JP2004035991A - チタンアルミニウム化合物焼結体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】切削工具、耐摩耗性工具、しゅう動部品に対する寿命増加、性能向上の要求は高い。こうした用途に用いられる硬質焼結材について、耐摩耗性、耐酸化性、靱性、耐欠損性などの特性向上が求められていた。
【解決手段】鉄族金属の結合相、アルミニウムの窒化物、酸化物からなる分散相、(Ti,Al)(C,N,O)の組成を持つ硬質相からなるチタンアルミニウム化合物焼結体は、耐摩耗性,耐欠損性,耐チッピング性,耐酸化性,しゅう動特性などに優れる。製造方法としては、窒化チタンとアルミニウムと鉄族金属との混合粉末を、非酸化性の高温雰囲気で焼結およびHIP処理する。
【解決手段】鉄族金属の結合相、アルミニウムの窒化物、酸化物からなる分散相、(Ti,Al)(C,N,O)の組成を持つ硬質相からなるチタンアルミニウム化合物焼結体は、耐摩耗性,耐欠損性,耐チッピング性,耐酸化性,しゅう動特性などに優れる。製造方法としては、窒化チタンとアルミニウムと鉄族金属との混合粉末を、非酸化性の高温雰囲気で焼結およびHIP処理する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼,鋳物,耐熱合金,非鉄金属など各種被削材に対して、高速切削,断続切削,湿式切削などの切削条件で加工を行う、チップ,ドリル,エンドミルに代表される切削工具、金型,切断刃などの耐摩耗用工具、ライナー,軸受けブッシュなどのしゅう動部品に用いられる硬質焼結材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切削工具、耐摩耗性工具、しゅう動部品に対する寿命増加、性能向上の要求は高く、こうした用途に用いられる硬質焼結材としては、鉄族金属を主成分とする結合相を含有したサーメットと結合相を含まないセラミックスに大別される。サーメットに関する先行技術の代表的なものに、特開昭59−229431号公報,特開昭63−11630号公報,特開平8−144004号公報などが、セラミックスに関しては、特開昭61−295271号公報,特開平3−187976号公報,特開平8−225879号公報などが挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
サーメットに関する代表例の内、特開昭59−229431号公報には、窒化チタン:25〜50重量%と、炭化チタン:10〜30重量%と、Ta,Nb,Zrの炭化物:5〜25重量%と、W,Moの炭化物:10〜25重量%と、Co,Ni,およびAl:7.5〜25重量%からなる混合粉末を減圧窒素中で焼結し、結合相中にNi3Al(Ti)の組成を持つ微細粒子が分散させた切削工具用高靱性サーメットの製造方法が記載されている。
【0004】
また、特開昭63−11630号公報には、Ti,Ta,W,Moの複合炭窒化物相とNi,Coの結合金属相とからなり、複合炭窒化物相中のTi原子比が0.5〜0.95、非金属元素中のN原子比が0.1〜0.9、結合金属相量が3〜50重量%である窒素含有サーメットを、減圧窒素中の1250〜1400℃で焼結した後、窒素と不活性ガスの混合ガス雰囲気中の1175〜1360℃でHIP処理する窒素含有サーメットの製造方法が記載されている。
【0005】
さらに、特開平8−144004号公報には、周期律表の4a,5a,6a族元素の炭窒化物で、かつB1構造を有する80〜95重量%の固溶体と、鉄族金属からなる5〜20重量%の結合相と、0.002〜0.0001重量%のアルミニウムとを含むサーメット合金が記載されている。
【0006】
これらの公報に記載されたサーメットは窒化チタン量が少なく、靱性,耐溶着性,熱伝導性などに劣るため、高速,断続,湿式,高荷重などの厳しい切削条件下あるいはしゅう動条件下では、異常摩耗,破損,チッピング,熱クラックなどを発生しやすいという問題がある。また、添加されたアルミニウムは、焼結温度が低いために窒化チタン中には固溶せず、結合相のみに含有されているため、窒化チタンの耐酸化性改善が不十分であるという問題もある。
【0007】
セラミックスにする代表例の内、特開昭61−295271号公報には、Be,Mg,Ca,Sr,Al,Ga,In,Tl,Sc,Y,ランタノイドの酸化物,窒化物またはZr,Hf,Nbの酸化物もしくはこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種の分散相:1〜15重量%と、残りが(TiaMb)(CxNyOz)nの組成式(但し、MはZr,Hf,V,Ta,Nbの中の少なくとも1種を表す)において、a+b=1、0.33<a≦1、x+y+z=1、0.5<x≦1、0≦y≦0.5、0≦z<0.4、0.6≦n≦1を満足するチタン化合物基高硬度焼結体が記載されている。
【0008】
同公報記載のチタン化合物基高硬度焼結体は、炭化チタン基セラミックスの強度,靱性,耐摩耗性などを改善したものではあるが、窒素量が少なく、耐溶着性,耐酸化性,熱伝導性に劣り、かつ結合相を含有しないことから靱性に劣りチッピングが生じやすく、溶着に伴う反応摩耗や熱クラックに伴う破損などを発生しやすいという問題がある。
【0009】
また、特開平3−187976号公報には、(Ti1−xAlx)(CyNzO1−y−z)aの化学組成〔但し、0≦x≦0.7、0≦y≦1、0≦z≦1、0.9<(y+z) ≦1、0.6<a≦1〕を有し、NaCl型結晶構造を有するセラミックス固溶体粉末およびその製造方法並びにセラミックス固溶体粉末焼結体が記載されている。同公報記載のセラミックス固溶体粉末焼結体は、炭窒化チタンにアルミニウムを固溶させて含有させることによって硬さ,耐摩耗性,耐酸化性を改善したものではあるが、セラミックス固溶体焼結体はもともと強度,靱性が低い上に、アルミニウム含有量を増加させると、さらに強度,靱性は低下して欠損やチッピングを起こし、かつ焼結させることが非常に困難であるという問題がある。
【0010】
さらに、特開平8−225879号公報には、アルミニウムを助剤とした窒化チタン焼結体及びその製造方法が記載されている。同公報記載の窒化チタン焼結体は、反応により生成するAlNやTi3Alの分散相により硬さ,靱性を改善したものではあるが、焼結温度は1200〜1400℃と低く、窒化チタンにアルミニウムが固溶しない。そのため、耐酸化性や耐摩耗性の改善が不十分である。また、窒化チタン焼結体の強度,靱性が低いという問題もある。さらに、製造にホットプレスを要し、かつ窒化チタンの被研削性が劣るために、製品が高価になるという問題もある。
【0011】
本発明は、上述のような問題点を解決しようとするものであり、高速,断続,湿式,高荷重などの厳しい切削条件下あるいはしゅう動条件下で長寿命を発揮するチタンアルミニウム化合物焼結体とその製造方法の提供を目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体は、鉄族金属を主成分とする結合相:1〜10体積%と、アルミニウムの窒化物,酸化物,酸窒化物の中から選ばれた少なくとも1種のアルミニウム化合物からなる分散相:2〜20体積%と、(Ti1−a−bAlaMb)(N1−x−yCxOy)zで表され、Mはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の中から選ばれた少なくとも1種の元素であり、それぞれのモル比率が0.02≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、0.8≦z≦1.0の関係にあるチタンアルミニウム化合物からなる硬質相:残部とで構成されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体の製造方法は、窒化チタン粉末、アルミニウム粉末、鉄族金属の中の少なくとも1種の粉末を含有した混合粉末を加圧成形し、真空中または非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、窒素または不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理することを特徴とするものである。
【0014】
本発明者らは、窒化チタン焼結体の強度、靱性、耐酸化性などの特性を同時改善することを検討していたところ、窒化チタンに少量のアルミニウムを固溶させたチタンアルミニウム化合物は、耐酸化性が窒化チタンよりも著しく向上し、チタンアルミニウム化合物の粒子内に窒化アルミニウムなどの分散相を微細に分散させると硬度,強度,靱性が向上し、焼結体に鉄族金属からなる結合相の適量を含有させると、焼結体の強度,靱性が向上するという知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体における硬質相は、組成式(Ti1−a−bAlaMb)(N1−x−yCxOy)zと表され、Mはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の中から選ばれた少なくとも1種であり、aはTiとAlとMの合計に対するAlのモル比率を表し、bはTiとAlとMの合計に対するMのモル比率を表し、xはNとCとOの合計に対するCのモル比率を表し、yはNとCとOの合計に対するOのモル比率を表し、zは金属元素の合計に対する非金属元素の合計のモル比率を表し、それぞれのモル比率が0.02≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、0.8≦z≦1.0を満足するチタンアルミニウム化合物である。
【0016】
具体的には、(Ti0.95Al0.05)(N0.90C0.05O0.05)0.95,(Ti0.85Al0.15)(N0.80C0.15O0.05)1.00,(Ti0.80Al0.05V0.15)(N0.80C0.15O0.05)0.90,(Ti0.80Al0.10Mo0.10)(N0.85C0.15)0.85,(Ti0.90Al0.05Ta0.05)(N0.85C0.10O0.05)0.95,(Ti0.75Al0.10Zr0.05W0.10)(N0.80C0.15O0.05)1.00などを挙げることができる。
【0017】
硬質相におけるAlのモル比率aは、0.02未満では硬質相の耐酸化性向上が不十分であり、逆に0.2を超えて大きくなると、硬質相が脆化するために焼結体の強度や靱性が低下する。硬質相における金属成分中のMのモル比率bは0.2を超えて大きくなると、硬質相のアルミニウム固溶率が減少して硬質相の耐酸化性が低下するとともに、特にMが6a族元素であると硬質相に固溶し難いために脆弱な異状相を析出し、強度,靱性,耐摩耗性,熱伝導性などが低下する。Cのモル比率xは0.2を超えて大きくなると、硬質相のアルミニウム固溶率が減少して、硬質相の耐酸化性が低下し、硬質相が著しく脆化して焼結体の強度や靱性が低下する。
【0018】
Oのモル比率yは0.1を超えて大きくなると、硬質相のアルミニウム固溶率が減少して耐酸化性が低下し、硬質相が著しく脆化して強度や靱性が低下する。金属元素Ti,Al,Mの合計に対する非金属元素C,N,Oの合計のモル比率zについては、0.8未満では硬質相の耐摩耗性や耐溶着性が低下する。zが1.0を超える硬質相は特殊な環境下でしか存在しない。
【0019】
硬質相における金属成分中のMが、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンの中から選ばれた少なくとも1種であると好ましい。すなわち、Mがバナジウム、ニオブであると硬さを向上させるため、用途によっては耐摩耗性を改善できる。Mがタンタル、モリブデン、タングステンであると微細な組織となり、焼結体の強度,靱性を向上させるため、用途によっては耐欠損性,耐チッピング性,耐荷重性などを改善できる。またバナジウム、モリブデンは焼結性を向上させ、緻密で微細な焼結体を得るのに有効である。
【0020】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体における結合相は、鉄族金属であるFe,Co,Niの中から選ばれた少なくとも1種の元素を主成分とする金属である。具体的には、30重量%以下のTi,Al,Cr,Mo,W,Siなどを含有したNi−Ti,Ni−Al−Ti,Ni−Mo,Ni−Al−Cr,Co−Al,Co−W,Fe−Cr−Mo−Wなどの合金を挙げることができる。これらの中でもAlを含有する合金は耐酸化性や耐熱変形性に優れるので好ましい。また、結合相が、Ni3Al(Ti),NiAl(Ti),CoAl(Ti),Co2Al5(Ti),FeAl(Ti),FeAl2(Ti)などの金属間化合物を含む、または前記金属間化合物からなる合金であると、さらに耐熱変形性が改善され、かつ高温強度も向上するので好ましい。
【0021】
結合相の含有量は、1体積%未満では焼結体の強度,靱性が低下する。また1体積%未満では焼結が著しく困難であり、緻密な微細な焼結体が得られにくい。結合相の含有量が10体積%を超えて大きくなると、硬さ,耐摩耗性,耐塑性変形性が低下する。以上の理由から結合相の含有量は、1〜10体積%と定めた。
【0022】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体における分散相は、アルミニウムの窒化物,酸化物,酸窒化物の中から選ばれた少なくとも1種のアルミニウム化合物である。具体的には、AlN,Al2O3,Al(NO)が挙げられる。分散相の含有量は、2体積%未満では焼結体の強度,靱性が低く、逆に20体積%を超えて大きくなると、熱伝導性が急激に低下すると共に、分散相粒子同士が合体して強度,靱性の低下を招くので、2〜20体積%と定めた。
【0023】
分散相の平均粒子径が1μm以下であると分散強化による強度,靱性の向上効果が大きいので好ましい。また、分散相の粒子は、硬質相の結晶粒子内部,硬質相同士の結晶粒界,結合相と硬質相との界面に分散して存在しているが、硬質相の粒子内に多く分散しているほど強度,靱性の向上効果が大きいので好ましい。
【0024】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体製造方法としては、通常の粉末冶金法が挙げられる。その中でも本発明の製造方法によると安価で特性,性能に優れた焼結体が得られるので好ましい。本発明の製造方法は、窒化チタン粉末、アルミニウム粉末、鉄族金属の中の少なくとも1種の粉末を含有した混合粉末を加圧成形し、真空中あるいは非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、さらに窒素あるいは不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理することを特徴とするものである。
【0025】
原料粉末として、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種の粉末、窒化チタン粉末、およびアルミニウム粉末を用いる。これらに炭素粉末および/またはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の金属、炭化物、窒化物、炭窒化物の中から選ばれた少なくとも1種の粉末を原料粉末として加えても良い。
【0026】
原料粉末を混合して得た混合粉末を加圧成形し、真空中または非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、窒素または不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理すると特性,性能に優れたチタンアルミニウム化合物焼結体が得られる。
【0027】
本発明の製造方法において、いずれの原料粉末も平均粒子径は2μm以下が好ましい。炭素粉末を添加するとOのモル比率yを下げると同時に焼結性を改善するため好ましい。チタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の金属は、金属元素合計に対する非金属元素合計のモル比率zを下げるために添加するものである。
【0028】
焼結雰囲気として、例えば窒素,アルゴン,CO,メタン及びこれらの混合ガスを使用すれば、Cのモル比率x,Oのモル比率y,非金属元素のモル比率zを制御でき、さらに組成および/または組織を傾斜させた傾斜材料も作製できる。また、混合粉末の段階で組成を予め調整し、加圧成形体を真空中で約1300℃まで加熱した後、所定の減圧窒素雰囲気で焼結すると、組成式に従った焼結体が得られるので好ましい。
【0029】
【実施例1】市販されている平均粒径が1.2μmのTiN,1.5μmのAl(扁平なスタンプ粉),1.1μmのNi,0.02μmカーボンブラック(Cbと記す),0.5μmのTiC,1.1μmのVC,1.0μmのMo2C,1.0μmのTaC,1.7μmのCr3C2,0.5μmのCo,0.5μmのWC,1.4μmのFe,1.0μmのZrC,0.2μmのAl2O3の各粉末を表1に示した組成に配合し、アセトンの溶媒、ステンレス製のポット、超硬製の粉砕用ボールを用いて48時間の混合粉砕を行った後、乾燥しながら3重量%のパラフィンワックスを添加して混合粉末を得た。
【0030】
そして、比較品5〜7を除いたこれらの混合粉末を金型に充填し、200MPaの圧力でもって約5.5×17×43mmの圧粉成形体を作製し、アルミナ+カーボン繊維のシート上に設置して約50Paの真空中で1300℃まで昇温した後、表2に記載した雰囲気中の所定温度で1時間、加熱保持することによって本発明品1〜12及び比較品1〜4の焼結体を得た。なお、これらの焼結体には、表2に記載した所定温度で1時間、150MPaのアルゴン中でHIP処理を施した。
【0031】
また、比較品5〜7については、ホットプレス焼結を行った。各混合粉末をカーボン製モールドに充填し、20MPaの圧力でもって加圧しながら、表2に記載した雰囲気中の所定温度で1時間、加熱保持することによって、3.5×35.0×35.0mmの角板からなる比較品5〜7の焼結体を得た。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
こうして得た焼結体をダイヤモンドカッターで棒状に切断し、#230のダイヤモンド砥石で湿式研削加工して3.0×4.0×35.0mmのJIS試験片とした後、曲げ強度を測定した。また、同試料の1面を1μmのダイヤモンドペーストでラップ研磨した後、マイクビッカース硬さ計を用いた荷重:4.9Nでの硬さと、ビッカース圧子を用い荷重:98Nでの破壊靱性値K1C(IM法)を測定した。これらの結果を表3に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
次に、ラップ面研磨した各試料について、電界放射型電子顕微鏡にて組織写真を撮り、画像処理装置を用いて、硬質相の平均粒径,分散相の粒径分布,分散相と結合相の含有量,分散相が硬質相粒内に存在する割合(粒内割合と表す)を求めた。また、硬質相についてEPMA分析して組成式を算出し、分散相と結合相については組成を確認した。さらに、Х線回折によって各相の成分同定も行った。これらの結果の内、粒子径と粒内割合に関しては表4に記載し、含有量、組成については表5、表6に示した。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【実施例2】実施例1で得た、本発明品1〜12および比較品1〜4の混合粉末を用いて、ISO規格に記載のSNGN120408形状用の金型でもって、実施例1と同様の方法、条件でプレス成形、加熱焼結、HIP処理、湿式研削加工により、SNGN120408形状(0.1×−25°のホーニング付)の切削工具用チップを作製した。一方、比較品5〜7については、実施例1と同様の方法、条件でホットプレス焼結した約5.5×35.0×35.0mmの角板を切断することにより、切削工具用チップを同様に作製した。
【0041】
そして、切削試験(A)として、被削材:S45C丸棒で外周に4本溝入,切削速度:250m/min,切込み:1.0mm,送り:0.2mm/revの条件で湿式の外周断続旋削試験を行い、寿命になるまでの時間を求めた。寿命評価は、平均逃げ面摩耗量(VB)が0.3mm以上になるか、または欠損やチッピングが発生した時を寿命とした。
【0042】
次に、切削試験(B)として、被削材:FCD600の,切削速度:400m/min,切込み:1.0mm,送り:0.2mm/revの条件で乾式の連続旋削試験を行い、VB=0.20mmを基準に寿命時間を同様に求めた。
【0043】
さらに、切削試験(C)として、被削材:S55Cのブロック(100×150mm),切削速度:150m/min,切込み:1.0mm,送り:0.01mm/刃から0.05mm/刃刻みにアップの条件で乾式のフライス削り試験を行い、欠損やチッピングが発生した時の送り量を求めた。切削試験(A)の結果は表7に示し、切削試験(B)、(C)の結果は表8に示した。
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
【発明の効果】
主成分のチタンアルミニウム化合物からなる硬質相が耐溶着性,耐食性,熱伝導性,耐酸化性を向上させる作用をし、アルミニウム化合物からなる分散相が硬さ,強度,靱性を向上させる作用をし、鉄族金属を主成分とする結合相が強度,靱性を向上させる作用をする。本発明品は耐摩耗性,耐溶着性,耐酸化性,耐食性,強度,靱性などに優れるので切削工具、耐摩耗性工具、しゅう動部品に用いると寿命や性能が向上するという効果を発揮する。特に、本発明品を、鋼,鋳物,耐熱合金,非鉄金属など各種被削材に対して、高速切削,断続切削,湿式切削などの切削条件下で切削工具として用いた場合、耐摩耗性、耐欠損性,および/または耐チッピング性が向上する。例えば、本発明品を鋳鉄、鋼の切削工具として用いた場合、比較品に比べて工具寿命が2倍以上向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼,鋳物,耐熱合金,非鉄金属など各種被削材に対して、高速切削,断続切削,湿式切削などの切削条件で加工を行う、チップ,ドリル,エンドミルに代表される切削工具、金型,切断刃などの耐摩耗用工具、ライナー,軸受けブッシュなどのしゅう動部品に用いられる硬質焼結材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切削工具、耐摩耗性工具、しゅう動部品に対する寿命増加、性能向上の要求は高く、こうした用途に用いられる硬質焼結材としては、鉄族金属を主成分とする結合相を含有したサーメットと結合相を含まないセラミックスに大別される。サーメットに関する先行技術の代表的なものに、特開昭59−229431号公報,特開昭63−11630号公報,特開平8−144004号公報などが、セラミックスに関しては、特開昭61−295271号公報,特開平3−187976号公報,特開平8−225879号公報などが挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
サーメットに関する代表例の内、特開昭59−229431号公報には、窒化チタン:25〜50重量%と、炭化チタン:10〜30重量%と、Ta,Nb,Zrの炭化物:5〜25重量%と、W,Moの炭化物:10〜25重量%と、Co,Ni,およびAl:7.5〜25重量%からなる混合粉末を減圧窒素中で焼結し、結合相中にNi3Al(Ti)の組成を持つ微細粒子が分散させた切削工具用高靱性サーメットの製造方法が記載されている。
【0004】
また、特開昭63−11630号公報には、Ti,Ta,W,Moの複合炭窒化物相とNi,Coの結合金属相とからなり、複合炭窒化物相中のTi原子比が0.5〜0.95、非金属元素中のN原子比が0.1〜0.9、結合金属相量が3〜50重量%である窒素含有サーメットを、減圧窒素中の1250〜1400℃で焼結した後、窒素と不活性ガスの混合ガス雰囲気中の1175〜1360℃でHIP処理する窒素含有サーメットの製造方法が記載されている。
【0005】
さらに、特開平8−144004号公報には、周期律表の4a,5a,6a族元素の炭窒化物で、かつB1構造を有する80〜95重量%の固溶体と、鉄族金属からなる5〜20重量%の結合相と、0.002〜0.0001重量%のアルミニウムとを含むサーメット合金が記載されている。
【0006】
これらの公報に記載されたサーメットは窒化チタン量が少なく、靱性,耐溶着性,熱伝導性などに劣るため、高速,断続,湿式,高荷重などの厳しい切削条件下あるいはしゅう動条件下では、異常摩耗,破損,チッピング,熱クラックなどを発生しやすいという問題がある。また、添加されたアルミニウムは、焼結温度が低いために窒化チタン中には固溶せず、結合相のみに含有されているため、窒化チタンの耐酸化性改善が不十分であるという問題もある。
【0007】
セラミックスにする代表例の内、特開昭61−295271号公報には、Be,Mg,Ca,Sr,Al,Ga,In,Tl,Sc,Y,ランタノイドの酸化物,窒化物またはZr,Hf,Nbの酸化物もしくはこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種の分散相:1〜15重量%と、残りが(TiaMb)(CxNyOz)nの組成式(但し、MはZr,Hf,V,Ta,Nbの中の少なくとも1種を表す)において、a+b=1、0.33<a≦1、x+y+z=1、0.5<x≦1、0≦y≦0.5、0≦z<0.4、0.6≦n≦1を満足するチタン化合物基高硬度焼結体が記載されている。
【0008】
同公報記載のチタン化合物基高硬度焼結体は、炭化チタン基セラミックスの強度,靱性,耐摩耗性などを改善したものではあるが、窒素量が少なく、耐溶着性,耐酸化性,熱伝導性に劣り、かつ結合相を含有しないことから靱性に劣りチッピングが生じやすく、溶着に伴う反応摩耗や熱クラックに伴う破損などを発生しやすいという問題がある。
【0009】
また、特開平3−187976号公報には、(Ti1−xAlx)(CyNzO1−y−z)aの化学組成〔但し、0≦x≦0.7、0≦y≦1、0≦z≦1、0.9<(y+z) ≦1、0.6<a≦1〕を有し、NaCl型結晶構造を有するセラミックス固溶体粉末およびその製造方法並びにセラミックス固溶体粉末焼結体が記載されている。同公報記載のセラミックス固溶体粉末焼結体は、炭窒化チタンにアルミニウムを固溶させて含有させることによって硬さ,耐摩耗性,耐酸化性を改善したものではあるが、セラミックス固溶体焼結体はもともと強度,靱性が低い上に、アルミニウム含有量を増加させると、さらに強度,靱性は低下して欠損やチッピングを起こし、かつ焼結させることが非常に困難であるという問題がある。
【0010】
さらに、特開平8−225879号公報には、アルミニウムを助剤とした窒化チタン焼結体及びその製造方法が記載されている。同公報記載の窒化チタン焼結体は、反応により生成するAlNやTi3Alの分散相により硬さ,靱性を改善したものではあるが、焼結温度は1200〜1400℃と低く、窒化チタンにアルミニウムが固溶しない。そのため、耐酸化性や耐摩耗性の改善が不十分である。また、窒化チタン焼結体の強度,靱性が低いという問題もある。さらに、製造にホットプレスを要し、かつ窒化チタンの被研削性が劣るために、製品が高価になるという問題もある。
【0011】
本発明は、上述のような問題点を解決しようとするものであり、高速,断続,湿式,高荷重などの厳しい切削条件下あるいはしゅう動条件下で長寿命を発揮するチタンアルミニウム化合物焼結体とその製造方法の提供を目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体は、鉄族金属を主成分とする結合相:1〜10体積%と、アルミニウムの窒化物,酸化物,酸窒化物の中から選ばれた少なくとも1種のアルミニウム化合物からなる分散相:2〜20体積%と、(Ti1−a−bAlaMb)(N1−x−yCxOy)zで表され、Mはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の中から選ばれた少なくとも1種の元素であり、それぞれのモル比率が0.02≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、0.8≦z≦1.0の関係にあるチタンアルミニウム化合物からなる硬質相:残部とで構成されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体の製造方法は、窒化チタン粉末、アルミニウム粉末、鉄族金属の中の少なくとも1種の粉末を含有した混合粉末を加圧成形し、真空中または非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、窒素または不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理することを特徴とするものである。
【0014】
本発明者らは、窒化チタン焼結体の強度、靱性、耐酸化性などの特性を同時改善することを検討していたところ、窒化チタンに少量のアルミニウムを固溶させたチタンアルミニウム化合物は、耐酸化性が窒化チタンよりも著しく向上し、チタンアルミニウム化合物の粒子内に窒化アルミニウムなどの分散相を微細に分散させると硬度,強度,靱性が向上し、焼結体に鉄族金属からなる結合相の適量を含有させると、焼結体の強度,靱性が向上するという知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体における硬質相は、組成式(Ti1−a−bAlaMb)(N1−x−yCxOy)zと表され、Mはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の中から選ばれた少なくとも1種であり、aはTiとAlとMの合計に対するAlのモル比率を表し、bはTiとAlとMの合計に対するMのモル比率を表し、xはNとCとOの合計に対するCのモル比率を表し、yはNとCとOの合計に対するOのモル比率を表し、zは金属元素の合計に対する非金属元素の合計のモル比率を表し、それぞれのモル比率が0.02≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、0.8≦z≦1.0を満足するチタンアルミニウム化合物である。
【0016】
具体的には、(Ti0.95Al0.05)(N0.90C0.05O0.05)0.95,(Ti0.85Al0.15)(N0.80C0.15O0.05)1.00,(Ti0.80Al0.05V0.15)(N0.80C0.15O0.05)0.90,(Ti0.80Al0.10Mo0.10)(N0.85C0.15)0.85,(Ti0.90Al0.05Ta0.05)(N0.85C0.10O0.05)0.95,(Ti0.75Al0.10Zr0.05W0.10)(N0.80C0.15O0.05)1.00などを挙げることができる。
【0017】
硬質相におけるAlのモル比率aは、0.02未満では硬質相の耐酸化性向上が不十分であり、逆に0.2を超えて大きくなると、硬質相が脆化するために焼結体の強度や靱性が低下する。硬質相における金属成分中のMのモル比率bは0.2を超えて大きくなると、硬質相のアルミニウム固溶率が減少して硬質相の耐酸化性が低下するとともに、特にMが6a族元素であると硬質相に固溶し難いために脆弱な異状相を析出し、強度,靱性,耐摩耗性,熱伝導性などが低下する。Cのモル比率xは0.2を超えて大きくなると、硬質相のアルミニウム固溶率が減少して、硬質相の耐酸化性が低下し、硬質相が著しく脆化して焼結体の強度や靱性が低下する。
【0018】
Oのモル比率yは0.1を超えて大きくなると、硬質相のアルミニウム固溶率が減少して耐酸化性が低下し、硬質相が著しく脆化して強度や靱性が低下する。金属元素Ti,Al,Mの合計に対する非金属元素C,N,Oの合計のモル比率zについては、0.8未満では硬質相の耐摩耗性や耐溶着性が低下する。zが1.0を超える硬質相は特殊な環境下でしか存在しない。
【0019】
硬質相における金属成分中のMが、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンの中から選ばれた少なくとも1種であると好ましい。すなわち、Mがバナジウム、ニオブであると硬さを向上させるため、用途によっては耐摩耗性を改善できる。Mがタンタル、モリブデン、タングステンであると微細な組織となり、焼結体の強度,靱性を向上させるため、用途によっては耐欠損性,耐チッピング性,耐荷重性などを改善できる。またバナジウム、モリブデンは焼結性を向上させ、緻密で微細な焼結体を得るのに有効である。
【0020】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体における結合相は、鉄族金属であるFe,Co,Niの中から選ばれた少なくとも1種の元素を主成分とする金属である。具体的には、30重量%以下のTi,Al,Cr,Mo,W,Siなどを含有したNi−Ti,Ni−Al−Ti,Ni−Mo,Ni−Al−Cr,Co−Al,Co−W,Fe−Cr−Mo−Wなどの合金を挙げることができる。これらの中でもAlを含有する合金は耐酸化性や耐熱変形性に優れるので好ましい。また、結合相が、Ni3Al(Ti),NiAl(Ti),CoAl(Ti),Co2Al5(Ti),FeAl(Ti),FeAl2(Ti)などの金属間化合物を含む、または前記金属間化合物からなる合金であると、さらに耐熱変形性が改善され、かつ高温強度も向上するので好ましい。
【0021】
結合相の含有量は、1体積%未満では焼結体の強度,靱性が低下する。また1体積%未満では焼結が著しく困難であり、緻密な微細な焼結体が得られにくい。結合相の含有量が10体積%を超えて大きくなると、硬さ,耐摩耗性,耐塑性変形性が低下する。以上の理由から結合相の含有量は、1〜10体積%と定めた。
【0022】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体における分散相は、アルミニウムの窒化物,酸化物,酸窒化物の中から選ばれた少なくとも1種のアルミニウム化合物である。具体的には、AlN,Al2O3,Al(NO)が挙げられる。分散相の含有量は、2体積%未満では焼結体の強度,靱性が低く、逆に20体積%を超えて大きくなると、熱伝導性が急激に低下すると共に、分散相粒子同士が合体して強度,靱性の低下を招くので、2〜20体積%と定めた。
【0023】
分散相の平均粒子径が1μm以下であると分散強化による強度,靱性の向上効果が大きいので好ましい。また、分散相の粒子は、硬質相の結晶粒子内部,硬質相同士の結晶粒界,結合相と硬質相との界面に分散して存在しているが、硬質相の粒子内に多く分散しているほど強度,靱性の向上効果が大きいので好ましい。
【0024】
本発明のチタンアルミニウム化合物焼結体製造方法としては、通常の粉末冶金法が挙げられる。その中でも本発明の製造方法によると安価で特性,性能に優れた焼結体が得られるので好ましい。本発明の製造方法は、窒化チタン粉末、アルミニウム粉末、鉄族金属の中の少なくとも1種の粉末を含有した混合粉末を加圧成形し、真空中あるいは非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、さらに窒素あるいは不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理することを特徴とするものである。
【0025】
原料粉末として、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種の粉末、窒化チタン粉末、およびアルミニウム粉末を用いる。これらに炭素粉末および/またはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の金属、炭化物、窒化物、炭窒化物の中から選ばれた少なくとも1種の粉末を原料粉末として加えても良い。
【0026】
原料粉末を混合して得た混合粉末を加圧成形し、真空中または非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、窒素または不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理すると特性,性能に優れたチタンアルミニウム化合物焼結体が得られる。
【0027】
本発明の製造方法において、いずれの原料粉末も平均粒子径は2μm以下が好ましい。炭素粉末を添加するとOのモル比率yを下げると同時に焼結性を改善するため好ましい。チタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の金属は、金属元素合計に対する非金属元素合計のモル比率zを下げるために添加するものである。
【0028】
焼結雰囲気として、例えば窒素,アルゴン,CO,メタン及びこれらの混合ガスを使用すれば、Cのモル比率x,Oのモル比率y,非金属元素のモル比率zを制御でき、さらに組成および/または組織を傾斜させた傾斜材料も作製できる。また、混合粉末の段階で組成を予め調整し、加圧成形体を真空中で約1300℃まで加熱した後、所定の減圧窒素雰囲気で焼結すると、組成式に従った焼結体が得られるので好ましい。
【0029】
【実施例1】市販されている平均粒径が1.2μmのTiN,1.5μmのAl(扁平なスタンプ粉),1.1μmのNi,0.02μmカーボンブラック(Cbと記す),0.5μmのTiC,1.1μmのVC,1.0μmのMo2C,1.0μmのTaC,1.7μmのCr3C2,0.5μmのCo,0.5μmのWC,1.4μmのFe,1.0μmのZrC,0.2μmのAl2O3の各粉末を表1に示した組成に配合し、アセトンの溶媒、ステンレス製のポット、超硬製の粉砕用ボールを用いて48時間の混合粉砕を行った後、乾燥しながら3重量%のパラフィンワックスを添加して混合粉末を得た。
【0030】
そして、比較品5〜7を除いたこれらの混合粉末を金型に充填し、200MPaの圧力でもって約5.5×17×43mmの圧粉成形体を作製し、アルミナ+カーボン繊維のシート上に設置して約50Paの真空中で1300℃まで昇温した後、表2に記載した雰囲気中の所定温度で1時間、加熱保持することによって本発明品1〜12及び比較品1〜4の焼結体を得た。なお、これらの焼結体には、表2に記載した所定温度で1時間、150MPaのアルゴン中でHIP処理を施した。
【0031】
また、比較品5〜7については、ホットプレス焼結を行った。各混合粉末をカーボン製モールドに充填し、20MPaの圧力でもって加圧しながら、表2に記載した雰囲気中の所定温度で1時間、加熱保持することによって、3.5×35.0×35.0mmの角板からなる比較品5〜7の焼結体を得た。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
こうして得た焼結体をダイヤモンドカッターで棒状に切断し、#230のダイヤモンド砥石で湿式研削加工して3.0×4.0×35.0mmのJIS試験片とした後、曲げ強度を測定した。また、同試料の1面を1μmのダイヤモンドペーストでラップ研磨した後、マイクビッカース硬さ計を用いた荷重:4.9Nでの硬さと、ビッカース圧子を用い荷重:98Nでの破壊靱性値K1C(IM法)を測定した。これらの結果を表3に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
次に、ラップ面研磨した各試料について、電界放射型電子顕微鏡にて組織写真を撮り、画像処理装置を用いて、硬質相の平均粒径,分散相の粒径分布,分散相と結合相の含有量,分散相が硬質相粒内に存在する割合(粒内割合と表す)を求めた。また、硬質相についてEPMA分析して組成式を算出し、分散相と結合相については組成を確認した。さらに、Х線回折によって各相の成分同定も行った。これらの結果の内、粒子径と粒内割合に関しては表4に記載し、含有量、組成については表5、表6に示した。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【実施例2】実施例1で得た、本発明品1〜12および比較品1〜4の混合粉末を用いて、ISO規格に記載のSNGN120408形状用の金型でもって、実施例1と同様の方法、条件でプレス成形、加熱焼結、HIP処理、湿式研削加工により、SNGN120408形状(0.1×−25°のホーニング付)の切削工具用チップを作製した。一方、比較品5〜7については、実施例1と同様の方法、条件でホットプレス焼結した約5.5×35.0×35.0mmの角板を切断することにより、切削工具用チップを同様に作製した。
【0041】
そして、切削試験(A)として、被削材:S45C丸棒で外周に4本溝入,切削速度:250m/min,切込み:1.0mm,送り:0.2mm/revの条件で湿式の外周断続旋削試験を行い、寿命になるまでの時間を求めた。寿命評価は、平均逃げ面摩耗量(VB)が0.3mm以上になるか、または欠損やチッピングが発生した時を寿命とした。
【0042】
次に、切削試験(B)として、被削材:FCD600の,切削速度:400m/min,切込み:1.0mm,送り:0.2mm/revの条件で乾式の連続旋削試験を行い、VB=0.20mmを基準に寿命時間を同様に求めた。
【0043】
さらに、切削試験(C)として、被削材:S55Cのブロック(100×150mm),切削速度:150m/min,切込み:1.0mm,送り:0.01mm/刃から0.05mm/刃刻みにアップの条件で乾式のフライス削り試験を行い、欠損やチッピングが発生した時の送り量を求めた。切削試験(A)の結果は表7に示し、切削試験(B)、(C)の結果は表8に示した。
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
【発明の効果】
主成分のチタンアルミニウム化合物からなる硬質相が耐溶着性,耐食性,熱伝導性,耐酸化性を向上させる作用をし、アルミニウム化合物からなる分散相が硬さ,強度,靱性を向上させる作用をし、鉄族金属を主成分とする結合相が強度,靱性を向上させる作用をする。本発明品は耐摩耗性,耐溶着性,耐酸化性,耐食性,強度,靱性などに優れるので切削工具、耐摩耗性工具、しゅう動部品に用いると寿命や性能が向上するという効果を発揮する。特に、本発明品を、鋼,鋳物,耐熱合金,非鉄金属など各種被削材に対して、高速切削,断続切削,湿式切削などの切削条件下で切削工具として用いた場合、耐摩耗性、耐欠損性,および/または耐チッピング性が向上する。例えば、本発明品を鋳鉄、鋼の切削工具として用いた場合、比較品に比べて工具寿命が2倍以上向上する。
Claims (5)
- 鉄族金属を主成分とする結合相:1〜10体積%と、アルミニウムの窒化物,酸化物,酸窒化物の中から選ばれた少なくとも1種のアルミニウム化合物からなる分散相:2〜20体積%と、(Ti1−a−bAlaMb)(N1−x−yCxOy)zで表され、Mはチタンを除く周期律表の4a,5a,6a族元素の中から選ばれた少なくとも1種の元素であり、それぞれのモル比率が0.02≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.1、0.8≦z≦1.0の関係にあるチタンアルミニウム化合物からなる硬質相:残部とで構成されることを特徴とするチタンアルミニウム化合物焼結体。
- 前記結合相は、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種とチタンおよび/またはアルミニウムとの合金であることを特徴とする請求項1に記載のチタンアルミニウム化合物焼結体。
- 前記硬質相における金属成分中のMはバナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンの中から選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1または2に記載のチタンアルミニウム化合物焼結体。
- 前記分散相の平均粒子径は1μm以下であり、かつ該分散相は前記硬質相の粒子内に分散していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチタンアルミニウム化合物焼結体。
- 鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種の粉末、窒化チタン粉末、およびアルミニウム粉末を含有した混合粉末を加圧成形し、真空中または非酸化性雰囲気中の1500〜1800℃で焼結した後、窒素または不活性ガス雰囲気中の1450〜1700℃でHIP処理することを特徴とするチタンアルミニウム化合物焼結体の製造方法。
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CN103757513A (zh) * | 2013-12-30 | 2014-04-30 | 沈阳理工大学 | 一种Al2O3/Ti(C,N)纳米复合金属陶瓷模具材料及制备方法 |
CN115533095A (zh) * | 2022-09-26 | 2022-12-30 | 攀枝花市天民钛业有限公司 | 一种钛铝基多元金属间化合物的氮化方法 |
-
2002
- 2002-07-08 JP JP2002198667A patent/JP2004035991A/ja not_active Withdrawn
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