JP2004035975A - 薄膜製膜装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一電極と第二電極とを対向させて配置した放電空間と、前記第一電極及び第二電極に電圧を印加する電圧印加手段と、前記放電空間に放電ガスと反応性ガスとをそれぞれ個別に供給するガス供給手段と、を有し、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記電圧印加手段にて電圧を印加することにより、前記放電空間に供給された前記反応性ガスを活性化させて前記第二電極上に配置された基材に製膜を施す薄膜製膜装置であって、前記ガス供給手段は、少なくとも前記放電空間の前記第一電極に接する領域が前記放電ガスの層となるように供給し、さらに前記反応性ガスの速度V1、前記放電ガスの速度V2をそれぞれ20m/sec以下として前記放電空間に供給することを特徴とする薄膜製膜装置。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応生成物による電極の汚れを抑えることができる薄膜製膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスや表示、記録、光電変換のための各種のデバイスには、基材上に高機能性の薄膜、例えば、電極膜、誘電体保護膜、半導体膜、透明導電膜、反射防止膜、光学干渉膜、ハードコート膜、下引き膜、バリア膜等を設けた各種の材料が用いられている。
【0003】
このような高機能性の薄膜生成においては、従来、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空を用いた乾式製膜法が用いられてきたが、真空設備を必要とする為、設備費用が高額であるのみならず、連続生産が出来ず、製膜速度小であることから、生産性が低いという課題を有していた。
【0004】
これらの真空装置を用いることによる低生産性のデメリットを克服する方法として、特開昭61−238961号等において、大気圧下で放電プラズマを発生させ、該放電プラズマにより高い処理効果を得る大気圧プラズマ処理方法が提案されている。
【0005】
大気圧プラズマ処理方法は、基材の表面に、均一な組成、物性、分布で製膜することができる。また、大気圧又は大気圧近傍下で処理を行うことができることから、真空設備を必要とせず、設備費用を抑えることができ、連続生産にも対応でき、製膜速度を速くすることができる。
【0006】
また、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する応用例が、特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804、同2000−147209、同2000−185362等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。
【0007】
更に、特開平6−330326号には、大気圧プラズマ放電中に、金属アルコキシド等を微量添加することにより、金属酸化膜を形成する方法が提案されている。
【0008】
上記の大気圧プラズマ法においては、処理部における電極の基材が接触していない部分にプラズマ処理に係わる汚れが付着して、プラズマ放電が不安定になったり、処理が進むに従い基材に付着する薄膜の品質のバラツキが出てきたり、また出来上がった製品に汚れが付着する問題が有った。生産中にこのような状態になると、生産を一時中断して、電極等の清掃をし、更に生産を開始するための条件出しやウォームアップをしてロス時間が多くなり生産効率が低下してしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、大気圧若しくはその近傍の圧力下、対向電極間に基材を配置し、反応ガス雰囲気下で高周波電圧を印加してプラズマ放電処理を行うことにより、基材上に均一で、良質の薄膜を迅速に形成することに成功した。しかし、連続生産を行っていると、特に第一電極の放電面の汚れの程度がひどくなり、汚れた電極をそのまま使用し続けると、基材への薄膜の形成性が著しく劣って来て、薄膜の品質の劣化、または膜厚のムラ、薄膜の強度の低下等の現象がはっきりとみられるようになった。また、汚れを清掃する回数が多くなり生産性が大きく低下することも課題となった。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電極の放電面の汚れを抑えて生産性の向上を図ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
【0012】
(1) 第一電極と第二電極とを対向させて配置した放電空間と、前記第一電極及び第二電極に電圧を印加する電圧印加手段と、前記放電空間に放電ガスと反応性ガスとをそれぞれ個別に供給するガス供給手段と、を有し、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記電圧印加手段にて電圧を印加することにより、前記放電空間に供給された前記反応性ガスを活性化させて前記第二電極上に配置された基材に製膜を施す薄膜製膜装置であって、前記ガス供給手段は、少なくとも前記放電空間の前記第一電極に接する領域が前記放電ガスの層となるように供給し、さらに前記反応性ガスの速度V1、前記放電ガスの速度V2をそれぞれ20m/sec以下として前記放電空間に供給することを特徴とする薄膜製膜装置。
【0013】
(2) 前記V1と前記V2とがそれぞれ10m/sec以下となるように供給することを特徴とする(1)に記載の薄膜製膜装置。
【0014】
(3) 前記V1と前記V2との差が±4m/secの範囲内であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の薄膜製膜装置。
【0015】
(4) 前記第一電極の中心線平均粗さRaが10μm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の薄膜製膜装置。
【0016】
(5) 前記V2が前記式(ア)を満たすことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の薄膜製膜装置。
【0017】
本発明者らは、第一電極と第二電極とを対向させて配置した放電空間に、放電ガスと反応性ガスをそれぞれ個別に供給し、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で電圧を印加することにより、放電ガスを励起させ、第二電極上に配置された基材に励起した放線ガスにより活性化した反応性ガス成分を晒して基材に製膜を施す薄膜製膜装置で、放電空間のうち少なくとも第一電極と接する領域を放電ガスの層とすることで、放電空間内の活性化した反応性ガス成分の第一電極への接触が抑えられ、電極の放電面の汚れが抑えられることを見出した。
【0018】
また、本発明者らは、放電空間内に放電ガスと反応性ガスとをそれぞれ個別に供給する際に、前記反応性ガスの速度V1、前記放電ガスの速度V2をそれぞれ20m/sec以下として前記放電空間に供給することで、放電空間内での放電ガスと反応性ガスの層の乱れを十分に抑えることができ、これにより、放電空間内の活性化した反応性ガス成分の第一電極への接触が抑えられ、電極の放電面の汚れが抑えられることを見出した。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の薄膜製膜装置について、以下にその実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。また、以下の説明には用語等に対する断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明の好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
【0020】
図1は本発明の薄膜製膜装置の一例を示す断面図である。
1は基材である。
【0021】
本発明で用いることができる基材としては、フィルム状のもの、レンズ状等の立体形状のもの等、薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。
【0022】
基材を構成する材料も特に限定はないが、大気圧または大気圧近傍の圧力下であることと、低温のプラズマ放電であることから、樹脂を好ましく用いることができる。
【0023】
例えば、本発明に係る薄膜が反射防止膜である場合、基材として好ましくはフィルム状のセルローストリアセテート等のセルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、更にこれらの上にゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を塗設したもの等を使用することが出来る。また、これら基材は、支持体上にエチレン性不飽和モノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層等を塗装した防眩層やクリアハードコート層を有するもの、バックコート層、帯電防止層を塗設したものを用いることが出来る。
【0024】
上記の支持体(基材としても用いられる)としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。
【0025】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。また、本発明に係る支持体は、上記の記載に限定されない。膜厚としては10〜1000μmのフィルムが好ましく用いられる。
【0026】
本発明において、基材上に設ける薄膜が、反射防止膜である場合には、支持体としては、中でもセルロースエステルフィルムを用いることが低い反射率の積層体が得られる為、好ましい。本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、セルロースエステルとしてはセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0027】
2は第一電極であり、3は第二電極である。第一電極2と第二電極3は対向して設置されており、放電空間を形成している。放電空間は、対向した第一電極、第二電極で形成される空間で実際に放電が行われる領域である。第一電極2、第二電極3間の距離は通常0.1mm〜10mmで設置されている。放電空間は、巾手方向のガスの漏れを抑制するためにサイドプレートが設けられていてもよい。サイドプレートの材質としては樹脂(絶縁物)またはセラミック、ガラス等が好ましい。
【0028】
第一電極2、第二電極3は、金属母体に誘電体を被覆したものが好ましい。
各電極の金属母体としては、例えば、銀、白金、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属等が挙げられるが、加工及び誘電体との熱膨張の差を小さくするという観点から、ステンレスやチタン系金属であることが好ましい。
【0029】
また、誘電体は、無機材料であることが好ましく、アルミナセラミックス溶射後、更にゾルゲル反応により硬化する珪素化合物にて封孔処理を行ったものであることがより好ましい。
【0030】
無機材料としては、ケイ酸塩系ガラス・ホウ酸塩系ガラス・リン酸塩系ガラス・ゲルマン酸塩系ガラス・亜テルル酸塩ガラス・アルミン酸塩ガラス・バナジン酸塩ガラス等を用いることができる。この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易い。また、溶射法により気密性の高い高耐熱性のセラミックを用いることも好ましい。セラミックスの材質としては例えばアルミナ系、ジルコニア系、窒化珪素系、炭化珪素系のセラミックスが挙げられるが、中でもアルミナ系のセラミックスが好ましく、アルミナ系のセラミックスの中でも特にAl2O3を用いるのが好ましい。アルミナ系のセラミックスの厚みは1mm程度が好ましく、体積固有抵抗は108Ω・cm以上が好ましい。
【0031】
セラミックスは、無機質材料で封孔処理されているのが好ましく、これにより電極の耐久性を向上させることができる。上記アルミナ系のセラミックスを被覆した上に、封孔剤である、ゾルゲル反応により硬化する珪素化合物(アルコキシシランが好ましい)を主原料とするゾルを塗布した後に、ゲル化させて硬化させることで、強固な3次元結合を形成させ均一な構造を有する珪素酸化物を形成することによって、セラミックスの封孔処理をすることができる。
【0032】
また、ゾルゲル反応を促進するためにエネルギー処理を行うことが好ましい。ゾルにエネルギー処理をすることによって、金属−酸素−金属の3次元結合を促進することができる。該エネルギー処理には、プラズマ処理や、200℃以下の加熱処理、UV処理が好ましい。
【0033】
高温下での金属母材に誘電体を被覆して電極を製作する方法において、少なくとも基材と接する側の誘電体を研磨仕上げすること、更に電極の金属母材と誘電体間の熱膨張の差をなるべく小さくすることが必要であり、そのため製作方法において、母材表面に、応力を吸収出来る層として泡混入量をコントロールして無機質の材料をライニングする、特に材質としては琺瑯等で知られる溶融法により得られるガラスであることが良く、更に導電性金属母材に接する最下層の泡混入量を20〜30体積%とし、次層以降を5体積%以下とすることで、緻密でかつひび割れ等が発生しない良好な電極が出来る。
【0034】
また、電極の金属母材に誘電体を被覆する方法としては、セラミックスの溶射を空隙率10体積%以下まで緻密に行い、更にゾルゲル反応により硬化する無機質の材料にて封孔処理を行うことが好ましく、ゾルゲル反応の促進には、熱硬化やUV硬化が良く、更に封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極ができる。
【0035】
第一電極2、第二電極3には電極内に保温水を流す等、第一電極2、第二電極3の温度調節を行う手段を有することが好ましい。
【0036】
4は、ガス供給部である。ガス供給部4は、反応性ガス供給部4aと放電ガス供給部4bを有している。反応性ガス供給部4aは、反応性ガスを巾手均一に供給するためのマニホールド4a1と、反応性ガスを放電空間に供給するための反応性ガス供給口4a2を有している。また、放電ガス供給部4bは、放電ガスを巾手均一に供給するためのマニホールド4b1と、放電ガスを放電空間に供給するための放電ガス供給口4b2を有している。
【0037】
図1に示す薄膜製膜装置では、ガス供給部4は、第一電極2の一部を放電ガスの流路としているため、第一電極2に挟まれた構造をしており、第一電極2、第二電極3で形成される放電空間内に放電ガスと反応性ガスをそれぞれ個別に供給することができる構造となっている。さらに、放電ガス供給部4bは、反応性ガス供給部4aを挟むようにして設けられている。本発明はこの構造に限定されるものではなく、本発明のように放電空間に放電ガス、反応性ガスを供給することができるのであれば、ガス供給部4の設置位置はどのように設けてもよい。ガス供給部4は図示しない温度調節手段で温度制御されることが好ましい。
【0038】
ガス供給部4の放電空間付近で第一電極2以外の材質としては、ガス流路で放電が起こらないように絶縁性で、且つ加温可能なように耐熱性の材質からなる部分を有することが好ましい。
【0039】
その様な材質の材料としては、断熱樹脂、耐熱摺動樹脂、無機複合材料等があげられ、断熱樹脂としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレンイミド、テフロン(R)等のフッ化樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリパラペン酸樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
耐熱摺動樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドポリイミド樹脂、四弗化エチレン樹脂(PTFE)、四弗化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、四弗化エチレン−六弗化プロピレン共重合体(FEP)、高温ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、三弗化塩化エチレン樹脂(CTFP)、変性フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂にガラス繊維、ガラスビーズ、グラファイト、カーボン繊維、フッ素樹脂、二硫化モリブデン、酸化チタン等の充填材を加えたもので、例えばグラファイト入りポリイミド樹脂、グラファイト入りナイロン樹脂、PTFE入りアセタール樹脂、PTFE入りフェノール樹脂等である。
【0041】
無機複合材料とは、ガラス繊維やアラミド繊維等の補強材とセメントやケイ酸カルシウム等の無機質結合複合材で、例えば、日光化成(株)製のミオレックス、ミオナイト、PEG−677、ロスナボード、ベスサーモ、カルホン、マイカレックス、ヘミサル、ルミボード、リコベスト、ニトロンR、TCボード、マイカD581(ダンマ)、ブラグラ、S4000(ブランデンバーガー)、DME断熱板等が挙げられ、上記ロスナボードが好ましく用いられる。
【0042】
その他、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化チタン、炭化珪素、ムライト、窒化アルミ、サーメット等からなるガラス、セラミック、琺瑯等も用いることができる。例えばガラスとしては、石英ガラス、ケイ酸ガラス、硼酸塩ガラス、燐酸塩ガラス、ゲルマン酸塩ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス、カルコゲン化物ガラス、ハロゲン化物ガラス、非晶質合金、オキシナイトライドガラス、オキシハライドガラス、カルコハライドガラス、パイレックス(R)ガラス等を挙げることができる。
【0043】
また、ガス供給部4の材質は、絶縁性、耐熱性に加えて、さらにプラズマ耐性、剛性、加工性等が要求され、ガラス等の繊維を熱可塑性樹脂と混成成形したガラス等繊維の圧縮部材も好ましく用いられる。熱可塑性樹脂としては、特に、制限はなく、例えば、ポリプロピレン、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、高密度ポリエチレン等のポレオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン、シンジオタクチック構造を含むポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリ芳香族エーテルまたはチオエーテル系樹脂、ポリ芳香族エステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂およびアクリレート系樹脂等が採用できる。これらは、単独で用いることがもできるが、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。用いられる繊維としては、特に制限はなく、溶融混練時に膨張性を有する各種繊維から選択される。たとえは、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維、銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、アルミニウム合金繊維、チタン合金繊維などの金属繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チッ化ケイ素繊維、ジルコニア繊維などのセラミック繊維、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフエニレンサルファイド繊維、ポリサルホン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの有機繊維などを例示できる。なお、これらの繊維は、たとえば、無機繊維と有機繊維などを2種以上を併用することもできる。
【0044】
本発明において放電空間に供給されるガスは、放電ガスと、反応性ガスである。
【0045】
本発明に係る反応性ガスは、薄膜の原料となる元素が含まれる原料ガスを含有するガスである。
【0046】
原料ガスとしては、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、例えば、有機フッ素化合物を用いることにより反射防止層等に有用な低屈折率層や防汚層を形成することが出来、珪素化合物を用いることにより、反射防止層等に有用な低屈折率層やガスバリア層を形成することも出来る。また、Ti、Zr、Sn、SiあるいはZnのような金属を含有する有機金属化合物を用いることにより、金属酸化物層または金属窒化物層等を形成することが出来、これらは反射防止層等に有用な中屈折率層や高屈折率層を形成することが出来、更には導電層や帯電防止層を形成することも出来る。原料ガスの物質として、有機フッ素化合物及び金属化合物を好ましく挙げることが出来る。
【0047】
原料ガスの有機フッ素化合物としては、フッ化炭素やフッ化炭化水素等のガスが好ましく、例えば、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロペン等のフッ化炭素化合物;1,1−ジフルオロエチレン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等のフッ化炭化水素化合物;ジフルオロジクロロメタン、トリフルオロクロロメタン等のフッ化塩化炭化水素化合物;1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、パーフルオロブタノール等のフッ化アルコール;ビニルトリフルオロアセテート、1,1,1−トリフルオロエチルトリフルオロアセテート等のフッ化カルボン酸エステル;アセチルフルオライド、ヘキサフルオロアセトン、1,1,1−トリフルオロアセトン等のフッ化ケトン等を挙げることが出来る。
【0048】
また原料ガスの金属化合物としては、Al、As、Au、B、Bi、Ca、Cd、Cr、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、Hg、In、Li、Mg、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Rh、Sb、Se、Si、Sn、V、W、Y、ZnまたはZr等の金属化合物または有機金属化合物を挙げることが出来る。
【0049】
これらのうち珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシラン等のアルキルシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の珪素アルコキシド等の有機珪素化合物;モノシラン、ジシラン等の珪素水素化合物;ジクロルシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化珪素化合物;その他オルガノシラン等を挙げることが出来る。
【0050】
原料ガスとしての珪素以外の金属化合物としては、有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物、金属水素化合物等を挙げることが出来る。有機金属化合物の有機成分としてはアルキル基、アルコキシド基、アミノ基が好ましく、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラジメチルアミノチタン等を好ましく挙げることが出来る。またハロゲン化金属化合物としては、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等を挙げることが出来、更に金属水素化合物としては、モノチタン、ジチタン等を挙げることが出来る。
【0051】
本発明に係る反応性ガスは、反応性ガスに含有される原料ガスの種類に応じて反応促進ガスを含有してもよい。反応促進ガスとしては、酸素ガス、水素ガス、水蒸気、過酸化水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、オゾンガス、アンモニア、窒素酸化物等が挙げられる。
【0052】
本発明に係る放電ガスは、放電するために必要なガスである不活性ガスを含有するガスであり、原料ガスは含有しない。
【0053】
不活性ガスには、周期表の第18属元素であるヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等や、窒素ガスが挙げられ、本発明においては、ヘリウム、アルゴン、窒素が好ましく用いられる。
【0054】
本発明に係る放電ガスは、反応性ガスに含有される原料ガスの種類に応じて前述した反応促進ガスを含有してもよい。
【0055】
本発明に係る反応性ガスは、不活性ガスを含有していてもよく、通常不活性ガスを含有させて放電空間に供給する。
【0056】
反応性ガスは、放電ガスに対し、0.01〜50体積%で放電空間に供給することが好ましい。
【0057】
5は本発明に係る電圧印加手段であり、第一電極2、第二電極3間に高周波電圧を印加するための高周波電源である。100kHz以下の印加電圧でもよいが、好ましくは印加電圧は100kHzを越えて、150MHz以下である。用いることのできる高周波電源としては、特に限定はないが、例えば、パール工業製高周波電源(200kHz)、同(800kHz)、同(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を用いることができる。高周波電源5は、電圧の放電出力が、1W/cm2〜50W/cm2であることが放電プラズマのプラズマ密度を上げることができ好ましい。
【0058】
本発明において大気圧又は大気圧近傍下とは、20kPa〜110kPaの圧力下である。本発明において、電圧を印加する電極間のさらに好ましい圧力は、93kPa〜104kPaである。
【0059】
図1において、6はアースであり、第二電極3はアース6に接地している。アース6は、第一電極2に接地するようにしてもよい。
【0060】
基材1は第二電極3を覆うようにして配置されている。これにより、第二電極3は、放電プラズマに晒されることがなくなり、第二電極3の電極汚れを防ぐことができる。
【0061】
また、第二電極3は、図1に示す矢印のように反復移動が可能である。これにより、第二電極3上に配置された基材1を放電空間内を移動することができ、基材1に均一に製膜処理を行うことが可能となる。
【0062】
図1に示す薄膜製膜装置の第二電極3の反復移動速度は、0.5m/sec以下であることが好ましい。これにより、反応ガスの層の乱れをできるだけ抑え、反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということがより一層抑えられ、放電空間内で発生した活性化された反応性ガス成分の第一電極2への接触が抑えられ第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0063】
図1に示す薄膜製膜装置では、基材1がガラス板等の平板状の基材や、立体的な形を有する基材である場合の製膜処理に好適である。
【0064】
図1に示す本発明の薄膜製膜装置は放電空間の第一電極に接する領域が放電ガスの層となるように放電ガスを供給する。図1に示す薄膜製膜装置は、放電ガス供給部4bの放電ガスの流路の一部及び放電ガス供給口4b2の一部を第一電極2として放電ガス供給口4b2と第一電極2とが接した構造としており、第一電極2と接する領域に放電ガスの層を供給することができる。さらに、図1に示す本発明の薄膜製膜装置は、放電空間内に放電ガスと反応性ガスをそれぞれ供給する際に、反応性ガスの速度V1、前記放電ガスの速度V2をそれぞれ20m/sec以下として放電空間に供給する。
【0065】
このように放電ガスと反応性ガスを放電空間に供給することにより、第一電極2は放電ガスの層に覆われ、さらに反応性ガス、放電ガスの速度が抑えられているので、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということが極力抑えられ、放電空間内で活性化された反応性ガス成分の第一電極2への接触が抑えられる。これにより、第一電極2の電極汚れを防止することができることから、電極の清掃回数を少なくすることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0066】
放電空間に供給される反応性ガスの速度V1、放電ガスの速度V2は、それぞれの速度を求めることができるのであればどのような方法で求めてもよく、例えばカノマックス社製のクリモマスター風速計等の各種測定装置で測定して求める等の方法を用いることができる。また、反応性ガス供給口4a2からの反応性ガス供給量、放電ガス供給口4b2からの放電ガス供給量と、放電空間の断面積からV1、V2を計算して求める方法等も用いることもできる。さらに、反応性ガス供給口4a2、放電ガス供給口4b2が放電空間の直前に設けられており、反応性ガス供給口4a2から放出された直後の反応性ガスの速度、放電ガス供給口4b2から放出された直後の放電ガスの速度が変化することなく放電空間に供給される様な装置の場合は、反応性ガス供給口4a2から放出された直後の反応性ガスの速度をV1、放電ガス供給口4b2から放出された直後の放電ガスの速度をV2とすることができる。
【0067】
図2は、本発明の他の薄膜製膜装置の一例を示す断面図である。
尚、図2の説明においては、前述の図1の説明で説明された符号と同じ符号のものの説明及びそれに関連する説明について省略されている場合があるが、特に説明がない限りは前述の図1の説明と同じである。
【0068】
図2の薄膜製膜装置は、図1の薄膜製膜装置のようにガス供給部4が、第一電極2に挟まれた構造ではなく、第一電極2、第二電極3で形成される放電空間の一方の方向から放電ガス、反応性ガスを供給できるようにした構造となっている。また、ガス供給部4の放電ガス流路の一部を第一電極2としている。
【0069】
図2に示す薄膜製膜装置は、第二電極3が固定されており、基材1が第二電極3上を移動することで放電空間内を移動し、基材1が放電空間内で活性化された反応性ガス成分に晒されて表面の製膜が行われる。従って、図2に示すような薄膜製膜装置は、ロール状に巻かれた基材の表面の製膜処理に好適であり、放電空間の一方の基材1を送り込み、放電空間内で製膜処理が行われ、放電空間の他方で製膜処理が行われた基材1を巻き取っていく形態で用いられるのが好ましい。また、図2に示す薄膜製膜装置は、放電空間が直線状となっている実施形態であるが、ロール状に巻かれた基材の製膜処理を行う場合は、例えば、第二電極3を円柱状の電極とし、その周囲に第一電極2を配置して放電空間を形成した薄膜製膜装置を用いてもよい。この場合、薄膜製膜装置をよりコンパクトにすることができる。
【0070】
このとき基材1の移動速度とV1との差は±4.0m/secの範囲内であることが好ましく、これにより、反応ガスの層の乱れをできるだけ抑え、反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということがより一層抑えられ、放電空間内で活性化された反応性ガス成分の第一電極2への接触が抑えられ第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0071】
図2に示す本発明の他の薄膜製膜装置も、図1に示す本発明の薄膜製膜装置と同様に、放電空間の第一電極を含む領域が放電ガスの層となるように放電ガスを供給する。図2に示す薄膜製膜装置も、放電ガス供給部4bの放電ガスの流路の一部及び放電ガス供給口4b2の一部を第一電極2として放電ガス供給口4b2と第一電極2とが接した構造としており、第一電極2と接する領域に放電ガスの層を供給することができる。さらに、図2に示す薄膜製膜装置も、放電空間内に放電ガスと反応性ガスをそれぞれ供給する際に、反応性ガスの速度V1、前記放電ガスの速度V2をそれぞれ20m/sec以下として前記放電空間に供給する。
【0072】
このように、放電ガスと反応性ガスを放電空間に供給することにより、第一電極2は放電ガスの層に覆われ、さらに反応性ガスの層、放電ガスの層の速度が抑えられているので、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということが極力抑えられ、放電空間内で発生した活性化された反応性ガス成分の第一電極2への接触が抑えられる。これにより、第一電極2の電極汚れを防止することができることから、電極の清掃回数を少なくすることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0073】
本発明の薄膜製膜装置では、V1とV2とがそれぞれ10m/sec以下となるように供給することが好ましい。このようにして反応性ガスの層と放電ガスの層を放電空間内に供給することで、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということがより一層抑えられ、第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0074】
本発明の薄膜製膜装置は、反応性ガスと放電ガスをそれぞれ層流として放電空間に供給することが好ましい。このようにして反応性ガスの層流と放電ガスの層流を放電空間内に供給することで、放電空間内で反応性ガスの層流と放電ガスの層流が放電空間内で乱れて混合されるということがより一層抑えられ、第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0075】
本発明の薄膜製膜装置は、放電空間内で反応性ガスの速度、前記放電ガスの速度がそれぞれ20m/sec以下となることが好ましく、より好ましくはそれぞれ10m/sec以下である。これにより、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということがより一層抑えられ、第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0076】
図1、図2に示す薄膜製膜装置のように第一電極2、第二電極3をほぼ平行に対向させて配置して形成された放電空間であれば、放電空間内でV1、V2が大きく変動することはなく、放電空間内での速度をV1、V2以下とすることができ、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で乱れて混合されるということがより一層抑えられ、第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0077】
本発明の薄膜製膜装置では、V1とV2との差が±4m/secの範囲内であることが好ましい。このようにして反応性ガスと放電ガスを放電空間内に供給することで、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が速度の差による乱れを抑え、放電空間内での反応性ガスの層と放電ガスの層との混合が抑えられて第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0078】
本発明の薄膜製膜装置では、第一電極2の中心線平均粗さRaが10μm以下であることが好ましい。
【0079】
中心線平均粗さRaは、触針電気式の中心線平均粗さ測定器により測定した値である。即ち、中心線平均粗さRaを10μm以下とするのは、第一電極2の表面の凹凸をできるだけ小さくすることで放電空間内で放電ガスの層の乱れをできるだけ抑え、反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で混合されることをより一層抑え、第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0080】
さらに本発明の薄膜製膜装置では、V2が下式(ア)を満たすことが好ましい。
V2<300μ/Dρ・・・(ア)
ここでDは第一電極2と第二電極3との距離(m)であり、ρは放電ガスの密度(kg/m3)であり、μは放電ガスの粘性(Pa・s)である。これにより、放電ガスの層の乱れをできるだけ抑え、放電空間内で反応性ガスの層と放電ガスの層が放電空間内で混合されるということがより一層抑えられ、第一電極2の電極汚れを一段と防止することができる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
〈薄膜製膜装置1〜4での製膜〉
(1−1)薄膜製膜装置1での製膜
図1に示す薄膜製膜装置において、第一電極2には、20mm角で長さ120mmのステンレスに保温用の穴を貫通させ、角をR3に加工したステンレス材を2本用い、第二電極3には、100×150×20mmの平板のステンレスに保温用の穴を100×20mmの面に3カ所貫通させたステンレス材を用い、さらに、電極の表面にアルミナセラミックを1mmになるまで溶射被覆させた後、アルコキシシランモノマーを有機溶媒に溶解させた塗布液をアルミナセラミック被膜に塗布し、乾燥させた後に、150℃で加熱し封孔処理を行って誘電体を形成した。第一電極2のRaを触針電気式の中心線粗さ測定器(ミツトヨ社製;SDF−TEST−201)で測定したところ2.0μmであった。
【0083】
ガス供給手段4の放電空間付近の第一電極2を除く部分の素材には2mm厚のロスナボード板を用い、この板2枚を用いて2mmのスリット状間隔をサイドプレートを用いて作り、反応性ガスの供給口4a2を有する反応性ガスの流路とした。また、このロスナボード板の両側に1mmの間隔で隣接するように第一電極2を配置して、放電ガス供給口4b2を有する放電ガスの流路とした。温度調節手段で80℃となるように設定した。
【0084】
第一電極2、第二電極3の誘電体を被覆していない部分に高周波電源5の接続やアース6の接地を行った。
【0085】
第一電極2、第二電極3の距離Dは、2.0mmとした。さらに第一電極2、第二電極3内には貫通穴に保温水を循環できるようにして、製膜処理中の第一電極2、第二電極3の温度を80℃となるように設定した。
【0086】
ガス供給部4の反応性ガス供給部4aから供給される反応性ガスにガス種A、放電ガス供給部4bから供給される放電ガスにガス種Bを用いた。
【0087】
ガス種A:He99.9%、テトライソプロポキシチタン0.1%(リンテックス製気化器により気化させて混合)
ρ:0.179(kg/m3)
μ:1.94×10−5(Pa・s)
ガス種B:He99.0%、水素ガス1.0%
ρ:0.179(kg/m3)
μ:1.94×10−5(Pa・s)
放電空間へ供給されるガス種Aの速度V1を25m/sec、放電空間へ供給されるガス種Bの速度V2を25m/secとなるように設定した。このとき、放電空間内でのガス種Aの速度は25m/sec以下となり、放電空間内でのガス種Bの速度は、25m/sec以下となる。
【0088】
高周波電源5には、日本電子製高周波電源JRF−10000を用いた。13.56MHzの周波数であり、第一電極2、第二電極3間に10W/cm2の放電出力を印加するように設定した。
【0089】
上述のように設定した薄膜製膜装置を薄膜製膜装置1とした。基材1として、大きさ100×100mm、厚み0.5mmのガラス板20枚を用いた。基材1の搬送速度を0.1m/secとして反復搬送させ、薄膜製膜装置1で、すべてのガラス板に100nmのTiO2膜の製膜を施した。
【0090】
(1−2)薄膜製膜装置2での製膜
(1−1)の薄膜製膜装置1において、放電空間へ供給されるガス種Aの速度V1を18m/sec、放電空間へ供給されるガス種Bの速度V2を12m/secとなるように設定した以外は、(1−1)の薄膜製膜装置1とすべて同じ設定にした薄膜製膜装置を薄膜製膜装置2とした。基材1として、大きさ100×100mm、厚み0.5mmのガラス板20枚を用い、基材1の搬送速度を0.1m/secとして反復搬送させ、薄膜製膜装置2で、すべてのガラス板に100nmのTiO2膜の製膜を施した。
(1−3)薄膜製膜装置3での製膜
(1−1)の薄膜製膜装置1において、放電空間へ供給されるガス種Aの速度V1を9m/sec、放電空間へ供給されるガス種Bの速度V2を4m/secとなるように設定した以外は、(1−1)の薄膜製膜装置1とすべて同じ設定にした薄膜製膜装置を薄膜製膜装置2とした。基材1として、大きさ100×100mm、厚み0.5mmのガラス板20枚を用い、基材1の搬送速度を0.1m/secとして反復搬送させ、薄膜製膜装置3で、すべてのガラス板に100nmのTiO2膜の製膜を施した。
(1−4)薄膜製膜装置4での製膜
(1−1)の薄膜製膜装置1において、放電空間へ供給されるガス種Aの速度V1を4m/sec、放電空間へ供給されるガス種Bの速度V2を4m/secとなるように設定した以外は、(1−1)の薄膜製膜装置1とすべて同じ設定にした薄膜製膜装置を薄膜製膜装置2とした。基材1として、大きさ100×100mm、厚み0.5mmのガラス板20枚を用い、基材1の搬送速度を0.1m/secとして反復搬送させ、薄膜製膜装置4で、すべてのガラス板に100nmのTiO2膜の製膜を施した。
【0091】
〈薄膜製膜装置1〜4の付着物汚れの評価及び基材の製膜評価〉
それぞれガラス板20枚に製膜を行った後の薄膜製膜装置1〜4の第一電極2の付着物汚れを評価した。
なお付着物汚れの評価は以下の基準で行った。
1:清掃を必要とするほどの付着物汚れが観察された。
2:清掃を必要とするまではいかないが、若干の付着物汚れが観察された。
3:ほとんど付着物汚れが観察されなかった。
【0092】
さらに薄膜製膜装置1〜4で製膜を行ったガラス板についての製膜状況の評価を行った。
【0093】
結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1より、本発明の薄膜製膜装置は、第一電極2の放電面の汚れが抑えられていることが分かった。
【0096】
本発明の薄膜製膜装置は電極等の汚れにより電極等の清掃を行うことによる生産効率の低下が抑えられ、生産性の向上を図ることができることが分かった。
【0097】
【発明の効果】
本発明により、電極の放電面の汚れを抑えた薄膜製膜装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜製膜装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の薄膜製膜装置の他例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 第一電極
3 第二電極
4 ガス供給部
4a 反応性ガス供給部
4a1、4b1 マニホールド
4a2 反応性ガス供給口
4b 放電ガス供給部
4b2 放電ガス供給口
5 高周波電源
6 アース
Claims (5)
- 第一電極と第二電極とを対向させて配置した放電空間と、
前記第一電極及び第二電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記放電空間に放電ガスと反応性ガスとをそれぞれ個別に供給するガス供給手段と、を有し、
大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記電圧印加手段にて電圧を印加することにより、前記放電空間に供給された前記反応性ガスを活性化させて前記第二電極上に配置された基材に製膜を施す薄膜製膜装置であって、
前記ガス供給手段は、
少なくとも前記放電空間の前記第一電極に接する領域が前記放電ガスの層となるように供給し、
さらに前記反応性ガスの速度V1、前記放電ガスの速度V2をそれぞれ20m/sec以下として前記放電空間に供給することを特徴とする薄膜製膜装置。 - 前記V1と前記V2とがそれぞれ10m/sec以下となるように供給することを特徴とする請求項1に記載の薄膜製膜装置。
- 前記V1と前記V2との差が±4m/secの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜製膜装置。
- 前記第一電極の中心線平均粗さRaが10μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜製膜装置。
- 前記V2が下式(ア)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜製膜装置。
V2<300μ/Dρ・・・(ア)
D:第一電極と第二電極との距離(m)
ρ:放電ガスの密度(kg/m3)
μ:放電ガスの粘性(Pa・s)
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