JP2004031402A - 分布帰還型半導体レーザ素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】共振器長が500μm以上で、高い単一モード歩留まりを有し、且つ、高出力下でも狭いスペクトル線幅を有する分布帰還型半導体レーザを提供する。
【解決手段】共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子は、InGaAsP回折格子15が形成される領域の長さが共振器長の50%以上であある。InGaAsP回折格子15の後端部26の近傍では、後端部26に向かってデューティ比を連続的に小さくする。
【選択図】 図2
【解決手段】共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子は、InGaAsP回折格子15が形成される領域の長さが共振器長の50%以上であある。InGaAsP回折格子15の後端部26の近傍では、後端部26に向かってデューティ比を連続的に小さくする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分布帰還型半導体レーザ素子に関し、特に、共振器長が500μm以上で、且つ、高い単一モード歩留まりを有し、高出力下でも狭いスペクトル線幅を有する分布帰還型半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
分布帰還型半導体レーザ素子(以下、DFBレーザ素子と呼ぶ)は、単一波長性に優れ、中・長距離の光ファイバ伝送システムにおいて信号光源として用いられる。特に、外部変調器と組み合わせて用いられるCW駆動DFBレーザ素子では、長距離伝送のため、高出力性、高い単一モード安定性に加え、狭いスペクトル線幅を有することが必要となる。また、DFBレーザ素子は通常、光出射側となる一方の面(以下、前端面と言う)に低反射率膜を、他方の面(以下、後端面と言う)に高反射率膜を施すことにより高効率化されている。
【0003】
DFBレーザ素子の高出力化を実現するためには、結合係数κと共振器長Lの積κLを小さくする必要がある。一方、κLが小さ過ぎると、単一モード安定性に優れたDFBレーザ素子を得るのが困難となるため、適度な範囲に制御する必要がある。
【0004】
高出力化のためには、また、共振器長Lを長くすることが有効であり、それに伴って結合係数κを小さくする必要がある。この場合、小さい結合係数κを再現性良く実現することは困難であるため、回折格子を共振器の長さ方向の一部に形成することにより、実効的なκLを小さくしたDFBレーザ素子が特開平11−68220号公報に開示されている。
【0005】
上記公報に記載のDFBレーザ素子を図6(a)に示す。DFBレーザ素子40では、回折格子41を形成する領域の長さ(以下、回折格子長と言う)Lgを素子長(共振器長)の52%以上64%以下で、且つ、κLgを0.8以上2以下とすることにより、単一モード安定性の強さを表す主モードと副モードとの反射鏡損失差(ΔαL)を大きくとり、高い単一モード安定性、高歩留まり特性、及び高効率・高出力特性を実現している。同図中、44は活性層、45は光ガイド層、43は低反射率端面、44は高反射率端面、46は電極を夫々示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述したDFBレーザ素子40では、以下のような問題があった。
第1には、同公報に記載の回折格子長は、主として共振器長が250μm以下の素子を考慮したものであり、更に高出力化を実現するために、共振器長を例えば500μm以上としたDFBレーザ素子に適用しようとした場合、高い単一モード歩留まりが得られなかった。
【0007】
第2には、DFBレーザ素子40では、光電界強度の分布が、図5(a)に示すように、共振器の後端面に近い側の回折格子の端部において急峻な変化を伴うため、高電流注入下でホールバーニングが起き易く、これに伴い高出力下でのスペクトル線幅の増大が発生していた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、共振器長が500μm以上で、高い単一モード歩留まりを有し、且つ、高出力下でも狭いスペクトル線幅を有する分布帰還型半導体レーザを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決する研究の過程において、同公報に記載の回折格子長を共振器長500μm以上の素子に適用した場合に、高い単一モード歩留まりが得られないのは、回折格子長が短かすぎるためではないかと考えた。そこで共振器長が長い場合には、共振器長が短い場合に比べて、回折格子長を長くした場合においても共振器内部の光電界強度分布が大きくなりにくい(ホールバーニングが起こりにくい)ことに着目した。すなわち、回折格子長を同公報に記載の値より大きく採ることにより、高い単一モード歩留まりを有するDFBレーザ素子を得ることを着想し、後述のシミュレーションを行い、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、高出力下のスペクトル線幅の増大を抑制するために、共振器の後端面に近い側の回折格子の端部近傍において、回折格子が順次に消失する構造にすることを着想した。即ち、図6(b)に示すように、共振器の後端面33に近い側の回折格子34の端部31の近傍で、回折格子34が順次に消失するように形成する構造について、その特性をシミュレーションした。その結果、図5(b)に示すように、該端部31の近傍で共振器内部の光電界強度の分布が平滑化され、高電流注入下でのホールバーニングを抑制し、高出力下の狭いスペクトル線幅を実現することを確認した。同図中、32は前端面、35は活性層を夫々示す。
【0011】
そこで、上記目的を達成する本発明に係る分布帰還型半導体レーザ素子は、共振器と平行に形成された回折格子を有し、光出射端となる一方の端面(前端面)に低反射率膜が、他方の端面(後端面)に高反射率膜が夫々形成された、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子であって、
前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の50%以上であることを特徴としている。
【0012】
回折格子が形成される領域の長さを共振器長の50%以上とすることにより、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、高い単一モード歩留まりを得ることができる。ここで、単一モード歩留まりとは、製造した半導体レーザ素子に対して、主モードに対する副モード抑圧比(SMSR:SideMode Suppression Ratio)が、所定の値以上を保つ半導体レーザ素子の数の比率である。
【0013】
本発明では、前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の65%以上であることが望ましい。回折格子が形成される領域の長さを共振器長の65%以上とすることにより、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、更に高い単一モード歩留まりを得ることができる。
【0014】
本発明では、前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の95%以下であることが望ましい。回折格子が形成される領域の長さを共振器長の95%以下とすることにより、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、反射鏡損失の増大を抑制し、スペクトル線幅の広がりを抑制することができる。
【0015】
本発明の好適な実施態様では、前記他方の端面に近い側の回折格子の端部(後端部)近傍では、該端部に向かって前記回折格子が順次に消失する。この場合、後端部近傍における光電界強度の分布を平滑化し、高電流注入下でのホールバーニングを抑制し、高出力下でも狭いスペクトル線幅を実現することができる。なお、回折格子が順次に消失するのは、例えば、連続的に消失してもよく、或いは段階的に消失してもよい。
【0016】
またこの場合、前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かってデューティ比が順次に小さくなるのが好ましい。或いはこれに代えて、前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かって前記回折格子の幅が順次に小さくなる、つまり、回折格子の帯状片の長さが順次に小さくなるのが好ましい。
後端部に向かってデューティ比又は回折格子の帯状片の長さを順次に小さくする回折格子の作製は、回折格子パターンを有するレジスト膜を形成する工程において、電子ビーム(EB)描画装置を使用し、後端部近傍の電子ビーム照射量を調節するだけでよいので、従来の作製方法に対して極めて少ない変更を加えた方法で作製でき、スループット及び製造コストのレベルを維持することができる。
【0017】
上記以外にも、後端部に向かって、回折格子の帯状片を順次に間引いたり、或いは、回折格子の帯状片の厚さを順次に小さくすることにより、上記同様の効果を得ることができる。
【0018】
本発明は、好適には、前記回折格子の結合係数κと、前記回折格子が形成される領域の長さLgとの積κLgが、0.5以上1.5以下であることが望ましい。κLgが0.5以下だと、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、回折格子による光の共振器内への閉じ込めが弱いため、しきい値電流密度の上昇、単一モード歩留まりの低下といった問題が起きてしまうことがあり、またκLgが1.5以上だと、回折格子による光の共振器内への閉じ込めが強くなるため、スロープ効率が低下し、高出力化に不向きであるからである。
【0019】
本発明の分布帰還型半導体レーザ素子では、光出力が60mW以上で1MHz以下のスペクトル線幅を達成することが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に際して、共振器長が500μm以上のDFBレーザ素子についてシミュレーションを行い、回折格子長と単一モード歩留まり、及び反射鏡損失αとの関係を調べ、下記に要約する事実を見出した。
【0021】
図4(a)に、共振器長が800μmで、結合係数κと回折格子長Lgとの積κLgを1とし、共振器長に対する回折格子長Lgを変化させた際の単一モード歩留まりの変化をシミュレーションした結果を示す。単一モード歩留まりでは、主モードと副モードとの反射鏡損失差(ΔαL)が0.1以上を単一モード発振達成の目安とした。同図より、単一モード歩留まり60%以上を得るためには、回折格子長の比率を50%以上、更に単一モード歩留まり80%以上を得るためには、回折格子長の比率を65%以上にすると良いことが判かる。
【0022】
図4(b)に、上記同様の条件で、共振器長に対する回折格子長Lgを変化させた際の反射鏡損失αの変化をシミュレーションした結果を示す。反射鏡損失αは、スペクトル線幅を示す目安であり、理論的には、スペクトル線幅は反射鏡損失αが小さい程狭くなる。同図より、回折格子長の割合を95%以上とすることは、反射鏡損失αが極めて増大するため望ましくないと言える。なお、反射鏡損失αが小さいほど発振しきい値電流は下がるが、効率は減少する。
【0023】
上記により、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、高い単一モード歩留まりを得るために最適な回折格子長Lgは、共振器長の50%以上で、好適には65%以上で、且つ95%以下であると言える。なお、共振器内部で回折格子を形成する領域は、前端面寄りに限定する必要はなく、何れの位置であっても、上記の結果を得ることができる。
【0024】
以下に、添付図面を参照し、実施形態例を挙げて本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。
実施形態例1
図1は、本実施形態例のDFBレーザ素子の部分断面を示す斜視図であり、図2は、図1のI−I断面を示す断面図である。本実施形態例のDFBレーザ素子10は、共振器長が800μmで、発振波長を1550nmに設定したDFBレーザ素子であって、図1及び図2に示すように、膜厚350μm程度のn−InP基板11上に、n−InPバッファ層12、波長に換算したバンドギャップが1560nmのInGaAsPからなるMQW−SCH活性層13、p−InPスペーサ層14、InGaAsP回折格子15、回折格子15を埋め込んだp−InP埋め込み層16、及びp−InPクラッド層17の積層構造を有する。
【0025】
活性層の利得ピーク波長と発振波長との差は、デチューニング量と呼ばれ、DFBレーザ素子の特性を大きく左右するパラメータである。狭いスペクトル線幅を実現するためには、負のデチューニング量を採ることが有効であると考えられている。本実施形態例では、このデチューニング量として、MQW−SCH活性層13の利得ピーク波長と発振波長との差が−10nmとなるように設定した。
【0026】
InGaAsP回折格子15は、膜厚が20nm、周期が240nmであり、前端面24寄りで長さが550μmの領域に形成される。この長さは、共振器長の69%に相当する。デューティ比は約25%であり、且つ、InGaAsP回折格子15の後端部26の近傍で、連続的に小さくなるように形成される。InGaAsP回折格子15の結合係数κと、回折格子長Lgとの積である回折格子強度κLgは、1.0である。InGaAsP回折格子15の膜厚は、30nmとしてもよい。
【0027】
積層構造のうち、p−InPクラッド層17、p−InP埋め込み層16、InGaAsP回折格子15、p−InPスペーサ層14、MQW−SCH活性層13、及びn−InPバッファ層12の上部層は、MQW−SCH活性層13が約2μmの幅を有するように、メサストライプ状に加工されている。
メサストライプの両側は、p−InP層20及びn−InP層21の積層構造からなる電流ブロック層で埋め込まれている。
【0028】
p−InPクラッド層17及びその両側のn−InP層21上には、膜厚約2μmのp−InPクラッド層18及び高ドープInGaAsコンタクト層19が、順次に、積層されている。
高ドープInGaAsコンタクト層19上には、p側電極22としてTi/Pt/Au多層金属膜が、n−InP基板11の裏面にはn側電極23としてAuGeNi膜が、夫々設けてある。DFBレーザ素子10の前端面24には無反射コーティング膜(図示なし)が、後端面25には高反射コーティング膜(図示なし)が、夫々成膜されている。
【0029】
DFBレーザ素子10の作製に当っては、先ず、MOCVD装置を使って、成長温度600℃で、n−InP基板11上に、n−InPバッファ層12、波長に換算したバンドギャップが1560nmのInGaAsPからなるMQW−SCH活性層13、p−InPスペーサ層14、膜厚20nmのInGaAsP回折格子15の形成層を成長させた。
【0030】
次いで、InGaAsP回折格子15の形成層上に電子ビーム(EB)描画用レジストを約100nmの膜厚で塗布し、EB描画装置を使って、回折格子パターンを有するレジスト膜(図示なし)を形成した。
回折格子パターンは、前端面24寄りで長さが550μmの領域に、周期が約240nm、デューティ比が約25%で、InGaAsP回折格子15の後端部26に対応する回折格子パターン端部(図示なし)の近傍でデューティ比が連続的に小さくなるように形成した。また、回折格子強度κLgが、1.0になるように形成した。
【0031】
本実施形態例の上記作製方法では、EB描画装置を使用し、レジスト膜の上記回折格子パターン端部の近傍に照射する電子ビーム照射量を調節するだけで、上述のようにInGaAsP回折格子15の後端部26の近傍でデューティ比が連続的に小さくなるように形成することが可能である。
【0032】
続いて、ドライエッチング装置を使ってレジスト膜上からInGaAsP回折格子15の形成層を貫通するようにエッチングして、InGaAsP回折格子15を形成した。次いで、MOCVD装置を使って、p−InP埋め込み層16及びp−InPクラッド層17を成長させ、InGaAsP回折格子15の埋め込み再成長を行った。
【0033】
次に、プラズマCVD装置を用いて、基板全面にSiNx膜を成膜し、フォトリソグラフィ技術と反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法により、SiNx膜をエッチングして、回折格子15の周期方向に延びるストライプ状のSiNx膜マスク(図示せず)を形成した。
続いて、ストライプ状のSiNx膜マスクをエッチングマスクとして、p−InPクラッド層17、p−InP埋め込み層16、InGaAsP回折格子15、p−InPスペーサ層14、MQW−SCH活性層13、及びn−InPバッファ層12の上部をエッチングして、MQW−SCH活性層13が約2μmの幅を有するメサストライプ状に加工した。
【0034】
次いで、SiNx膜マスクを選択成長マスクとして使い、p−InP層20及びn−InP層21を、順次に、選択成長させて、メサストライプの両脇を埋め込み、電流ブロック層とした。SiNx膜マスクを除去した後、膜厚約2μmのp−InPクラッド層18及び高ドープInGaAs層19を、順次に、成長させた。
【0035】
次いで、高ドープInGaAsコンタクト層19上に、p側電極22としてTi/Pt/Au多層金属膜を設けた。また、基板厚が約350μmになるように、n−InP基板11の裏面を研磨し、研磨後の裏面に、n側電極23としてAuGeNi膜を設けた。更に、ウエハを前端面24及び後端面25で壁開し、各前端面24には無反射コーティング膜を、各後端面25には高反射コーティング膜を成膜し、次いで個々のレーザ素子に分割した後に、チップ化しボンディングした。
【0036】
本実施形態例のDFBレーザ素子10は、前述のように、InGaAsP回折格子15を形成する領域の長さを共振器長の69%とすることにより、共振器長が800μmの本実施形態例のDFBレーザ素子でも、高い単一モード歩留まりを得ることができた。
また、後端部26の近傍で、InGaAsP回折格子15のデューティ比が連続的に小さくなる構造を有することにより、後端部26の近傍における共振器内部の光電界強度の分布を平滑化し、高電流注入下でのホールバーニングを抑制し、高出力下でも狭いスペクトル線幅を実現することができた。なお、デューティ比が、連続的に小さくなる態様に代えて、段階的に小さくなるデューティ比を形成しても同様の効果が得られる。
【0037】
本実施形態例のDFBレーザ素子10の性能を評価するために、種々の測定を行った。MQW−SCH活性層13のバンドギャップ波長を揃えるため、測定には、基板中心附近で作製されたものを用いた。
単一モード歩留まりは87%で、十分高い値が得られたと評価できる。また、光出力60mW時のスペクトル強度比−3dBにおけるスペクトル線幅は0.6MHzで、標準偏差が0.02MHzであり、高出力下のスペクトル線幅として、十分狭い値が得られたと評価できる。
【0038】
比較例
実施形態例1のDFBレーザ素子10との比較を行うために、従来のDFBレーザ素子を試作した。
従来のDFBレーザ素子(図示なし)は、共振器長が800μmで、発振波長を1550nmに設定したDFBレーザ素子であって、実施形態例1のDFBレーザ素子10とは、以下の点を除いて同様の構成をしている。即ち、InGaAsP回折格子15が、前端面24寄りで長さが550μmの領域に形成される構成に代えて、前端面24寄りで長さが450μmの領域に形成される。この長さは、共振器長の56%に相当する。また、InGaAsP回折格子15のデューティ比が、InGaAsP回折格子15が形成される全ての領域で25%で、後端部26で不連続的に0になる。
【0039】
従来のDFBレーザ素子の製造にあたっては、実施形態例1の回折格子パターン(図示なし)を有するレジスト膜を形成する工程において、回折格子パターンを、長さが550μmに代えて、長さが450μmの領域に形成する。また、回折格子パターンのデューティ比を、InGaAsP回折格子15を形成する全ての領域で25%とし、後端部26に対応する回折格子パターン端部(図示なし)で不連続的に0になるように形成した。
【0040】
このような従来のDFBレーザ素子を試作し、実施形態例1と同様の測定を行ったところ、単一モード歩留まりが62%、光出力60mW時のスペクトル強度比−3dBにおけるスペクトル線幅は1.0MHzで、標準偏差が0.023MHzであった。測定には、MQW−SCH活性層(図示なし)のバンドギャップ波長を揃えるため、基板中心附近で作製されたものを用いた。
【0041】
上述の実施形態例1及び比較例の試験結果より、実施形態例1のDFBレーザ素子10は、従来のDFBレーザ素子と比較して、高い単一モード歩留まり、及び高出力下での狭いスペクトル線幅を実現するものと評価できる。
【0042】
実施形態例2
図3(a)に本実施形態例のDFBレーザ素子のInGaAsP回折格子の平面図を示し、図3(b)に製造途中の一工程段階における平面詳細図を示す。同図中で、図1及び図2に示すDFBレーザ素子10と同様の構成を有する部分については、同じ符号を付した。
DFBレーザ素子30は、共振器長が800μmで、発振波長を1550nmに設定したDFBレーザ素子であって、実施形態例1のDFBレーザ素子10とは、後端部26の近傍でInGaAsP回折格子15のデューティ比が連続的に小さくなる構成に代えて、図3(a)に示すように、後端部26の近傍でInGaAsP回折格子15の帯状片の長さが連続的に小さくなるように形成されることを除いて、同様の構成をしている。
【0043】
従って、本実施形態例のDFBレーザ素子30は、回折格子パターン28の後端部29の近傍で帯状片の長さが連続的に小さくなるように形成することを除いて、先の実施形態例のDFBレーザ素子10と同様の作製方法で作製することができる。
【0044】
本実施形態例のDFBレーザ素子30は、上述の構成を採ることにより、実施形態例1のDFBレーザ素子10と同様の効果が得られた。なお、InGaAsP回折格子15の後端部26の近傍における形状は、帯状片の長さが連続的に小さくなるものであれば、上記形状に限定されない。また、帯状片の長さが、連続的に小さくなる構成に代えて、段階的に小さくなるように形成しても同様の効果が得られる。
【0045】
本実施形態例の作製方法でも、EB描画装置を使用し、レジスト膜の上記回折格子パターン端部の近傍に照射する電子ビーム照射量を調節するだけで、上述のようにInGaAsP回折格子15の後端部26の近傍で帯状片の長さが連続的に小さくなるように形成することが可能である。
【0046】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明のDFBレーザ素子は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したDFBレーザ素子も、本発明の範囲に含まれる。
例えば、実施形態例で示した成膜方法、化合物半導体層の組成及び膜厚、メサ幅、プロセス条件等は、本発明の理解を容易にするための一つの例示であって、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、回折格子が形成される領域の長さを共振器長の50%以上にすることによって、共振器長が500μm以上のDFBレーザ素子において、高い単一モード歩留まりを有するDFBレーザ素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施形態例1のDFBレーザ素子10の部分断面を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のI−I断面を示す断面図である。
【図3】(a)は実施形態例2のDFBレーザ素子のInGaAsP回折格子の平面図であり、(b)は製造途中の一工程段階における平面詳細図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態のシミュレーションに係る共振器長に対する回折格子長の比率と単一モード歩留まりとの関係を示すグラフであり、(b)は、本発明の実施の形態のシミュレーションに係る共振器長に対する回折格子長の比率と反射鏡損失αとの関係を示すグラフである。
【図5】(a)は、特開平11−68220号公報に記載の半導体レーザにおける、レーザ共振方向の内部光電界強度の分布を示すグラフであり、(b)は、本発明のDFBレーザ素子における、レーザ共振方向の内部光電界強度の分布を示すグラフである。
【図6】(a)は、従来の半導体レーザの構造を示す断面図であり、(b)は、本発明のDFBレーザ素子の構造を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
10 DFBレーザ素子
11 n−InP基板
12 n−InPバッファ層
13 MQW−SCH活性層
14 p−InPスペーサ層
15 InGaAsP回折格子層
16 InP埋め込み層
17 p−InPクラッド層
18 p−InPクラッド層
19 InGaAsコンタクト層
20 p−InP層
21 n−InP層
22 p側電極
23 n側電極
24 前端面(出射端面)
25 後端面
26 回折格子の後端部
27 回折格子の形成層
28 回折格子パターンが形成されたレジスト膜
29 回折格子パターンの後端部
30 実施形態例2のDFBレーザ素子
40 特開平11−68220号公報に記載の半導体レーザ
41 回折格子
42 高反射率端面
43 低反射率端面
44 活性層
45 光ガイド層
46 電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、分布帰還型半導体レーザ素子に関し、特に、共振器長が500μm以上で、且つ、高い単一モード歩留まりを有し、高出力下でも狭いスペクトル線幅を有する分布帰還型半導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
分布帰還型半導体レーザ素子(以下、DFBレーザ素子と呼ぶ)は、単一波長性に優れ、中・長距離の光ファイバ伝送システムにおいて信号光源として用いられる。特に、外部変調器と組み合わせて用いられるCW駆動DFBレーザ素子では、長距離伝送のため、高出力性、高い単一モード安定性に加え、狭いスペクトル線幅を有することが必要となる。また、DFBレーザ素子は通常、光出射側となる一方の面(以下、前端面と言う)に低反射率膜を、他方の面(以下、後端面と言う)に高反射率膜を施すことにより高効率化されている。
【0003】
DFBレーザ素子の高出力化を実現するためには、結合係数κと共振器長Lの積κLを小さくする必要がある。一方、κLが小さ過ぎると、単一モード安定性に優れたDFBレーザ素子を得るのが困難となるため、適度な範囲に制御する必要がある。
【0004】
高出力化のためには、また、共振器長Lを長くすることが有効であり、それに伴って結合係数κを小さくする必要がある。この場合、小さい結合係数κを再現性良く実現することは困難であるため、回折格子を共振器の長さ方向の一部に形成することにより、実効的なκLを小さくしたDFBレーザ素子が特開平11−68220号公報に開示されている。
【0005】
上記公報に記載のDFBレーザ素子を図6(a)に示す。DFBレーザ素子40では、回折格子41を形成する領域の長さ(以下、回折格子長と言う)Lgを素子長(共振器長)の52%以上64%以下で、且つ、κLgを0.8以上2以下とすることにより、単一モード安定性の強さを表す主モードと副モードとの反射鏡損失差(ΔαL)を大きくとり、高い単一モード安定性、高歩留まり特性、及び高効率・高出力特性を実現している。同図中、44は活性層、45は光ガイド層、43は低反射率端面、44は高反射率端面、46は電極を夫々示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述したDFBレーザ素子40では、以下のような問題があった。
第1には、同公報に記載の回折格子長は、主として共振器長が250μm以下の素子を考慮したものであり、更に高出力化を実現するために、共振器長を例えば500μm以上としたDFBレーザ素子に適用しようとした場合、高い単一モード歩留まりが得られなかった。
【0007】
第2には、DFBレーザ素子40では、光電界強度の分布が、図5(a)に示すように、共振器の後端面に近い側の回折格子の端部において急峻な変化を伴うため、高電流注入下でホールバーニングが起き易く、これに伴い高出力下でのスペクトル線幅の増大が発生していた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、共振器長が500μm以上で、高い単一モード歩留まりを有し、且つ、高出力下でも狭いスペクトル線幅を有する分布帰還型半導体レーザを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決する研究の過程において、同公報に記載の回折格子長を共振器長500μm以上の素子に適用した場合に、高い単一モード歩留まりが得られないのは、回折格子長が短かすぎるためではないかと考えた。そこで共振器長が長い場合には、共振器長が短い場合に比べて、回折格子長を長くした場合においても共振器内部の光電界強度分布が大きくなりにくい(ホールバーニングが起こりにくい)ことに着目した。すなわち、回折格子長を同公報に記載の値より大きく採ることにより、高い単一モード歩留まりを有するDFBレーザ素子を得ることを着想し、後述のシミュレーションを行い、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、高出力下のスペクトル線幅の増大を抑制するために、共振器の後端面に近い側の回折格子の端部近傍において、回折格子が順次に消失する構造にすることを着想した。即ち、図6(b)に示すように、共振器の後端面33に近い側の回折格子34の端部31の近傍で、回折格子34が順次に消失するように形成する構造について、その特性をシミュレーションした。その結果、図5(b)に示すように、該端部31の近傍で共振器内部の光電界強度の分布が平滑化され、高電流注入下でのホールバーニングを抑制し、高出力下の狭いスペクトル線幅を実現することを確認した。同図中、32は前端面、35は活性層を夫々示す。
【0011】
そこで、上記目的を達成する本発明に係る分布帰還型半導体レーザ素子は、共振器と平行に形成された回折格子を有し、光出射端となる一方の端面(前端面)に低反射率膜が、他方の端面(後端面)に高反射率膜が夫々形成された、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子であって、
前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の50%以上であることを特徴としている。
【0012】
回折格子が形成される領域の長さを共振器長の50%以上とすることにより、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、高い単一モード歩留まりを得ることができる。ここで、単一モード歩留まりとは、製造した半導体レーザ素子に対して、主モードに対する副モード抑圧比(SMSR:SideMode Suppression Ratio)が、所定の値以上を保つ半導体レーザ素子の数の比率である。
【0013】
本発明では、前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の65%以上であることが望ましい。回折格子が形成される領域の長さを共振器長の65%以上とすることにより、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、更に高い単一モード歩留まりを得ることができる。
【0014】
本発明では、前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の95%以下であることが望ましい。回折格子が形成される領域の長さを共振器長の95%以下とすることにより、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、反射鏡損失の増大を抑制し、スペクトル線幅の広がりを抑制することができる。
【0015】
本発明の好適な実施態様では、前記他方の端面に近い側の回折格子の端部(後端部)近傍では、該端部に向かって前記回折格子が順次に消失する。この場合、後端部近傍における光電界強度の分布を平滑化し、高電流注入下でのホールバーニングを抑制し、高出力下でも狭いスペクトル線幅を実現することができる。なお、回折格子が順次に消失するのは、例えば、連続的に消失してもよく、或いは段階的に消失してもよい。
【0016】
またこの場合、前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かってデューティ比が順次に小さくなるのが好ましい。或いはこれに代えて、前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かって前記回折格子の幅が順次に小さくなる、つまり、回折格子の帯状片の長さが順次に小さくなるのが好ましい。
後端部に向かってデューティ比又は回折格子の帯状片の長さを順次に小さくする回折格子の作製は、回折格子パターンを有するレジスト膜を形成する工程において、電子ビーム(EB)描画装置を使用し、後端部近傍の電子ビーム照射量を調節するだけでよいので、従来の作製方法に対して極めて少ない変更を加えた方法で作製でき、スループット及び製造コストのレベルを維持することができる。
【0017】
上記以外にも、後端部に向かって、回折格子の帯状片を順次に間引いたり、或いは、回折格子の帯状片の厚さを順次に小さくすることにより、上記同様の効果を得ることができる。
【0018】
本発明は、好適には、前記回折格子の結合係数κと、前記回折格子が形成される領域の長さLgとの積κLgが、0.5以上1.5以下であることが望ましい。κLgが0.5以下だと、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、回折格子による光の共振器内への閉じ込めが弱いため、しきい値電流密度の上昇、単一モード歩留まりの低下といった問題が起きてしまうことがあり、またκLgが1.5以上だと、回折格子による光の共振器内への閉じ込めが強くなるため、スロープ効率が低下し、高出力化に不向きであるからである。
【0019】
本発明の分布帰還型半導体レーザ素子では、光出力が60mW以上で1MHz以下のスペクトル線幅を達成することが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に際して、共振器長が500μm以上のDFBレーザ素子についてシミュレーションを行い、回折格子長と単一モード歩留まり、及び反射鏡損失αとの関係を調べ、下記に要約する事実を見出した。
【0021】
図4(a)に、共振器長が800μmで、結合係数κと回折格子長Lgとの積κLgを1とし、共振器長に対する回折格子長Lgを変化させた際の単一モード歩留まりの変化をシミュレーションした結果を示す。単一モード歩留まりでは、主モードと副モードとの反射鏡損失差(ΔαL)が0.1以上を単一モード発振達成の目安とした。同図より、単一モード歩留まり60%以上を得るためには、回折格子長の比率を50%以上、更に単一モード歩留まり80%以上を得るためには、回折格子長の比率を65%以上にすると良いことが判かる。
【0022】
図4(b)に、上記同様の条件で、共振器長に対する回折格子長Lgを変化させた際の反射鏡損失αの変化をシミュレーションした結果を示す。反射鏡損失αは、スペクトル線幅を示す目安であり、理論的には、スペクトル線幅は反射鏡損失αが小さい程狭くなる。同図より、回折格子長の割合を95%以上とすることは、反射鏡損失αが極めて増大するため望ましくないと言える。なお、反射鏡損失αが小さいほど発振しきい値電流は下がるが、効率は減少する。
【0023】
上記により、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子において、高い単一モード歩留まりを得るために最適な回折格子長Lgは、共振器長の50%以上で、好適には65%以上で、且つ95%以下であると言える。なお、共振器内部で回折格子を形成する領域は、前端面寄りに限定する必要はなく、何れの位置であっても、上記の結果を得ることができる。
【0024】
以下に、添付図面を参照し、実施形態例を挙げて本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。
実施形態例1
図1は、本実施形態例のDFBレーザ素子の部分断面を示す斜視図であり、図2は、図1のI−I断面を示す断面図である。本実施形態例のDFBレーザ素子10は、共振器長が800μmで、発振波長を1550nmに設定したDFBレーザ素子であって、図1及び図2に示すように、膜厚350μm程度のn−InP基板11上に、n−InPバッファ層12、波長に換算したバンドギャップが1560nmのInGaAsPからなるMQW−SCH活性層13、p−InPスペーサ層14、InGaAsP回折格子15、回折格子15を埋め込んだp−InP埋め込み層16、及びp−InPクラッド層17の積層構造を有する。
【0025】
活性層の利得ピーク波長と発振波長との差は、デチューニング量と呼ばれ、DFBレーザ素子の特性を大きく左右するパラメータである。狭いスペクトル線幅を実現するためには、負のデチューニング量を採ることが有効であると考えられている。本実施形態例では、このデチューニング量として、MQW−SCH活性層13の利得ピーク波長と発振波長との差が−10nmとなるように設定した。
【0026】
InGaAsP回折格子15は、膜厚が20nm、周期が240nmであり、前端面24寄りで長さが550μmの領域に形成される。この長さは、共振器長の69%に相当する。デューティ比は約25%であり、且つ、InGaAsP回折格子15の後端部26の近傍で、連続的に小さくなるように形成される。InGaAsP回折格子15の結合係数κと、回折格子長Lgとの積である回折格子強度κLgは、1.0である。InGaAsP回折格子15の膜厚は、30nmとしてもよい。
【0027】
積層構造のうち、p−InPクラッド層17、p−InP埋め込み層16、InGaAsP回折格子15、p−InPスペーサ層14、MQW−SCH活性層13、及びn−InPバッファ層12の上部層は、MQW−SCH活性層13が約2μmの幅を有するように、メサストライプ状に加工されている。
メサストライプの両側は、p−InP層20及びn−InP層21の積層構造からなる電流ブロック層で埋め込まれている。
【0028】
p−InPクラッド層17及びその両側のn−InP層21上には、膜厚約2μmのp−InPクラッド層18及び高ドープInGaAsコンタクト層19が、順次に、積層されている。
高ドープInGaAsコンタクト層19上には、p側電極22としてTi/Pt/Au多層金属膜が、n−InP基板11の裏面にはn側電極23としてAuGeNi膜が、夫々設けてある。DFBレーザ素子10の前端面24には無反射コーティング膜(図示なし)が、後端面25には高反射コーティング膜(図示なし)が、夫々成膜されている。
【0029】
DFBレーザ素子10の作製に当っては、先ず、MOCVD装置を使って、成長温度600℃で、n−InP基板11上に、n−InPバッファ層12、波長に換算したバンドギャップが1560nmのInGaAsPからなるMQW−SCH活性層13、p−InPスペーサ層14、膜厚20nmのInGaAsP回折格子15の形成層を成長させた。
【0030】
次いで、InGaAsP回折格子15の形成層上に電子ビーム(EB)描画用レジストを約100nmの膜厚で塗布し、EB描画装置を使って、回折格子パターンを有するレジスト膜(図示なし)を形成した。
回折格子パターンは、前端面24寄りで長さが550μmの領域に、周期が約240nm、デューティ比が約25%で、InGaAsP回折格子15の後端部26に対応する回折格子パターン端部(図示なし)の近傍でデューティ比が連続的に小さくなるように形成した。また、回折格子強度κLgが、1.0になるように形成した。
【0031】
本実施形態例の上記作製方法では、EB描画装置を使用し、レジスト膜の上記回折格子パターン端部の近傍に照射する電子ビーム照射量を調節するだけで、上述のようにInGaAsP回折格子15の後端部26の近傍でデューティ比が連続的に小さくなるように形成することが可能である。
【0032】
続いて、ドライエッチング装置を使ってレジスト膜上からInGaAsP回折格子15の形成層を貫通するようにエッチングして、InGaAsP回折格子15を形成した。次いで、MOCVD装置を使って、p−InP埋め込み層16及びp−InPクラッド層17を成長させ、InGaAsP回折格子15の埋め込み再成長を行った。
【0033】
次に、プラズマCVD装置を用いて、基板全面にSiNx膜を成膜し、フォトリソグラフィ技術と反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法により、SiNx膜をエッチングして、回折格子15の周期方向に延びるストライプ状のSiNx膜マスク(図示せず)を形成した。
続いて、ストライプ状のSiNx膜マスクをエッチングマスクとして、p−InPクラッド層17、p−InP埋め込み層16、InGaAsP回折格子15、p−InPスペーサ層14、MQW−SCH活性層13、及びn−InPバッファ層12の上部をエッチングして、MQW−SCH活性層13が約2μmの幅を有するメサストライプ状に加工した。
【0034】
次いで、SiNx膜マスクを選択成長マスクとして使い、p−InP層20及びn−InP層21を、順次に、選択成長させて、メサストライプの両脇を埋め込み、電流ブロック層とした。SiNx膜マスクを除去した後、膜厚約2μmのp−InPクラッド層18及び高ドープInGaAs層19を、順次に、成長させた。
【0035】
次いで、高ドープInGaAsコンタクト層19上に、p側電極22としてTi/Pt/Au多層金属膜を設けた。また、基板厚が約350μmになるように、n−InP基板11の裏面を研磨し、研磨後の裏面に、n側電極23としてAuGeNi膜を設けた。更に、ウエハを前端面24及び後端面25で壁開し、各前端面24には無反射コーティング膜を、各後端面25には高反射コーティング膜を成膜し、次いで個々のレーザ素子に分割した後に、チップ化しボンディングした。
【0036】
本実施形態例のDFBレーザ素子10は、前述のように、InGaAsP回折格子15を形成する領域の長さを共振器長の69%とすることにより、共振器長が800μmの本実施形態例のDFBレーザ素子でも、高い単一モード歩留まりを得ることができた。
また、後端部26の近傍で、InGaAsP回折格子15のデューティ比が連続的に小さくなる構造を有することにより、後端部26の近傍における共振器内部の光電界強度の分布を平滑化し、高電流注入下でのホールバーニングを抑制し、高出力下でも狭いスペクトル線幅を実現することができた。なお、デューティ比が、連続的に小さくなる態様に代えて、段階的に小さくなるデューティ比を形成しても同様の効果が得られる。
【0037】
本実施形態例のDFBレーザ素子10の性能を評価するために、種々の測定を行った。MQW−SCH活性層13のバンドギャップ波長を揃えるため、測定には、基板中心附近で作製されたものを用いた。
単一モード歩留まりは87%で、十分高い値が得られたと評価できる。また、光出力60mW時のスペクトル強度比−3dBにおけるスペクトル線幅は0.6MHzで、標準偏差が0.02MHzであり、高出力下のスペクトル線幅として、十分狭い値が得られたと評価できる。
【0038】
比較例
実施形態例1のDFBレーザ素子10との比較を行うために、従来のDFBレーザ素子を試作した。
従来のDFBレーザ素子(図示なし)は、共振器長が800μmで、発振波長を1550nmに設定したDFBレーザ素子であって、実施形態例1のDFBレーザ素子10とは、以下の点を除いて同様の構成をしている。即ち、InGaAsP回折格子15が、前端面24寄りで長さが550μmの領域に形成される構成に代えて、前端面24寄りで長さが450μmの領域に形成される。この長さは、共振器長の56%に相当する。また、InGaAsP回折格子15のデューティ比が、InGaAsP回折格子15が形成される全ての領域で25%で、後端部26で不連続的に0になる。
【0039】
従来のDFBレーザ素子の製造にあたっては、実施形態例1の回折格子パターン(図示なし)を有するレジスト膜を形成する工程において、回折格子パターンを、長さが550μmに代えて、長さが450μmの領域に形成する。また、回折格子パターンのデューティ比を、InGaAsP回折格子15を形成する全ての領域で25%とし、後端部26に対応する回折格子パターン端部(図示なし)で不連続的に0になるように形成した。
【0040】
このような従来のDFBレーザ素子を試作し、実施形態例1と同様の測定を行ったところ、単一モード歩留まりが62%、光出力60mW時のスペクトル強度比−3dBにおけるスペクトル線幅は1.0MHzで、標準偏差が0.023MHzであった。測定には、MQW−SCH活性層(図示なし)のバンドギャップ波長を揃えるため、基板中心附近で作製されたものを用いた。
【0041】
上述の実施形態例1及び比較例の試験結果より、実施形態例1のDFBレーザ素子10は、従来のDFBレーザ素子と比較して、高い単一モード歩留まり、及び高出力下での狭いスペクトル線幅を実現するものと評価できる。
【0042】
実施形態例2
図3(a)に本実施形態例のDFBレーザ素子のInGaAsP回折格子の平面図を示し、図3(b)に製造途中の一工程段階における平面詳細図を示す。同図中で、図1及び図2に示すDFBレーザ素子10と同様の構成を有する部分については、同じ符号を付した。
DFBレーザ素子30は、共振器長が800μmで、発振波長を1550nmに設定したDFBレーザ素子であって、実施形態例1のDFBレーザ素子10とは、後端部26の近傍でInGaAsP回折格子15のデューティ比が連続的に小さくなる構成に代えて、図3(a)に示すように、後端部26の近傍でInGaAsP回折格子15の帯状片の長さが連続的に小さくなるように形成されることを除いて、同様の構成をしている。
【0043】
従って、本実施形態例のDFBレーザ素子30は、回折格子パターン28の後端部29の近傍で帯状片の長さが連続的に小さくなるように形成することを除いて、先の実施形態例のDFBレーザ素子10と同様の作製方法で作製することができる。
【0044】
本実施形態例のDFBレーザ素子30は、上述の構成を採ることにより、実施形態例1のDFBレーザ素子10と同様の効果が得られた。なお、InGaAsP回折格子15の後端部26の近傍における形状は、帯状片の長さが連続的に小さくなるものであれば、上記形状に限定されない。また、帯状片の長さが、連続的に小さくなる構成に代えて、段階的に小さくなるように形成しても同様の効果が得られる。
【0045】
本実施形態例の作製方法でも、EB描画装置を使用し、レジスト膜の上記回折格子パターン端部の近傍に照射する電子ビーム照射量を調節するだけで、上述のようにInGaAsP回折格子15の後端部26の近傍で帯状片の長さが連続的に小さくなるように形成することが可能である。
【0046】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明のDFBレーザ素子は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したDFBレーザ素子も、本発明の範囲に含まれる。
例えば、実施形態例で示した成膜方法、化合物半導体層の組成及び膜厚、メサ幅、プロセス条件等は、本発明の理解を容易にするための一つの例示であって、本発明はこの例示に限定されるものではない。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、回折格子が形成される領域の長さを共振器長の50%以上にすることによって、共振器長が500μm以上のDFBレーザ素子において、高い単一モード歩留まりを有するDFBレーザ素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施形態例1のDFBレーザ素子10の部分断面を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のI−I断面を示す断面図である。
【図3】(a)は実施形態例2のDFBレーザ素子のInGaAsP回折格子の平面図であり、(b)は製造途中の一工程段階における平面詳細図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態のシミュレーションに係る共振器長に対する回折格子長の比率と単一モード歩留まりとの関係を示すグラフであり、(b)は、本発明の実施の形態のシミュレーションに係る共振器長に対する回折格子長の比率と反射鏡損失αとの関係を示すグラフである。
【図5】(a)は、特開平11−68220号公報に記載の半導体レーザにおける、レーザ共振方向の内部光電界強度の分布を示すグラフであり、(b)は、本発明のDFBレーザ素子における、レーザ共振方向の内部光電界強度の分布を示すグラフである。
【図6】(a)は、従来の半導体レーザの構造を示す断面図であり、(b)は、本発明のDFBレーザ素子の構造を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
10 DFBレーザ素子
11 n−InP基板
12 n−InPバッファ層
13 MQW−SCH活性層
14 p−InPスペーサ層
15 InGaAsP回折格子層
16 InP埋め込み層
17 p−InPクラッド層
18 p−InPクラッド層
19 InGaAsコンタクト層
20 p−InP層
21 n−InP層
22 p側電極
23 n側電極
24 前端面(出射端面)
25 後端面
26 回折格子の後端部
27 回折格子の形成層
28 回折格子パターンが形成されたレジスト膜
29 回折格子パターンの後端部
30 実施形態例2のDFBレーザ素子
40 特開平11−68220号公報に記載の半導体レーザ
41 回折格子
42 高反射率端面
43 低反射率端面
44 活性層
45 光ガイド層
46 電極
Claims (8)
- 共振器と平行に形成された回折格子を有し、光出射端となる一方の端面に低反射率膜が、他方の端面に高反射率膜が夫々形成された、共振器長が500μm以上の分布帰還型半導体レーザ素子であって、
前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の50%以上であることを特徴とする分布帰還型半導体レーザ素子。 - 前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の65%以上である、請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
- 前記回折格子が形成される領域の長さが、共振器長の95%以下である、請求項1又は2に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
- 前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かって前記回折格子が順次に消失する、請求項1〜3に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
- 前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かってデューティ比が順次に小さくなる、請求項1〜4に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
- 前記他方の端面に近い側の回折格子の端部近傍では、該端部に向かって前記回折格子の幅が順次に小さくなる、請求項1〜4に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
- 前記回折格子の結合係数κと、前記回折格子が形成される領域の長さLgとの積κLgが、0.5以上1.5以下である、請求項1〜6に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
- 光出力60mW以上におけるスペクトル線幅が1MHz以下である、請求項1〜7に記載の分布帰還型半導体レーザ素子。
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