JP2004043202A - 単結晶引き上げ用ワイヤーロープ、単結晶引き上げ装置及び単結晶の製造方法 - Google Patents
単結晶引き上げ用ワイヤーロープ、単結晶引き上げ装置及び単結晶の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】チョクラルスキー法により育成する単結晶の引き上げに使用するワイヤーロープであって、該ワイヤーロープの製造後、1回目の単結晶の引き上げを行う前に引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることを特徴とする単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。好ましくは、プレテンション加工は、ワイヤーロープの一方の端部を固定して垂直に垂らし、他方の端部から引張荷重を加えて行い、ワイヤーロープの破断荷重の30〜60%の引張荷重を30〜60分間加えて行う。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョクラルスキー法(CZ法)により単結晶を製造する際、育成する単結晶の引き上げに使用するワイヤーロープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
CZ法により、例えば単結晶シリコンを製造する際、育成する単結晶の引上げは従来軸方式で行っていたが、近年の単結晶の大口径化、長尺化に伴い、装置の高さが高くなることから、ワイヤーロープ巻上げ方式が採用されている。
図1は、ワイヤーロープ巻上げ方式の単結晶引き上げ装置の概略を示したものである。この単結晶引上げ装置1では、引上げ用ワイヤーロープ2の先端に種結晶保持具3を取り付け、保持治具3で保持した種結晶(不図示)をルツボ9内のシリコン融液10に接触させるとともに回転させる。そして、ロープ巻取りモータ5によりロープ巻取りドラム6を所定の速度で回転させてロープ2を巻上げる。これにより、種結晶に続いて育成するシリコン単結晶4が引き上げられる。
【0003】
引上げの際、ルツボ9内のシリコン融液10はヒーター7と断熱材8により高温に加熱されており、また、シリコン単結晶は成長に伴って重量を増すことになる。そこで、ワイヤーロープ2は高い耐熱性とある程度の強度を有する必要があり、一般的にステンレス鋼線、タングステン線等の金属線が使用され、細い素線を何本も撚りあわせたストランドを、更に撚り合わせたストランドロープが多く採用されている。
【0004】
ワイヤーロープ2を製造した後、そのまま単結晶引上げ装置に組み込んで使用すると、使用初期にはロープ径の細りとともにロープが大きく伸びる、いわゆる初期伸びが生じることになるが、従来、直径が150mmあるいは200mmのシリコン単結晶では、その重量は各々40kgあるいは100kg程度であり、また、引上げ速度もある程度速く(0.9〜1.2mm/分程度)することができたので、ワイヤーロープ2の初期伸びはほぼ無視できていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近年の大口径化に伴うシリコン単結晶の高重量化(直径300mmでは200kg程度)や引上げ速度の低速化(直径300mmでは0.4〜0.9mm/分程度)により、より高精度に引上げ速度を制御することが必要となってきた。また一方で、育成中に単結晶に取り込まれる欠陥は、引上げ速度Vと固液界面の温度勾配Gの比(V/G)に大きく依存することがわかっており、V/Gを高精度で制御する方法が提案されている(例えば、特開2000−178099参照)。このようにV/Gを制御しながら無欠陥単結晶を育成する場合には、特に引上げ速度を0.4〜0.5mm/分程度内の所定速度にして変動がなく、高精度で精密に制御することが必要となる。
【0006】
このような大口径化に伴うシリコン単結晶の高重量化や引上げ速度の低速化、あるいは特にV/Gの高精度で精密な制御を必要とする条件下では、前述したワイヤーロープの初期伸びが大きな問題となって浮上してきた。すなわち、引上げ速度が遅い条件下ではワイヤーロープの初期伸びによる影響が大きくなり、設定した引上げ速度に比べ実際の引上げ速度は遅くなり、予定した品質の結晶が得られなくなるという問題が生じた。このようなワイヤーロープの使用初期の伸びに対処するために、伸びる量を予測して引上げ速度を制御することになるが、1回目から7回目ぐらいまでの伸び量が変化してしまうので、実際の引上げ速度を一定に保つことが非常に難しかった。特に、V/Gを厳密に制御して単結晶を製造する場合には、このワイヤーロープの伸びが大きな問題となる。
【0007】
従って、新品のワイヤーロープに交換してシリコン単結晶を製造する場合、特に1回目から7回目ぐらいまでの引上げでは、引上げ毎に初期伸びを考慮して引き上げ速度を調整しなければならず、非常に手間がかかるほか、予定した品質のシリコン単結晶を製造するのが難しいという問題があった。
【0008】
そこで本発明では、ワイヤーロープを交換して1回目から7回目ぐらいまでの引上げを行う場合でも、初期伸び(1回目から7回目ぐらいまでに生じる伸びの変化も含む)を考慮した引き上げ速度の調整を必要とせず、予定品質の単結晶を確実に得ることができる単結晶育成用ワイヤーロープを提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、チョクラルスキー法により育成する単結晶の引き上げに使用するワイヤーロープであって、該ワイヤーロープの製造後、1回目から7回目ぐらいの単結晶の引上げを行う前に引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることを特徴とする単結晶引き上げ用ワイヤーロープが提供される(請求項1)。
【0010】
このようなプレテンション加工が行われた単結晶引き上げ用ワイヤーロープは、初期伸びが非常に低減されたものとなる。従って、このワイヤーロープを使用して育成する単結晶を引き上げれば、ワイヤーロープの初期伸び及びロープ径の細りが少なく、特に1回目の単結晶であっても、初期伸びを考慮して引上げ速度を調整することなく、予定した品質の結晶を得ることができる。
【0011】
この場合、前記ワイヤーロープの一方の端部を固定して垂直に垂らし、他方の端部から引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることが好ましい(請求項2)。
このようにプレテンション加工を行ったワイヤーロープであれば、実際の単結晶の引き上げとほぼ同様の条件下で引張荷重が加えられたものとなり、初期伸びが効果的にかつ実際的に除去されたものとなる。
【0012】
また、前記ワイヤーロープの破断荷重の30〜60%の引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることが好ましい(請求項3)。
このようなプレテンション加工を少なくとも破断荷重の30%以上とすれば初期伸びが十分少なくなる一方、破断荷重の60%以下とすれば強度が低下することもない。
【0013】
前記引張荷重を30〜60分間加えてプレテンション加工を行ったものであることが好ましく(請求項4)、また、前記プレテンション加工を2回又は3回行ったものであることが好ましい(請求項5)。
このような時間や回数でプレテンション加工を行ったものであれば、初期伸びが短時間で十分に除去されたものとなり、引上げられた単結晶の品質が所定外となることもないので、コストの上昇を招くこともない。
【0014】
さらに、前記ワイヤーロープは、金属製ストランドロープであることが好ましく(請求項6)、具体的な材質として、ステンレス製、タングステン製、又はモリブデン製であることが好ましい(請求項7)。
このような構造あるいは材質のワイヤーロープにプレテンション加工を行ったものであれば、耐熱性や強度が優れ破断のおそれが少ない上に、初期伸びが低減したものとなるので、高重量の単結晶の引き上げに好適に使用することができる。
【0015】
また、本発明によれば、チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶引き上げ装置であって、少なくとも前記単結晶引き上げ用ワイヤーロープを具備することを特徴とする単結晶引き上げ装置が提供される(請求項8)。
このような単結晶引き上げ装置を用いて単結晶を製造すれば、たとえそのワイヤーロープで1回目の単結晶を引き上げる場合であっても、初期伸びを低減して設定した引上げ速度で単結晶を引き上げることができ、予定した品質の結晶を確実に得ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、チョクラルスキー法により引上げ速度Vと固液界面温度勾配Gの比(V/G)を制御しながら単結晶を製造する方法において、前記単結晶引き上げ装置を用いて単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法が提供される(請求項9)。
特にV/Gを制御しながら高品質の無欠陥結晶を製造する際には引上げ速度の厳密な制御が要求されるが、使用前にプレテンション加工を行ったワイヤーロープを備えた単結晶引き上げ装置を用いれば、初期伸びをほとんどなくすことができ、また、特に1回目から7回目ぐらいまでの引上げにおけるワイヤーロープの伸び量の変化もなくなるので、引上げ速度を高精度に制御することができ、予定した高品質の結晶を確実に得ることができる。
【0017】
さらに本発明によれば、チョクラルスキー法により育成する単結晶をワイヤーロープで引き上げて単結晶を製造する方法において、製造されたワイヤーロープを用いて1回目の単結晶の引き上げを行う前に、該ワイヤーロープに引張荷重を加えてプレテンション加工を行ってから単結晶の引き上げを行うことを特徴とする単結晶の製造方法が提供される(請求項10)。
このようにワイヤーロープに予めプレテンション加工を行ってから単結晶の引き上げを行えば、初期伸びをほとんどなくし設定した引き上げ速度で単結晶を引き上げることができ、予定した品質の単結晶を確実に得ることができる。
【0018】
この場合、前記プレテンション加工を、前記ワイヤーロープの一方の端部を固定して垂直に垂らし、他方の端部から引張荷重を加えて行うことが好ましい(請求項11)。
このようなプレテンション加工であれば、単結晶の引き上げと同様の条件下で引張荷重を加えることになり、初期伸びを効果的に除去することができる。また、特別な引張装置を用いずにプレテンション加工を行うことができるので、コストを低く抑えることができる。
【0019】
また、前記プレテンション加工を、前記ワイヤーロープの破断荷重の30〜60%の引張荷重を加えて行うことが好ましい(請求項12)。
このようなプレテンション加工を行えば、ワイヤーロープの初期伸びを確実に除去することができ、また、ロープの強度の低下を招くこともない。
【0020】
さらに、前記プレテンション加工を、前記引張荷重を30〜60分間加えて行うことが好ましく(請求項13)、前記プレテンション加工を、2回又は3回行うことが好ましい(請求項14)。
このような時間や回数でプレテンション加工を行えば、初期伸びを短時間で十分に除去することができ、引上げられた単結晶の品質が所定外となることもないのでコストの上昇を招くこともない。
【0021】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明者らは、CZ法によりシリコン単結晶を引き上げる際にワイヤーロープの伸び量が引き上げ速度に与える影響を調べるため、まず、荷重とワイヤーの伸び量を測定した。新品のワイヤー、1バッチ使用後のワイヤー、及び7バッチ以上使用したワイヤーを用い、各ワイヤーに引張荷重を加え、荷重の増加とワイヤーの伸び量を測定した。図2は、各ワイヤーに加えた荷重に対するワイヤーの伸び量を示している。いずれのワイヤーも荷重の増加とともに伸び量が増加したが、特に新品のワイヤーでは伸び量が大きく、バッチ回数を重ねるに従い伸び量が小さくなることが分かる。
【0022】
さらに本発明者らは、図2に示したワイヤーの伸び量に基づき、各ワイヤーを使用してシリコン単結晶を育成した場合、伸び量の影響による引き上げ速度の変化を推定した。図3は、シリコン単結晶の長さとワイヤーの伸びから算出した推定引き上げ速度との関係を示している。この図から、特に新品のワイヤーでは結晶の成長に伴い、設定した引き上げ速度よりも大きく低下することが分かる。
【0023】
これらの測定結果などから、ワイヤー交換直後はワイヤーの伸びが大きく、その影響により引き上げ速度が大きく低下してしまうこと、そしてワイヤーの伸びの特性は数回の引き上げに使用した後でなければ安定しないので、特に使用初期のワイヤーを用いて単結晶の引き上げを行う場合には、引き上げ速度を補正する必要があることが分かる。
【0024】
そこで、本発明者らは、CZ法による単結晶の引き上げに使用するワイヤーロープを、ワイヤーロープの製造後、1回目の単結晶の引き上げを行う前に引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものとすれば、使用初期、特に1回目から7回目ぐらいまでに引上げる単結晶であっても、引き上げ速度の補正を一定にできるので、予定した品質の単結晶を引き上げることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の単結晶引き上げ用ワイヤーロープは、ワイヤーロープの製造後、1回目の単結晶の引き上げを行う前に引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものである。プレテンション加工としては、例えば、引張装置を用い、水平にしたロープの両端をつかんで引っ張ることにより行うことができるが、単結晶引き上げ用ワイヤーロープは数メートル程度の長さとすることができるので、ワイヤーロープの一方の端部を固定して垂直に垂らし、他方の端部から引張荷重を加えてプレテンション加工を行うことができる。
【0026】
実際の単結晶の引上げではワイヤーロープで単結晶を吊り下げることになるが、例えば、引上げる単結晶に相当する重りをロープで吊り下げて引張荷重を加えれば、単結晶の引き上げとほぼ同様に引張荷重を加えたことになり、使用初期に生じるワイヤーロープの初期伸び及びロープ径の細りを効果的に除去することができる。また、上記のようなプレテンション加工であれば、引張荷重を加えるための特別な装置を必要としないため、容易に、かつ低コストで行うことができる。特にこのプレテンション加工は、引き上げ装置自体で行うことが可能であり、簡便かつ効果的に行うことができる。
【0027】
ワイヤーロープの構造や材質に関しては、CZ法で単結晶の引き上げに使用できるものであれば特に限定されないが、金属製ストランドロープが好ましく、例えば、図4(A)(B)に示される撚りの構造を有するステンレス、タングステン、又はモリブデン製のストランドロープとすることができる。図4(A)は7本の素線12を撚り合わせたストランド13を7本撚り合わせてさらに太いストランド14とし、これをさらに7本撚り合わせた構造(7×7×7)のワイヤーロープ11を示している。また、図4(B)は19本の素線22を撚り合わせたストランド23を7本撚り合わせてさらに太いストランド24とし、これをさらに4本撚り合わせた構造(4×(7×19))のワイヤーロープ21を示している。このような金属製ストランドロープ11,21は本来、高い耐熱性と強度を有しており、たとえ素線の数本が破断や劣化したとしても、ロープ全体の破断を防止することができる。また、本発明によりロープの完成後、引上げに使用する前にプレテンション加工を行えば、初期伸びが低減した単結晶引き上げ用ワイヤーロープとすることができる。
【0028】
なお、ストランドロープに引張荷重を加えるとロープには撚りを戻す力(負荷)が働くが、ロープの両端を固定して強い引張荷重を加えるとロープを破断してしまうおそれがある。しかし、前記のようにロープを垂らし、他方の端部(下端)に重りを掛けるなどして引張荷重を加えれば、下端は自由端となるのでロープは負荷に従って自転することができる。そのためワイヤーロープには自然な状態で引張荷重が加わることになり、ロープに損傷や破断を招くことなくプレテンション加工することができる。
【0029】
ワイヤーロープに加える荷重は、ロープの構造や引上げる単結晶の重量などにもよるが、ワイヤーロープに破断荷重の30%未満の引張荷重を加えただけでは初期伸びを十分除去することができないおそれがあり、一方、破断荷重の60%を超える引張荷重を加えると、ロープが伸び過ぎてロープ径が細くなり、強度が低下するおそれがある。したがって、プレテンション加工は、ワイヤーロープの破断荷重の30〜60%、特に30〜50%の引張荷重を加えて行うことが好ましい。このようなプレテンション加工を行えば、初期伸びを効果的に除去することができるとともに、ワイヤーロープの強度を低下させることもない。
【0030】
また、引張荷重を加える時間に関しては、短過ぎると初期伸びを除去する効果が少なく、一方、長過ぎても効果は比例せず、30分〜60分程度で飽和する。従って、引張荷重を30〜60分間加えれば初期伸びを確実に除去することができる。なお、ストランドロープを垂直に垂らして重りを下げて引張荷重を加える場合、最初、ロープは負荷により自転するが、自転が終了した後、30〜60分間維持することが好ましい。
【0031】
また、プレテンション加工は1回でも良いが、望ましくは2回又は3回行うことでロープの初期伸びをより確実に除去することができる。すなわち、ワイヤーロープに引張荷重を加えて30分〜60分間保持した後、元に戻す処理を2〜3回行えば、手間や時間もそれほどかけずに初期伸びを確実に除去することができる。
【0032】
そして、上記のようにプレテンション加工を行った単結晶引き上げ用ワイヤーロープを具備した単結晶引き上げ装置を用いれば、特にそのワイヤーロープで1回目の単結晶を引き上げる場合であっても、ロープの初期伸びがほとんどない。従って、初期伸びをほとんど考慮することなく、ロープ本来の荷重に対する伸びを考慮した引き上げ速度に調整すれば良いので、そのように設定した引上げ速度で単結晶を引き上げることができ、予定した品質の結晶を得ることができる。
【0033】
このような引上げ装置は、特に、CZ法により引上げ速度Vと固液界面温度勾配Gの比(V/G)を制御しながら単結晶を製造する必要がある場合に有効である。すなわち、前記したようにV/Gを制御してシリコン単結晶を製造する場合、引上げ速度の厳密な制御が必要であるが、プレテンション加工を行ったワイヤーロープを備えた単結晶引き上げ装置であれば、ワイヤーロープの初期伸びが少ないので、たとえ1回目の引き上げであっても初期伸びをほとんど考慮する必要がない。従って、ロープ本来の荷重に対する伸びを考慮した引上げ速度に調整するように設定した引き上げ速度で高精度に制御することがき、予定した高品質のシリコン単結晶を製造することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
直径200mmのシリコン単結晶を製造する際に通常使用される、直径2.5mm、4×(7×19)の撚り構造(素線太さ:0.07〜0.09mm)を有するタングステン製ストランドロープ(破断強度:450kg、長さ:5m)を用意した。
【0035】
図5に示されるように、ロープの一方の端部を固定して垂直に下ろし、1kg重りを吊り下げた状態でロープの固定端から1000mmの標点距離をとり(図5のA)、以下の場合について標点距離の変化量を測定した。
ロープで150kgの重りを吊り下げて引張荷重(破断強度の33%)を加え、負荷によるロープの自転終了後、その状態を30分間維持した。30分後、荷重を掛けた状態で標点距離を測定したところ、1020mmであり、伸びは20mmであった(図5の▲1▼) 。
荷重を除き、ロープの自転終了後、標点距離を測定したところ、1007.0mmであった(図5の▲2▼)。
【0036】
再度(2回目)、同様にして150kgの荷重を加え、30分後、荷重を掛けた状態で標点距離を測定したところ、1014mmであり、伸びは7mmであった(図5の▲3▼)。
荷重を除き、ロープの自転終了後、標点距離を測定したところ、1007.5mmであった(図5の▲4▼)。
【0037】
(実施例2)
実施例1で使用したものと同様のワイヤーロープを用意し、200kgの荷重(破断強度の44%)を加えるプレテンション加工を3回繰り返したところ、図6に示されるように標点距離が測定された。さらに他の2本のワイヤーロープについても同様にプレテンション加工を行い、標点距離を測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から、最初の伸び(▲1▼−A)は、サンプル(I)で20.5mm、サンプル(II)で22.0mm、サンプル(III)で22.5mmであったが、これらの伸びのうち10.0〜11.5mm(▲2▼−A)が初期伸びと言える。
また、負荷時−除去後の標点の差(▲1▼−▲2▼)あるいは(▲3▼−▲4▼)は、10〜11mmに収まり、これが負荷によるロープ本来の伸びと言える。
実際の単結晶を引上げる際には、成長した単結晶による荷重は破断荷重の30%以下であり、破断荷重の44%となるような単結晶を引上げることはないので、上記のようなプレテンション加工を行っておけば、1回目の引上げから単結晶の荷重による伸びだけとなることがわかる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0041】
例えば、本発明の単結晶引上げ用ワイヤーロープの構造は図4のものに限定されず、他の構造とすることもできる。また、上記実施の形態ではCZ法によりシリコン単結晶を引上げる場合について説明したが、本発明の単結晶引上げ用ワイヤーロープは、シリコン単結晶以外の結晶を引上げる場合にも使用できるし、また、チョクラルスキー法により磁場を印加しながら単結晶を引上げる、いわゆるMCZ法により単結晶を引上げる場合にも適用できることは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
本発明の単結晶引き上げ用ワイヤーロープは、ワイヤーロープの製造後、1回目の単結晶の引き上げを行う前に引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものである。初期伸びがほとんど除去されているので、このワイヤーロープを用いた1回目の引上げを行う場合でも、初期伸びを考慮した引上げ速度の補正が不要であり、大口径の単結晶を引上げる際あるいは特に引上げ速度を高精度で制御することが必要となる無欠陥単結晶を製造する場合であっても、予定品質の単結晶を確実に育成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤーロープ巻上げ方式の単結晶引き上げ装置の概略図である。
【図2】荷重とワイヤー伸び量との関係を示すグラフである。
【図3】結晶成長長さと推定引上げ速度との関係を示すグラフである。
【図4】金属製ストランドロープの構造を示す概略断面図である。
(A) 7×7×7構造
(B) 4×(7×19)構造
【図5】実施例1で行ったプレテンション加工の概略説明図である。
【図6】実施例2で行ったプレテンション加工の概略説明図である。
【符号の説明】
1…単結晶引上げ装置、 2…引上げ用ワイヤーロープ、 3…種結晶保治具、4…単結晶、 5…ロープ巻取りモータ、 6…ロープ巻取りドラム、7…ヒーター、 8…断熱材、 9…ルツボ、 10…シリコン融液、11,21…金属製ストランドロープ、 12,22…素線、13,23…ストランド、 14,24…ストランド。
Claims (14)
- チョクラルスキー法により育成する単結晶の引き上げに使用するワイヤーロープであって、該ワイヤーロープの製造後、1回目の単結晶の引き上げを行う前に引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることを特徴とする単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- 前記ワイヤーロープの一方の端部を固定して垂直に垂らし、他方の端部から引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- 前記ワイヤーロープの破断荷重の30〜60%の引張荷重を加えてプレテンション加工を行ったものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- 前記引張荷重を30〜60分間加えてプレテンション加工を行ったものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- 前記プレテンション加工を2回又は3回行ったものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- 前記ワイヤーロープが、金属製ストランドロープであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- 前記ワイヤーロープが、ステンレス製、タングステン製、又はモリブデン製であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープ。
- チョクラルスキー法により単結晶を育成する単結晶引き上げ装置であって、少なくとも前記請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ用ワイヤーロープを具備することを特徴とする単結晶引き上げ装置。
- チョクラルスキー法により引上げ速度Vと固液界面温度勾配Gの比(V/G)を制御しながら単結晶を製造する方法において、前記請求項8に記載の単結晶引き上げ装置を用いて単結晶を育成することを特徴とする単結晶の製造方法。
- チョクラルスキー法により育成する単結晶をワイヤーロープで引き上げて単結晶を製造する方法において、製造されたワイヤーロープを用いて1回目の単結晶の引き上げを行う前に、該ワイヤーロープに引張荷重を加えてプレテンション加工を行ってから単結晶の引き上げを行うことを特徴とする単結晶の製造方法。
- 前記プレテンション加工を、前記ワイヤーロープの一方の端部を固定して垂直に垂らし、他方の端部から引張荷重を加えて行うことを特徴とする請求項10に記載の単結晶の製造方法。
- 前記プレテンション加工を、前記ワイヤーロープの破断荷重の30〜60%の引張荷重を加えて行うことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の単結晶の製造方法。
- 前記プレテンション加工を、前記引張荷重を30〜60分間加えて行うことを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
- 前記プレテンション加工を、2回又は3回行うことを特徴とする請求項10ないし請求項13のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
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Cited By (2)
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JP2005225741A (ja) * | 2004-02-16 | 2005-08-25 | Kashiwara Machine Mfg Co Ltd | 単結晶製造装置 |
CN103046408A (zh) * | 2012-12-21 | 2013-04-17 | 符志椿 | 钨丝绳制备工艺 |
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2002
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