JP2004036744A - ボールねじ及びボールねじの潤滑剤充填方法 - Google Patents

ボールねじ及びボールねじの潤滑剤充填方法 Download PDF

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Abstract

【課題】少量のグリスをねじ軸とボールナットの間の空間に充填すればすみ、無限循環回路内に入り込む異物の量を少なくできるボールねじ及びボールねじの潤滑剤充填方法を提供すること。
【解決手段】ボールナット14とねじ軸12との間を無限循環する転動体34同士の間にスペーサ38を介在させ、スペーサ38の外径を転動体34の外径の0.7倍〜0.9倍とし、ボールナット14とねじ軸12との間に潤滑剤を充填してボールねじ10を構成し、このボールねじ10に潤滑剤を外部から供給する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじ及びボールねじの潤滑剤充填方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、無限循環回路を無限循環する多数個の転動体の転動を利用した直動装置としてボールねじがある。図5及び図6に示すように、ボールねじ10はねじ軸12とボールナット14を有する。ねじ軸12は、外周面上にねじ溝である転動体転動溝18を有して軸方向に延びて形成されている。転動体転動溝18の断面は半円状またはゴシックアーチ形状を有する。ゴシックアーチ形状とは、2つの円弧をつないで形成した形状である。また、ボールナット14の内周面上には、ねじ溝である転動体転動溝20が転動体転動溝18と対向して形成されており、ボールナット14がねじ軸12と嵌合している。転動体転動溝20の断面もやはり半円状またはゴシックアーチ形状を有する。
【0003】
そして、転動体転動溝18と転動体転動溝20に挟まれてできた螺旋状の空間が転動体軌道路22を構成する。さらに、ねじ軸12の外周面上のねじ山19とボールナット14の内周面上のねじ山21とが対向して、両ねじ山19、21の間にも螺旋状の空間である螺旋状隙間23が形成されている。この螺旋状隙間23と転動体軌道路22は互いに隣接し、かつ連通している。また、螺旋状隙間23を挟むねじ山19、21との間の間隔h1は、後述する転動体34の外径のおよそ0.2倍程度の寸法となっている。
【0004】
また、ボールナット14の肉厚部分には、ねじ軸を跨いで1対をなす循環孔24が形成されている。循環孔24の一端側は転動体軌道路22に接線方向から連通しており、循環孔24の他端側はボールナット14の外部に開口している。そして、循環孔24の他端側同士は略Uの字形をした転動体チューブ26で連結されている。1対の循環孔24及び転動体循環チューブ26がボール循環部をなす。これらの転動体軌道路22、循環孔24及び転動体チューブ26が無限循環回路16を構成している。また、多数の転動体34が無限循環回路16に充填されており転動体列を構成している。なお、図5及び図6のボールねじ10においては無限循環回路16が2経路設けてある。無限循環回路16の経路の数は適宜増減される。
【0005】
さらに、図7に示すように、転動体列にあっては、隣接する各転動体34同士の間に大きな転動体間隙間36が形成されている。転動体間隙間36は、転動体列の軸方向の周りに略三角形をなす断面が連続してなり、転動体間隙間36が転動体列に沿って各転動体34同士の間ごとに存在する。転動体間隙間36の三角形断面の高さh2は、転動体34の外径のおよそ0.5倍程度の寸法となっている。
【0006】
そして、転動体34の転動を介してボールナット14がねじ軸12上を軸方向に相対移動する。より具体的には、ねじ軸12が軸回転をし、ボールナット14が軸方向に相対的に直線運動をする。この相対移動につれて、一方の無限循環回路16における転動体34は、転動体軌道路22内をボールナット14の移動方向と反対方向に螺旋を描いて転動しつつ移動し、ボールナット14の移動方向に対して後ろ側にある循環孔24から転動体チューブ26へ入り、他端側の循環孔24から転動体軌道路22へ戻り、無限循環回路16を繰り返して循環する。他方の無限循環回路16内の転動体34も同様に循環する。
【0007】
転動体34が無限循環回路16を円滑に転動し、転動体34や無限循環回路16の破損を防止し、ボールナット14がねじ軸12上を円滑に相対移動し、ボールねじ10の寿命を長くするべく、潤滑剤であるグリスをボールねじ10の外部から転動体軌道路22と螺旋状隙間23へ注入する。潤滑剤注入部であるグリスニップル30がボールナット14の一方の開口端32側にあるフランジ28上に設けられており、グリスニップル30からボールナット14の内周面までグリス注入路31が形成され、グリスをボールねじ10内へ注入可能な構成となっている。グリスは、転動体軌道路22を転動して通過する転動体34にも注入され、さらに、転動体34を介して無限循環回路16へ行き渡る。
【0008】
また、ボールナット14の両側にある開口端27に段部が形成されており、この段部にシール部材32が着脱可能に取り付けられている。このシール部材32が転動体転動溝20へ異物が侵入することを防止し、グリスがボールナット14の外へ流出することをも防止している。シール部材32にはラビリンスシール、ワイパシール、リップシール等が用いられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のボールねじ10にあっては、グリスニップル30から注入したグリスは、ボールナット14とねじ軸12の間を軸方向に流れてしまい、転動体軌道路22と螺旋状隙間23の全体へ行き渡りにくいという不都合があった(図8を参照)。
【0010】
すなわち、螺旋状隙間23を挟むねじ山19とねじ山21との間隔h1が、転動体間隙間36の三角形断面の高さh2よりも小さく、グリスは螺旋状隙間23よりも転動体間隙間36をより少ない抵抗で流れやすくなっている。このため、グリスニップル30から注入されたグリスは、ボールナット14の内周面とねじ軸12の外周面の間に押し出されて螺旋状隙間23へ一旦入るが、螺旋状隙間23から隣接する転動体軌道路22内の転動体間隙間36へ主に流れる。そして、転動体間隙間36を流れたグリスは、グリスの流動方向に隣接する螺旋状隙間23へ出るが、再び、この螺旋状隙間23からグリスの流動方向に隣接する転動体軌道路22内の転動体間隙間36へ主に流れてしまう。螺旋状隙間23に沿ってグリスが流れると、大きな抵抗を受けるので、螺旋状隙間23に沿って螺旋を描いて流れるグリスの量は少ない。したがって、グリスの大部分は、互いに隣接する螺旋状隙間23と転動体間隙間36との間を交互に流れ、ねじ軸12の軸方向にほとんどまっすぐに流れてしまう。なお、図8において、グリスの流れる方向を矢印の向きによって示し、グリスの流れる量の大きさを矢印の大きさで相対的に示す。
【0011】
このため、転動体軌道路22と螺旋状隙間23の全体へ行き渡らせるには、大量のグリスをグリスニップル30から注入して徐々に全体に行き渡らせるしかなく、ボールナット14の外部へ押し出されるグリスの量も非常に多かった。これに伴い、グリスによる周辺の汚染防止が大掛かりとなり、グリスの回収設備が必要となる。
【0012】
また、グリスニップル30がボールナット14の端部にあるフランジ28上に形成されているので、ボールねじ10の設置状態によっては、グリスニップル30が下向きとなり、グリスの注入作業が困難になるという不都合もあった。
さらに、転動体間隙間36が大きいので、この隙間に侵入する異物の量も多くなるという不都合もあった。磨耗粉等の異物は転動体34が無限循環回路16内を転動し循環するのに伴って発生し、ボールねじ10の外部からも若干量の異物がシール部材32を通過してボールねじ10内へ侵入する。これらの異物が転動体間隙間36に入り、無限循環回路16内を転動体34とともに循環すると、転動体34が無限循環回路16内を円滑に転動することの妨げとなり、転動体34や無限循環回路16が破損する原因となり、ボールねじ10の寿命も縮まる。
【0013】
本発明は、上記した従来の技術の問題点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、多量のグリスを必要とせずにねじ軸とボールナットとの間の空間をグリスで充填でき、無限循環回路内に入り込む異物の量を少なくすることができるボールねじ及びボールねじの潤滑剤充填方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明は、螺旋状のねじ山及び転動体転動溝をなすねじ溝を内周面上に有し、この転動体転動溝を結ぶボール循環部を備えるボールナットと、外周面上に前記ボールナットのねじ山及びねじ溝に対応して螺旋状をなすねじ山及び転動体転動溝をなすねじ溝を有し、前記ボールナットに嵌合するねじ軸と、前記ねじ軸と前記ボールナットの各転動体転動溝が対向してなす転動体軌道路及び前記ボール循環部よりなる無限循環回路を無限循環する複数の転動体と、隣合う前記転動体同士の間の転動体間隙間に介在してこの隙間の一部を塞ぐスペーサとから構成されるボールねじにおいて、前記スペーサの外径を前記転動体の外径の0.7倍〜0.9倍とし、このスペーサと前記転動体軌道路との間の距離を、相互に対向する前記ボールナットのねじ山及び前記ねじ軸のねじ山との間の距離よりも小さくして、前記転動体軌道路の面、前記転動体及び前記スペーサが前記転動体間隙間を流れる潤滑剤に及ぼす抵抗力の大きさを、相互に対向する前記ボールナットのねじ山及び前記ねじ軸のねじ山がこれらのねじ山の間を流れる潤滑剤に及ぼす抵抗力の大きさよりも大きくし、前記ボールナット及び前記ねじ軸の相互に対向するねじ山間で螺旋を描いて流れる潤滑剤の量を、前記転動体間隙間を流れる潤滑剤の量よりも多くしたボールねじである。
【0015】
請求項1の発明によると、隣接する各転動体同士の間にはスペーサが存在しているので、転動体間隙間の断面は小さくなっている。このため、ボールねじの外部からボールナットとねじ軸との間に注入された潤滑剤は、螺旋状隙間と転動体間隙間との間を交互にねじ軸の軸方向に流れにくくなり、螺旋状隙間に沿って螺旋を描いて流れやすくなる。したがって、ボールナットとねじ軸との間全体に潤滑剤を行き渡らせやすくなる。また、潤滑剤注入に際し、必要な潤滑剤の量及びボールねじの外へ流出する潤滑剤の量も少なくなる。
【0016】
転動体間隙間の断面が小さくなって、その容積も小さくなり、転動体間隙間に侵入する異物の量も少なくなるので、無限循環回路内を転動体とともに循環する異物の量も少なくなる。
また、スペーサの外径を転動体の外径の0.7倍〜0.9倍とすると、転動体間隙間の容積が小さなものとなるとともに、スペーサが無限循環回路内を他のボールねじの構成部材と干渉し合うことなく循環する。すなわち、スペーサの外径が転動体の外径の0.7倍よりも小さいと、スペーサが小さくなってしまい、転動体間隙間の容積が大きくなり、外部から注入される潤滑剤の多くが転動体間隙間に流れ、螺旋状隙間に沿って螺旋を描いて流れる潤滑剤の割合が減少する。また、スペーサの外径が転動体の外径の0.9倍よりも大きいと、スペーサが他のボールねじの構成部材と干渉し合って、円滑に無限循環回路内を移動しない。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1に記載のボールねじであって、前記ボールナットと前記ねじ軸との間に潤滑剤を注入する潤滑剤注入部を、前記ボールナットの軸方向の中間の位置に形成したボールねじである。
請求項2の発明によると、潤滑剤はボールナットの中間の位置から注入され、ボールナットとねじ軸との間をボールナットの両端部に向かって分かれて流れる。このため、潤滑剤がボールナットとねじ軸との間に行き渡るために流れなければならない距離は、ボールナットの軸方向の一方の端部側から潤滑剤を注入する場合に比べて半分となる。したがって、潤滑剤をボールナットとねじ軸との間全体に潤滑剤をより行き渡らせやすくなる。また、ボールナットをねじ軸周りに回転させて潤滑剤注入部の向きを変えることができ、潤滑剤の注入が容易となる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のボールねじを用いて、前記ねじ軸と前記ボールナットの間に注入した潤滑剤のうち、前記ボールナット及び前記ねじ軸の相互に対向するねじ山間で螺旋を描いて流れる潤滑剤の量を、前記転動体間隙間を流れる潤滑剤の量よりも多くするボールねじの潤滑剤充填方法である。
【0019】
請求項3の発明によると、ボールねじに注入された潤滑剤のうち、螺旋状隙間に沿って螺旋を描いて流れる潤滑剤の量が多くなる。したがって、ボールナットとねじ軸との間全体に潤滑剤を行き渡らせやすく、また、潤滑剤注入に際し、必要な潤滑剤の量及びボールねじの外へ流出する潤滑剤の量も少なくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1ないし図3を参照して本発明の構成を説明する。なお、本実施の形態において前述した従来のボールねじと同様の構成については、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
図1及び図2に示すように、ねじ軸12、ねじ軸12に嵌合したボールナット14及び転動体列とからなるボールねじ10がある。ねじ軸12は従来のものと同様の構成を有し、1条のねじ溝である転動体転動溝18及びねじ山19が形成されている。なお、図2は、ボールナット14のフランジ28側寄り部分の断面図である。また、ボールナット14の内周面上には、従来のものと同様に、1条のねじ溝である転動体転動溝20及びねじ山21が形成されている。そして、転動体転動溝18と転動体転動溝20に挟まれて転動体軌道路22が構成されており、ねじ山19とねじ山21の間に螺旋状隙間23が構成されている。螺旋状隙間23と転動体軌道路22は隣接し、かつ連通し、螺旋状隙間23を挟むねじ山19、21との間の間隔h1は転動体34の外径のおよそ0.2倍程度の寸法となっている。
【0022】
また、ボールナット14はボール循環部である循環孔24と転動体チューブ26を有し、転動体軌道路22、循環孔24及び転動体チューブ26が無限循環回路16を構成し、ボールナット14の両側の開口端27にはシール部材32が着脱可能に取り付けられていることは、従来のボールねじと同様であり、無限循環回路16が2経路設けてある。
【0023】
さらに、各無限循環回路16には多数の転動体34及びスペーサ38が交互に充填され、転動体列を構成している。図3に示すように、スペーサ38は円柱状をなし、その直径は転動体34の外径の0.7倍ないし0.9倍の寸法となっている。なお、より望ましくは、スペーサ38の直径を転動体34の外径の0.75倍ないし0.85倍の寸法とする。
【0024】
また、スペーサ38の両端面に凹面が形成されており、凹面は転動体34の半径よりもやや小さな曲率半径を有し、凹面の縁は隣接する転動体34と円状に線接触している。スペーサ38はプラスチック材料を用いて形成することが望ましい。そして、スペーサ38の軸線が隣接する転動体34の中心点同士を結ぶ直線と一致又は平行となるように転動体列に配列されている。したがって、転動体間隙間36はスペーサ38の胴部と無限循環回路16の壁面によって囲まれた筒状の隙間となっている。なお、2組の無限循環回路16の間にある転動体軌道路22には転動体列は存在しない(図2を参照)。
【0025】
また、転動体軌道路22において、スペーサ38の胴部と無限循環回路16の壁面との距離h3は、転動体34の外径のおよそ0.15倍ないし0.05倍の寸法となっている。スペーサ38の直径を転動体34の外径の0.75倍ないし0.85倍の寸法とした場合、距離h3は転動体34の外径のおよそ0.125倍ないし0.075倍の寸法となる。
【0026】
また、従来のものと同様のグリスニップル30がボールナット14の胴部外側の軸方向のほぼ中間に取り付けられており、このグリスニップル30が潤滑材であるグリスの潤滑剤注入部をなす。グリスニップル30からグリスの注入路31が、ねじ軸の軸方向とほぼ直交してボールナット14の内周面まで連なっている。
【0027】
その他のボールねじ10の構成は従来のボールねじと同様である。
本実施の形態は上記のように構成されており、次にその作用について説明する。
ボールナット14がねじ軸12上を相対移動すると、転動体34が転動しつつ、無限循環回路56を循環するのは従来のボールねじと同様であり、転動体34とスペーサ38は一緒に無限循環回路16内を循環する。転動体列における転動体間隙間36の容積は、スペーサ38によって小さなものとなっているので、転動体間隙間36に入って無限循環回路16内を循環するグリスの量は少なくなる。したがって、転動体34は、少量のグリスで効率よく円滑に無限循環回路16内を動く。また、スペーサ38の直径は、転動体34の外径の0.9倍よりも小さな寸法となっているので、転動体列は無限循環回路16内をボールねじ10の他の部品と干渉し合うことはない。
【0028】
次に、グリスニップル30からボールナット14とねじ軸12との間へのグリスの注入について説明する(図4を参照)。
グリスニップル30からグリスを注入すると、グリスは注入路31を通ってボールナット14の内周面に押し出される。注入路31の出口はボールナット14の内周面上で軸方向の中間に位置するので、グリスはボールナット14の両側のシール部材32に向かって分かれて流れる。以下、グリスニップル30からフランジ28側のシール部材32に向かって流れる場合を説明する。
【0029】
最初、グリスは2組の無限循環回路16の間の転動体列が存在しない転動体軌道路22に沿って主に流れ、循環孔24の端部とぶつかる。その後、グリスは螺旋状隙間23に流れ込む。螺旋状隙間23は転動体軌道路22と隣接しているが、少量のグリスだけが転動体軌道路22内にある転動体列の隙間である転動体間隙間36を経由して軸方向に流れる。これは、h3がh1よりも小さく、螺旋状隙間23を流れたほうが、グリスが受ける抵抗が小さなものとなるからである。したがって、グリスの多くは螺旋状隙間23に沿って、螺旋を描いてフランジ28側のシール部材32に向かって流れる。
【0030】
グリスが螺旋状隙間23を流れていくにつれて、一部のグリスが転動体間隙間36にも流れ込む。そして、グリスがフランジ28側のシール部材32に到達すると、グリスをグリスニップル30から注入できなくなり、その時点でグリスの注入を終える。
その後、ボールナット14をねじ軸12上で相対移動させると、転動体間隙間36に入ったグリスは転動体列とともに無限循環回路16内を循環し、無限循環回路16内にもくまなくグリスが行き渡ることとなる。なお、グリスが、グリスニップル30からフランジ28と反対側のシール部材32に向かって流れる場合も同様である。グリスは螺旋状隙間23に沿って流れるので、螺旋状隙間23内においてグリスが行き渡らない部分ができにくくなる。
【0031】
また、グリスニップル30からグリスを注入する際、グリスニップル30の位置がグリス注入作業に不便な方向を向いている場合がある。このときは、ボールナット14をねじ軸12の周りで回転させて、グリスニップル30の位置を作業に便利な方向に向けることができる。
次に、ボールねじ10内の古くなって劣化したグリスを新しいグリスと置換する場合について説明する。まず、ボールナット14の両側のシール部材32をそれぞれボールナット14から取り外し、ボールナット14の両端の開口端27を開口する。そして、新しいグリスをグリスニップル30から注入する。新しいグリスが注入されるにしたがって、ボールナット14の両側の開口端27より劣化グリスが押し出される。開口端27から劣化グリスが出なくなるまで、新しいグリスをグリスニップル30から注入する。劣化グリスが新しいグリスと置き換わったら、新しいグリスの注入を止め、再びシール部材32をボールナット14の両側の開口端27に取り付ける。
【0032】
また、ボールねじ10を使用していると、ボールねじ10の内部で生じた磨耗粉等の異物や、シール部材32を通過してボールねじ10内に侵入した異物がボールねじ10の内部にたまってくる。これらの異物は、転動体間隙間36が小さいので転動体列の間に侵入しにくく、無限循環回路16内にも侵入しにくい。したがって、異物の多くは螺旋状隙間23内にたまっている。新しいグリスを注入して劣化グリスをボールねじ10の外へ押し出すと、螺旋状隙間23内にたまっていた異物も劣化グリスと一緒にボールねじ10の外へ排出される。ボールねじ10内においてグリスの多くは主に螺旋状隙間23に沿って螺旋を描いて流れるので、螺旋状隙間23内のほとんどの異物を排出することができる。
【0033】
したがって、本実施の形態にかかるボールねじ10によって、ボールねじ10の円滑な稼動を確保するために必要なグリスの量が少なくなり、ボールねじ10内にグリスを容易且つ迅速に注入することができる。また、螺旋状隙間23に容易にグリスが行き渡るので、ボールねじ10の稼動をより円滑に行うことができる。さらに、グリス注入時にボールねじ10の外へ流れ出るグリスの量も少なくなり、清浄さが要求される環境下での使用も容易となる。また、劣化グリスを新しいグリスと置きかえると、ボールねじ10内にたまっていた異物を排出できるので、無限循環回路16や転動体34の破損を防止でき、ボールねじ10の寿命を長くすることができる。また、グリスニップル30がボールナット14の胴部外側の軸方向中間に取り付けられているので、グリスニップル30をグリス注入に適した向きとし、グリスを簡単に注入することができる。また、グリスニップル30から注入されたグリスは、ボールナット14の胴部の軸方向中間部分から端部まで流れればよいので、グリスの流動する距離が短くなって、異物の排出が容易となるとともに、グリスをボールねじ10内に一層容易且つ迅速に注入することができる。
【0034】
なお、本実施の形態において、ねじ軸12及びボールナット14に形成される転動体転動溝18、20及びねじ山19、21は、それぞれ1条としたが、替わりに複数条(多条ねじ)の転動体転動溝18、20及びねじ山19、21を形成することが可能であることは勿論である。但し、多条ねじとする場合、ねじ軸12のそれぞれ独立した複数条のねじ山19と、これらのねじ山19にそれぞれ対向するねじ山21の間に、潤滑剤が充分に供給されるように、ねじ軸12の独立したねじ山19の条数に応じた数の潤滑剤注入部をボールナット14に設けることが好ましい。
【0035】
また、スペーサ38の両端面にある凹面は転動体34の半径よりもやや小さな曲率半径を有するとしたが、この凹面を他の形状により形成することも可能である。たとえば、この凹面の断面をゴシックアーチをなす2つの円弧によって形成することもできる。
(実施例1)
まず、本発明に係るスペーサを転動体同士の間に介在させて転動体列を形成した場合(本発明例1)と、転動体のみで転動体列を形成した場合(従来例1)との間で行った潤滑剤(グリス)の注入量の比較結果を示す。比較において使用したボールナット、ねじ軸及び転動体は従来のものと同様の構成を有し、ボールナットの開口端に取り付けたシール部材はラビリンスシールとし、転動体列の構成のみを本発明例1と従来例1との間で変えた。
【0036】
従来例1の場合、ボールねじ内のグリスを行き渡らせるべき空間容積は、従来例1にあっては30cm、本発明例1にあっては25cmであった。これらの空間容積全体にグリスを行き渡らせるために、グリスニップルから注入した総グリス量は、従来例1にあっては40cm、本発明例1にあっては28cmであった。(空間容積)/(注入した総グリス量)の値を計算すると、従来例1にあっては0.75、本発明例1にあっては0.90である。
【0037】
この結果より、本発明例1の場合、空間容積、注入した総グリス量はすべて従来例1よりも小さな値となっていることがわかる。したがって、本発明例1では必要なグリスの量が少なくてすむことが確認された。また、(空間容積)/(注入した総グリス量)の値は本発明例1の場合のほうが大きい。すなわち、本発明例1ではグリスの注入中にボールねじの外へ流出してしまうグリスの割合が少なく、グリスを注入する効率が優れていることが確認された。
【0038】
(実施例2)
次に、本発明に係るスペーサを転動体同士の間に介在させて転動体列を形成した場合(本発明例2)と、転動体のみで転動体列を形成した場合(従来例2)との間で行った潤滑剤(グリス)注入による異物排出効果の比較結果を示す。本発明例2におけるボールねじの構成は、前記本発明例1におけるボールねじの構成と同様であり、従来例2におけるボールねじの構成は、前記従来例1におけるボールねじの構成と同様とした。
【0039】
この比較では、径が0.3mmである異物を用意し、本発明例2及び従来例2にかかる各ボールナットの内周面中央付近にそれぞれ10個ずつの異物を挿入してから、各ボールねじを組み立てた。そして、各ボールナットのフランジと反対側のシール部材だけを各ボールナットから取り外し、各グリスニップルから150cmのグリスを注入した。グリスを注入するにつれて、フランジと反対側のボールナットの開口端からグリスが押し出されて流出する。この流出したグリス内に含まれる前記異物の数を計測した。計測結果は、従来例2にあっては3個、本発明例2にあっては8個であった。
この結果より、グリス注入によるボールねじ内からの異物排出効果は、本発明例2のほうが従来例2よりも大きいことがわかる。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、上記のようなボールねじであるので、多量のグリスを必要とせずにねじ軸とボールナットの間の空間をグリスで充填でき、無限循環回路内に入り込む異物の量を少なくすることができるボールねじ及びボールねじの潤滑剤充填方法を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るボールねじの正面図である。
【図2】本実施の形態に係るボールナットの軸方向の部分断面図である。
【図3】本実施の形態に係る転動体列の構成図である。
【図4】本実施の形態に係るボールねじにおけるグリスの流動状態の説明図である。
【図5】従来あるボールねじの正面図である。
【図6】従来あるボールナットの軸方向の部分断面図である。
【図7】従来ある転動体列の構成図である。
【図8】従来あるボールねじにおけるグリスの流動状態の説明図である。
【符号の説明】
10 ボールねじ
12 ねじ軸
14 ボールナット
16 無限循環回路
18 ねじ軸転動体転動溝
19 ねじ軸ねじ山
20 ボールナット転動体転動溝
21 ボールナットねじ山
22 転動体軌道路
23 螺旋状隙間
24 循環孔
26 転動体チューブ
27 開口端
28 フランジ
30 グリスニップル
31 注入路
32 シール部材
34 転動体
36 転動体間隙間
38 スペーサ

Claims (3)

  1. 螺旋状のねじ山及び転動体転動溝をなすねじ溝を内周面上に有し、この転動体転動溝を結ぶボール循環部を備えるボールナットと、外周面上に前記ボールナットのねじ山及びねじ溝に対応して螺旋状をなすねじ山及び転動体転動溝をなすねじ溝を有し、前記ボールナットに嵌合するねじ軸と、前記ねじ軸と前記ボールナットの各転動体転動溝が対向してなす転動体軌道路及び前記ボール循環部よりなる無限循環回路を無限循環する複数の転動体と、隣合う前記転動体同士の間の転動体間隙間に介在してこの隙間の一部を塞ぐスペーサとから構成されるボールねじにおいて、
    前記スペーサの外径を前記転動体の外径の0.7倍〜0.9倍とし、このスペーサと前記転動体軌道路との間の距離を、相互に対向する前記ボールナットのねじ山及び前記ねじ軸のねじ山との間の距離よりも小さくして、
    前記転動体軌道路の面、前記転動体及び前記スペーサが前記転動体間隙間を流れる潤滑剤に及ぼす抵抗力の大きさを、相互に対向する前記ボールナットのねじ山及び前記ねじ軸のねじ山がこれらのねじ山の間を流れる潤滑剤に及ぼす抵抗力の大きさよりも大きくし、
    前記ボールナット及び前記ねじ軸の相互に対向するねじ山間で螺旋を描いて流れる潤滑剤の量を、前記転動体間隙間を流れる潤滑剤の量よりも多くしたことを特徴とするボールねじ。
  2. 請求項1に記載のボールねじであって、前記ボールナットと前記ねじ軸との間に潤滑剤を注入する潤滑剤注入部を、前記ボールナットの軸方向の中間の位置に形成したことを特徴とするボールねじ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のボールねじを用いて、前記ねじ軸と前記ボールナットの間に注入した潤滑剤のうち、前記ボールナット及び前記ねじ軸の相互に対向するねじ山間で螺旋を描いて流れる潤滑剤の量を、前記転動体間隙間を流れる潤滑剤の量よりも多くすることを特徴とするボールねじの潤滑剤充填方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7044016B2 (en) * 2002-01-08 2006-05-16 Nsk Ltd. Ball screw
EP4001688A4 (en) * 2020-08-24 2023-02-22 NSK Ltd. METHOD AND DEVICE FOR SEALING GREASE INTO A BALL SCREW, BALL SCREW, METHOD OF PRODUCTION OF BALL SCREW, METHOD OF PRODUCTION OF LINEAR ACTUATOR, METHOD OF PRODUCTION OF VEHICLE BRAKE AND METHOD OF PRODUCTION OF A VEHICLE

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