JP2004046994A - 磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高記録密度に対応でき、高保持力を有し、低ノイズである磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも非磁性基板、非磁性下地層、磁性層及び保護膜をこの順で有する磁気記録媒体であって、非磁性下地層をV−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含む構成とする。この際、V−Ti系合金を、Tiの濃度が1at%〜40at%の範囲内とし、V−Ti−B系合金は、Tiの濃度が1at%〜40at%の範囲内、Bの濃度が20at%以下とする。また、非磁性下地層を、V−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含む層と、Cr層、または、CrとTi、Mo、Al、Ta、W、Ni、B、SiおよびVから選ばれる1種もしくは2種類以上とからなるCr合金層を含む層とする。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハ−ドディスク装置などに用いられる磁気記録媒体、磁気記録媒体の製造方法および磁気記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録再生装置の1種であるハ−ドディスク装置(HDD)は、現在その記録密度が年率60%で増えており今後もその傾向は続くと言われている。高記録密度に適した磁気記録用ヘッドの開発、磁気記録媒体の開発が進められている。
【0003】
ハ−ドディスク装置に用いられる磁気記録媒体は、高記録密度化が要求されており、これに伴い保磁力の向上、媒体ノイズの低減が求められている。
【0004】
ハ−ドディスク装置に用いられる磁気記録媒としては、磁気記録媒体用の基板にスパッタリング法により金属膜を積層した構造が主流となっている。磁気記録媒体に用いられる基板としては、アルミニウム基板とガラス基板が広く用いられている。アルミニウム基板とは鏡面研磨したAl−Mg合金の基体上にNi−P系合金膜を無電解メッキで10μm程度の厚さに形成し、その表面を更に鏡面仕上げしたものである。ガラス基板にはアモルファスガラスと結晶化ガラスの2種類がある。どちらのガラス基板も鏡面仕上げしたものが用いられる。
【0005】
現在一般的に用いられているハ−ドディスク装置用磁気記録媒体においては、非磁性基板上に非磁性下地層(Ni−Al系合金、Cr、Cr系合金等)、非磁性中間層(Co−Cr、Co−Cr−Ta系合金等)、磁性層(Co−Cr−Pt−Ta、Co−Cr−Pt−B系合金等)、保護膜(カ−ボン等)が順次成膜されており、その上に液体潤滑剤からなる潤滑膜が形成されている。
【0006】
磁性層に用いられるCo−Cr−Pt−Ta系合金、Co−Cr−Pt−B系合金等はCoが主成分である合金である。Co合金はC軸に磁化容易軸をもつ六方最密構造(hcp構造)をとる。磁気記録媒の記録方式には面内記録と垂直記録があり、一般的に磁性膜にはCo合金が用いられている。面内記録の場合、Co合金のC軸が非磁性基板に対して平行に配向しており、垂直媒体の場合、Co合金のC軸が非磁性基板に対して垂直に配向している。したがって、面内記録の場合、Co合金は(10・0)面あるは(11・0)面に配向していることが望ましい。
【0007】
なお、結晶面表記の中の「・」は、結晶面を表すミラ−ブラベ−指数の省略形を示す。すなわち、結晶面を表わすのにCoのような六方晶系では、通常(hkil)と4つの指数で表わすが、この中で「i」に関してはi=−(h+k)と定義されており、この「i」の部分を省略した形式では、(hk・l)と表記する。
【0008】
垂直記録の場合には、Co合金は(00・1)面に配向していることが望ましい。逆に、面内記録の場合、Co合金の(10・1)面や(00・1)面の垂直成分を含む配向が存在すると面内方向の磁化の低下を促し好ましくない。
【0009】
Co合金の(10・0)面や(11・0)面を直接配向させることは難しく通常は体心立方構造(bcc構造)をとるCr合金が下地層として用いられている。Cr合金の(100)面には、Co合金の(11・0)面が配向し易く、Cr合金の(112)面にはCo合金の(10・0)面が配向し易い。
【0010】
磁気記録媒体の高記録密度化には、媒体ノイズの低減が必要である。ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス、87巻、5365〜5370ページ(J.Appl.Phys.vol.87,pp.5365−5370)には、媒体ノイズの低減はCo合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布を小さくすることが有効であることが理論式として記載されている。ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス、87巻、5407〜5409ページ(J.Appl.Phys.vol.87,pp.5407−5409)には、Co合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布を小さくすることにより、媒体ノイズが低減し高記録密度に適した磁気記録媒体が作成できたことが記載されている。
【0011】
このように媒体ノイズの低減にはCo合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布を小さくすることが重要である。Co合金はCr合金の上にエピタキシャル成長することから、Cr合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布を小さくすることが、Co合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布を小さくすることに寄与することは容易に推察できる。
【0012】
ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス、91巻、8611〜8613ページ(J.Appl.Phys.vol.91,pp.8611−8613)には、Cr合金にCr−Ti−B合金を用いることにより、Cr合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布を小さくし、その結果として、Co合金の平均結晶粒径と結晶粒径の分布が小さくなり媒体ノイズが低減されたことが記載されている。
【0013】
Crには、さまざま元素が添加され特性が向上することが報告されている。特開昭63−197018号公報ではCrにTiを添加することが有効であると記載されている。米国特許4652499号公報ではCrにVを添加することが有効であると記載されている。特開昭63−187416号公報ではCrにMo,Wを添加することが有効であると記載されている。特開平7−73427号公報と特開2000−322732号公報では、下地層を、Crを主成分とする添加元素の異なる2層で構成することが有効であると記載されている。特開平11−283235号公報では、Crを主成分とする下地層に酸素や窒素を添加することが有効であると記載されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように下地層には主としてCr合金が用いられている。下地層の改善により媒体ノイズを低減させる手法としては、Cr合金の平均結晶粒径の微細化や配向性の向上、Co合金との格子整合などが用いられてきた。下地層に用いられるCr合金はCrが主成分であるので、その特性は主としてCr固有の性質に起因してしまう。その結果として磁気記録媒の下地層の設計を狭めてしまう結果となっている。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、より高記録密度に対応できる磁気記録媒体で、より高保持力を有してより低ノイズである磁気記録媒体、その製造方法、製造に用いるスパッタリング用タ−ゲットおよび磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記問題を解決するために、鋭意努力検討した結果、非磁性下地層として、V−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を用いることにより磁気記録再生装置の特性を向上できることを見出し本発明を完成した。即ち本発明は以下に関する。
【0017】
(1)少なくとも非磁性基板、非磁性下地層、磁性層及び保護膜をこの順で有する磁気記録媒体において、非磁性下地層がV−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【0018】
(2)V−Ti系合金が、Tiの濃度が1at%〜40at%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【0019】
(3)V−Ti−B系合金が、Tiの濃度が1at%〜40at%の範囲内であり、Bの濃度が20at%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【0020】
(4)非磁性下地層が2層以上の積層構造からなることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
【0021】
(5)非磁性下地層が、V−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含む層と、Cr層、または、CrとTi、Mo、Al、Ta、W、Ni、B、SiおよびVから選ばれる1種もしくは2種類以上とからなるCr合金層を含むことを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
【0022】
(6)非磁性基板が、アルミニウム、ガラス、または、シリコンからなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【0023】
(7)非磁性基板が、アルミニウム、ガラス、または、シリコンの表面にNi−P系合金をメッキしたものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【0024】
(8)磁性層が、Co−Cr−Pt系合金、Co−Cr−Pt−Ta系合金、Co−Cr−Pt−B系合金、Co−Cr−Pt−B−Y系合金(YはTa、または、Cuである。)から選ばれる何れか1種以上であることを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
【0025】
(9)(1)〜(8)の何れか1項に記載の磁気記録媒体と、磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の磁気記録媒体の一実施形態を模式的に示したものである。本発明の磁気記録媒体は、少なくとも非磁性基板1、非磁性下地層(2および3)、磁性層5及び保護膜6をこの順で有する磁気記録媒体において、非磁性下地層がV−Ti系合金、V−Ti−B系合金からなる群から選ばれる何れか1種以上を含むことを特徴とする。
【0027】
また本発明の磁気記録媒体は、非磁性下地層を2層以上から構成するのが好ましく、非磁性下地層と磁性層5の間に、非磁性中間層4を設け、また、保護膜6の上に潤滑層を設けるのが好ましい。なお、図1は、非磁性下地層を、第1非磁性下地層2、第2非磁性下地層3の2層から構成した例である。
【0028】
本発明における非磁性基板としては、磁気記録媒体用基板として一般的に用いられているNi−P系合金メッキ膜が形成されたAl合金基板(以下、NiPメッキAl基板と呼ぶ。)に加え、非磁性基板としては、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコンカ−バイド、カ−ボン、樹脂などの非金属材料からなるもの、及びこれらの非金属材料基板の上にNiPまたはNi−P系合金の膜を形成したものを挙げることができる。
【0029】
本発明の非磁性下地層を用いた場合、非磁性基板として、Al合金基板に加えて、非金属基板においても良好に磁気記録媒体を製造することが可能となる。
【0030】
磁気記録再生装置では、記録密度の上昇に伴い、ヘッドの低フライングハイト化が要求されているために、基板表面の高い平滑性が必要となる。すなわち、本発明に用いられる非磁性層基板は、平均表面粗さRaが2nm(20オングストロ−ム)以下、好ましくは1nm以下であるとことが望ましい。
【0031】
本発明の非磁性基板に用いる非金属材料としては、コスト、耐久性の点からガラス基板を用いるのが好ましい。表面平滑性の点からはガラス基板、シリコン基板等を用いることが好ましい。
【0032】
ガラス基板は結晶化ガラスまたはアモルファスガラスを用いることができる。アモルファスガラスとしては汎用のソ−ダライムガラス、アルミノケ−トガラス、アルミノシリケ−トを使用できる。また結晶化ガラスとしては、リチウム系結晶化ガラスを用いることができる。ここで結晶化ガラスの構成成分としてはSiO、LiOが含まれているものが、実際にドライブ装置に組み込んで使用した場合に他の部品との熱膨張係数の整合性の点、あるいは組み立て時、使用時の剛性の点から好ましい。
【0033】
セラミックス基板としては、汎用の酸化アルミニウム、窒化珪素などを主成分とする焼結体やそれらの繊維強化物が挙げられる。
【0034】
本発明における非磁性下地層は、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金からなる群から選ばれる何れか1種以上を含む合金により構成される。また本発明における非磁性下地層は、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金からなる群から選ばれる何れか1種以上を含む合金に、他の補助的効果を有する元素を添加しても良く、添加元素としてはMo,W、Ta,Nb,Zr,Hf、Crが例示できる。
【0035】
V−Ti系合金においては、Tiの濃度は1at%(at%は原子%を示す。以下同じ。)〜40at%の範囲内が好ましい。Ti濃度が1at%未満ではTi添加の効果が小さく粒径が微細化されない。Ti濃度が40%を超えるとV−Ti系合金の結晶配向性が低下してしまい保持力(Hc)が低下してしまう。
【0036】
V−Ti−B系合金においては、Tiの濃度は1at%〜40at%の範囲内が好ましい。Ti濃度が1at%未満ではTi添加の効果が小さく粒径が微細化されない。Ti濃度が40%を超えるとV−Ti合金の配向性が低下してしまい保持力(Hc)が低下してしまう。またBの濃度が20at%より高くなると、V−Ti―B系合金の結晶配向性が低下してしまい保持力(Hc)が低下してしまう。
【0037】
非磁性層基板にガラスなどの非金属材料を用いる場合は、非磁性層基板と下地層との間に、非磁性のTa−Co系合金、Ta−Co−B系合金、Co−W−B系合金、Co−Mo−B系合金、Co−W−Mo−B系合金、あるいは、Cr−Ta合金とCo−W合金の2層、Cr−Ta合金とCo−Mo合金の2層からなる層を形成すると、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金の配向性が向上するので好ましい。本特許ではこの層を非磁性シード層と呼ぶことにする。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性下地層を2層以上の積層構造から形成するのが好ましく、非磁性下地層を、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金からなる群から選ばれる何れか1種以上を含む層(図1の第1非磁性下地層2に該当する。)と、Cr層、または、CrとTi、Mo、Al、Ta、W、Ni、B、SiおよびVから選ばれる1種もしくは2種類以上とからなるCr合金層(図1の第2非磁性下地層3に該当する。)から形成し、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金からなる群から選ばれる何れか1種以上を含む層を非磁性基板側に形成するのが好ましい。
【0038】
本発明の磁気記録媒体で、非磁性下地層を2層以上から形成する際の、表面側に形成する層(図1の第2非磁性下地層3に該当する。)は、Cr層では格子定数が小さいので、Cr−Mo,Cr−W,Cr−V、Cr−Ti系合金などのように、Mo,W,V、Tiなどを添加してCrの格子定数を広げ、磁性層のCo合金と格子定数がマッチングするようにすることが、磁気記録媒体のSNR特性向上の点から好ましい。
【0039】
本発明の磁気記録媒体で、非磁性下地層にCr層またはCr合金層を成膜する理由は、磁性層のCo合金と格子定数がマッチングするようにすることが目的である。V−Ti系合金はCr合金同様bcc構造を取る。したがって、V−Ti系合金の(100)面には、Co合金の(11・0)面が配向し易く、V−Ti系合金の(112)面にはCo合金の(10・0)面が配向し易い。
【0040】
V−Ti系合金の格子定数はTiの濃度によって変化するが、3.04〜3.14オングストローム(1オングストロームは0.1nm)の範囲である。一方、CrまたはCr合金の格子定数は添加元素濃度によって変化するが、2.88〜3.00オングストロームの範囲である。このように、V−Ti系合金の格子定数はCr合金よりも大きいので、Co合金との格子定数にマッチングが、Cr合金と比較すると弱くなる。V−Ti系合金により結晶粒径の微細化が達成されるが、格子定数が大きいためにCo合金との格子マッチングが弱くなりCo合金の配向性が低下してしまう。この点を補うために、CrまたはCr合金を成膜しCo合金との格子マッチングを改善しCo合金の配向性を向上させることができる。この結果として、結晶粒径の微細化と配向性の向上が同時に達成される。なお、B添加によりV−Ti系合金の構造、格子定数は変化しないので上述の議論はV−Ti−B系合金にも適用される。
【0041】
Coの格子定数はa軸が2.51オングストローム、c軸が4.07オングストロームである。Co合金の格子定数は、Pt,Pd,Ru,Re、Rh、Ir、Osなどの元素を添加することにより、大きくなる。例えば、Ptを10at%添加することによりCo合金の格子定数はa軸が2.55オングストローム、c軸が4.12オングストロームに広がる。Ptを添加すると磁性層の磁気異方性定数が向上するので、保持力を向上させる。磁気記録媒の高記録密度化を達成するためには保持力(Hc)をさらに向上させる必要性がある。Ptの添加濃度は磁気記録媒の高記録密度化に伴い年々増加している。このことから今後、高保持力化のためにPtの添加濃度が増加し、Co合金の格子定数は大きくなることが予想される。この結果として、Cr合金を用いないでも、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金のみでもCo合金との格子マッチングが向上し、結晶粒径の微細化と配向性の向上が同時に達成される可能性がある。
【0042】
非磁性下地層のV−Ti系合金層またはV−Ti−B系合金層の結晶配向は、(100)面を優先配向面とするのが好ましい。その結果、非磁性下地層のCr層またはCr合金層の結晶配向は(100)面が優先配向面となり、さらに(100)面非磁性下地層の上に形成した磁性層のCo合金の結晶配向がより強く(11・0)を示すので、磁気的特性例えば保持力(Hc)の向上効果、記録再生特性例えばSNRの向上効果が得られる。
【0043】
磁性層は、直下の非磁性下地層の、例えば(100)面と充分に良く格子がマッチングするCoを主原料としたCo合金であって、hcp構造である材料とするのが好ましい。例えば、Co−Cr−Ta系、Co−Cr−Pt系、Co−Cr−Pt−Ta系、Co−Cr−Pt−B−Ta系、Co−Cr−Pt−B−Cu系合金から選ばれたいずれか一種を含むものとするのが好ましい。
【0044】
例えば、Co−Cr−Pt系合金の場合、Crの含有量は10at%〜25at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内とするのがSNR向上の点から好ましい。
【0045】
例えば、Co−Cr−Pt−B系合金の場合、Crの含有量は10at%〜25at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内、Bの含有量は1at%〜20at%の範囲内とするのがSNR向上の点から好ましい。
【0046】
例えば、Co−Cr−Pt−B−Ta系合金の場合、Crの含有量は10at%〜25at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内、Bの含有量は1at%〜20at%の範囲内、Taの含有量は1at%〜4at%の範囲内とするのがSNR向上の点から好ましい。
【0047】
例えば、Co−Cr−Pt−B−Cu系合金の場合、Crの含有量は10at%〜25at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内、Bの含有量は2at%〜20at%の範囲内、Cuの含有量は1at%〜4at%の範囲内とするのがSNR向上の点から好ましい。
【0048】
磁性層の膜厚は15nm以上であれば熱揺らぎの観点から問題ないが、高記録密度への要求から40nm以下であるのが好ましい。40nmを越えると、磁性層の結晶粒径が増大してしまい、好ましい記録再生特性が得られないからである。磁性層は、多層構造としても良く、その材料は上記のなかから選ばれる何れかを用いた組み合わせとすることができる。多層構造とした場合、非磁性下地層の直上は、Co−Cr−Pt−B−Ta系合金またはCo−Cr−Pt−B−Cu系合金またはCo−Cr−Pt−B系合金からなるものであるのが、記録再生特性の、SNR特性の改善の点からは好ましい。最上層は、Co−Cr−Pt−B−Cu系合金またはCo−Cr−Pt−B系合金からなるものであるのが、記録再生特性の、SNR特性の改善の点からは好ましい。
【0049】
非磁性下地層と磁性層との間にCo合金のエピタキシャル成長を助長する目的として非磁性中間層を設けるのが好ましい。磁気的特性例えば保磁力の向上効果、記録再生特性例えばSNRの向上効果が得られる。非磁性中間層はCo、Crを含むものとすることができる。Co−Cr系合金としたときCrの含有量は25at%〜45at%の範囲内であるのがSNR向上の点から好ましい。非磁性中間層の膜厚は0.5nm〜3nmの範囲内であるのがSNR向上の点から好ましい。
【0050】
磁性層にBを含む場合には、非磁性下地層と磁性層との境界付近において、B濃度が1at%以上の領域におけるCr濃度が40at%以下となっているのが好ましい。CrとBとが高濃度で共存するのを防ぎ、CrとBとの共有結合性化合物の生成を極力抑え、その結果それによる磁性層中の配向の低下を防ぐことができるからである。
【0051】
保護膜は、従来の公知の材料、例えば、カ−ボン、SiCの単体またはそれらを主成分とした材料を使用することができる。保護膜の膜厚は1nm〜10nmの範囲内であるのが高記録密度状態で使用した場合のスペ−シングロスまたは耐久性の点から好ましい。
【0052】
保護膜上には必要に応じ例えばパ−フルオロポリエ−テルのフッ素系潤滑剤からなる潤滑層を設けることができる。
【0053】
非磁性基板はその表面に、テクスチャ−処理によるテクスチャ−痕を有したものとしても良い。テクスチャ−痕を有した基板の表面の平均粗さが、0.1nm〜0.7nmの範囲内(より好ましくは0.1nm〜0.5nmの範囲内。さらに好ましくは0.1nm〜0.35nmの範囲内。)となるように加工するのが好ましい。テクスチャ−痕はほぼ円周方向に形成されているのが磁気記録媒体の円周方向の磁気的異方性を強める点から好ましい。
【0054】
テクスチャ−加工は、オッシレ−ションを加えたテクスチャ−加工とすることができる。オッシレ−ションとは、テ−プを基板の円周方向に走行させると同時に、テ−プを基板の半径方向に揺動させる操作のことである。オッシレ−ションの条件は60回/分〜1200回/分の範囲内とすることが、テクスチャ−による表面研削量が均一になるので好ましい。
【0055】
テクスチャ−加工の方法としては、線密度が7500本/mm以上のテクスチャ−痕を形成する方法を用いることができ、前述したテ−プを用いたメカニカルテクスチャ−による方法以外に固定砥粒を用いた方法、固定砥石を用いた方法、レ−ザ−加工を用いた方法を用いることができる。
【0056】
図2は、上記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置の例を示すものである。ここに示す磁気記録再生装置は、図1に示す構成の磁気記録媒体20と、磁気記録媒体20を回転駆動させる媒体駆動部21と、磁気記録媒体20に情報を記録再生する磁気ヘッド22と、この磁気ヘッド22を磁気記録媒体20に対して相対運動させるヘッド駆動部23と、記録再生信号処理系24とを備えている。記録再生信号処理系24は、外部から入力されたデ−タを処理して記録信号を磁気ヘッド22に送ったり、磁気ヘッド22からの再生信号を処理してデ−タを外部に送ることができるようになっている。本発明の磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド22には、再生素子として異方性磁気抵抗効果(AMR)を利用したMR(magnetoresistance)素子だけでなく、巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有したより高記録密度に適したヘッドを用いることができる。
【0057】
上記磁気記録再生装置によれば、高記録密度に適した磁気記録再生装置を製造することが可能となる。
【0058】
次に本発明の製造方法の一例を説明する。
【0059】
非磁性基板として、磁気記録媒体用基板として一般的に用いられているNiPメッキAl基板、または、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコンカ−バイド、カ−ボン、樹脂の非金属材料からなるものもしくはこれらの非金属材料の、基板の上にNiPまたはNi−P系合金の膜を形成したものから選ばれるいずれかを用いる。
【0060】
非磁性基板は、平均表面粗さRaが2nm(20オングストロ−ム)以下、好ましくは1nm以下であるとことが望ましい。
【0061】
また、表面の微小うねり(Wa)が0.3nm以下(より好ましくは0.25nm以下。)であるのが好ましい。端面のチャンファ−部の面取り部、側面部の少なくとも一方の、いずれの表面平均粗さRaが10nm以下(より好ましくは9.5nm以下。)のものを用いることが磁気ヘッドの飛行安定性にとって好ましい。微少うねり(Wa)は、例えば、表面荒粗さ測定装置P−12(KLM−Tencor社製)を用い、測定範囲80μmでの表面平均粗さとして測定することができる。
【0062】
必要に応じて非磁性基板の表面にテクスチャ−加工を施した後、基板を洗浄して、基板を成膜装置のチャンバ−内に設置する。必要に応じて基板は、例えばヒ−タより100℃〜400℃の範囲内で加熱する。非磁性基板1上に、第1非磁性下地層2、第2非磁性下地層3、非磁性中間層4、磁性層5を各層の材料と同じ組成の材料を原料とするスパッタリング用タ−ゲットを用いてDC或いはRFマグネトロンスパッタリング法により形成する。
【0063】
膜を形成するためのスパッタリングの条件は例えば次のようにする。形成に用いるチャンバ内は真空度が10−4Pa〜10−7Paの範囲内となるまで排気する。チャンバ内に基板を収容して、スパッタ−用ガスとしてArガスを導入して放電させてスパッタ成膜をおこなう。このとき、供給するパワ−は0.2kW〜2.0kWの範囲内とし、放電時間と供給するパワ−を調節することによって、所望の膜厚を得ることができる。
【0064】
非磁性層基板にガラスなどの非金属材料を用いる場合は、非磁性層基板と下地層との間に、非磁性のTa−Co系合金、Ta−Co−B系合金、Co−W−B系合金、Co−Mo−B系合金、Co−W−Mo−B系合金、あるいは、Cr−Ta合金とCo−W合金の2層、Cr−Ta合金とCo−Mo合金の2層からなる非磁性シード層を形成すると、V−Ti系合金、V−Ti−B系合金の配向性配向性が向上するので好ましい。非磁性シード層を成膜する場合、非磁性シード層を成膜した後、その表面を酸素雰囲気に曝露する工程を有することが好ましい。曝露する酸素雰囲気は、例えば5×10−4Pa以上の酸素ガスを含む雰囲気とするのが好ましい。また曝露用の雰囲気ガスを水と接触させたものを用いることもできる。また曝露時間は、0.5秒〜15秒の範囲内とするのが好ましい。例えば、第1非磁性下地層を形成後チャンバから取出し外気雰囲気または酸素雰囲気中に曝露させることが好ましい。またはチャンバから取り出さずチャンバ内に大気または酸素を導入して曝露させる方法を用いることも好ましい。特に、チャンバ内で曝露させる方法は、真空室から取り出すような煩雑な工程がいらないので、非磁性下地層、磁性層の成膜を含めて一連の成膜工程として続けて処理することができるので好ましい。その場合は例えば、到達真空度が10−6Pa以下において5×10−4Pa以上の酸素ガスを含む雰囲気とするのが好ましい。なお、酸素による暴露時の酸素ガス圧の上限であるが、大気圧での暴露も可能であるが、好ましくは、5×10−2Pa以下とするのが良い。
【0065】
非磁性下地層を形成した後、15nm〜40nmの膜厚を有した磁性層を磁性層の材料からなるスパッタリング用タ−ゲットを用いて同様にスパッタリング法により形成する。スパッタリング用タ−ゲットはCo−Cr−Ta系、Co−Cr−Pt系、Co−Cr−Pt−Ta系、Co−Cr−Pt−B−Ta系、Co−Cr−Pt−B−Cu系から選ばれたいずれか一種を含むものを原料としたものを用いることができる。例えば、Co−Cr−Pt系合金の場合、Crの含有量は10at%〜25at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内とすることができる。例えば、Co−Cr−Pt−B−Ta系合金の場合、Crの含有量は16at%〜24at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内、Bの含有量は2at%〜8at%の範囲内、Taの含有量は1at%〜4at%の範囲内とすることができる。例えば、Co−Cr−Pt−B−Cu系合金の場合、Crの含有量は16at%〜24at%の範囲内、Ptの含有量は8at%〜16at%の範囲内、Bの含有量は2at%〜8at%の範囲内、Cuの含有量は1at%〜4at%の範囲内とすることができる。
【0066】
ここで、非磁性下地層のCrまたはCr合金の結晶配向は優先配向面が(112)を示しているように形成するのが好ましい。
【0067】
非磁性下地層と磁性層との間に非磁性中間層を設ける場合は、Co−Cr系合金(Crの含有量は25at%〜45at%の範囲内。)を原料としたスパッタリング用タ−ゲットを用いるのが好ましい。このとき、磁性層にBを含む場合には、非磁性下地層と磁性層との境界付近において、B濃度が1at%以上の領域におけるCr濃度が40at%以下となるようなスパッタ−条件で成膜するのが好ましい。
【0068】
磁性層を形成した後、公知の方法、例えばスパッタリング法、プラズマCVD法またはそれらの組み合わせを用いて保護膜、たとえばカ−ボンを主成分とする保護膜を形成する。
【0069】
さらに、保護膜上には必要に応じパ−フルオロポリエ−テルのフッ素系潤滑剤をディップ法、スピンコ−ト法などを用いて塗布し潤滑層を形成する。
【0070】
(実施例1)
非磁性基板としてアルミニウム合金基板(外径95mm、内径25mm、厚さ1.270mm)にNiPを無電解メッキで12μmつけてをテクスチャーを施し平均表面粗さRa=0.5nmにしたものを用いた。この基板にDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C3010)内にセットした。真空到達度を2×10−7Torr(2.7×10−5Pa)まで排気した後、250℃に加熱した。第1非磁性下地層として、V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)からなるターゲットを用いて60オングストローム積層し、さらに第2非磁性下地層として、Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)からなるターゲットを用いて20オングストローム積層した。非磁性中間層としてはCo−Cr合金(Co:65at%、Cr:35at%)からなるタ−ゲットを用いて20オングストロ−ム積層した。磁性層としてCo−Cr−Pt−B合金(Co:60at%、Cr:22at%、Pt:12at%、B:6at%)からなるタ−ゲットを用いて磁性層であるCo−Cr−Pt−B合金層を200オングストロ−ムの膜厚で形成し、保護膜(カ−ボン)50オングストロ−ムを積層した。成膜時のAr圧は3mTorrとした。パ−フルオロポリエ−テルからなる潤滑剤20オングストロ−ムをディップ法で塗布し潤滑層を形成した。
【0071】
その後グライドテスタ−を用いて、テスト条件のグライド高さを0.4μinchとして、グライドテストを行ない、合格した磁気記録媒体をリ−ドライトアナライザ−RWA1632(GUZIK社製)を用いて記録再生特性を調べた。記録再生特性は、再生信号出力(TAA)、孤立波再生出力の半値幅(PW50)、SNR、オ−バライト(OW)などの電磁変換特性を測定した。記録再生特性の評価には、再生部に巨大磁気抵抗(GMR)素子を有する複合型薄膜磁気記録ヘッドを用いた。ノイズの測定は500kFCIのパタ−ン信号を書き込んだ時の、1MHzから500kFCI相当周波数までの積分ノイズを測定した。再生出力を250kFCIで測定し、SNR=20×log(再生出力/1MHzから500kFCI相当周波数までの積分ノイズ)として算出した。保磁力(Hc)および角形比(S*)の測定にはカ−効果式磁気特性測定装置(RO1900、日立電子エンジニアリング社製)を用いた。
【0072】
(実施例2)
実施例1の第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)のかわりに、V−Ti−B合金(V:77at%、Ti:20at%、B:3at%)からなるタ−ゲットを用いて60オングストロ−ム積層した他は実施例1と同様の処理をした。
【0073】
(実施例3)
実施例1の第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)のかわりに、V−Ti−B合金(V:87at%、Ti:10at%、B:3at%)からなるタ−ゲットを用いて60オングストロ−ム積層した他は実施例1と同様の処理をした。
【0074】
(実施例4)
非磁性基板としてガラス基板(外径65mm、内径20mm、厚さ0.635mm、表面粗さ3オングストロ−ム)をDCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C3010)内にセットした。真空到達度を2×10−7Torr(2.7×10−5Pa)まで排気した後、非磁性シード層として、Ta−Co合金(Ta:75at%、Co:25at%)からなるタ−ゲットも用いて常温にて200オングストロ−ム積層した。
【0075】
その後、基板を250℃に加熱した。加熱後、酸素暴露を0.1Paで5秒間実施した。第1非磁性下地層として、V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)からなるタ−ゲットを用いて60オングストロ−ム積層した。第2非磁性下地層として、Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)からなるタ−ゲットを用いて20オングストロ−ム積層した。非磁性中間層としてはCoCr合金(Co:65at%、Cr:35at%)からなるタ−ゲットを用いて20オングストロ−ム積層した。磁性層としてCo−Cr−Pt−B合金(Co:60at%、Cr:22at%、Pt:12at%、B:6at%)からなるタ−ゲットを用いて磁性層であるCo−Cr−Pt−B合金層を200オングストロ−ムの膜厚で形成し、保護膜(カ−ボン)50オングストロ−ムを積層した。成膜時のAr圧は3mTorrとした。パ−フルオロポリエ−テルからなる潤滑剤20オングストロ−ムをディップ法で塗布し潤滑層を形成した。評価方法は実施例1と同様とした。
【0076】
(実施例5)
実施例3の第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)のかわりに、V−Ti−B合金(V:77at%、Ti:20at%、B:3at%)からなるタ−ゲットを用いて60オングストロ−ム積層した他は実施例3と同様の処理をした。
【0077】
(実施例6)
実施例3の第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)のかわりに、V−Ti−B合金(V:87at%、Ti:10at%、B:3at%)からなるタ−ゲットを用いて60オングストロ−ム積層した他は実施例3と同様の処理をした。
【0078】
(比較例1)
実施例1の第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)と第2非磁性下地層Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)のかわりに、Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)からなるタ−ゲットを用いて80−オングストロ−ム積層した他は実施例1と同様の処理をした。
【0079】
(比較例2)
実施例3の第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)と第2非磁性下地層Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)のかわりに、Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)からなるタ−ゲットを用いて80−オングストロ−ム積層した他は実施例3と同様の処理をした。
【0080】
図3に実施例1におけるX線回折結果を示す。Co合金の(11・0)面の回折パターンのみ確認でき、Co合金の(11・0)面のみが選択的に配向していることが分かる。実施例1では、第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)は60オングストローム積層と第2非磁性下地層Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)は20オングストローム積層と膜厚が薄いのでX線回折測定ではピークが観察されない。そこで、実施例1において、第1非磁性下地層V−Ti合金(V:80at%、Ti:20at%)を300オングストローム積層と第2非磁性下地層Cr−Ti合金(Cr:80at%、Ti:20at%)を300オングストローム積層し、それ以降の非磁性中間層、磁性層は成膜せず、保護膜を成膜したサンプルを作成した。
【0081】
図4にこのサンプルのX線回折結果を示す。V−Ti合金、Cr−Ti合金の(200)面の回折パターンのみ確認でき、V−Ti合金、Cr−Ti合金の(200)面のみが選択的に配向していることが分かる。このときの(200)面から計算されるV−Ti合金の格子定数は3.11オングストローム、Cr−Ti合金の格子定数は2.97オングストロームである。
【0082】
実施例1〜6、比較例1〜2のの記録再生特性および保持力(Hc)、角型比の結果を表1に示す。実施例1,2、3、比較例1は異方性媒体であり、実施例4,5、6、比較例2は等方性媒体であるので、特性の比較は実施例1,2、3と比較例1、実施例4,5,6と比較例2の間で行なうことが妥当である。一般的に等方性媒体と異方性媒体では異方性媒体の方が再生信号出力(TAA)が大きくなる特徴がある。比較例1と比べると実施例1ではSNRが1.2dB、実施例2では1.8dB、実施例3では1.7dB向上していることが確認できた。比較例2と比べると実施例4ではSNRが0.8dB、実施例5では1.4dB、実施例6では1.6dB向上していることが確認できた。
【0083】
実施例1と実施例2、実施例3では、実施例2、実施例3の方が、SNRが良好である。一方、保持力、角型比では実施例1の方が実施例2、実施例3よりも優れていること分かる。実施例1はV−Ti合金であり、実施例2、実施例3はV−Ti−B合金である。実施例1〜3より、V−Ti系合金にBを添加することにより、SNRは向上するが、保持力、角型は低下すると言える。B添加により、SNRと保持力、角型はトレードオフの関係になっている。SNR、保持力、角型をどうするかは、磁気ヘッド、信号処理系との組み合わせによって最適化をする必要性がある。磁気ヘッド、信号処理系との組み合わせによって保持力、角型を優先する場合は、V−Ti系合金を用い、SNRを優先する場合は、V−Ti−B系合金を用いることが好ましい。実施例4〜6についても同様のことが言える。
【0084】
【表1】
Figure 2004046994
【0085】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体は、少なくとも非磁性基板、非磁性下地層、磁性層及び保護膜をこの順で有する磁気記録媒体において、非磁性下地層がV−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含むことを特徴とする磁気記録媒体であるのでSNRが向上し、高記録密度に適した磁気記録媒体となる。
【0086】
また、本発明の磁気記録再生装置においては、上述の磁気記録媒体を用いているので高記録密度に適したものになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一実施形態を模式的に示したものである。
【図2】本発明の記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置の例を示すものである。
【図3】実施例1におけるX線回折結果を示す。
【図4】実施例1において、第1非磁性下地層を300オングストローム、第2非磁性下地層を300オングストローム積層し、非磁性中間層、磁性層を成膜せずに、保護膜を成膜したサンプルのX線回折結果を示す。
【符号の説明】
1 非磁性基板
2 第1非磁性下地層
3 第2非磁性下地層
4 第3非磁性下地層
5 非磁性中間層
6 磁性層
7 保護膜
20 磁気記録媒体
21 媒体駆動部
22 磁気ヘッド
23 ヘッド駆動部
24 記録再生信号処理系

Claims (9)

  1. 少なくとも非磁性基板、非磁性下地層、磁性層及び保護膜をこの順で有する磁気記録媒体において、非磁性下地層がV−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
  2. V−Ti系合金が、Tiの濃度が1at%〜40at%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. V−Ti−B系合金が、Tiの濃度が1at%〜40at%の範囲内であり、Bの濃度が20at%以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  4. 非磁性下地層が2層以上の積層構造からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  5. 非磁性下地層が、V−Ti系合金、または、V−Ti−B系合金を含む層と、Cr層、または、CrとTi、Mo、Al、Ta、W、Ni、B、SiおよびVから選ばれる1種もしくは2種類以上とからなるCr合金層を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  6. 非磁性基板が、アルミニウム、ガラス、または、シリコンからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 非磁性基板が、アルミニウム、ガラス、または、シリコンの表面にNi−P系合金をメッキしたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  8. 磁性層が、Co−Cr−Pt系合金、Co−Cr−Pt−Ta系合金、Co−Cr−Pt−B系合金、Co−Cr−Pt−B−Y系合金(YはTa、または、Cuである。)から選ばれる何れか1種以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の磁気記録媒体。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気記録媒体と、磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014169466A (ja) * 2013-03-01 2014-09-18 Yuutekku:Kk 配向基板、配向膜基板の製造方法、スパッタリング装置及びマルチチャンバー装置
JP2017106125A (ja) * 2017-02-27 2017-06-15 株式会社ユーテック 配向基板、配向膜基板の製造方法、スパッタリング装置及びマルチチャンバー装置
JP2017128816A (ja) * 2017-03-14 2017-07-27 株式会社ユーテック 配向基板、配向膜基板の製造方法、スパッタリング装置及びマルチチャンバー装置

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