JP2004035701A - 冷媒及び洗浄剤として用いる炭化水素組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくともメタン、エタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、ノーマルペンタン、ヘキサン、ヘプタンを含有することを特徴とする炭化水素組成物である。
【選択図】 なし
Description
【請求項1】冷媒として用いる炭化水素組成物であって、少なくともエタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、及びノーマルペンタンを含有してなる炭化水素組成物。
【請求項2】請求項1記載の炭化水素組成物において、さらにヘキサンを含有することを特徴とする炭化水素組成物。
【請求項3】請求項2記載の炭化水素組成物において、さらにメタン、及びヘプタンを含有することを特徴とする炭化水素組成物。
【請求項4】請求項1〜3のいずれか記載の炭化水素組成物において、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、全体の50vol%以上であることを特徴とする炭化水素組成物。
【請求項5】請求項1〜3のいずれか記載の炭化水素組成物において、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、全体の75vol%以上であることを特徴とする炭化水素組成物。
【請求項6】洗浄剤として用いる請求項1〜5のいずれか記載の炭化水素組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアコンや冷蔵庫等に充填される冷媒、及びコンピュータチップ、マザーボード、ハードディスク等の精密機器の洗浄剤等として好適に用いられる組成物の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアコン(空気調和機)や冷蔵庫に用いられる冷媒、あるいは精密機器の洗浄剤等として、ジクロロジフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン等のいわゆるフロン(CFC)が多用されていた。フロンは、不燃性、安定性、低毒性といった利点を有しているが、一方でオゾン層を破壊し、地球環境に深刻な影響を及ぼすことが指摘されたため、段階的に生産・使用を削減し、現在は全廃する方向にある。
【0003】
そのため、種々の代替フロンが開発されている。代表的な代替フロンとしては、ジフルオロメタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン等のいわゆるHFCが知られている。しかしながら、HFCは、上記CFCに比べて、オゾン層を分解する能力は低いが、地球を温暖化する作用が逆に大きいという問題があり、改善の余地がある。
【0004】
そのような状況の中、最近では、代替フロンの一つとして、炭化水素系の組成物が注目されている。炭化水素系の物質は、オゾンの分解性及び温暖化の作用がともに低いという利点を有している。
【0005】
炭化水素系の代替フロンとして、例えば、特開平1−139676号公報には、炭素数4〜5の炭化水素類の中から選ばれる少なくとも一種とモノクロロジフルオロメタン及びモノクロロペンタフルオロエタンとを必須成分とすることを特徴とする作動媒体混合物が開示され、さらに上記炭素数4〜5の炭化水素類として、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンを用いる旨が開示されている。その他、炭化水素系の組成物に関する先行技術としては、特開昭54−6881号公報、特開昭54−6882号公報、特開平1−139677号公報等を挙げることができる。
【0006】
また、特開平8−176536号公報には、不飽和炭化水素を含む飽和炭化水素からなることを特徴とする冷媒が開示されている。また、不飽和炭化水素を含む飽和炭化水素からなる第1の冷媒と、この第1の冷媒より高沸点の水素化弗化炭素および弗化炭素系冷媒から選ばれた少なくとも1つからなる第2の冷媒と、この第2の冷媒より高沸点の飽和炭化水素からなる第3の冷媒とを混合した混合冷媒が開示されている。さらに上記飽和炭化水素としてプロパン及びブタンを用いる旨が記載されている。その他、プロパン及びブタンを混合した冷媒として、米国特許6336333号公報がある。
【0007】
上記従来の炭化水素系の組成物は、その多くが、CFC、HFC等との混合物の状態で使用するものであり、環境保護の観点から不十分であった。したがって、それ単独で使用可能な炭化水素系の組成物の開発が望まれていた。
【0008】
また、上述のような、プロパン及びブタンから構成した冷媒には、次のような問題点があった。すなわち、プロパン及びブタンの冷媒は、例えば冷却システムから外部に漏れ出した場合に、それぞれの成分に分離してしまう傾向があった。そのため、システム内の冷媒の組成バランスが崩れ、冷媒の交換時にはシステム内の冷媒を全部交換する必要があり、結果としてシステムの寿命を短くする原因となっていた。
【0009】
さらに、上記プロパン及びブタンの冷媒は、各成分同士の結合力が弱い結果、発火点が400℃程度と低く、安全性の点で問題があった。したがって、発火点がより高く安全に優れた炭化水素系の組成物の開発が望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、冷媒や洗浄剤等として好適に用いることができ、また、CFC、HFC等と混合せずそれ単独で使用することが可能な炭化水素組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、各成分に分離せず、システム外に漏れ出した場合でも組成バランスが崩れないため、システムの長寿命化を図ることができ、さらに発火点が高く安全性にも優れた、新規な炭化水素組成物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の炭化水素組成物は、請求項1として、冷媒 として用いる炭化水素組成物であって、少なくともエタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、及びノーマルペンタンを含有したことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、各成分同士の相互作用によって、それぞれの成分に分離し難くなり、全体が単一の物質であるかのような性質を示す。その結果、冷媒として外部に漏れ出した場合でも組成バランスが崩れず、また発火点が、上昇する。
【0014】
また、請求項2は、請求項1記載の炭化水素組成物において、さらにヘキサンを含有することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、各成分同士の相互作用がさらに強くなって全体が一体の組成物となるとともに、洗浄力が高まる。なお、ここでヘキサンは、各種の異性体を含む。
【0016】
また、請求項3は、請求項2記載の炭化水素組成物において、さらにメタン、及びヘプタンを含有することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、各成分の結合力が高まり、全体が一体の組成物となる作用が強くなる。発火点は、800℃以上となる。なお、ここでヘプタンは、各種の異性体を含む。
【0018】
また、請求項4は、請求項1〜3のいずれか記載の炭化水素組成物において、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、全体の50vol%以上であることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、冷媒、洗浄剤としての性能を最大限に引き出すため、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が最適化される。なお、ここでいうvol%は、液体状態における値である。
【0020】
また、請求項5は、請求項1〜3のいずれか記載の炭化水素組成物において、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、全体の75vol%以上であることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、冷媒、洗浄剤としての性能を最大限に引き出すため、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が最適化される。
【0022】
また、請求項6は、洗浄剤として用いる請求項1〜5のいずれか記載の炭化水素組成物である。
【0023】
上記構成によれば、洗浄力が高く、乾燥時間も短い新規な洗浄剤が提供される。この洗浄剤は、コンピュータチップ等の精密機器に対して好適に用いられる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭化水素組成物は、少なくともエタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、及びノーマルペンタンを含有して概略構成される。本発明者は、これらの物質を組み合わせることにより、組成物全体が単一の物質であるかのように機能し、それぞれの成分に分離し難くなる効果が得られることを見い出した。また、各成分に分離しないため、発火点を上昇させることができる。
【0025】
また、本発明は、上記成分に加えて、さらにヘキサンを含有することが好ましい。ヘキサンを加えることによって、各成分同士の相互作用が一層強固になり、個々の成分が分離し難くなる。また、洗浄剤として用いた場合、乾燥時間が適度に調節され、洗浄力を高めることができる。なお、ヘキサンとしては、種々の異性体が適用可能であり、具体的には、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンを挙げることができる。
【0026】
さらに、本発明の組成物には、上記成分に加えて、メタン、ヘプタンを配合することが好ましい。これにより、各成分の結合力は最も強くなり、発火点は800℃以上に達する。従来の炭化水素系組成物の発火点は400℃程度であるので、非常に高い安全性を得ることができる。なお、ヘプタンとしては、種々の異性体が適用可能であり、具体的には、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン等を挙げることができる。
【0027】
各成分の配合比は、組成物の用途等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、組成物全体の50vol%(液体)以上、好ましくは75%以上、特に90%以上であることが好ましい。50vol%未満であると、沸点が数十%下がり、融点が数十%上がる傾向があり、また、冷媒として使用したときの効率が悪いので不適である。
【0028】
以上の炭化水素組成物は、冷媒として好適に使用することができる。具体的には、必要に応じて冷凍機油、潤滑剤、不臭剤等とともに、冷却システムに充填して用いることができる。その際、従来のフロン等の冷媒と混合せず、単独で使用することができる。対象となる冷却システムとしては、特に限定されず、例えば、家庭用エアコン、除湿器、自動車用・鉄道車両用・航空機用・その輸送機械用のエアコン、冷蔵庫及び冷凍庫、飲料自動販売機等を挙げることができる。
【0029】
冷媒として用いた場合には、組成物の分離量が高いため、冷却システムの接合部やO−リングからリークすることがなく、また、アルミニウム等を腐食させることがない。さらに、仮にシステム外に漏れ出した場合には、各成分に分離せず、一体の物質として漏れるので、システム内に残る冷媒の組成バランスが不変である。そのため漏れた分だけを新たに補充すれば良く、安全性が高いとともに経済性にも優れている。また、冷凍機油や潤滑剤等と相溶性が高く、これらを洗浄する作用があるので、システムの内壁に油が滞ることなく、システム内を常にきれいな状態で循環させることができる。したがって、冷却効率を最大限に引き出すことができる。
【0030】
また、本発明の炭化水素組成物は、洗浄剤としても好適に用いることができる。各成分同士の相互作用が強いために、乾燥時間が短く、洗浄力が非常に高いという特徴がある。この洗浄剤は、各種の精密機器、例えば、コンピュータチップ、プリント基板、ハードディスク、マザーボード等の洗浄に利用することができる。
【0031】
上記の冷媒、洗浄剤の他にも、本発明の炭化水素組成物は、発泡剤、噴射剤、接着剤等としても適用可能である。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
原料として、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、ノーマルペンタン、ヘキサン、及びヘプタンを混合し、目的の組成物を製造した。各成分の組成比を(表1)に示す。
得られた炭化水素組成物は、発火点が800℃以上であることがわかった。また、洗浄剤として使用したところ、塗布から11秒以内に乾燥し、洗浄前と比較して99.44%が洗浄されていることが明らかになった。また、その他の測定値を(表2)に示す。なお、(表2)には比較対象として、アンモニアと、及び代表的なCFC、HFCであるR22、R134aについても併せて示した。(表2)の結果から、本発明の組成物は、沸点が高く、気化熱も高いため冷媒としての効率に優れていることが示唆された。
【0033】
【表1】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
以上、本発明の炭化水素組成物は、冷媒、洗浄剤等として好適であり、また、他のCFC、HFC等の組成物と併用せずに、それ単独で使用することができる。さらに、本発明の炭化水素組成物は、オゾン層を破壊せず、環境保護に資するものである。
【0035】
また、各成分同士の相互作用によって、全体が単一の物質であるような性質を示す。その結果、例えば冷媒がシステム外に漏れ出した場合に、残りの組成バランスが崩れず、漏れ出した分だけ補充すれば良いため、経済性に優れる。また、冷凍機油や潤滑剤との相溶性が高く、冷凍機油や潤滑剤が冷却システム内に粘着するような事態が起こらないので、システムが常にクリーンに保たれ、システムの長寿命化を図ることができる。さらに、本発明の組成物は、融点が低く、沸点が高く、また発火点が非常に高いので、安全性に優れ、冷却効率も高い。
【0036】
また、洗浄剤として用いた場合でも、各成分同士の相互作用が強いことに起因して、洗浄力が非常に高く、乾燥時間も短い。そのため、各種のコンピュータチップ、マザーボード、ハードディスク等の洗浄に好適に用いられる。
Claims (7)
- 少なくともエタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、及びノーマルペンタンを含有してなる炭化水素組成物。
- 請求項1の炭化水素組成物において、さらにヘキサンを含有することを特徴とする炭化水素組成物。
- 請求項2記載の炭化水素組成物において、さらにメタン、及びヘプタンを含有することを特徴とする炭化水素組成物。
- 請求項1〜3のいずれか記載の炭化水素組成物において、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、全体の50vol%以上であることを特徴とする炭化水素組成物。
- 請求項1〜3のいずれか記載の炭化水素組成物において、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が、全体の75vol%以上であることを特徴とする炭化水素組成物。
- 請求項1〜5のいずれか記載の炭化水素組成物からなる冷媒。
- 請求項1〜5のいずれか記載の炭化水素組成物からなる洗浄剤。
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