JP2004031058A - エキシマランプを使った発光装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】誘電体を介在させた放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された誘電体を介在させた放電ランプと、この誘電体を介在させた放電ランプに交流の高電圧を印加する給電装置からなり、前記給電装置は、一次巻線と二次巻線からなるトランスと、この一次巻線に接続されたスイッチングインバータ部と、前記トランスの二次巻線に接続された共振用コイルと共振用コンデンサと可飽和リアクトルを有し、前記可飽和リアクトルは、前記誘電体を介在させた放電ランプの放電開始時においては共振現象を生じるためのインダクタンス成分を有するとともに、放電終了時においては飽和状態となることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、光化学反応用の紫外線光源として使用される放電ランプの一種で、誘電体を介在させた放電によってエキシマ分子を形成し、前記エキシマ分子から放射される光を利用するいわゆるエキシマランプを含む光源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エキシマランプについては、例えば、特開平2ー7353号があり、そこには、放電容器にエキシマ分子を形成する放電用ガスを充填し、誘電体を介在させた放電(別名オゾナイザ放電あるいは無声放電。電気学会発行改定新版「放電ハンドブック」平成1年6月再販7刷発行第263ページ参照)によってエキシマ分子を形成せしめ、該エキシマ分子から放射される光を取り出す放射器が記載されている。
【0003】
また、エキシマランプを含む光源装置については、例えば、特開平4ー230951号があり、そこには、高電圧トランスを使用せずに、いわゆるLC共振によって高電圧を発生する構成について述べられている。
【0004】
上記のようなエキシマランプおよびこれを含む光源装置は、従来の低圧水銀放電ランプや高圧アーク放電ランプには無い種々の特長を有しているため応用の可能性が多岐にわたっている。とりわけ、近来の環境汚染問題への関心の高まりのなかで、紫外線による光化学反応を応用した無公害の材料処理は、その最も重要な応用のひとつであり、従って、エキシマランプを使った光源装置に対する高出力化、高効率化、高安定化、および複数ランプの並列点灯による大規模化の能力に対する要求には非常に強いものがある。しかし、従来の技術においては、これらの要求に十分応えることができなかった。
【0005】
図3を用いてエキシマランプを点灯する発光装置にについて説明する。
エキシマランプ10は、放電空間11を囲む放電容器12とその外面に電極13a、13bから構成される。このエキシマランプ10は、直流電源部20、スイッチングインバータ21、トランス23、コイル24、コンデンサ25を介して接続される。
エキシマランプ10は、一方の電極13aから放電プラズマを経て他方の電極13bに達する放電路の間に、放電容器12を形成する誘電体すなわち絶縁体が介在する。この誘電体がコンデンサの働きをすることによって電流が流れることになる。
放電中の放電プラズマを近似的に純抵抗と見なせば、エキシマランプは、コンデンサと抵抗とを直列に接続したものと等価であると言え、力率が悪いという欠点がある。
【0006】
一般的に、このような容量性負荷に電力を供給する場合、力率を改善する方法として、負荷に直列にコイルを挿入してLC共振回路を構成する方法が知られている。
さらに、共振現象による電圧の増大作用によって、給電装置の内部電源電圧を下げることもでき、共振用コンデンサを負荷に並列に接続することで共振をより強化することもできる。
【0007】
しかし、このような共振現象を利用した回路によって、所望の動作を得るには、負荷容量と共振用コンデンサの容量、コイルのインダクタンス、負荷抵抗の値により計算される共振周波数に対して、正確に一致した周波数で、回路を駆動しなければならない。この条件が満足された場合のみ、理論的な力率が100%となる回路駆動が可能となる。
【0008】
ところが、エキシマランプの場合は、放電が開始される前の状態における放電路の抵抗は、ほとんど無限大であるが、印加電圧を上げて放電を開始させると、放電路の抵抗は瞬間的に有限の値となり、さらに印加電圧の上昇にともない小さくなってゆく。
すなわち、エキシマランプの静電容量が、最初、非常に小さい値であったものが、放電開始時点で不連続的に大きくなり、印加電圧の上昇とともにさらに大きくなってゆくことになる。
このことは、エキシマランプの放電状態によって、回路の共振周波数が不連続的または連続的に低下してしまうことを意味しており、前述のようなLC共振回路において効果的な共振周波数での駆動と高い力率を得ることが困難になってしまう。
【0009】
上記内容は、エキシマランプに対して、1パルスの交流電圧を供給した場合の放電開始前と放電開始後の放電路抵抗の違いに基づき最適共振周波数の変化を問題とするものである。
しかし、エキシマランプを長時間、例えば15時間点灯させた場合に、ランプ内のガス圧力やガス温度などのランプ特性が変化することによっても同様の問題を生じる。この場合は、エキシマランプの点灯経過時間によって最適共振周波数が異なることを意味している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明が解決しようとする課題は、放電開始時と放電終了時において、ともに共振周波数に対応させた駆動周波数でスイッチング制御することができるエキシマランプの発光装置を提案することである。また、点灯開始時と長時間点灯後もともに共振周波数に対応させた駆動周波数でスイッチング制御することができるエキシマランプの発光装置を提案することである
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明のエキシマランプを使った発光装置は、誘電体を介在させた放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填された誘電体を介在させた放電ランプと、この誘電体を介在させた放電ランプに交流の高電圧を印加する給電装置からなり、前記給電装置は、一次巻線と二次巻線からなるトランスと、この一次巻線に接続されたスイッチングインバータ部と、前記トランスの二次巻線に接続された共振用コイルと共振用コンデンサと可飽和リアクトルを有し、前記可飽和リアクトルは、前記誘電体を介在させた放電ランプの放電開始時においては共振現象を生じるためのインダクタンス成分を有するとともに、放電終了時においては飽和状態となることを特徴とする。
さらには、点灯時間に経過によるランプ特性に変化に応じて、最適共振周波数にするため、可飽和リアクトルを他励式に制御するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の発光装置の実施例を示すものである。
エキシマランプ10は、前記のように直流電源部20、インバータ部21、トランス23、共振用コイル24、共振用コンデンサ25、さらに可飽和インダクタンス26を介して接続される。
直流電源部20は、商用電力ラインを直流電源に変換するこのであって、例えば、ダイオードによる整流回路、サイリスターによる導通角制御による回路、昇圧、降圧チョッパー回路等により構成される。
インバータ部21は、直流電源部20からの電流を正逆に切り替えて流すためのスイッチングインバータであり、例えば、4個の電界効果トランジスター(MOSFET)を使用した、いわゆるフルブリッジ回路が採用される。そして、このインバータ部21からパルス電圧が出力される。
昇圧トランス23は、1次巻線23a、2次巻線23b、さらに3次巻線23cより構成され、2次巻線23bには、直列共振用コイル24、可飽和インダクタンス26、共振用コンデンサ25、エキシマランプ10によりLC共振回路が接続される。
【0013】
昇圧トランス23の3次巻線23cでは、エキシマランプ10のランプ電圧が検出されて、波形整形器30を介して位相比較回路31に送信される。また、昇圧トランス23の一次巻線23aに接続されたカレントトランス27では、エキシマランプ10のランプ電流が検出され、同様に位相比較回路31に送信される。この位相比較回路31は、例えば、PLLからなり、電圧位相と電流位相の差を検出することができる。この位相差は正負のパルス信号として取り出される。
【0014】
この位相差パルス信号は、ローパスフィルター32に入力されて平滑され、さらに、ローパスフィルター32の出力信号は、その大小に対応して発振周波数の高低が変化する周波数可変発振器33に入力される。そして、周波数可変発振器33の出力信号は、スイッチング素子駆動回路34に入力される。そして、スイッチング駆動回路34により、スイッチングインバータ部21内に存在するスイッチング素子が交互動作する。
【0015】
このような制御機構により、エキシマランプへの電圧位相と電流位相との位相差がゼロになるよう制御され、常に特定の共振周波数をエキシマランプ10に供給することができる。しかしながら、前記のように、エキシマランプの最適周波数は、放電開始前後によって変化する。そして、可飽和インダクタンス26は、この最適周波数の変化による影響を解消するために機能する。
【0016】
可飽和インダクタンス26は、昇圧トランス23の2次巻線23bに直列に接続されている。そして、エキシマランプ10の放電期間に発生する容量分の増加を吸収するように飽和することができ、この飽和によって、LC共振回路の共振周波数は自動的(自励式)に変化することができる。
【0017】
可飽和インダクタンス26について、具体例を説明すると、可飽和インダクタンスは通常のインダクタンスと直列に接続され、インダクタンスの割合が、例えば10:1になる様に調整される。そして、外部に対する漏洩磁束を極力少なくするために、リング状の鉄心に直接巻くトロイダル巻き線を採用される。
【0018】
コア材としては、例えば、酸化鉄と二価金属化合物が合成されたフェライト磁性材(Mn−Zn)を使用し、又ヒステリシス損を抑えるために保磁力(Hc)のある程度小さくかつ磁気飽和を制御に適した角型磁化曲線のものを使用した。これにより、エキシマランプの放電開始電圧に到達する直前に可飽和リアクトルが飽和する様に、断面積が0.8cm2、比磁気特性値(AL値)が6000nHであるリング状鉄心を5個並列使用した。
【0019】
ここで、図1に示す回路に対して、数値例を示すと、共振周波数は100kHz、直列共振用コイル24のインダクタンスは4.2mH、共振用コンデンサー25のキャパシタンスは600pF、可飽和インダクタンス26のインダクタンスは42mHである。
エキシマランプ10は、厚さ1mmの石英ガラス製放電容器であって、放電ギャップ4mmであり、放電空間には、キセノンガスが約40000Paの圧力で満たされた、断面積200平方センチ、点灯時の静電容量が200pFのエキシマランプ10を3本並列点灯させるものである。
このような回路構成とエキシマランプによって、前記した可飽和インダクタンス26の特性により、共振周波数を誘電体を介する放電の前後で変動させることができ、かつ、トランスの発熱を抑制することが可能となった。
【0020】
図2は本発明の第2実施例を示す。すなわち、エキシマランプの長時間点灯に基づく最適共振周波数の変化を問題とするものである。図1と同一番号は同一部分を示し、昇圧トランス23の2次巻線に発生する電圧位相と電流位相の差を検出して、周波数可変発振器33、スイッチング素子駆動回路34を介して制御する点も同じである。
【0021】
この実施例では、昇圧トランス23の2次巻線23bに直列に接続されている可飽和インダクタンス26の磁束を制御する手段を有しており、この手段によって、積極的に負荷特性、例えばQ値・共振周波数を制御することができる。すなわち、エキシマランプに供給する1パルスの交流電圧における最適共振周波数の変化については、上記のように、可飽和インダクタン26を配置させることで、自身の性能によって自励的に変化させることができる。そして、可飽和インダクタンス26の磁束を制御する手段を用いることでエキシマランプの経時変化に対応させたインダクタンスの性能に微調整ができるものである。
【0022】
ランプ電流検出回路40は、エキシマランプ10に流れる電流を電圧に変換しランプ電流と同相信号を取得するものであって、カレントトランス、もしくはシャント抵抗により構成される。
ランプ電圧検出回路41は、エキシマランプのランプ電圧を測定するものであるが、具体的には、直列共振用コイル24の両端に発生する電位の電位検出回路42、可飽和インダクタンスの両端に発生する電位の可飽和インダクタンス電位検出回路43、昇圧トランス23の2次電圧を検出する波形整形器30からの信号を合算させて検出、測定する。
【0023】
放電ランプ演算回路44は、ランプ電圧検出回路41とランプ電流検出回路40により取得した信号を掛け算器により皮相電力を算出する回路である。インダクタンス制御回路43´は、前記取得した、放電ランプ演算回路44により出力される信号により可飽和インダクタンス26の磁束量を制御する増幅器から構成される。
【0024】
このように可飽和インダクタンス26を制御することで、エキシマランプ10の特性変動を抑制させるよう動作させる。電力検出回路45は、前記放電ランプ演算回路44の出力信号を積分することにより、瞬時に実効電力を出力する回路で、前記周波数可変発振器33のパルス発生時のオフタイムの長さを制御して定電力動作を実現する。また、平均電力の制御精度を向上するために、直流電源部20の出力電圧を制御する、直流電圧制御回路46を付加させた。
【0025】
以上のように、可飽和インダクタンス26を積極的に制御することにより、エキシマランプ10の負荷変動による、昇圧トランス磁束の歪による発熱、直列共振のQ値の減少によるエキシマランプ10の立ち消え等の異常放電を抑制する効果、ならびにエキシマランプ10の電流のスルーレートを上昇させる事も可能であるので、発光効率の増加も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエキシマランプ発光装置を示す。
【図2】本発明のエキシマランプ発光装置を示す。
【図3】従来のエキシマランプ発光装置を示す。
【符号の説明】
10 エキシマランプ
11 放電空間
12 放電容器
20 直流電源部
21 スイッチングインバータ
23 トランス
24 コイル
25 コンデンサ
Claims (2)
- 誘電体を介在させた放電によってエキシマ分子を生成する放電用ガスが充填されたエキシマランプと、このエキシマランプに交流の高電圧を印加する給電装置からなる発光装置において、
前記給電装置は、一次巻線と二次巻線からなるトランスと、この一次巻線に接続されたスイッチングインバータ部と、前記トランスの二次巻線に接続された共振用コイルと共振用コンデンサと可飽和リアクトルを有し、
前記可飽和リアクトルは、前記誘電体を介在させた放電ランプの放電開始時においては共振現象を生じるためのインダクタンス成分を有するとともに、放電終了時においては飽和状態となることを特徴とするエキシマランプを使った発光装置。 - 前記可飽和リアクトルは、前記エキシマランプの点灯状態を検知する手段と、この検知手段から可飽和状態への切換手段によって制御される他励式である請求項2のエキシマランプを使った発光装置。
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