JP2004039455A - 導通孔付き金属蒸着導電性薄膜及びその製造方法並びに用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜及びその製造方法並びにかかる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いたフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】表面に多数の微細な突起を有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールを用いて、(a) 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着した後、金属蒸着面が第一ロールと当接するように各ロール間に通過させるか、又は(b) 樹脂フィルムが第一ロールと当接するように各ロール間に通過させて貫通孔を形成した後、少なくとも一方の面に金属を蒸着することにより得られる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜であって、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔が形成された導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
【選択図】 なし
【解決手段】表面に多数の微細な突起を有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールを用いて、(a) 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着した後、金属蒸着面が第一ロールと当接するように各ロール間に通過させるか、又は(b) 樹脂フィルムが第一ロールと当接するように各ロール間に通過させて貫通孔を形成した後、少なくとも一方の面に金属を蒸着することにより得られる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜であって、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔が形成された導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜及びその製造方法、ならびにかかる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いたフレキシブルプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、携帯端末、携帯電話、小型ビデオ機器、小型電子カメラ等の電子機器や、コンピュータの記憶媒体であるハードディスクやCD−ROM等に広く用いられている。FPCは、通常ポリイミド、ポリエステル等の樹脂フィルム基材に銅箔をラミネートし,接着剤あるいは加熱加圧により一体化して形成される。
【0003】
FPCは、上記電子機器や記憶媒体の駆動部等の可動部分への配線が必要とされる場所に広く使用され、100万回以上の屈曲が繰り返される。近年の装置の小型化や高水準化に伴い、屈曲性への要求はより高度化している。しかし現状の銅箔の厚みは薄くても1μm程度が限界であるため、大きく屈曲した場合に銅箔が折れ曲がってしまい、元の形状に戻らないため屈曲性に限界があった。さらに加工性に優れるとともに軽量化、薄膜化、小型化、低価格化等も望まれている。
【0004】
FPCのような樹脂フィルム基材上に金属層を有する薄膜の屈曲性を向上し、かつ軽量化及び薄膜化を図るには、樹脂フィルム基材に導電性金属を蒸着させた金属蒸着導電性薄膜にするのが好ましく、金属蒸着層を有するFPCが種々提案されている。特に両面に金属層を有するFPCの場合、両面の金属層を導通するための導通孔を有するのが好ましく、例えば特開平10−51135号は、絶縁性フィルムの一面に蒸着等により導体層を設けた後、所定の位置にスルーホールを設け、次いで他面に導電層を設けることによりスルーホール付きフレキシブルプリント配線板用両面基板を製造する方法を開示している。しかし特開平10−51135号で具体的に記載されているスルーホール形成方法は、レーザ加工によるものであり、設備コストが高いという問題がある。また厚み方向に高い導電性が必要な薄膜を製造する場合(例えば銅箔と同程度の導電性)、スルーホールを多数設ける必要があるが、レーザ加工では一度に多数のスルーホールを形成するのは困難であった。また特開平10−51135号はスルーホール形成方法として、機械加工を用いても良いと記載しているものの、その具体的な方法を記載していない。従来機械加工によるスルーホールの形成はドリルを用いるものであり、やはり一度に多数のスルーホールを形成するのは困難であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜及びその製造方法並びにかかる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いたフレキシブルプリント配線板を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を得るには、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を設けるとともに、厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を形成すればよく、そのためには表面に多数の微細な突起を有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールを用いて、(a) 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着した後、金属蒸着面が第一ロールと当接するように各ロール間に通過させるか、又は(b) 樹脂フィルムが第一ロールと当接するように各ロール間に通過させて貫通孔を形成した後、少なくとも一方の面に金属を蒸着すればよいことを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、前記薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有することを特徴とする。
【0008】
金属蒸着層は表裏両面に形成されているとともに、導通孔により各金属蒸着層が導通接続されているのが好ましい。金属蒸着層は銅又はアルミニウムからなるのが好ましい。金属蒸着層は薄膜の表裏両面に50 〜500 nmの厚みで設けられているのが好ましい。
【0009】
導通孔は一様に形成されているのが好ましい。導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であるのが好ましい。導通孔の貫通孔径は0.5 〜10μmであるのが好ましい。
【0010】
樹脂フィルムは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのが好ましい。樹脂フィルムの厚みは1〜20μmであるのが好ましい。
【0011】
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の第一の製造方法は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着して金属蒸着フィルムを形成し、次いで高硬度の微粒子を表面に多数有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールとの間に、前記金属蒸着フィルムをその金属蒸着面が前記第一ロールと当接するように通過させるとともに、前記各ロール間を通過する前記金属蒸着フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、前記第一ロール表面の多数の微粒子の角部で前記金属蒸着フィルムの厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を形成することを特徴とする。
【0012】
第一の製造方法において、樹脂フィルムの表裏両面に金属を蒸着して金属蒸着フィルムを形成し、次いで導通孔を形成し、もって各金属蒸着層を導通接続するのが好ましい。
【0013】
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の第二の製造方法は、高硬度の微粒子を表面に多数有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールとの間に樹脂フィルムを通過させるとともに、前記各ロール間を通過する前記樹脂フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、前記第一ロール表面の多数の微粒子の角部で前記樹脂フィルムに多数の微細な貫通孔を形成し、得られた貫通孔付き樹脂フィルムの少なくとも一方の面及び貫通孔の壁面に金属を蒸着することを特徴とする。
【0014】
第二の製造方法において、上記貫通孔付き樹脂フィルムの表裏両面及び貫通孔の壁面に金属を蒸着し、もって各金属蒸着層を導通接続するのが好ましい。
【0015】
第一及び第二の製造方法において、第一ロールの微粒子は5以上のモース硬度を有するのが好ましい。また第一ロールの微粒子はダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。
【0016】
本発明はまた上記導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に回路を形成したフレキシブルプリント配線板を提供する。
【0017】
本発明はまた上記導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に積層するとともに、回路を形成した積層型フレキシブルプリント配線板を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
[1] 導通孔付き金属蒸着導電性薄膜
(1) 樹脂フィルム
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に使用される樹脂フィルムとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリアミド(PA);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;エラストマー等からなる単一のフィルムが挙げられる。中でも樹脂フィルムは、耐熱性の高いポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのが好ましい。
【0019】
樹脂フィルムは、上記フィルム同士が熱融着しているか、又はポリエチレン等の接着層を介して接着している積層フィルムであってもよい。また基材の強度を向上させる観点から、樹脂フィルムには延伸が施されているのが好ましい。延伸は一軸延伸又は二軸延伸のいずれでもよい。
【0020】
樹脂フィルムのガラス転移温度(JIS K7121)は90℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのが好ましい。ガラス転移温度が90℃未満であると、高温度で強度が低下する恐れがある。
【0021】
樹脂フィルムの厚みについて、強度保持の観点から下限は1μm以上であるのが好ましい。フィルム厚みの上限は、得られる薄膜の屈曲性(可撓性)、薄さ及び軽量性の観点から20μm以下であるのが好ましい。
【0022】
(2) 金属蒸着層
金属蒸着層を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、亜鉛、銀、金、錫、珪素、チタン、コバルト、ニッケル及び鉄あるいはこれらの合金など導電性を有するものであれば特に限定されないが、銅及びアルミニウムが導電性や低コスト化の観点から好ましい。
【0023】
金属蒸着層の厚みが比較的薄い場合(例えば100 nm以下)、金属蒸着層の厚みを変えることにより、面方向の導電率を変えることができる。しかし面方向の導電率について、厚さ数μmの銅箔と同程度の値を得るには、厚みが50 nm以上の銅蒸着層を形成するのが好ましい。またFPCに用いる場合の導電性(電流密度)や二次加工(例えば電解鍍金)時による破損防止の観点から、金属蒸着層の厚みは、片面のみに形成する場合は100 nm以上とするのが好ましく、表裏両面に形成する場合は両面に少なくとも50 nm以上とするのが好ましい。また一方の面における金属蒸着層の厚みの上限は、製造効率の観点から500 nm以下であるのが好ましい。
【0024】
表裏両面に金属蒸着層を設ける場合、必ずしも両面で金属蒸着層の厚みを同程度にする必要はない。また蒸着効率を向上するには、一般に冷却効率を上げることが重要であるが、一方の面に比較的薄い金属蒸着層(例えば100 nm以下)を形成し、他方の面に比較的厚い金属蒸着層(例えば200 nm以上)を形成する場合、まず比較的薄い層を蒸着すると、他方の面に比較的厚い層を蒸着する工程において蒸着中の冷却が良好となるので、製造効率が向上する。
【0025】
金属の蒸着方法に特に限定はなく、例えば真空蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、スパッタリング法等公知の方法を適用することができる。ただし経済性の点では真空蒸着法が好ましい。
【0026】
真空蒸着法は、一般的に半連続式(フィルムの送り出し、蒸着及び巻取りを真空中で行う方法)又は連続式(フィルムの送り出しと巻取りは大気中で、蒸着のみを真空中で行う方法)により行い、10−2 Pa程度の高真空下で、金属を高周波誘導加熱方式又は抵抗加熱方式(輻射)により加熱・蒸発させ、その蒸気を樹脂フィルムに凝縮させ、金属層を形成する。
【0027】
化学気相蒸着法(CVD法)で行う場合は、低温で薄膜を形成できるプラズマCVD法により行うのが好ましい。プラズマCVD法は、対向する電極間もしくはコイルに高周波電力を印加して低圧反応ガスのプラズマを発生させて金属蒸着層を形成するか、又は減圧下で反応ガスの高周波グロー放電分解により金属蒸着層を形成する方法である。出発原料としてハロゲン化金属、有機金属、有機金属錯体、金属アルコラート等を用い、さらに窒素、アンモニア、一酸化二窒素、酸素、一酸化炭素、メタン、水素等の反応性ガスをヘリウム、アルゴン等のキャリアガスとともに用いる。
【0028】
例えばアルミニウム蒸着層は、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)を用いて、プラズマパワー密度0.03 〜0.06 W/cm3において、式(1):
2 Al(CH3)3 + H2 → 2 Al(CH3)2 + 2CH4 ・・・(1)
、及び式(2):
Al(CH3)2 + H2 → Al + 2CH4 ・・・(2)
により表される反応を選択的に生じさせることにより形成することができる。なお式(1)はプラズマ中で起こる反応を表し、式(2)はフィルム表面で起こる反応を表す。
【0029】
銅蒸着層を形成する場合は、例えば原料ガスとして銅アセチルアセトナート(Cu(acac)2)を用いるが、水素を添加することで炭素を効果的に除去することができる。
【0030】
樹脂フィルムと蒸着する金属との密着性を高めるために、蒸着操作の前に樹脂フィルムに洗浄を兼ねた表面処理を施すのが好ましい。表面処理の具体的手段としては、ブラスト、エンボス加工等による機械的処理、コロナ放電、プラズマ、火炎処理等による物理化学的処理、溶剤、酸性溶液、アルカリ性溶液等による化学的処理等がある。表面処理後のフィルムを加熱又は真空加熱処理して、フィルム中の水分やガス分を除去してもよい。
【0031】
(3) 導通孔の形成
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、(a) 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着した後、貫通孔を形成(ポーラス加工)することにより導通孔を設ける方法、又は(b) 樹脂フィルムにポーラス加工した後、少なくとも一方の面及び貫通孔の壁面に金属を蒸着する方法のいずれによっても製造することができる。
【0032】
ポーラス加工方法としては、例えば特許第2063411号に開示の方法を採用することができる。特許第2063411号は多孔質有機フィルムの製造方法を開示しており、これは角部を有する多数のモース硬度5以上の微粒子が表面に付着された第一ロールと、表面が平滑な第二ロールとの間に長尺有機系フィルムを通過させるとともに、各ロール間を通過する長尺有機系フィルムへの押圧力を各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように圧力調整手段で調節することにより、第一ロール表面の多数の微粒子の角部で長尺有機系フィルムに微細な貫通孔を多数形成するものである(以下特段の断りがない限り第一ロール、第二ロール及び押圧力を調整する圧力調整手段をまとめて「穿孔ユニット」と称する)。
【0033】
第一ロールは、金属製ロール本体の表面に角部を有する多数のモース硬度5以上の微粒子を電着法、又は有機系もしくは無機系の結合剤により付着させた構造を有する。モース硬度5以上の微粒子としては、例えばタングステンカーバイト等の超硬合金粒子、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、サファイア粒子、立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子、天然又は合成のダイヤモンド微粒子等を挙げることができる。本発明においては、特に硬度、強度等が大きい合成ダイヤモンド微粒子が望ましい。微粒子の粒径は10〜100μmで、粒径のばらつきが5%以下のものが望ましい。多数の微粒子は、ロール表面に50%以上付着させるのが好ましく、70%以上付着させるのがより好ましい。
【0034】
第二ロールとしては、例えば鉄系ロール、表面にNiメッキ、Crメッキ等を施した鉄系ロール、ステンレス系ロール、特殊鋼ロール等を用いることができる。
【0035】
(a) 金属蒸着後にポーラス加工する方法
上記(2)で述べた方法で金属蒸着層を形成した後、金属蒸着面を第一ロールに当接させるポーラス加工を行うことにより、第一ロール表面の多数の微粒子の角部で金属蒸着フィルムの厚み方向を貫通する多数の微細な貫通孔が形成されると同時に、金属蒸着層が貫通孔の壁面に沿って塑性変形し、貫通孔の壁面が金属により被覆された導通孔が形成される。金属蒸着層を両面に有する薄膜の場合、ポーラス加工を施すことにより各金属蒸着層が連結し、厚み方向の導通接続を発現させることができる。上記(1)で述べたように樹脂フィルムの厚みを1〜20μmとし、上記(2)で述べたように金属蒸着層の厚みを50 nm以上とすれば、一般的に形成される貫通孔の壁面は金属により確実に被覆されるので、金属蒸着層を両面に有する薄膜の場合、導通孔によって各金属蒸着層は確実に導通接続される。
【0036】
所望する厚み方向の導電率に応じて、導通孔の密度、貫通孔径、金属蒸着層の厚み、及び樹脂フィルムの厚みを適宜設定する。導通孔の貫通孔径は0.5 〜10μmであるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。導通孔の密度は2×104 個/cm2 以上であるのが好ましく、2×104 〜2.5×104 個/cm2であるのがより好ましい。例えば厚み4.5μmのPETフィルムの両面に50 nm程度の銅蒸着層を形成し、貫通孔径を0.5 〜10μmとし、導通孔の密度を2×104 個/cm2 以上とした導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の場合、厚み方向の導電率は厚みが数μmの銅箔と概ね同程度である。
【0037】
貫通孔径を0.5 〜10μmとした場合、導通孔の表面最大径は約10 〜20μmとなり、導通孔表面の突起部高さは約2μm以下となる。なお導通孔の表面最大径及び突起部高さは第一ロールと当接した面におけるものである。導通孔の貫通孔径を0.5 〜10μmとし、密度を2×104 個/cm2 以上とするには、第一ロールに付着される微粒子の粒径を30 〜60μmとするのがより好ましい。
【0038】
両面に金属蒸着層を有する薄膜に高密度で導通孔を形成する場合、穿孔ユニットを2式設け、二段階で導通孔を形成してもよい。この時二段目の第一ロールに当接する面は、一段目の第一ロールに当接した面の反対面であるのが好ましい。また両面に金属蒸着層を有する薄膜を二つの第一ロールの間に通すことにより、両面から導通孔を形成してもよい。
【0039】
(b) ポーラス加工後に金属を蒸着する方法
まず樹脂フィルムに対して、穿孔ユニットによりポーラス加工を行い、貫通孔を形成し、次いで上記(2)で述べた方法で金属蒸着層を形成する。どちらか一方の面から金属を蒸着させることにより、貫通孔の壁面にも金属が蒸着し、導通孔が形成される。好ましい導通孔の密度、貫通孔径、金属蒸着層の厚み、及び樹脂フィルムの厚みは上記(a)の方法による場合とそれぞれ同じである。また第一ロールの微粒子の粒径に関するより好ましい要件も、上記(a) の方法による場合と同じである。
【0040】
但し予め樹脂フィルムに貫通孔を形成する段階において、特開平9−99492号に開示の方法を採用することができる。これは穿孔ユニットの後段に設けたアーク照射手段によりアーク照射を行う方法であり、これにより穿孔を確実に行うことができる。また特許第2643730号、特許第2542772号及び特許第2703151号に開示の方法を採用することができる。これらは第一ロールの粒子を誘電体粒子(例えばダイヤモンド粒子)とし、第二ロールをジルコニア層のような誘電体層により被覆し、第一ロールに高電圧を供給することにより、第一ロールと第二ロールの間でコロナ放電を起こす方法である。また特開平9−57860号に開示の方法を採用することができる。これは穿孔ユニットの後段に、誘電体層及びゴム層がこの順に被覆された第三ロールを設け、第一ロールと第三ロールの間でコロナ放電を起こす方法である。
【0041】
上記(a)及び(b)のいずれの方法においても、導通孔は必ずしも薄膜の全面に設ける必要はなく、必要に応じて部分的に設けても良い。導通孔を部分的に設ける方法として、例えば所定の貫通孔径及び密度の導通孔が所望のパターンで形成されるように第一ロールの微粒子パターンを設定する方法が挙げられる。また特許第2542790号に記載の方法を応用し、第二ロールの表面に所望のパターンと同じ型の凸状パターンを形成し、凸状パターン形成面に弾性を有する有機高分子シートを被覆しておく方法を採用してもよい。
【0042】
[2] フレキシブルプリント配線板
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有するので、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れる。このため本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、FPC用(両面)基板として有用である。
【0043】
(1) フレキシブルプリント配線板
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に回路を形成することによりフレキシブルプリント配線板として用いることができる。回路は公知の方法により形成すればよく、例えばレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに金属蒸着層の不要部分を除去するエッチング処理を行う方法が挙げられる。またエレクトロデバイス用の印刷回路を形成するには、さらに各種の素子を半田付けすればよい。本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は半田付けに対して十分な耐熱性を有する。
【0044】
この場合導通孔は、必ずしも一様に形成してある必要はなく、上記[1](3)で述べた方法により、形成する回路に応じて必要な箇所にのみ所定の貫通孔径及び密度の導通孔を所望のパターンで形成してもよい。これにより両面に回路を設ける場合に、一層複雑な回路を構成することができる。
【0045】
金属蒸着層を両面に有し、圧み方向の導通接続を有するフレキシブルプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板の小型化、軽量化及び薄膜化において特に有用である。
【0046】
(2) 積層型フレキシブルプリント配線板
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を、銅箔の代替品として樹脂フィルムの少なくとも一方の面に積層するとともに、回路を形成することにより積層型フレキシブルプリント配線板を形成することができる。この場合、樹脂フィルム基材に接着剤を介して積層化し、その後所望の回路を形成すればよい。本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、微細な導通孔を多数有するので、接着剤が導通孔に浸入し、樹脂フィルム基材との接着性を強化することができる。樹脂フィルムとしては、上記[1](1)で述べたものと同様のものを用いることができる。
【0047】
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いることにより、積層型フレキシブルプリント配線板の小型化、軽量化及び薄膜化が可能となる。このように本発明の金属蒸着導電性薄膜を銅箔の代替品として使用する場合、金属蒸着層を両面に有し、導通孔を一様に有するのが好ましい。
【0048】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0049】
参考例
厚み12μmの圧延銅箔について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率をそれぞれ5ポイントずつ測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は0.4 〜0.7 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は0.4 〜0.7 mΩ・mであった[測定機:デジタルマルチテスタ MODEL DT−830B(販売元(株)オサダコーポレーション)]。
【0050】
実施例1
4.5μmの厚みを有するPETフィルムの両面に、真空蒸着法により約50 nmの厚さの銅蒸着層を形成した。次いで定位置に固定した第一ロール(粒径30 〜60μmの合成ダイヤモンド微粒子を電着したもの。)と金属製第二ロールとの間に、得られた銅蒸着フィルムを通過させた。得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜の貫通孔径は1〜5μmであり、導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であった。
【0051】
得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は2.9 〜4.5 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は2.9 〜4.7 mΩ・mであった。
【0052】
実施例2
PETフィルムの厚みを3.5μmとし、約70 nmの厚さの銅蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様に導通孔付き銅蒸着導電性薄膜を形成した。得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜の貫通孔径は1〜5μmであり、導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であった。
【0053】
得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は3.5 〜4.0 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は6.0 〜7.0 mΩ・mであった。
【0054】
実施例3
PETフィルムの厚みを12μmとし、約70 nmの厚さのアルミニウム蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様に導通孔付きアルミニウム蒸着導電性薄膜を形成した。得られた導通孔付きアルミニウム蒸着導電性薄膜の貫通孔径は3〜6μmであり、導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であった。
【0055】
得られた導通孔付きアルミニウム蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は4.0 〜6.0 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は50 〜60 mΩ・mであった。
【0056】
比較例1
4.5μmの厚みを有するPETフィルムの両面に、真空蒸着法により約50 nmの厚さの銅蒸着層を形成したのみの、導通孔を有さない銅蒸着導電性薄膜を作製した。得られた銅蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、面方向の電気抵抗率は5.6 〜9.0 mΩ・mであったが、厚み方向は絶縁されていた。
【0057】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜3の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は厚み方向及び面方向ともに銅箔と概ね同程度の電気導電性を有することが分かる。一方比較例1では導通孔を形成していないため、厚み方向は絶縁されていた。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有するので、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れる。本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、銅箔と概ね同程度の導電性を有することができるので、FPC用基板として有用である。
【0059】
また本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法は、表面に多数の微細な突起を有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールを用いて、(a) 樹脂フィルムに金属を蒸着した後、金属蒸着面が第一ロールと当接するように各ロール間に通過させるか、又は(b) 樹脂フィルムが第一ロールと当接するように各ロール間に通過させて貫通孔を形成した後、金属を蒸着するので、コストの低い方法である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜及びその製造方法、ならびにかかる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いたフレキシブルプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、携帯端末、携帯電話、小型ビデオ機器、小型電子カメラ等の電子機器や、コンピュータの記憶媒体であるハードディスクやCD−ROM等に広く用いられている。FPCは、通常ポリイミド、ポリエステル等の樹脂フィルム基材に銅箔をラミネートし,接着剤あるいは加熱加圧により一体化して形成される。
【0003】
FPCは、上記電子機器や記憶媒体の駆動部等の可動部分への配線が必要とされる場所に広く使用され、100万回以上の屈曲が繰り返される。近年の装置の小型化や高水準化に伴い、屈曲性への要求はより高度化している。しかし現状の銅箔の厚みは薄くても1μm程度が限界であるため、大きく屈曲した場合に銅箔が折れ曲がってしまい、元の形状に戻らないため屈曲性に限界があった。さらに加工性に優れるとともに軽量化、薄膜化、小型化、低価格化等も望まれている。
【0004】
FPCのような樹脂フィルム基材上に金属層を有する薄膜の屈曲性を向上し、かつ軽量化及び薄膜化を図るには、樹脂フィルム基材に導電性金属を蒸着させた金属蒸着導電性薄膜にするのが好ましく、金属蒸着層を有するFPCが種々提案されている。特に両面に金属層を有するFPCの場合、両面の金属層を導通するための導通孔を有するのが好ましく、例えば特開平10−51135号は、絶縁性フィルムの一面に蒸着等により導体層を設けた後、所定の位置にスルーホールを設け、次いで他面に導電層を設けることによりスルーホール付きフレキシブルプリント配線板用両面基板を製造する方法を開示している。しかし特開平10−51135号で具体的に記載されているスルーホール形成方法は、レーザ加工によるものであり、設備コストが高いという問題がある。また厚み方向に高い導電性が必要な薄膜を製造する場合(例えば銅箔と同程度の導電性)、スルーホールを多数設ける必要があるが、レーザ加工では一度に多数のスルーホールを形成するのは困難であった。また特開平10−51135号はスルーホール形成方法として、機械加工を用いても良いと記載しているものの、その具体的な方法を記載していない。従来機械加工によるスルーホールの形成はドリルを用いるものであり、やはり一度に多数のスルーホールを形成するのは困難であった。
【0005】
従って、本発明の目的は、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜及びその製造方法並びにかかる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いたフレキシブルプリント配線板を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れるとともに、低コストで製造できる導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を得るには、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を設けるとともに、厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を形成すればよく、そのためには表面に多数の微細な突起を有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールを用いて、(a) 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着した後、金属蒸着面が第一ロールと当接するように各ロール間に通過させるか、又は(b) 樹脂フィルムが第一ロールと当接するように各ロール間に通過させて貫通孔を形成した後、少なくとも一方の面に金属を蒸着すればよいことを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、前記薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有することを特徴とする。
【0008】
金属蒸着層は表裏両面に形成されているとともに、導通孔により各金属蒸着層が導通接続されているのが好ましい。金属蒸着層は銅又はアルミニウムからなるのが好ましい。金属蒸着層は薄膜の表裏両面に50 〜500 nmの厚みで設けられているのが好ましい。
【0009】
導通孔は一様に形成されているのが好ましい。導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であるのが好ましい。導通孔の貫通孔径は0.5 〜10μmであるのが好ましい。
【0010】
樹脂フィルムは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのが好ましい。樹脂フィルムの厚みは1〜20μmであるのが好ましい。
【0011】
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の第一の製造方法は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着して金属蒸着フィルムを形成し、次いで高硬度の微粒子を表面に多数有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールとの間に、前記金属蒸着フィルムをその金属蒸着面が前記第一ロールと当接するように通過させるとともに、前記各ロール間を通過する前記金属蒸着フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、前記第一ロール表面の多数の微粒子の角部で前記金属蒸着フィルムの厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を形成することを特徴とする。
【0012】
第一の製造方法において、樹脂フィルムの表裏両面に金属を蒸着して金属蒸着フィルムを形成し、次いで導通孔を形成し、もって各金属蒸着層を導通接続するのが好ましい。
【0013】
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の第二の製造方法は、高硬度の微粒子を表面に多数有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールとの間に樹脂フィルムを通過させるとともに、前記各ロール間を通過する前記樹脂フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、前記第一ロール表面の多数の微粒子の角部で前記樹脂フィルムに多数の微細な貫通孔を形成し、得られた貫通孔付き樹脂フィルムの少なくとも一方の面及び貫通孔の壁面に金属を蒸着することを特徴とする。
【0014】
第二の製造方法において、上記貫通孔付き樹脂フィルムの表裏両面及び貫通孔の壁面に金属を蒸着し、もって各金属蒸着層を導通接続するのが好ましい。
【0015】
第一及び第二の製造方法において、第一ロールの微粒子は5以上のモース硬度を有するのが好ましい。また第一ロールの微粒子はダイヤモンド微粒子であるのが好ましい。
【0016】
本発明はまた上記導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に回路を形成したフレキシブルプリント配線板を提供する。
【0017】
本発明はまた上記導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に積層するとともに、回路を形成した積層型フレキシブルプリント配線板を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
[1] 導通孔付き金属蒸着導電性薄膜
(1) 樹脂フィルム
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に使用される樹脂フィルムとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリアミド(PA);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;エラストマー等からなる単一のフィルムが挙げられる。中でも樹脂フィルムは、耐熱性の高いポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる群から選ばれた少なくとも一種からなるのが好ましい。
【0019】
樹脂フィルムは、上記フィルム同士が熱融着しているか、又はポリエチレン等の接着層を介して接着している積層フィルムであってもよい。また基材の強度を向上させる観点から、樹脂フィルムには延伸が施されているのが好ましい。延伸は一軸延伸又は二軸延伸のいずれでもよい。
【0020】
樹脂フィルムのガラス転移温度(JIS K7121)は90℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのが好ましい。ガラス転移温度が90℃未満であると、高温度で強度が低下する恐れがある。
【0021】
樹脂フィルムの厚みについて、強度保持の観点から下限は1μm以上であるのが好ましい。フィルム厚みの上限は、得られる薄膜の屈曲性(可撓性)、薄さ及び軽量性の観点から20μm以下であるのが好ましい。
【0022】
(2) 金属蒸着層
金属蒸着層を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、亜鉛、銀、金、錫、珪素、チタン、コバルト、ニッケル及び鉄あるいはこれらの合金など導電性を有するものであれば特に限定されないが、銅及びアルミニウムが導電性や低コスト化の観点から好ましい。
【0023】
金属蒸着層の厚みが比較的薄い場合(例えば100 nm以下)、金属蒸着層の厚みを変えることにより、面方向の導電率を変えることができる。しかし面方向の導電率について、厚さ数μmの銅箔と同程度の値を得るには、厚みが50 nm以上の銅蒸着層を形成するのが好ましい。またFPCに用いる場合の導電性(電流密度)や二次加工(例えば電解鍍金)時による破損防止の観点から、金属蒸着層の厚みは、片面のみに形成する場合は100 nm以上とするのが好ましく、表裏両面に形成する場合は両面に少なくとも50 nm以上とするのが好ましい。また一方の面における金属蒸着層の厚みの上限は、製造効率の観点から500 nm以下であるのが好ましい。
【0024】
表裏両面に金属蒸着層を設ける場合、必ずしも両面で金属蒸着層の厚みを同程度にする必要はない。また蒸着効率を向上するには、一般に冷却効率を上げることが重要であるが、一方の面に比較的薄い金属蒸着層(例えば100 nm以下)を形成し、他方の面に比較的厚い金属蒸着層(例えば200 nm以上)を形成する場合、まず比較的薄い層を蒸着すると、他方の面に比較的厚い層を蒸着する工程において蒸着中の冷却が良好となるので、製造効率が向上する。
【0025】
金属の蒸着方法に特に限定はなく、例えば真空蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、スパッタリング法等公知の方法を適用することができる。ただし経済性の点では真空蒸着法が好ましい。
【0026】
真空蒸着法は、一般的に半連続式(フィルムの送り出し、蒸着及び巻取りを真空中で行う方法)又は連続式(フィルムの送り出しと巻取りは大気中で、蒸着のみを真空中で行う方法)により行い、10−2 Pa程度の高真空下で、金属を高周波誘導加熱方式又は抵抗加熱方式(輻射)により加熱・蒸発させ、その蒸気を樹脂フィルムに凝縮させ、金属層を形成する。
【0027】
化学気相蒸着法(CVD法)で行う場合は、低温で薄膜を形成できるプラズマCVD法により行うのが好ましい。プラズマCVD法は、対向する電極間もしくはコイルに高周波電力を印加して低圧反応ガスのプラズマを発生させて金属蒸着層を形成するか、又は減圧下で反応ガスの高周波グロー放電分解により金属蒸着層を形成する方法である。出発原料としてハロゲン化金属、有機金属、有機金属錯体、金属アルコラート等を用い、さらに窒素、アンモニア、一酸化二窒素、酸素、一酸化炭素、メタン、水素等の反応性ガスをヘリウム、アルゴン等のキャリアガスとともに用いる。
【0028】
例えばアルミニウム蒸着層は、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)を用いて、プラズマパワー密度0.03 〜0.06 W/cm3において、式(1):
2 Al(CH3)3 + H2 → 2 Al(CH3)2 + 2CH4 ・・・(1)
、及び式(2):
Al(CH3)2 + H2 → Al + 2CH4 ・・・(2)
により表される反応を選択的に生じさせることにより形成することができる。なお式(1)はプラズマ中で起こる反応を表し、式(2)はフィルム表面で起こる反応を表す。
【0029】
銅蒸着層を形成する場合は、例えば原料ガスとして銅アセチルアセトナート(Cu(acac)2)を用いるが、水素を添加することで炭素を効果的に除去することができる。
【0030】
樹脂フィルムと蒸着する金属との密着性を高めるために、蒸着操作の前に樹脂フィルムに洗浄を兼ねた表面処理を施すのが好ましい。表面処理の具体的手段としては、ブラスト、エンボス加工等による機械的処理、コロナ放電、プラズマ、火炎処理等による物理化学的処理、溶剤、酸性溶液、アルカリ性溶液等による化学的処理等がある。表面処理後のフィルムを加熱又は真空加熱処理して、フィルム中の水分やガス分を除去してもよい。
【0031】
(3) 導通孔の形成
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、(a) 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着した後、貫通孔を形成(ポーラス加工)することにより導通孔を設ける方法、又は(b) 樹脂フィルムにポーラス加工した後、少なくとも一方の面及び貫通孔の壁面に金属を蒸着する方法のいずれによっても製造することができる。
【0032】
ポーラス加工方法としては、例えば特許第2063411号に開示の方法を採用することができる。特許第2063411号は多孔質有機フィルムの製造方法を開示しており、これは角部を有する多数のモース硬度5以上の微粒子が表面に付着された第一ロールと、表面が平滑な第二ロールとの間に長尺有機系フィルムを通過させるとともに、各ロール間を通過する長尺有機系フィルムへの押圧力を各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように圧力調整手段で調節することにより、第一ロール表面の多数の微粒子の角部で長尺有機系フィルムに微細な貫通孔を多数形成するものである(以下特段の断りがない限り第一ロール、第二ロール及び押圧力を調整する圧力調整手段をまとめて「穿孔ユニット」と称する)。
【0033】
第一ロールは、金属製ロール本体の表面に角部を有する多数のモース硬度5以上の微粒子を電着法、又は有機系もしくは無機系の結合剤により付着させた構造を有する。モース硬度5以上の微粒子としては、例えばタングステンカーバイト等の超硬合金粒子、炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子、サファイア粒子、立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子、天然又は合成のダイヤモンド微粒子等を挙げることができる。本発明においては、特に硬度、強度等が大きい合成ダイヤモンド微粒子が望ましい。微粒子の粒径は10〜100μmで、粒径のばらつきが5%以下のものが望ましい。多数の微粒子は、ロール表面に50%以上付着させるのが好ましく、70%以上付着させるのがより好ましい。
【0034】
第二ロールとしては、例えば鉄系ロール、表面にNiメッキ、Crメッキ等を施した鉄系ロール、ステンレス系ロール、特殊鋼ロール等を用いることができる。
【0035】
(a) 金属蒸着後にポーラス加工する方法
上記(2)で述べた方法で金属蒸着層を形成した後、金属蒸着面を第一ロールに当接させるポーラス加工を行うことにより、第一ロール表面の多数の微粒子の角部で金属蒸着フィルムの厚み方向を貫通する多数の微細な貫通孔が形成されると同時に、金属蒸着層が貫通孔の壁面に沿って塑性変形し、貫通孔の壁面が金属により被覆された導通孔が形成される。金属蒸着層を両面に有する薄膜の場合、ポーラス加工を施すことにより各金属蒸着層が連結し、厚み方向の導通接続を発現させることができる。上記(1)で述べたように樹脂フィルムの厚みを1〜20μmとし、上記(2)で述べたように金属蒸着層の厚みを50 nm以上とすれば、一般的に形成される貫通孔の壁面は金属により確実に被覆されるので、金属蒸着層を両面に有する薄膜の場合、導通孔によって各金属蒸着層は確実に導通接続される。
【0036】
所望する厚み方向の導電率に応じて、導通孔の密度、貫通孔径、金属蒸着層の厚み、及び樹脂フィルムの厚みを適宜設定する。導通孔の貫通孔径は0.5 〜10μmであるのが好ましく、1〜5μmであるのがより好ましい。導通孔の密度は2×104 個/cm2 以上であるのが好ましく、2×104 〜2.5×104 個/cm2であるのがより好ましい。例えば厚み4.5μmのPETフィルムの両面に50 nm程度の銅蒸着層を形成し、貫通孔径を0.5 〜10μmとし、導通孔の密度を2×104 個/cm2 以上とした導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の場合、厚み方向の導電率は厚みが数μmの銅箔と概ね同程度である。
【0037】
貫通孔径を0.5 〜10μmとした場合、導通孔の表面最大径は約10 〜20μmとなり、導通孔表面の突起部高さは約2μm以下となる。なお導通孔の表面最大径及び突起部高さは第一ロールと当接した面におけるものである。導通孔の貫通孔径を0.5 〜10μmとし、密度を2×104 個/cm2 以上とするには、第一ロールに付着される微粒子の粒径を30 〜60μmとするのがより好ましい。
【0038】
両面に金属蒸着層を有する薄膜に高密度で導通孔を形成する場合、穿孔ユニットを2式設け、二段階で導通孔を形成してもよい。この時二段目の第一ロールに当接する面は、一段目の第一ロールに当接した面の反対面であるのが好ましい。また両面に金属蒸着層を有する薄膜を二つの第一ロールの間に通すことにより、両面から導通孔を形成してもよい。
【0039】
(b) ポーラス加工後に金属を蒸着する方法
まず樹脂フィルムに対して、穿孔ユニットによりポーラス加工を行い、貫通孔を形成し、次いで上記(2)で述べた方法で金属蒸着層を形成する。どちらか一方の面から金属を蒸着させることにより、貫通孔の壁面にも金属が蒸着し、導通孔が形成される。好ましい導通孔の密度、貫通孔径、金属蒸着層の厚み、及び樹脂フィルムの厚みは上記(a)の方法による場合とそれぞれ同じである。また第一ロールの微粒子の粒径に関するより好ましい要件も、上記(a) の方法による場合と同じである。
【0040】
但し予め樹脂フィルムに貫通孔を形成する段階において、特開平9−99492号に開示の方法を採用することができる。これは穿孔ユニットの後段に設けたアーク照射手段によりアーク照射を行う方法であり、これにより穿孔を確実に行うことができる。また特許第2643730号、特許第2542772号及び特許第2703151号に開示の方法を採用することができる。これらは第一ロールの粒子を誘電体粒子(例えばダイヤモンド粒子)とし、第二ロールをジルコニア層のような誘電体層により被覆し、第一ロールに高電圧を供給することにより、第一ロールと第二ロールの間でコロナ放電を起こす方法である。また特開平9−57860号に開示の方法を採用することができる。これは穿孔ユニットの後段に、誘電体層及びゴム層がこの順に被覆された第三ロールを設け、第一ロールと第三ロールの間でコロナ放電を起こす方法である。
【0041】
上記(a)及び(b)のいずれの方法においても、導通孔は必ずしも薄膜の全面に設ける必要はなく、必要に応じて部分的に設けても良い。導通孔を部分的に設ける方法として、例えば所定の貫通孔径及び密度の導通孔が所望のパターンで形成されるように第一ロールの微粒子パターンを設定する方法が挙げられる。また特許第2542790号に記載の方法を応用し、第二ロールの表面に所望のパターンと同じ型の凸状パターンを形成し、凸状パターン形成面に弾性を有する有機高分子シートを被覆しておく方法を採用してもよい。
【0042】
[2] フレキシブルプリント配線板
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有するので、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れる。このため本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、FPC用(両面)基板として有用である。
【0043】
(1) フレキシブルプリント配線板
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に回路を形成することによりフレキシブルプリント配線板として用いることができる。回路は公知の方法により形成すればよく、例えばレジスト塗布及び露光工程により回路を印刷し、さらに金属蒸着層の不要部分を除去するエッチング処理を行う方法が挙げられる。またエレクトロデバイス用の印刷回路を形成するには、さらに各種の素子を半田付けすればよい。本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は半田付けに対して十分な耐熱性を有する。
【0044】
この場合導通孔は、必ずしも一様に形成してある必要はなく、上記[1](3)で述べた方法により、形成する回路に応じて必要な箇所にのみ所定の貫通孔径及び密度の導通孔を所望のパターンで形成してもよい。これにより両面に回路を設ける場合に、一層複雑な回路を構成することができる。
【0045】
金属蒸着層を両面に有し、圧み方向の導通接続を有するフレキシブルプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板の小型化、軽量化及び薄膜化において特に有用である。
【0046】
(2) 積層型フレキシブルプリント配線板
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を、銅箔の代替品として樹脂フィルムの少なくとも一方の面に積層するとともに、回路を形成することにより積層型フレキシブルプリント配線板を形成することができる。この場合、樹脂フィルム基材に接着剤を介して積層化し、その後所望の回路を形成すればよい。本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、微細な導通孔を多数有するので、接着剤が導通孔に浸入し、樹脂フィルム基材との接着性を強化することができる。樹脂フィルムとしては、上記[1](1)で述べたものと同様のものを用いることができる。
【0047】
本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を用いることにより、積層型フレキシブルプリント配線板の小型化、軽量化及び薄膜化が可能となる。このように本発明の金属蒸着導電性薄膜を銅箔の代替品として使用する場合、金属蒸着層を両面に有し、導通孔を一様に有するのが好ましい。
【0048】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0049】
参考例
厚み12μmの圧延銅箔について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率をそれぞれ5ポイントずつ測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は0.4 〜0.7 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は0.4 〜0.7 mΩ・mであった[測定機:デジタルマルチテスタ MODEL DT−830B(販売元(株)オサダコーポレーション)]。
【0050】
実施例1
4.5μmの厚みを有するPETフィルムの両面に、真空蒸着法により約50 nmの厚さの銅蒸着層を形成した。次いで定位置に固定した第一ロール(粒径30 〜60μmの合成ダイヤモンド微粒子を電着したもの。)と金属製第二ロールとの間に、得られた銅蒸着フィルムを通過させた。得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜の貫通孔径は1〜5μmであり、導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であった。
【0051】
得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は2.9 〜4.5 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は2.9 〜4.7 mΩ・mであった。
【0052】
実施例2
PETフィルムの厚みを3.5μmとし、約70 nmの厚さの銅蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様に導通孔付き銅蒸着導電性薄膜を形成した。得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜の貫通孔径は1〜5μmであり、導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であった。
【0053】
得られた導通孔付き銅蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は3.5 〜4.0 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は6.0 〜7.0 mΩ・mであった。
【0054】
実施例3
PETフィルムの厚みを12μmとし、約70 nmの厚さのアルミニウム蒸着層を形成した以外は、実施例1と同様に導通孔付きアルミニウム蒸着導電性薄膜を形成した。得られた導通孔付きアルミニウム蒸着導電性薄膜の貫通孔径は3〜6μmであり、導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であった。
【0055】
得られた導通孔付きアルミニウム蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、厚み方向の電気抵抗率は4.0 〜6.0 mΩ・mであり、面方向の電気抵抗率は50 〜60 mΩ・mであった。
【0056】
比較例1
4.5μmの厚みを有するPETフィルムの両面に、真空蒸着法により約50 nmの厚さの銅蒸着層を形成したのみの、導通孔を有さない銅蒸着導電性薄膜を作製した。得られた銅蒸着導電性薄膜について、厚み方向及び面方向の電気抵抗率を参考例と同様に測定したところ、面方向の電気抵抗率は5.6 〜9.0 mΩ・mであったが、厚み方向は絶縁されていた。
【0057】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜3の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は厚み方向及び面方向ともに銅箔と概ね同程度の電気導電性を有することが分かる。一方比較例1では導通孔を形成していないため、厚み方向は絶縁されていた。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有するとともに、薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有するので、厚み方向の導電性、屈曲性、軽量性、薄さ及び加工性に優れる。本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜は、銅箔と概ね同程度の導電性を有することができるので、FPC用基板として有用である。
【0059】
また本発明の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法は、表面に多数の微細な突起を有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールを用いて、(a) 樹脂フィルムに金属を蒸着した後、金属蒸着面が第一ロールと当接するように各ロール間に通過させるか、又は(b) 樹脂フィルムが第一ロールと当接するように各ロール間に通過させて貫通孔を形成した後、金属を蒸着するので、コストの低い方法である。
Claims (16)
- 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着層を有する導通孔付き金属蒸着導電性薄膜であって、前記薄膜の厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を有することを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項1に記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記金属蒸着層を表裏両面に有し、前記導通孔により各金属蒸着層が導通接続されていることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項1又は2に記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記導通孔は一様に形成されていることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記導通孔の密度は2×104 〜2.5×104 個/cm2であることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記導通孔の貫通孔径は0.5 〜10μmであることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記金属蒸着層は銅又はアルミニウムからなることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項2〜6のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記金属蒸着層は前記薄膜の表裏両面に50 〜500 nmの厚みで設けられていることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 請求項2〜7のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜において、前記樹脂フィルムは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン及びポリエーテルエーテルケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種からなり、前記樹脂フィルムの厚みは1〜20μmであることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜。
- 樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属を蒸着して金属蒸着フィルムを形成し、次いで高硬度の微粒子を表面に多数有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールとの間に、前記金属蒸着フィルムをその金属蒸着面が前記第一ロールと当接するように通過させるとともに、前記各ロール間を通過する前記金属蒸着フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、前記第一ロール表面の多数の微粒子の角部で前記金属蒸着フィルムの厚み方向を貫通する多数の微細な導通孔を形成することを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法。
- 請求項9に記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法において、前記樹脂フィルムの表裏両面に金属を蒸着して前記金属蒸着フィルムを形成し、次いで前記導通孔を形成し、もって各金属蒸着層を導通接続することを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法。
- 高硬度の微粒子を表面に多数有する第一ロールと表面が平滑な第二ロールとの間に樹脂フィルムを通過させるとともに、前記各ロール間を通過する前記樹脂フィルムへの押圧力を前記各ロールと接触するフィルム面全体に亘って均一となるように調節することにより、前記第一ロール表面の多数の微粒子の角部で前記樹脂フィルムに多数の微細な貫通孔を形成し、得られた貫通孔付き樹脂フィルムの少なくとも一方の面及び前記貫通孔の壁面に金属を蒸着することを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法。
- 請求項11に記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法において、前記貫通孔付き樹脂フィルムの表裏両面及び前記貫通孔の壁面に金属を蒸着し、もって各金属蒸着層を導通接続することを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法。
- 請求項9〜12のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法において、前記第一ロールの微粒子は5以上のモース硬度を有することを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法。
- 請求項9〜13のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法において、前記第一ロールの微粒子はダイヤモンド微粒子であることを特徴とする導通孔付き金属蒸着導電性薄膜の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜に回路を形成したことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の導通孔付き金属蒸着導電性薄膜を、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に積層するとともに、回路を形成したことを特徴とする積層型フレキシブルプリント配線板。
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