかった。そこで、Si3N4−Y2Si2O2−Si2N2Oの三角形内の組成が検討された。
【0005】
しかし、この組成では、RE2Si2O7の融点が十分には高くなく、さらにRE2Si2O7の結晶化速度が遅いため長時間の熱処理が必要であり、熱処理を施した場合でも粒界の30%程度は非晶質のままであった。このため、耐クリープ特性は十分とは言えなかった。
その他結晶相としては、特開平4−15466号公報にSi3N4−SiO2−RE2O3系に関して、J相(RE4Si2O7N2)、H相、K相を析出させる発明や、特開平4−243972号公報にJ相と希土類窒化物を析出させる発明、特開平4−292465号公報にRE2SiO5を析出させる発明が提案、報告されている。
【0006】
また、特開平8−48565号公報には、粒界相としてJ相または、J相とRE2SiO5の2相を析出させる発明が報告されている。さらに、Lu2O3を焼結助剤として用いることによって、Lu2SiO5やLu4Si2O7N2を粒界相として析出させる発明が報告、あるいは提案(本発明者等研究グループによって提案され、特許願2000−258568号、特許願2000−324327号として特許出願中)されている。
しかしながら、窒化ケイ素原料粉末には通常1〜2重量%の酸素が不純物として含まれているため、RE2SiO5やJ相(RE4Si2O7N2)などのSiO2/RE2O3比が低い結晶相となるように液相の組成を制御するためには、多量の希土類酸化物を添加する必要があった。
【0007】
ここにSiO2/RE2O3比なる意義は、希土類酸窒化ケイ素をRE2O3とSiO2とSi3N4の3成分で表したときのSiO2とRE2O3の比を指しているものである。例えば、J相の鉱物組成Lu4Si2O7N2は、Si3N4−SiO2−4Lu2O3と表され、SiO2/RE2O3比は0.25ということになる。
従来技術において、低SiO2/RE2O3比の組成とするためには多量のRE2O3を添加する必要があったため〔その理由については(0009)において後述する〕、従来の発明ではRe2SiO5やJ相(RE4Si2O7N2)に基づいた粒界相に設計しようとすると、総じて粒界相の量が増加する結果となり、高温で酸化されやすくなるといった新たな問題、あるいはさらに結晶化のために特別な熱処理を必要とするといった新たな問題が生じた。
【0008】
【解決しようとする課題】
本発明は、上述したように希土類酸化物添加法による従来技術においては、何れにしても基本的に問題が残っている、ないしは新たな問題が発生することから、かかる問題の生ずることのない、少量の希土類酸化物焼結助剤の添加においても、SiO2/RE2O3比の低いRE2SiO5やRE4Si2O7N2の結晶相を効率よく析出させる手法を提案しようというものであり、これによって高温強度、耐クリープ特性および耐酸化特性に優れた材料を提供しようというものである。そしてさらには、希土類元素の違いによる上記特性等に関する効果上の差異に関しても検討し、特に高温特性に優れる材料を提供しようというものである。
【0009】
ここに、従来技術において、希土類酸化物(RE2O3)を焼結助剤として用いた焼結では、添加した焼結助剤は、焼結体の主成分原料である窒化ケイ素原料粉末中に不純物として含まれている酸化ケイ素(SiO2)と反応して液相を生成し、焼結を促進し、焼結後にはこの組成のアモルファス相または結晶相として残留するものである。すなわち、粒界相の組成は原料配合中のSiO2とRE2O3の比によって支配され、決定される。しかも、原料中に一定量のSiO2不純物が含まれていると、ある程度の量以上のRE2O3を添加しないと目的とする液相組成に調整することできなかった。特にSiO2/RE2O3比が低いRE2SiO5やRE4Si2O7N2などの組成の結晶相を粒界に析出させるためには、SiO2量に見合った量のRE2O3を充分に添加する必要があり、そのために組成制御上、焼結助剤を必要以上に添加せざるを得なかった所以である。因みに、RE2O3を焼結助剤として添加する場合、その添加量を減らしていくと、SiO2/RE2O3比は当然ながら相対的に大きくなっていくが、それにつれて粒界相組成にも変化が生じ、RE4Si2O7N2→RE2SiO5→RE2Si2O7→アモルファスと変化する。
すなわち、本来、助剤の使用量は少ない方が好ましいが、粒界の材料設計を所定の組成に設計しようとすると多量のRE2O3を添加する必要があったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上述べた技術手段を前提従来技術とし、これら前提従来技術においては、前示したように諸点において問題があったことから、問題のない窒化ケイ素焼結体とその製造方法を提供しようと言うものである。そのため本発明者においては鋭意研究を進めた結果、焼結助剤として希土類酸化物と窒化ハフニウムを用いることによって、窒化ケイ素原料粉末にSiO2不純物が含まれていても、従来に比し希土類酸化物の添加量を少なくしても、RE4Si2O7N2やRE2SiO5を効率よく析出することが出来ること、これにより粒界相の組成を目的とする組成に精密に制御しうることを見いだし、成功したものである。そして、これにより耐クリープ特性に優れた焼結体を得ることに成功したものである。
本発明は、これらの一連の知見、成功に基づいてなされたものであり、その構成は以下の通りである。これによって、上記目的とする窒化ケイ素焼結体とその製造方法を提供することに成功した。
【0011】
すなわち、本発明において講じた解決手段は下記(1)〜(9)の通りである。
(1) 窒化ケイ素粒子と粒界相とから構成される窒化ケイ素質焼結体であって、粒界相がSi、Hf、O、N、および1種又は2種以上の希土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、希土類元素を0.1〜6重量%含むことを特徴とする窒化ケイ素質焼結体。
(2) 粒界相の60%以上がRE4Si2O7N2またはRE2SiO5で示される結晶質あるいはHf含有酸窒化物であることを特徴とする前記(1)項に記載の窒化ケイ素質焼結体。
(3) 希土類元素がYbであることを特徴とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の窒化ケイ素質焼結体。
(4) 希土類元素がLuであることを特徴とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の窒化ケイ素質焼結体。
(5) 窒化ケイ素粉末に、0.1〜6重量%の希土類酸化物および0.5〜5重量%の窒化ハフニウムを添加して、混合し、次いで窒素雰囲気中で1700℃〜2200℃において焼結することを特徴とする、窒化ケイ素粒子と粒界相とから構成される窒化ケイ素質焼結体であって、粒界相がSi、Hf、O、N、および1種又は2種以上の希土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、希土類元素を0.1〜6重量%含んで成る窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(6)焼成を1〜100気圧の窒素ガス圧下で行うことを特徴とする前記(5)項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(7)焼成をホットプレスで行うことを特徴とする前記(5)又は(6)のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(8)希土類酸化物が酸化イッテルビウムであることを特徴とする前記(5)から(7)のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
(9)希土類酸化物が酸化ルテチウムであることを特徴とする前記(5)から(7)のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
【0012】
上記解決手段においてその技術的骨子とするところは、窒化ハフニウムの添加にあると言える。すなわち、窒化ハフニウムの作用効果は、窒化ケイ素原料中の酸素不純物を取り込む性質があり、また窒化ハフニウム自体は焼結に関与しないので、結果として液相の組成におけるSiO2/RE2O3比を低く保つことができ、これにより、少量のRE2O3添加でもRE4Si2O7N2やRE2SiO5を粒界相に析出させることができるものである。
【0013】
上記構成において、第1ないし第4の構成は、本発明の窒化ケイ素焼結体を開示し、規定しているものである。ここに、第1の構成は、本発明の基本となる窒化ケイ素質焼結体を規定するものであり、その希土類元素の含有量を0.1重量%〜6重量%、Hfの含有量を0.5重量%〜5重量%と各規定した理由は、これらの範囲が耐熱性も含め諸点において最も適した量であるからである。すなわち、希土類元素の含有量が0.1重量%未満では焼結性が低下して緻密な焼結体が得られず、また、6重量%以上では耐酸化特性が低下することから前示範囲に規定したものである。また、Hfの含有量が0.5重量%未満では液相からの酸素除去の効果が少なく、5重量%以上では、焼結性が低下することより前示範囲に規定したものである。
【0014】
また、第2の構成において粒界相の60%以上をRE4Si2O7N2とRE2SiO5とする点は、これによって耐熱性が向上し、これ以外の組成では、窒化ケイ素焼結体の耐酸化性や耐熱性が低下する。例えば、これらの量が60%以下になると、例えば、RE2Si3O3N4(メリライト)が析出すると耐酸化性が低下する。K相が析出すると耐熱性が低下する。H相(アパタイト)が析出すると耐熱性が低下する。
【0015】
第3、第4の構成は、Hf成分を要件事項としている第1又は第2の構成要件中、その希土類元素をYbあるいはLuに選定する場合を規定しているものであるが、これによって、Hf成分とYbあるいはLu成分との両成分が相俟って、高温強度特性あるいは耐クリープ特性に優れた特有な作用効果が奏せられるものである。
【0016】
以上は、本発明を構成する窒化ケイ素焼結体の成分組成とその意義について記載したが、そこに記載のない成分、すなわち焼結助剤成分に、Si、Hf、O、N、RE(希土類元素)以外の成分、たとえば、Mg、Al、Ca、などの元素については、これらが含まれていると耐熱性が低下し、好ましくない。
【0017】
次に、第5ないし第9の構成は、本発明のねらいとする窒化ケイ素質焼結体の製造方法を開示し、規定しているものである。すなわち、窒化ケイ素粉末に、0.1〜5重量%の希土類酸化物および0、5〜6重量%の窒化ハフニウムを添加して、混合し、次いで窒素雰囲気中で1700℃〜2200℃において焼結することを特徴としているものである。ここで、焼成雰囲気は、1〜100気圧の窒素ガス圧下で行うのが良く、また、焼結性が低い場合は、ホットプレス法を用いるのがよい。添加する希土類酸化物として、Yb2O3を用いると特に高温強度が向上し、Lu2O3を用いると特に耐クリープ特性が向上する。
【0018】
上記本発明の製造方法は、粒界が結晶化しやすい手法を提案するものであるが、焼成だけで不十分な場合は、1200℃以上1800℃以下の温度で熱処理を施すことにより結晶化が促進される。窒化ケイ素粉末は、α型、β型、アモルファス、およびこれらの混合物を用いることができる。ここに、窒化ケイ素原料中の酸素含有量は少ない方が好ましいことは言うまでもないことである。
また、希土類酸化物の添加量については、0.1重量%未満では焼結性が低下して緻密な焼結体が得られず、6重量%を超えると耐酸化性が低下することから、0.1〜6重量%が適正な範囲である。そしてまた、窒化ハフニウムの添加量については、0.5重量%未満では液相から酸素除去の効果が少なく、5重量%を超えると焼結性が低下することから、0.5〜5重量%の範囲が適正な範囲である。
【0019】
反応混合物の調製、すなわち窒化ケイ素原料と焼結助剤との混合操作は、通常のボールミルにより行う。そして、反応混合物を調製後、焼結体を得る一連の成形、焼成等の諸工程は、従来法と同様の通常の手段、プロセスによって行われ、特段変わるところはない。ただし、焼結温度は、1700℃より低いと緻密化が達成されず、2200℃より高いと、粒成長が激しくなり強度が低下することから1700〜2200℃の温度範囲が適正である。焼成雰囲気及びその圧力については、使用する窒化ケイ素粉末の分解を避けるため、適正な圧力の窒素ガス雰囲気にて行うことが必要である。そのガス圧が1気圧より低いと、焼成中に窒化ケイ素が熱分解が生じるので好ましくないし、また、100気圧より高いと焼成が阻害されることから、1〜00気圧が適正な圧力範囲ということができる。
ただし、最適な窒素ガス圧については、一律に規定すべきではなく、適用する焼成温度範囲によりむしろ異なるものである。すなわち、焼成温度が高いほど高圧のガス圧中で焼成することが好ましい。焼結助剤として用いる希土類酸化物についても、得られる特化ケイ素焼結体の特性は、必ずしも一様に均等であるとはいえず、その種類によってそこに若干の差違が生じることが明らかとされた。
すなわち、Yb2O3を用いると特に高温強度が向上し、Lu2O3を用いると特に耐クリープ特性が向上するといった差違が生じ、焼結体の設計に当たっては、希土類酸化物の種類に基づく特性上の差違についても充分に考慮に入れ、配慮すべきである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の態様を以下、図面及び実施例に基づいて説明する。
図1は、Hfを粒界相に有する本発明の窒化ケイ素焼結体を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した微細構造を模式的に示した組織図である。すなわち、焼結体から薄片を切り出し、アルゴンイオンミル処理の後、TEMでその微細構造を観察した結果、焼結体の微細構造は、窒化ケイ素粒子、粒界相(二粒子間の粒界相、多粒子間の粒界相)とから構成された窒化ケイ素焼結体が、微細組織レベルで生成している様子が確認、観察された。ここでアルゴンイオンミル処理は試験片をTEM観察に適した数十nmの厚さに加工するために使用した。また、図面の倍率は約40万倍である。
【0021】
次に、本発明を容易に理解し、且つ実施し得るように記載、説明するものとして、以下、実施例を示すが、その意義はあくまでも前示したとおりであり、本発明をこれによって限定する趣旨では決してない。
【0022】
(実施例1);
平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%のα型含有量92%の窒化ケイ素粉末(粉末P1)に酸化ルテチウム2.837wt%および1.372wt%の窒化ハフニウムを添加し、エタノールを添加した湿式ボールミルにより2時間混合粉砕した(混合組成1)。
次いで、空気中にロータリエバポレータを用いて乾燥後、20MPaの圧力で金型成形により、80mm×45mm×10mmの成形体を得た。この成形体を窒化ホウ素を塗布した黒鉛の型に入れてガス圧ホットプレス炉を用いて焼成した。まず、拡散ポンプによる真空中で室温から1300℃まで毎時500℃の速度で加熱し、この温度で10気圧の窒素ガスを導入し、平方センチメートル当たり200kgの圧力を負荷し、毎時500℃で2000℃まで昇温し、2000℃で3時間保持した。
その得られた焼結体の密度を水中のアルキメデス法で測定したところ、3.24g/cm3であり99%以上に緻密化が進行していた。
【0023】
これを、800メッシュのダイヤモンドホイールで平面研削することにより3mm×4mm×40mmの形状に加工した後に、1500℃の温度でJISR1601に準じて4点曲げ強度を測定したところ850MPaであり、高温強度が高い材料が得られた。
さらにこの材料を20mm×70mm×2.5mmの板状で中央部の最大応力部が4mmとなる引張り試験片形状に加工し、1500℃で150MPaの応力で引っ張りクリープ試験を行ったところ、変形速度は毎秒1.5×10−9であり、優れた耐クリープ特性を示した。さらに3mm×4mm×40mmの形状の試験片を大気炉にセットし、空気を毎分1リットル送りながら1500℃で1000時間保持したところ質量の増加は200μgであり、耐酸化特性に優れていた。
【0024】
前示(0020)でも述べたが、この焼結体から薄片を切り出し、アルゴンイオンミル処理の後、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ図1に示すように、窒化ケイ素粒子、粒間同士の二粒子粒界及び多粒子粒界とからなる微細組織が形成されていることが明らかとなった。さらに、ランダムに選んだ50個の多粒子粒界に関してTEM付属のエネルギー分散型元素分析装置(EDX)により元素分布および電子線回折により結晶相の同定をおこなったところ、Hfの濃度が高い部分が30%、Lu2SiO5が20%、Lu4Si2O7N2が30%の割合であった。
【0025】
また、X線回折により焼結体の結晶相を調べたところ、β型窒化ケイ素とLu2SiO5とLu4Si2O7N2が検出された。
焼結体を粉砕してフッ化水素酸と硝酸の混合溶液中に入れて、テフロン(登録商標)容器中で180℃にて10時間加熱溶解処理をした後、ICPで溶液中のSiとLu濃度を定量した。次に、焼結体を粉砕して炭素粉末とともにスズカプセルに封入し、炭素るつぼ中で加熱溶解して発生した窒素と一酸化炭素を定量することにより試料中の酸素と窒素量を定量した。定量値から計算した焼結体の組成は、Lu:2.5wt%、Si:58wt%、0:1.0wt%、N:38.5wt%であった。
このように、Lu2O3に加えて窒化ハフニウムを添加することにより、少量の希土類酸化物添加においてもLu2SiO5とLu4Si2O7N2を効率よく結晶化させることに成功し、高温において耐熱性と耐酸化特性を兼ね備えた窒化ケイ素焼結体を得た。
【0026】
(実施例2〜16);
実施例1と同様の手法で配合、混合した表1のNo.2〜16(No.1は実施例1)に記載の混合物を用いて、これを表2に示す焼成条件に基づいて実施例1と同様の手法にて窒化ケイ素質焼結体を製造した。これを実施例1と同様の手法で高温強度と高温クリープ特性と耐酸化特性等を測定したところ、表2に示すように耐熱性と耐酸化特性を兼ね備えた窒化ケイ素焼結体を得た。また、焼結体の組成は表1に示す通りであった。
これらの表に記載されたデータによれば、希土類酸化物に加えて窒化ハフニウムを添加した本発明の各実施例による窒化ケイ素焼結体は、その何れも高温における強度、耐クリープ特性、耐酸化特性が一定の以上の優れた性能を有していることが明らかとされた。そして、特に、希土類酸化物として酸化イッテルビウムを用いると高温における強度が高くなり、また酸化ルテチウムを用いると高温における耐クリープ特性が向上することを明らかにしている。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
(比較例1〜24);
以上は本発明の実施例に基づいて説明したものである。これに対し、実施例1と同様の方法で配合、混合した表3に示す混合粉末No.17〜36(ただし、No.17〜32は、焼結助剤として希土類酸化物を単独添加した窒化ケイ素焼結体混合物、No.33は焼結助剤としてMgOと窒化ハフニウムHfNとを併用添加した窒化ケイ素焼結体混合物、No.34〜36は、焼結助剤として希土類酸化物と窒化ハフニウムHfNとを併用添加した窒化ケイ素焼結体混合物である。)を用いて、これを表4に示す焼成条件に基づき実施例1と同様の手法にて窒化ケイ素質焼結体を製造した(比較例1〜比較例24)。そしてこれを実施例1と同様の手法で高温強度と高温クリープ特性と耐酸化特性を測定したところ、表4に示す高温特性を持つ材料であった。その焼結体の組成は表3に示す通りであった。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
その結果は、比較例1〜4(焼結助剤として希土類酸化物の中、Lu2O3を配合添加したもの)に示されているように、焼成温度が1700℃よりも低いと緻密化が達成されず、2200℃より高いと、粒成長が激しくなり強度が低下することが明らかにされた。
焼成雰囲気の窒素ガス圧が1気圧より低いと、焼成中に窒化ケイ素が熱分解することが、また、100気圧より高いと焼成が阻害されることがそれぞれ明らかにされた。比較例5〜20に示すように、焼結助剤として窒化ハフニウムを添加しないと、添加した場合(実施例1〜16)と比べて、高温強度、耐クリープ特性、耐酸化特性が低下することが明らかにされた。比較例21〜24に示すように、希土類酸化物の添加量と窒化ハフニウムの添加量が適切でないと、焼結性が低下し、あるいは耐熱性が低下することが明らかにされた。
【0033】
【発明の効果】
窒化ケイ素焼結体では酸化物の焼結助剤が焼結後に多粒子粒界に残留するため耐熱性に乏しい材料であった。また、耐熱性に優れる粒界相を析出させるためには、多量の希土類酸化物を添加する必要があり、高温強度は向上するものの耐酸化特性が低下する問題があった。上述する様に、この発明によれば、窒化ケイ素原料粉末に添加する焼結助剤の量や種類および焼成条件を制御することにより、窒化ケイ素とRE2SiO5組成またはRE4Si2O7N2粒界相とから構成される焼結体を製造することにより、少量の希土類酸化物添加においても粒界が完全に結晶化した材料が得られ、高温強度、耐クリープ特有に加えて耐酸化特性に優れた材料を提供することができ、その意義は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】透過型電子顕微鏡像の模式図
Claims (9)
- 窒化ケイ素粒子と粒界相とから構成される窒化ケイ素質焼結体であって、粒界相がSi、Hf、O、N、および1種又は2種以上の希土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%含み、希土類元素を0.1〜6重量%を含むことを特徴とする窒化ケイ素質焼結体。
- 粒界相の60%以上がRE4Si2O7N2(RE;希土類元素、以下希土類元素をREと記す)またはRE2SiO5で示される結晶質粒子、あるいはHf含有酸窒化物であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素質焼結体。
- 希土類元素がYbであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の窒化ケイ素質焼結体。
- 希土類元素がLuであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の窒化ケイ素質焼結体。
- 窒化ケイ素粉末に、0.1〜6重量%の希土類酸化物および0.5〜5重量%の窒化ハフニウムを添加して、混合し、次いで窒素雰囲気中で1700℃〜2200℃において焼結することを特徴とする、窒化ケイ素粒子と粒界相とから構成される窒化ケイ素質焼結体であって、粒界相がSi、Hf、O、N、および1種又は2種以上の希土類元素(原子番号21、39、57〜71)から構成され、Hfを0.5〜5重量%、希土類元素を0.1〜6重量%を含んで成る窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 焼成を1〜100気圧の窒素ガス圧下で行うことを特徴とする請求項5記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 焼成をホットプレスで行うことを特徴とする請求項5〜6のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 希土類酸化物が酸化イッテルビウムであることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
- 希土類酸化物が酸化ルテチウムであることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の窒化ケイ素質焼結体の製造方法。
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