JP2004051009A - タイヤホイール組立体及びランフラット用支持体 - Google Patents

タイヤホイール組立体及びランフラット用支持体 Download PDF

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Abstract

【課題】突起乗り越し時などに受ける衝撃を緩和する機能を備えたタイヤホイール組立体及びランフラット用支持体を提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ2をホイールのリム1に嵌合すると共に、空気入りタイヤ2の空洞部に、支持面4aを外周側に張り出しつつ該支持面4aの両側に沿って脚部4bを持つ環状シェル4と、該環状シェル4の脚部4bをリム1上に支持する弾性リング5とからなるランフラット用支持体3を挿入したタイヤホイール組立体において、弾性リング5に弾性率が互いに異なる複数の弾性層5a,5bを設け、これら弾性層5a,5bをリング径方向に積層する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランフラット走行を可能にするタイヤホイール組立体及びそれに用いるランフラット用支持体に関し、さらに詳しくは、突起乗り越し時などに受ける衝撃を緩和するようにしたタイヤホイール組立体及びランフラット用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、ある程度の緊急走行を可能にするための技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、特開平10−297226号公報や特表2001−519279号公報で提案された技術は、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部においてリム上に中子を装着し、パンクしたタイヤを中子によって支持することによりランフラット走行を可能にしたものである。
【0003】
上記ランフラット用中子は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ開脚構造の環状シェルを有し、これら両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイールやリムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能であるという利点を有している。
【0004】
しかしながら、上記のような中子は、ランフラット走行では有効に機能するものの、例えば、内圧が低い状態のタイヤが大きな突起を乗り越える際にタイヤを介して中子が突起に衝突すると、大きな衝撃が生じるという問題があった。このような衝撃は搭乗者に不快感を与えるだけでなく、中子の耐久性にも悪影響を与えるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、突起乗り越し時などに受ける衝撃を緩和する機能を備えたタイヤホイール組立体及びランフラット用支持体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤホイール組立体は、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のランフラット用支持体は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤとの間に一定距離を保つように外径が空気入りタイヤのトレッド部の内径よりも小さく形成され、かつ内径が空気入りタイヤのビード部の内径と略同一寸法に形成される。このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの空洞部に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールのリムに組み付けられ、タイヤホイール組立体を構成する。タイヤホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の環状シェルの支持面によって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0009】
本発明によれば、弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層しているので、例えば、内圧が低い状態のタイヤが大きな突起を乗り越える際にタイヤを介してランフラット用支持体が突起に衝突した場合に、弾性率が低い弾性層に基づいて衝撃を緩和することができる。その結果、搭乗者への不快感を低減し、またランフラット用支持体の耐久性を向上することができる。一方、ランフラット走行時においては、弾性率が高い弾性層に基づいて環状シェルを安定的に支持することができる。
【0010】
本発明では、弾性リングに含まれる複数の弾性層のうち、弾性率が最も低い弾性層を最もリム側に配置することが好ましい。また、弾性リングに含まれる複数の弾性層において、最も高い弾性率が最も低い弾性率の120〜300%であることが好ましい。これにより、環状シェルを安定的に支持しつつ高い衝撃緩和能力を発揮することができる。
【0011】
更に、弾性リングに含まれる複数の弾性層において、弾性率が最も低い弾性層の径方向端面と共に両側面の少なくとも一部を、弾性率が最も高い弾性層よりも弾性率が高いカバー材で被覆することが好ましい。これにより、弾性リングの剛性の非線形性を調整することが可能になる。特に、カバー材を環状シェルと一体化した場合、環状シェルと弾性リングとの結合を更に安定化させることが可能になる。
【0012】
本発明は、ランフラット用支持体が上述した環状シェルを有する場合に特に有効であるが、上記環状シェル以外の環状の剛体を有するランフラット用支持体にも適用することが可能である。
【0013】
即ち、本発明のタイヤホイール組立体は、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を有する環状の剛体と、該剛体をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のランフラット用支持体は、支持面を有する環状の剛体と、該剛体をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図であり、1はホイールのリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイール回転軸を中心として環状に形成されている。
【0017】
ランフラット用支持体3は、環状シェル4と弾性リング5とを主要部として構成されている。このランフラット用支持体3は、通常走行時には空気入りタイヤ2の内壁面から離間しているが、パンク時には潰れた空気入りタイヤ2を内側から支持するものである。
【0018】
環状シェル4は、パンクしたタイヤを支えるための連続した支持面4aを外周側(径方向外側)に張り出すと共に、該支持面4aの両側に沿って脚部4b,4bを備えた開脚構造になっている。環状シェル4の支持面4aは、その周方向に直交する断面での形状が外周側に凸曲面になるように形成されている。この凸曲面は少なくとも1つ存在すれば良いが、タイヤ軸方向に2つ以上が並ぶようにすることが好ましい。このように環状シェル4の支持面4aを2つ以上の凸曲面が並ぶように形成することにより、タイヤ内壁面に対する支持面4aの接触箇所を2つ以上に分散させ、タイヤ内壁面に与える局部摩耗を低減するため、ランフラット走行の持続距離を延長することができる。
【0019】
上記環状シェル4は、パンクした空気入りタイヤ2を介して車両重量を支える必要があるため剛体材料から構成されている。その構成材料には、金属や樹脂などが使用される。このうち金属としては、スチール、アルミニウムなどを例示することができる。また、樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでも良い。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用しても良いが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用しても良い。
【0020】
弾性リング5は、環状シェル4の脚部4b,4bにそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接しつつ環状シェル4を支持するようになっている。この弾性リング5は、パンクした空気入りタイヤ2から環状シェル4が受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対する滑りを防止して環状シェル4を安定的に支持するものである。
【0021】
弾性リング5の構成材料としては、ゴム又は樹脂を使用することができ、特にゴムが好ましい。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。勿論、これらゴムには、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。そして、ゴム組成物の配合に基づいて所望の弾性率を得ることができる。
【0022】
図2は、環状シェル4と弾性リング5との接合部を拡大して示すものである。図2に示すように、上記タイヤホイール組立体において、弾性リング5には弾性率が互いに異なる複数の弾性層5a,5bが形成され、これら弾性層5a,5bがリング径方向に積層されている。但し、弾性率とは、60℃における100%伸長時のモジュラスである。ここでは、低モジュラスのゴムからなる弾性層5aをシェル側に配置し、高モジュラスのゴムからなる弾性層5bをリム側に配置している。
【0023】
このように構成されるタイヤホイール組立体では、例えば、空気入りタイヤ2が内圧の低い状態で大きな突起を乗り越える際にランフラット用支持体3が突起に衝突した場合に、弾性率が低い弾性層5aに基づいて衝撃を緩和することができる。一方、走行中に空気入りタイヤ2がパンクすると、潰れた空気入りタイヤ2がランフラット用支持体3の環状シェル4の支持面4aによって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。このランフラット走行時においては、弾性率が高い弾性層5bに基づいて環状シェル4を安定的に支持することができる。
【0024】
図3(a)〜(c)は弾性リングの変形例を示すものである。この図3(a)〜(c)に示すように、低モジュラスのゴムからなる弾性層5aを高モジュラスのゴムからなる弾性層5bよりもリム側に配置した場合、環状シェル4の安定性を十分に確保しつつ高い衝撃緩和能力を発揮することができる。また、弾性層5a,5bの断面形状は特に限定されるものではない。
【0025】
弾性リング5に含まれる弾性層5a,5bにおいて、最も高い弾性率は最も低い弾性率の120〜300%にすると良い。この比率が小さ過ぎると衝撃緩衝能力が不十分になり、逆に大き過ぎると環状シェル4の支持が不安定になる。
【0026】
図4(a)〜(b)は弾性リングにカバー材を付加した変形例を示すものである。図4(a)は、低モジュラスのゴムからなる弾性層5aをシェル側に配置し、高モジュラスのゴムからなる弾性層5bをリム側に配置した場合であって、カバー材6は弾性層5bよりも高い弾性率を有し、弾性層5aの径方向外側端面と、該弾性層5aの両側面の少なくとも一部とを被覆している。この場合、弾性リング5の剛性の非線形性を調整することができ、しかもカバー材6を環状シェル4と一体化することで、環状シェル4と弾性リング5との結合を更に安定化させることができる。
【0027】
一方、図4(b)は、低モジュラスのゴムからなる弾性層5aをリム側に配置し、高モジュラスのゴムからなる弾性層5bをシェル側に配置した場合であって、カバー材6は弾性層5bよりも高い弾性率を有し、弾性層5aの径方向内側端面と、該弾性層5aの両側面の少なくとも一部とを被覆している。この場合、弾性リング5の剛性の非線形性を調整することができる。
【0028】
【実施例】
タイヤサイズが205/55R16 89Vの空気入りタイヤと、リムサイズが16×6 1/2JJのホイールとのタイヤホイール組立体において、厚さ1.0mmのスチール板から環状シェルを加工し、その脚部に弾性率が互いに異なる2種類の硬質ゴムからなる2層構造の弾性リングを接合してランフラット用支持体を製作し、そのランフラット用支持体を空気入りタイヤの空洞部に挿入してタイヤホイール組立体(実施例1〜3)とした。これら実施例1〜3では、弾性リングに含まれる複数の弾性層において、最も低い弾性率に対する最も高い弾性率の比率(弾性率の比率)を種々異ならせた。
【0029】
また、比較のため、環状シェルの脚部に1種類の硬質ゴムからなる単層構造の弾性リングを接合してランフラット用支持体を製作し、そのランフラット用支持体を用いたこと以外は、実施例と同一構造のタイヤホイール組立体(従来例)を得た。
【0030】
上記4種類のタイヤホイール組立体について、下記の測定方法により、突起乗り越し時の衝撃緩和能力を評価し、その結果を表1に示した。
【0031】
〔突起乗り越し時の衝撃緩和能力〕
ドラムの外周面に高さ100mmの突起を設けたドラム試験機を用い、試験すべきタイヤホイール組立体を上記ドラム試験機に装着し、内圧100kPa、速度30km/hの条件で突起を乗り越える際の衝撃力を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど衝撃緩和能力が優れていることを意味する。
【0032】
【表1】
Figure 2004051009
この表1に示すように、実施例1〜3のタイヤホイール組立体はいずれも突起乗り越し時の衝撃緩和能力が従来よりも優れていた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体について、弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したから、ランフラット走行性能を損なうことなく突起乗り越し時などに受ける衝撃を緩和することができる。その結果、搭乗者への不快感を低減し、またランフラット用支持体の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】図1における環状シェルと弾性リングとの接合部を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ本発明における弾性リングの変形例を示す断面図である。
【図4】(a)〜(b)はそれぞれ本発明における弾性リングにカバー材を付加した変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
2 空気入りタイヤ
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
4a 支持面
4b 脚部
5 弾性リング
5a,5b 弾性層
6 カバー材

Claims (10)

  1. 空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したタイヤホイール組立体。
  2. 前記弾性リングに含まれる複数の弾性層のうち、弾性率が最も低い弾性層を最もリム側に配置した請求項1に記載のタイヤホイール組立体。
  3. 前記弾性リングに含まれる複数の弾性層において、最も高い弾性率が最も低い弾性率の120〜300%である請求項1又は請求項2に記載のタイヤホイール組立体。
  4. 前記弾性リングに含まれる複数の弾性層において、弾性率が最も低い弾性層の径方向端面と共に両側面の少なくとも一部を、弾性率が最も高い弾性層よりも弾性率が高いカバー材で被覆した請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤホイール組立体。
  5. 空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を有する環状の剛体と、該剛体をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したタイヤホイール組立体。
  6. 支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したランフラット用支持体。
  7. 前記弾性リングに含まれる複数の弾性層のうち、弾性率が最も低い弾性層を最もリム側に配置した請求項6に記載のランフラット用支持体。
  8. 前記弾性リングに含まれる複数の弾性層において、最も高い弾性率が最も低い弾性率の120〜300%である請求項6又は請求項7に記載のランフラット用支持体。
  9. 前記弾性リングに含まれる複数の弾性層において、弾性率が最も低い弾性層の径方向端面と共に両側面の少なくとも一部を、弾性率が最も高い弾性層よりも弾性率が高いカバー材で被覆した請求項6〜8のいずれかに記載のランフラット用支持体。
  10. 支持面を有する環状の剛体と、該剛体をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記弾性リングに弾性率が互いに異なる複数の弾性層を設け、これら弾性層をリング径方向に積層したランフラット用支持体。
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