JP2004036086A - 既存建物の地盤からの免震構造化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】既存建物1の下に平面上、少なくとも一方向に配列する基礎梁5,5からなる新設基礎4を構築すると共に、新設基礎4の周囲に下部基礎13とそれから分離した上部基礎14を設置、もしくは構築し、新設基礎4の少なくとも基礎梁5の長さ方向に沿って引張材6を配置し、引張材6の緊張により新設基礎4を上部基礎14に一体化させた状態で、上部基礎14を下部基礎13との間に設置される免震装置16に支持させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は既存建物を基礎毎、もしくは地盤毎、免震構造化する既存建物の地盤からの免震構造化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば住宅等の中低層の既存建物を免震構造化する方法には、基礎とその上の土台等を含む上部構造との間に免震装置を介在させる方法と、上部構造を基礎から分離させ、上部構造の下に上部構造を支持する床板を新たに構築し、床板の下に免震装置を設置する方法がある。
【0003】
いずれの方法も、上部構造の下に免震装置を設置するために上部構造を基礎から分離させて上昇させることが必要になるが、既存建物が独立基礎に支持されている場合の他、寺社建築等のように上部構造の柱脚が直接、礎石や玉石に支持されている場合等、上部構造を基礎から分離させにくい場合、または既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合には上部構造のみを基礎から分離させ、その下に免震装置を設置することは難しい。
【0004】
この発明は上記背景より、上部構造の下に免震装置を設置することが難しい既存建物を地盤から免震構造化する方法を提案するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1では既存建物の下に平面上、少なくとも一方向に配列する基礎梁からなる新設基礎を構築すると共に、新設基礎の周囲に上部基礎を設置、もしくは構築し、新設基礎を引張材の緊張により上部基礎に一体化させることにより、新設基礎と上部基礎に既存建物を支持させ、既存建物の上部構造を基礎から分離させることなく既存建物を基礎毎、免震構造化することを可能にする。
【0006】
基礎梁が少なくとも二方向に配列する場合は基礎梁のみによって新設基礎としての形態を維持できるが、隣接する基礎梁が間隔を隔てて一方向にのみ配列する場合のように基礎梁のみによっては新設基礎としての形態を維持できない場合等には請求項2に記載のように基礎梁と、基礎梁に一体化する新設床板から新設基礎が構成される。新設床板は現場打ちコンクリート造やプレキャストコンクリートにより、または両者の組み合わせによって構成される。
【0007】
基礎梁が一方向にのみ配列する場合でも隣接する基礎梁が互いに接して、もしくは密着して、または重複して配列するような場合には引張材を基礎梁の長さ方向と幅方向の二方向に配置することで、新設基礎としての形態を維持できるため、必ずしも新設床板を必要としない。
【0008】
基礎梁に新設床板を付加した請求項2の場合には既存建物の下に人工地盤を構築した形になり、既存建物がその水平投影面を含む面で支持されるため、免震構造化後の既存建物の安定性と安全性が向上する。
【0009】
引張材は少なくとも基礎梁の長さ方向に沿って配置され、緊張された状態で端部において上部基礎に定着されることにより基礎梁にプレストレスを与えた状態で新設基礎を上部基礎に一体化させる。上記のように隣接する基礎梁が互いに接して、もしくは密着して、または重複して一方向に配列するような場合には基礎梁の幅方向にも引張材が配置される。新設基礎と上部基礎は一体化により底盤を構成し、既存の基礎を含む既存建物全体を支持する。
【0010】
上部基礎の下にはそれから分離した下部基礎が設置、もしくは構築され、上部基礎と下部基礎との間に免震装置が設置される。上部基礎は例えば下部基礎から新設基礎と共に揚重させられた状態でその下に免震装置が設置されることにより、または下部基礎と上部基礎の構築時に両者間に予め免震装置を設置しておいた状態で新設基礎を上部基礎に一体化させることにより免震装置に支持される。
【0011】
既存建物が新設基礎と上部基礎に支持された状態で例えば上部基礎が新設基礎と共に揚重させられる等により免震装置に支持されることで、既存建物を上部構造と基礎とに分離させることを要することなく、既存建物は既存の基礎毎、新設基礎及び上部基礎と共に免震構造化される。
【0012】
既存建物が既存の基礎と共に新設基礎及び上部基礎に支持された状態で、免震装置に支持されることで、既存建物の形態に関係なく、すなわち既存建物が独立基礎に支持されている場合等、上部構造を基礎から分離させにくい場合や、既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合にも既存建物全体を免震構造化することが可能になる。
【0013】
請求項3では既存建物の下の地盤を固化材の注入により地盤改良すると共に、地盤改良すべき地盤の周囲に上部基礎を設置、もしくは構築し、地盤改良した改良地盤を引張材の緊張により上部基礎に一体化させることにより、改良地盤と上部基礎に既存建物を支持させ、既存建物の上部構造を基礎から分離させることなく既存建物を原地盤毎、免震構造化することを可能にする。
【0014】
地盤改良は既存建物の下の一定の深度幅の範囲内の地盤に対して行われ、地盤中へセメントミルクやセメントスラリー等の固化材液を注入し、原地盤の掘削土と攪拌・混合することにより、または地盤中へ固化材液を注入し、浸透させる等により改良地盤が構築される。
【0015】
引張材は改良地盤中に少なくとも二方向に配置され、各方向の引張材が緊張されてその端部が上部基礎に定着させることにより硬化した改良地盤にプレストレスを与えた状態で改良地盤を周囲の上部基礎に一体化させる。改良地盤と上部基礎は一体化により底盤を構成し、既存の基礎を含む既存建物全体を支持する。
【0016】
上部基礎の下にはそれから分離した下部基礎が設置、もしくは構築され、上部基礎と下部基礎との間に免震装置が設置される。上部基礎は例えば下部基礎から改良地盤と共に揚重させられた状態でその下に免震装置が設置されることにより、または下部基礎と上部基礎の構築時に両者間に予め免震装置を設置しておいた状態で改良地盤を上部基礎に一体化させることにより免震装置に支持される。
【0017】
既存建物が改良地盤と上部基礎に支持された状態で、免震装置に支持されることで、既存建物を上部構造と基礎とに分離させることを要することなく、既存建物は既存の基礎を含め、既存建物直下の原地盤毎、改良地盤及び上部基礎と共に免震構造化される。
【0018】
この場合も既存建物が分離せずに改良地盤に支持され、改良地盤及び上部基礎と共に免震装置に支持されることで、上部構造を基礎から分離させにくい場合や、既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合にも既存建物全体を免震構造化することが可能になる。
【0019】
請求項4では既存建物の周囲に下部基礎とそれから分離した上部基礎を設置、もしくは構築し、既存建物の下の地盤を上部基礎で包囲する一方、上部基礎で包囲された地盤中にシースを互いに隣接させながら少なくとも一方向に配置し、シース内に引張材を挿通させ、引張材を緊張してその端部を上部基礎に定着させ、上部基礎に囲まれた地盤をシースと共に上部基礎に一体化させることにより、地盤と上部基礎に既存建物を支持させ、請求項3における地盤改良を不要にしながら、既存建物の上部構造を基礎から分離させることなく既存建物を原地盤毎、免震構造化することを可能にする。
【0020】
シースには鋼管や中空杭形式のプレキャストコンクリート管等の中空管の他、鋼管内部にコンクリートを充填すると共に、PC鋼材等の引張材を挿通してプレストレスを導入した形式の部材を使用することができ、後者の部材を使用する場合にはその部材の引張材を上記のシース内に挿通し、地盤を上部基礎に一体化させる引張材として使用することができる。
【0021】
各方向に配置されるシースは並列する方向に互いに密着、もしくは重複した状態で、または接近した状態で隣接し、既存建物の下の地盤中で各方向毎に多段に配置される。多段に配置される多数本のシースの上に位置し、上部基礎に包囲された地盤はシース内に挿通する引張材が緊張されて上部基礎に定着されることによりプレストレスが与えられ、多数本のシースに支持された状態で上部基礎に一体化する。上部基礎に包囲された地盤と上部基礎は一体化により底盤を構成し、既存の基礎を含む既存建物全体を支持する。
【0022】
上部基礎の下にはそれから分離した下部基礎が設置、もしくは構築され、上部基礎と下部基礎との間に免震装置が設置される。上部基礎は例えば下部基礎から、上部基礎に包囲された地盤と複数方向のシースと共に揚重させられた状態でその下に免震装置が設置されることにより、または下部基礎と上部基礎の構築時に両者間に予め免震装置を設置しておいた状態で上部基礎に包囲された地盤を上部基礎に一体化させることにより免震装置に支持される。
【0023】
既存建物がその下の地盤と上部基礎に支持された状態で、免震装置に支持されることで、既存建物を上部構造と基礎とに分離させることを要することなく、既存建物は既存の基礎を含め、既存建物直下の原地盤毎、上部基礎と共に免震構造化される。
【0024】
この場合も既存建物が分離せずに改良地盤に支持され、改良地盤及び上部基礎と共に免震装置に支持されることで、上部構造を基礎から分離させにくい場合や、既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合にも既存建物全体を免震構造化することが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
請求項1の発明は既存建物1の下に構築される新設基礎4と共に既存建物1を免震構造化する方法である。
【0026】
新設基礎4は図1〜図4に示すように既存建物1の下に平面上、少なくとも一方向に配列する基礎梁5,5から、または少なくとも一方向に配列する基礎梁5,5と、基礎梁5に一体化する新設床板51から構成される。
【0027】
基礎梁5は現場打ちコンクリート造により、または図3,図4,図7に示すようにプレキャストコンクリート製のブロック5aと現場打ちコンクリート5cの合成構造により、もしくは図8に示すようにプレキャストコンクリート製のブロック5aと梁部材5bの組み合わせや梁部材5bのみの組み合わせにより、あるいはH形鋼や角形鋼管等の鉄骨梁、もしくは角形鋼管内にコンクリートを充填した複合構造の鋼管コンクリート梁の組み合わせにより構築される。
【0028】
新設床板51も現場打ちコンクリート造により、またはプレキャストコンクリート板の敷設により、あるいは両者の組み合わせにより構築される。新設床板51は図4に二点鎖線で示すように天端が基礎梁5の天端に揃うように構築される。
【0029】
いずれの構造の場合も、各方向の基礎梁5に沿い、例えば下に凸の懸垂線状に配置される引張材6への緊張力の調整によって基礎梁5,5からなる、または基礎梁5と新設床板51からなる新設基礎4としての剛性及び変形が調整される。
【0030】
プレキャストコンクリート製のブロック5aや梁部材5bを用いる場合は、新設基礎4を後述の上部基礎14に一体化させる引張材6によって基礎梁5の長さ方向にプレストレスが与えられることによりブロック5a等の一体性が確保される。
【0031】
プレキャストコンクリート製のブロック5aと梁部材5bによって基礎梁5を構築する場合、引張材6によるプレストレス導入時のコンクリート端面間の一体性確保のために隣接するブロック5a,5a間、またはブロック5aと梁部材5b間には無収縮性モルタルや現場打ちコンクリート等の充填材7が充填される。充填材7は上部基礎14寄りに位置するブロック5aと上部基礎14との間にも充填される。
【0032】
複数方向に配列する基礎梁5,5は既存建物1の独立基礎や束柱等、既存建物1を地中や地盤上で支持している基礎部材2の下に基礎梁5,5の交点が位置するように構築される。
【0033】
図3,図4では基礎梁5,5の交点位置に十字形の平面形状のプレキャストコンクリート製のブロック5aを配置し、隣接するブロック5a,5a間に現場打ちコンクリート5cを打設し、両者を引張材6によって一体化させることにより基礎梁5,5が二方向に配列する新設基礎4を構成している。
【0034】
現場打ちコンクリート造の場合もプレキャストコンクリート製の場合も、基礎梁5には複数方向に引張材6が挿通するためのシース8が埋設され、引張材6の端部が定着される上部基礎14にはシース8に連続するシース9が埋設される。
【0035】
鉄骨造の場合、鉄骨梁がH形鋼等、開放断面の場合は引張材6を配置位置を規制するためのガイドがウェブの両側に添設され、角形鋼管等、閉鎖断面の場合は鉄骨梁の内部、または両側や下面側にガイドが配置される。
【0036】
引張材6は基礎梁5の長さ方向両端間で水平に配置される場合もあるが、図1,図3に示すように引張材6が懸垂線等の曲線を描くように配置される場合には、シース8やガイドは基礎梁5の長さ方向両端間で引張材6の配置曲線に沿って配置される。配置曲線のサグが基礎梁5の成を超える場合は基礎梁5の下面に突起が突設される。
【0037】
図5〜図8により既存建物1が基礎部材2としての束柱と礎石3によって地盤に支持されている場合の、新設基礎4の構築要領を説明する。
【0038】
初めに礎石3の下に新設基礎4を構築するための根切りを行うために、図5−(a) ,(b) に示すように基礎部材2をゴム等のパッド10aで保護した状態で2枚のプレート10b,10bで保持し、プレート10b,10bをボルト10c等で連結した状態で基礎部材2の両側に配置したH形鋼等の支持梁11,11に載置し、基礎部材2が負担している荷重を並列する支持梁11,11に預ける。
【0039】
支持梁11,11は既存建物1の一方向の両端間に架設され、同一線上に位置する複数本の基礎部材2が負担している全荷重を負担する。支持梁11の両端は架台等に支持される。基礎部材2が負担している荷重を支持梁11,11に負担させた状態で、基礎部材2の下の地盤が根切りされる。
【0040】
新設基礎4をプレキャストコンクリート製のブロック5aと現場打ちコンクリート5cの合成構造によって構成する場合は、図6,図7に示すように根切り底に捨てコンクリート12を打設し、各基礎部材2の下にブロック5aを設置し、隣接するブロック5a,5a間に現場打ちコンクリート5cを打設する。同一線上の引張材6が挿通するシース8はブロック5aと現場打ちコンクリート5c部分とで連続するように配置される。
【0041】
現場打ちコンクリート5cの強度発現後、基礎梁5のシース8と後述の上部基礎14のシース9に引張材6を挿通し、緊張して引張材6の端部を上部基礎14の側面に定着させ、基礎梁5に長さ方向にプレストレスを導入する。引張材6の定着後、シース8,9内にはグラウト材が充填される。
【0042】
引張材6にはPC鋼材や鉄筋等の鋼材の他、繊維強化材料が使用される。基礎梁5がプレキャストコンクリート製を含む鉄筋コンクリート造の場合、引張材6は図4に示すように基礎梁5の断面内にのみ配置される他、断面外にも配置される。
【0043】
新設基礎4をプレキャストコンクリート製のブロック5aと梁部材5bによって構成する場合は、図8に示すように根切り底に捨てコンクリート12を打設した後、各基礎部材2の下にブロック5aを、隣接するブロック5a,5a間に梁部材5bをそれぞれ設置し、ブロック5aと梁部材5bのシース8、及び上部基礎14のシース9に引張材6を挿通して緊張し、その端部を上部基礎14の側面に定着させる。
【0044】
プレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートのいずれの場合も、引張材6の定着後、基礎部材2の下と基礎梁5の上端との間に礎石3を設置し、支持梁11が撤去される。ここで設置される礎石3は既存の礎石3であるか否かを問わない。礎石3を基礎梁5上に設置する際には礎石3の下にモルタルやコンクリート等の充填材7を詰めることにより礎石3の安定性が確保される。
【0045】
新設基礎4の周囲には下部基礎13とそれから分離した上部基礎14が設置、もしくは構築される。下部基礎13と上部基礎14は共に、図2に示すように新設基礎4を包囲し、周回するように構築される。
【0046】
上部基礎14と下部基礎13の構築は新設基礎4の構築と並行して、または構築前、もしくは構築後に行われるが、最終的には引張材6の緊張と上部基礎14への定着によって新設基礎4と上部基礎14との一体化が完了する。
【0047】
下部基礎13は新設基礎4の周辺地盤を根切りし、その根切り底に現場打ちコンクリート造により、もしくはプレキャストコンクリート製のブロックを組み合わせて配置することにより、または両者の組み合わせにより地盤に定着された状態で構築される。下部基礎13には新設基礎14の下の原地盤を拘束する内周側土留め壁13aと、下部基礎13の外周側の原地盤を拘束する外周側土留め壁13bが一体化する。
【0048】
下部基礎13は図4に示すように既存建物1を上部基礎14と共に揚重させる場合の既存建物1の上昇時に揚重装置15を支持し、図1に示すように上昇後に免震装置16を支持する役目を持つ。
【0049】
上部基礎14は下部基礎13の上に下部基礎13から分離し、揚重装置15や仮支持用の架台等によって支持された状態で現場打ちコンクリート造により、もしくはプレキャストコンクリート製のブロックの組み合わせにより、または両者の組み合わせにより構築される。
【0050】
上部基礎14は図1,図3に示すように周方向に完全に閉じた形で連続して構築される他、各方向の基礎梁5の端部側毎に独立し、直交する方向の上部基礎14,14が互いに分離した形で構築される。分離する場合は必要により直交する方向の上部基礎14,14が互いに接合される。
【0051】
各基礎梁5の長さ方向に配置されている全引張材6の緊張と定着による新設基礎4と上部基礎14の一体化後、下部基礎13と上部基礎14との間に設置される、図4に示すジャッキ等の揚重装置15により上部基礎14を下部基礎13から揚重して既存建物1を上昇させ、図1に示すように下部基礎13と上部基礎14との間に免震装置16を設置し、揚重装置15を撤去して既存建物1の免震構造化が終了する。
【0052】
下部基礎13と上部基礎14の構築時に両者間に予め免震装置16を設置しておき、その状態で新設基礎4を上部基礎14に一体化させることにより既存建物1を免震装置16に支持させる場合もあり、その場合、揚重装置15は新設基礎4と上部基礎14との一体化による既存建物1の免震装置16への支持までの間、一時的に免震装置16に代わって既存建物1を含む新設基礎4と上部基礎14を仮支持することになる。下部基礎13と上部基礎14の構築時に予め免震装置16を設置しておくことは後述の請求項3、請求項4の発明においても同様に行われる。
【0053】
請求項3の発明は図9に示すように既存建物1の下の地盤を地盤改良し、その改良地盤17と共に既存建物1を免震構造化する方法である。
【0054】
既存建物1の下の地盤に対してはセメントミルクやセメントスラリー等の固化材液26の注入と地盤との攪拌・混合、または固化材液26の注入と地中への浸透等が行われ、固化材液26が掘削土砂と共に固結することにより、または原地盤と共に固結することにより改良地盤17が構築される。地盤改良は既存建物1の下の一定の深度幅の範囲内の地盤に対して行われる。
【0055】
固化材液26と地盤との攪拌・混合は例えば地盤改良すべき地盤の周囲の地盤を根切りして作業用空間28を形成し、その空間を通じ、掘削攪拌翼を有するロッドを水平に向けて掘進させることにより行われ、円形断面のソイルセメントを重複させ、連続的に構築することにより改良地盤17が構築される。この場合、固化材液26の注入は地上から地中に挿入されるパイプを通じて行うこともできるが、ロッドを通じてその掘進と同時に行うこともできる。
【0056】
図14は多数の吐出孔27aを有する鋼管等の吐出用パイプ27を用いて固化材液26を地中へ浸透させる場合の施工要領を示す。
【0057】
吐出用パイプ27は地盤改良すべき地盤の周囲に形成した作業用空間28の、地盤改良すべき地盤を挟んだ一方側から他方側へ向け、図15に示すパイプ圧入機29等を用い、吐出用パイプ27内に挿入されるドリルビット30等によって地盤を掘削しながら圧入、もしくは挿入される。地盤の掘削はジェットノズルから噴射される水の水圧を利用することによっても行われる。
【0058】
図14では地盤改良すべき地盤を挟んだ一方側の作業用空間28に下部基礎13と上部基礎14を先行して構築し、上部基礎14を利用して吐出用パイプ27を挿入する場合を示しているが、必ずしも上部基礎14を先行して構築する必要はなく、仮設の反力壁を利用して吐出用パイプ27の挿入を行うこともある。
【0059】
上部基礎14を通じて地盤中に吐出用パイプ27を挿入する場合、上部基礎14には開口14bが形成され、その内周に吐出用パイプ27を保護しながら保持するためのスリーブ38が装着される。対向する側の作業用空間28に上部基礎14が構築されていない場合は、その位置に、挿入された吐出用パイプ27の先端部分を受けるための仮設土留め壁39が設置される。
【0060】
一度に挿入できる一本の吐出用パイプ27の長さは作業用空間28の幅によって制限されるため、地盤改良すべき地盤の領域の大きさ、すなわち対向する作業用空間28,28間距離に応じ、必要により吐出用パイプ27は継ぎ足されながら挿入される。
【0061】
吐出用パイプ27は改良地盤17の構築に必要な箇所に並列して挿入されるが、改良地盤17の構築後には引張材18が挿通するシース19を挿入するために利用されるため、全体としてシース19の配置位置に対応し、少なくとも二方向に、多段に配置され、各方向毎に並列して配列する。
【0062】
吐出用パイプ27の地盤中への挿入後、ドリルビット30等を用いて吐出用パイプ27内の土砂が排出され、図16−(a) に示すように吐出用パイプ27内に少なくとも一方側から挿入される注入管31を通じて吐出用パイプ27内に固化材液26が供給される。
【0063】
注入管31が吐出用パイプ27の一方側からのみ挿入される場合は、他方側に固化材液26の漏れ出しを防止しつつ、一方側の注入管31の先端に接続されるシリンダ32と共に固化材液26を吐出孔27aから吐出させる、吐出用パイプ27に内接し得るシリンダ32が挿入される。
【0064】
注入管31の先端にはシリンダ32が接続され、注入管31の先端から吐出用パイプ27内に供給された固化材液26は対向するシリンダ32,32から圧力を受けることによって吐出用パイプ27の吐出孔27aから強制的に吐出させられる。地中に吐出した固化材液26は図16−(b) に示すように吐出用パイプ27の周辺地盤中に浸透し、原地盤を固結させる。
【0065】
シリンダ32は吐出用パイプ27に内接し得る程度の大きさを持つと同時に、図16−(c) ,図18に示すように軸方向に複数個の吐出孔27aに跨る長さを持つことで、吐出用パイプ27の吐出孔27aから外部に吐出された固化材液26が他の吐出孔27aから吐出用パイプ27内に逆流することを防止する役目を持つ。
【0066】
吐出用パイプ27内への固化材液26の供給と吐出用パイプ27からの吐出は図17に示すように吐出用パイプ27の全長の区間を複数の施工領域に区分し、各施工区分(A,B,C)毎に、吐出用パイプ27の一方の端部側から他方の端部側へ向けて行われる。
【0067】
図17の一部拡大図である図18に示すように注入管31はシリンダ32を貫通し、注入管31の内部はそのシリンダ32の、対向するシリンダ32側の端面に連通する。注入管31の先端が位置するシリンダ32の端面には固化材液26の逆流を防止する逆流防止弁33が取り付けられ、その端面の周囲には吐出用パイプ27の内周面との間の水密性を確保し、固化材液26の回り込みを防止するパッキン34が付けられる。
【0068】
全吐出用パイプ27につき、吐出用パイプ27の全長に亘って固化材液26を吐出し終えたところで、改良地盤17の構築作業が終了する。
【0069】
改良地盤17中にはその硬化前に図9〜図11に示すように引張材18が挿通するシース19が少なくとも二方向に配置され、シース19に引張材18が挿通させられる。図10は既存建物1の基礎部材2の付近に引張材18を密に配置した場合、図11は引張材18の並列方向に引張材18を均等に配置した場合を示す。
【0070】
図14〜図18の場合は、各吐出用パイプ27毎に固化材液26の吐出が終了した後、吐出用パイプ27内を清掃して吐出用パイプ27内にシース19を挿入し、シース19内に引張材18を挿通させ、引張材18を緊張してその端部を上部基礎14の側面に定着させた後、シース19内、及び吐出用パイプ27とシース19との間にグラウト材21を充填することが行われる。引張材18は上部基礎14の構築後に緊張される。
【0071】
作業用空間28には改良地盤17の構築と並行して、または構築前、もしくは構築後に、請求項1の場合と同様に下部基礎13とそれから分離した上部基礎14が設置、もしくは構築される。
【0072】
図14〜図18では上部基礎14を通じて吐出用パイプ27を地中に挿入し、そのまま残される吐出用パイプ27内にシース19を挿入することから、上部基礎14の構築は地盤中への吐出用パイプ27の挿入作業と並行して、または挿入前に行われることが好ましい。
【0073】
下部基礎13は改良地盤17の構築時に根切りされた作業用空間28の根切り底に現場打ちコンクリート造により、もしくはプレキャストコンクリート製のブロックを組み合わせて配置することにより、または両者の組み合わせにより地盤に定着された状態で構築され、既存建物1の上昇時に揚重装置15を支持し、上昇後に免震装置16を支持する。
【0074】
上部基礎14は下部基礎13の上に下部基礎13から分離し、揚重装置15や仮設の架台等によって支持された状態で現場打ちコンクリート造により、もしくはプレキャストコンクリート製のブロックの組み合わせにより、または両者の組み合わせにより構築される。
【0075】
請求項3では既存建物1を改良地盤17とその上の地盤毎、免震構造化するため、上部基礎14には既存建物1と改良地盤17までの間の原地盤を拘束する土留め壁14aが一体化する。下部基礎13には改良地盤17の下の原地盤を拘束する内周側土留め壁13aと、下部基礎13の外周側の原地盤を拘束する外周側土留め壁13bが一体化する。
【0076】
上部基礎14の構築と改良地盤17の構築を完全に独立して施工する場合は上部基礎14中には改良地盤17中のシース19に連続するシース20が配置される。図14〜図18のように上部基礎14の構築を改良地盤17の構築前に、または並行して施工する場合はシース19の端部を取り込むように上部基礎14が構築される。
【0077】
上部基礎14の構築後、上部基礎14と改良地盤17のシース19,20中に引張材18を挿通させた後、引張材18を緊張して上部基礎14の側面に定着させ、シース19,20内にグラウト材21を充填する。全引張材18の緊張と定着により改良地盤17が上部基礎14に一体化する。
【0078】
改良地盤17と上部基礎14の一体化後、請求項1と同様に下部基礎13と上部基礎14との間に設置されるジャッキ等の揚重装置15により上部基礎14を下部基礎13から揚重して既存建物1を上昇させ、下部基礎13と上部基礎14との間に免震装置16を設置し、揚重装置15を撤去して既存建物1の免震構造化が終了する。
【0079】
上部基礎14の揚重によって図9に示すように改良地盤17がその直下の原地盤から分離し、改良地盤17の底面が原地盤から絶縁される。
【0080】
上部基礎14の土留め壁14aと下部基礎13の外周側土留め壁13bとの間には免震装置16の保守点検のための通路が確保され、下部基礎13には通路内に浸入した雨水等を一時的に溜め、排出するための排水ピット13cが形成される。
【0081】
図12は下部基礎13に排水溝13dを形成した場合の平面を示す。排水溝13dは図12の一部の断面図である図13に示すように外周側土留め壁13bの内周側に形成される内周壁13e、及び両者をつなぐ底板13fから構成される。排水溝13d上にはグレーチング13gが敷設され、その上に玉砂利13hが敷き詰められる。
【0082】
請求項4の発明は請求項3における改良地盤17を構築することなく、既存建物1の下の地盤内に配置されるシース22、及び上部基礎14によって既存建物1を支持し、既存建物1を免震構造化する方法である。
【0083】
既存建物1の周囲には請求項3と同様に下部基礎13とそれから分離した上部基礎14が設置、もしくは構築されるが、この発明では上部基礎14によって既存建物1の下の地盤を周囲から拘束しながら上部基礎14に一体化させるため、上部基礎14は既存建物1の下の地盤を包囲するように構築される。
【0084】
既存建物1の下の、上部基礎14を構築する深度の地盤中には図19〜図21に示すようにシース22が互いに隣接しながら、少なくとも二方向に、各方向毎に多段に配置され、各方向に配置されるシース22は並列する方向に互いに密着、もしくは重複した状態、または接近した状態で隣接する。
【0085】
シース22には鋼管やプレキャストコンクリート管等が使用されることもあり、シース22としての鋼管の内部には引張材18としてのPC鋼材等を挿通させ、グラウト材21としてのコンクリートを充填する場合もある。
【0086】
シース22は請求項3の場合と同様にその配置位置の周辺地盤である下部基礎13と上部基礎14の構築位置の地盤を根切りして作業用空間28を形成し、その作業用空間28において先行して設置、もしくは構築される上部基礎14等を利用し、地中に水平に打ち込むことにより配置される。
【0087】
シース22の挿入に先立ち、図22,図23に示すように地中にはシース22を挿入する空洞を形成するための、鋼管等、地中での形態維持能力を有する空洞用パイプ35が互いに隣接して打ち込まれる。
【0088】
空洞用パイプ35はその内部に挿入されるドリルビット30やジェットノズル等により地盤を掘削しながら、パイプ圧入機29等を用い、必要により継ぎ足されながら挿入される。図22は空洞用パイプ35を挿入する側の作業用空間28に上部基礎14を構築し、免震装置16に支持させた様子を示している。
【0089】
上部基礎14を通じて地盤中に空洞用パイプ35を挿入する場合、上部基礎14には開口14bが形成され、その内周に空洞用パイプ35を保護しながら、保持するためのスリーブ38が装着される。対向する側に上部基礎14が構築されていない場合は、その位置に仮設土留め壁39が設置される。
【0090】
空洞用パイプ35はシース22の挿入後に抜き取られる場合とそのまま残されてシース22として兼用される場合がある。
【0091】
抜き取られる場合、空洞用パイプ35の挿入後、その内部の土砂をドリルビット30を引き戻す等により排出して空洞を形成した状態で、図24に示すように空洞用パイプ35内にシース22が挿入される。
【0092】
シース22の挿入後、図25,図26に示すように空洞内にモルタルやセメントミルク等の注入材36が上部基礎14の開口14b等、空洞用パイプ35の挿入側の端部から注入される一方、空洞用パイプ35がウィンチやチェーンブロック等を用いて他端側から引き抜かれる。注入材36の注入と空洞用パイプ35の引き抜きが並行して行われることで、注入材36は空洞用パイプ35が形成した空洞内に充填される。
【0093】
注入材36の注入時には上部基礎14に形成されている空洞用パイプ35挿入用の開口14b等からの漏れ出しを防止するために、開口14b等はキャップ37等によって塞がれる。
【0094】
注入材36の注入と空洞用パイプ35の引き抜きは、図28,図29に示すように複数本の空洞用パイプ35の挿入が完了した時点で、空洞用パイプ35が並列する方向の一方の端部に位置する空洞用パイプ35側から他方側へ向けて行われるが、注入材36の注入途中にある空洞用パイプ35に他方側で隣接する空洞用パイプ35はその注入材36の他方側への流出を塞き止める働きをし、キャップ37は開口14bからの流出を阻止する働きをするため、共にその注入材36の注入が完了するまで存置される。
【0095】
図29−(a) は端部寄りの二本の空洞用パイプ35が形成した空洞内への注入が完了し、三本目の空洞内に注入材36を注入しながら空洞用パイプ35を引き抜いている様子を示している。(b) は(a) のときのキャップ37の装着状態を示しているが、注入が完了した部分のキャップ37は順次外され、転用される。
【0096】
注入材36の注入と空洞用パイプ35の引き抜きの終了後、図27に示すようにシース22内に引張材18が挿入され、端部が上部基礎14に定着される。上部基礎14の開口14bを通じて空洞用パイプ35の挿入を行った場合、引張材18の定着の際には開口14bを塞いでいるキャップ37が定着板40に置き換えられる。
【0097】
空洞用パイプ35をシース22として兼用する場合は、空洞用パイプ35の挿入後、その内部を清掃し、そのまま内部に引張材18が挿入される。
【0098】
この場合、地中に残される空洞用パイプ35がその並列方向に密に配置され、下面側において原地盤に直接接触することで、空洞用パイプ35とその下の地盤との縁が切れ易くなるため、既存建物1を上部基礎14と共に揚重するときの空洞用パイプ35とその下の地盤との分断を容易に行える利点がある。
【0099】
シース22の配置と並行して、または配置前、もしくは配置後、その配置位置の周辺に形成されている作業用空間28に下部基礎13と上部基礎14が設置、もしくは構築される。上部基礎14は図19に示すようにその内部に配置されるシース23と地中のシース22が連続するように設置、もしくは構築されるか、地中のシース22の端部を取り込むように構築される。
【0100】
上部基礎14の設置、もしくは構築後、上部基礎14と地中のシース22,23中に引張材18を挿通させ、緊張して上部基礎14の側面に定着させる。引張材18の定着後、シース22,23内にグラウト材21が充填される。
【0101】
全引張材18の緊張と定着により上部基礎14に包囲された既存建物1の下の地盤は複数方向の多数本のシース22、もしくはシース22としての空洞用パイプ35に支持された状態で上部基礎14に一体化する。
【0102】
既存建物1の下の地盤と上部基礎14の一体化後、下部基礎13と上部基礎14との間に設置される揚重装置15により上部基礎14を下部基礎13から揚重して既存建物1を地盤と共に上昇させ、下部基礎13と上部基礎14との間に免震装置16を設置し、揚重装置15を撤去して既存建物1の免震構造化が終了する。
【0103】
上部基礎14の揚重によってシース22や空洞用パイプ35がその直下の原地盤から分離し、原地盤から絶縁される。
【0104】
図19では上部基礎14と下部基礎13との間に両者間の相対変位時に振動を抑制するダンパー24を架設すると共に、上部基礎14の下部基礎13に対する浮き上がりを防止する浮き上がり防止装置25を設置している。
【0105】
図30はシース22として鋼管を用い、鋼管の内部に引張材18としてのPC鋼材等を挿通させ、グラウト材21としてのコンクリートを充填する場合の具体的な構造を示す。この場合、シース22内には引張材18としてのPC鋼材を所定の懸垂曲線で配置するための挿通用シース41が配置される。図31−(a)は図30の端面を、(b)
x−x線の断面を、(c)はy−y線の断面を示す。
【0106】
挿通用シース41は図32に示すようにシース22としての鋼管の内部に部分的に配置されるホルダ42によって拘束される。ホルダ42は図33−(a) 〜(c)に示すように鋼管に内接し得る形をし、挿通用シース41の配置位置に挿通用シース41が挿通可能な孔42aが明けられる。(a) は図32において鋼管の端部寄りのホルダ42を、(c)は中央部のホルダ42を、(b)はその中間のホルダ42を示す。ホルダ42は図32,33に示すように鋼管の内部に軸方向に架設された棒材43が貫通することにより支持される。
【0107】
鋼管の内部にはコンクリート等のグラウト材21が充填されるが、鋼管の端部には空隙を埋めるモルタルを充填するための充填口22aと吐出口22bが形成される。ここでは図34に示すように鋼管を貫通させてパイプを溶接することにより充填口22aと吐出口22bを形成している。
【0108】
また鋼管の両端面には引張材18を定着させるためのプレート22cが接合される。プレート22cは例えば図35−(a) ,(b)に示すように鋼管の外周に予め溶接されたナット22dにボルト22eを螺入することにより鋼管に接合される。
【0109】
【発明の効果】
請求項1,2では既存建物の下に平面上、少なくとも一方向に配列する基礎梁からなる新設基礎を構築すると共に、新設基礎の周囲に上部基礎を設置、もしくは構築し、新設基礎を引張材の緊張により上部基礎に一体化させることで、新設基礎と上部基礎に既存建物を支持させるため、既存建物の上部構造を基礎から分離させることなく既存建物を基礎毎、免震構造化することができる。
【0110】
既存建物が既存の基礎と共に新設基礎及び上部基礎に支持された状態で、免震装置に支持されることで、上部構造を基礎から分離させにくい場合や、既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合にも既存建物全体を免震構造化することが可能になる。
【0111】
特に請求項2では基礎梁に新設床板を付加することで、既存建物がその水平投影面を含む面で支持されるため、免震構造化後の既存建物の安定性と安全性が向上する。
【0112】
請求項3では既存建物の下の地盤を固化材と共に攪拌混合処理して地盤改良すると共に、地盤改良すべき地盤の周囲に上部基礎を設置、もしくは構築し、地盤改良した改良地盤を引張材の緊張により上部基礎に一体化させることで、改良地盤と上部基礎に既存建物を支持させるため、既存建物の上部構造を基礎から分離させることなく既存建物を原地盤毎、免震構造化することができる。
【0113】
この場合も既存建物が分離せずに改良地盤に支持され、改良地盤及び上部基礎と共に免震装置に支持されることで、上部構造を基礎から分離させにくい場合や、既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合にも既存建物全体を免震構造化することが可能になる。
【0114】
請求項4では既存建物の周囲に下部基礎とそれから分離した上部基礎を設置、もしくは構築し、既存建物の下の地盤を上部基礎で包囲する一方、上部基礎で包囲された地盤中にシースを互いに隣接させながら少なくとも一方向に配置し、シース内に挿通する引張材を緊張して上部基礎に囲まれた地盤をシースと共に上部基礎に一体化させることで、地盤と上部基礎に既存建物を支持させるため、請求項3における地盤改良を不要にしながら、既存建物の上部構造を基礎から分離させることなく既存建物を原地盤毎、免震構造化することができる。
【0115】
この場合も既存建物が分離せずに改良地盤に支持され、改良地盤及び上部基礎と共に免震装置に支持されることで、上部構造を基礎から分離させにくい場合や、既存の基礎を上部構造を免震支持するための基礎として利用することができない場合にも既存建物全体を免震構造化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の既存建物を免震構造化したときの様子を示した縦断面図である。
【図2】図1の新設基礎と上部基礎の関係を示した平面図である。
【図3】図2の詳細図である。
【図4】図3の縦断面図である。
【図5】(a) は図1の方法において既存の基礎部材を支持するときの様子を示した立面図、(b) は(a) の平面図である。
【図6】図5の基礎部材の下にプレキャストコンクリートのブロックを設置したときの様子を示した立面図である。
【図7】図6のブロック間に現場打ちコンクリートを打設したときの様子を示した立面図である。
【図8】図6のブロック間に梁部材を設置したときの様子を示した立面図である。
【図9】請求項3の発明の既存建物を免震構造化したときの様子を示した縦断面図である。
【図10】図9の引張材の配置状態を示した平面図である。
【図11】図9の引張材の他の配置状態を示した平面図である。
【図12】図9の既存建物部分の平面図である。
【図13】図12の排水溝部分の縦断面図である。
【図14】吐出用パイプを用いて改良地盤を構築する場合の、吐出用パイプの挿入状態を示した縦断面図である。
【図15】吐出孔用パイプの挿入時の様子を示した縦断面図である。
【図16】(a) は固化材液の吐出の様子を示した縦断面図、(b) は(a) のx−x線断面図、(c) は(a) の一部拡大図である。
【図17】施工領域を区分して固化材液の吐出を行う様子を示した縦断面図である。
【図18】図17の一部拡大図である。
【図19】請求項4の発明の既存建物を免震構造化したときの様子を示した縦断面図である。
【図20】図19の引張材の配置状態を示した平面図である。
【図21】図20の一部の縦断面図である。
【図22】空洞用パイプの挿入時の様子を示した縦断面図である。
【図23】空洞用パイプの挿入が完了したときの様子を示した縦断面図である。
【図24】空洞用パイプ内へのシースの挿入が完了したときの様子を示した縦断面図である。
【図25】空洞への注入材の注入と空洞用パイプの引き抜き時の様子を示した縦断面図である。
【図26】シース内への引張材の挿入時の様子を示した縦断面図である。
【図27】引張材の挿入側の端部を上部基礎に定着したときの様子を示した縦断面図である。
【図28】(a) は並列する方向に複数本の空洞用パイプを挿入したときの様子を示した平面図、(b) は並列する方向の端部側から注入材を注入し、空洞用パイプを引き抜いた様子を示した平面図である。
【図29】(a) は注入材を注入しながら空洞用パイプを引き抜く様子を示した斜視図、(b) は注入材の注入が終了する毎にキャップを外す様子を示した斜視図である。
【図30】シースとして鋼管を用い、鋼管の内部に引張材としてのPC鋼材等を挿通させ、グラウト材としてのコンクリートを充填した場合の具体例を示した立面図である。
【図31】(a) は図30の端面図、(b)は図30のx−x線断面図、(c)はy−y線断面図である。
【図32】鋼管の内部を示した図30の拡大図である。
【図33】(a) は図32のx−x線端面図、(b)はy−y線端面図、(c)はz−z線端面図である。
【図34】充填口と吐出口の形成例を示した鋼管の端面図である。
【図35】(a) はシースである鋼管の端面にプレートを接合するためのナットの鋼管への溶接状態を示した鋼管の端面図、(b)はボルトによるプレートの接合状態を示した断面図である。
【符号の説明】
1……既存建物、2……基礎部材、3……礎石、4……新設基礎、5……基礎梁、5a……ブロック、5b……梁部材、5c……現場打ちコンクリート、51……新設床板、6……引張材、7……充填材、8……シース、9……シース、10a……パッド、10b……プレート、10c……ボルト、11……支持梁、12……捨てコンクリート、13……下部基礎、13a……内周側土留め壁、13b……外周側土留め壁、13c……排水ピット、13d……排水溝、13e……内周壁、13f……底板、13g……グレーチング、13h……玉砂利、14……上部基礎、14a……土留め壁、14b……開口、15……揚重装置、16……免震装置、17……改良地盤、18……引張材、19……シース、20……シース、21……グラウト材、22……シース、22a……充填口、22b……吐出口、22c……プレート、22d……ナット、22e……ボルト、23……シース、24……ダンパー、25……浮き上がり防止装置、26……固化材液、27……吐出用パイプ、27a……吐出孔、28……作業用空間、29……パイプ圧入機、30……ドリルビット、31……注入管、32……シリンダ、33……逆流防止弁、34……パッキン、35……空洞用パイプ、36……注入材、37……キャップ、38……スリーブ、39……仮設土留め壁、40……定着板、41……挿通用シース、42……ホルダ、42a……孔、43……棒材。
Claims (4)
- 既存建物の下に平面上、少なくとも一方向に配列する基礎梁からなる新設基礎を構築すると共に、新設基礎の周囲に下部基礎とそれから分離した上部基礎を設置、もしくは構築し、新設基礎の少なくとも基礎梁の長さ方向に沿って引張材を配置し、各引張材を緊張してその端部を上部基礎に定着させ、新設基礎を上部基礎に一体化させた状態で、上部基礎を下部基礎との間に設置される免震装置に支持させる既存建物の地盤からの免震構造化方法。
- 新設基礎は基礎梁と、基礎梁に一体化する新設床板から構成される請求項1記載の既存建物の地盤からの免震構造化方法。
- 既存建物の下の地盤を固化材の注入により地盤改良すると共に、地盤改良すべき地盤の周囲に下部基礎とそれから分離した上部基礎を設置、もしくは構築し、地盤改良した改良地盤中に引張材を少なくとも二方向に配置し、各方向の引張材を緊張してその端部を上部基礎に定着させ、硬化した改良地盤を上部基礎に一体化させた状態で、上部基礎を下部基礎との間に設置される免震装置に支持させる既存建物の地盤からの免震構造化方法。
- 既存建物の周囲に下部基礎とそれから分離した上部基礎を設置、もしくは構築し、既存建物の下の地盤を上部基礎で包囲する一方、上部基礎で包囲された地盤中にシースを互いに隣接させながら少なくとも一方向に配置し、シース内に引張材を挿通し、引張材を緊張してその端部を上部基礎に定着させ、既存建物の下の地盤を上部基礎に一体化させた状態で、上部基礎を下部基礎との間に設置される免震装置に支持させる既存建物の地盤からの免震構造化方法。
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