JP3885995B2 - 温度ヒューズ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、保護素子のエレメントが特定温度で溶融する低融点可溶合金を用いた温度ヒュ−ズに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子機器等を過熱損傷から保護する保護素子として、特定温度で動作して回路を遮断する温度ヒューズが用いられている。この温度ヒュ−ズで特に可溶合金型温度ヒューズは、エレメントとなる感温材として特定温度で溶融する低融点合金を用いて、この低融点合金に通電し、周囲温度の過昇により低融点合金が溶融して回路を遮断するものである。
【0003】
さらに、低融点合金と抵抗体とを具備し、抵抗体の通電加熱により低融点合金を強制的に溶断させる抵抗内臓型温度ヒューズと称される保護素子もある。
【0004】
上記の可溶合金型温度ヒューズは、保温コタツ、炊飯器等の家電製品、液晶テレビや複写機器等のOA機器、照明機器などに保護素子として用いられている。この内145±5℃の範囲の動作温度を有する可溶合金には、従来50Sn-32Pb-18Cd(wt.%)三元合金(145℃)など人体に有害な重金属である鉛やカドミウムを10 wt.%以上含有する物であった。しかも上記の家電製品やOA機器等は、これらの組立て部品に分解するのが困難なので、最近、そのまま廃棄された電気・電子機器から雨水などの作用により有害金属が溶出し、地下水に染み込み深刻な汚染をもたらしていることが、地球環境上の問題となり改良が必要とされている。
【0005】
ところで、温度ヒューズの可溶合金は、特定の温度で球状溶断させる必要上、できれば単一の溶融点を持つ共晶合金組成が好ましい。当該温度帯の140〜150℃付近においてPb及びCdを含有しない共晶組成は43Sn‐57Bi(wt.%)二元共晶 (139℃)が知られているが、溶融温度が若干低すぎるため、そのまま現行145℃の温度ヒューズに用いることができない。また、Sn-Bi共晶合金は半金属のBiを57%含んでいることもあり、比較的脆い性質を有し加工上の制約も多い。
【0006】
共晶組成以外の組成では、固相線温度以上の温度で合金は溶け始め、液相線温度で完全に液状に溶融する。このときの固相線温度と液相線温度の差を固液共存域と言うが、温度ヒューズを一定の温度でバラツキなく溶断させるためには、この固液共存域ができるだけ小さい合金組成を選択することが重要である。実用上、温度ヒューズの可溶合金には固液共存域が5℃未満であることが求められる。
【0007】
上述に加えて、電源回路に直列に実装される温度ヒューズの特性上から、かかる温度ヒューズの内部抵抗値は長期の高温保管によっても変化せず10mΩ以下であることが、省エネルギーの面や動作温度の安定性の上からも望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる上記の問題点を考慮して、可溶合金にPb及びCdを使用しない環境対応型の可溶合金型温度ヒューズを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に関る可溶合金型温度ヒューズは、感温素子にBiが50〜58質量%、Sbが4〜7質量%、残部Snの組成からなる可溶合金を使用するものである。すなわち、Biを50wt%〜58wt%、Sbを4wt%〜7wt%、残部Snの可溶合金を使用することで140〜150℃の動作温度を有する温度ヒューズを可能としたものである。なお、質量%の単位表示はwt%と同義である。
【0010】
本発明は43Sn‐57Bi(wt.%)二元共晶点付近の約140±2℃の溶融点を持つSn-Bi二元合金系を基本として、これに適量のSbを加え三元合金とすることによって、固液共存域の幅を抑えながら145±2℃付近まで溶融温度を上昇させ得ることに特徴がある。
【0011】
このとき、Sbの適切な量は4 wt%〜7 wt%の範囲である。それ以外の場合、例えばSbの量が3wt%である合金組成の固液共存域は約7℃もあり、温度ヒューズ可溶合金として安定な溶断を期待できないものであった。また、Snに対するSbの固溶限である7 wt%を超えてSbを含有した合金組成では極端に合金が硬く脆くなり細線加工が困難であった。
【0012】
上記の可溶合金には、線の塑性加工性を向上させ内部抵抗を低減させる目的で動作温度に支障をきたすことなく請求項2に記載する範囲でCuを添加することもできる。
【0013】
上記の可溶合金には、線の塑性加工性を向上させ内部抵抗を低減させる目的で動作温度に支障をきたすことなく請求項3に記載する範囲でAgを添加することもできる。
【0014】
請求項1に記載の母材合金に対するCuとAgの添加効果を比較すると、共に母材合金の塑性向上させ、内部抵抗を低減させ得るが、Cuは線の塑性加工性を向上させる効果が顕著であり、一方、Agについては線の内部抵抗を低減させる効果により優れていることがわかった。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明はアキシャル型温度ヒューズ、ラジアル型温度ヒューズ、薄型温度ヒューズ、抵抗内臓型ヒューズ等に使用でき、特定の型式に限定されるものではないが、以下に実施形態の一例としてアキシャル型温度ヒューズの実施形態を用いて説明する。
【0016】
図1は、温度ヒューズの実施形態を示し、アキシャル型温度ヒューズの断面図である。
図1において、付した符号とその部材名称は、つぎに示す通りである。
1,2:端子リード(Sn-Cuめっき銅線)
3:可溶合金
4:フラックス(ロジン、ワックス、活性剤)
5:絶縁物のケース(アルミナセラミック碍管)
6,7:封止樹脂(エポキシ樹脂)
【0017】
実施形態は、Sn-Cuめっき銅線からなる端子リ−ド1,2に、可溶合金3を抵抗溶接により接合した後、可溶合金4をロジン、ワックス、活性剤からなるフラックス4で被覆し、アルミナセラミック碍管5中に挿入して、エポキシ系封止樹脂6,7によりケース端部を封止して形成できる。なお、端子リ−ド1,2のSn-Cuめっき銅線は、必要に応じてAgめっき銅線、Snめっき銅線、Niめっき銅線等に変更でき、Sn-Cuめっき銅線に限定されるものではない。
【0018】
上記実施形態の温度ヒューズにおいて、可溶合金3にφ0.3〜0.7mm線を使用でき、また必要に応じて同一の断面積を有するテープ状合金の平角片も使用できる。
【0019】
本発明の温度ヒューズ可溶合金は、合金鋳塊の押出し加工により製造され、その後必要に応じてテープ状に圧延加工することもできる。
【0020】
また、将来本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、可溶合金3の線径は要求に応じてφ0.3以下とすることができ、また、要求に応じてφ0.7mm以上に変更することもできる。
【0021】
【実施例】
(実施例1)端子リ−ド1、2に可溶合金3を接合し、この可溶合金3をフラックス4で被覆し、絶縁物のケ−ス5に挿入し、前記端子リード1、2を導出する前記ケ−ス5の端部を封止樹脂6、7により封止してなる温度ヒューズにおいて、前記可溶合金はBiが50〜58質量%、Sbが4〜7質量%、残部Snの組成合金からなることを特徴とする温度ヒュ−ズの範囲あるBiを52.1質量%,Sbを4.9質量%,Snを43質量%とした組成のφ0.6mm線を押出し加工により作製し、この合金線を実施形態の温度ヒューズに適用した。実施例1の温度ヒューズ30個に10mAの検知電流を通電しながら、1℃/分の割合で温度上昇する恒温槽(気相)中で動作させたところ動作温度範囲は145±2℃であった。また、135℃で500時間,1000時間,2000時間それぞれ保管した実施例1の温度ヒューズ各10個を試験したところ内部抵抗値5±2mΩの範囲を保持でき、高温保管後も動作温度145±2℃の初期範囲を維持できる事がわかった。
【0022】
(実施例2)実施例1に記載の合金100重量部に対してCuを1重量部添加した組成のφ0.6mm線を押出し加工により作製し、この合金線を実施形態の温度ヒューズに適用した。この温度ヒューズ30個を実施例1と同様の方法で評価したところ動作温度範囲を変化させずに内部抵抗値を4±1mΩと低くできることがわかった。さらにCuの添加量を詳細に検討した結果、請求項1の合金100重量部に対してCuの添加量が0.1〜1.1重量部の範囲内にあるとき動作温度を変化させずに内部抵抗値を低下させることができた。
【0023】
(実施例3)実施例1に記載の合金100重量部に対してAgを0.5重量部添加した組成のφ0.6mm線を押出し加工により作製し、この合金線を実施形態の温度ヒューズに適用した。この温度ヒューズ30個を実施例1と同様の方法で評価したところ動作温度範囲を変化させずに内部抵抗値を3.5±0.5mΩと低くできることがわかった。さらにAgの添加量を詳細に検討した結果、請求項1の合金100重量部に対してAgの添加量が0.1〜2.6重量部の範囲内にあるとき動作温度を変化させずに内部抵抗値を低下させることができた。
【0024】
【比較例】
Sbの量を4wt%以下にした合金組成:53Bi-44Sn-3Sbを用いた実施形態の温度ヒューズは、動作温度範囲が137〜146℃と安定せず実用の温度ヒューズに至らなかった。また、Sbの量を7wt%以上とした組成:50Bi-42Sn-8Sbのφ0.6mm線を押出し加工により作製を試みたが、硬すぎるため作製できなかった。
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明は、140〜150℃で動作可能な信頼性の優れた合金型温度ヒューズをPbやCdを含有しない合金で実現するものである。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるアキシャル型温度ヒューズの断面図
【符号の説明】
1、2 端子リ−ド
3 可溶合金
4 フラックス
5 絶縁物のケ−ス
6、7 封止樹脂

Claims (3)

  1. 端子リ−ドに可溶合金を接合し、この可溶合金をフラックスで被覆し、絶縁物のケ−スに挿入し、前記端子リードを導出する前記ケ−スの端部を封止樹脂により封止してなる温度ヒューズにおいて、前記可溶合金はBiが50〜58質量%、Sbが4〜7質量%、残部Snの組成合金からなることを特徴とする温度ヒュ−ズ。
  2. 前記可溶合金100重量部に対してCuを0.1〜1.1重量部を添加したことを特徴とする請求項1に記載の温度ヒュ−ズ。
  3. 前記可溶合金100重量部に対してAgを0.1〜2.6重量部を添加したことを特徴とする請求項1に記載の温度ヒュ−ズ。
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