しかしながら、長尺の冷陰極管を有する回路に、高圧側に電流を検出する回路を設けて入力側にフィードバックさせるのは設計上煩雑である。したがって、冷陰極管を流れる電流を直接検出する回路は、設けられていないことが多い。このような場合には、図11に示すインバータ回路101のように、検出用抵抗106、整流回路107、および差動回路108により冷陰極管105を流れる電流を直接検出し、出力電流を制御することができない。
本発明は、出力電流を直接検出することなく、出力電流を制御することのできる圧電トランス制御回路を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電トランス制御回路は、発振信号を発振する発振回路と、前記発振信号を受けて交流の入力電圧を印加する駆動回路と、印加される前記入力電圧を変圧して出力する圧電トランスと、前記圧電トランスの入力電流を検出信号として検出する入力電流検出回路と、前記入力電圧に同期させて、前記検出信号の位相成分を抽出する位相成分抽出回路と、前記検波信号の位相成分を時間について積分する積分回路と、前記積分回路が得た積分値と所定の基準値との差に応じた差動信号を生成する差動回路と、を備え、前記発振回路は、前記差動信号を受けて、前記積分値が前記所定の基準値に近づくように前記発振信号を制御することを特徴としている。
このように、本発明の圧電トランス制御回路は、圧電トランスへの入力電流を検出し、その位相成分の積分値を基準値に近づける制御を行なっている。すなわち、負荷に流れる出力電流に対応する入力電流の実効値に相当する値を検出し、その値を一定に制御している。その結果、出力側に出力電流を検出する回路がなく、直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。また、本発明の圧電トランス制御回路は、圧電トランスにより昇圧または降圧を行なう。したがって、巻線トランスに比べて、回路のサイズをコンパクトにすることができ、液晶パネル等の小型化や軽量化が必要な回路に用い易い。
(2)また、本発明の圧電トランス制御回路において、前記圧電トランスは、2つの圧電トランスで構成され、前記2つの圧電トランスの入力部は並列に接続され、かつ前記2つの圧電トランスの2つの出力端子の間に負荷が接続され、前記2つの出力端子から互いに逆位相の電圧を出力することを特徴としている。
このように、本発明の圧電トランス制御回路は、2つの圧電トランスの入力部を並列接続し、2つの出力端子の間に接続された負荷に2つの出力端子から互いに逆位相の電圧を出力する構成をとっている。これにより、負荷としての冷陰極管の輝度が傾斜する現象を抑制し、反射板や筐体への寄生容量による損失を低減するとともに冷陰極管に高電圧を印加することができる。したがって、本発明の圧電トランス制御回路は、長尺の冷陰極管が使用される回路に用いるのに適している。また、出力端子に低圧側がなく直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。
(3)また、本発明の圧電トランス制御回路において、中央に前記入力電圧が印加される入力部を有し、両端に2つの出力部を有し、前記2つの出力部からは、逆位相の電圧を出力する中央駆動型の圧電トランスであることを特徴としている。
このように、本発明の圧電トランス制御回路は、中央駆動型の圧電トランスを備え、出力部に接続される負荷に互いに逆位相の電圧を印加する構成をとっている。これにより、反射板や筐体への寄生容量による損失を低減しつつ負荷に高電圧を印加することができる。したがって、本発明の圧電トランス制御回路は、長尺の冷陰極管が使用される回路に用いるのに適している。また、出力端子に低圧側がなく直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。また、圧電トランスが1つあれば回路を構成できるため、小型化や軽量化を図ることができる。
(4)また、本発明の圧電トランス制御回路において、前記位相成分抽出回路は、前記発振信号の位相を調整して同期信号を得る移相回路と、前記検出信号を、前記同期信号により同期検波する同期検波回路と、を備えることを特徴としている。
このように、本発明の圧電トランス制御回路は、移相回路により入力電圧の位相と同じ同期信号により同期検波を行なうため、発振信号と入力電圧との間に位相のずれがある場合でも同期検波が可能になる。その結果、検出信号の位相成分を抽出することができ、出力電流を一定に制御することができる。
(5)また、本発明の圧電トランス制御回路において、前記発振回路は、前記差動信号に応じて前記積分値が所定の基準値に近づくように、前記発振信号のデューティー比を調整することを特徴としている。
このように、本発明の圧電トランス制御回路は、デューティー比を調整することにより、出力電流を制御している。たとえば液晶テレビに用いられるような多灯式の回路では、すべての冷陰極管について発振信号の周波数を一定にする必要があるが、このような場合でも出力電流を制御することができる。
(6)また、本発明の圧電トランス制御回路において、前記駆動回路は、電源電圧またはグランドに接続されるスイッチング素子により、プッシュプル回路、またはフルブリッジ回路を構成することを特徴としている。
このように、本発明の圧電トランス制御回路では、駆動回路が、プッシュプル回路、またはフルブリッジ回路の構成をとっているため、圧電トランスの昇圧比を向上させ、効率を上げることができる。
(7)また、本発明の圧電トランス制御回路において、電源電圧またはグランドに接続されるスイッチング素子により、プッシュプル回路、ハーフブリッジ回路またはフルブリッジ回路を構成し、前記入力電流検出回路は、前記圧電トランスの入力電流のうち、前記スイッチング素子のいずれか一つを流れる電流を検出信号として検出することを特徴としている。
これにより、差動アンプ等を使用しなくても、出力電流に対応する値を検出することができる。その結果、回路にプラスとマイナスの両電源を設ける必要がなくなり、簡易な検出が可能となる。また、検出による電力の損失を減少させることができる。
本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、圧電トランスへの入力電流を検出し、その位相成分の積分値を基準値に近づける制御を行なっている。すなわち、負荷に流れる出力電流に対応する入力電流の実効値に相当する値を検出し、その値を一定に制御している。その結果、出力側に出力電流を検出する回路がなく、直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。また、圧電トランスにより昇圧または降圧を行なうため、巻線トランスに比べて、回路のサイズをコンパクトにすることができ、液晶パネル等の小型化や軽量化が必要な回路に用い易い。
また、本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、2つの圧電トランスの入力部を並列接続し、2つの出力端子の間に接続された負荷に2つの出力端子から互いに逆位相の電圧を出力する構成をとっている。これにより、負荷としての冷陰極管の輝度が傾斜する現象を抑制し、反射板や筐体への寄生容量による損失を低減するとともに冷陰極管に高電圧を印加することができる。したがって、本発明の圧電トランス制御回路は、長尺の冷陰極管が使用される回路に用いるのに適している。また、出力端子に低圧側がなく直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。
また、本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、中央駆動型の圧電トランスを備え、出力部に接続される負荷に互いに逆位相の電圧を印加する構成をとっている。これにより、反射板や筐体への寄生容量による損失を低減しつつ負荷に高電圧を印加することができる。したがって、本発明の圧電トランス制御回路は、長尺の冷陰極管が使用される回路に用いるのに適している。また、出力端子に低圧側がなく直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。また、圧電トランスが1つあれば回路を構成できるため、小型化や軽量化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、移相回路により入力電圧の位相と同じ同期信号により同期検波を行なうため、発振信号と入力電圧との間に位相のずれがある場合でも同期検波が可能になる。その結果、検出信号の位相成分を抽出することができ、出力電流を一定に制御することができる。
また、本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、デューティー比を調整することにより、出力電流を制御している。たとえば液晶テレビに用いられるような多灯式の回路では、すべての冷陰極管について発振信号の周波数を一定にする必要があるが、このような場合でも出力電流を制御することができる。
また、本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、駆動回路が、プッシュプル回路、またはフルブリッジ回路の構成をとっているため、圧電トランスの昇圧比を向上させ、効率を上げることができる。
また、本発明に係る圧電トランス制御回路によれば、差動アンプ等を使用しなくても、出力電流に対応する値を検出することができる。その結果、回路にプラスとマイナスの両電源を設ける必要がなくなり、簡易な検出が可能となる。また、検出による電力の損失を減少させることができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態に関し、図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、圧電トランス制御回路1のブロック図である。図1に示すように、圧電トランス制御回路1は、発振回路2、駆動回路3、圧電トランス4、冷陰極管8、検出用抵抗9、移相回路10、同期検波回路12、積分回路13および差動回路14から構成されている。
発振回路2は、発振信号を発振する。発振信号は、一定の周波数およびデューティー比を有する矩形波であり、その周波数およびデューティー比は差動回路14から受けた信号により制御される。また、差動回路14と接続する端子により制御の対象を周波数にするか、デューティー比にするかは選択可能である。発振回路2としては、一般的な電圧制御発振回路を用いることができる。たとえば、発振回路2は、差動回路14から受けた信号の電圧が所定値より大きい場合には、発振回路2は発振信号の周波数を小さくし、差動回路14から受けた信号の電圧が所定値より小さい場合には、発振回路2は発振信号の周波数を大きくする機能を有する。ただし、電圧の大小と周波数の増減について逆に機能する電圧制御発振回路であってもよい。ただし、その場合には、その他の回路の設定を調整する必要がある。
駆動回路3は、発振回路2の発振信号を受けて交流電圧を生成し、圧電トランス4の入力部に印加する。たとえば、駆動回路3は、電源電圧またはグランドと接続したスイッチング素子によりフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路またはプッシュプル回路として構成される。各スイッチング素子は、MOSFETにより構成されている。
圧電トランス4は、厚み方向に分極された入力部および長手方向に分極された出力部を備えており、駆動回路3は、入力部を挟んで設けられた入力端子の一方に接続されている。圧電トランス4は、入力電圧の昇圧または降圧を行なう。圧電トランス4を用いることで、巻線トランスに比べて、回路のサイズをコンパクトにすることができ、液晶パネル等の小型化や軽量化が必要な回路に採用しやすい。
長手方向の端面に設けられた出力端子は、冷陰極管8に接続されている。圧電トランス4は、一般的なローゼン型の圧電トランスであり、圧電体の振動により入力電圧を昇圧して出力する機能を有している。単層の素子を用いてもよいが、昇圧比を大きくするために積層の圧電素子を用いてもよい。なお、圧電トランス4の入力部および出力部の分極の向きはどちらであってもよい。
冷陰極管8は、圧電トランス4の出力端子に接続され、高圧の電圧が出力されることにより点灯する。冷陰極管8は、たとえば、液晶パネルのバックライトに用いられる。冷陰極管8には、図1に示すようなU字形状の他に直線的な形状など様々な形状が存在する。圧電トランス制御回路1では、冷陰極管8の一方の端子は圧電トランス4に接続され高圧の電圧が印加されるが、他方の端子は低圧に保持されている。
検出用抵抗9は、圧電トランス4の入力電流を電圧として検出するための抵抗であり、入力電流検出回路を構成する。このように、抵抗を用いることにより簡易に電流検出回路を構成することができる。入力電流検出回路は、得られた電圧を検出信号として、同期検波回路12に伝える。なお、検出用抵抗9に代えて、カレントトランスを用いても良く、また、チョークコイルに巻線を追加することで、カレントトランスの機能を持たせ、電流を検出しても良い。この場合やカレントトランスを用いた場合には、電力の損失を低減することができる。
移相回路10は、発振回路2に接続され、発振信号の位相を調整し同期信号を生成する。移相回路10は、同期信号の位相をシフトさせて入力電圧の位相に合わせる。シフトさせる位相の量は、あらかじめ設定することが可能である。このように、圧電トランス制御回路1は、移相回路10により入力電圧に同期させて同期検波を行なうため、発振信号と入力電圧との間に位相のずれがある場合でも同期検波が可能になる。その結果、検出信号の位相成分を抽出することができ、出力電流を一定に制御することができる。発振信号と入力電圧との位相差がない場合には、移相回路10は、位相をシフトすることなく発振信号を同期信号として同期検波回路12に伝える。
同期検波回路12は、同期信号により検出信号を同期検波し、検出信号の位相成分を抽出する。たとえば、一方のスイッチング素子のON/OFFを制御する発振信号を同期信号として検出信号に掛け合わせることにより、同期検波を行なう。同期検波回路12は、検出信号の位相成分を積分回路13に伝える。なお、移相回路10および同期検波回路12は、検出信号の位相成分を抽出する位相成分抽出回路を構成する。積分回路13は、同期検波後の位相成分を一定時間について積分し、一定時間当たりの積分値を算出する。得られた積分値は入力電流の実効値に比例する。
差動回路14は、得られた積分値と基準電圧Vrefとの差に応じた差動信号を生成する。差動回路14は、たとえば誤差アンプにより構成される。差動回路14は、発振回路2に接続され、発振回路2に差動信号を伝える。発振回路2は、差動信号を受けて発振信号の周波数またはデューティー比を制御する。
このように、圧電トランス制御回路1は、圧電トランス4への入力電流を検出し、その位相成分の積分値を基準値に近づけている。すなわち、負荷に流れる出力電流に対応する入力電流の実効値に相当する値を一定にする制御をしている。その結果、出力側に出力電流を検出する回路がなく、直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。
次に、以上のように構成された圧電トランス制御回路1の動作について説明する。まず、発振回路2は発振信号を発振し、駆動回路3は発振信号に従い交流電圧を圧電トランス4の入力端子に印加する。圧電トランス4は、交流電圧により駆動され、出力端子には高圧の交流電圧が発生する。このようにして、圧電トランス4の出力側に接続された冷陰極管8は、点灯する。
一方、検出用抵抗9は、圧電トランス4の入力電流を電圧として検出し、同期検波回路12はその検出信号を受ける。移相回路10は、発振回路2の発振する発振信号から入力電圧の位相に同期した同期信号を生成する。そして、同期検波回路12はこの同期信号により検出信号を同期検波する。
次に、積分回路13は、同期検波により検出信号から抽出された位相成分を一定時間について積分し、積分値を得る。差動回路14は、生成された実効値と基準値Vrefを比較し、両者の差に応じた信号を発振回路2にフィードバックする。なお、基準値Vrefは、既定の電圧値であり、あらかじめ望ましい出力電流の電流値に対応する基準値として設定されている。
使用する周波数領域により、圧電トランス制御回路1の動作は異なる。発振信号の周波数の増加に対して、出力電流が減少する周波数帯域で圧電トランス制御回路1を動作させる場合は以下のように圧電トランス制御回路1は動作する。あらかじめ、検出値の位相成分の積分値を基準値に近づけるように設定されているものとする。出力電流が安定させたい電流値のとき、上記の積分値は基準値であるとする。出力電流が安定させたい電流値より大きい場合には、上記の積分値は基準値より大きくなる。このとき、差動回路14は電圧の小さい差動信号を伝える。発振回路2は差動信号を受けて、周波数を大きくする。発振信号の周波数が大きくなると、上記の特性により、出力電流は減少し、安定させたい電流値に近づく。
一方、出力電流が安定させたい電流値より小さい場合には、上記の実効値は基準値より小さくなる。このとき、差動回路14は大きい差動信号を伝える。発振回路2は差動信号を受けて、周波数を小さくする。発振信号の周波数が小さくなると、上記の特性により、出力電流が増加する。このような動作により、出力電流は安定させたい電流値に近づく。
(実施形態2)
上記の圧電トランス制御回路1では、トランスは圧電トランス4のみであるが、圧電トランスを2つ備える回路としてもよい。図2は、圧電トランス制御回路21のブロック図である。図2に示すように、圧電トランス制御回路21は、発振回路22、駆動回路23、圧電トランス24および25、冷陰極管28、検出用抵抗29、移相回路30、同期検波回路32、積分回路33および差動回路34から構成されている。
発振回路22は、発振信号を発振する。発振信号は、一定の周波数およびデューティー比を有する矩形波であり、その周波数およびデューティー比は差動回路34から受けた信号により制御される。
駆動回路23は、発振回路2の発振信号を受けて交流電圧を生成し、圧電トランス24および25の入力部に印加する。たとえば、駆動回路23は、電源電圧またはグランドと接続したスイッチング素子によりフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路またはプッシュプル回路として構成される。
圧電トランス24および圧電トランス25は、それぞれローゼン型の圧電トランスであり、入力部が並列接続され、出力部には冷陰極管28が直列接続されている。図2に示す破線の矢印は、圧電体の分極の向きを示している。図2に示すように、圧電トランス24の出力部は、出力端子向きに分極されているが、圧電トランス25の出力部は入力端子側に向かって分極されている。したがって、冷陰極管28の両端子には、逆位相の電圧が印加される。
このように、圧電トランス制御回路21は、2つの圧電トランス24および25の入力端子を並列接続、2つの出力端子の間に接続された負荷に2つの出力端子から互いに逆位相の電圧を出力する。これにより、冷陰極管28の輝度が傾斜する現象を抑制し、反射板や筐体への寄生容量による損失を低減するとともに冷陰極管28に高電圧を印加することができる。特に、冷陰極管28が長尺である回路に用いるには適している。また、出力端子に低圧側がなく直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。圧電トランス24および圧電トランス25には、単層の素子を用いてもよいが、昇圧比を大きくするために積層の圧電素子を用いてもよい。
冷陰極管28は、両端の端子が圧電トランス24および25のそれぞれ出力端子に接続され、それぞれに逆位相の電圧が出力されることにより点灯する。冷陰極管28には、図1に示すようなU字形状の他に直線的な形状など様々な形状が存在する。検出用抵抗29は、圧電トランス24および25の入力電流を電圧として検出するための抵抗であり、入力電流検出回路を構成する。入力電流検出回路は、得られた電圧を検出信号として、同期検波回路32に伝える。
移相回路30は、発振回路22に接続され、発振信号の位相を調整し同期信号を生成する機能を有している。移相回路30は、同期信号の位相をシフトさせて入力電圧の位相に合わせる。シフトさせる位相の量は、あらかじめ設定することが可能である。発振信号と入力電圧との位相差がない場合には、移相回路30は、位相をシフトすることなく発振信号を同期信号として同期検波回路32に伝える。
同期検波回路32は、同期信号により検出信号を同期検波し、検出信号の位相成分を抽出する。たとえば、一方のスイッチング素子のON/OFFを制御する発振信号を同期信号として検出信号に掛け合わせることにより、同期検波を行なう。同期検波回路32は、検出信号の位相成分を積分回路33に伝える。積分回路33は、同期検波後の位相成分を一定時間について積分し、一定時間当たりの積分値を算出する。得られた積分値は入力電流の実効値に比例する。差動回路34は、得られた積分値と基準電圧Vrefとの差に応じた差動信号を生成する。差動回路34は、発振回路22に接続され、発振回路22に差動信号を伝える。
以上のように構成された圧電トランス制御回路21の動作は、圧電トランス制御回路1の場合とほぼ同一である。ただし、圧電トランス制御回路1とは異なり、圧電トランス制御回路21では、並列接続された2つの圧電トランスにより冷陰極管28は両端子に逆位相の高電圧が印加される。
(実施形態3)
上記の圧電トランス制御回路1では、圧電トランス4は1つの出力部を有しているが、2つの出力部を有する圧電トランスを備える回路としてもよい。図3は、圧電トランス制御回路41のブロック図である。図3に示すように、圧電トランス制御回路41は、発振回路42、駆動回路43、圧電トランス44、冷陰極管48、検出用抵抗49、移相回路50、同期検波回路52、積分回路53および差動回路54から構成されている。
発振回路42は、発振信号を発振する。発振信号は、一定の周波数およびデューティー比を有する矩形波であり、その周波数およびデューティー比は差動回路54から受けた信号により制御される。
駆動回路43は、発振回路42の発振信号を受けて交流電圧を生成し、圧電トランス44の入力部に印加する。たとえば、駆動回路43は、電源電圧またはグランドと接続したスイッチング素子によりフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路またはプッシュプル回路として構成される。
圧電トランス44は、中央駆動型の圧電トランスである。中央部分は入力部であり、厚み方向に分極され、入力端子が設けられている。入力部の両側は出力部であり、長手方向に分極されている。圧電トランス44の両出力部の分極の向きは、同じ向きである。すなわち、一方の出力部の分極の向きは、中央から端部に向かう向きであり、他方の出力部の分極の向きは、端部から中央に向かう向きである。適当なモードにより圧電トランス44を駆動させることにより冷陰極管48の両端には、逆位相の電圧が印加される。
このように、圧電トランス制御回路41は、中央駆動型の圧電トランス44を備え、出力部に接続される負荷に互いに逆位相の電圧を印加する構成をとっている。これにより、反射板や筐体への寄生容量による損失を低減しつつ負荷に高電圧を印加することができる。特に、冷陰極管48が長尺である回路に用いるのに適している。また、出力端子に低圧側がなく直接に出力電流を検出することができない回路においても、出力電流を一定に制御することができる。また、トランスとして圧電トランス44が1つあれば回路を構成できるため、小型化や軽量化を図ることができる。
冷陰極管48は、両端の端子が圧電トランス44の両方の出力端子に直列接続され、それぞれに逆位相の電圧が出力されることにより点灯する。冷陰極管48には、図1に示すようなU字形状の他に直線的な形状など様々な形状が存在する。検出用抵抗49は、圧電トランス44の入力電流を電圧として検出するための抵抗であり、入力電流検出回路を構成する。入力電流検出回路は、得られた電圧を検出信号として、同期検波回路52に伝える。
移相回路50は、発振回路42に接続され、発振信号の位相を調整し同期信号を生成する機能を有している。移相回路50は、同期信号の位相をシフトさせて入力電圧の位相に合わせる。シフトさせる位相の量は、あらかじめ設定することが可能である。発振信号と入力電圧との位相差がない場合には、移相回路50は、位相をシフトすることなく発振信号を同期信号として同期検波回路52に伝える。
同期検波回路52は、同期信号により検出信号を同期検波し、検出信号の位相成分を抽出する。たとえば、一方のスイッチング素子のON/OFFを制御する発振信号を同期信号として検出信号に掛け合わせることにより、同期検波を行なう。同期検波回路52は、検出信号の位相成分を積分回路53に伝える。積分回路53は、同期検波後の位相成分を一定時間について積分し、一定時間当たりの積分値を算出する。得られた積分値は入力電流の実効値に比例する。差動回路54は、得られた積分値と基準電圧Vrefとの差に応じた差動信号を生成する。差動回路54は、発振回路42に接続され、発振回路42に差動信号を伝える。
以上のように構成された圧電トランス制御回路41の動作は、圧電トランス制御回路1の場合とほぼ同一である。ただし、圧電トランス制御回路1とは異なり、圧電トランス制御回路41では、中央駆動型の圧電トランス44により冷陰極管48は両端子に逆位相の高電圧が印加される。
(実施形態4)
次に、圧電トランス制御回路41の具体的構成の例として圧電トランス制御回路61を以下に説明する。図4は、圧電トランス制御回路61のブロック図である。図4に示すように、圧電トランス制御回路61は、発振回路62、駆動回路63、チョークコイル63a、圧電トランス64、冷陰極管68、検出用抵抗70、差動アンプ71、同期検波回路72、積分回路73および差動回路74から構成されている。
発振回路62は、発振信号を発振する。発振信号は、一定の周波数およびデューティー比を有する矩形波であり、その周波数およびデューティー比は差動回路74から受けた信号により制御される。発振回路62は、周波数制御用の端子75およびデューティー比制御用の端子76を有しており、差動回路74に接続する端子により、制御方式が異なる。図4に示すように、発振回路62では、周波数制御が選択されている。また、圧電トランス制御回路61では、発振信号と入力電圧との位相差がないため、特に同期信号の位相を調整する機構は必要なく、発振回路62は、直接、同期検波回路に発振信号を同期信号として伝える。
駆動回路63は、発振回路62の発振信号を受けて交流電圧を生成し、圧電トランス64の入力部に印加する。駆動回路63は、電源電圧に接続したスイッチング素子P1およびP2ならびにグランドと接続したスイッチング素子N1およびN2によりフルブリッジ回路を構成する。このように、圧電トランス制御回路61では、駆動回路が、フルブリッジ回路であるため、圧電トランスの昇圧比を向上させ、効率を上げることができる。なお、駆動回路が、プッシュプル回路である場合も同様の効果を得ることができる。
スイッチング素子P1およびN2ならびにスイッチング素子P2およびN1はそれぞれ一組となっており、それぞれの組のスイッチング素子が交互にON/OFFすることで、交流電圧が発生する。すなわち、それぞれの組のON/OFFが交互に変わるたびに圧電トランス64の入力電圧の向きが変わる。チョークコイル63aは、入力される交流電圧の高周波成分を除去し、正弦波を残すローパスフィルタを構成するために設けられている。
圧電トランス64は、中央駆動型の圧電トランスである。中央部分は入力部であり、厚み方向に分極がなされ、入力端子が設けられている。入力部の両側は出力部であり、長手方向に分極されている。出力部の分極の向きは、同じ向きである。すなわち、一方の出力部の分極の向きは、中央から端部に向かう向きであり、他方の出力部の分極の向きは、端部から中央に向かう向きである。適当なモードにより圧電トランス64を駆動させることにより、冷陰極管68の両端には、逆位相の電圧が印加され、出力電圧を大きくするとともに、寄生容量による損失を減少させている。
冷陰極管68は、両端の端子が圧電トランス64の両方の出力端子に接続され、それぞれの端子に逆位相の電圧が出力されることにより点灯する。冷陰極管68には、図1に示すようなU字形状の他に直線的な形状など様々な形状が存在する。検出用抵抗70および差動アンプ71は、圧電トランス64の入力電流を検出するための入力電流検出回路である。入力電流検出回路は、得られた電圧を検出信号として、同期検波回路72に伝える。
同期検波回路72は、同期信号により検出信号を同期検波し、検出信号の位相成分を抽出する。たとえば、一方のスイッチング素子の組のON/OFFを制御する発振信号を同期信号として検出信号に掛け合わせることにより、同期検波を行なう。同期検波回路72は、検出信号の位相成分を積分回路73に伝える。積分回路73は、同期検波後の位相成分を一定時間について積分し、一定時間当たりの積分値を算出する。得られた積分値は入力電流の実効値に比例する。差動回路74は、得られた積分値と基準電圧Vrefとの差に応じた差動信号を生成する。差動回路54は、発振回路62に接続され、発振回路62に差動信号を伝える。
以上のような構成の圧電トランス制御回路61を、発振回路の発振周波数を一定にして、駆動し、入力電流の実効値および出力電流を測定した。周波数は、38kHzから58kHzの範囲について各周波数を一定にした上で、測定を行なった。
図5は、周波数を55kHzにした場合の発振信号、入力電圧、入力電流、および検出信号の時間変化を示す図である。図5は、測定開始の0.90ms後から1.00ms後までの時間についての結果を示している。(a)は一組のスイッチング素子によって発生する駆動電圧を示し、(b)は別の一組のスイッチング素子によって発生する駆動電圧を示している。それぞれの駆動電圧は交互にHigh/Lowが切り替わるように電圧が変化していることが示されている。(c)は、(a)(b)に示す駆動電圧に従い圧電トランス64に印加された入力電圧を示している。(d)は、圧電トランス64に(c)の入力電圧が印加されたときの入力電流の電流波形を示している。この波形が検出信号となっている。(e)は、(d)に示す波形に(a)の発振信号の同期信号を掛け合わせることで、同期検波を行なった結果、抽出された位相成分77を示す図である。抽出された位相成分77は、0Aの点に対し点対称な波形であるため、位相成分77の実効値78は、0Aである。
図6は、周波数を50kHzにした場合の発振信号、入力電圧、入力電流、および検出信号の時間変化を示す図である。図6は、測定開始の0.90ms後から1.00ms後までの時間について示している。(a)は一組のスイッチング素子によって発生する駆動電圧を示し、(b)は別の一組のスイッチング素子によって発生する駆動電圧を示している。それぞれの駆動電圧は交互にHigh/Lowが切り替わるように電圧が変化していることが示されている。(c)は、(a)(b)に示す駆動電圧に従い圧電トランス64に印加された入力電圧を示している。(d)は、圧電トランス64に(c)の入力電圧が印加されたときの入力電流の電流波形を示している。この波形が検出信号となっている。(e)は、(d)に示す波形に(a)の発振信号の同期信号を掛け合わせることで、同期検波を行なった結果、位相成分79が抽出されていることを示す図である。抽出された位相成分79は、0Aより上に偏っているため、位相成分79の実効値80は、約0.25Aとなっている。
図7は、圧電トランス制御回路61を動作させたときの周波数38kHzから58kHzの範囲における(a)入力電流(b)入力電流の実効値(c)出力電流を示す図である。(a)の入力電流は、(c)の出力電流と波形が異なるが、(b)の入力電流の実効値は(c)の出力電流と特性が近似したものとなり、上に凸の形状でほぼ同一の周波数においてピークを有している。したがって、使用する周波数領域によらず、入力電流の実効値を一定にすることで、出力電流を一定に保持することができることが実証された。また、入力電流の実効値の曲線と出力電流の曲線とが、互いに縦軸のスケールのみ異なる相似形状であるため、出力電流を一定に保持する際にきめ細かい調整が可能であることが実証された。
(実施形態5)
上記の圧電トランス制御回路61では、検出用抵抗70および差動アンプ71により入力電流全体を検出するが、いずれかのスイッチング素子に流れる電流を検出する構成としてもよい。図8は、圧電トランス制御回路81のブロック図である。図8に示すように、圧電トランス制御回路81は、発振回路82、駆動回路83、チョークコイル63a、圧電トランス84、冷陰極管88、検出用抵抗90、同期検波回路92、積分回路93および差動回路94から構成されている。
発振回路82は、発振信号を発振する。発振信号は、一定の周波数およびデューティー比を有する矩形波であり、その周波数およびデューティー比は差動回路94から受けた信号により制御される。発振回路82は、周波数制御用の端子95およびデューティー比制御用の端子96を有しており、差動回路94に接続する端子に従い、制御方式が異なる。図8に示すように、発振回路82では、デューティー比制御が選択されている。
このように、圧電トランス制御回路81は、デューティー比を調整することにより、出力電流を制御している。したがって、たとえば液晶テレビに用いられるような多灯式の回路では、すべての冷陰極管について発振信号の周波数を一定にする必要があるが、このような場合でも出力電流を制御することができる。また、圧電トランス制御回路81では、発振信号と入力電圧との位相差がないため、特に同期信号の位相を調整する機構は必要なく、発振回路82は、直接、同期検波回路に発振信号を同期信号として伝える。
駆動回路83は、発振回路82の発振信号を受けて交流電圧を生成し、圧電トランス84の入力部に印加する。駆動回路83は、電源電圧に接続したスイッチング素子P3およびP4ならびにグランドと接続したスイッチング素子N3およびN4によりフルブリッジ回路を構成する。スイッチング素子P3およびN4ならびにスイッチング素子P4およびN3はそれぞれ一組となっており、それぞれの組のスイッチング素子が交互にON/OFFすることで、交流電圧が発生する。すなわち、それぞれの組のON/OFFが交互に変わるたびに圧電トランス84の入力電圧の向きが変わる。チョークコイル83aは、入力される交流電圧の高周波成分を除去し、正弦波を残すローパスフィルタを構成するために設けられている。
圧電トランス84は、中央駆動型の圧電トランスである。中央部分は入力部であり、厚み方向に分極がなされ、入力端子が設けられている。入力部の両側は出力部であり、長手方向に分極されている。出力部の分極の向きは、同じ向きである。すなわち、一方の出力部の分極の向きは、中央から端部に向かう向きであり、他方の出力部の分極の向きは、端部から中央に向かう向きである。適当なモードで圧電トランス84を振動させることにより、冷陰極管88の両端には、逆位相の電圧が印加され、出力電圧を大きくするとともに、寄生容量による損失を減少させている。
冷陰極管88は、両端の端子が圧電トランス84の両方の出力端子に接続され、それぞれの端子に逆位相の電圧が出力されることにより点灯する。冷陰極管88には、図1に示すようなU字形状の他に直線的な形状など様々な形状が存在する。
検出用抵抗90は、圧電トランス84の入力電流を検出するための入力電流検出回路である。検出用抵抗90は、スイッチング素子N4のグランド側に設けられており、スイッチング素子N4がONのときのみ、入力電流を検出する。入力電流検出回路は、得られた電圧を検出信号として、同期検波回路92に伝える。
すなわち、スイッチング素子P3およびN4の組がONで、スイッチング素子P4およびN3の組がOFFになっているときには、スイッチング素子N4に流れる電流を検出する。一方、スイッチング素子P4およびN3の組がONで、スイッチング素子P3およびN4の組がOFFになっているときには、入力電流検出回路は入力電流を検出しない。したがって、圧電トランス制御回路81では、入力電流全体を検出せずにスイッチング素子N4を流れる電流を検出して出力電流を制御する方式を採用している。これにより、差動アンプ等を使用しなくても、出力電流に対応する値を検出することができる。したがって、差動アンプが不要となり、簡易な検出が可能となる。また、検出による電力の損失を減少させることができる。
同期検波回路92は、同期信号により検出信号を同期検波し、検出信号の位相成分を抽出する。たとえば、一方のスイッチング素子の組のON/OFFを制御する発振信号を同期信号として検出信号に掛け合わせることにより、同期検波を行なう。同期検波回路92は、検出信号の位相成分を積分回路93に伝える。
積分回路93は、同期検波後の位相成分を一定時間について積分し、一定時間当たりの積分値を算出する。得られた積分値は入力電流の実効値に比例する。差動回路74は、得られた積分値と基準電圧Vrefとの差に応じた差動信号を生成する。差動回路94は、発振回路82に接続され、発振回路82に差動信号を伝える。