JP2004043894A - 合金型温度ヒューズ及び温度ヒューズエレメント用線材 - Google Patents

合金型温度ヒューズ及び温度ヒューズエレメント用線材 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒューズエレメントに有害金属を含有せず、作動温度が150℃前後であり、しかも作動温度のバラツキを充分に抑え得、かつ、ヒートサイクルに対する作動安定性をよく保証し得る合金型温度ヒューズを提供することにある。
【解決手段】合金組成がSn30%〜70%、Sbが0.3%〜20%,残部Biであるヒューズエレメントを使用している。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は合金型温度ヒューズ及び温度ヒューズエレメント用線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気器機や回路素子、例えば半導体装置、コンデンサ、抵抗素子等のサーモプロテクタとして合金型温度ヒューズが汎用されている。
この合金型温度ヒューズは、所定融点の合金をヒューズエレメントとし、このヒューズエレメントにフラックスを塗布し、このフラックス塗布ヒューズエレメントを絶縁体で封止した構成である。
この合金型温度ヒューズの作動機構は次ぎの通りである。
保護使用とする電気器機や回路素子に合金型温度ヒューズが熱的に接触して配設される。電気器機や回路素子が何らかの異常により発熱すると、その発生熱により温度ヒューズのヒューズエレメント合金が溶融され、既溶融フラックスとの共存下、溶融合金がリード導体や電極への濡れにより分断球状化され、その分断球状化の進行により通電が遮断され、この通電遮断による器機の降温で分断溶融合金が凝固されて非復帰のカットオフが終結される。従って、電気器機等の許容温度とヒューズエレメント合金の分断温度とがほぼ等しいことが要求される。
【0003】
前記ヒューズエレメントには通常低融点合金が使用されている。而るに、合金においては、平衡状態図から明らかな通り、固相線温度と液相線温度を有し、固相線温度と液相線温度とが一致する共晶点では、共晶点温度を経過する加熱で固相から液相に一挙に変化するが、共晶点以外の組成では、固相→固液共存相→液相と変化し、固相線温度Tsと液相線温度Tlとの間に固液共存域温度巾ΔTが存在する。而して、固液共存域でも前記ヒューズエレメントの分断が小なる確立であっても、生じる可能性があり、温度ヒューズの作動温度のバラツキを小さくするために、前記固液共存域温度巾ΔTが可及的に小さな合金組成を使用することが要求され、ΔTの小なることが合金型温度ヒューズに要求される条件の一つとされている。
【0004】
また、前記ΔTが大きい場合は、前記した作動温度のバラツキの増大以外に、常時ヒートサイクルの上限温度が固相線温度にかかってヒートサイクル中にヒューズエレメントが分断に至らなくても半溶融状態(固液共存状態)の初期状態になり、これがヒートサイクル中の降温で再凝固し、この半溶融と再凝固の繰返しにより作動性に狂いが生じ、ヒートサイクルに対する作動安定性が阻害される。
【0005】
たとえ、固相線温度が常時ヒートサイクルの上限温度以上であっても、ヒューズエレメントの延性の如何によっては、合金組織内の異相界面で生じるずれが大きくなり、それがヒートサイクルに伴い繰り返されることによって極端な断面積変化やエレメント線長増大が生じ、かかる面からヒートサイクルに対する作動安定性を保証し得ないこともある。
【0006】
更に、合金型温度ヒューズのヒューズエレメントにおいては、線状片の形態で使用されることが多く、近来の器機の小型化に対応しての温度ヒューズの小型化のためにヒューズエレメントの細線化が要請されることがあり、細い径(例えば400μφ以下)までの線引き加工性も往々にして要求される。
【0007】
更に、前記ヒューズエレメントに要求される条件として低い電気抵抗が挙げられる。すなわち、ヒューズエレメントの平常時のジュール発熱に基づく温度上昇をΔT’とすると、その温度上昇が0のときに較べ作動温度が低くなり、ΔT’が高くなるほど、作動誤差が大きくなるから、ジュール発熱の抑制のためにヒューズエレメントの比抵抗を低くすることが要求される。特に、ヒューズエレメントの抵抗値がその断面積に反比例するために、前記細線化のもとでは、一層の低比抵抗化が要請される。
【0008】
更に、近来電気器機機においては、環境保全意識の高揚から生体に有害な物質、特にPb、Cd、Hg、Tl等の使用が規制され、温度ヒューズのヒューズエレメントにおいても、これらの有害金属を含有させないことが要請されている。
【0009】
合金型温度ヒューズを作動温度の面から分類すると、作動温度150℃前後の温度ヒューズが多用されている。
かかる温度ヒューズとしては、49.8Sn−31.96Pb−18.11Cd(合金の重量組成がSn49.8%,Pb31.96%,Cd18.11%、以下合金の組成を同じに表示)の合金をヒューズエレメントとする動作温度145℃の温度ヒューズ(特開昭57−58011号公報)、54Sn−25Pb−21Inの合金をヒューズエレメントとする動作温度の温度ヒューズ(特開昭59−8231号公報)が公知であるが、CdやPd等の有害金属を含有し、前記した環境保全の要件を充足させ得ない。また、1〜3Sn−残部Inの100重量部にAgを0.1〜5重量部配合した動作温度135℃〜145℃の温度ヒューズも公知であるが(特開2002−25404号公報)、反応性が高い元素であるInを多量に含有しているために合金表面のInがフラックスと反応してヒューズエレメント周囲のフラックスに溶解し、これを繰り返すことでヒューズエレメントの合金組成がIn量減少の方向に変化し、またフラックス作用が低下してヒューズエレメントの経時的な作動性能の変化が避けられず、長期間経過後では、所定通りの作動性を保証し難い。
【0010】
作動温度150℃前後のヒューズエレメントの合金としては、まず液相線温度がほぼ150℃であることが要求され、この要件に加え有害金属フリーの要件を満たす合金としては、種々知られているが、それらは前記した固液共存域温度巾ΔTが大きく、前記した作動温度のバラツキの縮小、ヒートサイクルに対する作動安定性等の要件を充足させ難い。例えば、50Bi−50Snでは、液相線温度がほぼ154℃であり、有害金属を含有しないが、Bi−Sn合金では固相線温度が一定で139℃であり、固液共存域温度巾ΔTがほぼ15℃と大きく、これらの要件を充分に満たさせ得ない。
【0011】
本発明の目的は、ヒューズエレメントに有害金属を含有せず、作動温度が150℃前後であり、しかも作動温度のバラツキを充分に抑え得、かつ、ヒートサイクルに対する作動安定性をよく保証し得る合金型温度ヒューズを提供することにある。
【0012】
本発明の更なる目的は、上記目的に加え、ヒューズエレメントの比抵抗を充分に低減すると共に機械的特性をよく向上させてヒューズエレメントの細線加工、高い作動精度、ヒートサイクルに対する耐熱安定性を良好に保証できる合金型温度ヒューズを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る温度ヒューズエレメント用線材は、合金組成がSn30%〜70%、Sbが0.3%〜20%,残部Biであることを特徴とし、請求項2では、好ましい合金組成をSn38%〜50%、Sb3%〜9%,残部Biとしている。
請求項3に係る温度ヒューズエレメント用線材は、前記の合金組成100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Ptの1種または2種以上が0.1〜7重量部添加されていることを特徴とする。
請求項4に係る合金型温度ヒューズは、前記の温度ヒューズエレメント用線材をヒューズエレメントとしたことを特徴とし、請求項5では、ヒューズエレメントを溶断させるための発熱体が付設されている。
上記において、各原料地金の製造上及びこれら原料の溶融撹拌上生じる不可避的不純物を含有することが許容される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、ヒュ−ズエレメントの合金組成を、Sn30%〜70%、Sb0.3%〜20%,残部Biとした理由は、Snを30%〜70%、Biを10〜69.7%とすることによりまず液相線温度を140℃付近とすると共に線引き加工に必要な延性を付与し、更にSbを0.3%〜20%とすることにより前記した固液共存域温度巾ΔTを充分に小さく抑制しつつ液相線温度を150℃前後に設定することにある。
Snが70%を越えると、液相線温度を150℃前後に設定し難く、30%未満ではBiの配合量が過多となり、延性が不充分となると共に電気抵抗が高くなり過ぎる。
Sbを添加すると固相線温度が上昇し、固相線温度一定のもとで液相線温度を増加する汎用の金属元素の添加とは異なり、固液共存域温度巾ΔTの増加をよく抑制しつつ(7℃以下)合金の液相線温度を高めることができ、0.3%以下では固相線上昇の効果が不充分であり、20%を越えると合金の液相線温度を150℃前後に設定し難くなる。
【0015】
好ましい合金組成は、Sn38%〜50%、Sb3%〜9%,残部Biであり、機械的強度、低電気抵抗ともに良好に保証できる。基準組成はSn43%、Sb6%,Bi51%であり、その液相線温度は148℃、固液共存域温度巾ΔTは3℃である。
【0016】
かかる合金組成により、Pb、Cd、Hg、Tl等の有害金属を含有しない環境保全に適合した作動温度150℃前後で、作動温度のバラツキが極めて小さく、しかもヒートサイクル中のヒューズエレメントの非分断半溶融と再凝固との繰返しにより生じる作動性能の狂いを確実に排除できる合金型温度ヒューズを提供できる。
【0017】
本発明において、Ag、Au、Cu、Ni、Pd、Ptの1種または2種以上を前記の合金組成100重量部に対し0.1〜7重量部添加する理由は、合金の比抵抗を低減すると共に結晶組織を微細化させ合金中の異相界面を小さくして加工歪や応力をよく分散させるようにする、すなわち歪や応力に対する吸収性を高めるためであり、0.1重量部未満では満足な効果が得られず、7重量部を越えると、液相線温度を150℃前後に保持することが困難になる。而して、ヒートサイクル時の熱歪に対する合金組織内の異相界面のずれをよく抑えてヒューズエレメントの耐熱安定性を保証し、線引きに対し充分な強度を付与して線径300μmφといった細線への線引き加工を可能としている。
【0018】
本発明に係る合金型温度ヒュ−ズのヒュ−ズエレメントは、ビレットを製作し、これを押出機で粗線に成形し、この粗線をダイスにより線引きする方法により製造でき、外径は200μmφ〜600μmφ、好ましくは250μmφ〜350μmφとされる。また、最終的にカレンダーロールに通し、扁平線として使用することもできる。
また、冷却液を入れたシリンダーを回転させて回転遠心力により冷却液を層状に保持し、ノズルから噴射した母材溶融ジェツトを前記の冷却液層に入射させ冷却凝固させて細線材を得る回転ドラム式紡糸法により製造することも可能である。
【0019】
本発明は独立したサーモプロテクターとしての温度ヒューズの形態で実施される。その外、半導体装置やコンデンサや抵抗体に温度ヒューズエレメントを直列に接続し、このエレメントにフラックスを塗布し、このフラックス塗布エレメントを半導体やコンデンサ素子や抵抗素子に近接配置して半導体やコンデンサ素子や抵抗素子と共に樹脂モールドやケース等により封止した形態で実施することもできる。
【0020】
図1は、本発明に係るテ−プタイプの合金型温度ヒュ−ズを示し、厚み100〜300μmのプラスチックベ−スフィルム41に厚み100〜200μmの帯状リ−ド導体1,1を接着剤または融着により固着し、帯状リ−ド導体間に線径250μmφ〜500μmφの請求項1〜3何れかのヒュ−ズエレメント2を接続し、このヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを厚み100〜300μmのプラスチックカバ−フィルム41の接着剤または融着による固着で封止してある。
【0021】
図2は筒型ケ−スタイプを示し、一対のリ−ド線1,1間に請求項1〜3何れかのヒュ−ズエレメント2を接続し、該ヒュ−ズエレメント2上にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメント上に耐熱性・良熱伝導性の絶縁筒4、例えば、セラミックス筒を挿通し、該絶縁筒4の各端と各リ−ド線1との間を常温硬化の封止剤5、例えば、エポキシ樹脂で封止してある。
【0022】
図3はケ−スタイプラジアル型を示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間に請求項1〜3何れかのヒュ−ズエレメント2を溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを一端開口の絶縁ケ−ス4、例えばセラミックスケ−スで包囲し、この絶縁ケ−ス4の開口をエポキシ樹脂等の封止剤5で封止してある。
【0023】
図4は基板タイプを示し、絶縁基板4、例えばセラミックス基板上に一対の膜電極1,1を導電ペ−スト(例えば銀ペ−スト)の印刷焼付けにより形成し、各電極1にリ−ド導体11を溶接等により接続し、電極1,1間に請求項1〜3何れかのヒュ−ズエレメント2を溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを封止剤5例えばエポキシ樹脂で被覆してある。
【0024】
図5は樹脂ディツピングタイプラジアル型を示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間に請求項1〜3何れかのヒュ−ズエレメント2を溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを樹脂液ディッピングにより絶縁封止剤例えばエポキシ樹脂5で封止してある。
【0025】
上記合金型温度ヒューズにおいて、ヒューズエレメントのジュール発熱を無視できるときは、被保護器機が許容温度Tmに達したときのFの温度TxはTmより2℃〜3℃低くなり、通常ヒューズエレメントの融点が〔Tm−(2℃〜3℃)〕に設定される。
これに対し、ヒューズエレメントのジュール発熱を無視できないときは、ヒューズエレメントの電気抵抗をR、通電電流をI、機器とヒューズエレメント間の熱抵抗をHとすれば、
【数1】
Figure 2004043894
が成立し、ヒューズエレメントの融点を上式に基づき設定することが可能である
【0026】
本発明は、合金型温度ヒューズに発熱体を付設し、例えば抵抗ペースト(例えば、酸化ルテニウム等の酸化金属粉のペースト)の塗布・焼き付けにより膜抵抗を付設し、器機の異常発熱の原因となる前兆を検出し、この検出信号で膜抵抗を通電して発熱させ、この発熱でヒューズエレメントを溶断させる形態で実施することもできる。
この場合、上記発熱体を絶縁基体の上面に設け、この上に耐熱性・熱伝導性の絶縁膜、例えばガラス焼き付け膜を形成し、更に一対の電極を設け、各電極に扁平リード導体を接続し、両電極間にヒューズエレメントを接続し、ヒューズエレメントから前記リード導体の先端部にわたってフラックスを被覆し、絶縁カバーを前記の絶縁基体上に配設し、該絶縁カバー周囲を絶縁基体に接着剤により封着することができる。
【0027】
上記のフラックスには、通常、融点がヒュ−ズエレメントの融点よりも低いものが使用され、例えば、ロジン90〜60重量部、ステアリン酸10〜40重量部、活性剤0〜3重量部を使用できる。この場合、ロジンには、天然ロジン、変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン)またはこれらの精製ロジンを使用でき、活性剤には、ジエチルアミンの塩酸塩や臭化水素酸塩、アジピン酸等の有機酸を使用できる。
【0028】
【実施例】
以下の実施において、温度ヒューズは基板型とし、ヒユーズエレメントの長さを4mmとし、フラックスには、ロジン80重量部,ステアリン酸20重量部,ジエチルアミン臭化水素酸塩1重量部の組成物を使用し、被覆材には、常温硬化型のエポキシ樹脂を使用した。
更に、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化の有無ついては、試料数を50箇とし、30分間120℃加熱、30分間−40℃冷却を1サイクルとするヒートサイクル試験を500サイクル行なったのちの抵抗値変化を測定して判断した。
また、試料数を50箇とし、0.1アンペアの電流を通電しつつ、昇温速度1℃/分のオイルバスに浸漬し、ヒューズエレメント溶断による通電遮断時のオイル温度から温度ヒューズの作動温度を測定した。
【0029】
〔実施例1〕
Sn43%、Sb6%、残部Biの合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、37μΩ・cmであった。
この線の液相線温度は148℃、固液共存域温度巾ΔTは3℃であった。
基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、抵抗値変化は認められず、安定な耐熱性を呈した。
温度ヒューズの作動温度は、147℃±0.5℃であり、バラツキが極めて小であった。
【0030】
〔実施例2〕
Sn43%、Sb3%、残部Biの合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、36μΩ・cmであった。
この線の液相線温度は144℃、固液共存域温度巾ΔTは3℃であった。
基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、抵抗値変化は認められず、安定な耐熱性を呈した。
温度ヒューズの作動温度は、143℃±0.5℃であり、バラツキが極めて小であった。
【0031】
〔実施例3〕
Sn43%、Sb9%、残部Biの合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、39μΩ・cmであった。
この線の液相線温度は152℃、固液共存域温度巾ΔTは4℃であった。
基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、抵抗値変化は認められず、安定な耐熱性を呈した。
温度ヒューズの作動温度は、150℃±1℃であり、バラツキが極めて小であった。
【0032】
〔実施例4〜6〕
表1に示す合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。延性がやや低いので、1ダイスについての引落率を4%に下げ、線引き速度を20m/minに下げて線引きした。断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、何れも50μΩ・cm以下であり、充分に低い値であった。
液相線温度は表1の通りであった。また固液共存域温度巾ΔTは何れの実施例においても7℃以下であり、充分に狭い巾であった。
更に、基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、問題となるような抵抗値変化は認められなかった。
【表1】
Figure 2004043894
【0033】
〔実施例7〜9〕
表2に示す合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、何れも38μΩ・cm以下であり、充分に低い値であった。
液相線温度は表3の通りであった。また、固液共存域温度巾ΔTは何れの実施例においても7℃以下であり、充分に狭い巾であった。
更に、基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、問題となるような抵抗値変化は認められなかった。
【表2】
Figure 2004043894
【0034】
〔実施例10〜12〕
表3に示す合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとしたが、断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、何れも30μΩ・cm以下であり、充分に低い値であった。
液相線温度は表3の通りであった。また固液共存域温度巾ΔTについては、実施例10では6℃、実施例11では5℃、実施例12では6℃であり、作動温度のバラツキを充分に小さくできることが期待できる。
更に、基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、問題となるような抵抗値変化は認められなかった。
【表3】
Figure 2004043894
【0035】
〔実施例13〜15〕
表4に示す合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。延性がやや低いので、1ダイスについての引落率を4%に、線引き速度を20m/minにそれぞれ下げて線引きを行った。断線は皆無であった。
この線の比抵抗を測定したところ、何れも50μΩ・cm以下であり、充分に低い値であった。
液相線温度は表4の通りであった。また固液共存域温度巾ΔTについては、何れの実施例も7℃以下であり、作動温度のバラツキを充分に小さくできることが期待できる。
更に、基板型温度ヒューズを作成し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、問題となるような抵抗値変化は認められなかった。
【表4】
Figure 2004043894
【0036】
〔実施例16〕
Sn38%、Sb6%、Bi56%の100重量部にAg1重量部を添加した合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。実施例5に較べ加工性に優れ、1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとして線引き条件をやや過酷にした。断線は皆無であった。また、ヒューズエレメントの応力−歪特性の向上から、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化も低減できると期待される。
この線の比抵抗を測定したところ、実施例5よりも充分に低い比抵抗であった。
実施例5に対し、液相線温度や固液共存域温度巾ΔTについての変化は僅かであった。
Agの添加量0.1〜7重量部で効果が上記効果が認められることを確認した。
【0037】
〔実施例16〜20〕
Sn38%、Sb6%、Bi56%の100重量部にそれぞれAu、Cu、Ni、Pd、Ptを1重量部を添加した各合金組成の母材を線引きして直径300μmφの線に加工した。何れも実施例5に較べ加工性に優れ、1ダイスについての引落率を6.5%とし、線引き速度を45m/minとした。実施例16〜20の何れにおいても断線は皆無であった。また、ヒューズエレメントの応力−歪特性の向上から、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化も低減できると期待される。
実施例16〜20の比抵抗を測定したところ、実施例5よりも充分に低い比抵抗であった。
実施例16〜20の何れも実施例5に対し、液相線温度や固液共存域温度巾ΔTについての変化は僅かであった。
Au、Cu、Ni、Pd、Ptの添加量0.1〜7重量部で効果が上記効果が認められることを確認した。
【0038】
〔比較例1〕
Bi50%、Sn50%の合金組成とした以外、実施例1に同じとした。断線は皆無であり、この線の比抵抗を測定したところ、35μΩcmであった。この線の液相線温度は154℃前後であり、固液共存域温度巾ΔTは約15℃であった。基板型温度ヒューズを作製し、初期動作試験を行ったところ、動作温度が140℃から154℃に分散し、作動温度のバラツキが顕著に現われた。
【0039】
〔比較例2〕
Sn2%、Ag3%、In95%の合金組成とした以外、実施例と同じとした。断線は皆無であり、この線の比抵抗を測定したところ、10μΩcmであった。この線の液相線温度は144℃前後であり、固液共存域温度巾ΔTは約3℃であった。基板型温度ヒューズを作製し、ヒートサイクルに対するヒューズエレメントの抵抗値変化を測定したところ、最大で50%以上の抵抗値増大を示すものが存在した。また、動作温度確認試験を行ったところ、初期動作温度(144℃)から10℃以上温度上昇させても作動しないものが存在した。その原因をプラズマ発光分析、赤外吸収分光分析等で調査した結果、Inがフラックス中に溶出して合金組成が変動すると共に線経が細くなっており、更にフラックスの活性に関与する反応雨季基が殆どIn塩になっていることが判明し、前述した懸念事項を確認できた。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、液相線温度が150℃前後、固液共存域温度巾ΔTが7℃以下で、しかも充分な延性を有するSn−Sb−Bi系合金の温度ヒューズエレメント用線材を得ることができ、生体に有害な金属を含有することなく環境保全に適合し、作動温度のバラツキを僅小にとどめ得、しかもヒートサイクル時でのヒューズエレメントの半溶融化を確実に回避し得て初期の作動特性をよく維持でき、ヒューズエレメントの易細線化により充分に小型化できる合金型温度ヒューズを提供できる。
【0041】
特に、請求項3によれば、ヒューズエレメントの加工性の一層の向上、比抵抗の一層の低減、応力/歪特性の一層の向上のために、前記の合金型温度ヒューズに対し、ヒューズエレメントの細線化に基づく小型化、ヒーササイクル時の応力/歪に対する安定性の向上、ヒューズエレメントのジュール発熱に起因する作動温度のずれの一層の低減を有効に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの一例を示す図面である。
【図2】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図3】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図4】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【図5】本発明に係る合金型温度ヒュ−ズの上記とは別の例を示す図面である。
【符号の説明】
1       リード導体または電極
2       ヒューズエレメント
3       フラックス
4       絶縁体
5       封止剤

Claims (5)

  1. 合金組成がSn30%〜70%、Sbが0.3%〜20%,残部Biであることを特徴とする温度ヒューズエレメント用線材。
  2. 合金組成がSn38%〜50%、Sbが3%〜9%,残部Biであることを特徴とする温度ヒューズエレメント用線材。
  3. 請求項1または2記載の合金組成100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Ptの1種または2種以上が0.1〜7重量部添加されていることを特徴とする温度ヒューズエレメント用線材。
  4. 請求項1〜3何れか記載の温度ヒューズエレメント用線材をヒューズエレメントとしたことを特徴とする合金型温度ヒューズ。
  5. ヒューズエレメントを溶断させるための発熱体が付設されている請求項4記載の合金型温度ヒューズ。
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