JP2004046017A - 非線形光学結晶素子及びコヒーレント光発生装置 - Google Patents

非線形光学結晶素子及びコヒーレント光発生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】フレネル損が非常に小さいコヒーレント光発生装置を提供する。併せて、波長変換媒質の端面の無反射被膜を不要にし、装置の耐久性を向上させる。
【解決手段】所定の方向に偏光した励起光源と、第1の端面と第2の端面とを有して、第1の端面から前記励起光の入射を受けて第2の端面から前記所定の方向と同一方向に偏光した出力光を出射する波長変換媒質と、第1と第2のミラーとを有するコヒーレント光発生装置であって、前記第1の端面の向きは、励起光および第1のミラーで反射された波長変換光がほぼブリュースタ角で入射し、かつ、励起光と波長変換光の偏光方向が当該端面に対してP偏光となるように定められており、前記第2の端面の向きは、第2のミラーで反射された波長変換光がほぼブリュースタ角で入射し、かつ、波長変換光の偏光方向が当該端面に対してP偏光となるように定められていることを特徴とするコヒーレント光発生装置。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、波長変換を用いたコヒーレント光発生装置に関し、特に、光共振時の増幅光の損失を低減して高効率に波長変換光を得ることで、実質的な波長変換効率を増大した光発振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ルビー等の固体や炭酸ガス等の気体に励起光を照射してこれらの原子に電子エネルギの高い反転分布状態を生じさせ、電子エネルギの低い状態に遷移する際の発光を共振器によって増幅することで、位相のそろった単色光を取り出すのがレーザ発振装置の基本的機能である。また、近年では、非線形光学素子を用いて波長の異なる複数の出射波を出力することも行われている。
【0003】
図1に、レーザ発振装置の基本概念を示す。例えばルビーのようなレーザ媒体110は、例えばNd:YAGレーザからの励起光120を受けて、励起光120と同じ光軸方向130に光増幅を行う。増幅されてレーザ媒体110から放出されたコヒーレントなレーザ光140は、光軸に沿って進んで、右側のミラー150によって反射され、逆方向にレーザ媒体110を通過し、さらに光増幅を行い左側のミラー155に到達し、レーザ媒体110の方向に反射される。この反射を繰り返す間に、レーザ媒体110によって一層増幅されたレーザ光140は、例えば、光軸中に設けられて、制御電圧によって選択的にレーザ光の偏光方向を回転させるポッケルスセル160と偏光ビームスプリッタ170の組み合わせによって光軸外に取り出される。
【0004】
入射する励起光と出射光との波長が同じである線形光学に属するレーザ発振に対して、レーザ媒質110を波長変換媒質である周期分極反転構造を有する媒体に置き換え擬似位相整合を行い、第2高調波の発生や光パラメトリック相互作用を利用することによって、励起光とは異なる波長のレーザ光を得る過程は非線形光学、波長変換媒質は非線形光学素子と呼び、通常では得にくい波長の波長変換光を得る手段として使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記いずれの場合にも、励起光はレーザ媒質および波長変換媒質110を通って2つのミラー150、155の間で反射されることによって必要な増幅が行われるために、媒体110の両端面での励起光の反射によるいわゆるフレネル損を生じることになる。この損失を低減する方法として、両端面に無反射被膜処理を施すことが行われているが、当該処理は高価であるためにコヒーレント光発生装置全体のコストアップを招く問題がある。
【0006】
さらに、前記周期分極構造を有する光学結晶によって2次高調波発生や光パラメトリック相互作用を行わせる場合には、結晶の厚さが例えば500μm程度と非常に薄いために、無反射被膜を施すことが困難であり、さらに、端面には、結晶の厚さ対応して直径を絞り込んだレーザ光を入射させることになるために、無反射被膜層が損傷を受け、性能が劣化する可能性がある。さらには、直径を絞り込んだレーザ光によって光学結晶そのものの端面が損傷を受けることも起こりえる。
【0007】
フレネル損を低減する他の従来方法は、例えば特開平9−80496号に開示されているように、入射光の偏光方向と出射光の偏光方向が異なることを前提に、非線形光学素子の入射側の端面を入射方向に対してほぼブリュースタ角となるように設定し、出射側の端面を出射方向に対してほぼブリュースタ角となるように設定する方法である。この方法を用いた場合、それぞれの端面で入射光又は出射光に対して反射光を低減することができるが、逆に、いずれの端面でも入射光又は出射光のうちの一方の反射光を極端に低減することはできない。
【0008】
本発明は、従来技術が有する上記の課題の解決を目的としたもので、具体的には、入射光と出射光に対する反射光のフレネル損を低減し、変換効率を増大したコヒーレント光発生装置を得ることを目的としている。本発明はさらに、無反射被膜が不要であってしかも使用劣化が非常に小さいレーザ発振装置を得ることを目的とする。本発明の他の目的と効果は、課題を解決するための手段および発明の実施の形態に関する以下の記述を通じて明らかにする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面では、所定の方向に偏光した励起光を発生する励起光源と、第1の端面と第2の端面とを有し、第1の端面から前記励起光の入射を受けて第2の端面から前記所定の方向と同一方向に偏光した出力光を出射する非線形光学結晶と、前記第1の端面と第2の端面とに対応して設けられ、非線形光学結晶から出射された波長変換光を反射して共振させる第1と第2のミラーとを有するコヒーレント光発生装置であって、前記第1の端面の向きは、励起光および第1のミラーで反射された波長変換光がほぼブリュースタ角で入射し、かつ、励起光と波長変換光の偏光方向が当該端面に対してP偏光となるように定められており、前記第2の端面の向きは、第2のミラーで反射された波長変換光がブリュースタ角で入射し、かつ、射出される波長変換光の偏光方向が当該端面に対してP偏光となるように定められていることを特徴とするコヒーレント光発生装置を提案する。
【0010】
当該コヒーレント光発生装置によれば、非線形光学素子を通過する全ての光である励起光と波長変換光が常にほぼブリュースタ角で、かつ、非線形光学素子に対する偏光方向がP偏光となるように端面に入射するので、フレネル損は限りなくゼロに近くなり、結果的に高い変換効率を確保することができる。
【0011】
非線形光学素子としては、光第2次高調波を発生させる波長変換素子、光和周波発生素子や光パラメトリック発振素子である。
【0012】
非線形光学素子は、入射される励起光と出射される波長変換光との波長が異なるのが特徴である。したがって、この場合には励起光の波長成分と出射される波長変換光の波長成分とでは屈折率が異なるために、入射される励起光の波長を前提とした増幅系では励起光が波長変換光と同様の光路で反射されず、結果的に励起光の光源に、ミラーで反射された励起光が戻ってくることが無いので、励起光源が保護される効果がある。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、波長変換素子は、周期分極構造を有する光学結晶である。
【0014】
擬似位相整合を図ることで光第2高調波や光パラメトリック相互作用によって可変波長の光を得るための周期分極構造を有する素子は前期非線形光学素子が代表的な例である。周期分極構造を有する非線形光学素子は、例えば厚さが0.5 mm、幅および長さが数cm程度の結晶であり、この端面に入射させるためにレーザの半径は少なくとも0.5 mm程度以下に絞り込む必要がある。その結果、無反射被膜あるいは結晶端面そのものに損傷を与え、当該損傷が変換効率を低下させることになる可能性が高い。したがって、このような非線形光学素子に対して、本発明は特に有効に機能する。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、前記非線形光学素子の第1と第2の端面は、無反射被膜を有しない。
【0016】
本発明によれば、非線形光学素子の端面には、P偏光された励起光がほぼブリュースタ角で入射するので、原理的に反射成分がほぼゼロに抑えられる。したがって、無反射被膜を省略して製造コストの低減を図ることができる。さらに、フレネル損を考慮する必要が無いために、比較的小さなエネルギの励起光によって必要な出力光を得ることができる。換言すれば、光波長変換の過程を通じて非線形光学素子の端面に入射される光エネルギの総量を小さくすることができるので、端面の損傷を低減することができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、非線形光学素子に対してP偏光した励起光をほぼブリュースタ角で入射させ、レーザ媒体から出射した波長変換光を、ミラーによって反射して非線形光学素子に対してP偏光としてほぼブリュースタ角で入射させて光増幅を行うことで、共振時の光損失を低減したコヒーレント光発生方法を提案する。
【0018】
上記のコヒーレント光発生方法によれば、フレネル損を理論上ほぼゼロにすることができるので、変換効率を高くすることができる。さらに、結果的に無反射被膜を削除して製造コストを低減することができると共に、無反射被膜や非線形光学素子端面を損傷から保護することができるので、耐久性を向上させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に述べる。
図2は、本発明の1つの実施形態を示した概念図である。周期分極構造を有する非線形光学素子200の左右両側に一対のミラー210、220が非線形光学素子200の端面に対して設けられており、左側のミラー210の外には励起光300を供給する励起光源230が設けられている。
【0020】
周期分極構造を有する非線形光学素子200は、例えば、周期分極構造を有するLiNbO結晶(PPLN)である。
【0021】
励起光源230から出射された励起光300は、左側のミラー210を通過して、非線形光学素子200の第1の端面202に到達し、そこで屈折して周期分極構造を有する非線形光学素子200を通り抜ける間に擬似位相整合を取ることで光第2高調波の発生や光パラメトリック相互作用によって励起光300の波長λとは波長の異なる複数の波長λ、λを有する光を発生させる。非線形光学素子200で発生した光310が右側のミラー220によって反射されて、非線形光学素子200の右側の第2の端面204に到達し、そこから非線形光学素子200内に進入する。左右のミラー210、220の間で往復を繰り返す間に励起光は増幅され、それにより得られる波長変換光310は右側のミラー220を通過させて取り出される。
【0022】
ここで、本発明においては、図2に示す図の場合には、励起光300は紙面と同一面内に偏光しており、非線形光学素子200の第1の端面202に入射する際の入射角は、ほぼブリュースタ角である。ブリュースタ角は、入射光の入射面内に偏光した成分の反射係数がほぼゼロになる入射角であるから、入射面と同一平面内に偏光している波長λの励起光300の第1の端面202による反射成分のエネルギは理論上ほぼゼロに抑えられる。したがって、励起光300はフレネル損無しで非線形光学素子200に進入する。非線形光学素子200の内部に進入した励起光は、素子の周期分極構造によって擬似位相整合を取ることで波長λとλの2つの成分を発生させ、第2の端面204から射出する。擬似位相整合では、波長λ、λ、λの成分はいずれも紙面と同一面内に偏光するような位相整合条件をとることができる。例えば、前記位相整合条件はFejer他による文献(Martin M. Fejer et al., IEEE J. Quantum Electron., vol. 28, PP. 2631 − 2654, 1992)に示されている。
【0023】
非線形光学素子200から出射した各成分λ、λ、λは、右側のミラー220によって反射されて右側の端面204から再度非線形光学素子200内に進入するが、第2の端面204に入射する際の入射角は、また、ほぼブリュースタ角であり、第2の端面の方向は、前記各成分の偏光方向が入射面内になるような方向である。したがって、ここでもまた入射面方向に偏光している波長λ、λ、λを有する成分の第2の端面204による反射はほぼゼロなので、各成分はフレネル損無しで非線形光学素子200に入射する。
【0024】
励起光は左右のミラー210、220の間で反射を繰り返して増幅した後に、励起光を入射した側とは反対の右側ミラーから共振系の外部に取り出す。
【0025】
また、基本的に左右のミラー210、220および非線形光学素子200からなる共振系の光軸は、出射光の成分に対して合わせられているので、波長の異なる励起光300は、ミラーで反射された後は励起光発生装置の光軸と完全に同一の位置に戻ることは無いので、励起光発生装置に損傷を与えない。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたことから明らかなように、本発明に基づく上記の構成によれば、P偏光成分とS偏光成分とが混在する状態で端面をブリュースタ角に設定する従来技術に比較しても、S偏光に起因する波長変換光のフレネル損が存在しないために変換効率が向上する。
【0027】
さらに、本発明に係るコヒーレント光発生装置および方法によれば、励起光の波長成分と出射される波長変換光の波長成分とでは屈折率が異なるために、入射される励起光の波長を前提とした増幅系では励起光が波長変換光と同様の光路で反射されず、結果的に励起光の光源に、ミラーで反射された励起光が戻ってくることが無いので、励起光源が保護される効果がある。
【0028】
さらに、結晶の厚さが非常に薄い周期分極構造を有する非線形光学素子においても無反射被膜を省略することができ、装置の製造コストを低減することができる。さらに、無反射被膜や非線形光学素子端面の損傷を低減できるので、発振性能の劣化を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光発振装置の概念図
【図2】本発明の1実施形態を示す概念図
【符号の説明】
110     レーザ媒体
120     励起光
130     光軸
140     レーザ光
150、155 ミラー
160     ポッケルスセル
170     ビームスプリッタ
200     非線形光学素子
202、204 端面
210、220 ミラー
300     励起光
310     波長変換光

Claims (4)

  1. 所定の方向に偏光した励起光を発生する励起光源と、第1の端面と第2の端面を有し、第1の端面から前記励起光の入射を受けて第2の端面から前記所定の方向と同一方向に偏光した1つないしは2つの波長変換光を出射する波長変換媒質と、波長変換媒質の第1の端面と第2の端面に対応して設けられ、波長変換媒質から出射された波長変換光を反射して共振させる第1と第2のミラーを有するコヒーレント光発生装置であって、前記第1の端面の向きは、励起光および第1のミラーで反射された波長変換光がほぼブリュースタ角で入射し、かつ、励起光と波長変換光の偏光方向が当該端面に対してP偏光となるように定められており、前記第2の端面の向きは、第2のミラーで反射された波長変換光がほぼブリュースタ角で入射し、かつ射出される波長変換光の偏光方向が当該端面に対してP偏光となるように定められていることを特徴とするコヒーレント光発生装置。
  2. 前記波長変換媒質は、周期分極構造を有することを特徴とする請求項1に記載のコヒーレント光発生装置。
  3. 前記波長変換媒質の第1と第2の端面は、無反射被膜を有しないことを特徴とする請求項1に記載のコヒーレント光発生装置。
  4. 波長変換媒質に対してP偏光した励起光をほぼブリュースタ角で入射させ、波長変換媒質から出射した波長変換光を、ミラーによって反射して非線形光学素子に対してP偏光としてほぼブリュースタ角で入射させることで、共振時の光損失を低減した光パラメトリック発振方法。
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