JP2004039836A - 複合圧電体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】破壊しにくい信頼性の高い構造を有する複合圧電体を得ること、及び、このような複合圧電体を安価に製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】柱状の圧電構造体4と、この柱状圧電構造体4の間に形成された誘電体である樹脂5とを有し、圧電構造体4の側面が粗面化されている複合圧電体7を構成することで、破壊しにくい信頼性の高い複合圧電体が得られる。また、圧電体ブロック1をサンドブラストにより加工して粗面化側面を有する柱状圧電構造体4を形成する工程を有する製造方法とすることで、破損しにくい複合圧電体を、安価な製造方法により得ることが可能となる。
【選択図】 図1
【解決手段】柱状の圧電構造体4と、この柱状圧電構造体4の間に形成された誘電体である樹脂5とを有し、圧電構造体4の側面が粗面化されている複合圧電体7を構成することで、破壊しにくい信頼性の高い複合圧電体が得られる。また、圧電体ブロック1をサンドブラストにより加工して粗面化側面を有する柱状圧電構造体4を形成する工程を有する製造方法とすることで、破損しにくい複合圧電体を、安価な製造方法により得ることが可能となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細なセラミック構造を有する複合圧電体、特に1−3型複合圧電体と、その製造方法、これを用いた超音波探触子及び応用装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電体と有機高分子からなる1−3型複合圧電体は、医療診断装置用の超音波探触子用に用いる圧電素子として非常に有効である。医療用の超音波探触子に求められる性能としては、高感度であること、及び周波数特性が広帯域であることがある。これは、高感度であることによりS/Nが良く、体内の深部に渡って鮮明な画像を得ることができるためである。また広帯域であることによって、短パルスの送受信が可能となり、深さ方向の分解能が向上して分解能の高い画像を得ることができるためである。
【0003】
従来、このような超音波探触子には超音波を送受信する圧電体として、圧電セラミックスが用いられている。圧電セラミックスに対して、1−3型複合圧電体は高感度、広帯域を同時に実現しうると言う有利な特性を持っている。しかしながらコストなどの面から実際に製品に採用されている例は多くない。
【0004】
図7に1−3型複合圧電体101の構造の一例を示す。図7に示すように、1−3型複合圧電体は柱状圧電体102が、樹脂103中に規則的、あるいは不規則に配列した構造となったものである。柱状圧電体の材料としては圧電性の高い圧電セラミックス、特にチタン酸ジルコン酸鉛系(PZT)の圧電セラミックスを用いることが高感度化の面から有利である。
【0005】
ところで医療診断装置用の超音波探触子で使用されている超音波の周波数は、主に数MHz帯であり、この周波数帯域に用いる超音波探触子に1−3型複合圧電体を適用するには、直径40〜80μm程度以下の微細な断面を有する柱状の圧電体が多数配列した構造体を形成する必要がある。これは数MHz帯で使用される超音波探触子の圧電体の厚さが約200〜400μmとなるため、複合圧電体の性能を高くするためには、柱状圧電体のアスペクト比(長さサイズ/断面サイズ)を、5以上とすることが必要であるためである。
【0006】
従来、1−3型複合圧電体を製造する方法としては、例えば、いわゆるダイスアンドフィル法が知られている。この方法はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスなどのブロック状の圧電体を基板上に固定し、ダイシング装置を用いて縦横に溝を形成して、多数の柱状の圧電構造体を形成する。こうして形成した圧電構造体の間に有機高分子などを充填・硬化させた後、基板より取り外して1−3型複合圧電体を形成するものである。
【0007】
ダイスアンドフィル法には、バルク状の圧電体の厚さ方向を全て切断してから樹脂を充填・硬化させて切断する方法と、バルク状圧電体の厚さ方向の途中までダイシングしてから樹脂を充填・硬化し、その後切断していない部分を研磨除去して形成する方法がある。
【0008】
また別の複合圧電体の製造方法としては、「IEEE 1997 ULTRASONIC SYMPOSIUM, pp.877−881, 1997」(以下、文献1と記す。)や「IEEE1998 Microelectro Mechanics Systems Workshop, pp223−228 ,1998」(以下文献2と記す。)に示されている方法がある。
【0009】
文献1の製造法は、ディープX線リソグラフィによりアスペクト比の高い空孔を有する樹脂製の型を形成し、この空孔にセラミック粉と樹脂、溶媒からなるセラミックスラリを充填した後、エッチングにより樹脂を除去してからセラミックを焼結させることにより、微細で、高アスペクト比の柱状の圧電構造体を構築するものである。その後、セラミック柱の隙間に有機高分子を充填して複合圧電体を製造する方法である。
【0010】
文献2の製造法は、シリコン基板にディープエッチングによりアスペクト比の高い空孔を形成し、この空孔にセラミックスラリを充填し、シリコン基板にセラミックを充填したまま焼結させ、焼結後にシリコン基板をエッチングにより除去して、微細で、高アスペクト比の柱状の圧電構造体を構築するものである。その後、同様にセラミック柱の隙間に有機高分子を充填して複合圧電体を製造する方法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記従来の方法には以下のような問題があった。
【0012】
ダイスアンドフィル法では多数の切断を行う必要があり時間のかかること、加工の途中で割れや欠けが起こりやすく、歩留まりが悪く、また大面積に向かないため、コストが高くなる。
【0013】
また文献1、2の方法は、いずれも微細化には向いているものの、製造に必要な装置が大型化であることや、製造プロセスが多段階で複雑なこと、また大きな面積の素子を形成することが極めて困難であるか、可能であっても著しく高いコストがかかるという問題があり、実用的でなかった。
【0014】
前記のいずれの工法においても、複合圧電体中の柱状圧電体の側面が滑らかとなる工法であるため、充填する樹脂との密着度が悪く、超音波を収束させるなどのために、複合圧電体に曲面を持たせた構造とすると、セラミックロッドと樹脂の界面で剥離が起こるという問題があった。
【0015】
本発明は、微細で柱状の圧電体が多数配列された構造の複合圧電体において、樹脂と柱状の圧電体の密着度を向上させた複合圧電体を提供し、更に安価に製造することが可能な圧電体の製造法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明は、複数の柱状圧電体と、前記柱状圧電体の間に形成された誘電体と、を有する複合圧電体であって、前記柱状圧電体の側面が粗面化されていることを特徴とする複合圧電体としたものである。
【0017】
これにより、圧電体と、誘電体である樹脂との密着度が向上し、破損しにくい複合圧電体を得ることができる。
【0018】
また、柱状圧電体の太さを、複合圧電体の厚さ方向に対して変化させてもよく、これにより、複合圧電体の厚さ方向について音響インピーダンスに傾斜をつけることが可能となる。
【0019】
また、このような複合圧電体を用いた超音波探触子、あるいはこのような超音波探触子を有する超音波診断装置や非破壊検査装置を構成することで、信頼性の高い超音波探触子や各応用装置を得ることが可能となる。
【0020】
また、本発明は、側面を粗面化した複数の柱状圧電体を有する複合圧電体の製造方法であって、圧電体ブロックをサンドブラストにより加工して粗面化側面を有する柱状圧電体を形成する工程を有する複合圧電体の製造方法としたものである。
【0021】
これにより、破損しにくい複合圧電体を、安価な製造方法により得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明は、(a)圧電体ブロックの一面に、感光性の樹脂層を設ける工程と、(b)パターン形成のためのマスクを介して前記樹脂層に光を照射する工程と、(c)前記樹脂層を現像してパターン形成する工程と、(d)前記圧電体ブロックのパターンを形成した面から深さ方向にサンドブラストにより加工する工程と、(e)加工した前記圧電体ブロックの空隙部分に樹脂を充填し硬化する工程と、(f)前記圧電体ブロックの圧電体部分が柱状となるように、前記圧電体ブロックの上下両面を加工する工程と、(g)加工した両面にそれぞれ電極を設ける工程と、を有する複合圧電体の製造方法としたものである。
【0023】
これにより、破損しにくい複合圧電体を、安価な製造方法により得ることが可能となる。
【0024】
また、(a)〜(e)の工程を、圧電体ブロックの両面から行うことで、アスペクト比の高い複合圧電体を形成することが可能となる。
【0025】
そして、圧電体ブロックは、焼結圧電セラミック、あるいは、圧電セラミックと結合材とを用いて生成された圧電前駆材、のいずれかであることが、好適である。
【0026】
また、このような製造方法により製造した複合圧電体を用いた超音波探触子、あるいはこのような超音波探触子を有する超音波診断装置や非破壊検査装置を構成することで、信頼性の高い超音波探触子や各応用装置を得ることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
以下、図1〜2を参照して本発明による複合圧電体とその製造方法を説明する。はじめに図1(a)に示すように、圧電体ブロック1を用意する。圧電体ブロックとしては、例えば、焼結済みの圧電セラミックスや、あるいは圧電セラミック粉体と結合材と混練りした圧電前駆材を型で成形プレスしたものや、圧電前駆材をシート状に形成した後、積層一体化された物を用いることができる。
【0029】
圧電前駆材を圧電体ブロックとして用いる際には、結合材として使用する樹脂などの量は少ないことが好ましい。これはサンドブラストの際の加工性が容易になることや、加工後の焼結時には過熱により樹脂を除去する工程が必要となるが、この工程が短時間で済むためであり、また大量の樹脂を除去するにはそれだけ高いコストが必要となるためである。
【0030】
このようにして用意した圧電体ブロックに、図1(b)のように圧電体ブロック1の一方の面に、感光性の樹脂材料からなる樹脂層2を形成する。樹脂層2を形成するための材料としては、光反応性のあるポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのいわゆるレジスト材料が用いられる。また樹脂層を形成する方法としては、例えば液状の樹脂をスピンコート法により均一な層を形成した後に硬化させる方法や、あるいは半硬化状の樹脂シートを加圧・接着後、硬化させることによって形成することができる。
【0031】
樹脂層の厚さは、形成する柱状圧電体の径や高さによって任意に選択することができるが、一般にはアスペクト比の高いセラミック柱を形成したい場合には、樹脂層を厚く形成する必要がある。
【0032】
基本的にはサンドブラスト加工は、セラミックなどの硬い材料は脆性破壊により効率的に加工することができるが、樹脂などの柔らかい材料を加工することは極めて困難である。この加工性の違いを利用して、樹脂層のマスクを用いてパターン状の加工を行うものであるが、実際にはブラスト加工の際に樹脂層がわずかに破壊されるため、長時間の加工を行う場合には、樹脂層を厚く形成して圧電ブロックの非加工部を樹脂によって確実に保護することが好ましい。
【0033】
こうして形成した圧電体ブロック1の、樹脂層2を設けた側にマスク3を設置し、リソグラフィを用いて、図1(c)に示すようにマスク3を介して露光した後、現像を行って図1(d)に示すように所定のパターンの樹脂層を形成する。樹脂層のパターンは、形成する複合圧電体の形状および寸法に合わせたものとするが、ここでは図2のように、円状のマスクが規則的に配列したパターンにより、微細な円柱形状の圧電体を有する複合圧電体を形成することとした。図2は図1(d)を、図面の上側から見たものである。
【0034】
図2のように円柱の圧電体が一定の距離をおいて2次元方向に配列されているパターンでは、円柱の直径を2rとすると、円柱の配列ピッチを3r〜4r程度とすることが好ましい。このような距離をおいて円柱を配列させることにより、大きな電気機械結合係数と低い音響インピーダンスを両立することができ、超音波探触子の広帯域化と高感度を実現できる。ここでは円柱の直径を70μmとし、配列のピッチを140μmとした。
【0035】
図1(d)に示すように樹脂パターンを形成した圧電体ブロックに、サンドブラストによる加工を行うことにより、図1(e)のように樹脂層を形成していない部分の圧電体ブロックが選択的に削り取られて、柱状の圧電体が配列した圧電構造体4が形成される。この際サンドブラスト加工された面は、加工粒子が衝突して加工された面であるため、粗面化されている。
【0036】
このようなパターン加工を、50mm角の範囲に行うのに加工用の粒子を噴出するノズルは7mm程度のピッチで走査すれば良く、8回程度の走査で全面の加工が完了し、極めて短時間に加工を完了することができる。仮に同様の加工をダイシングにて行う場合、70μmの溝を140μmのピッチで加工するには、一方向に対して350本以上の加工が必要であり、この方向と垂直方向に切断の必要があるため、全体としては700本以上の加工をする必要があり、極めて時間がかかる他、加工途中での不良も発生しやすい。またダイシングされた面は、基本的には研磨されたような平滑な面であるため、樹脂を充填した際にも、その密着性が悪く、素子としての信頼性も低い。
【0037】
このように加工した圧電体ブロックに圧電前駆材を用いた場合には、次に焼結処理を行う。焼結は900〜1200℃程度まで緩やかに昇温して焼結させることが好ましい。急激に昇温した場合には柱状の圧電体に反りや曲がりなどが発生しやすくなるためである。ただし、圧電体ブロックとして焼結済みの圧電体を用いている場合には必要ない。圧電体ブロックとして用いる材料が極めて硬く、加工が困難である場合には圧電前駆材を用いることが、加工性の点から有効である。
【0038】
こうして形成した圧電構造体4の隙間に誘電体として、図1(f)に示すように樹脂5を充填して、硬化させる。樹脂はエポキシ系の樹脂を用いて、真空引きすることにより、圧電構造体の隙間に十分に充填されるようにした。充填後150℃、2時間にて十分に硬化させた。
【0039】
ここで充填した樹脂は、圧電構造体4と強固に接合されている。これはサンドブラストによって加工された面は、サンドブラスト加工の特性から粗面状になるためであり、いわゆるアンカー効果によって樹脂と圧電体の密着性が高くなり、複合圧電体を曲面状に貼るなどして曲率を持たせて使用する場合にも、圧電構造体と樹脂の密着が強固であるため、剥がれるなどの不良が発生せず、信頼性の高い複合圧電体となる。
【0040】
この後、図1(f)に示す複合圧電体の両面を図1(g)に示すように、圧電体の柱の両端が露出するように切断、あるいは研磨する。こうして形成した柱の露出した複合体ブロックの両面に、めっきやスパッタ等により電極6を設けて複合圧電体7とする。電極はニッケル、銀、金など電気抵抗の低い材料なら何でも良く、ここではニッケルと金メッキを2層形成して電極とした。ニッケルメッキ層として2μm、金メッキ層として0.1μmを形成した。
【0041】
こうして形成した複合圧電体に、分極処理を行う。分極処理は複合圧電体の両面に設けた電極に電圧を印加して圧電性を発現させる処理である。分極の条件は用いる圧電セラミックの種類によって異なるが、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスでは150〜200℃中で、500kV/m程度の電位差を両面の電極に与えることによって行うことができる。具体的には400μmの厚さのものでは200V程度の電位差を与えることで分極処理が完了する。
【0042】
なお、この分極処理は、既に分極してある焼結済みの圧電セラミックスなどを用いて複合圧電体を形成した場合には基本的に必要ない。分極された状態は高温にさらすことによって、いわゆる抜けてしまう状態となるが、一般に圧電セラミックスでは、分極の抜けてしまう温度、いわゆるキュリー点が300℃程度であり、サンドブラストでは分極が抜けてしまう程の熱が発生することは無い。
【0043】
以上のようにサンドブラスト工法を用いて、圧電体ブロックより複合圧電体を形成することで、広範囲を一括で、高速に加工することが可能であるため低コスト化を実現することができる。また複合圧電体の柱状圧電体の側面は、サンドブラストの特性より粗面化されており、充填された樹脂との接着度合いが強く、超音波を収束させるためなどの場合、曲面状に貼り付けて使用する場合にも極めて信頼性が高いという効果が得られる。
【0044】
こうして形成した複合圧電体は、サンドブラスト工法の特徴より柱状圧電体の柱形状が一般的には図3に示すような複合圧電体の厚さ方向で径が変化している形状となる。具体的には、加工が進んでいく複合圧電体の厚さ方向で、柱状圧電体の径が変化するもので、ある程度厚さ方向の径の変化の傾斜を調整することが可能である。圧電体柱の厚さ方向での径の変化は、すなわち厚さ方向での圧電体の体積分率の変化を意味し、複合圧電体の厚さ方向に対して、密度と音速の積で決まる音響インピーダンスに傾斜をつけることが可能となることを意味している。
【0045】
一般に用いられている圧電セラミックの音響インピーダンスは、約30〜35Mrayl程度である。一方で人体などの音響インピーダンスは約1.5Mrayl程度である。このように音響インピーダンスの大きく異なる場合には、圧電体と被検体である人体などの界面での超音波の反射が起こり、S/Nの高い測定をすることが困難となる。
【0046】
通常はこのような場合、圧電体の被検体側に音響整合層と呼ばれる層を設けて、界面での反射を抑えて送受信効率を向上させるが、音響整合層は選択できる材料が限られることや、その厚さを正確にする必要があること、音響整合層の形成工程が増えることなどから、これを用いることはあまり好ましくない。
【0047】
ところが、本実施の形態による複合圧電体の音響インピーダンスは10Mrayl程度であり、整合層を用いない場合にも、人体などの音響インピーダンスの低い媒体中にも、高感度に超音波を伝搬させることが可能なため、高いS/Nの測定をすることが可能である。更には、図3に示すように、音響インピーダンスに傾斜を有する複合圧電体は、柱状の圧電体の細い側を人体などの音響インピーダンスの低い媒体側に位置させて用いることにより、更に界面での反射を抑えて高感度な超音波の送受信をすることが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態では、柱状圧電体の側面をサンドブラストを用いて粗面化したが、表面を粗面化できる方法であれば、サンドブラスト以外の加工方法を用いても同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0049】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、サンドブラスト加工を圧電体ブロックの両面から行うほかは実施の形態1と同様にして複合圧電体を形成した。
【0050】
実施の形態1と同様に、図4(a)に示すように複合圧電体の一方の面をサンドブラスト加工した後、樹脂を充填し、これを図4(b)に示すように、反対側の面に柱を形成した位置と同じ位置に、樹脂パターンを形成する。その後、図4(c)〜(f)のように、実施の形態1と同様の工程により複合圧電体を形成する。
【0051】
このように、圧電体ブロックの両面側からサンドブラスト加工を行って複合圧電体を形成することにより、アスペクト比の高い構造物を構築することに比較的不利なサンドブラスト工法を用いて、アスペクト比の高い複合圧電体を形成することができる。アスペクト比の高い複合圧電体は必要な縦振動へのほかの振動モードの影響が無く、所望の振動のみを利用できるため効率が高い。
【0052】
こうして形成した複合圧電体の断面は、図5に示すように厚さ方向に関して柱状の圧電体の中央で太くなった形状となっている。実施の形態1で述べたように、サンドブラスト加工においては加工の深さ方向に対して柱状の圧電体の径が変化し、ある程度その径の変化の傾斜は調整することができる。比較的音響インピーダンスの大きい金属やセラミックスの非破壊検査や、音響整合層を用いた場合には、実施の形態1のように複合圧電体の音響インピーダンスに傾斜を持たせて、被検体の音響インピーダンスと合わせる必要がない。
【0053】
このような場合には、柱状の圧電体の形状をストレートに近い形として、電気機械結合係数を高くすることが有効である。このような用途における複合圧電体を形成するには、両面からのサンドブラスト工法を用いてストレート形状に近い柱状圧電体を形成すれば良く、これにより電気機械結合係数の大きい複合圧電体を低コストで提供することが可能となるという有利な効果が得られる。また複合圧電体の厚さ方向に関して、中央部をわずかに太くした形状とすることで、柱状の圧電体と樹脂の剥離を防止して、信頼性の高い複合圧電体を提供することができる。
【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1、2で形成した複合圧電体を用いて、図6に示すような構成の超音波探触子を製造した。図6において、7は複合圧電体(電極以外)である。ここでは、実施の形態2で述べた工法により、複合圧電体を形成した。
【0055】
複合圧電体の厚さは約0.4mmであり、厚さ方向の両面に露出している柱状の圧電体の径は70μmであり、中央部での柱状の圧電体の径は約80μmである。また柱状の圧電体の配列間隔は150μmである。このような複合圧電体を形成するのに、あらかじめ分極処理を行った圧電体ブロックを用いていたため、分極処理は行う必要がなかった。こうして得られた複合圧電体の電気機械結合係数は約68%であった。
【0056】
この複合圧電体の上面側の電極6a上に音響整合層8を設け、下面の電極6bにはバッキング材9を設けた。音響整合層8は樹脂にセラミックフィラーを混入し一体化したものであり、バッキング材9は鉄粉を分散させたゴムを用いている。図6に示すように上面の電極6aを接地電極とし、背面側の電極6bを駆動電極として、送受信回路10と接続する。このような超音波探触子により従来の圧電セラミックスを用いた超音波探触子と比較して、約3dB程度の送受信感度向上が確認できた。
【0057】
なお、本実施の形態では、複合圧電体を用いた応用例として超音波探触子を示したが、その応用としてはこれに限るものではなく、その他の超音波センサや、あるいはこれら超音波探触子やセンサを用いて、超音波診断装置、非破壊検査装置などの装置を構成しても、複合圧電体の性能及び信頼性の高さ故に、高感度、高精度のセンサや装置が得られる。
【0058】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、微細な構造を有する性能の高い複合圧電体を低コストで製造できるとともに、曲面形状などにした場合にも強度が強く破損しにくい複合圧電体を提供することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における複合圧電体の製造法を示す工程図
【図2】本発明の一実施の形態における複合圧電体の上面図
【図3】本発明の一実施の形態における複合圧電体の構造の一例を示す断面図
【図4】本発明の一実施の形態における複合圧電体の製造法を示す工程図
【図5】本発明の一実施の形態における複合圧電体の構造の一例を示す断面図
【図6】本発明の一実施の形態における超音波探触子の構成を示す概略図
【図7】従来の複合圧電体の形状の一例を示す概略図
【符号の説明】
1 圧電体ブロック
2 樹脂層
3 マスク
4 圧電構造体
5 樹脂
6 電極
7 複合圧電体
8 音響整合層
9 バッキング材
10 送受信回路
101 複合圧電体
102 柱状圧電体
103 樹脂マトリクス
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細なセラミック構造を有する複合圧電体、特に1−3型複合圧電体と、その製造方法、これを用いた超音波探触子及び応用装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧電体と有機高分子からなる1−3型複合圧電体は、医療診断装置用の超音波探触子用に用いる圧電素子として非常に有効である。医療用の超音波探触子に求められる性能としては、高感度であること、及び周波数特性が広帯域であることがある。これは、高感度であることによりS/Nが良く、体内の深部に渡って鮮明な画像を得ることができるためである。また広帯域であることによって、短パルスの送受信が可能となり、深さ方向の分解能が向上して分解能の高い画像を得ることができるためである。
【0003】
従来、このような超音波探触子には超音波を送受信する圧電体として、圧電セラミックスが用いられている。圧電セラミックスに対して、1−3型複合圧電体は高感度、広帯域を同時に実現しうると言う有利な特性を持っている。しかしながらコストなどの面から実際に製品に採用されている例は多くない。
【0004】
図7に1−3型複合圧電体101の構造の一例を示す。図7に示すように、1−3型複合圧電体は柱状圧電体102が、樹脂103中に規則的、あるいは不規則に配列した構造となったものである。柱状圧電体の材料としては圧電性の高い圧電セラミックス、特にチタン酸ジルコン酸鉛系(PZT)の圧電セラミックスを用いることが高感度化の面から有利である。
【0005】
ところで医療診断装置用の超音波探触子で使用されている超音波の周波数は、主に数MHz帯であり、この周波数帯域に用いる超音波探触子に1−3型複合圧電体を適用するには、直径40〜80μm程度以下の微細な断面を有する柱状の圧電体が多数配列した構造体を形成する必要がある。これは数MHz帯で使用される超音波探触子の圧電体の厚さが約200〜400μmとなるため、複合圧電体の性能を高くするためには、柱状圧電体のアスペクト比(長さサイズ/断面サイズ)を、5以上とすることが必要であるためである。
【0006】
従来、1−3型複合圧電体を製造する方法としては、例えば、いわゆるダイスアンドフィル法が知られている。この方法はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスなどのブロック状の圧電体を基板上に固定し、ダイシング装置を用いて縦横に溝を形成して、多数の柱状の圧電構造体を形成する。こうして形成した圧電構造体の間に有機高分子などを充填・硬化させた後、基板より取り外して1−3型複合圧電体を形成するものである。
【0007】
ダイスアンドフィル法には、バルク状の圧電体の厚さ方向を全て切断してから樹脂を充填・硬化させて切断する方法と、バルク状圧電体の厚さ方向の途中までダイシングしてから樹脂を充填・硬化し、その後切断していない部分を研磨除去して形成する方法がある。
【0008】
また別の複合圧電体の製造方法としては、「IEEE 1997 ULTRASONIC SYMPOSIUM, pp.877−881, 1997」(以下、文献1と記す。)や「IEEE1998 Microelectro Mechanics Systems Workshop, pp223−228 ,1998」(以下文献2と記す。)に示されている方法がある。
【0009】
文献1の製造法は、ディープX線リソグラフィによりアスペクト比の高い空孔を有する樹脂製の型を形成し、この空孔にセラミック粉と樹脂、溶媒からなるセラミックスラリを充填した後、エッチングにより樹脂を除去してからセラミックを焼結させることにより、微細で、高アスペクト比の柱状の圧電構造体を構築するものである。その後、セラミック柱の隙間に有機高分子を充填して複合圧電体を製造する方法である。
【0010】
文献2の製造法は、シリコン基板にディープエッチングによりアスペクト比の高い空孔を形成し、この空孔にセラミックスラリを充填し、シリコン基板にセラミックを充填したまま焼結させ、焼結後にシリコン基板をエッチングにより除去して、微細で、高アスペクト比の柱状の圧電構造体を構築するものである。その後、同様にセラミック柱の隙間に有機高分子を充填して複合圧電体を製造する方法である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記従来の方法には以下のような問題があった。
【0012】
ダイスアンドフィル法では多数の切断を行う必要があり時間のかかること、加工の途中で割れや欠けが起こりやすく、歩留まりが悪く、また大面積に向かないため、コストが高くなる。
【0013】
また文献1、2の方法は、いずれも微細化には向いているものの、製造に必要な装置が大型化であることや、製造プロセスが多段階で複雑なこと、また大きな面積の素子を形成することが極めて困難であるか、可能であっても著しく高いコストがかかるという問題があり、実用的でなかった。
【0014】
前記のいずれの工法においても、複合圧電体中の柱状圧電体の側面が滑らかとなる工法であるため、充填する樹脂との密着度が悪く、超音波を収束させるなどのために、複合圧電体に曲面を持たせた構造とすると、セラミックロッドと樹脂の界面で剥離が起こるという問題があった。
【0015】
本発明は、微細で柱状の圧電体が多数配列された構造の複合圧電体において、樹脂と柱状の圧電体の密着度を向上させた複合圧電体を提供し、更に安価に製造することが可能な圧電体の製造法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明は、複数の柱状圧電体と、前記柱状圧電体の間に形成された誘電体と、を有する複合圧電体であって、前記柱状圧電体の側面が粗面化されていることを特徴とする複合圧電体としたものである。
【0017】
これにより、圧電体と、誘電体である樹脂との密着度が向上し、破損しにくい複合圧電体を得ることができる。
【0018】
また、柱状圧電体の太さを、複合圧電体の厚さ方向に対して変化させてもよく、これにより、複合圧電体の厚さ方向について音響インピーダンスに傾斜をつけることが可能となる。
【0019】
また、このような複合圧電体を用いた超音波探触子、あるいはこのような超音波探触子を有する超音波診断装置や非破壊検査装置を構成することで、信頼性の高い超音波探触子や各応用装置を得ることが可能となる。
【0020】
また、本発明は、側面を粗面化した複数の柱状圧電体を有する複合圧電体の製造方法であって、圧電体ブロックをサンドブラストにより加工して粗面化側面を有する柱状圧電体を形成する工程を有する複合圧電体の製造方法としたものである。
【0021】
これにより、破損しにくい複合圧電体を、安価な製造方法により得ることが可能となる。
【0022】
また、本発明は、(a)圧電体ブロックの一面に、感光性の樹脂層を設ける工程と、(b)パターン形成のためのマスクを介して前記樹脂層に光を照射する工程と、(c)前記樹脂層を現像してパターン形成する工程と、(d)前記圧電体ブロックのパターンを形成した面から深さ方向にサンドブラストにより加工する工程と、(e)加工した前記圧電体ブロックの空隙部分に樹脂を充填し硬化する工程と、(f)前記圧電体ブロックの圧電体部分が柱状となるように、前記圧電体ブロックの上下両面を加工する工程と、(g)加工した両面にそれぞれ電極を設ける工程と、を有する複合圧電体の製造方法としたものである。
【0023】
これにより、破損しにくい複合圧電体を、安価な製造方法により得ることが可能となる。
【0024】
また、(a)〜(e)の工程を、圧電体ブロックの両面から行うことで、アスペクト比の高い複合圧電体を形成することが可能となる。
【0025】
そして、圧電体ブロックは、焼結圧電セラミック、あるいは、圧電セラミックと結合材とを用いて生成された圧電前駆材、のいずれかであることが、好適である。
【0026】
また、このような製造方法により製造した複合圧電体を用いた超音波探触子、あるいはこのような超音波探触子を有する超音波診断装置や非破壊検査装置を構成することで、信頼性の高い超音波探触子や各応用装置を得ることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
以下、図1〜2を参照して本発明による複合圧電体とその製造方法を説明する。はじめに図1(a)に示すように、圧電体ブロック1を用意する。圧電体ブロックとしては、例えば、焼結済みの圧電セラミックスや、あるいは圧電セラミック粉体と結合材と混練りした圧電前駆材を型で成形プレスしたものや、圧電前駆材をシート状に形成した後、積層一体化された物を用いることができる。
【0029】
圧電前駆材を圧電体ブロックとして用いる際には、結合材として使用する樹脂などの量は少ないことが好ましい。これはサンドブラストの際の加工性が容易になることや、加工後の焼結時には過熱により樹脂を除去する工程が必要となるが、この工程が短時間で済むためであり、また大量の樹脂を除去するにはそれだけ高いコストが必要となるためである。
【0030】
このようにして用意した圧電体ブロックに、図1(b)のように圧電体ブロック1の一方の面に、感光性の樹脂材料からなる樹脂層2を形成する。樹脂層2を形成するための材料としては、光反応性のあるポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのいわゆるレジスト材料が用いられる。また樹脂層を形成する方法としては、例えば液状の樹脂をスピンコート法により均一な層を形成した後に硬化させる方法や、あるいは半硬化状の樹脂シートを加圧・接着後、硬化させることによって形成することができる。
【0031】
樹脂層の厚さは、形成する柱状圧電体の径や高さによって任意に選択することができるが、一般にはアスペクト比の高いセラミック柱を形成したい場合には、樹脂層を厚く形成する必要がある。
【0032】
基本的にはサンドブラスト加工は、セラミックなどの硬い材料は脆性破壊により効率的に加工することができるが、樹脂などの柔らかい材料を加工することは極めて困難である。この加工性の違いを利用して、樹脂層のマスクを用いてパターン状の加工を行うものであるが、実際にはブラスト加工の際に樹脂層がわずかに破壊されるため、長時間の加工を行う場合には、樹脂層を厚く形成して圧電ブロックの非加工部を樹脂によって確実に保護することが好ましい。
【0033】
こうして形成した圧電体ブロック1の、樹脂層2を設けた側にマスク3を設置し、リソグラフィを用いて、図1(c)に示すようにマスク3を介して露光した後、現像を行って図1(d)に示すように所定のパターンの樹脂層を形成する。樹脂層のパターンは、形成する複合圧電体の形状および寸法に合わせたものとするが、ここでは図2のように、円状のマスクが規則的に配列したパターンにより、微細な円柱形状の圧電体を有する複合圧電体を形成することとした。図2は図1(d)を、図面の上側から見たものである。
【0034】
図2のように円柱の圧電体が一定の距離をおいて2次元方向に配列されているパターンでは、円柱の直径を2rとすると、円柱の配列ピッチを3r〜4r程度とすることが好ましい。このような距離をおいて円柱を配列させることにより、大きな電気機械結合係数と低い音響インピーダンスを両立することができ、超音波探触子の広帯域化と高感度を実現できる。ここでは円柱の直径を70μmとし、配列のピッチを140μmとした。
【0035】
図1(d)に示すように樹脂パターンを形成した圧電体ブロックに、サンドブラストによる加工を行うことにより、図1(e)のように樹脂層を形成していない部分の圧電体ブロックが選択的に削り取られて、柱状の圧電体が配列した圧電構造体4が形成される。この際サンドブラスト加工された面は、加工粒子が衝突して加工された面であるため、粗面化されている。
【0036】
このようなパターン加工を、50mm角の範囲に行うのに加工用の粒子を噴出するノズルは7mm程度のピッチで走査すれば良く、8回程度の走査で全面の加工が完了し、極めて短時間に加工を完了することができる。仮に同様の加工をダイシングにて行う場合、70μmの溝を140μmのピッチで加工するには、一方向に対して350本以上の加工が必要であり、この方向と垂直方向に切断の必要があるため、全体としては700本以上の加工をする必要があり、極めて時間がかかる他、加工途中での不良も発生しやすい。またダイシングされた面は、基本的には研磨されたような平滑な面であるため、樹脂を充填した際にも、その密着性が悪く、素子としての信頼性も低い。
【0037】
このように加工した圧電体ブロックに圧電前駆材を用いた場合には、次に焼結処理を行う。焼結は900〜1200℃程度まで緩やかに昇温して焼結させることが好ましい。急激に昇温した場合には柱状の圧電体に反りや曲がりなどが発生しやすくなるためである。ただし、圧電体ブロックとして焼結済みの圧電体を用いている場合には必要ない。圧電体ブロックとして用いる材料が極めて硬く、加工が困難である場合には圧電前駆材を用いることが、加工性の点から有効である。
【0038】
こうして形成した圧電構造体4の隙間に誘電体として、図1(f)に示すように樹脂5を充填して、硬化させる。樹脂はエポキシ系の樹脂を用いて、真空引きすることにより、圧電構造体の隙間に十分に充填されるようにした。充填後150℃、2時間にて十分に硬化させた。
【0039】
ここで充填した樹脂は、圧電構造体4と強固に接合されている。これはサンドブラストによって加工された面は、サンドブラスト加工の特性から粗面状になるためであり、いわゆるアンカー効果によって樹脂と圧電体の密着性が高くなり、複合圧電体を曲面状に貼るなどして曲率を持たせて使用する場合にも、圧電構造体と樹脂の密着が強固であるため、剥がれるなどの不良が発生せず、信頼性の高い複合圧電体となる。
【0040】
この後、図1(f)に示す複合圧電体の両面を図1(g)に示すように、圧電体の柱の両端が露出するように切断、あるいは研磨する。こうして形成した柱の露出した複合体ブロックの両面に、めっきやスパッタ等により電極6を設けて複合圧電体7とする。電極はニッケル、銀、金など電気抵抗の低い材料なら何でも良く、ここではニッケルと金メッキを2層形成して電極とした。ニッケルメッキ層として2μm、金メッキ層として0.1μmを形成した。
【0041】
こうして形成した複合圧電体に、分極処理を行う。分極処理は複合圧電体の両面に設けた電極に電圧を印加して圧電性を発現させる処理である。分極の条件は用いる圧電セラミックの種類によって異なるが、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスでは150〜200℃中で、500kV/m程度の電位差を両面の電極に与えることによって行うことができる。具体的には400μmの厚さのものでは200V程度の電位差を与えることで分極処理が完了する。
【0042】
なお、この分極処理は、既に分極してある焼結済みの圧電セラミックスなどを用いて複合圧電体を形成した場合には基本的に必要ない。分極された状態は高温にさらすことによって、いわゆる抜けてしまう状態となるが、一般に圧電セラミックスでは、分極の抜けてしまう温度、いわゆるキュリー点が300℃程度であり、サンドブラストでは分極が抜けてしまう程の熱が発生することは無い。
【0043】
以上のようにサンドブラスト工法を用いて、圧電体ブロックより複合圧電体を形成することで、広範囲を一括で、高速に加工することが可能であるため低コスト化を実現することができる。また複合圧電体の柱状圧電体の側面は、サンドブラストの特性より粗面化されており、充填された樹脂との接着度合いが強く、超音波を収束させるためなどの場合、曲面状に貼り付けて使用する場合にも極めて信頼性が高いという効果が得られる。
【0044】
こうして形成した複合圧電体は、サンドブラスト工法の特徴より柱状圧電体の柱形状が一般的には図3に示すような複合圧電体の厚さ方向で径が変化している形状となる。具体的には、加工が進んでいく複合圧電体の厚さ方向で、柱状圧電体の径が変化するもので、ある程度厚さ方向の径の変化の傾斜を調整することが可能である。圧電体柱の厚さ方向での径の変化は、すなわち厚さ方向での圧電体の体積分率の変化を意味し、複合圧電体の厚さ方向に対して、密度と音速の積で決まる音響インピーダンスに傾斜をつけることが可能となることを意味している。
【0045】
一般に用いられている圧電セラミックの音響インピーダンスは、約30〜35Mrayl程度である。一方で人体などの音響インピーダンスは約1.5Mrayl程度である。このように音響インピーダンスの大きく異なる場合には、圧電体と被検体である人体などの界面での超音波の反射が起こり、S/Nの高い測定をすることが困難となる。
【0046】
通常はこのような場合、圧電体の被検体側に音響整合層と呼ばれる層を設けて、界面での反射を抑えて送受信効率を向上させるが、音響整合層は選択できる材料が限られることや、その厚さを正確にする必要があること、音響整合層の形成工程が増えることなどから、これを用いることはあまり好ましくない。
【0047】
ところが、本実施の形態による複合圧電体の音響インピーダンスは10Mrayl程度であり、整合層を用いない場合にも、人体などの音響インピーダンスの低い媒体中にも、高感度に超音波を伝搬させることが可能なため、高いS/Nの測定をすることが可能である。更には、図3に示すように、音響インピーダンスに傾斜を有する複合圧電体は、柱状の圧電体の細い側を人体などの音響インピーダンスの低い媒体側に位置させて用いることにより、更に界面での反射を抑えて高感度な超音波の送受信をすることが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態では、柱状圧電体の側面をサンドブラストを用いて粗面化したが、表面を粗面化できる方法であれば、サンドブラスト以外の加工方法を用いても同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0049】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、サンドブラスト加工を圧電体ブロックの両面から行うほかは実施の形態1と同様にして複合圧電体を形成した。
【0050】
実施の形態1と同様に、図4(a)に示すように複合圧電体の一方の面をサンドブラスト加工した後、樹脂を充填し、これを図4(b)に示すように、反対側の面に柱を形成した位置と同じ位置に、樹脂パターンを形成する。その後、図4(c)〜(f)のように、実施の形態1と同様の工程により複合圧電体を形成する。
【0051】
このように、圧電体ブロックの両面側からサンドブラスト加工を行って複合圧電体を形成することにより、アスペクト比の高い構造物を構築することに比較的不利なサンドブラスト工法を用いて、アスペクト比の高い複合圧電体を形成することができる。アスペクト比の高い複合圧電体は必要な縦振動へのほかの振動モードの影響が無く、所望の振動のみを利用できるため効率が高い。
【0052】
こうして形成した複合圧電体の断面は、図5に示すように厚さ方向に関して柱状の圧電体の中央で太くなった形状となっている。実施の形態1で述べたように、サンドブラスト加工においては加工の深さ方向に対して柱状の圧電体の径が変化し、ある程度その径の変化の傾斜は調整することができる。比較的音響インピーダンスの大きい金属やセラミックスの非破壊検査や、音響整合層を用いた場合には、実施の形態1のように複合圧電体の音響インピーダンスに傾斜を持たせて、被検体の音響インピーダンスと合わせる必要がない。
【0053】
このような場合には、柱状の圧電体の形状をストレートに近い形として、電気機械結合係数を高くすることが有効である。このような用途における複合圧電体を形成するには、両面からのサンドブラスト工法を用いてストレート形状に近い柱状圧電体を形成すれば良く、これにより電気機械結合係数の大きい複合圧電体を低コストで提供することが可能となるという有利な効果が得られる。また複合圧電体の厚さ方向に関して、中央部をわずかに太くした形状とすることで、柱状の圧電体と樹脂の剥離を防止して、信頼性の高い複合圧電体を提供することができる。
【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1、2で形成した複合圧電体を用いて、図6に示すような構成の超音波探触子を製造した。図6において、7は複合圧電体(電極以外)である。ここでは、実施の形態2で述べた工法により、複合圧電体を形成した。
【0055】
複合圧電体の厚さは約0.4mmであり、厚さ方向の両面に露出している柱状の圧電体の径は70μmであり、中央部での柱状の圧電体の径は約80μmである。また柱状の圧電体の配列間隔は150μmである。このような複合圧電体を形成するのに、あらかじめ分極処理を行った圧電体ブロックを用いていたため、分極処理は行う必要がなかった。こうして得られた複合圧電体の電気機械結合係数は約68%であった。
【0056】
この複合圧電体の上面側の電極6a上に音響整合層8を設け、下面の電極6bにはバッキング材9を設けた。音響整合層8は樹脂にセラミックフィラーを混入し一体化したものであり、バッキング材9は鉄粉を分散させたゴムを用いている。図6に示すように上面の電極6aを接地電極とし、背面側の電極6bを駆動電極として、送受信回路10と接続する。このような超音波探触子により従来の圧電セラミックスを用いた超音波探触子と比較して、約3dB程度の送受信感度向上が確認できた。
【0057】
なお、本実施の形態では、複合圧電体を用いた応用例として超音波探触子を示したが、その応用としてはこれに限るものではなく、その他の超音波センサや、あるいはこれら超音波探触子やセンサを用いて、超音波診断装置、非破壊検査装置などの装置を構成しても、複合圧電体の性能及び信頼性の高さ故に、高感度、高精度のセンサや装置が得られる。
【0058】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、微細な構造を有する性能の高い複合圧電体を低コストで製造できるとともに、曲面形状などにした場合にも強度が強く破損しにくい複合圧電体を提供することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における複合圧電体の製造法を示す工程図
【図2】本発明の一実施の形態における複合圧電体の上面図
【図3】本発明の一実施の形態における複合圧電体の構造の一例を示す断面図
【図4】本発明の一実施の形態における複合圧電体の製造法を示す工程図
【図5】本発明の一実施の形態における複合圧電体の構造の一例を示す断面図
【図6】本発明の一実施の形態における超音波探触子の構成を示す概略図
【図7】従来の複合圧電体の形状の一例を示す概略図
【符号の説明】
1 圧電体ブロック
2 樹脂層
3 マスク
4 圧電構造体
5 樹脂
6 電極
7 複合圧電体
8 音響整合層
9 バッキング材
10 送受信回路
101 複合圧電体
102 柱状圧電体
103 樹脂マトリクス
Claims (13)
- 複数の柱状圧電体と、前記柱状圧電体の間に形成された誘電体と、を有する複合圧電体であって、前記柱状圧電体の側面が粗面化されていることを特徴とする複合圧電体。
- 柱状圧電体の太さが、複合圧電体の厚さ方向に対して変化していることを特徴とする請求項1記載の複合圧電体。
- 請求項1または2記載の複合圧電体を有する超音波探触子。
- 請求項3記載の超音波探触子を有する超音波診断装置。
- 請求項3記載の超音波探触子を有する非破壊検査装置。
- 側面を粗面化した複数の柱状圧電体を有する複合圧電体の製造方法であって、圧電体ブロックをサンドブラストにより加工して粗面化側面を有する柱状圧電体を形成する工程を有する複合圧電体の製造方法。
- (a)圧電体ブロックの一面に、感光性の樹脂層を設ける工程と、(b)パターン形成のためのマスクを介して前記樹脂層に光を照射する工程と、(c)前記樹脂層を現像してパターン形成する工程と、(d)前記圧電体ブロックのパターンを形成した面から深さ方向にサンドブラストにより加工する工程と、(e)加工した前記圧電体ブロックの空隙部分に樹脂を充填し硬化する工程と、(f)前記圧電体ブロックの圧電体部分が柱状となるように、前記圧電体ブロックの上下両面を加工する工程と、(g)加工した両面にそれぞれ電極を設ける工程と、を有する複合圧電体の製造方法。
- (a)〜(e)の工程を、圧電体ブロックの両面から行うことを特徴とする請求項7に記載の複合圧電体の製造方法。
- 圧電体ブロックは、焼結圧電セラミックであることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の複合圧電体の製造方法。
- 圧電体ブロックは、圧電セラミックと結合材とを用いて生成された圧電前駆材であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の複合圧電体の製造方法。
- 請求項6から10のいずれかに記載の複合圧電体の製造方法を用いて製造された複合圧電体を有する超音波探触子。
- 請求項11記載の超音波探触子を有する超音波診断装置。
- 請求項11記載の超音波探触子を有する非破壊検査装置。
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