JP2004047806A - 半導体装置および半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体素子を形成する領域の応力を制御して、電荷の移動度を向上させた半導体素子を備えた半導体装置およびその製造方法、並びに、部分的にSOI構造を形成しても半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位がより少ない半導体装置の製造方法およびその方法により製造された半導体装置を提供することである。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10の表面上に部分的に設けられた絶縁層20と絶縁層20の上を連続的に被覆し少なくとも一端が半導体基板10に接続された半導体層30とを有する第1の領域と、第1の領域と近接し半導体基板10の表面近傍に絶縁層20が存在しない第2の領域と、第1の領域における絶縁層20上の半導体層30に形成された第1の半導体素子50とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体装置は、半導体基板10と、半導体基板10の表面上に部分的に設けられた絶縁層20と絶縁層20の上を連続的に被覆し少なくとも一端が半導体基板10に接続された半導体層30とを有する第1の領域と、第1の領域と近接し半導体基板10の表面近傍に絶縁層20が存在しない第2の領域と、第1の領域における絶縁層20上の半導体層30に形成された第1の半導体素子50とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から半導体装置を製造するためにSOI(Silicon On Insulator)基板が使用されている。SOI基板は、半導体基板上にシリコン酸化層を有し、そのシリコン酸化層の上に半導体素子を形成するシリコン層を有する。シリコン層は、STI(Shallow Trench Isolation)などの素子分離領域によって、半導体素子を形成する領域(以下、シリコン素子形成部)に分割される。シリコン素子形成部はシリコン層の下にあるシリコン酸化層および素子分離領域により囲まれ、それによって、シリコン素子形成部は半導体基板や他のシリコン素子形成部と電気的に絶縁されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、素子分離領域にはシリコン酸化材料が用いられるので、シリコン素子形成部はシリコン酸化材料により囲まれる。よって、シリコン素子形成部にはシリコン材料と酸化材料との線膨張係数差により圧縮応力が作用する。特に、N型MISトランジスタに圧縮応力が作用すると移動度が低下するので、N型MISトランジスタをシリコン素子形成部に形成した場合、半導体装置の性能が悪化してしまう。
【0004】
また、SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)に代表される酸素イオン注入により形成されたSOI構造を部分的に有する部分SOI基板が半導体装置の製造に頻繁に用いられている。図12は、SIMOXにより形成された部分SOI基板の断面図である。
【0005】
しかし、図12に示すように、SIMOXにより形成された部分SOI基板では、結晶欠陥Dが酸素イオンによりシリコン素子形成部および半導体基板のシリコン結晶に生じ易い。また、SIMOXにより形成された部分SOI基板では、シリコン素子形成部の下にシリコン酸化膜を形成するときに、結晶転位がシリコン酸化膜の膨張によりシリコン素子形成部および半導体基板のシリコン結晶に生じ易い。
【0006】
従って、本発明の目的は、半導体素子を形成する領域の応力を制御して、電荷の移動度を向上させた半導体素子を備えた半導体装置およびその半導体装置の製造方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位を生じさせることなく部分的にSOI構造を形成し、その部分的にSOI構造を有する基板に半導体素子を形成する半導体装置の製造方法およびその製造方法により製造された半導体装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る実施の形態に従った半導体装置は、半導体基板と、該半導体基板の表面上に部分的に設けられた絶縁層と該絶縁層の上を連続的に被覆しその少なくとも一端が前記半導体基板に接続された半導体層とを有する第1の領域と、前記第1の領域と近接し前記半導体基板の表面近傍に前記絶縁層が存在しない第2の領域と、前記第1の領域における前記絶縁層上の前記半導体層に形成された第1の半導体素子とを備える。
【0009】
好ましくは、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記半導体層と前記第2の領域における前記半導体基板の表面近傍とを電気的に絶縁する素子分離部と、前記第2の領域における前記半導体基板に形成された第2の半導体素子とをさらに備える。
【0010】
好ましくは、前記素子分離部の少なくとも一部分は、前記絶縁層に接続していない。
【0011】
好ましくは、前記半導体基板および前記半導体層はシリコン単結晶からなり、前記絶縁層および前記素子分離部はシリコン酸化材料からなる。
【0012】
好ましくは、前記第1の領域における前記半導体層は、前記半導体基板の表面に対して水平方向に引張応力を有し、前記第2の領域における前記半導体基板の表面近傍は、該半導体基板の表面に対して水平方向に圧縮応力を有する。
【0013】
好ましくは、前記第1の半導体素子としてP型MISトランジスタが、前記半導体層に作用する引張応力の方向に対してチャネル長方向が略直交するように形成されている。
【0014】
好ましくは、前記第2の半導体素子としてP型MISトランジスタが、前記半導体基板の表面近傍に作用する圧縮応力の方向に対してチャネル長方向が略平行となるように形成されている。
【0015】
好ましくは、前記第1の半導体素子としてN型MISトランジスタが形成されている。
【0016】
本発明に係る実施の形態に従った半導体装置の製造方法は、半導体基板と該半導体基板の表面上に設けられた絶縁層と該絶縁層上に設けられた半導体層とを有するSOI基板の該半導体層上にマスク材パターンを形成するパターニングステップ、前記マスク材パターンをマスクとして、露出した前記半導体層をエッチングして前記絶縁層を部分的に露出させる第1のエッチングステップ、前記半導体層の下に存在する前記絶縁層の一部を、前記絶縁層の露出した部分から前記半導体基板の表面に対して水平方向にエッチングする第2のエッチングステップおよび、前記半導体基板および前記半導体層を加熱し、前記絶縁層が水平方向にエッチングされた領域で前記半導体層を前記半導体基板に溶着させる熱処理ステップを具備する。
【0017】
好ましくは、前記熱処理ステップの後、前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域と前記半導体層が前記半導体基板に溶着している第2の領域とを電気的に絶縁する素子分離部を、前記第2の領域内に形成するステップをさらに具備する。
【0018】
好ましくは、前記熱処理ステップの後、前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域にP型MISトランジスタを形成する場合には、前記第1の領域に作用する応力方向に対してチャネル長方向が略直交するように該P型MISトランジスタを形成し、
前記半導体基板上における前記半導体層が前記半導体基板に溶着している第2の領域にP型MISトランジスタを形成する場合には、前記第2の領域に作用する応力方向に対してチャネル長方向が略平行となるように該P型MISトランジスタを形成するステップを具備する。
【0019】
好ましくは、前記熱処理ステップの後、前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域にN型MISトランジスタを形成するステップを具備する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を説明する。尚、本実施の形態は本発明を限定するものではない。各図面において同じ構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0021】
図1は、本発明に係る第1の実施の形態に従った半導体装置100の拡大断面図である。半導体装置100は、シリコン基板10と、シリコン基板10の表面上に部分的に設けられたシリコン酸化層20と、シリコン酸化層20の上を連続的に被覆するシリコン薄膜層30とを備える。シリコン薄膜層30はその一端においてシリコン基板10に接続されている。
【0022】
半導体装置100は、シリコン薄膜層30およびシリコン基板10の表面近傍に作用する応力の方向によって、引張応力領域と圧縮応力領域とに区別される。引張応力領域は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30がシリコン基板10の表面に設けられており、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に引張応力を有する領域である。圧縮応力領域は、シリコン基板10の表面近傍にシリコン酸化層20が存在せず、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に圧縮応力を有する領域である。即ち、この領域では、シリコン基板10の表面近傍にシリコン酸化層20が存在しない。後述するように、シリコン薄膜層30の一端がシリコン基板10に接続されかつシリコン単結晶とシリコン酸化材料とが線膨張係数において相違するので、半導体装置100は引張応力領域および圧縮応力領域を有し得る。
【0023】
引張応力領域のシリコン薄膜層30は、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に引張応力を有する。一方、圧縮応力領域のシリコン基板10の表面近傍は、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に圧縮応力を有する。
【0024】
引張応力領域と圧縮応力領域とは素子分離領域を介して隣接している。素子分離領域は、引張応力領域におけるシリコン薄膜層30と圧縮応力領域におけるシリコン基板10の表面近傍とを電気的に絶縁する素子分離部40が設けられた領域である。本実施の形態において素子分離部40は、例えば、シリコン酸化材料からなるSTIである。
【0025】
引張応力領域におけるシリコン薄膜層30および圧縮応力領域におけるシリコン基板10の表面上には、MISトランジスタ50およびMISトランジスタ60がそれぞれ形成されている。
【0026】
さらに、図2に示すように、MISトランジスタ50は、シリコン基板10の表面上にシリコン基板10から絶縁された状態で形成されたゲート電極51と、ゲート電極51上に設けられたゲート上保護膜52と、ゲート電極51の側面に設けられたサイドウォール53とを有する。MISトランジスタ60は、シリコン基板10の表面上にシリコン基板10から絶縁された状態で形成されたゲート電極61と、ゲート電極61上に設けられたゲート上保護膜62と、ゲート電極61の側面に設けられたサイドウォール63とを有する。
【0027】
図2は、MISトランジスタ50の具体例としてNMOSトランジスタ50a、50b、並びに、MISトランジスタ60の具体例としてPMOSトランジスタ60a、60bを模式的に示した半導体装置100の平面図である。図2に示す2本の一点鎖線の間に素子分離領域があり、素子分離領域より左側は引張応力領域であり、素子分離領域より右側は圧縮応力領域である。図2中の実線の矢印は、引張応力領域および圧縮応力領域における応力の方向を示す。図2のNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ内に示す破線の矢印は、MOSトランジスタにおいて電荷の流れるチャネル長方向を示す。尚、応力の方向およびチャネル長方向はいずれも半導体基板10の表面に対して水平面内における方向である。
【0028】
引張応力領域において、NMOSトランジスタ50aは応力の方向に対してほぼ平行方向へ電荷を流す向きに形成されており、NMOSトランジスタ50bは応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成されている。
【0029】
圧縮応力領域においては、PMOSトランジスタ60aおよび60bが応力の方向に対して平行方向に電荷を流す向きに形成されている。電荷を流す向きとは、NMOSトランジスタ50a、50bおよびPMOSトランジスタ60a、60bにおいて、ソースSからゲートG下のチャネルを介してドレインDへ向かう方向、若しくは、ドレインDからゲートG下のチャネルを介してソースSへ向かう方向である。
【0030】
図3(A)は、NMOSトランジスタに流れる電荷の移動度とそのNMOSトランジスタに作用する応力との関係を示すグラフである。図3(B)は、PMOSトランジスタに流れる電荷の移動度とそのPMOSトランジスタに作用する応力との関係を示すグラフである。図3(A)および図3(B)は、ともにトランジスタ内において電荷の流れるチャネル長方向と応力の方向とが平行である場合を実線で示し、それらが直交する場合を破線で示している。
【0031】
図3(A)に示すグラフによって、NMOSトランジスタに作用する応力が引張応力の場合に、その応力が圧縮応力の場合よりも、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度は高くなることがわかる。また、図3(A)に示すグラフによって、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度は、電荷の流れるチャネル長方向と応力の方向との相対的な角度にほとんど依存しないことがわかる。従って、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度は、NMOSトランジスタを形成する向きによらず、引張応力領域に形成することによって向上させることができる。
【0032】
図3(B)に示したグラフによって、PMOSトランジスタに作用する応力が引張応力の場合には、PMOSトランジスタにおいて電荷の流れるチャネル長方向が応力の方向に対して直交するときに、電荷の移動度は高くなることがわかる。また、図3(B)に示すグラフによって、PMOSトランジスタに作用する応力が圧縮応力の場合には、PMOSトランジスタにおける電荷の流れるチャネル長方向が応力の方向に対して平行となるときに、電荷の移動度は高くなることがわかる。
【0033】
従って、PMOSトランジスタは、PMOSトランジスタを形成する向きに依存するが、引張応力領域または圧縮応力領域のいずれの領域に形成する場合であっても、PMOSトランジスタを流れる電荷の移動度を向上させることができる。
【0034】
図2に示すように、本実施の形態によれば、NMOSトランジスタ50aおよび50bは引張応力領域に形成されているので、NMOSトランジスタ50aおよび50bを流れる電荷の移動度は比較的高い。また、PMOSトランジスタ60aおよび60bは、圧縮応力領域において応力の方向に対して平行方向へ電荷を流す向きに形成されている。よって、PMOSトランジスタ60aおよび60bを流れる電荷の移動度も比較的高い。
【0035】
本実施の形態において、PMOSトランジスタは、圧縮応力領域に形成されている。しかし、図3に示すように、PMOSトランジスタは、引張応力領域において、応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成しても、電荷の移動度を向上させることができる。従って、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを引張応力領域に混載させてもよい。
【0036】
半導体装置100は、圧縮応力領域だけでなく、引張応力領域をも有する。よって、引張応力領域にNMOSトランジスタを形成することにより、NMOSトランジスタにおける電荷の移動度を向上させることができる。また、半導体装置100は圧縮応力領域および引張応力領域の両方を同一のシリコン基板10上に有する。それによって、電荷の移動度を高めるためにPMOSトランジスタを形成する向きを選択する自由度が大きくなる。
【0037】
例えば、従来の半導体装置のように、圧縮応力領域に半導体素子を形成しなければならない場合には、PMOSトランジスタは、電荷の移動度を高めるために、電荷を流すチャネル長方向と応力の方向とが平行に近くなるように形成されなければならなかった。
【0038】
しかし、本実施の形態によれば、電荷を流すチャネル長方向が応力の方向に対して垂直方向により近いPMOSトランジスタは引張応力領域に形成し、電荷を流すチャネル長方向が応力の方向に対して平行方向により近いPMOSトランジスタは、圧縮応力領域に形成することにより電荷の移動度を高めることができる。即ち、本実施の形態による半導体装置においては、電荷を流すチャネル長方向が応力の方向に対して垂直方向または平行方向のいずれに近いPMOSトランジスタについても、PMOSトランジスタが形成される領域を適切に選択することで電荷の移動度を高めることができる。
【0039】
本実施の形態においては、シリコン薄膜層30がその一端においてシリコン基板10に接続されている。それによって、後述するように、シリコン薄膜層30に引張応力を発生させることができる。また、シリコン薄膜層30がシリコン基板10に接続されていることによって、MOSトランジスタ50において発生した熱をシリコン基板10へ放散させることができるという効果もある。
【0040】
さらに、本実施の形態による半導体装置100の引張応力領域は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30によってSOI構造を有する。一般に、SOI構造に半導体素子を形成することによって寄生効果を軽減させ、半導体素子の動作が高速になる。よって、引張応力領域のシリコン薄膜層30に形成された半導体素子は高速に動作することができる。
【0041】
尚、シリコン薄膜層30は少なくとも一端においてシリコン基板10に接続されていなければならない。従って、図1は、半導体装置100のうち、シリコン薄膜層30がシリコン基板10に接続されている領域の断面を示すが、半導体装置100の他の領域の断面において、シリコン薄膜層30は、素子分離部40によって、シリコン基板10に接続されていなくてもよい。
【0042】
また、本実施の形態によればシリコン薄膜層30はその一端においてシリコン基板10に接続されているが、シリコン薄膜層30はその全ての端においてシリコン基板10に接続されていてもよい。シリコン薄膜層30の全ての端がシリコン基板10に接続されていることによって、一端がシリコン基板10に接続されている場合よりも、引張応力領域に亘って全体的に一定した引張応力を得ることができる。
【0043】
半導体装置100は、半導体材料としてシリコン基板10および半導体層としてシリコン薄膜層30を有するが、これらに代えて、例えば、炭化シリコン等からなる半導体材料や半導体層を有していてもよい。半導体装置は、絶縁層としてシリコン酸化膜20を有するが、これに代えて、例えば、炭化シリコン用の絶縁物等からなる半導体材料や半導体層を有していてもよい。
【0044】
図4は、本発明に係る第2の実施の形態に従った半導体装置200の拡大断面図である。半導体装置200は、シリコン基板10を備え、シリコン基板10の表面上に部分的に設けられたシリコン酸化層20とシリコン酸化層20の上を連続的に被覆し少なくとも一端がシリコン基板10に接続されたシリコン薄膜層30とを有する引張応力領域と、シリコン基板10の表面近傍にシリコン酸化層20が存在しない圧縮応力領域とを備える。引張応力領域と圧縮応力領域とは、それらの間に中間領域を介して隣接している。引張応力領域に半導体素子50が形成されている。
【0045】
半導体装置200は、引張応力領域のみに半導体素子50が形成されており、圧縮応力領域に半導体素子が形成されていない点で半導体装置100と異なる。従って、半導体装置200における圧縮応力領域は、半導体装置100における圧縮応力領域よりも狭くてよい。また、本実施の形態においては中間領域に素子分離部が形成される必要がない。
【0046】
図5は、半導体素子50の具体例としてNMOSトランジスタ50a、50bを模式的に示した半導体装置200の平面図である。図5に示す2本の一点鎖線の間に中間領域があり、中間領域より左側に引張応力領域が設けられており、素子分離領域より右側に圧縮応力領域が設けられている。図5中の実線の矢印は、引張応力領域および圧縮応力領域における応力の方向を示す。図5のNMOSトランジスタ内に示す破線の矢印は、MOSトランジスタにおいて電荷の流れるチャネル長方向を示す。尚、応力の方向およびチャネル長方向はいずれも半導体基板10の表面に対して水平面内の方向である。
【0047】
半導体装置200も、半導体装置100と同様に引張応力領域を有する。よって、引張応力領域にNMOSトランジスタ50a、50bを形成することによって、NMOSトランジスタ50a、50bに流れる電荷の移動度を向上させることができる。
【0048】
尚、引張応力領域にPMOSトランジスタ(図示せず)を形成することもできる。この場合、PMOSトランジスタは、引張応力領域において、応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成される。それによって、PMOSトランジスタに流す電荷の移動度を向上させることができる。
【0049】
本実施の形態においても、半導体装置100と同様に、シリコン薄膜層30がその一端においてシリコン基板10に接続されている。それによって、シリコン薄膜層30に引張応力を発生させることができる。また、MOSトランジスタ50において発生した熱をシリコン基板10へ放散させることができる。
【0050】
さらに、半導体装置200は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30によってSOI構造を有する引張応力領域のみに半導体素子50が形成されている。それによって、半導体装置200に形成された総ての半導体素子50が高速に動作することができる。
【0051】
また、本実施の形態によればシリコン薄膜層30はその一端においてシリコン基板10に接続されているが、シリコン薄膜層30はその全ての端においてシリコン基板10に接続されていてもよい。
【0052】
図6は、本発明に係る第3の実施の形態に従った半導体装置300の拡大断面図である。半導体装置300は、引張応力領域のシリコン薄膜層30の表面と圧縮応力領域のシリコン基板10の表面との間に段差が無い点で半導体装置100と異なる。従って、本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態によれば、シリコン薄膜層30の表面とシリコン基板10の表面とがほぼ平坦に接続しているので、半導体素子50のシリコン薄膜層30の表面からの高さおよび半導体素子60のシリコン基板10の表面からの高さがほぼ同じレベルになる。それにより、半導体素子50、60を被覆する保護膜(図示せず)のカバレッジが良くなる。また、引張応力領域および圧縮応力領域に亘る配線は容易に断線するようなことがない。
【0053】
図7(A)から図7(G)は、本発明に係る実施の形態に従った半導体装置の製造方法のフロー図である。
【0054】
図7(A)に示すように、まず、シリコン基板10、シリコン基板10の表面上に設けられたシリコン酸化層20およびシリコン酸化層20上に設けられたシリコン薄膜層30を有するSOI基板を用意する。シリコン酸化層20の膜厚は、例えば、200nmである。シリコン薄膜層30の膜厚は、例えば、200nm以下である。
【0055】
図7(B)に示すように、次に、シリコン薄膜層30上にマスク材110を堆積し、マスク材110をパターニングする。本実施の形態において、マスク材110は、パッド酸化膜102、シリコン窒化膜104、TEOS膜106から成る。パッド酸化膜102は、シリコン薄膜層30の表面を酸化して形成される。シリコン窒化膜104およびTEOS膜106は、CVD等により、パッド酸化膜102の上にシリコン窒化膜104、TEOS膜106の順に堆積することによって形成される。
【0056】
マスク材110のパターニングは、次のように行われる。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、TEOS膜106の上にレジスト膜(図示せず)を形成しパターニングする。次に、レジスト膜のパターンに従って、TEOS膜106、シリコン窒化膜104およびパッド酸化膜102をRIEでエッチングする。マスク材110のパターニングによって、シリコン薄膜層30が部分的に露出する。
【0057】
図7(C)に示すように、次に、シリコン窒化膜104またはTEOS膜106のパターンをマスクとして、シリコン薄膜層30の露出部分をRIEでエッチングする。シリコン薄膜層30の露出部分をエッチングすることによって、シリコン酸化層20が部分的に露出する。
【0058】
図7(D)に示すように、次に、シリコン薄膜層30の下に存在するシリコン酸化層20の一部を、シリコン酸化層20の露出部分からシリコン基板10の表面に対して水平方向にエッチングする。シリコン酸化膜20のエッチングには、フッ酸溶液が用いられる。よって、シリコン酸化膜20は等方的にエッチングされ、シリコン薄膜層30の下に存在するシリコン酸化膜20もエッチングされる。シリコン薄膜層30の端からシリコン酸化膜20がエッチングされる距離は、エッチング時間に依存する。
【0059】
また、このエッチングではフッ酸溶液が用いられるので、シリコン酸化膜20をエッチングする工程においてTEOS膜106も同時にエッチングされる。よって、TEOS膜106は、シリコン窒化膜104、パッド酸化膜102およびシリコン薄膜層30をエッチングするときのマスクとして充分の膜厚であり、かつ、シリコン酸化膜20が所定の位置までエッチングされたときに、充分に除去されている程度の膜厚であることが好ましい。
【0060】
図7(E)に示すように、次に、熱リン酸溶液を用いてシリコン窒化膜104を除去し、フッ酸溶液を用いてパッド酸化膜102を除去する。その結果、シリコン薄膜層30からなるカンチレバー30aが形成される。カンチレバー30aは、シリコン薄膜層30のうちその下にシリコン酸化層20が存在しない梁である。カンチレバー30aが自重でたわむか否かは、カンチレバー30aの長さおよびその厚さに依存する。しかし、例えば、シリコン酸化層20がシリコン薄膜層30の端からシリコン基板10の表面に対して水平方向へエッチングされる距離が1μm以上であり、カンチレバー30aの長さが1μm以上であり、かつ、その厚さが200nm以下であるときには、カンチレバー30aは、シリコン薄膜層30から成るので、その曲げ剛性は低く自重でたわむ。よって、シリコン酸化層20がシリコン薄膜層30の端からシリコン基板10の表面に対して水平方向へエッチングされる距離は1μm以上であり、かつ、シリコン薄膜層30の厚さが200nm以下であることが好ましい。カンチレバー30aがたわむことにより、シリコン基板10とシリコン薄膜層30とが接触する。
【0061】
図7(F)に示すように、次に、シリコン基板10、シリコン薄膜層30およびシリコン酸化層20を1100℃以上の水素雰囲気中で熱処理する。この熱処理によって、シリコン基板10およびシリコン薄膜層30の接触部が溶着する。シリコン基板10およびシリコン薄膜層30が溶着した後、シリコン基板10、シリコン薄膜層30およびシリコン酸化層20を室温まで降温する。この結果、引張応力領域にSOI構造を有する部分SOI基板が形成される。本実施の形態による製造方法は酸素イオン注入を伴わないので、シリコン基板10とシリコン薄膜層30とが溶着した界面に発生する結晶欠陥および結晶転移は、図12に示したSIMOX法による部分SOI基板よりも著しく少ない。
【0062】
シリコン単結晶の線膨張係数はシリコン酸化材料の線膨張係数のほぼ10倍である。よって、シリコン酸化層20上のシリコン薄膜層30は、熱処理後にシリコン基板10の平面に対して水平方向に引張応力を有する(横方向応力(Sx))。その引張応力の大きさはシリコン酸化層20やシリコン薄膜層30の膜厚に依存するが、本実施の形態によれば、シリコン酸化層20の膜厚が約200nmであり、シリコン薄膜層30の膜厚が約200nmである場合に、約100MPaの大きさである。
【0063】
一方で、シリコン薄膜層30とシリコン基板10とが溶着した領域は、熱処理後にシリコン基板10の水平面に対して水平方向に圧縮応力を有する。これは、シリコン酸化層20上のシリコン薄膜層30が引張応力によって引っ張られている分、シリコン薄膜層30と接続するシリコン基板10の表面近傍(シリコン基板10に溶着したシリコン薄膜層30を含む)に圧縮しようとする応力が作用するからである。
【0064】
本実施の形態による半導体装置の製造方法は、このように同一のシリコン基板10上に引張応力領域と圧縮応力領域とを形成することができる。図7(F)に示される矢印は応力が作用する方向を示す。図7(F)に示される2本の一点鎖線の間の中間領域の左側が引張応力領域、その右側が圧縮応力領域となる。
【0065】
図7(G)に示すように、次に、素子分離部40が形成される。本実施の形態によれば、素子分離部40は、STIを利用している。よって、素子分離部40は、素子分離領域に形成されたトレンチ内にシリコン酸化材料を充填することによって形成される。本実施の形態によれば、素子分離部40は、圧縮応力領域内に形成され、シリコン酸化層20と接続していない。それによって、シリコン薄膜層30はシリコン基板10との接続を維持することができる。シリコン薄膜層30とシリコン基板10とが接続されていることによって、引張応力領域における引張応力は維持される。
【0066】
一方、素子分離部40によって挟まれたシリコン基板10の表面近傍には、圧縮応力が維持される。一般に、シリコン単結晶の線膨張係数は、上述の通りシリコン酸化材料の約10倍である。従って、シリコン基板10および素子分離部40が高温(例えば、1100℃以上)に加熱された場合に、シリコン基板10は、その表面に対して水平方向に膨張する。素子分離部40は溶融するがシリコン基板10に比較してほとんど膨張しない。続いて、室温まで低下させるときに、素子分離部40は収縮することなく固化し、シリコン基板10は、素子分離部40が固化した後も収縮しようとする。よって、シリコン基板10の表面近傍は固化した素子分離部40を保持したまま収縮するが、シリコン基板10のうち表面近傍よりも裏面に近い部分は素子分離部40の影響を受けることなく収縮する。その結果、シリコン基板10の表面近傍のうち素子分離部40の間にある部分は素子分離部40に挟まれた状態で圧縮される。それによって、シリコン基板10の表面近傍には圧縮応力が維持される。
【0067】
尚、素子分離部40が圧縮応力領域内に形成されるので、図7(G)に示すように、素子分離部40の形成後の圧縮応力領域は、素子分離部40の形成前の圧縮応力領域よりも狭くなっている。
【0068】
素子分離部40の一部分はシリコン酸化層20と接続するように形成されてもよい。この場合、素子分離部40の他の部分はシリコン酸化層20と接続していないように形成される。それによって、シリコン薄膜層30の端の一部はシリコン基板10と分離されているが、シリコン薄膜層30の端の他の部分はシリコン基板10と接続を維持する。このように、シリコン薄膜層30の端の少なくとも一部分がシリコン基板10と接続されていることによって、シリコン薄膜層30に作用する応力を引張応力にすることができる。
【0069】
ここで、図8にシリコン薄膜層30がシリコン基板10に接続していない箇所の断面図を示す。即ち、図8は、図7(G)に示す工程において、素子分離部40がシリコン酸化層20と接続するように形成された箇所の断面図である。
【0070】
但し、シリコン薄膜層30の総ての端が素子分離部40によってシリコン基板10から分離されている場合には、SOI基板を用いた従来の半導体装置と同様に、シリコン薄膜層30に作用する応力は、圧縮応力となってしまい、引張応力にならない。したがって、シリコン薄膜層30の端の少なくとも一部分はシリコン基板10と接続されていることを要する。
【0071】
図7(H)に示すように、さらに、引張応力領域のシリコン薄膜層30に半導体素子50を、圧縮応力領域のシリコン基板10の表面近傍に半導体素子60を形成することによって図1に示す半導体装置100が完成する。
【0072】
半導体素子50がPMOSトランジスタである場合には、そのPMOSトランジスタは、引張応力領域に作用する応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成される。半導体素子60がPMOSトランジスタである場合には、そのPMOSトランジスタは、圧縮応力領域に作用する応力の方向に対してほぼ平行方向へ電荷を流す向きに形成される。それによって、PMOSトランジスタを流れる電荷の移動度が向上する。
【0073】
NMOSトランジスタを形成する場合には、そのNMOSトランジスタは引張応力領域のシリコン薄膜層30に形成する。引張応力領域においてNMOSトランジスタを形成する向きを問わない。それによって、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度を向上させることができる。
【0074】
尚、図7(F)に示した引張応力領域のみに半導体素子50を形成することによって、図4に示す半導体装置200が製造され得る。
【0075】
また、図7(F)における熱処理の後に、CMP等の研磨工程を追加し、シリコン薄膜層30の表面を研磨することによって、シリコン薄膜層30の表面とシリコン基板10の表面との間の段差を無くすことができる。図7(F)における熱処理の後にCMP等の研磨工程を追加した本実施の形態による半導体装置の製造方法によって、図6に示す半導体装置300が製造され得る。
【0076】
図9は、図7(F)に示した引張応力領域および圧縮応力領域に作用する応力の大きさを示すグラフである。このグラフは、シリコン基板10の表面の一端から他端までの距離を横軸とし、引張応力領域および圧縮応力領域に作用する横方向応力(Sx)の大きさを縦軸とする。
【0077】
シリコン基板10の全体幅を5μmとし、シリコン酸化層20の膜厚を200nmとし、シリコン薄膜層30の膜厚を200nmとする。このようなシリコン基板10、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30を有するSOI基板に図7(A)から図7(F)までの処理を施す。図9には、このSOI基板に図7(A)から図7(F)までの処理を施した後の室温時の引張応力領域および圧縮応力領域に作用する応力の大きさが示されている。尚、図7(D)に示す工程においては、シリコン薄膜層30の端からシリコン基板10の表面に対して水平方向に約2.5μmまでシリコン酸化層20がエッチングされる。
【0078】
引張応力領域における引張応力は、シリコン基板10の一端において約5×108dyne/cm2(約50MPa)の大きさであり中間領域に近づくにつれて増加する。圧縮応力領域における圧縮応力は、シリコン基板10の他端において約−5×108dyne/cm2(約−50MPa)の大きさであり中間領域に近づくにつれて増加する。尚、これらの応力値は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30の厚さや熱処理における温度によって変化する。
【0079】
図9に示すグラフにより、本実施の形態による半導体装置の製造方法を用いて、圧縮応力領域だけでなく、引張応力領域を有する半導体装置100、半導体装置200または半導体装置300を製造することができることがわかる。
【0080】
図10は、図7(F)に示した工程において得られた部分SOI基板の平面図である。図10に示されたX−X線に沿って切断した断面が図7(F)に示した断面に相当する。
【0081】
図10には、図7(C)に示した工程においてエッチングされたシリコン薄膜層30の開口部80a、80bの平面形状が示されている。開口部80a、80bは、図7(D)に示した工程において、シリコン酸化層20をシリコン基板10の表面に対して水平方向へエッチングするために用いられる。
【0082】
圧縮応力領域の平面形状および面積は、開口部80a、80bの平面形状、開口部80a、80bの大きさ、並びに、図7(D)に示した工程においてシリコン酸化層20をエッチングする時間によって決定される。従って、開口部80a、80bの平面形状およびそれらの大きさを変更することによって圧縮応力領域の平面形状およびその面積は任意に変更され得る。
【0083】
また、図7(D)に示した工程においてシリコン酸化層20をエッチングする時間を変更することによって、開口部80aから引張応力領域までの圧縮応力領域の幅Raおよび開口部80bから引張応力領域までの圧縮応力領域の幅Rbが変更される。図7(D)に示した工程においてシリコン酸化層20は、フッ酸溶液によって等方的にエッチングされる。よって、開口部80aおよび80bからシリコン酸化層20を同時にエッチングした場合、圧縮応力領域の幅RaおよびRbはほぼ等しくなる。圧縮応力領域の幅RaおよびRbを異ならせるためには、図7(D)に示した工程において、フォトリソグラフィ技術を用いて選択的にシリコン酸化層20をエッチングすればよい。
【0084】
このように、圧縮応力領域の形状や面積は、開口部80a、80bの平面形状、開口部80a、80bの大きさおよびシリコン酸化層20をエッチングする時間によって任意に変更され得る。
【0085】
図11(A)から図11(E)は、本実施の形態に従った半導体装置の他の製造方法のフロー図である。
【0086】
図11(A)に示すように、まず、シリコン基板10、シリコン基板10の表面上に設けられたシリコン酸化層20およびシリコン酸化層20上に設けられたシリコン薄膜層30を有するSOI基板を用意する。シリコン酸化層20の膜厚は、例えば、200nmである。シリコン薄膜層30の膜厚は、例えば、200nm以下である。
【0087】
図11(B)に示すように、次に、シリコン薄膜層30上にマスク材110を堆積し、マスク材110をパターニングする。本実施の形態において、マスク材110は、パッド酸化膜102およびシリコン窒化膜104から成る。パッド酸化膜102は、シリコン薄膜層30の表面を酸化して形成される。シリコン窒化膜104は、パッド酸化膜102の上にCVD等により堆積することによって形成される。
【0088】
マスク材110のパターニングは、次のように行われる。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、シリコン窒化膜104の上にレジスト膜(図示せず)を形成しパターニングする。次に、レジスト膜のパターンに従って、シリコン窒化膜104およびパッド酸化膜102をRIEでエッチングする。マスク材110のパターニングによって、シリコン薄膜層30が部分的に露出する。
【0089】
図11(C)に示すように、次に、シリコン窒化膜104のパターンをマスクとして、シリコン薄膜層30の露出部分をRIEでエッチングする。シリコン薄膜層30の露出部分をエッチングすることによって、シリコン酸化層20が部分的に露出する。さらに、シリコン窒化膜104のパターンをマスクとして、シリコン酸化層20の露出部分がRIEまたはフッ酸溶液を用いてエッチングされる。
【0090】
図11(D)に示すように、次に、熱リン酸溶液を用いてシリコン窒化膜104を除去し、フッ酸溶液を用いてパッド酸化膜102を除去する。
【0091】
図11(E)に示すように、さらに、シリコン基板10の表面上およびシリコン薄膜層30の表面上にシリコンをエピタキシャル成長させる。このエピタキシャル成長において、シリコン基板10の表面上にシリコン酸化層20の膜厚以上の厚さのシリコン単結晶を成長させる。それによって、シリコン基板10は、その表面上に形成されたシリコン単結晶によりシリコン薄膜層30に接続することができる。
【0092】
また、一般に、エピタキシャル成長は、1100℃以上の高温雰囲気中で処理される。従って、エピタキシャル成長後、室温まで降温したときに、シリコン酸化層20の表面上のシリコン薄膜層30には引張応力が作用し、シリコン薄膜層30と隣接したシリコン基板10の表面近傍には圧縮応力が作用する。
【0093】
図11(E)に示した工程後、図7(G)および図7(H)に示した工程を経ることによって、本発明に係る実施の形態に従った半導体装置が形成され得る。
【0094】
尚、図11(E)において、シリコン薄膜層30の表面上をマスクし、シリコン基板10の表面上のみにシリコンをエピタキシャル成長させてもよい。それによっても、シリコン基板10は、その表面上に形成されたシリコン単結晶によりシリコン薄膜層30に接続することができる。また、圧縮応力領域と引張応力領域との間の段差が、シリコン薄膜層30上にもシリコンをエピタキシャル成長させる場合よりも小さくなる。それにより、半導体素子50、60を被覆する保護膜のカバレッジが良くなる。また、引張応力領域および圧縮応力領域に亘る配線は容易に断線するようなことがない。
【0095】
図11(A)から図11(E)に示した製造方法によって、引張応力領域にSOI構造を有する部分SOI基板が形成される。本実施の形態による製造方法は酸素イオン注入を伴わないので、シリコン薄膜層30とその上にエピタキシャル成長したシリコン結晶層との界面に発生する結晶欠陥および結晶転移は、図12に示したSIMOX法による部分SOI基板よりも著しく少ない。
【0096】
【発明の効果】
本発明に従った半導体装置は、半導体素子を形成する領域の応力を制御して、半導体素子における電荷の移動度を向上させることができる。
【0097】
本発明に従った半導体装置は、部分的にSOI構造を有しているものの、半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位が従来よりも少ない。
【0098】
本発明に従った半導体装置の製造方法は、半導体素子を形成する領域の応力を制御して、電荷の移動度を向上させた半導体素子を備えた半導体装置を製造することができる。
【0099】
本発明に従った半導体装置の製造方法は、半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位を生じさせることなく部分的にSOI構造を形成し、その部分的にSOI構造を有する基板に半導体素子を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態に従った半導体装置100の拡大断面図。
【図2】半導体素子50の具体例としてNMOSトランジスタ並びに、半導体素子60の具体例としてPMOSトランジスタを模式的に示した半導体装置100の平面図。
【図3】MOSトランジスタに流れる電荷の移動度とそのMOSトランジスタに作用する応力との関係を示すグラフ。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態に従った半導体装置200の拡大断面図。
【図5】半導体素子50の具体例としてNMOSトランジスタを模式的に示した半導体装置200の平面図。
【図6】本発明に係る第3の実施の形態に従った半導体装置300の拡大断面図。
【図7】本発明に係る実施の形態に従った半導体装置の製造方法のフロー図。
【図8】図7(G)に示す工程において、素子分離部40がシリコン酸化層20と接続するように形成された箇所の断面図。
【図9】図7(F)に示した引張応力領域および圧縮応力領域に作用する応力の大きさを示すグラフ。
【図10】図7(F)に示した工程において得られたSOI基板の平面図。
【図11】本実施の形態に従った半導体装置の他の製造方法のフロー図。
【図12】SIMOXにより形成された部分SOI基板の断面図。
【符号の説明】
100、200、300 半導体装置
10 シリコン基板
20 シリコン酸化層
30 シリコン薄膜層
40 素子分離部
50、60 MOSトランジスタ
110 マスク材
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から半導体装置を製造するためにSOI(Silicon On Insulator)基板が使用されている。SOI基板は、半導体基板上にシリコン酸化層を有し、そのシリコン酸化層の上に半導体素子を形成するシリコン層を有する。シリコン層は、STI(Shallow Trench Isolation)などの素子分離領域によって、半導体素子を形成する領域(以下、シリコン素子形成部)に分割される。シリコン素子形成部はシリコン層の下にあるシリコン酸化層および素子分離領域により囲まれ、それによって、シリコン素子形成部は半導体基板や他のシリコン素子形成部と電気的に絶縁されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、素子分離領域にはシリコン酸化材料が用いられるので、シリコン素子形成部はシリコン酸化材料により囲まれる。よって、シリコン素子形成部にはシリコン材料と酸化材料との線膨張係数差により圧縮応力が作用する。特に、N型MISトランジスタに圧縮応力が作用すると移動度が低下するので、N型MISトランジスタをシリコン素子形成部に形成した場合、半導体装置の性能が悪化してしまう。
【0004】
また、SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)に代表される酸素イオン注入により形成されたSOI構造を部分的に有する部分SOI基板が半導体装置の製造に頻繁に用いられている。図12は、SIMOXにより形成された部分SOI基板の断面図である。
【0005】
しかし、図12に示すように、SIMOXにより形成された部分SOI基板では、結晶欠陥Dが酸素イオンによりシリコン素子形成部および半導体基板のシリコン結晶に生じ易い。また、SIMOXにより形成された部分SOI基板では、シリコン素子形成部の下にシリコン酸化膜を形成するときに、結晶転位がシリコン酸化膜の膨張によりシリコン素子形成部および半導体基板のシリコン結晶に生じ易い。
【0006】
従って、本発明の目的は、半導体素子を形成する領域の応力を制御して、電荷の移動度を向上させた半導体素子を備えた半導体装置およびその半導体装置の製造方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位を生じさせることなく部分的にSOI構造を形成し、その部分的にSOI構造を有する基板に半導体素子を形成する半導体装置の製造方法およびその製造方法により製造された半導体装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る実施の形態に従った半導体装置は、半導体基板と、該半導体基板の表面上に部分的に設けられた絶縁層と該絶縁層の上を連続的に被覆しその少なくとも一端が前記半導体基板に接続された半導体層とを有する第1の領域と、前記第1の領域と近接し前記半導体基板の表面近傍に前記絶縁層が存在しない第2の領域と、前記第1の領域における前記絶縁層上の前記半導体層に形成された第1の半導体素子とを備える。
【0009】
好ましくは、前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記半導体層と前記第2の領域における前記半導体基板の表面近傍とを電気的に絶縁する素子分離部と、前記第2の領域における前記半導体基板に形成された第2の半導体素子とをさらに備える。
【0010】
好ましくは、前記素子分離部の少なくとも一部分は、前記絶縁層に接続していない。
【0011】
好ましくは、前記半導体基板および前記半導体層はシリコン単結晶からなり、前記絶縁層および前記素子分離部はシリコン酸化材料からなる。
【0012】
好ましくは、前記第1の領域における前記半導体層は、前記半導体基板の表面に対して水平方向に引張応力を有し、前記第2の領域における前記半導体基板の表面近傍は、該半導体基板の表面に対して水平方向に圧縮応力を有する。
【0013】
好ましくは、前記第1の半導体素子としてP型MISトランジスタが、前記半導体層に作用する引張応力の方向に対してチャネル長方向が略直交するように形成されている。
【0014】
好ましくは、前記第2の半導体素子としてP型MISトランジスタが、前記半導体基板の表面近傍に作用する圧縮応力の方向に対してチャネル長方向が略平行となるように形成されている。
【0015】
好ましくは、前記第1の半導体素子としてN型MISトランジスタが形成されている。
【0016】
本発明に係る実施の形態に従った半導体装置の製造方法は、半導体基板と該半導体基板の表面上に設けられた絶縁層と該絶縁層上に設けられた半導体層とを有するSOI基板の該半導体層上にマスク材パターンを形成するパターニングステップ、前記マスク材パターンをマスクとして、露出した前記半導体層をエッチングして前記絶縁層を部分的に露出させる第1のエッチングステップ、前記半導体層の下に存在する前記絶縁層の一部を、前記絶縁層の露出した部分から前記半導体基板の表面に対して水平方向にエッチングする第2のエッチングステップおよび、前記半導体基板および前記半導体層を加熱し、前記絶縁層が水平方向にエッチングされた領域で前記半導体層を前記半導体基板に溶着させる熱処理ステップを具備する。
【0017】
好ましくは、前記熱処理ステップの後、前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域と前記半導体層が前記半導体基板に溶着している第2の領域とを電気的に絶縁する素子分離部を、前記第2の領域内に形成するステップをさらに具備する。
【0018】
好ましくは、前記熱処理ステップの後、前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域にP型MISトランジスタを形成する場合には、前記第1の領域に作用する応力方向に対してチャネル長方向が略直交するように該P型MISトランジスタを形成し、
前記半導体基板上における前記半導体層が前記半導体基板に溶着している第2の領域にP型MISトランジスタを形成する場合には、前記第2の領域に作用する応力方向に対してチャネル長方向が略平行となるように該P型MISトランジスタを形成するステップを具備する。
【0019】
好ましくは、前記熱処理ステップの後、前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域にN型MISトランジスタを形成するステップを具備する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を説明する。尚、本実施の形態は本発明を限定するものではない。各図面において同じ構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0021】
図1は、本発明に係る第1の実施の形態に従った半導体装置100の拡大断面図である。半導体装置100は、シリコン基板10と、シリコン基板10の表面上に部分的に設けられたシリコン酸化層20と、シリコン酸化層20の上を連続的に被覆するシリコン薄膜層30とを備える。シリコン薄膜層30はその一端においてシリコン基板10に接続されている。
【0022】
半導体装置100は、シリコン薄膜層30およびシリコン基板10の表面近傍に作用する応力の方向によって、引張応力領域と圧縮応力領域とに区別される。引張応力領域は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30がシリコン基板10の表面に設けられており、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に引張応力を有する領域である。圧縮応力領域は、シリコン基板10の表面近傍にシリコン酸化層20が存在せず、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に圧縮応力を有する領域である。即ち、この領域では、シリコン基板10の表面近傍にシリコン酸化層20が存在しない。後述するように、シリコン薄膜層30の一端がシリコン基板10に接続されかつシリコン単結晶とシリコン酸化材料とが線膨張係数において相違するので、半導体装置100は引張応力領域および圧縮応力領域を有し得る。
【0023】
引張応力領域のシリコン薄膜層30は、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に引張応力を有する。一方、圧縮応力領域のシリコン基板10の表面近傍は、シリコン基板10の表面に対してほぼ水平方向に圧縮応力を有する。
【0024】
引張応力領域と圧縮応力領域とは素子分離領域を介して隣接している。素子分離領域は、引張応力領域におけるシリコン薄膜層30と圧縮応力領域におけるシリコン基板10の表面近傍とを電気的に絶縁する素子分離部40が設けられた領域である。本実施の形態において素子分離部40は、例えば、シリコン酸化材料からなるSTIである。
【0025】
引張応力領域におけるシリコン薄膜層30および圧縮応力領域におけるシリコン基板10の表面上には、MISトランジスタ50およびMISトランジスタ60がそれぞれ形成されている。
【0026】
さらに、図2に示すように、MISトランジスタ50は、シリコン基板10の表面上にシリコン基板10から絶縁された状態で形成されたゲート電極51と、ゲート電極51上に設けられたゲート上保護膜52と、ゲート電極51の側面に設けられたサイドウォール53とを有する。MISトランジスタ60は、シリコン基板10の表面上にシリコン基板10から絶縁された状態で形成されたゲート電極61と、ゲート電極61上に設けられたゲート上保護膜62と、ゲート電極61の側面に設けられたサイドウォール63とを有する。
【0027】
図2は、MISトランジスタ50の具体例としてNMOSトランジスタ50a、50b、並びに、MISトランジスタ60の具体例としてPMOSトランジスタ60a、60bを模式的に示した半導体装置100の平面図である。図2に示す2本の一点鎖線の間に素子分離領域があり、素子分離領域より左側は引張応力領域であり、素子分離領域より右側は圧縮応力領域である。図2中の実線の矢印は、引張応力領域および圧縮応力領域における応力の方向を示す。図2のNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタ内に示す破線の矢印は、MOSトランジスタにおいて電荷の流れるチャネル長方向を示す。尚、応力の方向およびチャネル長方向はいずれも半導体基板10の表面に対して水平面内における方向である。
【0028】
引張応力領域において、NMOSトランジスタ50aは応力の方向に対してほぼ平行方向へ電荷を流す向きに形成されており、NMOSトランジスタ50bは応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成されている。
【0029】
圧縮応力領域においては、PMOSトランジスタ60aおよび60bが応力の方向に対して平行方向に電荷を流す向きに形成されている。電荷を流す向きとは、NMOSトランジスタ50a、50bおよびPMOSトランジスタ60a、60bにおいて、ソースSからゲートG下のチャネルを介してドレインDへ向かう方向、若しくは、ドレインDからゲートG下のチャネルを介してソースSへ向かう方向である。
【0030】
図3(A)は、NMOSトランジスタに流れる電荷の移動度とそのNMOSトランジスタに作用する応力との関係を示すグラフである。図3(B)は、PMOSトランジスタに流れる電荷の移動度とそのPMOSトランジスタに作用する応力との関係を示すグラフである。図3(A)および図3(B)は、ともにトランジスタ内において電荷の流れるチャネル長方向と応力の方向とが平行である場合を実線で示し、それらが直交する場合を破線で示している。
【0031】
図3(A)に示すグラフによって、NMOSトランジスタに作用する応力が引張応力の場合に、その応力が圧縮応力の場合よりも、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度は高くなることがわかる。また、図3(A)に示すグラフによって、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度は、電荷の流れるチャネル長方向と応力の方向との相対的な角度にほとんど依存しないことがわかる。従って、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度は、NMOSトランジスタを形成する向きによらず、引張応力領域に形成することによって向上させることができる。
【0032】
図3(B)に示したグラフによって、PMOSトランジスタに作用する応力が引張応力の場合には、PMOSトランジスタにおいて電荷の流れるチャネル長方向が応力の方向に対して直交するときに、電荷の移動度は高くなることがわかる。また、図3(B)に示すグラフによって、PMOSトランジスタに作用する応力が圧縮応力の場合には、PMOSトランジスタにおける電荷の流れるチャネル長方向が応力の方向に対して平行となるときに、電荷の移動度は高くなることがわかる。
【0033】
従って、PMOSトランジスタは、PMOSトランジスタを形成する向きに依存するが、引張応力領域または圧縮応力領域のいずれの領域に形成する場合であっても、PMOSトランジスタを流れる電荷の移動度を向上させることができる。
【0034】
図2に示すように、本実施の形態によれば、NMOSトランジスタ50aおよび50bは引張応力領域に形成されているので、NMOSトランジスタ50aおよび50bを流れる電荷の移動度は比較的高い。また、PMOSトランジスタ60aおよび60bは、圧縮応力領域において応力の方向に対して平行方向へ電荷を流す向きに形成されている。よって、PMOSトランジスタ60aおよび60bを流れる電荷の移動度も比較的高い。
【0035】
本実施の形態において、PMOSトランジスタは、圧縮応力領域に形成されている。しかし、図3に示すように、PMOSトランジスタは、引張応力領域において、応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成しても、電荷の移動度を向上させることができる。従って、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを引張応力領域に混載させてもよい。
【0036】
半導体装置100は、圧縮応力領域だけでなく、引張応力領域をも有する。よって、引張応力領域にNMOSトランジスタを形成することにより、NMOSトランジスタにおける電荷の移動度を向上させることができる。また、半導体装置100は圧縮応力領域および引張応力領域の両方を同一のシリコン基板10上に有する。それによって、電荷の移動度を高めるためにPMOSトランジスタを形成する向きを選択する自由度が大きくなる。
【0037】
例えば、従来の半導体装置のように、圧縮応力領域に半導体素子を形成しなければならない場合には、PMOSトランジスタは、電荷の移動度を高めるために、電荷を流すチャネル長方向と応力の方向とが平行に近くなるように形成されなければならなかった。
【0038】
しかし、本実施の形態によれば、電荷を流すチャネル長方向が応力の方向に対して垂直方向により近いPMOSトランジスタは引張応力領域に形成し、電荷を流すチャネル長方向が応力の方向に対して平行方向により近いPMOSトランジスタは、圧縮応力領域に形成することにより電荷の移動度を高めることができる。即ち、本実施の形態による半導体装置においては、電荷を流すチャネル長方向が応力の方向に対して垂直方向または平行方向のいずれに近いPMOSトランジスタについても、PMOSトランジスタが形成される領域を適切に選択することで電荷の移動度を高めることができる。
【0039】
本実施の形態においては、シリコン薄膜層30がその一端においてシリコン基板10に接続されている。それによって、後述するように、シリコン薄膜層30に引張応力を発生させることができる。また、シリコン薄膜層30がシリコン基板10に接続されていることによって、MOSトランジスタ50において発生した熱をシリコン基板10へ放散させることができるという効果もある。
【0040】
さらに、本実施の形態による半導体装置100の引張応力領域は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30によってSOI構造を有する。一般に、SOI構造に半導体素子を形成することによって寄生効果を軽減させ、半導体素子の動作が高速になる。よって、引張応力領域のシリコン薄膜層30に形成された半導体素子は高速に動作することができる。
【0041】
尚、シリコン薄膜層30は少なくとも一端においてシリコン基板10に接続されていなければならない。従って、図1は、半導体装置100のうち、シリコン薄膜層30がシリコン基板10に接続されている領域の断面を示すが、半導体装置100の他の領域の断面において、シリコン薄膜層30は、素子分離部40によって、シリコン基板10に接続されていなくてもよい。
【0042】
また、本実施の形態によればシリコン薄膜層30はその一端においてシリコン基板10に接続されているが、シリコン薄膜層30はその全ての端においてシリコン基板10に接続されていてもよい。シリコン薄膜層30の全ての端がシリコン基板10に接続されていることによって、一端がシリコン基板10に接続されている場合よりも、引張応力領域に亘って全体的に一定した引張応力を得ることができる。
【0043】
半導体装置100は、半導体材料としてシリコン基板10および半導体層としてシリコン薄膜層30を有するが、これらに代えて、例えば、炭化シリコン等からなる半導体材料や半導体層を有していてもよい。半導体装置は、絶縁層としてシリコン酸化膜20を有するが、これに代えて、例えば、炭化シリコン用の絶縁物等からなる半導体材料や半導体層を有していてもよい。
【0044】
図4は、本発明に係る第2の実施の形態に従った半導体装置200の拡大断面図である。半導体装置200は、シリコン基板10を備え、シリコン基板10の表面上に部分的に設けられたシリコン酸化層20とシリコン酸化層20の上を連続的に被覆し少なくとも一端がシリコン基板10に接続されたシリコン薄膜層30とを有する引張応力領域と、シリコン基板10の表面近傍にシリコン酸化層20が存在しない圧縮応力領域とを備える。引張応力領域と圧縮応力領域とは、それらの間に中間領域を介して隣接している。引張応力領域に半導体素子50が形成されている。
【0045】
半導体装置200は、引張応力領域のみに半導体素子50が形成されており、圧縮応力領域に半導体素子が形成されていない点で半導体装置100と異なる。従って、半導体装置200における圧縮応力領域は、半導体装置100における圧縮応力領域よりも狭くてよい。また、本実施の形態においては中間領域に素子分離部が形成される必要がない。
【0046】
図5は、半導体素子50の具体例としてNMOSトランジスタ50a、50bを模式的に示した半導体装置200の平面図である。図5に示す2本の一点鎖線の間に中間領域があり、中間領域より左側に引張応力領域が設けられており、素子分離領域より右側に圧縮応力領域が設けられている。図5中の実線の矢印は、引張応力領域および圧縮応力領域における応力の方向を示す。図5のNMOSトランジスタ内に示す破線の矢印は、MOSトランジスタにおいて電荷の流れるチャネル長方向を示す。尚、応力の方向およびチャネル長方向はいずれも半導体基板10の表面に対して水平面内の方向である。
【0047】
半導体装置200も、半導体装置100と同様に引張応力領域を有する。よって、引張応力領域にNMOSトランジスタ50a、50bを形成することによって、NMOSトランジスタ50a、50bに流れる電荷の移動度を向上させることができる。
【0048】
尚、引張応力領域にPMOSトランジスタ(図示せず)を形成することもできる。この場合、PMOSトランジスタは、引張応力領域において、応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成される。それによって、PMOSトランジスタに流す電荷の移動度を向上させることができる。
【0049】
本実施の形態においても、半導体装置100と同様に、シリコン薄膜層30がその一端においてシリコン基板10に接続されている。それによって、シリコン薄膜層30に引張応力を発生させることができる。また、MOSトランジスタ50において発生した熱をシリコン基板10へ放散させることができる。
【0050】
さらに、半導体装置200は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30によってSOI構造を有する引張応力領域のみに半導体素子50が形成されている。それによって、半導体装置200に形成された総ての半導体素子50が高速に動作することができる。
【0051】
また、本実施の形態によればシリコン薄膜層30はその一端においてシリコン基板10に接続されているが、シリコン薄膜層30はその全ての端においてシリコン基板10に接続されていてもよい。
【0052】
図6は、本発明に係る第3の実施の形態に従った半導体装置300の拡大断面図である。半導体装置300は、引張応力領域のシリコン薄膜層30の表面と圧縮応力領域のシリコン基板10の表面との間に段差が無い点で半導体装置100と異なる。従って、本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態によれば、シリコン薄膜層30の表面とシリコン基板10の表面とがほぼ平坦に接続しているので、半導体素子50のシリコン薄膜層30の表面からの高さおよび半導体素子60のシリコン基板10の表面からの高さがほぼ同じレベルになる。それにより、半導体素子50、60を被覆する保護膜(図示せず)のカバレッジが良くなる。また、引張応力領域および圧縮応力領域に亘る配線は容易に断線するようなことがない。
【0053】
図7(A)から図7(G)は、本発明に係る実施の形態に従った半導体装置の製造方法のフロー図である。
【0054】
図7(A)に示すように、まず、シリコン基板10、シリコン基板10の表面上に設けられたシリコン酸化層20およびシリコン酸化層20上に設けられたシリコン薄膜層30を有するSOI基板を用意する。シリコン酸化層20の膜厚は、例えば、200nmである。シリコン薄膜層30の膜厚は、例えば、200nm以下である。
【0055】
図7(B)に示すように、次に、シリコン薄膜層30上にマスク材110を堆積し、マスク材110をパターニングする。本実施の形態において、マスク材110は、パッド酸化膜102、シリコン窒化膜104、TEOS膜106から成る。パッド酸化膜102は、シリコン薄膜層30の表面を酸化して形成される。シリコン窒化膜104およびTEOS膜106は、CVD等により、パッド酸化膜102の上にシリコン窒化膜104、TEOS膜106の順に堆積することによって形成される。
【0056】
マスク材110のパターニングは、次のように行われる。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、TEOS膜106の上にレジスト膜(図示せず)を形成しパターニングする。次に、レジスト膜のパターンに従って、TEOS膜106、シリコン窒化膜104およびパッド酸化膜102をRIEでエッチングする。マスク材110のパターニングによって、シリコン薄膜層30が部分的に露出する。
【0057】
図7(C)に示すように、次に、シリコン窒化膜104またはTEOS膜106のパターンをマスクとして、シリコン薄膜層30の露出部分をRIEでエッチングする。シリコン薄膜層30の露出部分をエッチングすることによって、シリコン酸化層20が部分的に露出する。
【0058】
図7(D)に示すように、次に、シリコン薄膜層30の下に存在するシリコン酸化層20の一部を、シリコン酸化層20の露出部分からシリコン基板10の表面に対して水平方向にエッチングする。シリコン酸化膜20のエッチングには、フッ酸溶液が用いられる。よって、シリコン酸化膜20は等方的にエッチングされ、シリコン薄膜層30の下に存在するシリコン酸化膜20もエッチングされる。シリコン薄膜層30の端からシリコン酸化膜20がエッチングされる距離は、エッチング時間に依存する。
【0059】
また、このエッチングではフッ酸溶液が用いられるので、シリコン酸化膜20をエッチングする工程においてTEOS膜106も同時にエッチングされる。よって、TEOS膜106は、シリコン窒化膜104、パッド酸化膜102およびシリコン薄膜層30をエッチングするときのマスクとして充分の膜厚であり、かつ、シリコン酸化膜20が所定の位置までエッチングされたときに、充分に除去されている程度の膜厚であることが好ましい。
【0060】
図7(E)に示すように、次に、熱リン酸溶液を用いてシリコン窒化膜104を除去し、フッ酸溶液を用いてパッド酸化膜102を除去する。その結果、シリコン薄膜層30からなるカンチレバー30aが形成される。カンチレバー30aは、シリコン薄膜層30のうちその下にシリコン酸化層20が存在しない梁である。カンチレバー30aが自重でたわむか否かは、カンチレバー30aの長さおよびその厚さに依存する。しかし、例えば、シリコン酸化層20がシリコン薄膜層30の端からシリコン基板10の表面に対して水平方向へエッチングされる距離が1μm以上であり、カンチレバー30aの長さが1μm以上であり、かつ、その厚さが200nm以下であるときには、カンチレバー30aは、シリコン薄膜層30から成るので、その曲げ剛性は低く自重でたわむ。よって、シリコン酸化層20がシリコン薄膜層30の端からシリコン基板10の表面に対して水平方向へエッチングされる距離は1μm以上であり、かつ、シリコン薄膜層30の厚さが200nm以下であることが好ましい。カンチレバー30aがたわむことにより、シリコン基板10とシリコン薄膜層30とが接触する。
【0061】
図7(F)に示すように、次に、シリコン基板10、シリコン薄膜層30およびシリコン酸化層20を1100℃以上の水素雰囲気中で熱処理する。この熱処理によって、シリコン基板10およびシリコン薄膜層30の接触部が溶着する。シリコン基板10およびシリコン薄膜層30が溶着した後、シリコン基板10、シリコン薄膜層30およびシリコン酸化層20を室温まで降温する。この結果、引張応力領域にSOI構造を有する部分SOI基板が形成される。本実施の形態による製造方法は酸素イオン注入を伴わないので、シリコン基板10とシリコン薄膜層30とが溶着した界面に発生する結晶欠陥および結晶転移は、図12に示したSIMOX法による部分SOI基板よりも著しく少ない。
【0062】
シリコン単結晶の線膨張係数はシリコン酸化材料の線膨張係数のほぼ10倍である。よって、シリコン酸化層20上のシリコン薄膜層30は、熱処理後にシリコン基板10の平面に対して水平方向に引張応力を有する(横方向応力(Sx))。その引張応力の大きさはシリコン酸化層20やシリコン薄膜層30の膜厚に依存するが、本実施の形態によれば、シリコン酸化層20の膜厚が約200nmであり、シリコン薄膜層30の膜厚が約200nmである場合に、約100MPaの大きさである。
【0063】
一方で、シリコン薄膜層30とシリコン基板10とが溶着した領域は、熱処理後にシリコン基板10の水平面に対して水平方向に圧縮応力を有する。これは、シリコン酸化層20上のシリコン薄膜層30が引張応力によって引っ張られている分、シリコン薄膜層30と接続するシリコン基板10の表面近傍(シリコン基板10に溶着したシリコン薄膜層30を含む)に圧縮しようとする応力が作用するからである。
【0064】
本実施の形態による半導体装置の製造方法は、このように同一のシリコン基板10上に引張応力領域と圧縮応力領域とを形成することができる。図7(F)に示される矢印は応力が作用する方向を示す。図7(F)に示される2本の一点鎖線の間の中間領域の左側が引張応力領域、その右側が圧縮応力領域となる。
【0065】
図7(G)に示すように、次に、素子分離部40が形成される。本実施の形態によれば、素子分離部40は、STIを利用している。よって、素子分離部40は、素子分離領域に形成されたトレンチ内にシリコン酸化材料を充填することによって形成される。本実施の形態によれば、素子分離部40は、圧縮応力領域内に形成され、シリコン酸化層20と接続していない。それによって、シリコン薄膜層30はシリコン基板10との接続を維持することができる。シリコン薄膜層30とシリコン基板10とが接続されていることによって、引張応力領域における引張応力は維持される。
【0066】
一方、素子分離部40によって挟まれたシリコン基板10の表面近傍には、圧縮応力が維持される。一般に、シリコン単結晶の線膨張係数は、上述の通りシリコン酸化材料の約10倍である。従って、シリコン基板10および素子分離部40が高温(例えば、1100℃以上)に加熱された場合に、シリコン基板10は、その表面に対して水平方向に膨張する。素子分離部40は溶融するがシリコン基板10に比較してほとんど膨張しない。続いて、室温まで低下させるときに、素子分離部40は収縮することなく固化し、シリコン基板10は、素子分離部40が固化した後も収縮しようとする。よって、シリコン基板10の表面近傍は固化した素子分離部40を保持したまま収縮するが、シリコン基板10のうち表面近傍よりも裏面に近い部分は素子分離部40の影響を受けることなく収縮する。その結果、シリコン基板10の表面近傍のうち素子分離部40の間にある部分は素子分離部40に挟まれた状態で圧縮される。それによって、シリコン基板10の表面近傍には圧縮応力が維持される。
【0067】
尚、素子分離部40が圧縮応力領域内に形成されるので、図7(G)に示すように、素子分離部40の形成後の圧縮応力領域は、素子分離部40の形成前の圧縮応力領域よりも狭くなっている。
【0068】
素子分離部40の一部分はシリコン酸化層20と接続するように形成されてもよい。この場合、素子分離部40の他の部分はシリコン酸化層20と接続していないように形成される。それによって、シリコン薄膜層30の端の一部はシリコン基板10と分離されているが、シリコン薄膜層30の端の他の部分はシリコン基板10と接続を維持する。このように、シリコン薄膜層30の端の少なくとも一部分がシリコン基板10と接続されていることによって、シリコン薄膜層30に作用する応力を引張応力にすることができる。
【0069】
ここで、図8にシリコン薄膜層30がシリコン基板10に接続していない箇所の断面図を示す。即ち、図8は、図7(G)に示す工程において、素子分離部40がシリコン酸化層20と接続するように形成された箇所の断面図である。
【0070】
但し、シリコン薄膜層30の総ての端が素子分離部40によってシリコン基板10から分離されている場合には、SOI基板を用いた従来の半導体装置と同様に、シリコン薄膜層30に作用する応力は、圧縮応力となってしまい、引張応力にならない。したがって、シリコン薄膜層30の端の少なくとも一部分はシリコン基板10と接続されていることを要する。
【0071】
図7(H)に示すように、さらに、引張応力領域のシリコン薄膜層30に半導体素子50を、圧縮応力領域のシリコン基板10の表面近傍に半導体素子60を形成することによって図1に示す半導体装置100が完成する。
【0072】
半導体素子50がPMOSトランジスタである場合には、そのPMOSトランジスタは、引張応力領域に作用する応力の方向に対してほぼ垂直方向へ電荷を流す向きに形成される。半導体素子60がPMOSトランジスタである場合には、そのPMOSトランジスタは、圧縮応力領域に作用する応力の方向に対してほぼ平行方向へ電荷を流す向きに形成される。それによって、PMOSトランジスタを流れる電荷の移動度が向上する。
【0073】
NMOSトランジスタを形成する場合には、そのNMOSトランジスタは引張応力領域のシリコン薄膜層30に形成する。引張応力領域においてNMOSトランジスタを形成する向きを問わない。それによって、NMOSトランジスタを流れる電荷の移動度を向上させることができる。
【0074】
尚、図7(F)に示した引張応力領域のみに半導体素子50を形成することによって、図4に示す半導体装置200が製造され得る。
【0075】
また、図7(F)における熱処理の後に、CMP等の研磨工程を追加し、シリコン薄膜層30の表面を研磨することによって、シリコン薄膜層30の表面とシリコン基板10の表面との間の段差を無くすことができる。図7(F)における熱処理の後にCMP等の研磨工程を追加した本実施の形態による半導体装置の製造方法によって、図6に示す半導体装置300が製造され得る。
【0076】
図9は、図7(F)に示した引張応力領域および圧縮応力領域に作用する応力の大きさを示すグラフである。このグラフは、シリコン基板10の表面の一端から他端までの距離を横軸とし、引張応力領域および圧縮応力領域に作用する横方向応力(Sx)の大きさを縦軸とする。
【0077】
シリコン基板10の全体幅を5μmとし、シリコン酸化層20の膜厚を200nmとし、シリコン薄膜層30の膜厚を200nmとする。このようなシリコン基板10、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30を有するSOI基板に図7(A)から図7(F)までの処理を施す。図9には、このSOI基板に図7(A)から図7(F)までの処理を施した後の室温時の引張応力領域および圧縮応力領域に作用する応力の大きさが示されている。尚、図7(D)に示す工程においては、シリコン薄膜層30の端からシリコン基板10の表面に対して水平方向に約2.5μmまでシリコン酸化層20がエッチングされる。
【0078】
引張応力領域における引張応力は、シリコン基板10の一端において約5×108dyne/cm2(約50MPa)の大きさであり中間領域に近づくにつれて増加する。圧縮応力領域における圧縮応力は、シリコン基板10の他端において約−5×108dyne/cm2(約−50MPa)の大きさであり中間領域に近づくにつれて増加する。尚、これらの応力値は、シリコン酸化層20およびシリコン薄膜層30の厚さや熱処理における温度によって変化する。
【0079】
図9に示すグラフにより、本実施の形態による半導体装置の製造方法を用いて、圧縮応力領域だけでなく、引張応力領域を有する半導体装置100、半導体装置200または半導体装置300を製造することができることがわかる。
【0080】
図10は、図7(F)に示した工程において得られた部分SOI基板の平面図である。図10に示されたX−X線に沿って切断した断面が図7(F)に示した断面に相当する。
【0081】
図10には、図7(C)に示した工程においてエッチングされたシリコン薄膜層30の開口部80a、80bの平面形状が示されている。開口部80a、80bは、図7(D)に示した工程において、シリコン酸化層20をシリコン基板10の表面に対して水平方向へエッチングするために用いられる。
【0082】
圧縮応力領域の平面形状および面積は、開口部80a、80bの平面形状、開口部80a、80bの大きさ、並びに、図7(D)に示した工程においてシリコン酸化層20をエッチングする時間によって決定される。従って、開口部80a、80bの平面形状およびそれらの大きさを変更することによって圧縮応力領域の平面形状およびその面積は任意に変更され得る。
【0083】
また、図7(D)に示した工程においてシリコン酸化層20をエッチングする時間を変更することによって、開口部80aから引張応力領域までの圧縮応力領域の幅Raおよび開口部80bから引張応力領域までの圧縮応力領域の幅Rbが変更される。図7(D)に示した工程においてシリコン酸化層20は、フッ酸溶液によって等方的にエッチングされる。よって、開口部80aおよび80bからシリコン酸化層20を同時にエッチングした場合、圧縮応力領域の幅RaおよびRbはほぼ等しくなる。圧縮応力領域の幅RaおよびRbを異ならせるためには、図7(D)に示した工程において、フォトリソグラフィ技術を用いて選択的にシリコン酸化層20をエッチングすればよい。
【0084】
このように、圧縮応力領域の形状や面積は、開口部80a、80bの平面形状、開口部80a、80bの大きさおよびシリコン酸化層20をエッチングする時間によって任意に変更され得る。
【0085】
図11(A)から図11(E)は、本実施の形態に従った半導体装置の他の製造方法のフロー図である。
【0086】
図11(A)に示すように、まず、シリコン基板10、シリコン基板10の表面上に設けられたシリコン酸化層20およびシリコン酸化層20上に設けられたシリコン薄膜層30を有するSOI基板を用意する。シリコン酸化層20の膜厚は、例えば、200nmである。シリコン薄膜層30の膜厚は、例えば、200nm以下である。
【0087】
図11(B)に示すように、次に、シリコン薄膜層30上にマスク材110を堆積し、マスク材110をパターニングする。本実施の形態において、マスク材110は、パッド酸化膜102およびシリコン窒化膜104から成る。パッド酸化膜102は、シリコン薄膜層30の表面を酸化して形成される。シリコン窒化膜104は、パッド酸化膜102の上にCVD等により堆積することによって形成される。
【0088】
マスク材110のパターニングは、次のように行われる。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、シリコン窒化膜104の上にレジスト膜(図示せず)を形成しパターニングする。次に、レジスト膜のパターンに従って、シリコン窒化膜104およびパッド酸化膜102をRIEでエッチングする。マスク材110のパターニングによって、シリコン薄膜層30が部分的に露出する。
【0089】
図11(C)に示すように、次に、シリコン窒化膜104のパターンをマスクとして、シリコン薄膜層30の露出部分をRIEでエッチングする。シリコン薄膜層30の露出部分をエッチングすることによって、シリコン酸化層20が部分的に露出する。さらに、シリコン窒化膜104のパターンをマスクとして、シリコン酸化層20の露出部分がRIEまたはフッ酸溶液を用いてエッチングされる。
【0090】
図11(D)に示すように、次に、熱リン酸溶液を用いてシリコン窒化膜104を除去し、フッ酸溶液を用いてパッド酸化膜102を除去する。
【0091】
図11(E)に示すように、さらに、シリコン基板10の表面上およびシリコン薄膜層30の表面上にシリコンをエピタキシャル成長させる。このエピタキシャル成長において、シリコン基板10の表面上にシリコン酸化層20の膜厚以上の厚さのシリコン単結晶を成長させる。それによって、シリコン基板10は、その表面上に形成されたシリコン単結晶によりシリコン薄膜層30に接続することができる。
【0092】
また、一般に、エピタキシャル成長は、1100℃以上の高温雰囲気中で処理される。従って、エピタキシャル成長後、室温まで降温したときに、シリコン酸化層20の表面上のシリコン薄膜層30には引張応力が作用し、シリコン薄膜層30と隣接したシリコン基板10の表面近傍には圧縮応力が作用する。
【0093】
図11(E)に示した工程後、図7(G)および図7(H)に示した工程を経ることによって、本発明に係る実施の形態に従った半導体装置が形成され得る。
【0094】
尚、図11(E)において、シリコン薄膜層30の表面上をマスクし、シリコン基板10の表面上のみにシリコンをエピタキシャル成長させてもよい。それによっても、シリコン基板10は、その表面上に形成されたシリコン単結晶によりシリコン薄膜層30に接続することができる。また、圧縮応力領域と引張応力領域との間の段差が、シリコン薄膜層30上にもシリコンをエピタキシャル成長させる場合よりも小さくなる。それにより、半導体素子50、60を被覆する保護膜のカバレッジが良くなる。また、引張応力領域および圧縮応力領域に亘る配線は容易に断線するようなことがない。
【0095】
図11(A)から図11(E)に示した製造方法によって、引張応力領域にSOI構造を有する部分SOI基板が形成される。本実施の形態による製造方法は酸素イオン注入を伴わないので、シリコン薄膜層30とその上にエピタキシャル成長したシリコン結晶層との界面に発生する結晶欠陥および結晶転移は、図12に示したSIMOX法による部分SOI基板よりも著しく少ない。
【0096】
【発明の効果】
本発明に従った半導体装置は、半導体素子を形成する領域の応力を制御して、半導体素子における電荷の移動度を向上させることができる。
【0097】
本発明に従った半導体装置は、部分的にSOI構造を有しているものの、半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位が従来よりも少ない。
【0098】
本発明に従った半導体装置の製造方法は、半導体素子を形成する領域の応力を制御して、電荷の移動度を向上させた半導体素子を備えた半導体装置を製造することができる。
【0099】
本発明に従った半導体装置の製造方法は、半導体素子を形成する領域に結晶欠陥や結晶転位を生じさせることなく部分的にSOI構造を形成し、その部分的にSOI構造を有する基板に半導体素子を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態に従った半導体装置100の拡大断面図。
【図2】半導体素子50の具体例としてNMOSトランジスタ並びに、半導体素子60の具体例としてPMOSトランジスタを模式的に示した半導体装置100の平面図。
【図3】MOSトランジスタに流れる電荷の移動度とそのMOSトランジスタに作用する応力との関係を示すグラフ。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態に従った半導体装置200の拡大断面図。
【図5】半導体素子50の具体例としてNMOSトランジスタを模式的に示した半導体装置200の平面図。
【図6】本発明に係る第3の実施の形態に従った半導体装置300の拡大断面図。
【図7】本発明に係る実施の形態に従った半導体装置の製造方法のフロー図。
【図8】図7(G)に示す工程において、素子分離部40がシリコン酸化層20と接続するように形成された箇所の断面図。
【図9】図7(F)に示した引張応力領域および圧縮応力領域に作用する応力の大きさを示すグラフ。
【図10】図7(F)に示した工程において得られたSOI基板の平面図。
【図11】本実施の形態に従った半導体装置の他の製造方法のフロー図。
【図12】SIMOXにより形成された部分SOI基板の断面図。
【符号の説明】
100、200、300 半導体装置
10 シリコン基板
20 シリコン酸化層
30 シリコン薄膜層
40 素子分離部
50、60 MOSトランジスタ
110 マスク材
Claims (12)
- 半導体基板と、
該半導体基板の表面上に部分的に設けられた絶縁層と該絶縁層の上を連続的に被覆しその少なくとも一端が前記半導体基板に接続された半導体層とを有する第1の領域と、
前記第1の領域と近接し前記半導体基板の表面近傍に前記絶縁層が存在しない第2の領域と、
前記第1の領域における前記絶縁層上の前記半導体層に形成された第1の半導体素子と、
を備えた半導体装置。 - 前記第1の領域と前記第2の領域との間に設けられ、前記半導体層と前記第2の領域における前記半導体基板の表面近傍とを電気的に絶縁する素子分離部と、前記第2の領域における前記半導体基板に形成された第2の半導体素子とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
- 前記素子分離部の少なくとも一部分は、前記絶縁層に接続していないことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
- 前記半導体基板および前記半導体層はシリコン単結晶からなり、
前記絶縁層および前記素子分離部はシリコン酸化材料からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体装置。 - 前記第1の領域における前記半導体層は、前記半導体基板の表面に対して水平方向に引張応力を有し、
前記第2の領域における前記半導体基板の表面近傍は、該半導体基板の表面に対して水平方向に圧縮応力を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。 - 前記第1の半導体素子としてP型MISトランジスタが、前記半導体層に作用する引張応力の方向に対してチャネル長方向が略直交するように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
- 前記第2の半導体素子としてP型MISトランジスタが、前記半導体基板の表面近傍に作用する圧縮応力の方向に対してチャネル長方向が略平行となるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
- 前記第1の半導体素子としてN型MISトランジスタが形成されていることを特徴とする請求項1請求項6または請求項7に記載の半導体装置。
- 半導体基板と該半導体基板の表面上に設けられた絶縁層と該絶縁層上に設けられた半導体層とを有するSOI基板の該半導体層上にマスク材パターンを形成するパターニングステップ、
前記マスク材パターンをマスクとして、露出した前記半導体層をエッチングして前記絶縁層を部分的に露出させる第1のエッチングステップ、
前記半導体層の下に存在する前記絶縁層の一部を、前記絶縁層の露出した部分から前記半導体基板の表面に対して水平方向にエッチングする第2のエッチングステップおよび、
前記半導体基板および前記半導体層を加熱し、前記絶縁層が水平方向にエッチングされた領域で前記半導体層を前記半導体基板に溶着させる熱処理ステップを具備する半導体装置の製造方法。 - 前記熱処理ステップの後、
前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域と前記半導体層が前記半導体基板に溶着している第2の領域とを電気的に絶縁する素子分離部を、前記第2の領域内に形成するステップをさらに具備することを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。 - 前記熱処理ステップの後、
前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域にP型MISトランジスタを形成する場合には、前記第1の領域に作用する応力方向に対してチャネル長方向が略直交するように該P型MISトランジスタを形成し、
前記半導体基板上における前記半導体層が前記半導体基板に溶着している第2の領域にP型MISトランジスタを形成する場合には、前記第2の領域に作用する応力方向に対してチャネル長方向が略平行となるように該P型MISトランジスタを形成するステップをさらに具備することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の半導体装置の製造方法。 - 前記熱処理ステップの後、
前記半導体基板上における前記絶縁層が残存する第1の領域にN型MISトランジスタを形成するステップをさらに具備することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
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