JP2004034908A - 車両用シート装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】座席本体の回転時に着座者あるいは座席本体が車室内のユニットや車体と干渉しないようにする。
【解決手段】車室内の支持ベース12上に設けられた回転機構14と、回転機構14により回転可能に支持された回転体15と、回転体15上で座席本体Hを前後方向にスライド可能に支持するスライド機構20とを備え、回転機構14により座席本体Hを車両前方を向く通常時使用位置から乗降口の方を向く乗降時使用位置まで回転可能で、かつスライド機構20によりスライド可能であって、座席本体Hがスライド機構20により回転体15の中央以外の位置にあるとき、回転を禁止する回転禁止機構40と、座席本体Hが通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるとき、スライドを禁止するスライド禁止機構50とを有する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転機構により座席本体を車両前方を向く通常時使用位置から乗降口の方を向く乗降時使用位置まで回転可能で、かつ通常時使用位置及び乗降時使用位置でスライド機構により座席本体をスライド可能な構成の車両用シート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の一般的な車両用シート装置を図11に示す。この車両用シート装置100は、車室の前後方向に配置された左右一対の下部スライド機構91を備えており、その下部スライド機構91のスライドレール91sに支持ベース92が取付けられている。支持ベース92上には回転機構93を介して回転テーブル94がほぼ水平に回転可能に設置されている。回転機構93の回転部位である外輪93fの外周面にはギヤ93rが形成されており、このギヤ93rが下部スライド機構91に沿って配置されたラック98と噛合している。
【0003】
このため、下部スライド機構91を使用して支持ベース92を前後スライドさせることで、ギヤ93rとラック98との噛合作用により外輪93f、回転テーブル94を左右方向に回転させることができる。
回転テーブル94上には左右一対の上部スライド機構95が設置されており、その上部スライド機構95のスライド板95b上に座席本体96が載置されている。このため、座席本体96を回転テーブル94上で前後にスライドさせることが可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記車両用シート装置100では、座席本体96を回転テーブル94上で前後スライドさせることが可能なため、座席本体96が前後スライド範囲内のどの位置にあっても、その座席本体96及び回転テーブル94を回転させることができる。しかし、着座者を座席本体96に着座させた状態でその座席本体96を回転させる場合、座席本体96が回転テーブル94上の回転適性位置から外れると、回転中に着座者や座席本体96が車室内のユニットや車体と干渉することがある。特に、車室内空間が狭い小型車の場合、その弊害が大きい。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、座席本体が前後スライド範囲内の最適位置にあるときに、その座席本体を安全に回転できるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車室内の支持ベース上に設けられた回転機構と、この回転機構により支持ベースに対してほぼ平行に回転可能に支持された回転体と、前記回転体上で座席本体をその座席本体の前後方向にスライド可能に支持するスライド機構とを備え、前記回転機構により前記座席本体を車両前方を向く通常時使用位置から乗降口の方を向く乗降時使用位置まで回転可能で、かつ通常時使用位置及び乗降時使用位置で前記スライド機構により前記座席本体をスライド可能な構成の車両用シート装置であって、前記座席本体が前記スライド機構により回転体に対してスライド可能な範囲内の予め設定された基準位置以外の位置にあるとき、支持ベースに対する座席本体の回転を禁止する回転禁止機構と、前記座席本体が前記通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるとき、前記回転体に対する座席本体のスライドを禁止するスライド禁止機構とを有することを特徴とする。
【0006】
本発明によると、回転禁止機構の働きで、座席本体が回転体上の基準位置にあるときのみ、その回転体が回転可能となり、座席本体は通常使用位置と乗降使用位置との間を回転できるようになる。このため、基準位置を回転最適位置に設定することで、座席本体の回転時に着座者あるいは座席本体が車室内のユニットや車体と干渉することが無くなる。
また、回転体が通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるときは、スライド禁止機構の働きで回転体に対する座席本体のスライドが禁止されるため、座席本体を安全に回転させることができる。
【0007】
また、請求項2の発明では、基準位置は、スライド機構により座席本体が回転体に対してスライド可能な範囲の中間位置に設定されており、通常時使用位置において座席本体は回転体に対し、前記スライド機構によりスライド可能な範囲の後端位置と前記基準位置との間でのみスライド可能に構成されており、乗降時使用位置において前記座席本体は前記回転体に対し、前記基準位置と前記スライド機構によりスライド可能な範囲の前端位置との間でのみスライド可能に構成されている。このため、スライド機構のストロークを有効に利用できるとともに、通常時使用位置及び乗降時使用位置において、それぞれに応じた適正な範囲でのみスライドさせることができる。
【0008】
また、請求項3の発明では、スライド禁止機構は、座席本体に対して固定的に設けられた被ガイド部材と、支持ベースに対して固定的に設けられたガイド部材とを有しており、前記ガイド部材は、平面視で座席本体の回転中心と曲率中心が一致する円弧形で、互いに曲率半径方向で所定の間隔を空けて配置された第1ガイド壁と第2ガイド壁とを有しており、座席本体が前記通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるときは、被ガイド部材は第1ガイド壁と第2ガイド壁との間に位置し、被ガイド部材が両ガイド壁の曲率半径方向へ移動するのが規制されている。
これによって、座席本体が通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるときにおけるその座席本体のスライドを確実に禁止でき、回転中の安全を確保できる。
【0009】
また、請求項4の発明では、第1ガイド壁は第2ガイド壁よりも内側に位置し、第1ガイド壁の一端には、第2ガイド壁の一端よりも座席本体の回転方向に延出する延出部が形成され、第2ガイド壁の他端には第1ガイド壁の他端よりも座席本体の回転方向に延出する延出部が形成されており、座席本体が通常時使用位置にある状態で、前記座席本体を前記後端位置側から基準位置までスライドさせると、その座席本体の被ガイド部材が第1ガイド壁の延出部に当接して座席本体のスライドが止められ、前記座席本体が乗降時使用位置にある状態で、前記座席本体を前記前端位置側から基準位置までスライドさせると、その座席本体の被ガイド部材が第2ガイド壁の延出部に当接して座席本体のスライドが止められる構成である。
これによって、スライド禁止機構とスライド機構のストロークを分割する機構との構成部品を兼用することができる。
【0010】
また、請求項5の発明は、支持ベースに対し、座席本体を前記通常時使用位置と乗降時使用位置とで回転不能にロック可能であるとともに、回転可能なようにこのロックを解除可能な回転ロック機構を備えている。
また、請求項6の発明では、回転ロック機構は、座席本体に装着されている操作ハンドルと、回転体に連結されており、操作ハンドルの動きを受けて一定の軌跡で移動する係合部材と、操作ハンドルの動きを前記係合部材に伝える伝達部材と、支持ベースあるいは車室の床側に設けられており、前記座席本体が通常時使用位置にあるときに、前記係合部材が係合する位置に位置決めされている第1被係合部材と、前記座席本体が乗降時使用位置にあるときに前記係合部材が係合する位置に位置決めされている第2被係合部材とを有しており、前記操作ハンドルの操作により、その係合部材と第1被係合部材あるいは第2被係合部材との係合を解除できるように構成されている。
このため、座席本体が回転体上の基準位置にあっても、回転ロック機構を操作しない限り、回転ロック機構はロック解除状態にならない。したがって、着座者の意に反してロック状態が解除される不具合がない。
【0011】
また、請求項7に示すように、座席本体または回転体の一方に設けられ、回転ロック機構の操作ハンドルの動作に伴い変位する変位部材と、座席本体または回転体の他方に設けられ、回転体に対する座席本体のスライドに伴い前記変位部材に対して移動し、座席本体が前記基準位置に移動したときは、前記変位部材の変位を許容して前記操作ハンドルを操作可能とし、座席本体が前記基準位置以外の位置に移動したときは、前記変位部材に係合することにより、その変位を規制して前記操作ハンドルの操作を規制する規制部とから回転禁止機構を構成するのが好ましい。
【0012】
また、請求項8に示すように、回転体に設けられ、スライド禁止位置と回転禁止位置とに移動可能に設けられた規制部材と、座席本体が前記基準位置に移動したときに前記規制部材をスライド禁止位置に移動させ、座席本体が前記基準位置以外に移動したとき前記規制部材を回転禁止位置に移動させる作動手段と、座席本体に設けられ、前記規制部材がスライド禁止位置に移動したとき規制部材に係合するとともに、規制部材が回転禁止位置に移動したときはこの係合を解除し、係合状態では座席本体のスライドを禁止する係合部と、座席本体が通常時使用位置および乗降時使用位置に回転したとき、規制部材の回転禁止位置側への移動を許容するとともに、座席本体が回転途中のときは前記規制部材が回転禁止位置に移動するのを規制する規制手段と、支持ベースに設けられ、前記規制部材が回転禁止位置に移動したときは規制部材に係合するとともに、規制部材がスライド禁止位置に移動したときはこの係合を解除し、係合状態では座席本体の回転を禁止する係合部とから回転禁止機構及びスライド禁止機構を構成しても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、図1から図7に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の説明を行う。本実施形態では助手席を本発明に係る車両用シート装置とした場合について説明する。図1は本実施形態に係る車両用シート装置の分解斜視図であり、図2は回転体及び上部スライド機構の要部斜視図等、図3は回転ロック機構及びスライド禁止機構を表す平面図等、図4は車両用シート装置の縦断面図(図1のIV −IV矢視断面図)である。また、図5は回転禁止機構と回転ロック機構との関係を表す模式図、図6は回転禁止機構とスライド禁止機構の関係を表す平面図、図7は車両用シート装置の動作を表す平面図である。なお、車室内の幅方向をX方向、前後方向をY方向、及び高さ方向をZ方向として以下の説明する。
【0014】
図1に示すように、車両用シート装置1は、スライド&回転機構10と、そのスライド&回転機構10の回転体15上に載置された上部スライド機構20と、その上部スライド機構20上に載置された座席本体H(図ではシートクッション部分を表している)とを備えている。なお、図1では、上部スライド機構20のアッパレール22を省略している。
スライド&回転機構10は、車室の前後方向(Y方向)に沿って配置された左右一対の下部スライド機構11を備えている。両下部スライド機構11は、平板状の支持ベース12を車室の前後方向にスライド可能に支持する機構であり、上側スライドレール11aと下側スライドレール11bとを有している。
【0015】
上側スライドレール11aと下側スライドレール11bは、図4に示すように、支持ベース12の左右両端に形成されたスライド部12sを上下から挟んで拘束できるように組み立てられており、車室の床部10fに固定されている。また、上側スライドレール11aの下面と支持ベース12のスライド部12sの上面との間、及び支持ベース12のスライド部12sの下面と下側スライドレール11bの上面との間には、多数の転動球13が挟み込まれている。これによって、支持ベース12を両スライドレール11a,11bに対してスムーズに、かつガタツキなくスライドさせることができる。
【0016】
スライド&回転機構10の支持ベース12上には、図1に示すように、その支持ベース12の左後部に回転機構14が取付けられている。
回転機構14は相対回転可能な内輪14eと外輪14fとを有しており、その内輪14eの外側周方向に形成されたV溝と外輪14fの内側周方向に形成されたV溝との間に多数の鋼球14b(図4参照)が挟み込まれている。これによって、内輪14eに対して外輪14fをスムーズに、かつガタツキなく回転させることができる。
【0017】
回転機構14はその内輪14eが支持ベース12に固定されており、外輪14f上に支持ベース12とほぼ平行に回転体15が取付けられている。また、外輪14fの外周にはギヤ14wが形成されており、そのギヤ14wが車両左側の下部スライド機構11の上側スライドレール11aに沿って配置されたラック16と噛合している。これによって、支持ベース12が後退限位置にある状態で前方に押圧され、その支持ベース12が両下部スライド機構11の働きで前進すると、回転機構14の外輪14f及び回転体15は、その外輪14fのギヤ14wとラック16との噛合作用により左回転する。ギヤ14w及びラック16の歯寸法は支持ベース12が下部スライド機構11,11の後退限位置から前進限位置までスライドしたときに、回転体15が約60°回転できるように設定されている。
【0018】
即ち、スライド&回転機構10によると、支持ベース12のスライドと回転体15の回転とが連動して行われる。ここで、回転体15は、支持ベース12が下部スライド機構11,11の後退限位置にあるときに、その回転体15の前後左右方向が支持ベース12の前後左右方向と一致するように、回転機構14の外輪14fに取付けられている。
【0019】
回転体15上には、左右一対の上部スライド機構20がその回転体15の前後方向に沿って設置されている。上部スライド機構20は、図1、図2(A)、及び図4に示すように、ロアレール21と、そのロアレール21に嵌め込まれた状態でそのロアレール21に沿って摺動可能なアッパレール22とを備えている。そして、ロアレール21が回転体15の左側端縁及び右側端縁に固定されており、左右のアッパレール22が座席本体Hのシート支持板Hbの左側端縁及び右側端縁に固定されている。これによって、座席本体Hは回転体15に対しその座席本体Hの前後方向にスライド可能となる。なお、図1では、座席本体Hのシート支持板Hbは省略されている。
【0020】
ここで、上部スライド機構20には、スライド可能な範囲内のほぼ希望する位置でその上部スライド機構20のスライドをロックできる周知のスライドロック機構(図示されていない)が設けられており、着座者がレバー23(図2(A)参照)により前記スライドロック機構のロック状態を解除できるように構成されている。
上記構成により、スライド&回転機構10の支持ベース12が下部スライド機構11の後退限位置にある状態で、座席本体Hは車両前方を向く通常時使用位置に保持されるとともに、座席本体Hは上部スライド機構20の働きで前後スライド可能となる。また、後記する条件下で座席本体H等を前方に押圧し、支持ベース12を下部スライド機構11に対して前進限位置までスライドさせることにより、座席本体H及び回転体15を乗降口の方を向く乗降時使用位置まで約60°左回転させることが可能になる。
【0021】
次に、車両用シート装置1の回転ロック機構30について説明する。
回転ロック機構30は、スライド&回転機構10の支持ベース12のスライドと回転体15及び座席本体Hの回転とを禁止する機構であり、座席本体Hが車両前方を向く通常時使用位置にあるときと、座席本体Hが乗降口の方を向く乗降時使用位置にあるときに、自動的にロックするように構成されている。
【0022】
回転ロック機構30は、図1等に示すように、回転体15の下側に設けられた係合部材32と、車室の床部10fに設けられた第1被係合部材34と、支持ベース12上に設けられた第2被係合部材とを備えている。なお、図1では、係合部材32が見やすいように、その係合部材32を実線で表している。
係合部材32は、図1、図2(B)に示すように、中央部が連結軸32pによって水平回転可能な状態で回転体15の下面に取付けられている。係合部材32は、回転体15の前後方向に沿って配置されており、その後部に係合ピン32kが縦に固定されている。そして、その係合ピン32kが第1被係合部材34あるいは第2被係合部材と係合可能に構成されている。
【0023】
また、係合部材32の前部には、係合保持バネ32yの一端が接続されており、その係合保持バネ32yの他端が回転体15に接続されている。係合保持バネ32yは、係合ピン32kが第1被係合部材34あるいは第2被係合部材と自動的に係合可能なように、その係合部材32を図1、図2(B)において左回転させる方向に付勢されている。このため、係合部材32は、係合保持バネ32yのバネ力で左限回動位置に保持されている。
【0024】
係合部材32の前端部には受け部32uが折り曲げ形成されており、この受け部32uに操作ハンドル39の解除ワイヤー38の一端が連結されている。操作ハンドル39は、係合部材32を係合保持バネ32yのバネ力に抗して右回転方向に引っ張る部材であり、図2に示すように、座席本体Hのシート支持板Hbの前部左側に取付けられている。解除ワイヤー38は、ワイヤー本体38mと、そのワイヤー本体38mの中央部分を収納するチューブ38tとを備えており、ワイヤー本体38mの両端が、図5等に示すように、それぞれ操作ハンドル39の受け部39uと係合部材32の受け部32uとに接続されている。また、解除ワイヤー38のチューブ38tの両端がそれぞれ回転体15の止め部15aとシート支持板Hbの前部止め部Htとに固定されている。
【0025】
操作ハンドル39は、図1、図2(A)に示すように、L字形をした把持部39hとその把持部39hに連結された回転板39bとを有している。回転板39bはその中央部分が連結軸39pによって水平回転が可能な状態でシート支持板Hbに取付けられており、その回転板39bの後端部(把持部39hと反対側の端部)にワイヤー本体38mが接続される受け部39uが折り曲げ形成されている。また、回転板39bの受け部39u近傍にはその回転板39bに対して図中右回りの回転力(戻し方向の回転力)を付与する第1戻りバネ39yの一端が接続されている。
【0026】
このため、操作ハンドル39を第1戻りバネ39yのバネ力に抗し、図1、図2(A)において左回動させることにより、ワイヤー本体38mにより係合部材32の受け部32uが引っ張られ、係合部材32は係合保持バネ32yのバネ力に抗して連結軸32pを中心に右回転する(図2(B)、図5の二点鎖線参照)。これによって、係合部材32の係合ピン32kと第1被係合部材34あるいは第2被係合部材と係合が解除される。
【0027】
第1被係合部材34は、係合部材32の係合ピン32kが係合された状態で、支持ベース12を後退限位置に保持するとともに、その支持ベース12に対する回転体15の回転を禁止し、その回転体15及び座席本体を通常時使用位置に保持する働きをする。
第1被係合部材34は、車両右側寄りの下部スライド機構11の位置で車室床面10fに固定されており、その第1被係合部材34の板状の被係合受け部34rが支持ベース12と回転体15との間でほぼ水平に位置決めされている(図3、図4参照)。
【0028】
第1被係合部材34の被係合受け部34rは、係合部材32の係合ピン32kが係合するピン用切欠き34cと、そのピン用切欠き34cの前側に形成されたガイド部34xと、ピン用切欠き34cの後側に形成されたストッパ部34sとから構成されている。ピン用切欠き34cは、支持ベース12の幅方向内側に開口が形成されており、係合保持バネ32yのバネ力で図2(B)、図5において左回動する係合部材32の係合ピン32kが係合できるように構成されている。
【0029】
ガイド部34x(図3参照)は、回転体15が乗降時使用位置から右回転して通常時使用位置まで戻る際に、係合部材32の係合ピン32kを第1被係合部材34のピン用切欠き34cまで導く働きをする。即ち、回転体15が右回転する際に、通常時使用位置の近傍で、係合部材32の係合ピン32kはガイド部34xの傾斜面34kに沿って摺動し、ピン用切欠き34cの位置まで到達した段階で、その係合ピン32kは係合保持バネ32yのバネ力により自動的にピン用切欠き34cと係合する。
ストッパ部34sは、座席本体Hが通常時使用位置にある状態で、操作ハンドル39により、係合部材32の係合ピン32kと第1被係合部材34のピン用切欠き34cとの係合が解除されても、座席本体Hが右方向に回動するのを禁止する働きをする。
【0030】
第2被係合部材36は、係合部材32の係合ピン32kが係合された状態で、支持ベース12を前進限位置に保持するとともに、その支持ベース12に対する回転体15の回転を禁止し、その回転体15及び座席本体を乗降時使用位置に保持する働きをする。
第2被係合部材36は、支持ベース12の前部上面に固定されており、その第2被係合部材36の板状の被係合受け部36rが第1被係合部材34の被係合受け部34rとほぼ同じ高さに位置決めされている。第2被係合部材36の被係合受け部36rは、図3(A)に示すように、第1被係合部材34の被係合受け部34rと対称な形状に成形されており、係合部材32の係合ピン32kが係合するピン用切欠き36cと、そのピン用切欠き34cの右側に形成されたガイド部36xと、ピン用切欠き34cの左側に形成されたストッパ部36sとから構成されている。
【0031】
このため、回転体15が左回転する際に、乗降時使用位置の近傍で係合部材32の係合ピン32kは第2被係合部材36のガイド部36xの傾斜面36kに沿って摺動し、ピン用切欠き36cの位置まで到達した段階で、その係合ピン32kは係合保持バネ32yのバネ力で自動的にピン用切欠き36cと係合する。
ストッパ部36sは、座席本体Hが乗降時使用位置にある状態で、操作ハンドル39により、係合部材32の係合ピン32kと第2被係合部材36のピン用切欠き36cとの係合が解除されても、座席本体Hが左方向に回動するのを禁止する働きをする。
【0032】
次に、車両用シート装置1の回転禁止機構40について説明する。
回転禁止機構40は、回転ロック機構30の操作ハンドル39の動作を規制する機構であり、座席本体Hが上部スライド機構20によって回転体15の中央位置までスライドしたときにのみ、その操作ハンドル39の動作を許容する。
回転禁止機構40は、図1、図2(A)、図5等に示すように、上部スライド機構20の右側のロアレール21に沿って回転体15上に設けられた固定レール42を有している。固定レール42は、ロアレール21とほぼ同じ高さで壁状に立設されており、その前後長さ寸法は回転体15に対する座席本体Hの前後スライドストロークとほぼ等しく設定されている。さらに、固定レール42の中央上部には、角形の切欠き42cが形成されている。
【0033】
座席本体Hのシート支持板Hbの下側には、図1、図2(A)、図5等に示すように、固定レール42に沿って摺動する変位部材44が装着されている。変位部材44は、中央部が連結軸44pによって水平回転可能な状態でシート支持板Hbの下側に取付けられている(図4参照)。変位部材44は、座席本体Hの前後方向に沿って配置されており、前端部に摺動凸部44tが形成されている。ここで、摺動凸部44tの寸法は、固定レール42の切欠き42cに嵌め込み可能な値に設定されている。また、変位部材44の前部には、摺動保持バネ44bの一端が接続されており、その摺動保持バネ44bの他端がシート支持板Hbに接続されている。
【0034】
摺動保持バネ44bは、変位部材44を図1、図2(A)において、左回動させるように付勢されており、変位部材44が左限位置まで回動した状態で、その変位部材44の摺動凸部44tは固定レール42に沿って摺動可能になる。変位部材44の後端部には受け部44uが折り曲げ形成されており、この受け部44uに回転ロック機構30における操作ハンドル39の伝達ワイヤー48の一端が接続されている。
【0035】
伝達ワイヤー48は、図5に示すように、ワイヤー本体48mと、そのワイヤー本体48mの中央部分を収納するチューブ48tとを備えており、ワイヤー本体48mの両端がそれぞれ操作ハンドル39の受け部39uと変位部材44の受け部44uとに接続されている。また、伝達ワイヤー48のチューブ48tの両端がそれぞれシート支持板Hbの後部止め部Hxとシート支持板Hbの前部止め部Htとに固定されている。
【0036】
上記した構成により、操作ハンドル39を第1戻りバネ39yのバネ力に抗して、図1、図2(A)において左回動させようとすると、変位部材44には伝達ワイヤー48によってその変位部材44を摺動保持バネ44bのバネ力に抗して右回動させようとする力が加わる。しかし、変位部材44の摺動凸部44tが固定レール42に当接している状態では、変位部材44の右回動は禁止される。このため、変位部材44と伝達ワイヤー48を介して連結された操作ハンドル39の回動も禁止される。
【0037】
しかし、変位部材44の摺動凸部44tと固定レール42の切欠き42cとが重なった状態では、固定レール42が変位部材44の右回動を妨げることはない。このため、操作ハンドル39が第1戻りバネ39yのバネ力に抗して左回動させられると、変位部材44は伝達ワイヤー48の引っ張り力を受けて摺動保持バネ44bのバネ力に抗して右回動し、摺動凸部44tが固定レール42の切欠き42cに嵌め込まれる。即ち、操作ハンドル39は、変位部材44、固定レール42等に妨げられることなく、左限位置まで回動可能になる。
【0038】
変位部材44は、座席本体Hが上部スライド機構20によりスライド可能な範囲の中央位置、即ち、回転体15の中央位置までスライドしたときに、その変位部材44の摺動凸部44tが固定レール42の切欠き42cと重なるように位置決めされている。したがって、回転禁止機構40は、座席本体Hが回転体15に対してその回転体15の中央位置までスライドしたときに、回転ロック機構30のロック状態を解除可能にする。
即ち、固定レール42等が本発明の規制部に相当する。
【0039】
次に、車両用シート装置1のスライド禁止機構50について説明する。
スライド禁止機構50は、座席本体Hが通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるときに、回転体15に対する座席本体Hのスライドを禁止するとともに、通常時使用位置と乗降時使用位置とで回転体15に対する座席本体Hのスライド範囲を分ける働きをする。
スライド禁止機構50は、座席本体Hのシート支持板Hbに対して固定的に設けられたロックピン52と、支持ベース12に対して固定的に設けられ、そのロックピン52をガイドするガイド部材54とから構成されている。
【0040】
ガイド部材54は、図3、図4等に示すように、回転機構14の内輪14eの内側に設置されている。ガイド部材54は、図3、図6等に示すように、平面視で回転機構14の回転中心(座席本体Hの回転中心)と曲率中心が一致する円弧形で、互いの曲率半径方向で所定の間隔を空けて配置された第1ガイド壁55と第2ガイド壁56とを有している。
第1ガイド壁55と第2ガイド壁56とは、回転機構14の回転中心Cの後方位置から前記回転中心Cの右方位置までの範囲で形成されており、第1ガイド壁55の曲率半径が第2ガイド壁56の曲率半径よりも小さく設定されている。
【0041】
回転中心Cの後方位置では、第1ガイド壁55の端部が、第2ガイド壁56の端部よりも座席本体の回転方向に一定寸法だけ延出しており、その延出する端部(以後、第1延出部55eという)が後記するロックピン52のストッパとなる。また、回転中心Cの右方位置では、第2ガイド壁56の端部が、第1ガイド壁55の端部よりも座席本体の回転方向に一定寸法だけ延出しており、その延出する端部(以後、第2延出部56eという)がロックピン52のストッパとなる。さらに、第1延出部55eから第2延出部56eまでの回転角が、座席本体の回転可能範囲に合わせて約60°に設定されている。
第1ガイド壁55と第2ガイド壁56とは、図4等に示すように、回転体15の開口部15hから一定寸法だけ突出する高さ寸法を備えている。
【0042】
ロックピン52は、図4に示すように、座席本体Hのシート支持板Hbの下面に縦に固定されており、そのロックピン52の下端(先端)の高さ位置が第1ガイド壁55及び第2ガイド壁56の上端の高さ位置よりも低くなるように設定されている。また、ロックピン52の径寸法は、第1ガイド壁55と第2ガイド壁56と間の空間を移動できるように、第1ガイド壁55と第2ガイド壁56と間の隙間よりも若干小さい値に設定されている。
【0043】
ロックピン52は、通常時使用位置において座席本体Hが回転体15の中央位置まで前進スライドしたときに、その先端部が第1ガイド壁55の第1延出部55eに当接できる位置に位置決めされている。このため、通常時使用位置では、図6等に示すように、座席本体Hは回転体15の後端位置から中央位置までの範囲でスライドが可能となる。
さらに、座席本体Hが回転体15の中央位置にある状態で通常時使用位置から乗降時使用位置の方向に回転すると、座席本体Hのロックピン52は第1ガイド壁55と第2ガイド壁56と間を移動する。このため、座席本体Hの回転が妨げられることはないが、ロックピン52は第1ガイド壁55、第2ガイド壁56の曲率半径方向の移動が規制されるため、回転中における座席本体Hの前後スライドは禁止される。
【0044】
乗降時使用位置では、座席本体Hのロックピン52は第2ガイド壁56の第2延出部56eによって曲率半径方向の移動が規制され、第1ガイド壁55によっては曲率半径方向の移動は規制されない。このため、座席本体Hは回転体15の中央位置から前端位置までの範囲でスライドが可能になる。
即ち、回転体15の中央位置が本発明の基準位置に相当し、ロックピン52が本発明の被ガイド部材に相当する。
【0045】
次に、上記した車両用シート装置1の動作説明を行う。
車両走行時には、車両用シート装置1の座席本体Hは、図7(A)に示すように、車両前方を向く通常時使用位置に位置決めされている。
通常時使用位置では、座席本体Hの着座者がレバー23(図2(A)参照)でスライドロック機構のロック状態を解除することにより、上部スライド機構20を利用して、座席本体Hを希望位置まで前後スライドさせることができる。座席本体Hのスライド可能範囲は、上部スライド機構20の後端位置(回転体15の後端位置)から座席本体Hのロックピン52が第1ガイド壁55の第1延出部55eに当接する位置(図6参照)、即ち、回転体15の中央位置までである。
【0046】
通常時使用位置において、座席本体Hが上部スライド機構20の働きで前後スライドしているときは、図6に示すように、その座席本体Hに取付けられている回転禁止機構40の変位部材44も回転体15側の固定レール42に沿って摺動している。このため、変位部材44の摺動凸部44tは固定レール42の側面に当接しており、変位部材44は図6において右回動不能に保持されている。したがって、変位部材44と伝達ワイヤー48によって連結されている回転ロック機構30の操作ハンドル39も回動操作不能に保持される。したがって、座席本体Hが前後スライドしているときに誤って操作ハンドル39に手を触れても、回転ロック機構30のロック状態が解除される不具合がない。
【0047】
座席本体Hを車両前方向きの通常時使用位置から乗降口向きの乗降時使用位置まで回転させるのは、次の手順で行う。
先ず、上部スライド機構20を利用して座席本体Hを回転体15の中央位置(通常時使用位置における前端位置)まで前進スライドさせる。これによって、座席本体Hに取付けられた変位部材44の摺動凸部44tが固定レール42の切欠き42cと重なる位置に保持される。この状態で、変位部材44は図6において右回動可能となる。
また、座席本体Hが回転体15の中央位置まで前進スライドすると、図6に示すように、座席本体Hに固定されたロックピン52が支持べース12に固定された第1ガイド壁55の第1延出部55eにほぼ当接する位置まで前進する。
【0048】
この状態で、図5等に示すように、回転ロック機構30の操作ハンドル39を第1戻りバネ39yのバネ力に抗して左回動させると、操作ハンドル39の動作が伝達ワイヤー48により変位部材44に伝えられる。これによって、変位部材44は摺動保持バネ44bのバネ力に抗して図中右回動し、変位部材44の摺動凸部44tが固定レール42の切欠き42cに嵌め合わされる。
【0049】
また、操作ハンドル39の動作が解除ワイヤー38により回転ロック機構30の係合部材32に伝えられる。これによって、係合部材32は、係合保持バネ32yのバネ力に抗して図中右回動し、係合部材32の係合ピン32kが第1被係合部材34のピン用切欠き34cから外される。即ち、回転ロック機構30のロック状態が解除される。
なお、座席本体Hが回転体15の中央位置まで前進スライドしても、操作ハンドル39が動作可能になるだけであり、操作ハンドル39を動かさない限り、回転ロック機構30はロック解除状態にならない。このため、着座者の意に反してロック状態が解除される不具合がない。
【0050】
次に、座席本体Hを前方に押圧することにより、スライド&回転機構10の支持ベース12を下部スライド機構11の働きで前進スライドさせる。支持ベース12が前進スライドすることにより、回転機構14の外輪14f及び回転体15が、その外輪14fのギヤ14wとラック16の噛合作用により左回転し、回転体15と共に座席本体Hが左回転する。ここで、座席本体Hが回転中は操作ハンドル39から手を離しても、回転ロック機構30のロック状態が解除されたままに保持される。なお、このとき、変位部材44は摺動保持バネ44bのバネ力で摺動位置まで戻され、係合部材32は係合保持バネ32yのバネ力により係合位置(左限回動位置)まで戻される。
【0051】
また、座席本体Hの回転中、その座席本体Hのロックピン52は第1ガイド壁55と第2ガイド壁との間を移動する。このため、座席本体Hの回転が妨げられることはないが、ロックピン52は第1ガイド壁55、第2ガイド壁56の曲率半径方向の移動が規制されるため、回転中における座席本体Hの前後スライドは禁止される。このため、座席本体Hの回転中における安全が確保される。
【0052】
座席本体Hが乗降時使用位置に近づくと、係合部材32の係合ピン32kが座席本体Hの回転に伴って第2被係合部材36(図3(A)参照)のガイド部36xの傾斜面36kに沿って摺動する。そして、座席本体Hが乗降時使用位置まで回動した段階で(図7(B)参照)、係合部材32の係合ピン32kが係合保持バネ32yのバネ力により、第2被係合部材36のピン用切欠き36cと自動的に係合する。即ち、回転ロック機構30がロック状態に保持される。この状態で、スライド&回転機構10の支持ベース12は前進限位置に保持されているとともに、その支持ベース12に対する回転体15の回転が禁止され、その回転体15及び座席本体が乗降時使用位置に保持される。また、座席本体Hのロックピン52は、図6に示すように、第2ガイド壁56の第2延出部56eの位置に配置される。
【0053】
即ち、乗降時使用位置では、座席本体Hのロックピン52は第2ガイド壁56の第2延出部56eによって曲率半径方向の移動が規制され、第1ガイド壁55によっては曲率半径方向の移動は規制されない。このため、座席本体Hは、図7(C)に示すように、回転体15の中央位置から前端位置までの範囲でスライドが可能になる。
なお、座席本体Hを乗降時使用位置から通常時使用位置まで回転させる場合には、上記と逆の手順で行う。
【0054】
このように、上記した車両用シート装置1によると、回転禁止機構40の働きで、座席本体Hが回転体15上の中央位置(基準位置)にあるときのみ、その回転体15が回転可能となり、座席本体Hは通常使用位置と乗降使用位置との間を回転できるようになる。このため、基準位置を回転最適位置に設定することで、座席本体Hの回転時に着座者あるいは座席本体が車室内のユニットや車体と干渉することが無くなる。
また、座席本体Hの回転中は、スライド禁止機構50の働きで回転体15に対する座席本体Hのスライドが禁止されるため、座席本体Hを安全に回転させることができる。
【0055】
また、前記基準位置は、上部スライド機構20により座席本体Hが回転体15に対してスライド可能な範囲の中間位置に設定されており、通常時使用位置において座席本体は回転体15に対し、上部スライド機構20によりスライド可能な範囲の後端位置と前記基準位置との間でのみスライド可能に構成されており、乗降時使用位置において座席本体Hは回転体15に対し、基準位置と上部スライド機構20によりスライド可能な範囲の前端位置との間でのみスライド可能に構成されている。このため、上部スライド機構20のストロークを有効に利用できるとともに、通常時使用位置及び乗降時使用位置において、それぞれに応じた適正な範囲でのみスライドさせることができる。
【0056】
(実施形態2)
以下、図8から図10に基づいて本発明の実施形態2に係る車両用シート装置の説明を行う。本実施形態に係る車両用シート装置は、実施形態1における車両用シート装置1の回転禁止機構40とスライド禁止機構50とを改造したものであり、その他の構造については実施形態1の車両用シート装置1と同様である。このため、実施形態1の車両用シート装置1と同じ機構については同じ番号を付記することで説明を省略する。
【0057】
車両用シート装置60の回転禁止機構62およびスライド禁止機構68は、回転体15の所定位置に設けられた略円柱形の規制部材63を備えている。規制部材63は、図9に示すように、回転体15の縦型軸受け部15zに通されており、軸方向(上下方向)に変位可能に構成されている。縦型軸受け部15zの内部には、規制部材63を押上げる方向に付勢されたコイルバネ15yが設けられており、そのコイルバネ15yのバネ力で規制部材63は所定高さ位置まで押上られている。また、規制部材63の上端部は略半球状に形成されており、下端部は円錐台状に面取りされた状態で形成されている。
【0058】
座席本体Hの下面には、図8に示すように、上部スライド機構20に沿ってレール状の固定プレート64が取付けられている。固定プレート64は規制部材63の真上位置に位置決めされており、座席本体Hが回転体15に対して前後スライドする際に、固定プレート64の下面と規制部材63の上端面とが相対摺動するように構成されている。また、固定プレート64の中央下側には台形状の切欠き64hが形成されている。固定プレート64は、座席本体Hが上部スライド機構20によりスライド可能な範囲の中央位置、即ち、回転体15の中央位置までスライドしたときに、台形状の切欠き64hと規制部材63とが重なるように位置決めされている。このため、座席本体Hが回転体15の中央位置までスライドしたときに、規制部材63はコイルバネ15yのバネ力で上方に変位し、その規制部材63の上端部が固定プレート64の切欠き64hと嵌合するようになる。
【0059】
スライド&回転機構10の支持ベース12には、座席本体H及び回転体15が通常時使用位置にあるとき、規制部材63と平面視において同位置に第1貫通孔63aが形成されている。第1貫通孔63aは、規制部材63の下端部を挿入可能な内径を有しており、規制部材63が第1貫通孔63aに挿入された状態で支持ベース12に対する回転体15の回転が禁止される。また、支持ベース12には、座席本体H及び回転体15が乗降時使用位置にあるとき、規制部材63と平面視において同位置に第2貫通孔63bが形成されている。第2貫通孔63bは、規制部材63の下端部を挿入可能な内径を有しており、規制部材63が第2貫通孔63bに挿入された状態で支持ベース12に対する回転体15の回転が禁止される。
即ち、第1貫通孔63a及び第2貫通孔63bが本発明の支持ベースに設けられた係合部に相当する。
【0060】
ここで、規制部材63の長さ寸法及び固定プレート64の切欠き64hの深さ寸法は、図9に示すように、規制部材63の上端部が固定プレート64の切欠き64hと嵌合した状態で、その規制部材63の下端面63dが支持ベース12の上面12mとほぼ等しい高さになるように設定されている。このため、規制部材63の上端部が固定プレート64の切欠き64hと嵌合した状態で、規制部材63と第1貫通孔63aあるいは第2貫通孔63bとの係合は解除される。
【0061】
上記した構成により、例えば、座席本体Hが回転体15の中央位置までスライドし、固定プレート64の切欠き64hが規制部材63の位置まで到達すると、規制部材63はコイルバネ15yのバネ力で上方に変位し、その規制部材63の下端部は第1貫通孔63aから抜ける。この状態で、回転ロック機構30の操作ハンドル39を操作すれば、ロック状態を解除することができる。
【0062】
しかし、回転ロック機構30のロック状態を解除しなければ、座席本体Hを回転体15の中央位置から前後スライドさせることは可能である。即ち、規制部材63が第1貫通孔63aの真上位置にあるため、規制部材63は下方に変位が可能であり、回転体15に対する座席本体Hのスライドを妨げることはない。回転体15の中央位置から座席本体Hが前方あるいは後方にスライドすると、規制部材63の上端部は固定プレート64の台形状の切欠き64hからコイルバネ15yのバネ力に抗して押出され、規制部材63は下方に変位する。これによって、規制部材63の下端部が第1貫通孔63aに挿入され、支持ベース12に対する回転体15の回転が禁止される。
即ち、コイルバネ15yが本発明の作動手段に相当する。
【0063】
座席本体Hが回転体15の中央位置にある状態で、回転ロック機構30のロック状態を解除し、座席本体H及び回転体15を回転させると、図9の細線に示すように、規制部材63は支持ベース12上を移動する。前述のように、規制部材63の下端面63dの高さ位置は、支持ベース12の上面12mの高さ位置とほぼ等しいため、回転中、規制部材63は下方に変位することはできない。このため、座席本体Hを回転体に対して前後スライドさせようとしても、規制部材63の上端部と固定プレート64の切欠き64hとが嵌合状態に保持されるため、座席本体Hの前後スライドは禁止される。
【0064】
即ち、固定プレート64、規制部材63、第1貫通孔63a及び第2貫通孔63b等が本発明の回転禁止機構62として機能し、固定プレート64の切欠き64h、規制部材63及び支持ベース12の上面12mが本発明のスライド禁止機構68として機能する。さらに、固定プレート64の切欠き64hが本発明の座席本体に設けられた係合部に相当し、支持ベース12の上面12mが本発明の規制手段に相当する。
【0065】
座席本体Hが乗降時使用位置まで到達すると、規制部材63と第2貫通孔63bとが平面視において同位置に保持される。このため、規制部材63は下方に変位可能となり、座席本体Hを回転体15に対して前後にスライドできるようになる。なお、座席本体Hの前後スライド中は規制部材63の下端部は第2貫通孔63bに挿入されるため、支持ベース12に対する回転体15の回転が禁止される。
このように、本実施形態に係る車両用シート装置60によると、実施形態1に係る車両用シート装置1よりも回転禁止機構及びスライド禁止機構の構造を簡略化できるため、設備コストの低減を図ることができる。
【0066】
図10は、車両用シート装置60の変更例を表している。
この車両用シート装置60では、補助ピン71の動作をリンク機構72により規制部材63に伝達し、その規制部材63を上下動作させるようにしたものである。
補助ピン71は、回転体15の縦型軸受け部15xに通されており、軸方向(上下方向)に変位可能に構成されている。縦型軸受け部15xの内部には、補助ピン71を押上げる方向に付勢されたコイルバネ15yが設けられており、そのコイルバネ15yのバネ力で補助ピン71は所定高さ位置まで押上られている。
【0067】
座席本体Hの下面には、上部スライド機構20に沿ってレール状の固定プレート64が取付けられている。固定プレート64は補助ピン71の真上位置に位置決めされており、座席本体Hが回転体15に対して前後スライドする際に、固定プレート64の下面と補助ピン71の上端面とが相対摺動するように構成されている。また、固定プレート64の中央下側には台形状の突起64tが形成されており、座席本体Hが回転体15の中央位置までスライドしたときに固定プレート64の突起64tの位置と補助ピン71の位置とが重なるように設定されている。このため、座席本体Hが回転体15の中央位置までスライドしたときに、補助ピン71はコイルバネ15yのバネ力に抗して下方に変位し、リンク機構72の一端部72eを押し下げる。
【0068】
リンク機構72の他端72fには、前述の規制部材63が連結されている。このため、規制部材63はリンク機構72の働きにより、補助ピン71と逆方向に動作する。即ち、座席本体Hが回転体15の中央位置までスライドして、補助ピン71が固定プレート64の突起64tに押されて下方に変位したとき、規制部材63は上方に変位する。逆に、座席本体Hが回転体15の中央位置から外れて、補助ピン71が固定プレート64の突起64t以外の部位に当接しているとき、規制部材63は上方に変位する。
【0069】
規制部材63が上方に変位すると、その規制部材63の下端部が第1貫通孔63aあるいは第2貫通孔63bから抜かれ、その規制部材63の上端部が座席本体Hのシート支持板Hbに形成された貫通孔Hkに挿入される。これによって、支持ベース12に対する回転体15の回転が許容されるとともに、回転体15に対する座席本体Hの前後スライドが禁止される。
【0070】
規制部材63が下方に変位すると、その規制部材63の下端部が第1貫通孔63aあるいは第2貫通孔63bに挿入され、その規制部材63の上端部が座席本体Hのシート支持板Hbの貫通孔Hkから抜かれる。これによって、支持ベース12に対する回転体15の回転が禁止されるとともに、回転体15に対する座席本体Hの前後スライドが許容される。
このように、リンク機構72を使用することにより、規制部材63や固定プレート64等の配置の自由度が高くなる。
【0071】
【発明の効果】
本発明によると、基準位置を回転最適位置に設定することで、座席本体の回転時に着座者あるいは座席本体が車室内のユニットや車体と干渉することが無くなる。また、回転体の回転中は、スライド禁止機構の働きで回転体に対する座席本体のスライドが禁止されるため、座席本体を安全に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の分解斜視図である。
【図2】車両用シート装置の回転体及び上部スライド機構等の要部斜視図(A図)及びA図のB矢視拡大図(B図)である。
【図3】回転ロック機構及びスライド禁止機構を表す平面図(A図)及びA図のB−B矢視図(B図)である。
【図4】車両用シート装置の縦断面図(図1のIV− IV矢視断面図)である。
【図5】回転禁止機構と回転ロック機構との関係を表す模式図である。
【図6】回転禁止機構とスライド禁止機構との関係を表す平面図である。
【図7】車両用シート装置の動作を表す平面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る車両用シート装置の分解斜視図である。
【図9】回転禁止機構及びスライド禁止機構を表す縦断面図である。
【図10】車両用シート装置の変更例を表す要部縦断面図(A図)及びA図のB−B矢視断面図(B図)である。
【図11】従来の車両用シート装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
H   座席本体
10  スライド&回転機構
12  支持ベース
15  回転体
20  上部スライド機構(スライド機構)
30  回転ロック機構
32  係合部材
34  第1被係合部材
36  第2被係合部材
38  解除ワイヤー(伝達部材)
39  操作ハンドル
40  回転禁止機構
42  固定レール(規制部)
44  変位部材
50  スライド禁止機構
52  ロックピン(被ガイド部材)
54  ガイド部材
55  第1ガイド壁
55e 第1延出部
56  第2ガイド壁
56e 第2延出部
63  規制部材(回転禁止機構、スライド禁止機構)
12m 支持ベースの上面(スライド禁止機構、規制手段)
63a 第1貫通孔(係合部)
63b 第2貫通孔(係合部)
15y コイルバネ(作動手段)
64  固定プレート(回転禁止機構、スライド禁止機構)
64h 切欠き(回転禁止機構、スライド禁止機構、座席本体の係合部)

Claims (8)

  1. 車室内の支持ベース上に設けられた回転機構と、この回転機構により支持ベースに対してほぼ平行に回転可能に支持された回転体と、前記回転体上で座席本体をその座席本体の前後方向にスライド可能に支持するスライド機構とを備え、前記回転機構により前記座席本体を車両前方を向く通常時使用位置から乗降口の方を向く乗降時使用位置まで回転可能で、かつ通常時使用位置及び乗降時使用位置で前記スライド機構により前記座席本体をスライド可能な構成の車両用シート装置であって、
    前記座席本体が前記スライド機構により回転体に対してスライド可能な範囲内の予め設定された基準位置以外の位置にあるとき、支持ベースに対する座席本体の回転を禁止する回転禁止機構と、
    前記座席本体が前記通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるとき、前記回転体に対する座席本体のスライドを禁止するスライド禁止機構と、
    を有することを特徴とする車両用シート装置。
  2. 請求項1に記載の車両用シート装置であって、
    前記基準位置は、前記スライド機構により座席本体が回転体に対してスライド可能な範囲の中間位置に設定されており、通常時使用位置において座席本体は回転体に対し、前記スライド機構によりスライド可能な範囲の後端位置と前記基準位置との間でのみスライド可能に構成されており、乗降時使用位置において前記座席本体は前記回転体に対し、前記基準位置と前記スライド機構によりスライド可能な範囲の前端位置との間でのみスライド可能に構成されていることを特徴とする車両用シート装置。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
    スライド禁止機構は、
    座席本体に対して固定的に設けられた被ガイド部材と、支持ベースに対して固定的に設けられたガイド部材とを有しており、
    前記ガイド部材は、平面視で座席本体の回転中心と曲率中心が一致する円弧形で、互いに曲率半径方向で所定の間隔を空けて配置された第1ガイド壁と第2ガイド壁とを有しており、
    座席本体が前記通常時使用位置及び乗降時使用位置以外の位置にあるとき、被ガイド部材は第1ガイド壁と第2ガイド壁との間に位置し、被ガイド部材が両ガイド壁の曲率半径方向へ移動するのが規制されていることを特徴とする車両用シート装置。
  4. 請求項3に記載の車両用シート装置であって、
    第1ガイド壁は第2ガイド壁よりも内側に位置し、第1ガイド壁の一端には、第2ガイド壁の一端よりも座席本体の回転方向に延出する延出部が形成され、第2ガイド壁の他端には第1ガイド壁の他端よりも座席本体の回転方向に延出する延出部が形成されており、
    座席本体が通常時使用位置にある状態で、前記座席本体を前記後端位置側から基準位置までスライドさせると、その座席本体の被ガイド部材が第1ガイド壁の延出部に当接して座席本体のスライドが止められ、
    前記座席本体が乗降時使用位置にある状態で、前記座席本体を前記前端位置側から基準位置までスライドさせると、その座席本体の被ガイド部材が第2ガイド壁の延出部に当接して座席本体のスライドが止められる構成であることを特徴とする車両用シート装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
    支持ベースに対し、座席本体を前記通常時使用位置と乗降時使用位置とで回転不能にロック可能であるとともに、回転可能なようにこのロックを解除可能な回転ロック機構を備えていることを特徴とする車両用シート装置。
  6. 請求項5に記載の車両用シート装置であって、
    回転ロック機構は、
    座席本体に装着されている操作ハンドルと、
    回転体に連結されており、操作ハンドルの動きを受けて一定の軌跡で移動する係合部材と、
    操作ハンドルの動きを前記係合部材に伝える伝達部材と、
    支持ベースあるいは車室の床側に設けられており、前記座席本体が通常時使用位置にあるときに、前記係合部材が係合する位置に位置決めされている第1被係合部材と、前記座席本体が乗降時使用位置にあるときに前記係合部材が係合する位置に位置決めされている第2被係合部材とを有しており、
    前記操作ハンドルの操作により、その係合部材と第1被係合部材あるいは第2被係合部材との係合を解除できるように構成されていることを特徴とする車両用シート装置。
  7. 請求項6に記載の車両用シート装置であって、
    回転禁止機構は、
    座席本体または回転体の一方に設けられ、回転ロック機構の操作ハンドルの動作に伴い変位する変位部材と、
    座席本体または回転体の他方に設けられ、回転体に対する座席本体のスライドに伴い前記変位部材に対して移動し、座席本体が前記基準位置に移動したときは、前記変位部材の変位を許容して前記操作ハンドルを操作可能とし、座席本体が前記基準位置以外の位置に移動したときは、前記変位部材に係合することにより、その変位を規制して前記操作ハンドルの操作を規制する規制部と、
    を備えていることを特徴とする車両用シート装置。
  8. 請求項1に記載の車両用シート装置であって、
    回転禁止機構及びスライド禁止機構は、
    回転体に設けられ、スライド禁止位置と回転禁止位置とに移動可能に設けられた規制部材と、
    座席本体が前記基準位置に移動したときに前記規制部材をスライド禁止位置に移動させ、座席本体が前記基準位置以外に移動したとき前記規制部材を回転禁止位置に移動させる作動手段と、
    座席本体に設けられ、前記規制部材がスライド禁止位置に移動したとき規制部材に係合するとともに、規制部材が回転禁止位置に移動したときはこの係合を解除し、係合状態では座席本体のスライドを禁止する係合部と、
    座席本体が通常時使用位置および乗降時使用位置に回転したとき、規制部材の回転禁止位置側への移動を許容するとともに、座席本体が回転途中のときは前記規制部材が回転禁止位置に移動するのを規制する規制手段と、
    支持ベースに設けられ、前記規制部材が回転禁止位置に移動したときは規制部材に係合するとともに、規制部材がスライド禁止位置に移動したときはこの係合を解除し、係合状態では座席本体の回転を禁止する係合部とを備える車両用シート装置。
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