JP2004043716A - ポリエステル製造用触媒及びそれを用いるポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性良くポリエステルを製造するための触媒を提供する。
【解決手段】1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体からなるポリエステル製造用触媒。
【選択図】 なし
【解決手段】1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体からなるポリエステル製造用触媒。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル製造用触媒及びそれを用いるポリエステルの製造方法に関するものであり、詳しくは、生産性良くポリエステルを製造するための触媒及びポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性および衛生性等に優れ、また比較的安価で軽量であるために、ボトルやフィルム等としての各種包装資材、あるいは繊維等として幅広く用いられてきている。
【0003】
そして、これらポリエステルは、従来、主としてアンチモン化合物を重縮合触媒として製造されているが、製造されたポリエステルは、例えば成形して飲食品容器として用いられる場合、樹脂中に残存したアンチモンが、高温下において容器から溶出して内容飲食品に僅かながら移行する等の問題が懸念されており、その代替が強く望まれている。
これに対して、アンチモン化合物を含有しないポリエステル樹脂の製造方法として、チタン化合物を重縮合触媒として用いる方法が数多く提案されているが、チタン化合物を重縮合触媒とした場合、得られる樹脂が黄味がかった色調となり、又、加熱された後の色調の変化も大きく、熱安定性に欠ける傾向がある。
【0004】
重縮合触媒として用いるチタン化合物としては、例えば以下のようなチタン化合物が提案されている。特開昭58―118824号公報にはチタンテトラブトキシドとジエチレングリコールとを予め反応させて得られる反応生成物を使用することが示されており、特公昭59−46258号公報には、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸とを予め反応させて得られる反応生成物を使用することが示されている。また、特開2000−319370号公報には特定のチタン化合物とリン化合物をモル比1/1〜1/5で予め反応させた反応生成物を使用することが示されている。しかしながら、反応性が不十分であったり、色味の問題があったり、未だ十分に満足すべきレベルに達しているとは言えず、触媒代替のための努力が継続して行われている状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、従来のチタン系触媒に起因する色味の問題点を解消しつつ、反応性に優れたポリエステル製造用触媒及びポリエステルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の骨格構造を持つチタン三核錯体を用いてポリエステルを製造した場合には、反応性が良好で、色調が改善されたポリエステルが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体からなるポリエステル製造用触媒、及び芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合させることによりポリエステル樹脂を製造するに際し、ポリエステル製造用触媒として上記触媒を使用するポリエステルの製造方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル製造用触媒は、1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体である。かかるチタン三核錯体としては、下記一般式(1)
【0009】
【化3】
【0010】
(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数のR1、R2およびR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1、R2およびR3の少なくとも一部は互いに結合されて多座配位子を形成していてもよい。)であるのが好ましい。
【0011】
中でも、酸素原子3つを配位原子としてもつ三座配位子が配位した下記一般式(2)のチタン三核錯体が好ましい。
【0012】
【化4】
【0013】
(一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数のR1およびR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1およびR2の少なくとも一部は互いに結合されて多座配位子を形成していてもよい。)
尚、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4であり、アルキル基又はアリール基の置換基としては、一般式(1)又は(2)の構造のチタン三核錯体を形成しうるものであれば特に限定されない。
【0014】
Ti3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体は、チタンアルコキシド、ジハロゲン化ビス(シクロペンタジエニル)チタン、塩化チタンなどのチタン化合物を、必要であればメタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエンなどの芳香族類などの各種溶媒中で、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類や水などの配位子形成性化合物と反応させることにより合成することができる。
【0015】
例えば、本発明のチタン三核錯体として、下記構造式(A)で示される[Ti3(μ3−O)(μ−OCH3)3(OCH3)3(η5−C5H5)3][B(C6H5)4]、下記構造式(B)で示される[Ti3(μ3−O)(μ−OH)3(μ−HCOO)3(η5−C5H5)3]HCOO・2HCOOHが挙げられるが、これらの合成法が記載されるJ.Organomet.Chem. 1986,315,C69−C72、J.Organomet.Chem. 1986,301,41−48に記載の方法に準じて合成することができる
【0016】
【化5】
【0017】
本発明の好ましいチタン三核錯体である上記一般式(1)の錯体は、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要であればアルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族類などの各種溶媒中で、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類や水などの配位子形成性化合物と反応させることにより合成することができる。具体的な例としては、Inorg.Chem.Acta 1995,229,392−405に記載の方法に従って合成することができ、一般式(1)で示される具体的なチタン三核錯体としては、上記文献に記載される下記構造式(C)の[Ti3O](OPri)9(OMe)(一般式(1)において、R1およびR2がイソプロピル基、R3がメチル基の場合に相当)、下記構造式(D)の[Ti3O](OPri)10(一般式(1)において、R1、R2およびR3がイソプロピル基の場合に相当)を挙げることができる。
【0018】
【化6】
【0019】
また、上述のように、本発明のチタン三核錯体は、酸素原子3つを配位原子として持つ三座配位子が配位した上記一般式(2)により表されるチタン三核錯体であることがさらに好ましいが、該錯体は、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要であればアルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族類などの各種溶媒中で、必要であれば三価アルコール類などの三座配位子の存在下、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類や水などの配位子形成性化合物と反応させることにより合成することができる。
【0020】
具体的な例としては、New J.Chem. 1999,23,1079−1086に記載の方法に従って合成することができ、一般式(2)で示される具体的なチタン三核錯体としては下記構造式(E)の[Ti3O(OPri)7(O3C9H15)](一般式(2)において、R1およびR2がイソプロピル基、三座配位子がO3C9H15の場合に相当)を挙げることができる。
【0021】
【化7】
【0022】
本発明のポリエステルの製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合させることによりポリエステルを製造する方法である。
本発明において、その芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、具体的には、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、ならびに、テレフタル酸ジメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル等の、これら芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、およびハロゲン化物等が挙げられ、これらのうち2種以上を成分としてもよい。これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましく、特にテレフタル酸、およびそのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0023】
なお、前記芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分としては、例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、および、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ならびに、これらの脂環式ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、およびハロゲン化物等が挙げられる。
【0024】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、および、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、ならびに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらのうち2種以上を成分としてもよい。これらの中で、エチレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。
【0025】
さらに、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、および、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分、等の一種又は二種以上が、共重合成分として用いられてもよい。
【0026】
本発明のポリエステルの製造方法は、ポリエステルをエステル化、溶融重縮合および必要ならそれに続く固相重縮合による方法で製造するものであるが、基本的には、ポリエステルの慣用の製造方法による。すなわち、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応槽で、必要に応じてエステル化触媒の存在下に、通常240〜280℃、好ましくは250〜270℃の温度、通常0.1〜0.4MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaの圧力下で、攪拌下に1〜10時間でエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、重縮合触媒の存在下に、通常260〜290℃、好ましくは265〜285℃の温度、常圧から漸次減圧として最終的に通常1.3×101〜1.3×103Pa、好ましくは6.7×101〜6.7×102Paの減圧下で、攪拌下に1〜20時間で溶融重縮合させることによりなされ、これらは連続式、または回分式でなされる。
【0027】
また、通常、溶融重縮合により得られた樹脂は、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされるが、さらに、この溶融重縮合後の粒状体を、通常、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、または水蒸気雰囲気下、或いは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常60〜180℃、好ましくは150〜170℃の温度で加熱して樹脂粒状体表面を結晶化させた後、不活性ガス雰囲気下、または/および、1.3×101〜1.3×103Pa程度の減圧下で、通常、樹脂の粘着温度直下〜80℃低い温度、好ましくは粘着温度より10〜60℃低い温度で、粒状体同士が膠着しないように流動等させながら、通常50時間以下の時間で加熱処理して固相重縮合させることが好ましく、この固相重縮合により、さらに高重合度化させ得ると共に、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することもできる。
【0028】
また、さらに、前記のような溶融重縮合または固相重縮合により得られた樹脂は、重縮合触媒を失活させる等のために、通常、40℃以上の水に10分以上浸漬させる水処理、あるいは、60℃以上の水蒸気または水蒸気含有ガスに30分以上接触させる水蒸気処理等の処理が施されてもよい。
本発明の重縮合触媒の添加時期は、原料のジカルボン酸成分およびジオール成分等とのスラリー調製時、エステル化工程の任意の段階、または、溶融重縮合工程の初期の段階のいずれであってもよい。
【0029】
本発明の重縮合触媒の添加方法は、粉末状であってもよいし、エチレングリコール等の溶媒の溶液またはスラリー状であってもよく、特に限定されない。また、本発明の重縮合触媒は、ポリエステル樹脂の理論収量に対しチタンとして、0.1〜100ppmの範囲となるように添加するのが好ましい。本発明の重縮合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、コバルト化合物、錫化合物等の他の重縮合触媒を共存させて用いてもよい。
【0030】
また、本発明では、さらに、ポリエステルの劣化を防止する助剤、安定剤を用いることができる。助剤、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類、およびリン酸、亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物が挙げられる。
【0031】
上記助剤および安定剤は、原料スラリー調製時やエステル化工程の任意の段階および溶融重縮合工程の初期に供給することができる。助剤、安定剤は、リンの重量として、全重縮合原料に対して通常1〜1000ppmの範囲で用いられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた固有粘度およびハンター色座標b値の測定方法は次のとおりである。
(1)固有粘度
凍結粉砕した樹脂試料0.5gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dLとして、110℃にて20分間で溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)とから固有粘度〔η〕(dL/g)を求めた。
【0033】
(2)ハンター色座標b値
樹脂試料を、内径30mm×深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルに擦り切りで充填し、日本電色工業株式会社製「ZE−200」型測色色差計を用いて、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標bを、反射法により測定セルの向きを90度ずつ回転させて4回測定した値の単純平均値として求めた。b値が低いほど黄味が少なく色相として良好である。
【0034】
実施例1
<触媒の合成>
窒素雰囲気下、テトライソプロピルチタネート(Ti(OPri)4)20gにアセトン90mLを加えて室温で撹拌後、静置した。生成した結晶をろ別して減圧下で乾燥し、9gの結晶を得た。CHN分析、1H−NMR測定により、得られた結晶が[Ti3O(OPri)7(O3C9H15)](前記式(E))であることを確認した。
<ポリエステルの重縮合>
回分式反応槽内に、別途調製したテレフタル酸とエチレングリコールとの無触媒直接エステル化反応により得られたポリエステル低分子量体104gを仕込み、反応槽内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。約1時間後、ポリエステルオリゴマーが溶融したところで、撹拌を開始し、触媒として、前記の触媒の合成で得られた[Ti3O(OPri)7(O3C9H15)]の0.4重量%エチレングリコールスラリーをポリエステル樹脂の理論収量に対しチタンとして5ppmとなるように添加した。続いて、反応槽内を常圧から1.3×102Paに減圧するとともに260℃から280℃まで昇温することを20分かけて行い、その後、温度、圧力を一定に保持し、溶融重縮合反応を行った。減圧開始から60分間重縮合反応を行った後、生成したポリマーを反応槽の底部に設けた抜出口よりストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットし、約100gの固有粘度0.57dL/gの溶融重縮合ポリエステルを製造した。得られたポリエステルの物性値を下記表1に示す。
【0035】
比較例1
<ポリエステルの重縮合>
回分式反応槽内に、別途調製したテレフタル酸とエチレングリコールとの無触媒直接エステル化反応により得られたポリエステル低分子量体104gを仕込み、反応槽内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。約1時間後、ポリエステルオリゴマーが溶融したところで、撹拌を開始し、触媒として、テトライソプロピルチタネートの0.5重量%エチレングリコール溶液をポリエステル樹脂の理論収量に対しチタンとして5ppmとなるように添加した。続いて、反応槽内を常圧から1.3×102Paに減圧するとともに260℃から280℃まで昇温することを20分かけて行い、その後、温度、圧力を一定に保持し、溶融重縮合反応を行った。減圧開始から70分間重縮合反応を行った後、生成したポリマーを反応槽の底部に設けた抜出口よりストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットし、約100gの固有粘度0.56dL/gの溶融重縮合ポリエステルを製造した。得られたポリエステルの物性値を下記表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステル製造用触媒として、1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体を用いることにより、優れた特性を有するポリエステルを容易に製造することが可能である。本発明により得られたポリエステルは、衣料用繊維、産業資材用繊維、各種フィルム、シート、ボトルやエンジニアリングプラスチック等の各種成形物、および塗料や接着剤等への応用が可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル製造用触媒及びそれを用いるポリエステルの製造方法に関するものであり、詳しくは、生産性良くポリエステルを製造するための触媒及びポリエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性および衛生性等に優れ、また比較的安価で軽量であるために、ボトルやフィルム等としての各種包装資材、あるいは繊維等として幅広く用いられてきている。
【0003】
そして、これらポリエステルは、従来、主としてアンチモン化合物を重縮合触媒として製造されているが、製造されたポリエステルは、例えば成形して飲食品容器として用いられる場合、樹脂中に残存したアンチモンが、高温下において容器から溶出して内容飲食品に僅かながら移行する等の問題が懸念されており、その代替が強く望まれている。
これに対して、アンチモン化合物を含有しないポリエステル樹脂の製造方法として、チタン化合物を重縮合触媒として用いる方法が数多く提案されているが、チタン化合物を重縮合触媒とした場合、得られる樹脂が黄味がかった色調となり、又、加熱された後の色調の変化も大きく、熱安定性に欠ける傾向がある。
【0004】
重縮合触媒として用いるチタン化合物としては、例えば以下のようなチタン化合物が提案されている。特開昭58―118824号公報にはチタンテトラブトキシドとジエチレングリコールとを予め反応させて得られる反応生成物を使用することが示されており、特公昭59−46258号公報には、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸とを予め反応させて得られる反応生成物を使用することが示されている。また、特開2000−319370号公報には特定のチタン化合物とリン化合物をモル比1/1〜1/5で予め反応させた反応生成物を使用することが示されている。しかしながら、反応性が不十分であったり、色味の問題があったり、未だ十分に満足すべきレベルに達しているとは言えず、触媒代替のための努力が継続して行われている状況にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、従来のチタン系触媒に起因する色味の問題点を解消しつつ、反応性に優れたポリエステル製造用触媒及びポリエステルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の骨格構造を持つチタン三核錯体を用いてポリエステルを製造した場合には、反応性が良好で、色調が改善されたポリエステルが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体からなるポリエステル製造用触媒、及び芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合させることによりポリエステル樹脂を製造するに際し、ポリエステル製造用触媒として上記触媒を使用するポリエステルの製造方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル製造用触媒は、1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体である。かかるチタン三核錯体としては、下記一般式(1)
【0009】
【化3】
【0010】
(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数のR1、R2およびR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1、R2およびR3の少なくとも一部は互いに結合されて多座配位子を形成していてもよい。)であるのが好ましい。
【0011】
中でも、酸素原子3つを配位原子としてもつ三座配位子が配位した下記一般式(2)のチタン三核錯体が好ましい。
【0012】
【化4】
【0013】
(一般式(2)中、R1およびR2は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数のR1およびR2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1およびR2の少なくとも一部は互いに結合されて多座配位子を形成していてもよい。)
尚、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4であり、アルキル基又はアリール基の置換基としては、一般式(1)又は(2)の構造のチタン三核錯体を形成しうるものであれば特に限定されない。
【0014】
Ti3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体は、チタンアルコキシド、ジハロゲン化ビス(シクロペンタジエニル)チタン、塩化チタンなどのチタン化合物を、必要であればメタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエンなどの芳香族類などの各種溶媒中で、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類や水などの配位子形成性化合物と反応させることにより合成することができる。
【0015】
例えば、本発明のチタン三核錯体として、下記構造式(A)で示される[Ti3(μ3−O)(μ−OCH3)3(OCH3)3(η5−C5H5)3][B(C6H5)4]、下記構造式(B)で示される[Ti3(μ3−O)(μ−OH)3(μ−HCOO)3(η5−C5H5)3]HCOO・2HCOOHが挙げられるが、これらの合成法が記載されるJ.Organomet.Chem. 1986,315,C69−C72、J.Organomet.Chem. 1986,301,41−48に記載の方法に準じて合成することができる
【0016】
【化5】
【0017】
本発明の好ましいチタン三核錯体である上記一般式(1)の錯体は、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要であればアルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族類などの各種溶媒中で、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類や水などの配位子形成性化合物と反応させることにより合成することができる。具体的な例としては、Inorg.Chem.Acta 1995,229,392−405に記載の方法に従って合成することができ、一般式(1)で示される具体的なチタン三核錯体としては、上記文献に記載される下記構造式(C)の[Ti3O](OPri)9(OMe)(一般式(1)において、R1およびR2がイソプロピル基、R3がメチル基の場合に相当)、下記構造式(D)の[Ti3O](OPri)10(一般式(1)において、R1、R2およびR3がイソプロピル基の場合に相当)を挙げることができる。
【0018】
【化6】
【0019】
また、上述のように、本発明のチタン三核錯体は、酸素原子3つを配位原子として持つ三座配位子が配位した上記一般式(2)により表されるチタン三核錯体であることがさらに好ましいが、該錯体は、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要であればアルコール類、ケトン類、エーテル類、芳香族類などの各種溶媒中で、必要であれば三価アルコール類などの三座配位子の存在下、アルコール類、ケトン類、カルボン酸類や水などの配位子形成性化合物と反応させることにより合成することができる。
【0020】
具体的な例としては、New J.Chem. 1999,23,1079−1086に記載の方法に従って合成することができ、一般式(2)で示される具体的なチタン三核錯体としては下記構造式(E)の[Ti3O(OPri)7(O3C9H15)](一般式(2)において、R1およびR2がイソプロピル基、三座配位子がO3C9H15の場合に相当)を挙げることができる。
【0021】
【化7】
【0022】
本発明のポリエステルの製造方法は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合させることによりポリエステルを製造する方法である。
本発明において、その芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、具体的には、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、ならびに、テレフタル酸ジメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル等の、これら芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、およびハロゲン化物等が挙げられ、これらのうち2種以上を成分としてもよい。これらの中で、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましく、特にテレフタル酸、およびそのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0023】
なお、前記芳香族ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分としては、例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、および、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ならびに、これらの脂環式ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸の炭素数1〜4程度のアルキルエステル、およびハロゲン化物等が挙げられる。
【0024】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、および、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、ならびに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらのうち2種以上を成分としてもよい。これらの中で、エチレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましく、特にエチレングリコールが好ましい。
【0025】
さらに、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、および、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分、等の一種又は二種以上が、共重合成分として用いられてもよい。
【0026】
本発明のポリエステルの製造方法は、ポリエステルをエステル化、溶融重縮合および必要ならそれに続く固相重縮合による方法で製造するものであるが、基本的には、ポリエステルの慣用の製造方法による。すなわち、ジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応槽で、必要に応じてエステル化触媒の存在下に、通常240〜280℃、好ましくは250〜270℃の温度、通常0.1〜0.4MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaの圧力下で、攪拌下に1〜10時間でエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、重縮合触媒の存在下に、通常260〜290℃、好ましくは265〜285℃の温度、常圧から漸次減圧として最終的に通常1.3×101〜1.3×103Pa、好ましくは6.7×101〜6.7×102Paの減圧下で、攪拌下に1〜20時間で溶融重縮合させることによりなされ、これらは連続式、または回分式でなされる。
【0027】
また、通常、溶融重縮合により得られた樹脂は、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされるが、さらに、この溶融重縮合後の粒状体を、通常、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、または水蒸気雰囲気下、或いは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常60〜180℃、好ましくは150〜170℃の温度で加熱して樹脂粒状体表面を結晶化させた後、不活性ガス雰囲気下、または/および、1.3×101〜1.3×103Pa程度の減圧下で、通常、樹脂の粘着温度直下〜80℃低い温度、好ましくは粘着温度より10〜60℃低い温度で、粒状体同士が膠着しないように流動等させながら、通常50時間以下の時間で加熱処理して固相重縮合させることが好ましく、この固相重縮合により、さらに高重合度化させ得ると共に、反応副生物のアセトアルデヒドや低分子オリゴマー等を低減化することもできる。
【0028】
また、さらに、前記のような溶融重縮合または固相重縮合により得られた樹脂は、重縮合触媒を失活させる等のために、通常、40℃以上の水に10分以上浸漬させる水処理、あるいは、60℃以上の水蒸気または水蒸気含有ガスに30分以上接触させる水蒸気処理等の処理が施されてもよい。
本発明の重縮合触媒の添加時期は、原料のジカルボン酸成分およびジオール成分等とのスラリー調製時、エステル化工程の任意の段階、または、溶融重縮合工程の初期の段階のいずれであってもよい。
【0029】
本発明の重縮合触媒の添加方法は、粉末状であってもよいし、エチレングリコール等の溶媒の溶液またはスラリー状であってもよく、特に限定されない。また、本発明の重縮合触媒は、ポリエステル樹脂の理論収量に対しチタンとして、0.1〜100ppmの範囲となるように添加するのが好ましい。本発明の重縮合触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、コバルト化合物、錫化合物等の他の重縮合触媒を共存させて用いてもよい。
【0030】
また、本発明では、さらに、ポリエステルの劣化を防止する助剤、安定剤を用いることができる。助剤、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類、およびリン酸、亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物が挙げられる。
【0031】
上記助剤および安定剤は、原料スラリー調製時やエステル化工程の任意の段階および溶融重縮合工程の初期に供給することができる。助剤、安定剤は、リンの重量として、全重縮合原料に対して通常1〜1000ppmの範囲で用いられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた固有粘度およびハンター色座標b値の測定方法は次のとおりである。
(1)固有粘度
凍結粉砕した樹脂試料0.5gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dLとして、110℃にて20分間で溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)とから固有粘度〔η〕(dL/g)を求めた。
【0033】
(2)ハンター色座標b値
樹脂試料を、内径30mm×深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルに擦り切りで充填し、日本電色工業株式会社製「ZE−200」型測色色差計を用いて、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標bを、反射法により測定セルの向きを90度ずつ回転させて4回測定した値の単純平均値として求めた。b値が低いほど黄味が少なく色相として良好である。
【0034】
実施例1
<触媒の合成>
窒素雰囲気下、テトライソプロピルチタネート(Ti(OPri)4)20gにアセトン90mLを加えて室温で撹拌後、静置した。生成した結晶をろ別して減圧下で乾燥し、9gの結晶を得た。CHN分析、1H−NMR測定により、得られた結晶が[Ti3O(OPri)7(O3C9H15)](前記式(E))であることを確認した。
<ポリエステルの重縮合>
回分式反応槽内に、別途調製したテレフタル酸とエチレングリコールとの無触媒直接エステル化反応により得られたポリエステル低分子量体104gを仕込み、反応槽内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。約1時間後、ポリエステルオリゴマーが溶融したところで、撹拌を開始し、触媒として、前記の触媒の合成で得られた[Ti3O(OPri)7(O3C9H15)]の0.4重量%エチレングリコールスラリーをポリエステル樹脂の理論収量に対しチタンとして5ppmとなるように添加した。続いて、反応槽内を常圧から1.3×102Paに減圧するとともに260℃から280℃まで昇温することを20分かけて行い、その後、温度、圧力を一定に保持し、溶融重縮合反応を行った。減圧開始から60分間重縮合反応を行った後、生成したポリマーを反応槽の底部に設けた抜出口よりストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットし、約100gの固有粘度0.57dL/gの溶融重縮合ポリエステルを製造した。得られたポリエステルの物性値を下記表1に示す。
【0035】
比較例1
<ポリエステルの重縮合>
回分式反応槽内に、別途調製したテレフタル酸とエチレングリコールとの無触媒直接エステル化反応により得られたポリエステル低分子量体104gを仕込み、反応槽内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。約1時間後、ポリエステルオリゴマーが溶融したところで、撹拌を開始し、触媒として、テトライソプロピルチタネートの0.5重量%エチレングリコール溶液をポリエステル樹脂の理論収量に対しチタンとして5ppmとなるように添加した。続いて、反応槽内を常圧から1.3×102Paに減圧するとともに260℃から280℃まで昇温することを20分かけて行い、その後、温度、圧力を一定に保持し、溶融重縮合反応を行った。減圧開始から70分間重縮合反応を行った後、生成したポリマーを反応槽の底部に設けた抜出口よりストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットし、約100gの固有粘度0.56dL/gの溶融重縮合ポリエステルを製造した。得られたポリエステルの物性値を下記表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステル製造用触媒として、1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体を用いることにより、優れた特性を有するポリエステルを容易に製造することが可能である。本発明により得られたポリエステルは、衣料用繊維、産業資材用繊維、各種フィルム、シート、ボトルやエンジニアリングプラスチック等の各種成形物、および塗料や接着剤等への応用が可能である。
Claims (4)
- 1個の酸素原子により架橋されている3個のチタン原子からなるTi3(μ3−O)骨格構造を持つチタン三核錯体からなるポリエステル製造用触媒。
- 芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応を経て重縮合させることによりポリエステル樹脂を製造する方法において、ポリエステル製造用触媒として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒を用いるポリエステルの製造方法。
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