JP2004034058A - 端面異形フランジ部材の成形方法およびその成形型 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の成形方法は、フランジ部となる部分の径方向の大きさが成形しようとするフランジ部よりも小さく成形された第2粗形材W2の、フランジ部となる部分fの側面f2、f3を加圧することなく拘束した状態で、ボス部となる部分gの端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部となる部分fの外方に送り出し移動させて、その外周端面f1を所定形状を有する型23の内周面23bに当接させることにより、フランジ部Fの外周縁を成形する。
【選択図】 図9
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端面異形フランジ部材の成形方法およびその成形型に関し、さらに詳しくは、軸方向に突出するボス部を有しており、外周縁の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材を成形する方法およびその成形型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
端面異形フランジ部を有するフランジ部材として、例えば、遊星歯車を保持するためのキャリヤを構成するものがある。フランジ部材は、カップ状部材の脚部と接合するために、図3の(e)に示すように、大径部と小径部が交互に配置されてその外周縁の形状が周方向の部分によって異なるように成形されている。
【0003】
このようなフランジ部材を成形するために、一般に、板材をパンチとダイスにより打ち抜き成形することが行われている。そして、一工程で精密打ち抜き加工を行うために、ファインブランキングプレスが従来から行われている。
また、板材を切削加工することによりフランジ部材を成形することも従来から一般に行われている。さらに、フランジ部の端面を精度良く成形するために、板材を打ち抜き成形した後に切削加工することも従来から行われている。
【0004】
また、別の従来の技術では、フランジを有する部品の成形方法として、特開平2−255238号公報が知られている。当該公報では、素材を加熱してから、フランジ部分を据込み成形し、パンチによってボス部を成形する際にボス部の素材の一部をフランジ部分に流動させてフランジ部分に発生した欠肉部分を充満することが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術のうち、板材をパンチとダイスにより打ち抜き成形する場合にあっては、フランジ部の外周縁の形状を精度良く成形することができないという問題があった。そして、上述したようにファインブランキングプレスを行う場合であっても、フランジ部の端面の直角度を確保することが困難であるという問題があった。さらに、板材を打ち抜き成形した後に切削加工する場合には、工程数が増加してフランジ部材の成形コストを低減させることができないという問題があった。
【0006】
また、上記従来の技術のうち、特開平2−255238号公報に開示された成形方法にあっては、成形される素材(粗形材)が、軸部の一端側部にこれより径の大きな球状部を、そして他端側には軸部より十分に小径な小径部を、予備形成されたものであった。そして、フランジを有する部品を一工程で成形するために、予備成形された素材を加熱した後に、軸部を加圧して部品のフランジ部分を据込み成形し、その後パンチにより素材の球状部を加圧することによってボス部を成形すると共に、素材の一部を流動させてフランジ成形時に発生した欠肉部分を充満させる、すなわち、素材の塑性流動によりフランジを成形する密閉鍛造であった。このような鍛造では、軸部からフランジを成形する型および球状部にボス部を成形すると共に塑性流動を引き起こしてフランジの欠肉部を充満させるパンチに大きな加圧力を必要とし、またこれに伴って型寿命が短くなるという問題があった。さらに当該公報に開示されたものにあっては、素材を加熱する必要があった。そして、これらのことから当該公報においては、設備コストを低減させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、軸方向に突出するボス部を有しており、外周縁の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材を、安価で容易に精度良く成形することができる成形方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、軸方向に突出するボス部を有しており、端面の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材を、簡単な構成で容易且つ安価に精度良くで成形することができる成形型を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の端面異形フランジの成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、軸方向に突出するボス部を有しており、外周縁の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材の成形方法であって、粗形材のフランジ部となる部分の側面を拘束した状態で、ボス部となる部分の端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部の外方に送り出し移動させて、所定形状を有する型にその外周端面を当接させることにより、フランジ部の外周縁を成形することを特徴とするものである。
請求項2の端面異形フランジの成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明において、粗形材の板厚に対する外周端面の送り出し移動量の比が3〜7%となるように粗形材を成形することを特徴とするものである。
請求項3の端面異形フランジの成形方法に係る発明は、上記目的を達成するため、請求項1または2に記載の発明において、フランジ部の外周縁が成形された粗形材の、ボス部となる部分の端部をさらに軸方向に押圧することにより、ボス部を肉厚に成形することを特徴とするものである。
また、請求項4の端面異形フランジの成形型に係る発明は、上記目的を達成するため、軸方向に突出するボス部を有しており、外周縁の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材の成形型であって、キャビティの粗形材のフランジ部となる部分の外周端面と対向する部分が所定形状に成形されると共に、粗形材のフランジ部となる部分の側面と接する部分がそのフランジ部となる部分を拘束し得る厚さを有しており、また、キャビティのボス部を成形する部分が粗形材のボス部となる部分を軸方向に押圧するようになっており、粗形材のフランジ部となる部分の側面を拘束した状態でボス部となる部分の端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部の外方に送り移動させて、フランジ部となる部分の外周端面を所定形状のキャビティに当接させてフランジ部の外周縁を成形するように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明では、フランジ部材を成形するにあたり、最初に所定形状を有する型に粗形材のフランジ部となる部分の外周端面が対向するように、粗形材をその型内に配置し、粗形材のフランジ部となる部分の側面を加圧することなく拘束する。この状態で、ボス部となる部分の端部を軸方向に押圧することにより、材料をフランジ部の径方向外方に送り出し移動させる。粗形材のフランジ部となる部分は、その材料が径方向外方に送り出し移動されるときに周方向に引っ張り応力を受ける状態で軸方向内側からの圧縮応力を受けることから、低応力で変形が進行するため、ボス部となる部分の端部に対して比較的小さい力で軸方向に押圧することにより、粗形材のフランジ部となる部分の材料が容易に径方向外方に送り出し移動される。そして、フランジ部となる部分の外周端面を所定形状の型に当接させることにより、フランジ部の外周縁が高精度で成形される。
請求項2の発明では、請求項1に記載の発明において、粗形材のフランジ部となる部分の板厚に対する外周端面の送り出し移動量の比を3〜7%となるように粗形材を成形することにより、フランジ部の外周縁が適切に精度良く成形され、また、成形型と粗形材の相対すべり量が小さくなるために、型にかかる負荷が小さくなり型寿命が向上する。
請求項3の発明では、請求項1または2に記載の発明において、粗形材のフランジ部となる部分の側面を拘束した状態で、ボス部となる部分の端部を軸方向に押圧し、材料をフランジ部の外方に送り出し移動させて、フランジ部となる部分の外周端面を所定形状の型に当接させ、フランジ部の端部を所定の形状に成形する。このとき、フランジ部の外周端面が型に当接することにより、粗形材の材料の外方への送り出し移動が規制される。そのため、ボス部となる部分の端部をさらに軸方向に押圧することにより、フランジ部の外周縁の成形に続いてボス部が肉厚に一工程で成形されて、剛性が向上したフランジ部材が容易に成形される。また、請求項4の発明では、フランジ部材を成形するにあたり、最初に粗形材を型内に配置し、型を互いに近接させてキャビティを形成する。キャビティの粗形材のフランジ部となる部分の外周端面と対向する部分が所定形状に成形されており、また、粗形材のフランジ部となる部分の側面と接する部分がその部分を加圧することなく拘束することができる厚さに成形されている。そして、さらに型を互いに近接させると、キャビティのボス部を成形する部分が粗形材のボス部となる部分を軸方向に押圧し、これにより、粗形材のフランジ部となる部分の材料が径方向外方に送り出し移動される。このとき、粗形材の材料は、周方向に引っ張り応力を受ける状態で軸方向内側からの圧縮応力を受けることから、キャビティのボス部を成形する部分が粗形材のボス部となる部分を比較的小さな力で軸方向に押圧するだけで、低応力で変形が進行する。そして、粗形材のフランジ部となる部分は、その側面が拘束された状態で材料が径方向外方に送り出し移動されることにより外周端面が型に当接されて、フランジ部の外周縁が所定形状に高精度で成形される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を、遊星歯車を保持するためのキャリヤを構成するフランジ部材を成形する場合により、図1〜図11に基づいて詳細に説明する。図1は成形型の主要部を示す断面図であり、図2および図3の(a)〜(e)は素材からフランジ部材を成形するまでの各加工工程毎の粗形材等の形状を平面図と断面図でそれぞれ示したものである。また、図4〜図7は、本発明により図2の(c)に示した第2粗形材から図3の(d)に示した第3粗形材を成形する工程における各段階を順に示した拡大断面図であり、図8〜図11は、図4〜図7と対応してそれぞれさらに拡大して順に示した断面図である。なお、同一符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
【0011】
最初に、図1〜図11に基づいて、本発明の端面異形フランジ部材の成形型の実施の一形態を説明する。
ここで成形される端面異形フランジ部材とは、フランジ部Fの外周縁の形状が周方向の部分によって異なるもので、中央の穴Jの周囲が軸方向に突出するボス部Gを有している。この実施の形態では、フランジ部Fの外周縁が大径の部分Faと小径の部分Fbとを周方向に交互に位置するよう成形される。
本発明の端面異形フランジ部材の成形型は、概略、相対的に近接・遠退可能に設けられた上型1と下型2とを衝合することにより形成されるキャビティの、その粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周端面f1と対向する部分23bが、成形しようとするフランジ部Fの外周端面F1に応じて所定形状に成形され、粗形材W2のフランジ部となる部分fの側面f2、f3と接する部分13b、22bが、そのフランジ部となる部分fを加圧することなく拘束し得る厚さを有しており、また、ボス部Gを成形する部分12bが粗形材W2のボス部となる部分gを軸方向に押圧するようになっており、粗形材W2のフランジ部となる部分fの側面f2、f3を拘束した状態でボス部となる部分gの端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部となる部分fの外方に送り移動させて、フランジ部となる部分fの外周端面f1を所定形状のキャビティに当接させて、フランジ部Fの外周縁を成形するように構成されている。
【0012】
図2の(a)に示した円形板状の素材W0または四角形の素材W00などを打ち抜くなどにより、図2の(b)に示すように、中央に円形の穴j1が穿設されると共に、外周縁が成形しようとするフランジ部Fの外周縁の形状に応じて近似した形状に成形された第1粗形材W1を成形する。また、この実施の形態では、第1粗形材W1には、後に段付き穴Hを成形するための下穴h1が所定の位置に穿設される。
次いで、第1粗形材W1を、その中央に穿設された円形の穴j1の周囲を後にボス部に成形される部分gとするべく、軸方向へテーパ状に突出するように曲げ成形して、図2の(c)に示すように第2粗形材W2を成形する。第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周縁の径方向の大きさは、成形しようとするフランジ部Fの大きさよりもわずかに小さくなるように設定される。この実施の形態では、例えば、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの厚さが6mmである場合に、成形しようとするフランジFの大径部および小径部が半径でそれぞれ0.18〜0.42mmの範囲で、好ましくは0.30mm程度大きくなるように設定されている。なお、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周縁の径方向の大きさは、中央の穴j2の周囲が軸方向に突出するように成形されたことにより、第1粗形材W1の外周縁の径方向の大きさよりもわずかに小さくなる。したがって、第1粗形材W1の外周縁の径方向の大きさは、第2粗形材のフランジ部となる部分fの外周縁の径方向の大きさが小さくなる量を見込んで設定される。また、第2粗形材W2を成形する工程では、第1粗形材W1に穿設された下穴h1から段付きの下穴h2に成形する。
【0013】
上型1は、プレスラムに取付けられるポンチプレート10と、このポンチプレート10の下面中央にボルト11によって取付けられたスリーブポンチ12と、ポンチプレート10に対して相対的に昇降移動可能にスリーブポンチ12に外嵌されたアッパホルダ13と、アッパホルダ13のポンチプレート10に対する離間移動を規制するストッパ14と、を備えている。
スリーブポンチ12は、その下面中央12aが後述する下型2のマンドレル21の上端面と対応するように成形されており、外周縁12bが第2粗形材W2のテーパ状に突出するように成形されたボス部となる部分gの端面を軸方向に押圧してボス部Gを成形することができるように構成されている。すなわち、スリーブポンチ12の下面外周縁12bは、ボス部Gを成形する部分を構成する。
アッパホルダ13は、スリーブポンチ12に外嵌されると共に、ポンチプレート10に設けられたガイドポスト15に挿通されて、ポンチプレート10に対して相対的に昇降移動可能となっている。そして、アッパホルダ13の対向する側(図1の左右側)には段部13aが形成されており、この段部13aが係止されてアッパホルダ13のポンチプレート10に対する離間移動を規制するストッパ14がポンチプレート10に対してボルト16により取付けられている。さらに、ポンチプレート10にはアッパホルダ13に対してプレスクッション力により下方に加圧するピン17が挿通されている。アッパホルダ13の下面の内周縁には、成形するフランジ部Fの厚さに応じて下方に所定の高さで突出するように拘束部13bが形成されている。拘束部13bは、成形するフランジ部Fの大径部Faおよび小径部Fbの形状に応じて成形されてなるもので、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの一方の側面f2と接する部分を構成する。
【0014】
下型2は、ボルスタに取付けられるダイプレート20と、このダイプレート20の上面中央に昇降可能に支持されたマンドレル21と、ダイプレート20に対して相対的に昇降移動可能にマンドレル21に外嵌されたロアホルダ22と、ダイプレート20に対して相対的に昇降移動可能にロアホルダ22に外嵌されたダイス23と、ダイス23のダイプレート20に対する離間移動を規制するストッパ24と、を備えている。
マンドレル21の上端は、上述した上型1のスリーブポンチ12の下面中央と対応するように形成されている。また、マンドレル21の側周面は、第2粗形材W2の中央の穴j2を挿通して、第2粗形材W2から第3粗形材W3(図3の(d)を参照)を成形したときに中央に所定の径の穴Jを形成することができ、且つ、成形された第3粗形材W3を型外へ払い出しすることができるような抜き勾配を形成するように成形されている。一方、マンドレル21の下端には、ダイプレート20内に形成された段部20aに係止される大径部21aが設けられており、その下端面には、ダイプレート20に対してマンドレルを昇降駆動するピン25が当接されている。
ロアホルダ22の下端部にはダイス23の下面の段部23aに係止される大径部22aが成形されている。また、ロアホルダ22の下端面には、ダイプレート20に対してロアホルダ22を昇降駆動するピン26が当接されている。また、ロアホルダ22の上端面には、拘束部22bが形成されている。拘束部22bは、成形するフランジ部Fの大径部Faおよび小径部Fbの形状に応じて成形されてなるもので、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの他方の側面f3と接する部分を構成する。
ダイス23のロアホルダ22と接する内周面23bは、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周端面F1と対向し当接されるキャビティの所定形状の部分を構成するもので、成形するフランジ部Fの外周端面の形状に応じて成形されている。また、ダイス23には上型1のガイドポスト15の先端部が嵌挿されるガイド穴23cが形成されている。さらに、ダイス23は、下型2のダイプレート20に設けられたガイドポスト27に挿通されて、ダイプレート20に対して相対的に昇降移動可能となっている。ダイス23の内周下面には、ロアホルダ22の下端部に形成された大径部22aと当接してロアホルダ22のダイプレート20に対する離間移動を規制する段部23aが形成されている。また、ダイス23の対向する側(図1の左右側)には段部23dが形成されており、この段部23dを係止してダイス23のダイプレート20に対する離間移動を規制するストッパ24がダイプレート20に対してボルト28により取付けられている。
【0015】
次に、本発明の端面異形フランジ部材の成形方法の実施の一形態を、上述したように構成された成形型を用いた場合によって詳細に説明する。
本発明の端面異形フランジ部材の成形方法は、概略、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの側面f2、f3を加圧することなく拘束した状態で、ボス部となる部分gの端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部となる部分fの外方に送り出し移動させて、その外周端面f1を所定形状を有する型23の内周面23bに当接させることにより、フランジ部Fの外周縁を成形するものである。
また、本発明の端面異形フランジ部材の成形方法は、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの板厚に対する外周端面f1の送り出し移動量の比が3〜7%となるように第2粗形材W2を成形するものである。
さらに、本発明の端面異形フランジ部材の成形方法は、フランジ部Fの外周縁が成形された第2粗形材W2の、ボス部となる部分gの端部をさらに軸方向に押圧することにより、ボス部Gを肉厚に据込み成形するものである。
【0016】
図2の(a)に示した円形板状の素材W0または四角形の素材W00などから図3の(e)に示したフランジ部材W4を成形するに際しては、上述したように、最初に図2の(b)に示したように、中央に円形の穴j1を穿設すると共に、成形しようとするフランジFの外周縁の形状に応じて近似した形状に外周縁を成形して第1粗形材W1を成形する。次いで、第1粗形材W1の中央の穴j1の周囲を軸方向に突出させるように曲げ成形して、図2の(c)に示したように第2粗形材W2を成形する。また、この実施の形態における第1粗形材W1を成形する工程では、素材W0の所定の位置に下穴h1が穿設され、また、第2粗形材W2を成形する工程では、第1粗形材W1に穿設された下穴h1から段付きの下穴h2に成形する。なお、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周縁の径方向の大きさは、成形しようとするフランジ部Fの大きさよりもわずかに小さくなるように設定されている。また、第1粗形材W1から第2粗形材W2を成形するときに、中央の穴j2の周囲が軸方向に突出するように成形されることにより、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周縁の径方向の大きさが第1粗形材W1の外周縁の径方向の大きさよりもわずかに小さくなる。そのため、第1粗形材W1の径方向の大きさは、中央の穴j2の周囲を軸方向に突出させて成形した第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの径方向の大きさが、成形しようとするフランジ部Fの大きさよりもわずかに小さくなるように成形される。
【0017】
次に、図1に示したように、上型1と下型2とを相対的に離間させて型開きした状態で、下型2に第2粗形材W2をセットする。このとき、上型1は、アッパホルダ13がストッパ14に係止された下降限位置にあり、下型2は、マンドレル21がピン25によって上昇限位置とされ、ダイス23がストッパ24に係止された上昇限位置にあり、ロアホルダ22がピン26によって上昇限位置とされている。第2粗形材W2は、中央の穴j2がマンドレル21に挿通され、フランジとなる部分fの他方の側面f3がロアホルダ22の拘束部22bに接するように載置され、また、フランジ部となる部分fの外周端面f1がダイス23の内周面23bと対向するように配置されることとなる。そして、上型1と下型2とを相対的に近接させて型閉じしキャビティを形成すると、図4および図8に示すように、上型1のアッパホルダ13は、下型2のダイス23の上面と衝合されると共に、その下面の拘束部13bが第2粗形材w2のフランジとなる部分fの一方の側面f2に接する。
このとき、アッパホルダ13の拘束部13bとロアホルダ22の上端面の拘束部22bの位置は、ダイス23の上面と衝合されたアッパホルダ13の拘束部13bが第2粗形材W2のフランジとなる部分fを厚さ方向に加圧することなく拘束するように設定されている。すなわち、キャビティのフランジとなる部分fの側面f2、f3と接する部分を構成するアッパホルダ13の拘束部13bとロアホルダ22の拘束部22bの間隔は、第2粗形材W2のフランジとなる部分fの厚さと略同じに設定されている。
また、第2粗形材W2のフランジとなる部分fの径方向の大きさは、その外周端面f1と対向するダイス23の内周面23b(すなわち、成形するフランジFの大径部Faおよび小径部Fbの径方向の大きさでもある)よりもわずかに小さく設定されている。そのため、この段階では、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fの外周端面f1とダイス23の内周面23bとの間にクリアランスC(図8)が形成されている。
【0018】
続いて、さらに上型1と下型2とを相対的に近接させると、図5および図9に示すように、上型1のアッパホルダ13がポンチプレート10に対して相対的に上昇するように近接されて、第2粗形材W2の突出するように成形されたボス部に成形される部分gの端面であるマンドレル21に挿通された穴j2の周囲の端面をスリーブポンチ12の下面外周縁12bが軸方向に押圧する。第2粗形材W2は、ボス部となる部分gの端面が軸方向に押圧されることにより、アッパホルダ13とロアホルダ22の拘束部13b、22bの間で拘束された状態のフランジとなる部分fの材料が径方向外側に向かって送り出し移動され、クリアランスCが無くなるように外周端面がダイス23の内周面23bに押し付けられるように当接されて、所望する形状の外周縁に成形されることとなる。なお、第2粗形材W2のフランジ部となる部分fは、その材料が径方向外方に送り出し移動されるときに、周方向に引っ張り応力を受け、且つ、軸方向内側からの圧縮応力を受けることから、低応力で変形が進行する。そのため、ボス部となる部分gの端部を比較的小さなプレス力で軸方向に押圧するだけで、フランジ部Fの外周縁の形状精度が良いフランジ部材W4が最終的に容易に成形される。
【0019】
続いて、さらに上型1と下型2とを相対的に近接させると、図6および図10に示すように、上型1のアッパホルダ13がポンチプレート10当接されると共に、下型2のロアホルダ22およびダイス23もダイプレート20に対して相対的に下降し当接される。また、マンドレル21は、スリーブポンチ12と衝合されることにより、ダイプレート20に対して相対的に下降するように移動される。そして、第2粗形材W2は、そのフランジとなる部分fの外周縁端面が下型2のダイス23の内周面23bに当接されて材料の径方向外方への送り出し移動が規制されるため、そのボス部となる部分gが上型1のスリーブポンチ12によってさらに軸方向に押圧されて径方向に広がり据込み成形が行われ、肉厚のボス部Gを有する第3粗形材W3(図3の(d))が成形されることとなる。
【0020】
その後、第3粗形材W3を成形型から払い出すべく、図7および図11に示すように、上型1と下型2とを相対的に離間させる。また、これと同時に、ピン25の駆動によってマンドレル21をダイプレート20に対して相対的に上昇させるように移動させると共に、ピン26の駆動によってロアホルダ22を相対的に上昇移動させる。また、このとき、上型1が下型2から相対的に離間されるのに伴って、アッパホルダ13がポンチプレート10から離間する。そのため、第3粗形材W3は、成形されたボス部Gからスリーブポンチ12が離間すると共に、フランジとなる部分fがアッパホルダ13とロアホルダ22の拘束部13b、22bの間に挟まれた状態で、マンドレル21の上端側に相対移動し、そのフランジとなる部分fがダイス23の内周面から出されることとなる。そして、さらに上型1下型2とを相対的に離間させると、アッパホルダ13が第3粗形材W3のフランジとなる部分fの側面f2から離れて型開きされる。
【0021】
その後、第3粗形材W3は、図3の(e)に示すように、第2租形材W2を成形するときに成形されたの段付き下穴h2の小径部が所定の径に成形されて、フランジ部材W4の成形が完了する。
なお、本発明は、上述したように遊星歯車を保持するためのキャリヤを構成する、フランジ部の外周縁が大径部と小径部とを周方向に交互に配置されたフランジ部材を成形する場合の実施の形態に限定されることなく、他の形状のフランジ部材を成形する場合にも適用することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、粗形材のフランジ部となる部分の面を拘束した状態で、ボス部となる部分の端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部の外方に送り出し移動させて、所定形状を有する型にその端面を当接させることにより、フランジ部の端部を成形するという簡単な構成で、精度の良い形状の端面異形フランジ部材を安価で容易に成形することができる成形方法を提供することができる。
また、本発明によれば、キャビティの粗形材のフランジ部となる部分の端面と対向する部分が所定形状に成形されると共に、粗形材のフランジ部となる部分の面と接する部分がフランジ部となる部分を拘束し得る厚さを有しており、また、キャビティのボス部を成形する部分が粗形材のボス部となる部分を軸方向に押圧するように構成することで、精度の良い端面異形フランジ部材を容易に且つ安価で適切に成形することができる成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形型の主要部を示す断面図である。
【図2】素材、第1粗形材、および第2粗形材の形状を示す説明図である。
【図3】第3粗形材、および成形が完了したフランジ部材の形状を示す説明図である。
【図4】上型と下型とを近接させて型閉じし、第2粗形材のフランジ部となる部分の面を拘束した状態を示す拡大半断面図である。
【図5】図4の状態から、さらに上型と下型とを近接させて第2粗形材のボス部となる部分の端面を押圧した状態を示す拡大半断面図である。
【図6】図5の状態から、さらに上型と下型とを近接させて肉厚のボス部を有する第3粗形材が成形された状態を示す拡大半断面図である。
【図7】図6の状態から、上型と下型とを離間させて第3粗形材を型外に払い出す状態を示す拡大半断面図である。
【図8】図4の要部をさらに拡大した要部拡大断面図である。
【図9】図5の要部をさらに拡大した要部拡大断面図である。
【図10】図6の要部をさらに拡大した要部拡大断面図である。
【図11】図7の要部をさらに拡大した要部拡大断面図である。
【符号の説明】
W4 フランジ部材
F フランジ部
Fa 大径部
Fb 小径部
G ボス部
W2 第2粗形材
f 第2粗形材のフランジ部となる部分
f1 第2粗形材のフランジ部となる部分の外周端面
f2、f3 第2粗形材のフランジ部となる部分の側面
g 第2粗形材のボス部となる部分
1 上型
2 下型
12b スリーブポンチの外周縁(キャビティのボス部を成形する部分)
13b アッパホルダの拘束部(キャビティのフランジ部となる部分の側面と接する部分)
22b ロアホルダの拘束部(キャビティのフランジ部となる部分の側面と接する部分)
23b ダイスの内周面(キャビティのフランジ部となる部分の外周端面と対向する部分)
Claims (4)
- 軸方向に突出するボス部を有しており、外周縁の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材の成形方法であって、
粗形材のフランジ部となる部分の側面を拘束した状態で、ボス部となる部分の端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部の外方に送り出し移動させて、所定形状を有する型にその外周端面を当接させることにより、フランジ部の外周縁を成形することを特徴とする端面異形フランジ部材の成形方法。 - 粗形材の板厚に対する外周端面の送り出し移動量の比が3〜7%となるように粗形材を成形することを特徴とする請求項1に記載の端面異形フランジ部材の成形方法。
- フランジ部の外周縁が成形された粗形材の、ボス部となる部分の端部をさらに軸方向に押圧することにより、ボス部を肉厚に成形することを特徴とする請求項1または2に記載の端面異形フランジ部材の成形方法。
- 軸方向に突出するボス部を有しており、外周縁の形状が周方向の部分によって異なるフランジ部を有するフランジ部材の成形型であって、
キャビティの粗形材のフランジ部となる部分の外周端面と対向する部分が所定形状に成形されると共に、粗形材のフランジ部となる部分の側面と接する部分がそのフランジ部となる部分を拘束し得る厚さを有しており、また、キャビティのボス部を成形する部分が粗形材のボス部となる部分を軸方向に押圧するようになっており、
粗形材のフランジ部となる部分の側面を拘束した状態でボス部となる部分の端部を軸方向に押圧することにより材料をフランジ部の外方に送り移動させて、フランジ部となる部分の外周端面を所定形状のキャビティに当接させてフランジ部の外周縁を成形するように構成したことを特徴とする端面異形フランジ部材の成形型。
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