JP2004037295A - 多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟x線光学系及び軟x線露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】多層膜表面に付着した飛散粒子を除去することにより多層膜反射鏡の反射率を容易に回復できる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る多層膜反射鏡は、屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡において、基板上に形成された多層膜20と、この多層膜の最上層上に形成されたAg層23と、を具備する。この多層膜反射鏡の反射率を回復する場合、Ag層23上に飛散粒子であるタングステンが付着した多層膜反射鏡のAg層23を硝酸で溶解することにより、多層膜20からタングステン及びAg層23を除去し、多層膜20の最上層上にAg層24を再形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明に係る多層膜反射鏡は、屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡において、基板上に形成された多層膜20と、この多層膜の最上層上に形成されたAg層23と、を具備する。この多層膜反射鏡の反射率を回復する場合、Ag層23上に飛散粒子であるタングステンが付着した多層膜反射鏡のAg層23を硝酸で溶解することにより、多層膜20からタングステン及びAg層23を除去し、多層膜20の最上層上にAg層24を再形成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスなどの製造に用いられる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路素子の微細化の進展に伴い、光の回折限界によって制限される光学系の解像力を向上させるために、従来の紫外線に代わって、これより波長の短い11〜14nm程度の波長を有する軟X線を使用した投影リソグラフィ技術が開発されている(例えば、D.Tichenor,et al, SPIE 2437(1995)292参照)。この技術は、最近ではEUV(Extreme Ultra Violet:極紫外線)リソグラフィとも呼ばれているが、その内容は同一である(以下、EUVリソグラフィと呼ぶ)。EUVリソグラフィは、従来の光リソグラフィ(波長190nm程度以上)では実現不可能な70nm以下の解像力を有する将来のリソグラフィ技術として期待されている。
【0003】
この波長域では物質の屈折率が1に非常に近いので、屈折や反射を利用した従来の光学素子は使用できない。屈折率が1よりも僅かに小さいことによる全反射を利用した斜入射ミラーや、界面での微弱な反射光の位相を合わせて多数重畳させて、全体として高い反射率を得る多層膜反射鏡(多層膜ミラー)などが使用される。13.4nm付近の波長域では、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層を交互に積層したMo/Si多層膜を用いると直入射で67.5%の反射率を得ることが出来、波長11.3nm付近の波長域では、Mo層とベリリウム(Be)層を交互に積層したMo/Be多層膜を用いると直入射で70.2%の反射率を得ることができる(例えば、C.Montcalm, Proc. SPIE, Vol. 3331(1998)P.42参照)。
【0004】
EUVリソグラフィ装置は、主として軟X線光源、照明光学系、マスクステージ、投影結像光学系(投影光学系)、ウエハステージ等により構成される。軟X線光源には、レーザープラズマ光源、放電プラズマ光源や放射光などが使用される。照明光学系は、反射面に斜め方向から入射した軟X線を反射させる斜入射ミラー、反射面が多層膜により形成される多層膜ミラー及び所定の波長の軟X線のみを透過させるフィルター等により構成され、マスク上を所望の波長の軟X線で照明する。なお、軟X線の波長域では透明な物質は存在しないので、マスクには従来の透過型のマスクではなく反射型のマスクが使用される。
【0005】
マスク上に形成された回路パターンは、複数の多層膜ミラー等で構成された投影結像光学系により、レジストが塗布されたウエハ(感光性基板)上に結像して該レジストに転写される。なお、軟X線は大気に吸収されて減衰するため、その光路は全て所定の真空度(例えば、1×10−5Torr以下)に維持されている。
【0006】
EUVリソグラフィにおいては反射鏡表面の汚れが大きな問題となる。現在、EUV軟X線光源として開発が進められているレーザープラズマ光源や放電プラズマ光源では、光源部から飛散粒子が発生し、この飛散粒子が多層膜反射鏡の表面に付着して反射率を低下させる。特に照明光学系を構成する多層膜反射鏡のうちプラズマに最も近い多層膜反射鏡(以下コンデンサミラーと記す)は、プラズマから輻射されるEUV光をできるだけ大きな立体角で取り込むためにプラズマから反射面までの距離は100mm以下になると言われており、飛散粒子の影響を最も大きく受ける。コンデンサミラーを含め、光学系を構成する多層膜反射鏡のEUV反射率はEUVリソグラフィ装置の処理速度(スループット)に直接影響するため、飛散粒子の発生と付着を低減させる方法の開発が進められている。
【0007】
プラズマから発生する飛散粒子を低減するために、キセノン(Xe)ガスをターゲット材としたガスジェットターゲットレーザープラズマ光源の開発が進められている。Xeは常温で気体であるため、多層膜表面には付着しないが、生成されたプラズマを形成するイオンによってXeガスを噴出するノズル先端部が削られて飛散粒子となる。ノズルから離れるにしたがって急激にガス密度が低下するため、プラズマの発生位置はノズル先端から距離を大きくとることはできず、ノズル先端部のイオンによる侵食は完全に無くすことはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように現在のところ、光源をレーザープラズマ光源や放電プラズマ光源とした場合の飛散粒子の発生を完全に無くすことはできない。このため、飛散粒子は光源であるプラズマに最も近い多層膜反射鏡の表面に付着し、その寿命は有限なものとなる。EUVリソグラフィ装置に使用されるEUV光学系を構成する多層膜反射鏡では、高い形状精度が求められ、表面に周期長面内分布が精度良く制御された多層膜が成膜されている必要があるために、形状を変化させずに反射率の低下した反射鏡の反射率を回復させることが望まれていた。
【0009】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、多層膜表面に付着した飛散粒子を除去することにより多層膜反射鏡の反射率を容易に回復できる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明に係る多層膜反射鏡は、屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡において、基板上に形成された多層膜と、この多層膜の最上層上に形成された溶解性薄膜と、を具備することを特徴とする。
なお、前記溶解性薄膜が銀からなる膜であることが好ましい。また、溶解性とは、酸やアルカリ、溶剤などにより溶解され得るという意味である。
【0011】
前記多層膜反射鏡によれば、多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成しているため、多層膜反射鏡の表面に飛散粒子が付着しても、この溶解性薄膜を適度な濃度の酸に浸すことによって飛散粒子及び溶解性薄膜を除去することができる。また、多層膜は酸に侵されないため、溶解性薄膜より基板側の構造と形状は全く影響を受けない。よって、多層膜表面に再度溶解性薄膜を成膜することにより、飛散粒子が付着する前の状態を回復することができる。
【0012】
また、本発明に係る多層膜反射鏡において、前記多層膜は、モリブデンを含む層とシリコンを含む層からなることも可能である。これにより、波長13.5nm付近で高い反射率を有する多層膜を得ることができる。この多層膜において最表面に溶解性薄膜を成膜しておくことにより、付着した飛散粒子の除去と反射率の回復が容易な多層膜反射鏡を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る多層膜反射鏡においては、前記多層膜の周期長が5nm以上7.5nm以下であることが好ましい。これにより、波長13.5nm付近で高い反射率を有する多層膜を得ることができる。この多層膜において最表面に溶解性薄膜を成膜しておくことにより、付着した飛散粒子の除去と反射率の回復が容易な多層膜反射鏡を得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る多層膜反射鏡においては、前記銀からなる膜の厚さが2nm以下であることが好ましい。これにより、多層膜の最上層上に成膜される銀による反射率低下による影響を2%程度とし、多層膜全体としては高い反射率を達成できる。
【0015】
本発明に係る多層膜反射鏡の製造方法は、屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡の製造方法において、基板上に多層膜を成膜する工程と、この多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成する工程と、を具備することを特徴とする多層膜反射鏡の製造方法。
【0016】
また、本発明に係る多層膜反射鏡の製造方法においては、前記溶解性薄膜が銀からなる膜であることも可能である。
また、本発明に係る多層膜反射鏡の製造方法においては、前記銀からなる膜の厚さが2nm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る多層膜反射鏡の反射率回復方法は、請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡であって、露光装置に使用することにより溶解性薄膜上に飛散粒子が付着した多層膜反射鏡の反射率回復方法において、溶解性薄膜を酸で溶解することにより、多層膜から飛散粒子及び溶解性薄膜を除去する工程と、多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
【0018】
前記多層膜反射鏡の反射率回復方法によれば、多層膜表面に付着した飛散粒子を容易に除去することができ、更に、多層膜及びその基板の再利用が低コストで可能となる。
【0019】
本発明に係る軟X線光学系は、請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡を用いて構成されたものであることを特徴とする。
この軟X線光学系によれば、飛散粒子の付着により反射率の低下した多層膜反射鏡の反射率を容易に回復させることができるため、光学系全体としての反射率の回復も容易となる。
【0020】
本発明に係る軟X線露光装置は、軟X線を発生させる軟X線光源と、この軟X線光源からの軟X線をマスクに導く照明光学系と、前記マスクからの軟X線を感光性基板に導く投影光学系とを有し、前記マスクのパターンを感光性基板へ転写する軟X線露光装置において、前記照明光学系に請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡を有することを特徴とする。
【0021】
前記軟X線露光装置によれば、飛散粒子の付着により低下した光学系の反射率の回復が容易となり、多層膜基板の製作と多層膜の成膜を新たに行う必要がないため、光学系の性能を低コストで維持することができる。
【0022】
また、本発明に係る軟X線露光装置においては、前記多層膜反射鏡が配置された空間の酸素を含む気体の分圧が1×10−8Pa以下に保たれていることが好ましい。これにより、多層膜の最表面の銀などの溶解性薄膜の酸化が進むことが無く、酸により容易に溶解性薄膜を除去できる状態を保つことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたEUVリソグラフィ装置の光源部分を概略的に示す構成断面図である。
【0024】
このEUVリソグラフィ装置は、Xeガスジェットターゲットレーザープラズマを光源とするものである。真空容器11の内部にXeガスノズル12が配置されている。このXeガスノズル12の先端部分はタングステン製である。このガスノズル12から噴出したXeガスには励起パルスレーザー光13が集光・照射され、プラズマ14が生成されるようになっている。生成されたプラズマ14から輻射されるEUV光を取り込むために回転放物面形状を有するコンデンサミラー15が真空容器11の内部に配置されている。EUV光をコンデンサミラー15で反射することによりEUV光の平行光束16が形成される。この光束16はジルコニウムのフィルター17を通過するようになっており、照明光学系(図示せず)を介して反射マスク(図示せず)を照明するようになっている。
【0025】
また、本装置は、真空容器11の内部を真空化するための真空ポンプ(図示せず)を備えている。これにより、露光中はフィルター17よりプラズマ側の空間(真空容器11の内部)の酸素を含む気体の分圧が1×10−8Pa以下(好ましくは1×10−10Pa以下)に保たれている。
【0026】
コンデンサミラー15は多層膜反射鏡である。コンデンサミラー15の表面にはMo/Si多層膜が成膜されており、コンデンサミラー15上でEUV光の入射角度が違っても同じ波長のEUV光を反射するように周期長には面内分布が形成されている。Mo/Si多層膜の最表面には厚さ1nmのAg層が成膜されている。多層膜反射鏡の製造方法及び多層膜反射鏡の反射率回復方法については後述する。
【0027】
コンデンサミラー15はミラーホルダ18に固定されており、ミラーホルダ18に対してコンデンサミラーの基板は厳密な位置出しがなされている。ミラーホルダ18は基盤19に固定されており、その位置が記録されている。
【0028】
このような配置で縮小投影露光を行うと、光源のXeガスノズル部分から発生した飛散粒子がコンデンサミラー15の表面に付着し、それによりコンデンサミラー15の反射率を低下させる。予めコンデンサミラーは二枚準備されており、本装置に配置したコンデンサミラー15の反射率が低下したら、このコンデンサミラー15を本装置から取り外してもう一枚のコンデンサミラーと交換する。取り外したコンデンサミラー15は、反射率を回復させるために硝酸に浸してAg層を除去することによって、その上に付着した飛散粒子が除去される。その後、再びAg層を成膜して次の交換に備える。
【0029】
次に、多層膜反射鏡の製造方法及び多層膜反射鏡の反射率回復方法について図2を参照しつつ説明する。
図2(a)は、多層膜反射鏡における多層膜の表層近傍を模式的に示す断面図であり、図2(b)〜(d)は、多層膜反射鏡の反射率を回復させる方法を説明するための断面図である。
【0030】
図2(a)に示す多層膜反射鏡は、所望の形状に精度良く加工された図示せぬ石英基板を有している。この石英基板上にはMo/Si多層膜20がスパッタリングにより成膜されている。この多層膜20はモリブデン(Mo)21とシリコン(Si)22を交互に積層したMo/Si多層膜であり、最上層はシリコン22である。Mo/Si多層膜の周期長は6.9nmであり、最上層のSi層の上には溶解性薄膜としての厚さ1nmのAg層23がスパッタリングにより成膜されている。
【0031】
図2(b)に示す多層膜反射鏡は、前述したXeガスをターゲット材としたガスジェットターゲットレーザープラズマ光源の近傍に多層膜反射鏡を配置し、プラズマを生成した後の多層膜反射鏡の表面状態を示すためのものである。Xeガスが噴出するXeガスジェットノズルは、プラズマによる侵食を軽減させ飛散粒子の総量軽減を目的として高融点のタングステンにより形成されている。このため、多層膜20の表面には飛散粒子であるタングステン(W)がわずかに付着しているが、付着量が比較的小量であるためにタングステンは均一な膜となっておらず、多層膜の表面に島状に離散的に付着している。このように飛散粒子が付着すると多層膜反射鏡の反射率が低下する。
【0032】
この状態の多層膜反射鏡を装置から取り外し、この多層膜20を5規定の濃度の硝酸に浸した後の状態を図2(c)に示している。硝酸によりAg層23が溶けてその上に付着していたタングステンも取り除かれる。Ag層23の下に存在するSi層22及び基板材である石英は硝酸には侵されないため、Mo/Si多層膜20は硝酸の影響を全く受けずにその構造が保たれ、石英基板の形状も変化しない。
【0033】
その後、図2(d)に示すように、多層膜20の最上層のSi層上に溶解性薄膜としての厚さ1nmのAg層24を再びスパッタリングにより成膜する。これにより、図2(b)に示したような飛散粒子であるタングステンが付着する前の多層膜反射鏡の状態に戻すことができる。その結果、多層膜反射鏡の反射率を元の状態に回復することができる。
【0034】
上述したような工程を繰り返すことにより、多層膜表面に飛散粒子が付着しても、石英基板の再加工、Mo/Si多層膜の再成膜を行うことなく、同一の多層膜反射鏡を長期間使用することができる。
【0035】
また、Ag層を酸で溶解して飛散粒子を除去した後、再びAg層を多層膜上に形成するという反射率回復工程は、石英基板の再加工、Mo/Si多層膜の再成膜を行う工程に比べて低コストで実施することができる。
【0036】
つまり、従来技術では、付着した飛散粒子を多層膜に影響を与えずに除去できないので、多層膜をドライエッチングなどで除去し、基板を再研磨した後、基板上に多層膜を再成膜することが必要である。これに対して、本実施の形態では、Ag層を酸で溶解することにより飛散粒子を除去したコンデンサミラーの最上層にAg層を再成膜するだけでコンデンサミラーの再使用が可能となり、低コスト化を図ることができる。
【0037】
また、飛散粒子の付着量が増加してAg層の表面を飛散粒子が厚く覆ってしまうと、本実施の形態に示したタングステンのように飛散粒子が酸に溶け難い物質であった場合には多層膜を酸に浸しても酸がAg層にまで達することができず、飛散粒子の除去ができなくなる。そのため、硝酸への浸漬は飛散粒子の付着量が比較的に少ないうちに行うことが好ましい。
【0038】
コンデンサミラーの取り外しの頻度が上昇すると露光装置の稼働率を低下させることになる。しかし、コンデンサミラーの位置は正確に記録されているため、コンデンサミラーを露光装置に設置する際のアライメントを短時間で終了させることができるので、稼働率低下は極めて小さく抑えることが可能である。
【0039】
また、多層膜の最表面に成膜されたAg層は、酸化が進むと酸によって取り除くことができなくなり、反射率も低下する。このため、前述したように、コンデンサミラー15の配置された空間(真空容器11の内部)の酸素を含む気体の分圧を1×10−8Pa以下(好ましくは1×10−10Pa以下)に保ち、それによりAg層の酸化を抑制している。従って、Ag層の酸化が進まず、飛散粒子の付着後に硝酸による除去が可能となる。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたX線露光装置の一例を示す構成図である。
【0041】
X線露光装置は、主に軟X線光源S、コンデンサC、照明光学系、マスクMのステージ(図示せず)、投影光学系、ウエハWのステージ(図示せず)などにより構成されている。軟X線光源Sには、プラズマ励起用のレーザーLからなるレーザープラズマ光源の他に放電プラズマ光源や放射光などが使用される。照明光学系(IR1、IR2、IR3およびIR4等)は、反射面に斜め方向から入射した軟X線を反射させる斜入射ミラー、反射面が多層膜により形成される多層膜ミラー、および所定の波長の軟X線のみを透過させるフィルター等により構成されている。この照明光学系によってフォトマスクM上を所望の波長の軟X線で照明する。この照明光学系は本実施の形態の多層膜反射鏡を有している。
【0042】
軟X線の波長域では透明な物質は存在しないので、マスクMには従来の透過型のマスクではなく反射型のマスクが使用される。投影結像光学系は複数の多層膜ミラー(PR1、PR2、PR3およびPR4)等により構成されている。マスクM上に形成された回路パターンは、投影結像光学系によりレジストが塗布されたウエハW上に結像して該レジストに転写される。なお、軟X線は大気に吸収されて減衰するため、その光路は全て所定の真空度(例えば、1×10−5Torr以下)に維持されている。
【0043】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、前記実施の形態では、飛散粒子がタングステンの場合で説明しているが、タングステンに限定されるものではなく、飛散粒子が他の物質の場合でも本発明を適用することが可能である。この場合、飛散粒子の物質によっては硝酸以外の酸を用いるも可能である。
【0044】
また、前記実施の形態では、露光装置の軟X線光学系に前記多層膜反射鏡を適用しているが、軟X線光学系は露光装置に限定されるものではなく、他の軟X線光学系に多層膜反射鏡を適用することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、多層膜表面に付着した飛散粒子を除去することにより多層膜反射鏡の反射率を容易に回復できる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたEUVリソグラフィ装置の光源部分を概略的に示す構成断面図である。
【図2】(a)は、多層膜反射鏡における多層膜の表層近傍を模式的に示す断面図であり、(b)〜(d)は、多層膜反射鏡の反射率を回復させる方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたX線露光装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
11…真空容器 12…Xeガスノズル
13…励起パルスレーザー光 14…プラズマ
15…コンデンサミラー 16…EUV光の平行光束
17…フィルター 18…ミラーホルダ
19…基盤 20…多層膜
21…モリブデン(Mo) 22…シリコン(Si)
23,24…Ag層
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスなどの製造に用いられる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路素子の微細化の進展に伴い、光の回折限界によって制限される光学系の解像力を向上させるために、従来の紫外線に代わって、これより波長の短い11〜14nm程度の波長を有する軟X線を使用した投影リソグラフィ技術が開発されている(例えば、D.Tichenor,et al, SPIE 2437(1995)292参照)。この技術は、最近ではEUV(Extreme Ultra Violet:極紫外線)リソグラフィとも呼ばれているが、その内容は同一である(以下、EUVリソグラフィと呼ぶ)。EUVリソグラフィは、従来の光リソグラフィ(波長190nm程度以上)では実現不可能な70nm以下の解像力を有する将来のリソグラフィ技術として期待されている。
【0003】
この波長域では物質の屈折率が1に非常に近いので、屈折や反射を利用した従来の光学素子は使用できない。屈折率が1よりも僅かに小さいことによる全反射を利用した斜入射ミラーや、界面での微弱な反射光の位相を合わせて多数重畳させて、全体として高い反射率を得る多層膜反射鏡(多層膜ミラー)などが使用される。13.4nm付近の波長域では、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層を交互に積層したMo/Si多層膜を用いると直入射で67.5%の反射率を得ることが出来、波長11.3nm付近の波長域では、Mo層とベリリウム(Be)層を交互に積層したMo/Be多層膜を用いると直入射で70.2%の反射率を得ることができる(例えば、C.Montcalm, Proc. SPIE, Vol. 3331(1998)P.42参照)。
【0004】
EUVリソグラフィ装置は、主として軟X線光源、照明光学系、マスクステージ、投影結像光学系(投影光学系)、ウエハステージ等により構成される。軟X線光源には、レーザープラズマ光源、放電プラズマ光源や放射光などが使用される。照明光学系は、反射面に斜め方向から入射した軟X線を反射させる斜入射ミラー、反射面が多層膜により形成される多層膜ミラー及び所定の波長の軟X線のみを透過させるフィルター等により構成され、マスク上を所望の波長の軟X線で照明する。なお、軟X線の波長域では透明な物質は存在しないので、マスクには従来の透過型のマスクではなく反射型のマスクが使用される。
【0005】
マスク上に形成された回路パターンは、複数の多層膜ミラー等で構成された投影結像光学系により、レジストが塗布されたウエハ(感光性基板)上に結像して該レジストに転写される。なお、軟X線は大気に吸収されて減衰するため、その光路は全て所定の真空度(例えば、1×10−5Torr以下)に維持されている。
【0006】
EUVリソグラフィにおいては反射鏡表面の汚れが大きな問題となる。現在、EUV軟X線光源として開発が進められているレーザープラズマ光源や放電プラズマ光源では、光源部から飛散粒子が発生し、この飛散粒子が多層膜反射鏡の表面に付着して反射率を低下させる。特に照明光学系を構成する多層膜反射鏡のうちプラズマに最も近い多層膜反射鏡(以下コンデンサミラーと記す)は、プラズマから輻射されるEUV光をできるだけ大きな立体角で取り込むためにプラズマから反射面までの距離は100mm以下になると言われており、飛散粒子の影響を最も大きく受ける。コンデンサミラーを含め、光学系を構成する多層膜反射鏡のEUV反射率はEUVリソグラフィ装置の処理速度(スループット)に直接影響するため、飛散粒子の発生と付着を低減させる方法の開発が進められている。
【0007】
プラズマから発生する飛散粒子を低減するために、キセノン(Xe)ガスをターゲット材としたガスジェットターゲットレーザープラズマ光源の開発が進められている。Xeは常温で気体であるため、多層膜表面には付着しないが、生成されたプラズマを形成するイオンによってXeガスを噴出するノズル先端部が削られて飛散粒子となる。ノズルから離れるにしたがって急激にガス密度が低下するため、プラズマの発生位置はノズル先端から距離を大きくとることはできず、ノズル先端部のイオンによる侵食は完全に無くすことはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように現在のところ、光源をレーザープラズマ光源や放電プラズマ光源とした場合の飛散粒子の発生を完全に無くすことはできない。このため、飛散粒子は光源であるプラズマに最も近い多層膜反射鏡の表面に付着し、その寿命は有限なものとなる。EUVリソグラフィ装置に使用されるEUV光学系を構成する多層膜反射鏡では、高い形状精度が求められ、表面に周期長面内分布が精度良く制御された多層膜が成膜されている必要があるために、形状を変化させずに反射率の低下した反射鏡の反射率を回復させることが望まれていた。
【0009】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、多層膜表面に付着した飛散粒子を除去することにより多層膜反射鏡の反射率を容易に回復できる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明に係る多層膜反射鏡は、屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡において、基板上に形成された多層膜と、この多層膜の最上層上に形成された溶解性薄膜と、を具備することを特徴とする。
なお、前記溶解性薄膜が銀からなる膜であることが好ましい。また、溶解性とは、酸やアルカリ、溶剤などにより溶解され得るという意味である。
【0011】
前記多層膜反射鏡によれば、多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成しているため、多層膜反射鏡の表面に飛散粒子が付着しても、この溶解性薄膜を適度な濃度の酸に浸すことによって飛散粒子及び溶解性薄膜を除去することができる。また、多層膜は酸に侵されないため、溶解性薄膜より基板側の構造と形状は全く影響を受けない。よって、多層膜表面に再度溶解性薄膜を成膜することにより、飛散粒子が付着する前の状態を回復することができる。
【0012】
また、本発明に係る多層膜反射鏡において、前記多層膜は、モリブデンを含む層とシリコンを含む層からなることも可能である。これにより、波長13.5nm付近で高い反射率を有する多層膜を得ることができる。この多層膜において最表面に溶解性薄膜を成膜しておくことにより、付着した飛散粒子の除去と反射率の回復が容易な多層膜反射鏡を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る多層膜反射鏡においては、前記多層膜の周期長が5nm以上7.5nm以下であることが好ましい。これにより、波長13.5nm付近で高い反射率を有する多層膜を得ることができる。この多層膜において最表面に溶解性薄膜を成膜しておくことにより、付着した飛散粒子の除去と反射率の回復が容易な多層膜反射鏡を得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る多層膜反射鏡においては、前記銀からなる膜の厚さが2nm以下であることが好ましい。これにより、多層膜の最上層上に成膜される銀による反射率低下による影響を2%程度とし、多層膜全体としては高い反射率を達成できる。
【0015】
本発明に係る多層膜反射鏡の製造方法は、屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡の製造方法において、基板上に多層膜を成膜する工程と、この多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成する工程と、を具備することを特徴とする多層膜反射鏡の製造方法。
【0016】
また、本発明に係る多層膜反射鏡の製造方法においては、前記溶解性薄膜が銀からなる膜であることも可能である。
また、本発明に係る多層膜反射鏡の製造方法においては、前記銀からなる膜の厚さが2nm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る多層膜反射鏡の反射率回復方法は、請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡であって、露光装置に使用することにより溶解性薄膜上に飛散粒子が付着した多層膜反射鏡の反射率回復方法において、溶解性薄膜を酸で溶解することにより、多層膜から飛散粒子及び溶解性薄膜を除去する工程と、多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
【0018】
前記多層膜反射鏡の反射率回復方法によれば、多層膜表面に付着した飛散粒子を容易に除去することができ、更に、多層膜及びその基板の再利用が低コストで可能となる。
【0019】
本発明に係る軟X線光学系は、請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡を用いて構成されたものであることを特徴とする。
この軟X線光学系によれば、飛散粒子の付着により反射率の低下した多層膜反射鏡の反射率を容易に回復させることができるため、光学系全体としての反射率の回復も容易となる。
【0020】
本発明に係る軟X線露光装置は、軟X線を発生させる軟X線光源と、この軟X線光源からの軟X線をマスクに導く照明光学系と、前記マスクからの軟X線を感光性基板に導く投影光学系とを有し、前記マスクのパターンを感光性基板へ転写する軟X線露光装置において、前記照明光学系に請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡を有することを特徴とする。
【0021】
前記軟X線露光装置によれば、飛散粒子の付着により低下した光学系の反射率の回復が容易となり、多層膜基板の製作と多層膜の成膜を新たに行う必要がないため、光学系の性能を低コストで維持することができる。
【0022】
また、本発明に係る軟X線露光装置においては、前記多層膜反射鏡が配置された空間の酸素を含む気体の分圧が1×10−8Pa以下に保たれていることが好ましい。これにより、多層膜の最表面の銀などの溶解性薄膜の酸化が進むことが無く、酸により容易に溶解性薄膜を除去できる状態を保つことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたEUVリソグラフィ装置の光源部分を概略的に示す構成断面図である。
【0024】
このEUVリソグラフィ装置は、Xeガスジェットターゲットレーザープラズマを光源とするものである。真空容器11の内部にXeガスノズル12が配置されている。このXeガスノズル12の先端部分はタングステン製である。このガスノズル12から噴出したXeガスには励起パルスレーザー光13が集光・照射され、プラズマ14が生成されるようになっている。生成されたプラズマ14から輻射されるEUV光を取り込むために回転放物面形状を有するコンデンサミラー15が真空容器11の内部に配置されている。EUV光をコンデンサミラー15で反射することによりEUV光の平行光束16が形成される。この光束16はジルコニウムのフィルター17を通過するようになっており、照明光学系(図示せず)を介して反射マスク(図示せず)を照明するようになっている。
【0025】
また、本装置は、真空容器11の内部を真空化するための真空ポンプ(図示せず)を備えている。これにより、露光中はフィルター17よりプラズマ側の空間(真空容器11の内部)の酸素を含む気体の分圧が1×10−8Pa以下(好ましくは1×10−10Pa以下)に保たれている。
【0026】
コンデンサミラー15は多層膜反射鏡である。コンデンサミラー15の表面にはMo/Si多層膜が成膜されており、コンデンサミラー15上でEUV光の入射角度が違っても同じ波長のEUV光を反射するように周期長には面内分布が形成されている。Mo/Si多層膜の最表面には厚さ1nmのAg層が成膜されている。多層膜反射鏡の製造方法及び多層膜反射鏡の反射率回復方法については後述する。
【0027】
コンデンサミラー15はミラーホルダ18に固定されており、ミラーホルダ18に対してコンデンサミラーの基板は厳密な位置出しがなされている。ミラーホルダ18は基盤19に固定されており、その位置が記録されている。
【0028】
このような配置で縮小投影露光を行うと、光源のXeガスノズル部分から発生した飛散粒子がコンデンサミラー15の表面に付着し、それによりコンデンサミラー15の反射率を低下させる。予めコンデンサミラーは二枚準備されており、本装置に配置したコンデンサミラー15の反射率が低下したら、このコンデンサミラー15を本装置から取り外してもう一枚のコンデンサミラーと交換する。取り外したコンデンサミラー15は、反射率を回復させるために硝酸に浸してAg層を除去することによって、その上に付着した飛散粒子が除去される。その後、再びAg層を成膜して次の交換に備える。
【0029】
次に、多層膜反射鏡の製造方法及び多層膜反射鏡の反射率回復方法について図2を参照しつつ説明する。
図2(a)は、多層膜反射鏡における多層膜の表層近傍を模式的に示す断面図であり、図2(b)〜(d)は、多層膜反射鏡の反射率を回復させる方法を説明するための断面図である。
【0030】
図2(a)に示す多層膜反射鏡は、所望の形状に精度良く加工された図示せぬ石英基板を有している。この石英基板上にはMo/Si多層膜20がスパッタリングにより成膜されている。この多層膜20はモリブデン(Mo)21とシリコン(Si)22を交互に積層したMo/Si多層膜であり、最上層はシリコン22である。Mo/Si多層膜の周期長は6.9nmであり、最上層のSi層の上には溶解性薄膜としての厚さ1nmのAg層23がスパッタリングにより成膜されている。
【0031】
図2(b)に示す多層膜反射鏡は、前述したXeガスをターゲット材としたガスジェットターゲットレーザープラズマ光源の近傍に多層膜反射鏡を配置し、プラズマを生成した後の多層膜反射鏡の表面状態を示すためのものである。Xeガスが噴出するXeガスジェットノズルは、プラズマによる侵食を軽減させ飛散粒子の総量軽減を目的として高融点のタングステンにより形成されている。このため、多層膜20の表面には飛散粒子であるタングステン(W)がわずかに付着しているが、付着量が比較的小量であるためにタングステンは均一な膜となっておらず、多層膜の表面に島状に離散的に付着している。このように飛散粒子が付着すると多層膜反射鏡の反射率が低下する。
【0032】
この状態の多層膜反射鏡を装置から取り外し、この多層膜20を5規定の濃度の硝酸に浸した後の状態を図2(c)に示している。硝酸によりAg層23が溶けてその上に付着していたタングステンも取り除かれる。Ag層23の下に存在するSi層22及び基板材である石英は硝酸には侵されないため、Mo/Si多層膜20は硝酸の影響を全く受けずにその構造が保たれ、石英基板の形状も変化しない。
【0033】
その後、図2(d)に示すように、多層膜20の最上層のSi層上に溶解性薄膜としての厚さ1nmのAg層24を再びスパッタリングにより成膜する。これにより、図2(b)に示したような飛散粒子であるタングステンが付着する前の多層膜反射鏡の状態に戻すことができる。その結果、多層膜反射鏡の反射率を元の状態に回復することができる。
【0034】
上述したような工程を繰り返すことにより、多層膜表面に飛散粒子が付着しても、石英基板の再加工、Mo/Si多層膜の再成膜を行うことなく、同一の多層膜反射鏡を長期間使用することができる。
【0035】
また、Ag層を酸で溶解して飛散粒子を除去した後、再びAg層を多層膜上に形成するという反射率回復工程は、石英基板の再加工、Mo/Si多層膜の再成膜を行う工程に比べて低コストで実施することができる。
【0036】
つまり、従来技術では、付着した飛散粒子を多層膜に影響を与えずに除去できないので、多層膜をドライエッチングなどで除去し、基板を再研磨した後、基板上に多層膜を再成膜することが必要である。これに対して、本実施の形態では、Ag層を酸で溶解することにより飛散粒子を除去したコンデンサミラーの最上層にAg層を再成膜するだけでコンデンサミラーの再使用が可能となり、低コスト化を図ることができる。
【0037】
また、飛散粒子の付着量が増加してAg層の表面を飛散粒子が厚く覆ってしまうと、本実施の形態に示したタングステンのように飛散粒子が酸に溶け難い物質であった場合には多層膜を酸に浸しても酸がAg層にまで達することができず、飛散粒子の除去ができなくなる。そのため、硝酸への浸漬は飛散粒子の付着量が比較的に少ないうちに行うことが好ましい。
【0038】
コンデンサミラーの取り外しの頻度が上昇すると露光装置の稼働率を低下させることになる。しかし、コンデンサミラーの位置は正確に記録されているため、コンデンサミラーを露光装置に設置する際のアライメントを短時間で終了させることができるので、稼働率低下は極めて小さく抑えることが可能である。
【0039】
また、多層膜の最表面に成膜されたAg層は、酸化が進むと酸によって取り除くことができなくなり、反射率も低下する。このため、前述したように、コンデンサミラー15の配置された空間(真空容器11の内部)の酸素を含む気体の分圧を1×10−8Pa以下(好ましくは1×10−10Pa以下)に保ち、それによりAg層の酸化を抑制している。従って、Ag層の酸化が進まず、飛散粒子の付着後に硝酸による除去が可能となる。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたX線露光装置の一例を示す構成図である。
【0041】
X線露光装置は、主に軟X線光源S、コンデンサC、照明光学系、マスクMのステージ(図示せず)、投影光学系、ウエハWのステージ(図示せず)などにより構成されている。軟X線光源Sには、プラズマ励起用のレーザーLからなるレーザープラズマ光源の他に放電プラズマ光源や放射光などが使用される。照明光学系(IR1、IR2、IR3およびIR4等)は、反射面に斜め方向から入射した軟X線を反射させる斜入射ミラー、反射面が多層膜により形成される多層膜ミラー、および所定の波長の軟X線のみを透過させるフィルター等により構成されている。この照明光学系によってフォトマスクM上を所望の波長の軟X線で照明する。この照明光学系は本実施の形態の多層膜反射鏡を有している。
【0042】
軟X線の波長域では透明な物質は存在しないので、マスクMには従来の透過型のマスクではなく反射型のマスクが使用される。投影結像光学系は複数の多層膜ミラー(PR1、PR2、PR3およびPR4)等により構成されている。マスクM上に形成された回路パターンは、投影結像光学系によりレジストが塗布されたウエハW上に結像して該レジストに転写される。なお、軟X線は大気に吸収されて減衰するため、その光路は全て所定の真空度(例えば、1×10−5Torr以下)に維持されている。
【0043】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、前記実施の形態では、飛散粒子がタングステンの場合で説明しているが、タングステンに限定されるものではなく、飛散粒子が他の物質の場合でも本発明を適用することが可能である。この場合、飛散粒子の物質によっては硝酸以外の酸を用いるも可能である。
【0044】
また、前記実施の形態では、露光装置の軟X線光学系に前記多層膜反射鏡を適用しているが、軟X線光学系は露光装置に限定されるものではなく、他の軟X線光学系に多層膜反射鏡を適用することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、多層膜表面に付着した飛散粒子を除去することにより多層膜反射鏡の反射率を容易に回復できる多層膜反射鏡、その製造方法、多層膜反射鏡の反射率回復方法、軟X線光学系及び軟X線露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたEUVリソグラフィ装置の光源部分を概略的に示す構成断面図である。
【図2】(a)は、多層膜反射鏡における多層膜の表層近傍を模式的に示す断面図であり、(b)〜(d)は、多層膜反射鏡の反射率を回復させる方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態による多層膜反射鏡を備えたX線露光装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
11…真空容器 12…Xeガスノズル
13…励起パルスレーザー光 14…プラズマ
15…コンデンサミラー 16…EUV光の平行光束
17…フィルター 18…ミラーホルダ
19…基盤 20…多層膜
21…モリブデン(Mo) 22…シリコン(Si)
23,24…Ag層
Claims (12)
- 屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡において、
基板上に形成された多層膜と、
この多層膜の最上層上に形成された溶解性薄膜と、
を具備することを特徴とする多層膜反射鏡。 - 前記溶解性薄膜が銀からなる膜であることを特徴とする請求項1に記載の多層膜反射鏡。
- 前記多層膜は、モリブデンを含む層とシリコンを含む層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡。
- 前記多層膜の周期長が5nm以上7.5nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の多層膜反射鏡。
- 前記銀からなる膜の厚さが2nm以下であることを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか1項に記載の多層膜反射鏡。
- 屈折率の異なる少なくとも二種類以上の物質を交互に又は周期的に一定の周期長で積層してなる多層膜を備えた多層膜反射鏡の製造方法において、
基板上に多層膜を成膜する工程と、
この多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする多層膜反射鏡の製造方法。 - 前記溶解性薄膜が銀からなる膜であることを特徴とする請求項6に記載の多層膜反射鏡の製造方法。
- 前記銀からなる膜の厚さが2nm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の多層膜反射鏡の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡であって、露光装置に使用することにより溶解性薄膜上に飛散粒子が付着した多層膜反射鏡の反射率回復方法において、
溶解性薄膜を酸で溶解することにより、多層膜から飛散粒子及び溶解性薄膜を除去する工程と、
多層膜の最上層上に溶解性薄膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする多層膜反射鏡の反射率回復方法。 - 請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡を用いて構成されたことを特徴とする軟X線光学系。
- 軟X線を発生させる軟X線光源と、この軟X線光源からの軟X線をマスクに導く照明光学系と、前記マスクからの軟X線を感光性基板に導く投影光学系とを有し、前記マスクのパターンを感光性基板へ転写する軟X線露光装置において、
前記照明光学系に請求項1又は2に記載の多層膜反射鏡を有することを特徴とする軟X線露光装置。 - 前記多層膜反射鏡が配置された空間の酸素を含む気体の分圧が1×10−8Pa以下に保たれていることを特徴とする請求項11に記載の軟X線露光装置。
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