JP2004040028A - 磁気ランダムアクセスメモリおよび磁気メモリセル - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気ランダムアクセスメモリにおいて、特定の磁気メモリセルの磁化方向を容易に制御できる手段、および磁気メモリセルの磁化を安定させる手段を提供する。
【解決手段】磁気メモリセルの形状を磁性体に特有の反磁界係数を磁性膜の面内で極力一様になる形状例えば円形または楕円形とし、その長軸方向をワード線とセンス線の交差角に挟まれた方向とする。
【効果】選択した磁気メモリセルの磁化方向が制御し易くなるとともに、磁化を安定化させることが可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】磁気メモリセルの形状を磁性体に特有の反磁界係数を磁性膜の面内で極力一様になる形状例えば円形または楕円形とし、その長軸方向をワード線とセンス線の交差角に挟まれた方向とする。
【効果】選択した磁気メモリセルの磁化方向が制御し易くなるとともに、磁化を安定化させることが可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気メモリセルおよび磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ランダムアクセスメモリは、複数のワード線とこのワード線とマトリックス状に配置される複数のセンス線およびこれらのワード線とセンス線の交差領域に配置された磁気メモリセルにより構成されている。
【0003】
磁気メモリセルは、通常、複数の強磁性層、金属層、その他より成り、複数の強磁性層相互の磁化方向状態により磁気メモリセルの電気抵抗が変わる現象(磁気抵抗効果)を利用している。
【0004】
一例として直交状態のワード線とセンス線の交点に磁気メモリセルとしてトンネル効果素子を配置した第一の従来技術が特開2000−315382号に開示されている。
【0005】
上述の第一の従来技術で用いられているトンネル効果素子では第一の強磁性層と第二の強磁性層が絶縁層を介して積層されている。第一の強磁性層の形状は示されていないが、第二の強磁性層の形状は矩形をなしており、その長辺がワード線の方向に平行であることが当該号の図2に示されている。
【0006】
この磁気メモリセルへの情報の記録は、ワード線とセンス線に電流を流し、その電流により発生した合成磁界により2つの強磁性層の磁化方向を互いに平行または逆方向にすることにより行なっている。
【0007】
当該号において、磁化方向そのものについては明示されていないが、第二の強磁性層の長辺方向(ワード線に平行)が磁化容易軸となるように作られていると思われる。
【0008】
磁気メモリセルとしてトンネル効果素子を用いている第二の従来技術として特開平10−004227号が開示されている。
【0009】
この第二の従来技術では、拘束強磁性層(第一の従来技術で第一の強磁性層に相当)とフリー強磁性層(第一の従来技術で第二の強磁性層に相当)の磁化容易軸方向が互いに平行となるように、かつ、下方の配線層(第一の従来技術でワード線に相当)の長手方向に平行となるよう形成されている。
【0010】
フリー強磁性層の形状は長辺方向が8μm、短辺方向が2μmの矩形で、磁化容易軸は長辺方向すなわちワード線方向となっている。
【0011】
情報の記録は上部の配線層(第一の従来技術でセンス線に相当)と下方の配線層に電流を流すことによりその合成磁界でフリー強磁性層の磁化方向を拘束強磁性層の磁化方向と平行または逆平行にすることにより行なっている。
【0012】
上述したように、磁気メモリセルでの情報の記憶はフリー強磁性層の磁化方向が固定強磁性層(第一の従来技術で第一の強磁性層に相当)の磁化方向と平行か逆平行かの状態を区別することにより行なわれる。このため、フリー強磁性層の磁化状態を一様かつ安定に保持することがメモリセルの特性として重要である。
【0013】
磁性体には高橋秀俊・著「電磁気学 9版」(裳華房1966年)171ページで述べられているように、自分自身の磁化状態を弱める反磁界という現象がある。この反磁界の影響を小さくすることすなわち、反磁界の大きさを小さくすることおよび強磁性層の面内で反磁界を一様にすることが強磁性層の磁化状態を安定に保持することに繋がる。
【0014】
第一および第二の従来技術においては、フリー強磁性層の形状は矩形をなしている。矩形の反磁界は一様ではなく、特に四隅において大きくかつその方向も本来の磁化方向から傾いた状態となる。このため、従来技術に示された磁気メモリセルでは磁気的な安定性が得にくいという問題がある。
【0015】
次に、磁気メモリセルに情報を記録する場合につき示す。
上述した従来技術ではワード線およびセンス線に流す電流により生じる磁界でフリー強磁性層の磁化方向を決めることで情報を磁気メモリセルに記録している。
【0016】
電流の作る磁界方向は電流の方向(ここではワード線またはセンス線の方向)に垂直な方向であるため、記録用の電流をワード線よりもセンス線に流す方がフリー強磁性層の磁化方向を設定しやすい。これは、フリー強磁性層の磁化容易軸方向(フリー強磁性層の長辺方向)にセンス線が垂直なためである。しかしこのことは、同一のセンス線に接続された複数の磁気メモリセルの磁化方向を同じ方向にしてしまう恐れがあることを意味している。すなわち、特定の磁気メモリセルだけの磁化方向を制御するのが困難であるという問題がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
磁気ランダムアクセスメモリにおける磁気的な安定性が得にくく、かつ特定の磁気メモリセルだけの磁化方向を制御するのが困難であるという問題を解決することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは、前述の特徴を備えた磁気メモリセルを、ワード線とセンス線の交差領域に配置することを特徴とする。
【0019】
更に、本発明による磁気メモリセルは反磁界による磁化状態におよぼす影響が出にくい形状、例えば強磁性層の平面形状を円形または楕円形とすることを特徴とする。
【0020】
更に、本発明による磁気メモリセルは強磁性層の磁化容易軸方向をその長軸方向とすることを特徴とする。
【0021】
更に、本発明による磁気メモリセルは強磁性層の長軸長さ/短軸長さの比率(以下、長短比率と述べる)を3以上とすることを特徴とする。
【0022】
更に、本発明による磁気メモリセルは磁気抵抗素子としてトンネル効果素子であることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1、図2、および、図3を用いて説明する。
【0024】
図2は本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリの構成を示す図である。メモリブロック101、列デコーダ201、202および行デコーダ301、302により構成されている。
【0025】
メモリブロック101は複数の磁気メモリセル11、12、…、21、22、…より構成されている。磁気メモリセルはワード線211、212、…とセンス線311、312、…の交差領域に配置されている。図2においては、磁気メモリセルの強磁性層長軸方向を理解し易いように楕円で模式的に示している。楕円の長軸方向が磁気メモリセルの強磁性層磁化容易軸方向を示している。
【0026】
デコーダは行デコーダ201、202および列デコーダ301、302より構成されており,これらのデコーダには磁気メモリセルの位置情報を伝えるアドレスバス(図示せず)および情報の記録・再生を制御するコントロールバス(図示せず)が接続されている。
【0027】
図1はメモリブロックの交差領域を示す平面図である。ワード線211とセンス線311が直交しており、その交差領域で磁気メモリセル11を挟み込む構造になっている。磁気メモリセルの強磁性層の平面形状は長軸長さ例えば4.5μm、短軸長さ1.5μmの楕円形である。長軸の方向はワード線211とセンス線311に対しそれぞれ45度の方向である。
【0028】
図3に図1に示した磁気メモリセル11のAA’部における断面構造を示す。基板102上に下部配線層となるワード線211を形成する。このワード線上に磁気メモリセルの電気抵抗変化スタック401を形成し、さらにその上に、上部配線層となるセンス線311を形成する。
【0029】
電気抵抗変化スタック401はワード線211上に、例えば、厚さ30nmの反強磁性層403、厚さ5nmの固定強磁性層404、トンネル絶縁層405、厚さ7nmのフリー強磁性層406が積層されている。
【0030】
反強磁性層403は例えばPt−Mnのような磁性材料を用い、強磁性層404、406には例えばCo−Feのような強磁性材料を用いる。強磁性層404、406はそれぞれCo、Fe、Niからなる強磁性層や酸化物層を複数層積層して構成することもある。
【0031】
トンネル絶縁層405は例えば厚さ1.5nmのAlの薄層を形成後プラズマ酸化させることにより得ることができる。
【0032】
固定強磁性層404とフリー強磁性層406の磁化方向が同一方向のとき電気抵抗変化スタック401の電気抵抗は低い状態である。固定強磁性層404とフリー強磁性層406の磁化方向が互いに逆方向のとき電気抵抗変化スタック401の電気抵抗は高い状態となる。これら2つの状態を制御することにより磁気メモリセルに情報を記憶する。
【0033】
電気抵抗変化スタック401の平面形状は前述した如く長軸長さ4.5μm、短軸長さ1.5μmの楕円形をなしているが、後述するように、フリー強磁性層406以外は必ずしも楕円形である必要は無い。本実施形態例では製造プロセスの手順の都合により反強磁性層403からフリー強磁性層406までをほぼ同一の楕円形状に形成している。
【0034】
電気抵抗変化スタック401の周囲にはセンス線とワード線の絶縁のため、絶縁層402を配設する。絶縁層402には例えばAl2O3を用いる。
【0035】
次に、磁気メモリセル11に情報を書き込む方法について説明する。磁気メモリセル11で交差するワード線211とセンス線311に電流を流すと、これらの線の周囲に磁界が発生する。特に、ワード線211とセンス線311の交差領域ではこれらの線のなす交差角に挟まれた中間方向を向いた合成磁界が発生する。この合成磁界でフリー強磁性層の磁化方向を制御する事により、抵抗変化スタック401の電気抵抗を高・低2つの状態に制御する。
【0036】
図1に示したワード線211とセンス線311に矢印501、502で示した方向に電流を流すと、ワード線211とセンス線311の作る合成磁界によりフリー強磁性層の磁化は矢印503の示す方向を向く。このときワード線211とセンス線311に流す電流は同じ電流値である必要はなく、ワード線211またはセンス線311のいずれかに電流を流したときにはフリー強磁性層406の磁化方向を変えず、両方の線に電流を流したときの合成磁界でフリー強磁性層406の磁化方向を変えられる値で良い。また、固定強磁性層404の磁化方向は反強磁性層403との交換結合で拘束されているが、前述した合成磁界はこれらの固定強磁性層404、反強磁性層403の磁化状態を壊すほどの磁界強さであってはならない。
【0037】
本実施形態では強磁性層の長軸方向とワード線211のなす角度を45度とした場合を述べているが、この角度を30〜60度の範囲において、ワード線211とセンス線311に流す電流値を調整することにより抵抗変化スタック401の磁化状態を制御することができる。
【0038】
また、フリー強磁性層406の磁化方向を矢印503と逆の方向にしたいときには、ワード線211とセンス線311に流す電流の向きを矢印501、502と逆の方向にすれば良い。
【0039】
以上述べたように、磁気メモリセル11への情報の記録はフリー強磁性層406の磁化方向を制御することであり、その磁化状態を安定に保つことが情報の安定保持に繋がる。
【0040】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリにおいては、磁気メモリセルの磁化容易軸方向をワード線とセンス線の交差角に挟まれた方向としているため、選択した磁気メモリセルの磁化方向が制御しやすい。
【0041】
さらに、本実施形態ではフリー強磁性層406の平面形状が反磁界の影響を受けにくい形状、例えば楕円形であるためその反磁界はフリー強磁性層面内で略一様であり、端部における磁区を形成しにくく、フリー強磁性層406の面内で一様な磁化の方向および強さを実現し易いという特徴を持っている。
【0042】
次に長短比率とフリー強磁性層の磁化状態について述べる。平面形状が円形の場合は、楕円形において長軸長さ=短軸長さの特別の場合と考えることができ、この場合は、全方向を長軸方向と考えることができる。
【0043】
楕円の長短比率が大きいほど強磁性層が自分自身の磁化から受ける影響は小さくなる。長短比率が1〜3未満の場合には多磁区構造が見られるケースが多かった。特に2未満では端部のみならず、面内全体におよぶ磁区構造が見られることもあった。3以上の場合では上述の多磁区構造が見られることは殆ど無かった。
【0044】
次に、磁気メモリセルから情報を読み出す方法について説明する。磁気メモリセルに一定電流を流すために、この磁気メモリセルで交差するワード線からセンス線にまたはセンス線からワード線に一定電流が流れるようにする。この状態でワード線とセンス線の間の電位を測定することにより、抵抗変化スタックの抵抗状態を知ることができる。
【0045】
なお、本発明は、実施形態の説明で用いたトンネル効果素子の磁気メモリセルに限定されるものではなく、磁性層の磁化状態を利用したメモリ動作を行なう素子構造の磁気メモリセルにも適用可能である。
【0046】
また、実施形態の説明では、磁気メモリセルの形状として、楕円形状の場合を例にとって述べたが、これは強磁性層の面内での反磁界を略一様にするという観点からのものであり、電磁気学的観点からは厳密な定義における円形または楕円形が最適であるが、本特許ではこれに限定するものではなく、類似の効果が期待できる円形状、あるいは楕円状の形状でも良いことは言うまでもない。
【0047】
さらに、長短比率として3以上としているが、これは上記したように、3以上の場合に多磁区構造がほとんどみられなかったという事実に基づくものではあるが、磁性層の磁気特性、厚さなどにより変わり得るものであり必ずしも長短比率3以上に限定されるものではない。
【0048】
以上述べたように、磁気メモリセルの形状を、磁性体に特有の反磁界係数を磁性膜の面内で極力一様になる形状例えば強磁性層の平面形状を円形または楕円形とすることにより面内での反磁界が一様となり磁化状態を安定化させることが可能となり、また、上記強磁性層の長軸方向を磁化容易軸方向とすることにより、磁化をさらに安定化させることが可能となる。
【0049】
また、上記強磁性層の長短比率を3以上にすることにより、強磁性層の磁化をさらに安定化させることが可能となることが、実験により確かめられている。
【0050】
【発明の効果】
磁気ランダムアクセスメモリにおいて、特定の磁気メモリセルの磁化方向を制御するのを容易とし、かつ磁気的な安定性を増すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリのワード線、センス線交差領域を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリに用いられる磁気メモリセルの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
11・・・・・磁気メモリセル、
12・・・・・磁気メモリセル、
13・・・・・磁気メモリセル、
21・・・・・磁気メモリセル、
22・・・・・磁気メモリセル、
23・・・・・磁気メモリセル、
101・・・・メモリブロック、
102・・・・基板、
201・・・・列デコーダ、
202・・・・列デコーダ、
211・・・・ワード線、
212・・・・ワード線、
213・・・・ワード線、
301・・・・行デコーダ、
302・・・・行デコーダ、
311・・・・センス線、
312・・・・センス線、
313・・・・センス線、
401・・・・電気抵抗変化スタック、
402・・・・絶縁層、
403・・・・反強磁性層、
404・・・・固定強磁性層、
405・・・・トンネル絶縁層、
406・・・・フリー強磁性層、
501・・・・電流の方向を示す矢印、
502・・・・電流の方向を示す矢印、
503・・・・磁化の方向を示す矢印。
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気メモリセルおよび磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ランダムアクセスメモリは、複数のワード線とこのワード線とマトリックス状に配置される複数のセンス線およびこれらのワード線とセンス線の交差領域に配置された磁気メモリセルにより構成されている。
【0003】
磁気メモリセルは、通常、複数の強磁性層、金属層、その他より成り、複数の強磁性層相互の磁化方向状態により磁気メモリセルの電気抵抗が変わる現象(磁気抵抗効果)を利用している。
【0004】
一例として直交状態のワード線とセンス線の交点に磁気メモリセルとしてトンネル効果素子を配置した第一の従来技術が特開2000−315382号に開示されている。
【0005】
上述の第一の従来技術で用いられているトンネル効果素子では第一の強磁性層と第二の強磁性層が絶縁層を介して積層されている。第一の強磁性層の形状は示されていないが、第二の強磁性層の形状は矩形をなしており、その長辺がワード線の方向に平行であることが当該号の図2に示されている。
【0006】
この磁気メモリセルへの情報の記録は、ワード線とセンス線に電流を流し、その電流により発生した合成磁界により2つの強磁性層の磁化方向を互いに平行または逆方向にすることにより行なっている。
【0007】
当該号において、磁化方向そのものについては明示されていないが、第二の強磁性層の長辺方向(ワード線に平行)が磁化容易軸となるように作られていると思われる。
【0008】
磁気メモリセルとしてトンネル効果素子を用いている第二の従来技術として特開平10−004227号が開示されている。
【0009】
この第二の従来技術では、拘束強磁性層(第一の従来技術で第一の強磁性層に相当)とフリー強磁性層(第一の従来技術で第二の強磁性層に相当)の磁化容易軸方向が互いに平行となるように、かつ、下方の配線層(第一の従来技術でワード線に相当)の長手方向に平行となるよう形成されている。
【0010】
フリー強磁性層の形状は長辺方向が8μm、短辺方向が2μmの矩形で、磁化容易軸は長辺方向すなわちワード線方向となっている。
【0011】
情報の記録は上部の配線層(第一の従来技術でセンス線に相当)と下方の配線層に電流を流すことによりその合成磁界でフリー強磁性層の磁化方向を拘束強磁性層の磁化方向と平行または逆平行にすることにより行なっている。
【0012】
上述したように、磁気メモリセルでの情報の記憶はフリー強磁性層の磁化方向が固定強磁性層(第一の従来技術で第一の強磁性層に相当)の磁化方向と平行か逆平行かの状態を区別することにより行なわれる。このため、フリー強磁性層の磁化状態を一様かつ安定に保持することがメモリセルの特性として重要である。
【0013】
磁性体には高橋秀俊・著「電磁気学 9版」(裳華房1966年)171ページで述べられているように、自分自身の磁化状態を弱める反磁界という現象がある。この反磁界の影響を小さくすることすなわち、反磁界の大きさを小さくすることおよび強磁性層の面内で反磁界を一様にすることが強磁性層の磁化状態を安定に保持することに繋がる。
【0014】
第一および第二の従来技術においては、フリー強磁性層の形状は矩形をなしている。矩形の反磁界は一様ではなく、特に四隅において大きくかつその方向も本来の磁化方向から傾いた状態となる。このため、従来技術に示された磁気メモリセルでは磁気的な安定性が得にくいという問題がある。
【0015】
次に、磁気メモリセルに情報を記録する場合につき示す。
上述した従来技術ではワード線およびセンス線に流す電流により生じる磁界でフリー強磁性層の磁化方向を決めることで情報を磁気メモリセルに記録している。
【0016】
電流の作る磁界方向は電流の方向(ここではワード線またはセンス線の方向)に垂直な方向であるため、記録用の電流をワード線よりもセンス線に流す方がフリー強磁性層の磁化方向を設定しやすい。これは、フリー強磁性層の磁化容易軸方向(フリー強磁性層の長辺方向)にセンス線が垂直なためである。しかしこのことは、同一のセンス線に接続された複数の磁気メモリセルの磁化方向を同じ方向にしてしまう恐れがあることを意味している。すなわち、特定の磁気メモリセルだけの磁化方向を制御するのが困難であるという問題がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
磁気ランダムアクセスメモリにおける磁気的な安定性が得にくく、かつ特定の磁気メモリセルだけの磁化方向を制御するのが困難であるという問題を解決することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは、前述の特徴を備えた磁気メモリセルを、ワード線とセンス線の交差領域に配置することを特徴とする。
【0019】
更に、本発明による磁気メモリセルは反磁界による磁化状態におよぼす影響が出にくい形状、例えば強磁性層の平面形状を円形または楕円形とすることを特徴とする。
【0020】
更に、本発明による磁気メモリセルは強磁性層の磁化容易軸方向をその長軸方向とすることを特徴とする。
【0021】
更に、本発明による磁気メモリセルは強磁性層の長軸長さ/短軸長さの比率(以下、長短比率と述べる)を3以上とすることを特徴とする。
【0022】
更に、本発明による磁気メモリセルは磁気抵抗素子としてトンネル効果素子であることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1、図2、および、図3を用いて説明する。
【0024】
図2は本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリの構成を示す図である。メモリブロック101、列デコーダ201、202および行デコーダ301、302により構成されている。
【0025】
メモリブロック101は複数の磁気メモリセル11、12、…、21、22、…より構成されている。磁気メモリセルはワード線211、212、…とセンス線311、312、…の交差領域に配置されている。図2においては、磁気メモリセルの強磁性層長軸方向を理解し易いように楕円で模式的に示している。楕円の長軸方向が磁気メモリセルの強磁性層磁化容易軸方向を示している。
【0026】
デコーダは行デコーダ201、202および列デコーダ301、302より構成されており,これらのデコーダには磁気メモリセルの位置情報を伝えるアドレスバス(図示せず)および情報の記録・再生を制御するコントロールバス(図示せず)が接続されている。
【0027】
図1はメモリブロックの交差領域を示す平面図である。ワード線211とセンス線311が直交しており、その交差領域で磁気メモリセル11を挟み込む構造になっている。磁気メモリセルの強磁性層の平面形状は長軸長さ例えば4.5μm、短軸長さ1.5μmの楕円形である。長軸の方向はワード線211とセンス線311に対しそれぞれ45度の方向である。
【0028】
図3に図1に示した磁気メモリセル11のAA’部における断面構造を示す。基板102上に下部配線層となるワード線211を形成する。このワード線上に磁気メモリセルの電気抵抗変化スタック401を形成し、さらにその上に、上部配線層となるセンス線311を形成する。
【0029】
電気抵抗変化スタック401はワード線211上に、例えば、厚さ30nmの反強磁性層403、厚さ5nmの固定強磁性層404、トンネル絶縁層405、厚さ7nmのフリー強磁性層406が積層されている。
【0030】
反強磁性層403は例えばPt−Mnのような磁性材料を用い、強磁性層404、406には例えばCo−Feのような強磁性材料を用いる。強磁性層404、406はそれぞれCo、Fe、Niからなる強磁性層や酸化物層を複数層積層して構成することもある。
【0031】
トンネル絶縁層405は例えば厚さ1.5nmのAlの薄層を形成後プラズマ酸化させることにより得ることができる。
【0032】
固定強磁性層404とフリー強磁性層406の磁化方向が同一方向のとき電気抵抗変化スタック401の電気抵抗は低い状態である。固定強磁性層404とフリー強磁性層406の磁化方向が互いに逆方向のとき電気抵抗変化スタック401の電気抵抗は高い状態となる。これら2つの状態を制御することにより磁気メモリセルに情報を記憶する。
【0033】
電気抵抗変化スタック401の平面形状は前述した如く長軸長さ4.5μm、短軸長さ1.5μmの楕円形をなしているが、後述するように、フリー強磁性層406以外は必ずしも楕円形である必要は無い。本実施形態例では製造プロセスの手順の都合により反強磁性層403からフリー強磁性層406までをほぼ同一の楕円形状に形成している。
【0034】
電気抵抗変化スタック401の周囲にはセンス線とワード線の絶縁のため、絶縁層402を配設する。絶縁層402には例えばAl2O3を用いる。
【0035】
次に、磁気メモリセル11に情報を書き込む方法について説明する。磁気メモリセル11で交差するワード線211とセンス線311に電流を流すと、これらの線の周囲に磁界が発生する。特に、ワード線211とセンス線311の交差領域ではこれらの線のなす交差角に挟まれた中間方向を向いた合成磁界が発生する。この合成磁界でフリー強磁性層の磁化方向を制御する事により、抵抗変化スタック401の電気抵抗を高・低2つの状態に制御する。
【0036】
図1に示したワード線211とセンス線311に矢印501、502で示した方向に電流を流すと、ワード線211とセンス線311の作る合成磁界によりフリー強磁性層の磁化は矢印503の示す方向を向く。このときワード線211とセンス線311に流す電流は同じ電流値である必要はなく、ワード線211またはセンス線311のいずれかに電流を流したときにはフリー強磁性層406の磁化方向を変えず、両方の線に電流を流したときの合成磁界でフリー強磁性層406の磁化方向を変えられる値で良い。また、固定強磁性層404の磁化方向は反強磁性層403との交換結合で拘束されているが、前述した合成磁界はこれらの固定強磁性層404、反強磁性層403の磁化状態を壊すほどの磁界強さであってはならない。
【0037】
本実施形態では強磁性層の長軸方向とワード線211のなす角度を45度とした場合を述べているが、この角度を30〜60度の範囲において、ワード線211とセンス線311に流す電流値を調整することにより抵抗変化スタック401の磁化状態を制御することができる。
【0038】
また、フリー強磁性層406の磁化方向を矢印503と逆の方向にしたいときには、ワード線211とセンス線311に流す電流の向きを矢印501、502と逆の方向にすれば良い。
【0039】
以上述べたように、磁気メモリセル11への情報の記録はフリー強磁性層406の磁化方向を制御することであり、その磁化状態を安定に保つことが情報の安定保持に繋がる。
【0040】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリにおいては、磁気メモリセルの磁化容易軸方向をワード線とセンス線の交差角に挟まれた方向としているため、選択した磁気メモリセルの磁化方向が制御しやすい。
【0041】
さらに、本実施形態ではフリー強磁性層406の平面形状が反磁界の影響を受けにくい形状、例えば楕円形であるためその反磁界はフリー強磁性層面内で略一様であり、端部における磁区を形成しにくく、フリー強磁性層406の面内で一様な磁化の方向および強さを実現し易いという特徴を持っている。
【0042】
次に長短比率とフリー強磁性層の磁化状態について述べる。平面形状が円形の場合は、楕円形において長軸長さ=短軸長さの特別の場合と考えることができ、この場合は、全方向を長軸方向と考えることができる。
【0043】
楕円の長短比率が大きいほど強磁性層が自分自身の磁化から受ける影響は小さくなる。長短比率が1〜3未満の場合には多磁区構造が見られるケースが多かった。特に2未満では端部のみならず、面内全体におよぶ磁区構造が見られることもあった。3以上の場合では上述の多磁区構造が見られることは殆ど無かった。
【0044】
次に、磁気メモリセルから情報を読み出す方法について説明する。磁気メモリセルに一定電流を流すために、この磁気メモリセルで交差するワード線からセンス線にまたはセンス線からワード線に一定電流が流れるようにする。この状態でワード線とセンス線の間の電位を測定することにより、抵抗変化スタックの抵抗状態を知ることができる。
【0045】
なお、本発明は、実施形態の説明で用いたトンネル効果素子の磁気メモリセルに限定されるものではなく、磁性層の磁化状態を利用したメモリ動作を行なう素子構造の磁気メモリセルにも適用可能である。
【0046】
また、実施形態の説明では、磁気メモリセルの形状として、楕円形状の場合を例にとって述べたが、これは強磁性層の面内での反磁界を略一様にするという観点からのものであり、電磁気学的観点からは厳密な定義における円形または楕円形が最適であるが、本特許ではこれに限定するものではなく、類似の効果が期待できる円形状、あるいは楕円状の形状でも良いことは言うまでもない。
【0047】
さらに、長短比率として3以上としているが、これは上記したように、3以上の場合に多磁区構造がほとんどみられなかったという事実に基づくものではあるが、磁性層の磁気特性、厚さなどにより変わり得るものであり必ずしも長短比率3以上に限定されるものではない。
【0048】
以上述べたように、磁気メモリセルの形状を、磁性体に特有の反磁界係数を磁性膜の面内で極力一様になる形状例えば強磁性層の平面形状を円形または楕円形とすることにより面内での反磁界が一様となり磁化状態を安定化させることが可能となり、また、上記強磁性層の長軸方向を磁化容易軸方向とすることにより、磁化をさらに安定化させることが可能となる。
【0049】
また、上記強磁性層の長短比率を3以上にすることにより、強磁性層の磁化をさらに安定化させることが可能となることが、実験により確かめられている。
【0050】
【発明の効果】
磁気ランダムアクセスメモリにおいて、特定の磁気メモリセルの磁化方向を制御するのを容易とし、かつ磁気的な安定性を増すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリのワード線、センス線交差領域を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態による磁気ランダムアクセスメモリに用いられる磁気メモリセルの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
11・・・・・磁気メモリセル、
12・・・・・磁気メモリセル、
13・・・・・磁気メモリセル、
21・・・・・磁気メモリセル、
22・・・・・磁気メモリセル、
23・・・・・磁気メモリセル、
101・・・・メモリブロック、
102・・・・基板、
201・・・・列デコーダ、
202・・・・列デコーダ、
211・・・・ワード線、
212・・・・ワード線、
213・・・・ワード線、
301・・・・行デコーダ、
302・・・・行デコーダ、
311・・・・センス線、
312・・・・センス線、
313・・・・センス線、
401・・・・電気抵抗変化スタック、
402・・・・絶縁層、
403・・・・反強磁性層、
404・・・・固定強磁性層、
405・・・・トンネル絶縁層、
406・・・・フリー強磁性層、
501・・・・電流の方向を示す矢印、
502・・・・電流の方向を示す矢印、
503・・・・磁化の方向を示す矢印。
Claims (6)
- 複数のワード線と複数のセンス線がマトリックス状に配置されその交差領域に磁気メモリセルを配置してなる磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記磁気メモリセルの磁化容易軸方向を、前記ワード線と前記センス線の交差角に挟まれた方向としたことを特徴とした磁気ランダムアクセスメモリ。
- 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記磁気メモリセルの磁性層の形状を、反磁界による磁化状態の不安定性が減少する形状としたことを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
- 請求項2に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記磁気メモリセルの磁性層の形状が円形または楕円形であることを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
- 請求項3に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、前記磁気メモリの前記磁性層の磁化容易軸方向を楕円の長軸方向としたことを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。
- 請求項4に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて前記磁気メモリセルの長軸長さ/短軸長さの比率が3以上であることを特徴とした磁気ランダムアクセスメモリ。
- 請求項1、2、3、4および請求項5のいずれかに記載の磁気ランダムアクセスメモリに用いられている磁気メモリセルが、第1の磁性層と第2の磁性層と、第1および第2の磁性層の間に絶縁層を介在させてなるトンネル効果素子であることを特徴とする磁気メモリセル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002198489A JP2004040028A (ja) | 2002-07-08 | 2002-07-08 | 磁気ランダムアクセスメモリおよび磁気メモリセル |
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JP2002198489A JP2004040028A (ja) | 2002-07-08 | 2002-07-08 | 磁気ランダムアクセスメモリおよび磁気メモリセル |
Publications (1)
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JP2004040028A true JP2004040028A (ja) | 2004-02-05 |
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ID=31705921
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JP2002198489A Pending JP2004040028A (ja) | 2002-07-08 | 2002-07-08 | 磁気ランダムアクセスメモリおよび磁気メモリセル |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017139446A (ja) * | 2015-12-16 | 2017-08-10 | エイチジーエスティーネザーランドビーブイ | 改善された切り換え効率のためのスピン軌道トルクビット設計 |
-
2002
- 2002-07-08 JP JP2002198489A patent/JP2004040028A/ja active Pending
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