JP2004043293A - 繊維状の金属酸化物微粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】これまでに見られない新規な構造を有する金属酸化物微粒子を提供する。
【解決手段】この金属酸化物微粒子は、少なくとも2つの金属酸化物結晶が連結してなる、繊維状の金属酸化物微粒子である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する術分野】
本発明は、新規な構造を有する金属酸化物微粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物微粒子は、従来、ゴム用加硫促進助剤、各種塗料、印刷インキ、絵の具、ガラス、触媒、医薬品、顔料、フェライト等の原料の一つであり、さまざまな機能を付加することができるものとして有効に用いられている。
近年、金属酸化物結晶からなる微粒子の分野においても改良・改質技術および利用技術の進歩が著しく、金属酸化物微粒子そのものを利用した用途、および、金属酸化物微粒子を含有してなる金属酸化物薄膜もしくは金属酸化物微粒子分散塗料などの用途において、新規な機能を有するものや、より優れた作用効果を発揮し得るものが強く望まれ、また、新たな用途分野の出現も強く望まれている。粒子構造自体が今までに無いような新規な金属酸化物微粒子にあっては、そのような技術的効果の期待が特に大きく、種々の分野で有効に利用され得ると考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、これまでに見られない新規な構造を有する金属酸化物微粒子を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、金属酸化物微粒子についての優れた機能や新規な粒子構造および結晶子構造の開発に関し、種々実験・研究を重ねている中で、今までに無い全く新たな粒子構造を有する金属酸化物微粒子を得ることができた。この微粒子は、粒子形状が繊維状を成すように金属酸化物結晶が複数連なった構造を有しているものであり、金属酸化物結晶が単に一時的に2次凝集しているというようなものではなく、物理的に1つの粒子としての構造を有するものである。このような繊維状の2次的構造を有する微粒子は、これまでに無いものであった。
【0005】
すなわち、これまでの金属酸化物微粒子の粒子構造は、個々の結晶子のみからなる球状等の一次粒子である。個々の結晶子が凝集等により一時的に2次粒子化した形態もあり得るが、それはあくまでも集合体であり、単体ではない。
アモルファスの金属酸化物粒子については、複数のコロイド状アモルファスシリカが繊維状に連結してなる繊維状ゾルがあることが知られているが、結晶性の金属酸化物微粒子においては、上記繊維状ゾルのような繊維状2次構造を有しているものは確認されていない。
したがって、本発明にかかる金属酸化物微粒子は、少なくとも2つの金属酸化物結晶が連結してなる、繊維状の金属酸化物微粒子である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる繊維状の金属酸化物微粒子について具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に何ら拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜実施し得る。
本発明にかかる繊維状の金属酸化物微粒子(以下、本発明の金属酸化物微粒子と称することがある。)は、少なくとも2つの金属酸化物結晶が連結してなる微粒子であるが、具体的には、X線解析学的または電子線回折学的に結晶性の金属酸化物結晶子が2つまたはそれ以上、繊維状となるように連結し、単なる凝集などではない物理的に1つの微粒子構造を有しているものである。
【0007】
本発明の金属酸化物微粒子は、上記のように、結晶性の金属酸化物結晶子が2以上連なってなるものであるが、好ましくは4個以上連なっているものである。結晶子数が上記範囲内であることにより、下に述べる機能もしくは作用効果が期待される。
本発明の金属酸化物微粒子は、金属酸化物固有の各種機能、例えば光学的機能、熱的機能、磁気的機能、化学的機能、(光)触媒的機能に優れる。
結晶子が繊維状に連結した微粒子であるために特に、本発明の金属酸化物微粒子、本発明の金属酸化物微粒子を含有するコーティング剤、樹脂組成物、これらから得られる膜は、電気伝導、熱伝導、音波の伝導などの伝導機能に優れるものであり、また、多孔質な膜の形成剤としても有用である。本発明の金属酸化物微粒子はまた、脱落のない耐久性に優れるアンチブロッキング剤としても有用である。
【0008】
本発明において、好ましい金属酸化物微粒子は、結晶子の大きさが20nm以下と微細である場合は、それが1次元的に連鎖した微粒子であるために、可視光の散乱が(少)なく、そのために、透明性をも併せ持つ微粒子である。しかも、ナノサイズ径のネットワーク構造を形成するために高い表面積、酸化物の機能、あるいはさらに高い光透過性をあわせもつ機能性多孔質膜の原料として有用である。
本発明にかかる繊維状の金属酸化物微粒子は、微粒子状、板状などの基材に対する、1個の微粒子あたりの接触面積が、従来の球状または粒状の微粒子に比べて、大きいために、各種基材の表面処理剤としても有用である。特に結晶子径の微細な結晶子からなる繊維状微粒子は、基材の透明性など光学的特性を損なうことなく、密着性に優れる表面処理層を形成しやすい。例えば、高分子フィルムの表面改質や金属微粒子や蛍光体粒子の表面被覆剤などに好ましく用いることができる。
【0009】
本発明の金属酸化物微粒子においては、その構成単位となる金属酸化物は結晶(結晶子)であるが、金属酸化物そのものの種類は特に限定されることはなく、求められる機能や作用効果に応じて適宜に選ばれる。例えば、以下のようである。
高屈折率機能:酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、これらの酸化物に異種金属をドープしてなるもの。
紫外線吸収機能:酸化チタン、酸化第1鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム。
赤外線吸収機能:酸化インジウムにTi、Sn等の4価金属元素またはフッ素を固溶した酸化インジウム系固溶体、酸化第2スズにP、Sb等の5価金属元素もしくはフッ素を固溶した酸化第2スズ系固溶体、酸化亜鉛にAl、In等の3価金属元素を固溶した酸化亜鉛系固溶体。
【0010】
電気伝導機能:上記の酸化インジウム、酸化第1スズ、酸化第2スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅などのn型、p型半導体として知られる酸化物およびこれらにドーパントまたはアクセプターとなる金属元素を固溶した固溶体、亜酸化銅、チタンブラック等の如く安定な酸化物を還元処理して得られるような低原子価金属の酸化物などの電子伝導性酸化物;酸化ジルコニウム等のイオン伝導性酸化物。
熱伝導機能;アルミナ、酸化亜鉛。
磁気機能:マグネタイト、マンガンフェライト、ニッケルフェライトなどの強磁性酸化物。
【0011】
光触媒機能:酸化チタン、酸化亜鉛。
上記金属酸化物結晶の結晶子の大きさは、特に限定はされないが、具体的には、X線回折法で測定できる場合は、ウィルソン法解析による結晶子径Dwが20nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下である。このウィルソン法解析による結晶子径Dwは、通常、X線回折測定で得られる回折線のうち、特定の回折線を選んで、それらの回折線の幅より求められる。通常は、解析に用いる回折線は限定されないが、最も強度が高い回折線、2番目に強度が高い回折線、3番目に強度が高い回折線(以下、3強線という。)を少なくとも選択することが好ましい。選んだそれぞれの回折線の拡がり(幅)を用い、この幅より結晶子径を求める。幅としては、積分幅または半値幅を用いる。本明細書では、幅として積分幅を用い、回折線の拡がり補正並びに結晶子径の算出にはCauchy関数を用いる。結晶子径Dw金属酸化物結晶の結晶子径Dwが、上記範囲内であると、光の透過性に優れる為に透明な微粒子、微粒子を含有する膜となりやすく、また結晶子が小さい為に繊維状粒子と繊維状粒子のネッキングが低温で起こりやすくなる為に低温でネットワーク構造を形成しやすくなる為、前記した多孔質膜が得られやすく、たとえば透明な電気伝導性に優れる膜となる、などといった効果が期待できる。また、上記範囲外であると、上記の効果が低い、または、発現し難くなるおそれがある。
【0012】
上記金属酸化物結晶の結晶子の大きさは、シェラーの式により求められる、各格子面に垂直方向の結晶子径Ds(hkl)も、小さいことが好ましい。具体的には、X線回折測定で得られる回折線のうち、最も強度が高い回折線、2番目に強度が高い回折線、3番目に強度が高い回折線(以上、3強線という。)に関して求められた、それぞれの結晶子径が、いずれも100nm以下であることが好ましい。さらに、3つの結晶子径のうち、少なくとも1つが、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。金属酸化物が酸化亜鉛である場合は、ミラー指数(101)、(002)、(100)または(110)の格子面に帰属される回折線が、通常、3強線として観測される。これらの格子面それぞれに垂直方向の結晶子径Ds(101)、Ds(002)、Ds(100)、Ds(110)がいずれも100nm以下であることが好ましく、Ds(100)またはDs(110)が20nm以下であることがさらに好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。ここで、Ds(hkl)はミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子径を意味する。
【0013】
上記金属酸化物結晶の結晶子形状は、どのような形状の結晶子であっても、本発明の金属酸化物微粒子としての機能、作用効果を発揮することができるため、特に限定されることはなく、例えば、球状、非球状いずれでもよい。非球状においても等方性の結晶形状、異方性の結晶形状いずれであってもよい。異方性の例としては、角柱状、円柱状、針状、板状など種々の形状を好ましく挙げることができる。
本発明の金属酸化物微粒子の形状については、特に限定はされないが、具体的には、繊維状構造の長手方向(伸びる方向)の幅(長さ)を「長径」、繊維状構造の短手方向の幅を繊維の太さとして単に「直径」としたとき、長径と直径との比(長径/直径)が2以上であることが好ましく、より好ましくは5以上、さらにより好ましくは10以上である。上記長径と直径との比が2以上であることによって、繊維状という形態に基づく前述の機能および作用効果を有することができる。また、上記長径と直径との比が2未満である場合、前述の機能・作用効果が不十分となるおそれがある。なお、ここで定義した「長径」と「直径」は微粒子の透過型電子顕微鏡像に基づいて測定できる。通常、微粒子個々の直径は、長手方向の長さをLとしたときに、0.5L(中心)、0.2L、0.8Lの位置の各短径を測定しその3点の平均値とする。
【0014】
本発明の金属酸化物微粒子においては、上記長径の長さは、特に限定はされないが、例えば、10〜1000nmであることが好ましい。繊維状構造の長径が、上記範囲内の場合は、電気伝導性に優れるなどといった繊維状構造特有の優れた効果を得ることができると考えられる。上記長径が10nm未満の場合は、そのような効果を発揮しにくくなる傾向がある。
本発明の金属酸化物微粒子の形状は、全体として直線的な形状であってもよいし、湾曲している形状であってもよいし、S字型の形状であってもよい。
本発明の金属酸化物微粒子の構造については、金属酸化物の結晶子1つ1つが順に連結してなる数珠状の構造であってもよいし、一律に1つ1つの結晶子が繋がっているのではなく少なくとも一部分に複数の結晶子が塊状に連結してなるところがある構造であってもよいが、なかでも前者の構造が、繊維状構造特有の物性を効果的に発揮し得ると考えられるため好ましいといえる。前者の構造であっても、一直線状に延びていることに限らず、分岐していても良いのである。なお、後者の構造の場合、「直径」については、結晶子が塊状に連結してなる部分も含めて、前述した方法により求めることとする。
【0015】
本発明の金属酸化物微粒子は、前述したような従来からの各種用途分野に用いることができ、その繊維状構造特有の各種優れた物性、機能、作用効果を発揮させることができる。
本発明の金属酸化物微粒子を含有する塗料を得る場合は、繊維状の金属酸化物微粒子を各種溶媒成分に分散させてなる分散体にバインダー溶液を直接添加混合する方法や、粉体化した繊維状の金属酸化物微粒子をバインダー溶液に直接添加混合させる等の従来公知の方法がすべて採用し得る。バインダー溶液のバインダー成分としては特に限定されず、例えば(メタ)アクリル系、シリコーン系、メラミン系、ウレタン系、アルキド系、フェノール系、エポキシ系、ポリエステル系、フッ素系等の熱可塑性もしくは熱硬化性合成樹脂、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴムもしくは天然ゴムなどの有機系バインダー;シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド、リン酸塩等の無機系バインダー等が使用できる。また、バインダー溶液の溶媒成分は上記分散体の溶媒成分と相互に使用することができ、目的、バインダーの種類などに応じて適宜選択される。もちろん、塗料中に、その使用目的に応じて、顔料等添加剤を混合してもよい。
【0016】
前記塗料を紫外線吸収膜、赤外線吸収膜、帯電防止膜、高屈折率膜等のコーティング膜の用途に使用する目的の場合、繊維状の金属酸化物微粒子が分散した塗料を作成した後、この塗料を、例えば、フィルム、繊維、PC、アクリル等の樹脂板、ガラスなど紫外線吸収等の目的の機能を付与したい基材に塗布・乾燥するなどにより、可視光域で実質的に透明でありながら紫外線を有効に遮蔽する塗膜等の多種機能膜を形成することができる。
本発明の金属酸化物微粒子が分散含有された繊維、フィルム、樹脂板等の高分子成型体を得る方法としては、これらのマトリックス成分を合成する過程および/または合成した後に、繊維状の金属酸化物微粒子の粉体あるいは分散体の形で添加混合することにより得られる。
【0017】
従来の粒状または球状の金属酸化物微粒子は、これまで、プラスチックフィルムのアンチブロッキング剤に用いられているが、フィルムからの脱落が問題となっている。本発明の金属酸化物微粒子は、形状が繊維状であるため、脱落し難く、しかも、フィルム表面に微細な繊維状の突起を形成することもできるため、脱落の無いアンチブロッキング剤として有用である。また、スペーサーや化粧品用微粒子としても有用である。また、同様の理由で、樹脂の機械的特性、電気的特性などの物性改良フィラーとなる、新規な機能性微粒子樹脂複合材料用原料粒子としても有用である。
【0018】
さらに、本発明の金属酸化物微粒子を含有した複合材料の中で、樹脂等のマトリックス中における金属酸化物微粒子の配向制御を行ってなるコンポジットは、電気や熱の伝導現象において異方性を示すことが期待でき、例えば、層間絶縁膜でありながら膜面の方向には熱伝導性に優れる膜が得られるなど、電子材料用途での価値も高いものである。
本発明の金属酸化物微粒子の製造方法は、特に限定はされないが、具体的には、例えば、金属カルボン酸塩とアルコールとを含む混合物を加熱して反応させる方法において、混合物の加熱を下記一般式(1):
SiX   (1)
(但し、Yは有機官能基、Xは加水分解性基、mおよびnは0〜4の整数であってm+n=4を満足する。)
で表される有機ケイ素化合物の存在下で行うことが、本発明の繊維状の金属酸化物微粒子を容易に得ることができるため好ましい。上記有機ケイ素化合物の詳細については後述する。
【0019】
上記製造方法で用いられる金属カルボン酸塩としては、特に限定はないが、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩を挙げることができる。これらのうちでも、金属飽和カルボン酸塩が好ましく、金属酢酸塩が最も好ましい。金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)についても特に限定はないが、Mが、例えば、4A、5A、6A、7A、8、ランタノイド、1B、2B、3B、4B、5B、6Bの各族に含まれる多原子価金属原子であると好ましく、これらのうちでも、Ti、V、Nb、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Gd、Dy、Tm、Yb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Tl、Pb、Bi、Po等の低原子価金属原子が有用であるものが好ましく、8族金属;Ti、V、Mn、Sn、Sb;Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Gd、Dy、Tm、Yb、Hf等のランタノイド;Mo、W、Cu等がさらに好ましく、低原子価金属酸化物系粒子の製造に好適である。
【0020】
上記製造方法で用いられるアルコールとしては、特に限定はないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、芳香環を有する脂肪族グリコール類(ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等)、脂環式グリコール類(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルおよびモノエステル等の誘導体;ヒドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールおよびこれらのモノエーテルおよびモノエステル;グリセリン等の3価アルコールおよびこれらのモノエーテル、モノエステル、ジエーテルおよびジエステル等を挙げることができる。
【0021】
上記製造方法で用いられるアルコールの配合量については、特に限定はないが、上記金属カルボン酸塩の金属に対してモル比で1〜50倍量とすることが好ましく、2〜20倍量とすることがよりに好ましい。
上記好ましい製造方法は、前述にように、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の存在下で加熱反応を行うことである。
上記一般式(1)において、有機官能基であるYとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種であって置換されていても良い基であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)において、加水分解性基であるXとしては、ハロゲン原子、OR基(但し、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種であって置換されていても良い基である。)およびNH基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基であることが好ましい。上記OR基のRとしては、アルキル基が工業的に入手し易く、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。Rにはエトキシエキトシエチル基等の置換されたアルキル基も含まれる。
上記一般式(1)においては、mは1〜3の整数であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のシリコンアルコキシドや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エボキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;o−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;スチリルエチルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリル系シランカップリング剤;γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0024】
上記製造方法においては、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物と同様に、該有機ケイ素化合物の(部分)加水分解縮合物を好ましく用いることもできる。これら有機ケイ素化合物およびその(部分)加水分解縮合物については、どちらか一方を用いてもよいし併用してもよく、いずれも好ましい。例えば、上記列挙した有機ケイ素化合物を部分加水分解縮合してなる、線状、環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)環状の加水分解縮合物が挙げられる。
上記製造方法においては、上記有機ケイ素化合物およびその(部分)加水分解縮合物(以下、有機ケイ素化合物等と称することがある。)は、上述した混合物中に配合して加熱し反応させるようにするが、その配合量については、原料として用いる金属カルボン酸塩中の金属原子の価数と、製造したい繊維状の金属酸化物微粒子の金属原子の価数により異なるが、通常、配合した有機ケイ素化合物等の中の金属原子の、金属カルボン酸塩中の金属原子に対するモル比が、0.01〜20となるように配合することが好ましい。上記モル比が0.01未満の場合は、長径/直径比の小さいものとなるおそれがあり、20を超える場合は、反応後の液中に有機ケイ素化合物が未反応のまま残存してしまうおそれがある。
【0025】
上記製造方法において、金属カルボン酸塩およびアルコールを含む上記混合物は、さらに反応溶媒等を含んでいてもよい。
反応溶媒の使用量については、特に限定はないが、金属カルボン酸塩とアルコールと反応溶媒との合計量に対して、金属カルボン酸塩の濃度が1〜50重量%となるように、反応溶媒の使用量が設定されると好ましい。これによって、分散性の高い金属酸化物微粒子を経済的に得ることができる。
反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化炭化水素;アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む);エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。
【0026】
上記炭化水素としては、例えば、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、オクタン、ガソリン、キシレン類、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、シクロへキセン、シクロペンタン、ジメチルナフタレン、シメン類、ショウ脳油、スチレン、石油エーテル、石油ベンジン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、テレピン油、灯油、ドデカン、ドデシルベンゼン、トルエン、ナフタレン、ノナン、パインオイル、ピネン、ビフェニル、ブタン、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、ペンタン、メシチレン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、p−メンタン、リグロイン、流動パラフィン等を挙げることができる。
【0027】
上記ハロゲン化炭化水素としては、例えば、アリルクロリド、2−エチルへキシルクロリド、塩化アミル、塩化イソプロピル、塩化エチル、塩化ナフタレン類、塩化ブチル、塩化へキシル、塩化メチル、塩化メチレン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,6−ジクロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、3,5−ジクロロトルエン、ジクロロブタン類、ジクロロプロパン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、ジブロモエタン、ジブロモブタン、ジブロモプロパン、ジブロモベンゼン、ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化イソプロピル、臭化エチル、臭化オクチル、臭化ブチル、臭化プロピル、臭化メチル、臭化ラウリル、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラブロモエタン、テトラメチレンクロロブロミド、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ブロモクロロエタン、1−ブロモ−3−クロロプロパン、ブロモナフタレン、ヘキサクロロエタン、ペンタメチレンクロロブロミド等を挙げることができる。
【0028】
上記アルコール(フェノールや、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物を含む)としては、上記製造方法で用いられるアルコールとして列挙したものと同様のものを好ましく挙げることができる。
上記エーテルおよびアセタールとしては、例えば、アニソール、エチルイソアミルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、クレジルメチルエーテル、酸化プロピレン、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタート、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、1,8−シネオール、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロピフラン、トリオキサン、ビス(2−クロロエチル)エーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、フラン、フルフラール、メチラール、メチル−t−ブチルエーテル、メチルフラン、モノクロロジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0029】
上記ケトンおよびアルデヒドとしては、例えば、アクロレイン、アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトン等を挙げることができる。
【0030】
上記エステルとしては、例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アビエチン酸メチル、安息香酸イソアミル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸s−ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジアミル、シュウ酸ジエミル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸アミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジイソプロピル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸メチル、リン酸エステル類等を挙げることができる。
【0031】
多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物としては、例えば、エチレンカーボナート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシエチレン)誘導体、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシプロピレン)誘導体等を挙げることができる。
【0032】
以下、上記製造方法についてさらに詳しく説明する。
上記製造方法は、前述のごとく、金属カルボン酸塩とを含む混合物を、上記有機ケイ素化合物等の存在下で、加熱して反応させる方法であり、この混合物は、非水溶媒等の反応溶媒(但し、アルコールは除く)をさらに含むものであってもよい。その加熱温度は、通常50℃以上であり、結晶性の高い粒子を得るためには、100℃以上が好ましく、さらに分散性に優れた粒子を得るためには、100〜300℃の範囲であるのが好ましい。
上記製造方法の具体的な操作手順については、特に限定はなく、例えば、1)金属カルボン酸塩とアルコールと有機ケイ素化合物等とを含む混合物を用意し、昇温して加熱する方法、2)加熱されたアルコールに金属カルボン酸塩と有機ケイ素化合物等とを混合する方法、3)加熱されたアルコールと有機ケイ素化合物等に金属カルボン酸塩を混合する方法、4)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを加熱しておき、これにアルコールと有機ケイ素化合物等とを混合する方法、5)反応溶媒と金属カルボン酸塩と有機ケイ素化合物等とを加熱しておき、これにアルコールを混合する方法、6)混合物を構成し得るそれぞれの成分を加熱された状態で混合する方法等を挙げることができる。また、上記一般式(1)の有機ケイ素化合物とその(部分)加水分解縮合物を併用する場合は、これら有機ケイ素化合物等を予め混合した状態のものを配合してもよいし別々で配合してもよく、また、別々に配合する場合はその順序も特に限定はされない。
【0033】
上記製造方法では、前記混合物に含まれる水分が少ない方が、得られる繊維状の金属酸化物微粒子の分散性が高まるために好ましい。具体的には、前記混合物が前記金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
上記加熱反応は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、反応溶媒等の沸点が反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行えばよい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
【0034】
上記製造方法により繊維状の金属酸化物微粒子を調製した後の調製液は、そのまま、あるいは濃縮して溶媒分散体や可塑剤分散体として使用することができるほか、バインダー成分(樹脂成分)を加えて成膜用組成物(塗料組成物)とし、これ基材に塗布して微粒子分散膜を形成したり、あるいは、同様にバインダー成分(樹脂成分)などに含有させて成形用樹脂組成物などとすることができる。また、濃縮乾固や遠心分離で溶媒を除去した後、加熱や乾燥をして微粒子粉体として取り扱うこともできる。
上記製造方法では、得られる繊維状の金属酸化物微粒子が光触媒活性を有する場合は、それを低減させて、耐候性を付与する等の目的で、析出後の繊維状の金属酸化物微粒子に表面処理剤で表面処理することができる。上記表面処理剤としては、たとえば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤;金属アルコキシド類等の有機金属化合物;ジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン化合物;有機ポリマーなどを挙げることができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
本実施例における評価等は次の手法を用いて行った。
<粉末試料の作成法>
得られた分散体中の微粒子を遠心分離操作によって分離した後、メタノールによる洗浄、さらにアセトンによる洗浄を充分行った後、30℃で1日真空乾燥し、さらに80℃にて1日真空乾燥し、揮発成分を完全に除去して微粒子の粉末を得て、これを粉末試料とした。
<結晶性>
粉末X線回折により評価した。
<結晶子径Ds(hkl)>
粉末試料の粉末X線回折測定を行い求めた。K値には1.05を用い、回折線の幅としては積分幅を用いた。
【0036】
Ds(hkl):Scherrer法(Cauchy関数近似による)によって、得られる各回折面(hkl)に対して垂直な方向の結晶子径
<結晶子径Dw>
粉末試料の粉末X線回折測定を行いウィルソン法解析により求めた。ウィルソン法解析は、回折線ピークのうち、各実施例で記載の回折線を選んで解析した。K値には1.0を用い、回折線の拡がり補正並びに結晶子の大きさを、Cauchy関数を用いて求めた。
<微粒子の組成>
微粒子に結合したアセトキシ基などのカルボン酸基量は、粉末試料のイオンクロマト分析により測定した。Si化合物の結合量は、粉末試料の蛍光X線分析により測定した。
<微粒子形状、長径、直径>
反応液を微粒子濃度0.5wt%に希釈したものを試料とし、透過型電子顕微鏡で観察して透過像の形態により判断した。
【0037】
反応液を透過型電子顕微鏡により観察し、その透過像から、粒子20個に関して、各粒子の長径、直径を測定しそれぞれの平均値を、長径、直径とした。
微粒子個々の直径は、長手方向の長さをLとしたときに、0.5L(中心)、0.2L、0.8Lの位置の各短径を測定しその3点の平均値とした。
−実施例1−
撹拌機、添加口、温度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器(容量:1リットル)、および、添加口にボールバルブを介して直結する添加槽、留出ガス出口にニードルバルブを介して直結する冷却器および留出液トラップを備えた耐圧回分式反応装置(A)を用意した。
【0038】
反応装置(A)内に、メタノール200部、酢酸亜鉛無水物55部およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3部からなる混合物(1)を仕込み、反応装置を窒素でパージした。
混合物(1)を撹拌しながら、常温(20℃)から150℃に昇温し、150±1℃で5時間加熱処理した後、冷却することによって、微粒子反応液(1)を得た。
得られた微粒子反応液(1)を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。その結果を図1に示す。図1により、複数の金属酸化物結晶が連結してなる繊維状の金属酸化物微粒子が、多数得られていることがわかる。
【0039】
微粒子反応液(1)から乾燥等により微粒子を粉末試料化して、XRD解析した結果、得られた微粒子は、ZnOの回折パターンを示し、微粒子を構成する結晶子の大きさは、Ds(002)=17nm、Ds(100)=8nm、Dw=8nmであった。なお、Dwは、ミラー指数(100)、(002)、(101)、(102)、(110)、(103)の格子面に帰属される回折線の積分幅を用いて求めた。
得られた微粒子は、アセトキシ基が微粒子に2wt%結合したものであり、また、透過型電子顕微鏡による測定結果から、長径は35nm、直径は6nmであった。
【0040】
−実施例2−
実施例1で使用した反応装置(A)内に、酢酸インジウム42部、酢酸第2スズ1部、n−ブタノール355部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.26部からなる混合物(2)を仕込み、反応装置を窒素でパージした。
実施例1と同様にして、常温から200℃に昇温し、200±1℃で3時間加熱処理した後、冷却することによって、青灰色の微粒子反応液(2)を得た。
得られた微粒子反応液(2)を、透過型電子顕微鏡で観察した結果、複数の金属酸化物結晶が連結してなる繊維状の金属酸化物微粒子が得られていることがわかった。
【0041】
実施例1と同様にして、微粒子反応液(2)から微粒子を粉末試料化して、XRD解析した結果、得られた微粒子は、スズが2%ドープしたIn203結晶であり、微粒子を構成する結晶子の大きさは、Ds(222)=6.8nm、Ds(400)=7.0nm、Ds(440)=5.7nm、Ds(622)=5.2nm、Dw=6nmであった。ここで、Dwは、ミラー指数(222)、(400)、(440)、(622)の格子面に帰属される回折線の積分幅を用いて求めた。また、透過型電子顕微鏡による測定結果から、長径は40nm、直径は6nmであった。
【0042】
微粒子を組成分析した結果、繊維状の金属酸化物微粒子は、Si化合物によりSi/In=0.8mol%の割合で表面処理されたものであった。
−実施例3−
実施例1で使用した反応装置(A)内に、酢酸第2スズ47部、ベンジルアルコール176部、メチルトリメトキシシラン1.4部からなる混合物(3)を仕込み、反応装置を窒素でパージした。
実施例1と同様にして、常温から200℃に昇温し、200±1℃で3時間加熱処理した後、冷却することによって、黄色の微粒子反応液(3)を得た。
【0043】
得られた微粒子反応液(3)を、透過型電子顕微鏡で観察した結果、複数の金属酸化物結晶が連結してなる繊維状の金属酸化物微粒子が得られていることがわかった。
実施例1と同様にして、微粒子反応液(3)から微粒子を粉末試料化して、得られた微粒子をXRD解析した結果、SnOに帰属される弱い回折ピークが検出された。また、透過型電子顕微鏡による測定結果から、長径は40nm、直径は3nmであった。
微粒子を組成分析した結果、繊維状の金属酸化物微粒子は、Si化合物によりSi/In=8mol%の割合で表面処理されてなるものであった。
【0044】
−実施例4〜11−
実施例1において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン3部の代わりに、表1に示す化合物を表1に示す配合量で用い、加熱処理温度を115℃とし、加熱処理時間を3時間とした以外は、実施例1と同様にして、微粒子反応液(4)〜(11)を得た。
得られた微粒子反応液(4)〜(11)を透過型電子顕微鏡で観察したところ、すべてについて、2〜10個程度の金属酸化物結晶が連結してなる、図1と同様の繊維状の金属酸化物微粒子が得られていることがわかった。
【0045】
実施例1と同様にして、微粒子反応液(4)〜(11)から微粒子を粉末試料化し、得られた微粒子をXRD解析したところ、すべてがZnOの回折パターンを示すことが分かった。
微粒子を組成分析した結果、繊維状の金属酸化物微粒子は、表1に示す量でSi化合物により表面処理されたものであることが分かった。
微粒子の長径と直径、結晶子径、微粒子の組成分析の結果を、表1にまとめて示す。なお、Dwは、実施例1と同じ回折線の積分幅を用いて求めた。
【0046】
【表1】
Figure 2004043293
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、これまでに見られない新規な構造を有する金属酸化物微粒子、すなわち、複数の金属酸化物結晶が連結して繊維状構造を有する繊維状の金属酸化物微粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる繊維状の金属酸化物微粒子の一実施例を示すTEM像の写真である。

Claims (2)

  1. 少なくとも2つの金属酸化物結晶が連結してなる、繊維状の金属酸化物微粒子。
  2. 長手方向の幅(長径)が10〜1000nmの範囲であり、前記長手方向の幅の短手方向の幅(直径)に対する比(長径/直径)が2以上である、請求項1に記載の繊維状の金属酸化物微粒子。
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