JP3452915B1 - 冷媒及び洗浄剤として用いる炭化水素組成物 - Google Patents

冷媒及び洗浄剤として用いる炭化水素組成物

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Abstract

【要約】 【課題】 冷媒や洗浄剤等として好適に用いることがで
き、また、CFC、HFC等と混合せずそれ単独で使用
することが可能な炭化水素組成物を提供すること。ま
た、各成分に分離せず、システム外に漏れ出した場合で
も組成バランスが崩れないため、システムの長寿命化を
図ることができ、さらに発火点が高く安全性にも優れ
た、新規な炭化水素組成物を提供すること。 【解決手段】 少なくともメタン、エタン、プロパン、
イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、ノーマル
ペンタン、ヘキサン、ヘプタンを含有することを特徴と
する炭化水素組成物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エアコンや冷蔵庫
等に充填される冷媒、及びコンピュータチップ、マザー
ボード、ハードディスク等の精密機器の洗浄剤等として
好適に用いられる組成物の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来、エアコン(空気調和機)や冷蔵庫
に用いられる冷媒、あるいは精密機器の洗浄剤等とし
て、ジクロロジフルオロメタン、モノクロロジフルオロ
メタン等のいわゆるフロン(CFC)が多用されてい
た。フロンは、不燃性、安定性、低毒性といった利点を
有しているが、一方でオゾン層を破壊し、地球環境に深
刻な影響を及ぼすことが指摘されたため、段階的に生産
・使用を削減し、現在は全廃する方向にある。
【0003】そのため、種々の代替フロンが開発されて
いる。代表的な代替フロンとしては、ジフルオロメタ
ン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1-トリフルオ
ロエタン等のいわゆるHFCが知られている。しかしな
がら、HFCは、上記CFCに比べて、オゾン層を分解
する能力は低いが、地球を温暖化する作用が逆に大きい
という問題があり、改善の余地がある。
【0004】そのような状況の中、最近では、代替フロ
ンの一つとして、炭化水素系の組成物が注目されてい
る。炭化水素系の物質は、オゾンの分解性及び温暖化の
作用がともに低いという利点を有している。
【0005】炭化水素系の代替フロンとして、例えば、
特開平1−139676号公報には、炭素数4〜5の炭
化水素類の中から選ばれる少なくとも一種とモノクロロ
ジフルオロメタン及びモノクロロペンタフルオロエタン
とを必須成分とすることを特徴とする作動媒体混合物が
開示され、さらに上記炭素数4〜5の炭化水素類とし
て、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペン
タン、イソペンタン、シクロペンタンを用いる旨が開示
されている。その他、炭化水素系の組成物に関する先行
技術としては、特開昭54−6881号公報、特開昭5
4−6882号公報、特開平1−139677号公報等
を挙げることができる。
【0006】また、特開平8−176536号公報に
は、不飽和炭化水素を含む飽和炭化水素からなることを
特徴とする冷媒が開示されている。また、不飽和炭化水
素を含む飽和炭化水素からなる第1の冷媒と、この第1
の冷媒より高沸点の水素化弗化炭素および弗化炭素系冷
媒から選ばれた少なくとも1つからなる第2の冷媒と、
この第2の冷媒より高沸点の飽和炭化水素からなる第3
の冷媒とを混合した混合冷媒が開示されている。さらに
上記飽和炭化水素としてプロパン及びブタンを用いる旨
が記載されている。その他、プロパン及びブタンを混合
した冷媒として、米国特許6336333号公報があ
る。
【0007】上記従来の炭化水素系の組成物は、その多
くが、CFC、HFC等との混合物の状態で使用するも
のであり、環境保護の観点から不十分であった。したが
って、それ単独で使用可能な炭化水素系の組成物の開発
が望まれていた。
【0008】また、上述のような、プロパン及びブタン
から構成した冷媒には、次のような問題点があった。す
なわち、プロパン及びブタンの冷媒は、例えば冷却シス
テムから外部に漏れ出した場合に、それぞれの成分に分
離してしまう傾向があった。そのため、システム内の冷
媒の組成バランスが崩れ、冷媒の交換時にはシステム内
の冷媒を全部交換する必要があり、結果としてシステム
の寿命を短くする原因となっていた。
【0009】さらに、上記プロパン及びブタンの冷媒
は、各成分同士の結合力が弱い結果、発火点が400℃
程度と低く、安全性の点で問題があった。したがって、
発火点がより高く安全に優れた炭化水素系の組成物の開
発が望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上記
従来の状況に鑑み、冷媒や洗浄剤等として好適に用いる
ことができ、また、CFC、HFC等と混合せずそれ単
独で使用することが可能な炭化水素組成物を提供するこ
とを目的とする。
【0011】また、各成分に分離せず、システム外に漏
れ出した場合でも組成バランスが崩れないため、システ
ムの長寿命化を図ることができ、さらに発火点が高く安
全性にも優れた、新規な炭化水素組成物を提供すること
を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の炭化水素組成物は、請求項1として、冷媒
として用いる炭化水素組成物であって、少なくともメタ
ン、エタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタン、
イソペンタン、ノーマルペンタン、ヘキサン、及びヘプ
タンが組み合わされ、前記プロパン、イソブタン、ノー
マルブタンの合計量が全体の75vol%以上であり、
発火点が800℃以上であることを特徴とする。
【0013】上記構成によれば、各成分同士の相互作用
によって、それぞれの成分に分離し難くなり、全体が単
一の物質であるかのような性質を示す。その結果、冷媒
として外部に漏れ出した場合でも組成バランスが崩れ
ず、また発火点が800℃以上 上昇する。なお、ここ
でヘキサン、ヘプタンは、各種の異性体を含む。また、
ここでいうvol%は、液体状態における値である。
【0014】また、請求項は、洗浄剤として用いる請
求項記載の炭化水素組成物である。
【0015】上記構成によれば、洗浄力が高く、乾燥時
間も短い新規な洗浄剤が提供される。この洗浄剤は、コ
ンピュータチップ等の精密機器に対して好適に用いられ
る。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭化水素組成物は、少なくともエタン、プロパ
ン、イソブタン、ノーマルブタン、イソペンタン、及び
ノーマルペンタンを含有して概略構成される。本発明者
は、これらの物質を組み合わせることにより、組成物全
体が単一の物質であるかのように機能し、それぞれの成
分に分離し難くなる効果が得られることを見い出した。
また、各成分に分離しないため、発火点を上昇させるこ
とができる。
【0017】また、本発明は、上記成分に加えて、さら
にヘキサンを含有するヘキサンを加えることによっ
て、各成分同士の相互作用が一層強固になり、個々の成
分が分離し難くなる。また、洗浄剤として用いた場合、
乾燥時間が適度に調節され、洗浄力を高めることができ
る。なお、ヘキサンとしては、種々の異性体が適用可能
であり、具体的には、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、
3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチル
ブタンを挙げることができる。
【0018】さらに、本発明の組成物には、上記成分に
加えて、メタン、ヘプタンを配合する。これにより、各
成分の結合力は最も強くなり、発火点は800℃以上に
達する。従来の炭化水素系組成物の発火点は400℃程
度であるので、非常に高い安全性を得ることができる。
なお、ヘプタンとしては、種々の異性体が適用可能であ
り、具体的には、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メ
チルヘキサン、2,4-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペ
ンタン、3-エチルペンタン等を挙げることができる。
【0019】各成分の配合比は、組成物の用途等に応じ
て適宜設定することができ、特に限定されるものではな
いが、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量
が、組成物全体の50vol%(液体)以上、好ましく
は75%以上、特に90%以上であることが好ましい。
50vol%未満であると、沸点が数十%下がり、融点
が数十%上がる傾向があり、また、冷媒として使用した
ときの効率が悪いので不適である。
【0020】以上の炭化水素組成物は、冷媒として好適
に使用することができる。具体的には、必要に応じて冷
凍機油、潤滑剤、不臭剤等とともに、冷却システムに充
填して用いることができる。その際、従来のフロン等の
冷媒と混合せず、単独で使用することができる。対象と
なる冷却システムとしては、特に限定されず、例えば、
家庭用エアコン、除湿器、自動車用・鉄道車両用・航空
機用・その輸送機械用のエアコン、冷蔵庫及び冷凍庫、
飲料自動販売機等を挙げることができる。
【0021】冷媒として用いた場合には、組成物の分子
量が高いため、冷却システムの接合部やO−リングから
リークすることがなく、また、アルミニウム等を腐食さ
せることがない。さらに、仮にシステム外に漏れ出した
場合には、各成分に分離せず、一体の物質として漏れる
ので、システム内に残る冷媒の組成バランスが不変であ
る。そのため漏れた分だけを新たに補充すれば良く、安
全性が高いとともに経済性にも優れている。また、冷凍
機油や潤滑剤等と相溶性が高く、これらを洗浄する作用
があるので、システムの内壁に油が滞ることなく、シス
テム内を常にきれいな状態で循環させることができる。
したがって、冷却効率を最大限に引き出すことができ
る。
【0022】また、本発明の炭化水素組成物は、洗浄剤
としても好適に用いることができる。各成分同士の相互
作用が強いために、乾燥時間が短く、洗浄力が非常に高
いという特徴がある。この洗浄剤は、各種の精密機器、
例えば、コンピュータチップ、プリント基板、ハードデ
ィスク、マザーボード等の洗浄に利用することができ
る。
【0023】上記の冷媒、洗浄剤の他にも、本発明の炭
化水素組成物は、発泡剤、噴射剤、接着剤等としても適
用可能である。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、これらに限定されるものではない。 (実施例1) 原料として、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、
ノーマルブタン、イソペンタン、ノーマルペンタン、ヘ
キサン、及びヘプタンを混合し、目的の組成物を製造し
た。各成分の組成比を(表1)に示す。得られた炭化水
素組成物は、発火点が800℃以上であることがわかっ
た。また、洗浄剤として使用したところ、塗布から11
秒以内に乾燥し、洗浄前と比較して99.44%が洗浄
されていることが明らかになった。また、その他の測定
値を(表2)に示す。なお、(表2)には比較対象とし
て、アンモニアと、及び代表的なCFC、HFCである
R22、R134aについても併せて示した。(表2)
の結果から、本発明の組成物は、沸点が高く、気化熱も
高いため冷媒としての効率に優れていることが示唆され
た。
【0025】
【表1】
【表2】
【0026】
【発明の効果】以上、本発明の炭化水素組成物は、冷
媒、洗浄剤等として好適であり、また、他のCFC、H
FC等の組成物と併用せずに、それ単独で使用すること
ができる。さらに、本発明の炭化水素組成物は、オゾン
層を破壊せず、環境保護に資するものである。
【0027】また、各成分同士の相互作用によって、全
体が単一の物質であるような性質を示す。その結果、例
えば冷媒がシステム外に漏れ出した場合に、残りの組成
バランスが崩れず、漏れ出した分だけ補充すれば良いた
め、経済性に優れる。また、冷凍機油や潤滑剤との相溶
性が高く、冷凍機油や潤滑剤が冷却システム内に粘着す
るような事態が起こらないので、システムが常にクリー
ンに保たれ、システムの長寿命化を図ることができる。
さらに、本発明の組成物は、融点が低く、沸点が高く、
また発火点が非常に高いので、安全性に優れ、冷却効率
も高い。
【0028】また、洗浄剤として用いた場合でも、各成
分同士の相互作用が強いことに起因して、洗浄力が非常
に高く、乾燥時間も短い。そのため、各種のコンピュー
タチップ、マザーボード、ハードディスク等の洗浄に好
適に用いられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 5/04 C11D 7/50 F25B 1/00 C09K 3/00 JICSTファイル(JOIS) 特許ファイル(PATOLIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷媒として用いる炭化水素組成物であっ
    て、少なくともメタン、エタン、プロパン、イソブタ
    ン、ノーマルブタン、イソペンタン、ノーマルペンタ
    、ヘキサン、及びヘプタンが組み合わされ、前記プロ
    パン、イソブタン、ノーマルブタンの合計量が全体の7
    5vol%以上であり、発火点が800℃以上である
    化水素組成物。
  2. 【請求項2】 洗浄剤として用いる請求項記載の炭化
    水素組成物。
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