JP2004049718A - 椅子における背凭れ等の傾動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】背凭れまたは座の傾斜角度を、着座したままで、かつ楽な姿勢で容易に調節することができ、特に、着座者が背凭れ等とともに後方に傾倒しても、着座者と操作レバーとの位置関係がさほど変動しないようにした椅子における背凭れ等の傾動装置を提供する。
【解決手段】背凭れ7または座8を、復帰用の付勢手段の付勢力に抗して傾動し得るようにした椅子における背凭れ等の傾動装置において、背凭れ7または座8を、段階的な任意の傾斜角度で係止したり、その係止状態を解除したりするロック手段の操作レバー76を、座8の側方より起立する肘掛け14の前上部に設け、ロック手段と操作レバー76とを、可撓性のケーブルをもって互いに連係する。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子における背凭れや座の傾動装置、特に、背凭れ等を、段階的な任意の傾斜角度で係止し得るようにしたロック手段の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
椅子の背凭れを、段階的な任意の傾斜角度で係止し得るようにした従来の背凭れの傾動装置としては、自動車用シートのリクライニング機構に用いられているように、背凭れと一体的に回動するセクターギヤの外周面に形成した歯に、座の側面に枢着した操作レバーまたはそれに連係した係止レバーに突設したピンを係脱させるようにしたものが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のような従来の装置では、操作レバーが座の側面後部に設けられているので、特に肘掛けがある場合には、腕を肘掛けの外側に回して、操作レバーを操作しなければならず、操作しづらい。
また、家具用の椅子には、座の下方に、背凭れまたは座の傾斜角度調節、高さ調節、付勢力調節等の各種調節用の操作レバーを設けたものがあるが、いずれも、着座状態ではこれらの操作レバーを操作しづらく、特に、背凭れの傾斜角度調節を行う場合は、着座者が背中で背凭れを後傾させつつ調節するので、後傾角度が大きくなるにつれて、操作レバーが着座者の肩から遠ざかり、操作しづらくなる。
【0004】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、背凭れまたは座の傾斜角度を、着座したままで、かつ楽な姿勢で容易に調節することができ、特に、着座者が背凭れ等とともに後方に傾倒しても、着座者と操作レバーとの位置関係がさほど変動しないようにした椅子における背凭れ等の傾動装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) 背凭れまたは座を、復帰用の付勢手段の付勢力に抗して傾動し得るようにした椅子における背凭れ等の傾動装置において、背凭れまたは座を、段階的な任意の傾斜角度で係止したり、その係止状態を解除したりするロック手段の操作レバーを、座の側方より起立する肘掛けの前上部に設け、ロック手段と操作レバーとを、可撓性のケーブルをもって互いに連係する。
【0006】
(2) 上記(1)項において、肘掛けを、背凭れと一体となって傾動するようにする。
【0007】
(3) 上記(1)または(2)項において、ロック手段に、操作レバーの第1回目の操作により、背凭れまたは座を係止状態とし、かつ操作レバーの第2回目の操作により、前記係止状態を解除し、以後同様の作用を繰り返すようにした反復係止機構を備えるプルロック・プルレリーズ機構を設ける。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1〜図10は、本発明の一実施形態を備える椅子を示す。
【0009】
図1及び図2に示すように、この椅子は、先端部にキャスタ(1)が設けられた放射状をなす5本の脚杆(2)を有する脚体(3)を備えている。脚体(3)の中央には、ガススプリング(図示略)を備える伸縮式の脚柱(4)が立設されており、脚柱(4)の上端には、支基(5)の後部が固着されている。
【0010】
支基(5)は、下面が開口するほぼ中空箱状をなし、下面の開口部は、着脱可能なカバー(6)により覆われている。
【0011】
支基(5)の内部には、後述する背凭れ(7)及び座(8)の復帰用の付勢手段(9)(図3参照)及びその付勢力の切換手段(10)(図5参照)等が設けられているが、それらについては、後に詳細に説明することとして、先に、背凭れ及び座の傾動装置(A)の概略構成について説明する。
【0012】
支基(5)の前後方向の中間部には、左右方向を向く六角柱状の軸(11)が、その中心軸線回りに回動可能として貫通されている。
支基(5)の両側壁(5a)(5a)より左右に突出する軸(11)の両端部には、背凭れ(7)を支持する側面視ほぼL字状の左右1対の背凭れ支持杆(12)(12)の前端部に設けた左右方向を向く筒部(12a)(12a)が固嵌されており、背凭れ(7)及び背凭れ支持杆(12)(12)は、軸(11)と一体となって、軸(11)を中心に後下方に傾動し得るようになっている。
(13)は、背凭れ(7)の上端部に設けられたヘッドレスト、(14)は、左右の背凭れ支持杆(12)における前方を向く下部の中間に起立するように設けられた肘掛けである。
【0013】
左右の背凭れ支持杆(12)における筒部(12a)と肘掛け(14)との間の中間部には、上向きの座支持杆(15)が一体的に設けられており、各座支持杆(15)の上端部は、前後方向を向く左右1対のガイドレール(16)の後端部内側面に、左右方向を向く軸(17)をもって連結されている。
【0014】
左右のガイドレール(16)(16)の前部同士及び後部同士は、左右方向を向く横杆(18)をもってそれぞれ互いに連結されており、また、両ガイドレール(16)の前端部外側面には、ほぼ上下方向を向く左右1対の支持リンク(19)(19)の上端部が、左右方向を向く軸(20)をもって連結されている。
【0015】
左右の支持リンク(19)(19)の下端部は、支基(5)の両側壁(5a)(5a)の前部に設けられた外向きの筒部(21)(21)の外側に、左右方向を向く1本の軸(22)をもって枢着され、かつ各筒部(21)内に設けられたねじりコイルばね(23)(図5参照)により、それぞれ図2における反時計回りに付勢されている。
左方の支持リンク(19)の外側における軸(22)の端部には、付勢手段(9)の付勢力調節用の操作レバー(24)が固嵌されている。
【0016】
左右のガイドレール(16)(16)には、座(8)の下面に短寸の脚片(25)(25)をもって前後の端部が固着された前後方向を向く左右1対の可動レール(26)(26)が、前後方向に位置調節可能として装着されている。なお、この座(8)の前後位置調節機構は、本発明には直接関係しないので詳細な説明は省略する。
【0017】
かくして、背凭れ支持杆(12)、それと一体の座支持杆(15)、支持リンク(19)、ねじりコイルばね(23)、及び支基(5)の内部に設けられた、これから説明する復帰用の付勢手段(9)、並びにその付勢力の切換手段(10)等により、背凭れ及び座の傾動装置(A)が形成されており、背凭れ(7)及び背凭れ支持杆(12)(12)を、軸(11)を中心として後下方に傾動させると、そのときの背凭れ支持杆(12)(12)と一体の座支持杆(15)(15)の後傾により、座(8)の後部が後下方に移動させられ、かつそれに連動して、座(8)の前部も、左右の支持リンク(19)(19)が、ねじりコイルばね(23)(23)の付勢力に抗して、後傾することにより、若干後下方に移動させられるようになっている。
なお、この例では、左右のねじりコイルばね(23)(23)は、支基(5)の内部に設けられた復帰用の付勢手段(9)の補助的なものとなっている。
【0018】
図3に示すように、支基(5)の内部に設けられた付勢手段(9)は、複数(この例では3個)の単位付勢手段(27)(28)(29)からなり、各単位付勢手段(27)(28)(29)は、上述の六角柱状の軸(11)が相対回転不能として嵌合された六角孔(30)を中央に備えるほぼ円筒形の芯材(31)と、この芯材(31)とほぼ同芯をなし、外周面に突設した突部(32)が支基(5)または切換手段(10)に当接することにより、支基(5)に対して回り止めされるようにした外筒(33)と、芯材(31)と外筒(33)との間に充填され、芯材(31)が外筒(33)に対して中心軸線回りに回動することにより弾性変形して、芯材(31)に復帰回動力を付与するようにしたゴムまたは軟質合成樹脂材料等からなる円筒状の弾性体(34)とを備えている。
【0019】
中央の単位付勢手段(28)は、その左右の単位付勢手段(27)(29)より軸方向の長さを大とすることにより、付勢力も大となるようにしてあり、また、左方の単位付勢手段(27)は、その弾性体(34)の弾性係数が他の単位付勢手段(28)(29)における弾性体(34)のものより大となるように、弾性体(34)の材質を、他の単位付勢手段(28)(29)におけるものと互いに異ならせることにより、付勢力が最も小となるようにしてある。
したがって、この例では、左方の単位付勢手段(27)−右方の単位付勢手段(29)−中央の単位付勢手段(28)の順で、付勢力が漸次増大するように設定してある。
【0020】
中央の単位付勢手段(28)における外筒(33)の突部(32)は、支基(5)の上壁(5b)の前部中央の下面より垂下する停止片(35)に常時当接している(図6参照)。
【0021】
最も外側の単位付勢手段(27)(29)と、支基(5)の両側壁(5a)(5a)との間には、中央に六角孔(36)が切設され、かつ外周の下部に下向きの突片(37)が設けられた左右1対の円板(38)(38)が、その六角孔(36)が軸(11)に相対回転不能として嵌合するようにして配設されている。
【0022】
右方の円板(38)の上部には、支基(5)の上壁(5b)の右側部に形成された前後方向を向く長孔(39)を通って上方に突出し、かつ内側面に放射状の歯(40)が形成された側面視扇形のセクタギヤ(41)が連設されている。
【0023】
このセクタギヤ(41)は、背凭れ(7)が最も起立した位置(以下初期位置という)で停止しているときにも、背凭れ(7)に、中央の単位付勢手段(28)の付勢力(初期捩回力)を作用させるための機能と、背凭れ(7)を任意の後傾位置でロックさせる機能とを有している。
【0024】
すなわち、中央の単位付勢手段(28)における外筒(33)の突部(32)が停止片(35)に当接した状態から、セクタギヤ(41)を軸(11)とともに、図6における時計回りに、予め定めた初期捩り角度だけ回動させた状態で、セクタギヤ(41)の前縁に、停止板(42)の後端を当接させて、停止板(42)を支基(5)の上壁(5b)の上面に、止めねじ(43)をもって固着することにより、軸(11)に中央の単位付勢手段(28)の初期捩回力を付与した状態で、軸(11)を、図6における反時計回りに回り止めしておくことができる。
【0025】
さらに、この状態で、軸(11)の両端部に、初期位置とした背凭れ支持杆(12)(12)の筒部(12a)(12a)を嵌合して固着することにより、初期位置としたときの背凭れ(7)に、中央の単位付勢手段(28)による初期捩回力を付与することができる。なお、セクタギヤ(41)における背凭れ(7)を任意の後傾位置でロックさせる機能については後述する。
【0026】
左右の円板(38)(38)における下向きの突片(37)(37)は、最も外側の単位付勢手段(27)(29)における各外筒(33)の外周面の下部に設けられた台座(44)に、止めねじ(45)(45)をもって固着された係止板(46)における外筒(33)より外側方に突出する部分に係合している。
【0027】
この円板(38)(38)及び係止板(46)は、最も外側の単位付勢手段(27)(29)に、中央の単位付勢手段(28)に付与されるのと同様の初期捩回力を付与するためのものである。
【0028】
すなわち、最も外側の単位付勢手段(27)(29)において、外筒(33)を軸(11)に対して、上記の中央の単位付勢手段(28)についての初期捩り角度と同一角度だけ図7における反時計回りに回動させた状態で、係止板(46)を、その外端部に円板(38)の突片(37)が係合するようにして、外筒(33)の外周面における台座(44)に、止めねじ(45)(45)をもって固着することにより、中央の単位付勢手段(28)に付与されるのと同様の初期捩回力を、最も外側の単位付勢手段(27)(29)にも付与することができる。
【0029】
上記のように、すべての単位付勢手段(27)(28)(29)において、外筒(33)を、軸(11)に対して、それぞれ同一の初期捩り角度だけ捩ることによって、背凭れ(7)が初期位置に停止しているとき、すべての単位付勢手段(27)(28)(29)における外筒(33)の突部(32)の位置が揃うようにしてある。
これによって、中央の単位付勢手段(28)における外筒(33)の突部(32)が停止片(35)に当接した状態で、他の単位付勢手段(27)(29)における外筒(33)の突部(32)が、中央の突部(32)より上方に位置し、後述する切換手段(10)における作動部材の左右方向の移動を妨げる等の誤作動のおそれを防止することができ、切換手段(10)の作動に都合がよくなる。
【0030】
図5に示すように、切換手段(10)は、上述の操作レバー(24)により回転させられるようにした軸(22)と、この軸(22)に左右方向に摺動自在に外嵌され、かつ後方に向かって突出する停止片(47)が、左右の単位付勢手段(27)(29)における外筒(33)の突部(32)と当接しうる作動位置と、それより外側方に外れた不作動位置とに移動可能とした左右1対の作動部材(48)(48)と、軸(22)に固嵌され、軸(22)の回転に伴って、左右の作動部材(48)(48)を互いに独立して内方に向かって移動させる左右1対の円筒カム(移動部材)(49)(50)と、軸(22)に遊嵌して、左右の作動部材(48)(48)間に縮設され、左右の作動部材(48)(48)を互いに離れる方向に付勢する圧縮コイルばね(51)と、支基(5)の両側壁(5a)(5a)の前下部間に架設され、左右の作動部材(48)(48)の停止片(47)を、支基(5)の上壁(5b)と協働して上下から挟み、各作動部材(48)の回り止めと、左右方向の移動のための案内とを果たすガイドバー(52)とを備えている。
【0031】
左右の円筒カム(49)(50)のカム面(49a)(50a)の形状は、図8の展開図に示すように定めてある。
すなわち、操作レバー(24)を、予め定めた0°位置としたときは、左右の作動部材(48)(48)がともに不作動位置に位置しており、その状態から、操作レバー(24)を90°位置まで回動させると、左方の作動部材(48)のみが、圧縮コイルばね(49)の付勢力に抗して、右方に押動されて、作動位置に位置させられ、右方の作動部材(48)(48)は、元のまま不作動位置に位置する。
【0032】
その状態から、操作レバー(24)を、さらに180°位置まで回動させると、左右の作動部材(48)(48)がともに左方に移動させられて、左方の作動部材(48)は不作動位置に、また右方の作動部材(48)は作動位置に位置させられる。
【0033】
さらに、その状態から、操作レバー(24)を、270°位置まで回動させると、左方の作動部材(48)のみが右方に移動させられて、左右の作動部材(48)(48)はともに作動位置に位置させられる。
【0034】
操作レバー(24)を、270°位置から360°位置、すなわち0°位置まで回動させる間に、左右の作動部材(48)(48)は、圧縮コイルばね(51)の付勢力により、互いに外向きに移動させられて、ともに不作動位置に位置させられる。
【0035】
したがって、操作レバー(24)を、0°位置から270°位置まで回動させる間に、背凭れ(7)の復帰用の付勢力は、0°のとき最小(中央の単位付勢手段(28)の付勢力のみ)、90°のときやや小(中央の単位付勢手段(28)の付勢力と左方の単位付勢手段(27)の付勢力との和)、180°のときやや大(中央の単位付勢手段(28)の付勢力と右方の単位付勢手段(29)の付勢力との和)、270°のとき最大(全単位付勢手段(27)(28)(29)の付勢力の総和)と、段階的に大となる。
【0036】
一方、操作レバー(24)を、0°位置から270°位置まで回動させる間に、左右の作動部材(48)(48)の相互の間隔は、段階的に漸次小となり、圧縮コイルばね(51)による操作レバー(24)の操作抵抗力は、段階的に漸次増大するので、操作レバー(24)の操作抵抗力が大となるのを感じることにより、背凭れ(7)の復帰用の付勢力も大となっていることを感覚的に知ることができる。
【0037】
図4に示すように、支基(5)の上壁(5b)の上面には、背凭れ(7)を所望の後傾角度でロックするロック手段(53)を収容するケース(54)が一体的に設けられている。
ケース(54)内には、上面と左右両側面とが開口し、かつ右半部の拡幅部(55a)と左半部の狭幅部(55b)とからなる収容溝(55)が形成され、拡幅部(55a)内には、右端にセクタギヤ(41)の歯(40)と同一のピッチ角度をもって噛合する歯(56a)(57a)を有する2枚の板状の係止部材(56)(57)が、円板(38)の回転中心である軸(11)から離れる方向である上下方向に重ねて、かつ互いに独立して左右方向に摺動可能として収容されている。
【0038】
上下の係止部材(56)(57)の歯(56a)(57a)は、互いに半ピッチだけ位相を前後にずらして形成されているので、セクタギヤ(41)の歯(40)にはいずれか一方だけが噛合するようになっている。
【0039】
各係止部材(56)(57)の中央には、左右方向に長く、かつ上下方向に貫通する角孔(58)が穿設され、同じく左側部下面には、角孔(58)に連通する左右方向を向くU字溝(59)が形成されている。
【0040】
狭幅部(55b)の右側部には、ケース(54)の上面全体を閉塞する蓋板(60)の中央部から下方に向かって切り起こされた仕切り板(61)が上方より嵌合されており、この仕切り板(61)には、上端から下端近傍にかけて、U字溝(62)が形成されている。
【0041】
狭幅部(55b)内の仕切り板(61)より左方には、上下方向を向く角筒状の連結駒(63)が、左右方向に摺動自在に嵌合されている。
連結駒(63)における右側壁中央には、上下縁から中間位置に向かってU字溝(64)(65)が上下対称をなして形成されており、また左側壁の上縁中央には、下方を向くU字溝(66)が形成されている。
【0042】
上下の係止部材(56)(57)におけるU字溝(59)(59)と、仕切り板(61)のU字溝(62)と、連結駒(63)の右側壁における上下のU字溝(64)(65)とには、両端に拡径鍔(67a)(68a)を有する左右方向を向く上下1対のロッド(67)(68)が左右方向に摺動自在に嵌合されている。
【0043】
上下のロッド(67)(68)の右端の拡径鍔(67a)(68a)と、上下の係止部材(56)(57)における角孔(58)の左端面との間には、各ロッド(67)(68)に遊嵌された圧縮コイルばね(69)(69)がそれぞれ縮設されており、また、上下の係止部材(56)(57)の左端面と仕切り板(61)の右側面との間には、各ロッド(67)(68)に遊嵌された圧縮コイルばね(70)(70)がそれぞれ縮設されている。
【0044】
圧縮コイルばね(69)と圧縮コイルばね(70)との付勢力の大きさは、ほぼ同等か、または、圧縮コイルばね(69)のほうが圧縮コイルばね(70)より若干大となるように設定しておくのが好ましい。
【0045】
連結駒(63)における左側壁のU字溝(66)には、狭幅部(55b)内の連結駒(63)よりさらに左方に設けられたプルロック・プルレリーズ機構(71)における、先端に拡径鍔(72a)が設けられたシャフト(72)の右端部が嵌合されている。
【0046】
プルロック・プルレリーズ機構(71)は、狭幅部(55b)内に設けられた角筒状のケース(73)内をシャフト(72)が左右方向に貫通し、このシャフト(72)を、ケース(73)の左端から突出した左端部側から一度左方に引くと、ケース(73)内に設けられた、いわゆるノック式のボールペンにおけるのと同様の公知の回転式反復係止機構により、左方に引かれた状態で係止され、次いで、再度シャフト(72)を左方に引くと、回転式反復係止機構の係止状態が解除されて、ケース(73)に内蔵された復帰ばね(図示略)により、シャフト(72)が右方に移動させられ、以後、シャフト(72)を左方に引く都度、回転式反復係止機構が係止状態と係止解除状態とを交互に繰り返すようになっている。
【0047】
シャフト(72)の左右方向の移動ストロークは、2枚の係止部材(56)(57)の歯(56a)(57a)のいずれかがセクタギヤ(41)の歯(40)と噛合するのに必要な移動量より大としてある。
【0048】
シャフト(72)の左端部は、可撓性の鞘管(74)内を挿通するようにしたケーブル(75)をもって、一方の肘掛け(14)の前上部に設けた前方を向く操作レバー(76)(図2参照)に連係され、操作レバー(76)を上向きに回動する度に、シャフト(72)が左方に引かれるようになっている。ケーブル(75)及び鞘管(74)の一部は、肘掛け(14)内に挿通され(図示略)、それらが、座(8)の上方においては、外部に露呈しないようになっている。
【0049】
なお、ロック手段(53)の支基(5)への組み付けに当たっては、上下反転させた蓋板(60)上に、係止部材(56)(57)、連結駒(63)、ロッド(67)(68)、圧縮コイルばね(69)(70)、プルロック・プルレリーズ機構(71)を、全て反転させて順次組み付けた後、それらを一体として、反転させつつ、ケース(54)の収容溝(55)に嵌合するのがよい。
【0050】
図9に示すように、シャフト(72)が左方に引かれて、ロックされているときは、その右端の拡径鍔(72a)により、連結駒(63)が左方に移動させられ、それに伴って、上下のロッド(67)(68)も左方に移動させられ、通常は、圧縮コイルばね(69)(70)の付勢力のバランスにより、上下の係止部材(56)(57)は、その歯(56a)(57a)がセクタギヤ(41)の歯(40)から左方に離脱した不作動位置に停止している。
【0051】
この状態では、背凭れ(7)は、操作レバー(24)により調節された付勢力により常時起立位置に向かって付勢され、その付勢力に抗して、後方に押動することにより、適度の抵抗力をもって後傾することができる。
【0052】
この状態で、背凭れ(7)を所望の角度まで後傾させた後、操作レバー(76)を上向き回動させると、シャフト(72)が一旦左方に移動させられ、プルロック・プルレリーズ機構(71)が解除状態となり、図10に実線で示すように、シャフト(72)が右方に移動させられ、それに伴って、連結駒(63)、上下のロッド(67)(68)、及び上下の係止部材(56)(57)は、圧縮コイルばね(69)(70)の付勢力のバランスにより、右方に移動させられ、上下の係止部材(56)(57)のいずれかの歯(56a)(57a)が、セクタギヤ(41)の歯(40)に噛合する。
【0053】
それらが即座に噛合しない場合は、背凭れ(7)を前後方向にわずかに傾動させれば、必ずいずれかの歯(56a)(57a)が、セクタギヤ(41)の歯(40)に噛合する。
【0054】
いずれかの歯(56a)(57a)(図10では上方の歯(56a))が、セクタギヤ(41)の歯(40)に噛合した後は、背凭れ(7)はその位置にロックされ、着座者が背を背凭れ(7)から離しても、背凭れ(7)はその位置から前後いずれにも移動することはない。
【0055】
この背凭れ(7)がロックされている状態から、操作レバー(76)を再度上向き回動させると、シャフト(72)が一旦左方に移動させられたのち、プルロック・プルレリーズ機構(71)がロック状態となり、シャフト(72)が左方に移動させられたままの状態でロックされ、それに伴って、連結駒(63)、上下のロッド(67)(68)、及びセクタギヤ(41)の歯(40)と噛合していない上下いずれかの係止部材(56)(57)(この例では下方の係止部材(57))とが、左方に移動させられる。
【0056】
しかし、セクタギヤ(41)の歯(40)と噛合している方の係止部材(56)(または(57))は、付勢手段(9)による大きな付勢力がほぼ直角方向に掛かっており、即座にセクタギヤ(41)から離脱することはなく、背凭れ(7)に着座者が凭れた場合のように、上記付勢力に抗する荷重が掛かったときに始めて、セクタギヤ(41)から離脱し、圧縮コイルばね(69)(70)の付勢力のバランスにより、左方に移動させられる。
上下の係止部材(56)(57)を上下のロッド(67)(68)に直接連結せず、左右両方向に圧縮コイルばね(69)(70)を介在させて、遊びを持たせてあるのはこのためである。
【0057】
以上から明らかなように、この実施形態によると、操作レバー(24)を回転させることにより、背凭れ(7)の復帰用の付勢力を、大きな範囲に亘って段階的に調節することができるとともに、操作レバー(76)により、背凭れ(7)を所望の後傾角度でロックしたり、そのロック状態を解除したりすることができる。
【0058】
なお、この例では、支基に、背凭れと座とを、互いに連動して後下方に向かって傾動可能として支持し、その両方を復帰用の付勢手段をもって、前上方に向かって付勢するようにしているが、支基に、背凭れと座とのいずれか一方のみを、後下方に向かって傾動可能として支持したものにも本発明を適用することもできる。
【0059】
また、単位付勢手段は、2個または4個以上とすることもできるし、そのすべての付勢力を選択して、背凭れまたは座に伝達しうるようにすることもできる。
【0060】
さらに、係止部材(56)(57)を3個以上とし、それらの歯(56a)(57a)の位相を互いに3分の1または係止部材の個数分の1ずつずらせば、セクタギヤ(41)の歯(40)及び係止部材(56)(57)の歯(56a)(57a)のピッチより、調節可能ピッチを、さらに細かくすることができる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、ロック手段の操作レバーを、座の側方より起立する肘掛けの前上部に設けたので、操作レバーを、着座したままで、かつ楽な姿勢で操作することができる。
【0062】
請求項2記載の発明によると、操作レバーを設けた肘掛けが、背凭れと一体となって傾動するので、着座者が背凭れ等とともに後方に傾倒しても、着座者と操作レバーとの位置関係がさほど変動することはなく、操作レバーを常に楽な姿勢で操作することができる。
【0063】
請求項3記載の発明によると、操作レバーを操作する度に、係止状態と係止解除状態とが繰り返されるので、操作レバーの操作が楽になるとともに、操作レバーを引いた状態で係止させる手段等の複雑な手段を設ける必要がなく、操作レバーの構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を備える椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】同じく、支基とその内部の付勢手段との分解斜視図である。
【図4】同じく、支基とその上部のロック手段との分解斜視図である。
【図5】同じく、図2のV−V線に沿う拡大横断平面図である。
【図6】同じく、図5のVI−VI線に沿う縦断側面図である。
【図7】同じく、図5のVII−VII線に沿う縦断側面図である。
【図8】同じく、切換手段における左右の円筒カムのカム面の展開図である。
【図9】同じく、ロック手段のロック解除状態を示す概略平面図である。
【図10】同じく、ロック手段のロック状態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
(A)傾動装置
(1)キャスタ
(2)脚杆
(3)脚体
(4)脚柱
(5)支基
(5a)側壁
(5b)上壁
(6)カバー
(7)背凭れ
(8)座
(9)付勢手段
(10)切換手段
(11)軸
(12)背凭れ支持杆
(12a)筒部
(13)ヘッドレスト
(14)肘掛け
(15)座支持杆
(16)ガイドレール
(17)軸
(18)横杆
(19)支持リンク
(20)軸
(21)筒部
(22)軸
(23)ねじりコイルばね
(24)操作レバー
(25)脚片
(26)可動レール
(27)(28)(29)単位付勢手段
(30)六角孔
(31)芯材
(32)突部
(33)外筒
(34)弾性体
(35)停止片
(36)六角孔
(37)突片
(38)円板
(39)長孔
(40)歯
(41)セクタギヤ
(42)停止板
(43)止めねじ
(44)台座
(45)止めねじ
(46)係止板
(47)停止片
(48)作動部材
(49)(50)円筒カム(移動部材)
(49a)(50a)カム面
(51)圧縮コイルばね
(52)ガイドバー
(53)ロック手段
(54)ケース
(55)収容溝
(55a)拡幅部
(55b)狭幅部
(56)(57)係止部材
(56a)(57a)歯
(58)角孔
(59)U字溝
(60)蓋板
(61)仕切り板
(62)U字溝
(63)連結駒
(64)(65)(66)U字溝
(67)(68)ロッド
(67a)(68a)拡径鍔
(69)(70)圧縮コイルばね
(71)プルロック・プルレリーズ機構
(72)シャフト
(72a)拡径鍔
(73)ケース
(74)鞘管
(75)ケーブル
(76)操作レバー

Claims (3)

  1. 背凭れまたは座を、復帰用の付勢手段の付勢力に抗して傾動し得るようにした椅子における背凭れ等の傾動装置において、背凭れまたは座を、段階的な任意の傾斜角度で係止したり、その係止状態を解除したりするロック手段の操作レバーを、座の側方より起立する肘掛けの前上部に設け、ロック手段と操作レバーとを、可撓性のケーブルをもって互いに連係したことを特徴とする椅子における背凭れ等の傾動装置。
  2. 肘掛けを、背凭れと一体となって傾動するようにした請求項1記載の椅子における背凭れ等の傾動装置。
  3. ロック手段に、操作レバーの第1回目の操作により、背凭れまたは座を係止状態とし、かつ操作レバーの第2回目の操作により、前記係止状態を解除し、以後同様の作用を繰り返すようにした反復係止機構を備えるプルロック・プルレリーズ機構を設けた請求項1または2記載の椅子における背凭れ等の傾動装置。
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