JP2004030916A - 薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびに薄膜磁気ヘッド用素材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを短期間で提供することを可能とすると共に、薄膜磁気ヘッドの歩留りを向上させることを可能とする。
【解決手段】下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aは、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置される。下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aの間に形成された溝内に、MR素子に接続される電極を構成する導電層57の一部が、絶縁膜56によって、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに対して絶縁された状態で配置される。上部シールド層の第1の部分54aの上には、絶縁層58を介して、薄膜コイル59が配置される。このような素材に対して、MR素子、このMR素子の上側に配置される上部シールド層の第1の部分、記録ギャップ層、上部磁極層等を形成することで、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【選択図】 図3
【解決手段】下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aは、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置される。下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aの間に形成された溝内に、MR素子に接続される電極を構成する導電層57の一部が、絶縁膜56によって、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに対して絶縁された状態で配置される。上部シールド層の第1の部分54aの上には、絶縁層58を介して、薄膜コイル59が配置される。このような素材に対して、MR素子、このMR素子の上側に配置される上部シールド層の第1の部分、記録ギャップ層、上部磁極層等を形成することで、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生ヘッドと記録ヘッドとを備えた複合型の薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、ならびに上記薄膜磁気ヘッドの製造に用いられる薄膜磁気ヘッド用素材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッドと読み出し用の磁気抵抗(以下、MR(Magneto Resistive )とも記す。)素子を有する再生ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。MR素子としては、異方性磁気抵抗(以下、AMR(Anisotropic Magneto Resistive )と記す。)効果を用いたAMR素子と、巨大磁気抵抗(以下、GMR(Giant Magneto Resistive )と記す。)効果を用いたGMR素子とがあり、AMR素子を用いた再生ヘッドはAMRヘッドあるいは単にMRヘッドと呼ばれ、GMR素子を用いた再生ヘッドはGMRヘッドと呼ばれる。AMRヘッドは、面記録密度が1ギガビット/(インチ)2 を超える再生ヘッドとして利用され、GMRヘッドは、面記録密度が3ギガビット/(インチ)2 を超える再生ヘッドとして利用されている。
【0003】
AMRヘッドは、AMR効果を有するAMR膜を備えている。GMRヘッドは、AMR膜を、GMR効果を有するGMR膜に置き換えたもので、構造上はAMRヘッドと同様である。ただし、GMR膜は、AMR膜よりも、同じ外部磁界を加えたときに大きな抵抗変化を示す。このため、GMRヘッドは、AMRヘッドよりも、再生出力を3〜5倍程度大きくすることができると言われている。
【0004】
再生ヘッドの性能を向上させる方法としては、MR膜を変える方法がある。一般的に、AMR膜は、MR効果を示す磁性体を膜としたもので、単層構造になっている。これに対して、多くのGMR膜は、複数の膜を組み合わせた多層構造になっている。GMR効果が発生するメカニズムにはいくつかの種類があり、そのメカニズムによってGMR膜の層構造が変わる。GMR膜としては、超格子GMR膜、グラニュラ膜、スピンバルブ膜等が提案されているが、比較的構成が単純で、弱い磁界でも大きな抵抗変化を示し、量産を前提とするGMR膜としては、スピンバルブ膜が有力である。このように、再生ヘッドは、例えば、MR膜をAMR膜からGMR膜等の磁気抵抗感度の優れた材料に変えることで、容易に、性能を向上するという目的を達せられる。
【0005】
再生ヘッドの性能を決定する要因としては、上述のような材料の選択の他に、パターン幅、特に、MRハイトがある。MRハイトは、MR素子のエアベアリング面(媒体対向面)側の端部から反対側の端部までの長さ(高さ)を言う。このMRハイトは、本来、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御される。
【0006】
一方、再生ヘッドの性能向上に伴って、記録ヘッドの性能向上も求められている。記録ヘッドの性能のうち、記録密度を高めるには、磁気記録媒体におけるトラック密度を上げる必要がある。そのために、上部磁極を形成する磁性層に対して、半導体加工技術を利用してサブミクロン加工を施して、狭トラック構造の記録ヘッドを実現することや、より高い飽和磁束密度を持つ磁性材料を用いることが望まれていた。
【0007】
記録ヘッドの性能を決定するその他の要因としては、スロートハイトがある。スロートハイトは、エアベリング面から、薄膜コイルを電気的に分離する絶縁層のエッジまでの部分(本出願において磁極部分と言う。)の長さ(高さ)を言う。記録ヘッドの性能向上のためには、スロートハイトの縮小化が望まれている。このスロートハイトも、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御される。
【0008】
このように、薄膜磁気ヘッドの性能の向上のためには、記録ヘッドと再生ヘッドをバランスよく形成することが重要である。
【0009】
ここで、図15ないし図27を参照して、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例として、複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例について説明する。なお、図15ないし図23において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。
【0010】
この製造方法では、まず、図15に示したように、例えばアルティック(Al2O3・TiC)よりなる基板101の上に、例えばアルミナ(Al2O3)よりなる絶縁層102を、約5〜10μm程度の厚みで堆積する。
【0011】
次に、図16に示したように、絶縁層102の上に、磁性材料よりなる再生ヘッド用の下部シールド層103を形成する。
【0012】
次に、図17に示したように、下部シールド層103の上に、例えばアルミナを100〜200nmの厚みにスパッタ堆積し、絶縁層としての下部シールドギャップ膜104を形成する。次に、下部シールドギャップ膜104の上に、再生用のMR素子105を形成するためのMR膜を、数十nmの厚みに形成する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、例えばイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子105を形成する。なお、MR素子105は、GMR素子でもよいし、AMR素子でもよい。
【0013】
次に、図18に示したように、下部シールドギャップ膜104およびMR素子105の上に、絶縁層としての上部シールドギャップ膜106を形成し、MR素子105をシールドギャップ膜104,106内に埋設する。
【0014】
次に、図19に示したように、上部シールドギャップ膜106の上に、磁性材料からなり、再生ヘッドと記録ヘッドの双方に用いられる上部シールド層兼下部磁極(以下、上部シールド層と記す。)107を形成する。
【0015】
次に、上部シールド層107の上に、絶縁膜、例えばアルミナ膜よりなる記録ギャップ層108を形成する。次に、後方(図19(a)における右側)の位置において、磁路形成のために、記録ギャップ層108を部分的にエッチングして、コンタクトホールを形成する。次に、磁極部分における記録ギャップ層108の上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えば高飽和磁束密度材のパーマロイ(NiFe)またはFeNよりなるポールチップ109を形成する。ポールチップ109は、上部磁極の一部をなす。このとき、同時に、磁路形成のためのコンタクトホールの上に、磁路形成のための磁性材料からなる磁性層119を形成する。
【0016】
次に、ポールチップ109をマスクとして、イオンミリングによって、記録ギャップ層108と上部シールド層(下部磁極)107をエッチングする。図19図(b)に示したように、上部磁極(ポールチップ109)、記録ギャップ層108および上部シールド層(下部磁極)107の一部の各側壁が垂直に自己整合的に形成された構造は、トリム(Trim)構造と呼ばれる。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を防止することができる。
【0017】
次に、図20に示したように、全面に、例えばアルミナ膜よりなる絶縁層110を、約3μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層110を、ポールチップ109および磁性層119の表面に至るまで研磨して平坦化する。この際の研磨方法としては、機械的な研磨またはCMP(化学機械研磨)が用いられる。この平坦化により、ポールチップ109および磁性層119の表面が露出する。
【0018】
次に、平坦化された絶縁層110の上に、フォトレジスト層111を、高精度のフォトリソグラフィにより、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層111の上に、例えば銅(Cu)よりなる誘導型の記録ヘッド用の第1層目の薄膜コイル112を形成する。
【0019】
次に、図21に示したように、フォトレジスト層111およびコイル112の上に、フォトレジスト層113を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層113の表面を平坦にするために、例えば250〜300°Cの温度で熱処理する。
【0020】
次に、図22に示したように、フォトレジスト層113の上に、第2層目の薄膜コイル114を形成する。次に、フォトレジスト層113およびコイル114上に、フォトレジスト層115を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層115の表面を平坦にするために、例えば250〜300°Cの温度で熱処理する。
【0021】
次に、図23に示したように、ポールチップ109、フォトレジスト層111,113,115および磁性層119の上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えばパーマロイよりなる上部磁極層116を形成する。次に、上部磁極層116の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層117を形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0022】
完成した状態の薄膜磁気ヘッドを、図24および図25に示す。図24は、エアベアリング面120に垂直な薄膜磁気ヘッドの断面を示し、図25は、磁極部分のエアベアリング面120に平行な断面を拡大して示している。図24において、THは、スロートハイトを表し、MR−Hは、MRハイトを表している。なお、図25に示したように、MR素子105の側方には、第1の電極層121が設けられている。
【0023】
薄膜磁気ヘッドの性能を決定する要因として、スロートハイトやMRハイト等の他に、図24においてθで示したようなエイペックスアングル(Apex Angle)がある。このエイペックスアングルは、フォトレジスト層111,113,115で覆われて山状に盛り上がったコイル部分(以下、エイペックス部と言う。)における磁極側の側面の角部を結ぶ直線と絶縁層110の上面とのなす角度をいう。
【0024】
図26は、上述のようにして製造される薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図、図27は、上述のようにして製造される薄膜磁気ヘッドの平面図である。図26は、下部シールド層103、MR素子105および上部シールド層(下部磁極)107を形成した後の状態を示している。なお、第1の電極層121には、第2の電極層122が接続されている。また、図27では、オーバーコート層117を省略している。なお、図15ないし図23における(a)は、図27におけるA−A′線断面を表し、(b)は、図27におけるB−B′線断面を表している。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、薄膜磁気ヘッドの特性や性能は、主に、再生ヘッドにおけるMR素子と、記録ヘッドにおける磁極部分によって決定される。より具体的に説明すると、薄膜磁気ヘッドにおける再生ヘッドの特性や性能は、主に、MR素子の幅に対応した再生ヘッドにおけるトラック幅によって決定され、記録ヘッドの特性や性能は、主に、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅等、磁極部分の形状によって決定される。そのため、薄膜磁気ヘッドの顧客の要求は、再生ヘッドにおけるトラック幅や、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅等、再生ヘッドにおけるMR素子や記録ヘッドにおける磁極部分の形成のプロセスに関わる事項に集中する。
【0026】
従って、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを量産する場合には、再生ヘッドにおけるMR素子を形成する工程から先の工程を、顧客の要求に対応した工程にして、製品を作る必要がある。
【0027】
しかしながら、図15ないし図27を参照して説明したように、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、MR素子を形成する工程は、薄膜磁気ヘッドを量産するための全工程のうちの初期の工程である。従って、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、MR素子を形成する工程以降の工程に要する時間が、全工程に要する時間に対して大きな割合を占めていた。そのため、従来は、顧客の注文を受けてから顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを完成させ、出荷するまでの時間、いわゆるサイクルタイムが長く、これは、例えば20日から25日程度であり、場合によっては30日から40日に及ぶ場合があった。その結果、顧客との間で、早い時期に、薄膜磁気ヘッドの特性等の仕様を取り決めても、実際の製品を出荷するまでに、上記のような多くの日数がかかっていた。
【0028】
また、昨今の技術進歩の速度と、顧客の要求する記録面密度や再生速度の向上は、目を見張るものがある。それに伴い、数カ月単位で、コンピュータのハードディスクドライブの仕様の変更や改善がなされている。そのため、薄膜磁気ヘッドの顧客は、注文後、短期間で、要求に合った薄膜磁気ヘッドが納入されることを望む。従って、薄膜磁気ヘッドの製造業者は、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを設計し、短期間で、その薄膜磁気ヘッドを量産し、市場に出荷する必要がある。
【0029】
このような状況にもかかわらず、従来は、上述のようにサイクルタイムが長すぎるため、顧客のニーズに十分応えることが難しいという問題点があった。
【0030】
また、従来は、薄膜磁気ヘッドの製造の全工程が終了した後に、完成品の薄膜磁気ヘッドに対して良・不良の検査を行っていた。そのため、製造途中で不良品が発生しても、それを取り除くことができず、完成品の歩留りを向上させることが難しいという問題点があった。
【0031】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを短期間で提供することを可能とすると共に、薄膜磁気ヘッドの歩留りを向上させることを可能とした薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびに薄膜磁気ヘッド用素材およびその製造方法を提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドの一部と記録ヘッドの一部とを含む薄膜磁気ヘッド用素材を備えている。再生ヘッドは、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、磁気抵抗素子をシールドする第1および第2のシールド層とを有している。記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部がギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有している。第2のシールド層は、第1のシールド層に対して同一平面上に互いに絶縁された状態で配置された第1の部分と、磁気抵抗素子を挟んで第1のシールド層と対向すると共に第1の部分に接続された第2の部分とを有し、且つ、第1の磁性層を兼ねている。薄膜コイルの少なくとも一部は、第2のシールド層の第1の部分と第2の磁性層との間に配設されている。薄膜磁気ヘッド用素材は、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものである。
【0033】
本発明の薄膜磁気ヘッドでは、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた薄膜磁気ヘッド用素材を製造しておき、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成することが可能となる。
【0034】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法は、薄膜磁気ヘッド用素材を製造する第1の工程と、第1の工程によって製造された薄膜磁気ヘッド用素材に対して第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを加えることによって薄膜磁気ヘッドを完成させる第2の工程とを備えている。第1の工程は、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とが、同一平面上に互いに絶縁された状態で配置されるように、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とを形成する工程と、薄膜コイルの少なくとも一部が、第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置されるように、薄膜コイルの少なくとも一部を形成する工程とを備えている。第2の工程は、第1のシールド層の上に、絶縁膜を介して、磁気抵抗素子を形成する工程と、磁気抵抗素子の上に、絶縁膜を介して、第2のシールド層の第2の部分を形成する工程と、第2のシールド層の第2の部分の上に、ギャップ層を形成する工程と、ギャップ層の上に、第2の磁性層を形成する工程とを備えている。
【0035】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた薄膜磁気ヘッド用素材を製造しておき、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成することが可能となる。
【0036】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分を、めっき法により形成するようにしてもよい。
【0037】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材は、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置された薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものである。
【0038】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材によれば、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成して、薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となる。
【0039】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法は、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とが、同一平面上に互いに絶縁された状態で配置されるように、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とを形成する工程と、薄膜コイルの少なくとも一部が、第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置されるように、薄膜コイルの少なくとも一部を形成する工程とを備えている。
【0040】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法によれば、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた素材を製造しておくことができ、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成して、薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となる。
【0041】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法において、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分を、めっき法により形成するようにしてもよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1ないし図8を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法としての複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。なお、図1ないし図6において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。また、以下の説明は、本実施の形態に係る磁気ヘッド用素材の製造方法の説明を兼ねている。
【0043】
本実施の形態に係る製造方法では、まず、図1に示したように、例えばアルティック(Al2O3・TiC)よりなる基板51の上に、例えばアルミナ(Al2O3 )よりなる絶縁層52を、約5〜10μmの厚みで堆積する。
【0044】
次に、図示しないが、絶縁層52の上に、下部シールド層と上部シールド層兼下部磁極(以下、上部シールド層と記す。)の一部をめっき法にて形成する際に使用される電極膜としてのシード層を、パーマロイ(NiFe)のスパッタによって形成する。
【0045】
次に、図2に示したように、シード層の上に、フォトレジスト膜をマスクとして、めっき法にて、磁性材料、例えばパーマロイ(NiFe)を約2〜3μmの厚みで選択的に形成して、再生ヘッド用の下部シールド層53と、上部シールド層の一部(以下、第1の部分と言う。)54aとを形成する。なお、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aは、磁性材料をスパッタリングした後、フォトリソグラフィによりパターニングして形成してもよい。下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aは、フォトレジスト膜によって、両者の間に、MR素子に接続される一対の電極それぞれの少なくとも一部が配置される一対の溝55が形成されるように、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置されるように形成される。下部シールド層53は、本発明における第1のシールド層に対応し、上部シールド層は、本発明における第2のシールド層に対応する。
【0046】
次に、溝55の部分におけるシード層を、選択的にエッチングして除去する。次に、溝55内を含めて、下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aの上に、例えばアルミナよりなる絶縁膜56を、例えばスパッタにより、約0.5〜1μmの厚みに形成する。
【0047】
次に、図3に示したように、絶縁膜56で覆われた溝55内に、MR素子に接続される電極(リード)となる一対の導電層57を、例えば銅(Cu)によって形成する。導電層57は、例えば、フォトレジスト膜をマスクとして、めっき法にて、銅を例えば約3μmの厚みに、溝55内に選択的に形成することによって形成する。この他、導電層57は、スパッタによって形成してもよい。
【0048】
次に、全面に、例えばアルミナまたはシリコン酸化膜よりなる絶縁層を、2〜3μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層を、下部シールド層53、上部シールド層の第1の部分54aおよび導電層57の表面に至るまで研磨して平坦化する。この際の研磨方法としては、機械的な研磨またはCMP(化学機械研磨)が用いられる。この平坦化により、下部シールド層53、上部シールド層の第1の部分54aおよび導電層57の表面が露出する。
【0049】
このように、導電層57は、500nm以上の厚みの絶縁膜56によって完全に覆われた、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aとの間の溝55内に、めっき法により正確に埋設されるように形成される。従って、導電層57と下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aとの間の絶縁性能は極めて高く、導電層57と下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aとの間において、パーティクルや膜のピンホール等による磁気的および電気的な絶縁の不良をなくすことができる。
【0050】
次に、上部シールド層の第1の部分54aの上に、例えばアルミナ膜またはシリコン酸化膜よりなる絶縁膜を、0.5〜1μmの厚みに形成する。次に、フォトリソグラフィを用いて、絶縁膜を選択的にエッチングして、絶縁層58を形成する。このとき、絶縁層58の磁極部分側のエッジにテーパを形成する。次に、絶縁層58の上に、例えば銅(Cu)よりなる、記録ヘッド用の薄膜コイル59を、例えばめっき法により形成する。次に、絶縁層58およびコイル59の上に、フォトレジストよりなる絶縁層60を、所定のパターンに形成する。次に、200°C程度の温度でキュアを施す。
【0051】
なお、図3に示した状態に至るまでの製造工程を、以下の変形例のように変更してもよい。この変形例では、図2に示した状態から、同じ工程で、同じ材料を用いて、絶縁膜56の上にコイル59を形成すると共に、絶縁膜56で覆われた溝55内に導電層57を形成する。次に、絶縁膜56およびコイル59の上に、フォトレジストよりなる絶縁層60を、所定のパターンに形成する。次に、絶縁層60をマスクにして、絶縁膜56をパターンニングして、図3に示した状態とする。この場合には、図3における絶縁層58が、絶縁膜56に代わる。この変形例によれば、製造工程を大幅に減少させることができる。
【0052】
図3に示した状態の半製品、すなわち、下部シールド層53と、上部シールド層の第1の部分54aと、薄膜コイル59とを備えた半製品が、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド用素材となる。
【0053】
図3に示した状態から、次に、図4に示したように、全面に、スパッタにより、チッ化アルミニウムやアルミナ等の絶縁材を、数十nmの厚みに形成して、絶縁層としての下部シールドギャップ膜61aを形成する。下部シールドギャップ膜61aを形成する際には、予め、後述する電極層と導電層57とを電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する部分に、リフトオフを容易に行うことができるように、例えばT型のフォトレジストパターンを形成しておき、下部シールドギャップ膜61aの形成後、フォトレジストパターンをリフトオフすることにより、コンタクトホールを形成する。なお、コンタクトホールは、フォトリソグラフィを用いて、下部シールドギャップ膜61aを選択的にエッチングして形成してもよい。
【0054】
次に、下部シールドギャップ膜61aの上に、再生用のMR素子62を形成するためのMR膜を、スパッタにより、数十nmの厚みに形成する。次に、このMR膜の上に、MR素子62を形成すべき位置に選択的に、図示しないフォトレジストパターンを形成する。このとき、リフトオフを容易に行うことができるように、例えばT型のフォトレジストパターンを形成する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、例えば、アルゴン系のイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子62を形成する。なお、MR素子62は、GMR素子でもよいし、AMR素子でもよい。
【0055】
次に、下部シールドギャップ膜61aの上に、同じフォトレジストパターンをマスクとして、MR素子62に電気的に接続される一対の電極層63を、スパッタにより、数十〜数百nmの厚みに形成する。電極層63は、例えば、TiW,CoPt,TiW,Ta,Auを積層して形成される。また、電極層63は、下部シールドギャップ膜61aに形成されたコンタクトホールを介して、導電層57に対して電気的に接続される。電極層63および導電層57が、MR素子62に接続される電極を構成する。
【0056】
次に、全面に、スパッタにより、チッ化アルミニウムやアルミナ等の絶縁材を、数十nmの厚みに形成して、絶縁層としての上部シールドギャップ膜61bを形成して、MR素子62をシールドギャップ膜61a,61b内に埋設する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングによって、シールドギャップ膜61a,61bを選択的に除去して、後述する上部シールド層の第2の部分と第1の部分54aとを接続するためのコンタクトホールと、コイル59の後方(図4(a)における右側)の位置における磁路形成のためのコンタクトホールとを形成する。
【0057】
次に、図5に示したように、磁極部分側に、磁性材料からなり、MR素子62を挟んで下部シールド層53と対向するように配置され、且つ、上部シールド層の第1の部分54aに接続される上部シールド層の第2の部分54bを、例えば約3.5μmの厚みに形成する。同時に、薄膜コイル59の後方の位置における磁路形成のためのコンタクトホールの上に、磁路形成のための磁性材料からなる磁性層64を、例えば約3.5μmの厚みに形成する。上部シールド層の第2の部分54bと磁性層64は、例えば、めっき法によって形成する。
【0058】
なお、下部シールド層53や上部シールド層54a,54bは、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)を用いて形成してもよいし、NiFe(Ni:50重量%,Fe:50重量%)、センダスト、チッ化鉄(FeN)やその化合物、Fe−Co−Zrのアモルファス等の高飽和磁束密度材を用いて形成してもよいし、これらの材料を2種類以上重ねて形成してもよい。下部シールド層53や上部シールド層54a,54bの材料として、高飽和磁束密度材を用いることにより、MR素子62に対する、誘導型の記録ヘッドにおけるコイルから発生する磁気等の内部要因やハードディスク装置のモータ等の外部要因によるノイズの影響をより低減することが可能となり、正確な再生出力を得ることができ、しかも高感度な再生ヘッドを形成することが可能となる。
【0059】
次に、図6に示したように、コイル59の上側に、フォトレジストよりなる絶縁層65を、所定のパターンに形成する。次に、200°C程度の温度でキュアを施す。本実施の形態において、スロートハイトは、絶縁層65によって規定される。次に、全体に、アルミナ膜、チッ化アルミニウム膜、シリコン酸化膜等の絶縁膜よりなる記録ギャップ層66を、例えば300nm程度の厚みに形成する。次に、磁性層64の上側の部分において、記録ギャップ層66を選択的に除去して、磁路形成のためのコンタクトホールを形成する。
【0060】
次に、記録ギャップ層66の上に、誘導型の記録ヘッドのトラック幅を決定する上部磁極層67を、約3〜4μmの厚みに形成する。この上部磁極層67は、例えば、NiFe(Ni:50重量%,Fe:50重量%)を用いてめっき法により形成してもよいし、チッ化鉄(FeN)やその化合物等の高飽和磁束密度材をスパッタし、パターニングして形成してもよい。なお、上部磁極層67の材料としては、上記の例の他に、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)や、Fe−Co−Zrのアモルファス等の高飽和磁束密度材を用いても良い。また、上部磁極層67は、上述の種々の材料を2種類以上重ねて形成してもよい。上部磁極層67の材料に、高飽和磁束密度材を用いることで、コイル59で発生した磁束が途中で飽和することなく有効に磁極部分に到達するようになり、効率のよい記録ヘッドを形成することが可能となる。
【0061】
次に、上部磁極層67の両側における記録ギャップ層66をドライエッチングにより除去した後、露出した上部シールド層の第2の部分54bを、上部磁極層67をマスクとして、イオンミリングによって、例えば約0.5μmエッチングして、トリム構造とする。
【0062】
次に、上部磁極層67の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層68を、約30〜40μmの厚みに形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0063】
上部シールド層(下部磁極)54a,54b、磁性層64、上部磁極層67と、薄膜コイル59は、本発明における記録ヘッドに対応する。つまり、上部シールド層(下部磁極)54a,54bおよび磁性層64は、本発明における記録ヘッドにおける第1の磁性層に対応し、上部磁極層67は、第2の磁性層に対応する。
【0064】
図7は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図、図8は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。なお、図7は、図3に示した状態に対応している。また、図8では、オーバーコート層68を省略している。また、この図は、スライダの機械加工を行う前の状態を表している。図8において、符号69は、上部シールド層の第2の部分54bと第1の部分54aとを接続するためのコンタクトホールを示している。なお、図1ないし図6における(a)は、図8におけるC−C′線断面を表し、(b)は、図8におけるD−D′線断面を表している。
【0065】
なお、図8に示したように、本実施の形態において、導電層57の少なくとも一部をシールドするための電極シールド層71を設けてもよい。この電極シールド層71は、導電層57のうち、上部シールド層の第2の部分54bに対向しない部分を覆うように設けられる。また、電極シールド層71は、例えば、上部磁極層67を形成する際に同時に、上部磁極層67と同じ磁性材料を用いて形成される。
【0066】
本実施の形態では、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aが、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置されている。そして、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aの間に形成された溝55内に、MR素子62に接続される電極を構成する導電層57の一部が、絶縁膜56によって、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに対して絶縁された状態で配置されている。
【0067】
ところで、薄膜磁気ヘッドの多くの顧客は、再生ヘッドにおけるトラック幅や、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅を、自社製品に合わせて注文してくる。しかし、注文の後に、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを生産していたのでは、注文から短期間で製品を提供することは困難であった。
【0068】
本実施の形態によれば、図3に示したように、コイル59の形成工程まで(本実施の形態では、絶縁層60の形成までを言うものとする。)で、薄膜磁気ヘッドにおける共通の基体である薄膜磁気ヘッド用素材が完成する。そして、この薄膜磁気ヘッド用素材に続く工程に要する時間は、比較的短い。また、この薄膜磁気ヘッド用素材の段階で、良・不良の検査を行って、不良品を取り除くことができる。
【0069】
そこで、本実施の形態によれば、コイル59の形成工程まで経た半製品、すなわち薄膜磁気ヘッド用素材を、多くの在庫が得られるように量産し、顧客に対応が可能なところまで在庫数を増加させた後、それぞれ異なる顧客毎の要求を受け入れて、薄膜磁気ヘッドの仕様を取り決めることができる。従って、本実施の形態によれば、薄膜磁気ヘッドの全製造工程の50〜60%以上の工程を既に終了し、しかも、その多くが良・不良の検査により良品とされた半製品を適正の在庫だけ持ち、顧客の期待する仕様の薄膜磁気ヘッドを、注文から短時間で提供することが可能となる。その結果、顧客の注文を受けてから薄膜磁気ヘッドを完成させ、出荷するまでの時間としてのサイクルタイムを、従来では例えば20日〜40日程度要していたのに対し、本実施の形態によれば、例えば2週間以内に短縮することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階で不良品は既に取り除かれているので、良品の半製品を、顧客の要求に応じて、限りなく早く、製品にすることができ、従来にはない高い品質保証が可能となり、最終製品の歩留りも向上する。
【0071】
また、本実施の形態によれば、顧客の要求が短期間で変化しても、速やかに対応することができ、製品の無駄を防止することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階で良・不良の検査を行うことができるので、不良が発生している半製品については、その後の工程を省くことができるので、従来に比べて、薄膜磁気ヘッドの製造コストを低減することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階と、薄膜磁気ヘッドの完成後の段階の双方で、良・不良の検査を行うことにより、製品について極めて高い品質保証が可能となる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階と、薄膜磁気ヘッドの完成後の段階の双方で、良・不良の検査を行うことにより、問題のある工程を発見しやすく、また、その問題のある工程を改善を速やかに行うことが可能となり、大きな問題の発生を防止することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、コイル59を形成した後に、MR素子62を形成するので、コイルの形成の際におけるフォトレジストに対する熱処理やその際に発生する水分等の影響によるMR素子62の特性劣化を防止することが可能となる。この効果は、特に、MR素子62として、感度の高いGMR素子を用いる場合に顕著である。
【0076】
また、本実施の形態によれば、MR素子62を形成した後の工程が、従来に比べて短くなるため、ハンドリング等によるMR素子62の静電気破壊等の破損を、極めて少なくすることが可能となる。この効果は、特に、MR素子62として、複数の極めて薄い(1〜5nm程度)の層からなるGMR素子を用いる場合に顕著である。
【0077】
また、本実施の形態では、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aが、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置されている。そして、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aの間に形成された溝55内に、MR素子62に接続される電極を構成する導電層57の一部が、絶縁膜56によって、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに対して絶縁された状態で配置されている。従って、本実施の形態によれば、導電層57と、下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aとの間の絶縁性能を極めて高くすることができる。また、導電層57の一部は、下部シールドギャップ膜61aおよび上部シールドギャップ膜61bを介して上部シールド層の第2の部分54bと対向するが、大部分は上部シールド層54a,54bと対向しない構造であるため、導電層57と上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を極めて高くすることができる。
【0078】
以上のことから、本実施の形態によれば、導電層57と、下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を極めて高くすることができ、導電層57と、下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の磁気的および電気的な絶縁の不良をなくすことができる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、導電層57が下部シールドギャップ膜61aと上部シールドギャップ膜61bとの間に介挿された構造ではないので、導電層57が下部シールドギャップ膜61a、上部シールドギャップ膜61bを介して下部シールド層53、上部シールド層54a,54bと広い面積で対向することがない。従って、下部シールドギャップ膜61a、上部シールドギャップ膜61bを薄くしても、導電層57と下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を高く維持することができる。
【0080】
このように本実施の形態によれば、下部シールドギャップ膜61aおよび上部シールドギャップ膜61bを厚くすることなく、MR素子62に接続される電極と下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を向上させることができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、サーマルアスピリティ(Thermal Asperity)を改善するために、下部シールドギャップ膜61aおよび上部シールドギャップ膜61bを十分薄くすることが可能となり、再生ヘッドの性能を向上させることができる。なお、サーマルアスピリティとは、再生時における再生ヘッドの自己発熱による再生特性の劣化を言う。
【0082】
また、本実施の形態によれば、導電層57を十分厚く形成することができるので、MR素子62に接続される電極の配線抵抗をより低くすることができる。これにより、MR素子62における微小な抵抗変化に対応する微小な出力信号変化を感度よく検出することが可能となり、この点からも再生ヘッドの性能を向上させることができる。
【0083】
また、本実施の形態では、導電層57のうち、MR素子62に近く、溝55内に配置された部分は、両側から下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに挟み込まれてシールドされ、上面側が上部シールド層の第2の部分54bによってシールドされる構造となっている。従って、MR素子62に対する、誘導型の記録ヘッドにおけるコイルから発生する磁気等の内部要因やハードディスク装置のモータ等の外部要因によるノイズの影響を低減することができる。この点からも、再生ヘッドの性能を向上させることができる。
【0084】
また、電極シールド層71を設けることにより、導電層57のうち、上部シールド層の第2の部分54bに対向しない部分の上面側を、電極シールド層71によってシールドすることができるので、導電層57に対するノイズの影響をより低減することができる。
【0085】
また、本実施の形態では、薄膜コイル59は、上部シールド層の第1の部分54aと上部磁極層67との間であって、上部シールド層の第2の部分54bの面に沿った方向の側方に配置されている。そのため、エイペックス部、すなわち、山状に盛り上がったコイル部分の高さを低くでき、記録ヘッドのトラック幅を決定する磁極(上部磁極層67)を微細に形成することが可能となる。これにより、記録密度を高め、記録ヘッドの性能を向上させることが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、互いに対向するコイル59と上部シールド層の第1の部分54aとの間に、厚い絶縁層58を形成できるので、コイル59と上部シールド層54a,54bとの間に、大きな絶縁耐圧を得ることができると共に、コイル59からの磁束の漏れを低減することができる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、記録ヘッドにおける上部磁極が、1層の上部磁極層67によって形成され、ポールチップと上部磁極層による2層構造になっていないので、ポールチップよりも幅の大きい上部磁極層がエアベアリング面において露出することがない。従って、実効トラック幅が大きくなったり、記録媒体上において本来データを記録すべき領域以外の領域にデータを書き込んでしまうような不具合を防止することができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、ポールチップと上部磁極層による2層構造の場合に、ポールチップと上部磁極層との接触部で生じる磁束の飽和がなくなり、磁束立ち上がり時間(Flux Rise Time)等の書き込み特性を向上させることが可能となる。
【0089】
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面に垂直な断面を示す断面図である。なお、図9は、スライダの機械加工を行う前の状態を表している。
【0090】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおけるフォトレジストよりなる絶縁層65内に、第2層目の薄膜コイル72を形成したものである。この場合には、コイル59の上側にフォトレジストよりなる絶縁層65を、所定の厚みだけ形成した後、コイル72を、例えばめっき法により形成し、更に、このコイル72を覆うように絶縁層65を形成するようにする。なお、本実施の形態において、スロートハイトは、絶縁層65によって規定される。
【0091】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0092】
次に、図10ないし図14を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、コイル59の形成工程までは、第1の実施の形態と同様である。そして、この工程まで経た半製品を量産し、良・不良のチェックを行って、良品の半製品を適正量だけ確保しておく。
【0093】
本実施の形態では、顧客の要求に応じて製品を完成される場合には、顧客の要求に応じて、MR素子の選択(AMR素子とするかやGMR素子とするか等)や、シールドギャップ膜の材料(アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等)の選択を行うと共に、再生ヘッドにおけるトラック幅や、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅を決定し、上記半製品に対して、図10に示したように、シールドギャップ膜61a,61b、MR素子62および電極層63を形成する。次に、上部シールド層の第2の部分54bと磁性層64とを形成する。次に、全体に、例えばアルミナ膜よりなる絶縁層81を、3〜4μmの厚みに形成する。そして、上部シールド層の第2の部分54bおよび磁性層64の表面が露出するように、全体を例えばCMPによって平坦化する。
【0094】
次に、図11に示したように、上部シールド層の第2の部分54bおよび絶縁層81の上に、例えばアルミナ膜よりなり、記録ヘッドのスロートハイトを規定するための絶縁層82を形成する。次に、この絶縁層82の上に、第2層目の薄膜コイル83を形成する。次に、絶縁層82およびコイル83の上に、フォトレジストよりなる絶縁層84を、所定のパターンに形成する。次に、アルミナ膜等の絶縁膜よりなる記録ギャップ層85を形成する。次に、磁性層64の上側の部分において、記録ギャップ層85を選択的に除去して、磁路形成のためのコンタクトホールを形成する。
【0095】
次に、図12に示したように、記録ギャップ層85の上に、誘導型の記録ヘッドのトラック幅を決定する上部磁極層86を形成する。次に、上部磁極層86の両側における記録ギャップ層85を、反応性イオンエッチング等のドライエッチングにより除去した後、露出した上部シールド層の第2の部分54bを、上部磁極層86をマスクとして、イオンミリング等によってエッチングして、トリム構造とする。
【0096】
次に、上部磁極層86の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層87を、約3〜5μmの厚みに形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0097】
図13は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図、図14は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。また、図14では、オーバーコート層87を省略している。また、この図は、スライダの機械加工を行う前の状態を表している。図14において、符号69は、上部シールド層の第2の部分54bと第1の部分54aとを接続するためのコンタクトホールを示している。なお、図10ないし図12における(a)は、図14におけるE−E′線断面を表し、(b)は、図14におけるF−F′線断面を表している。
【0098】
なお、図14に示したように、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、導電層57の少なくとも一部をシールドするための電極シールド層71を設けてもよい。この電極シールド層71は、導電層57のうち、上部シールド層の第2の部分54bに対向しない部分を覆うように設けられる。また、電極シールド層71は、例えば、上部磁極層86を形成する際に同時に、上部磁極層86と同じ磁性材料を用いて形成される。
【0099】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0100】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されない。例えば、上記各実施の形態では、記録ヘッドにおける上部磁極を、1層の上部磁極層によって形成するようにしたが、本発明は、ポールチップと上部磁極層の2層によって上部磁極を形成する場合にも適用することができる。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の薄膜磁気ヘッド、薄膜磁気ヘッドの製造方法、薄膜磁気ヘッド用素材もしくは薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法によれば、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた薄膜磁気ヘッド用素材を製造しておき、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成することで、薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となるので、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを短期間で提供することが可能となると共に、素材の段階で良・不良の検査を行って、良品の素材のみを用いて薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となるので、薄膜磁気ヘッドの歩留りを向上させることを可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図2】図1に続く工程を説明するための断面図である。
【図3】図2に続く工程を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面に垂直な断面を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図15】従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図16】図15に続く工程を説明するための断面図である。
【図17】図16に続く工程を説明するための断面図である。
【図18】図17に続く工程を説明するための断面図である。
【図19】図18に続く工程を説明するための断面図である。
【図20】図19に続く工程を説明するための断面図である。
【図21】図20に続く工程を説明するための断面図である。
【図22】図21に続く工程を説明するための断面図である。
【図23】図22に続く工程を説明するための断面図である。
【図24】従来の薄膜磁気ヘッドにおけるエアベアリング面に垂直な断面を示す断面図である。
【図25】従来の薄膜磁気ヘッドにおける磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示す断面図である。
【図26】従来の薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図である。
【図27】従来の薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【符号の説明】
51…基板、52…絶縁層、53…下部シールド層、54a…上部シールド層の第1の部分、54b…上部シールド層の第2の部分、56…絶縁膜、57…導電層、58…絶縁層、59…薄膜コイル、60…絶縁層、61a…下部シールドギャップ膜、61b…上部シールドギャップ膜、62…MR素子、63…電極層、64…磁性層、66…記録ギャップ層、67…上部磁極層、68…オーバーコート層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生ヘッドと記録ヘッドとを備えた複合型の薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、ならびに上記薄膜磁気ヘッドの製造に用いられる薄膜磁気ヘッド用素材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスク装置の面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッドと読み出し用の磁気抵抗(以下、MR(Magneto Resistive )とも記す。)素子を有する再生ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。MR素子としては、異方性磁気抵抗(以下、AMR(Anisotropic Magneto Resistive )と記す。)効果を用いたAMR素子と、巨大磁気抵抗(以下、GMR(Giant Magneto Resistive )と記す。)効果を用いたGMR素子とがあり、AMR素子を用いた再生ヘッドはAMRヘッドあるいは単にMRヘッドと呼ばれ、GMR素子を用いた再生ヘッドはGMRヘッドと呼ばれる。AMRヘッドは、面記録密度が1ギガビット/(インチ)2 を超える再生ヘッドとして利用され、GMRヘッドは、面記録密度が3ギガビット/(インチ)2 を超える再生ヘッドとして利用されている。
【0003】
AMRヘッドは、AMR効果を有するAMR膜を備えている。GMRヘッドは、AMR膜を、GMR効果を有するGMR膜に置き換えたもので、構造上はAMRヘッドと同様である。ただし、GMR膜は、AMR膜よりも、同じ外部磁界を加えたときに大きな抵抗変化を示す。このため、GMRヘッドは、AMRヘッドよりも、再生出力を3〜5倍程度大きくすることができると言われている。
【0004】
再生ヘッドの性能を向上させる方法としては、MR膜を変える方法がある。一般的に、AMR膜は、MR効果を示す磁性体を膜としたもので、単層構造になっている。これに対して、多くのGMR膜は、複数の膜を組み合わせた多層構造になっている。GMR効果が発生するメカニズムにはいくつかの種類があり、そのメカニズムによってGMR膜の層構造が変わる。GMR膜としては、超格子GMR膜、グラニュラ膜、スピンバルブ膜等が提案されているが、比較的構成が単純で、弱い磁界でも大きな抵抗変化を示し、量産を前提とするGMR膜としては、スピンバルブ膜が有力である。このように、再生ヘッドは、例えば、MR膜をAMR膜からGMR膜等の磁気抵抗感度の優れた材料に変えることで、容易に、性能を向上するという目的を達せられる。
【0005】
再生ヘッドの性能を決定する要因としては、上述のような材料の選択の他に、パターン幅、特に、MRハイトがある。MRハイトは、MR素子のエアベアリング面(媒体対向面)側の端部から反対側の端部までの長さ(高さ)を言う。このMRハイトは、本来、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御される。
【0006】
一方、再生ヘッドの性能向上に伴って、記録ヘッドの性能向上も求められている。記録ヘッドの性能のうち、記録密度を高めるには、磁気記録媒体におけるトラック密度を上げる必要がある。そのために、上部磁極を形成する磁性層に対して、半導体加工技術を利用してサブミクロン加工を施して、狭トラック構造の記録ヘッドを実現することや、より高い飽和磁束密度を持つ磁性材料を用いることが望まれていた。
【0007】
記録ヘッドの性能を決定するその他の要因としては、スロートハイトがある。スロートハイトは、エアベリング面から、薄膜コイルを電気的に分離する絶縁層のエッジまでの部分(本出願において磁極部分と言う。)の長さ(高さ)を言う。記録ヘッドの性能向上のためには、スロートハイトの縮小化が望まれている。このスロートハイトも、エアベアリング面の加工の際の研磨量によって制御される。
【0008】
このように、薄膜磁気ヘッドの性能の向上のためには、記録ヘッドと再生ヘッドをバランスよく形成することが重要である。
【0009】
ここで、図15ないし図27を参照して、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例として、複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例について説明する。なお、図15ないし図23において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。
【0010】
この製造方法では、まず、図15に示したように、例えばアルティック(Al2O3・TiC)よりなる基板101の上に、例えばアルミナ(Al2O3)よりなる絶縁層102を、約5〜10μm程度の厚みで堆積する。
【0011】
次に、図16に示したように、絶縁層102の上に、磁性材料よりなる再生ヘッド用の下部シールド層103を形成する。
【0012】
次に、図17に示したように、下部シールド層103の上に、例えばアルミナを100〜200nmの厚みにスパッタ堆積し、絶縁層としての下部シールドギャップ膜104を形成する。次に、下部シールドギャップ膜104の上に、再生用のMR素子105を形成するためのMR膜を、数十nmの厚みに形成する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、例えばイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子105を形成する。なお、MR素子105は、GMR素子でもよいし、AMR素子でもよい。
【0013】
次に、図18に示したように、下部シールドギャップ膜104およびMR素子105の上に、絶縁層としての上部シールドギャップ膜106を形成し、MR素子105をシールドギャップ膜104,106内に埋設する。
【0014】
次に、図19に示したように、上部シールドギャップ膜106の上に、磁性材料からなり、再生ヘッドと記録ヘッドの双方に用いられる上部シールド層兼下部磁極(以下、上部シールド層と記す。)107を形成する。
【0015】
次に、上部シールド層107の上に、絶縁膜、例えばアルミナ膜よりなる記録ギャップ層108を形成する。次に、後方(図19(a)における右側)の位置において、磁路形成のために、記録ギャップ層108を部分的にエッチングして、コンタクトホールを形成する。次に、磁極部分における記録ギャップ層108の上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えば高飽和磁束密度材のパーマロイ(NiFe)またはFeNよりなるポールチップ109を形成する。ポールチップ109は、上部磁極の一部をなす。このとき、同時に、磁路形成のためのコンタクトホールの上に、磁路形成のための磁性材料からなる磁性層119を形成する。
【0016】
次に、ポールチップ109をマスクとして、イオンミリングによって、記録ギャップ層108と上部シールド層(下部磁極)107をエッチングする。図19図(b)に示したように、上部磁極(ポールチップ109)、記録ギャップ層108および上部シールド層(下部磁極)107の一部の各側壁が垂直に自己整合的に形成された構造は、トリム(Trim)構造と呼ばれる。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を防止することができる。
【0017】
次に、図20に示したように、全面に、例えばアルミナ膜よりなる絶縁層110を、約3μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層110を、ポールチップ109および磁性層119の表面に至るまで研磨して平坦化する。この際の研磨方法としては、機械的な研磨またはCMP(化学機械研磨)が用いられる。この平坦化により、ポールチップ109および磁性層119の表面が露出する。
【0018】
次に、平坦化された絶縁層110の上に、フォトレジスト層111を、高精度のフォトリソグラフィにより、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層111の上に、例えば銅(Cu)よりなる誘導型の記録ヘッド用の第1層目の薄膜コイル112を形成する。
【0019】
次に、図21に示したように、フォトレジスト層111およびコイル112の上に、フォトレジスト層113を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層113の表面を平坦にするために、例えば250〜300°Cの温度で熱処理する。
【0020】
次に、図22に示したように、フォトレジスト層113の上に、第2層目の薄膜コイル114を形成する。次に、フォトレジスト層113およびコイル114上に、フォトレジスト層115を、所定のパターンに形成する。次に、フォトレジスト層115の表面を平坦にするために、例えば250〜300°Cの温度で熱処理する。
【0021】
次に、図23に示したように、ポールチップ109、フォトレジスト層111,113,115および磁性層119の上に、記録ヘッド用の磁性材料、例えばパーマロイよりなる上部磁極層116を形成する。次に、上部磁極層116の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層117を形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0022】
完成した状態の薄膜磁気ヘッドを、図24および図25に示す。図24は、エアベアリング面120に垂直な薄膜磁気ヘッドの断面を示し、図25は、磁極部分のエアベアリング面120に平行な断面を拡大して示している。図24において、THは、スロートハイトを表し、MR−Hは、MRハイトを表している。なお、図25に示したように、MR素子105の側方には、第1の電極層121が設けられている。
【0023】
薄膜磁気ヘッドの性能を決定する要因として、スロートハイトやMRハイト等の他に、図24においてθで示したようなエイペックスアングル(Apex Angle)がある。このエイペックスアングルは、フォトレジスト層111,113,115で覆われて山状に盛り上がったコイル部分(以下、エイペックス部と言う。)における磁極側の側面の角部を結ぶ直線と絶縁層110の上面とのなす角度をいう。
【0024】
図26は、上述のようにして製造される薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図、図27は、上述のようにして製造される薄膜磁気ヘッドの平面図である。図26は、下部シールド層103、MR素子105および上部シールド層(下部磁極)107を形成した後の状態を示している。なお、第1の電極層121には、第2の電極層122が接続されている。また、図27では、オーバーコート層117を省略している。なお、図15ないし図23における(a)は、図27におけるA−A′線断面を表し、(b)は、図27におけるB−B′線断面を表している。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、薄膜磁気ヘッドの特性や性能は、主に、再生ヘッドにおけるMR素子と、記録ヘッドにおける磁極部分によって決定される。より具体的に説明すると、薄膜磁気ヘッドにおける再生ヘッドの特性や性能は、主に、MR素子の幅に対応した再生ヘッドにおけるトラック幅によって決定され、記録ヘッドの特性や性能は、主に、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅等、磁極部分の形状によって決定される。そのため、薄膜磁気ヘッドの顧客の要求は、再生ヘッドにおけるトラック幅や、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅等、再生ヘッドにおけるMR素子や記録ヘッドにおける磁極部分の形成のプロセスに関わる事項に集中する。
【0026】
従って、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを量産する場合には、再生ヘッドにおけるMR素子を形成する工程から先の工程を、顧客の要求に対応した工程にして、製品を作る必要がある。
【0027】
しかしながら、図15ないし図27を参照して説明したように、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、MR素子を形成する工程は、薄膜磁気ヘッドを量産するための全工程のうちの初期の工程である。従って、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、MR素子を形成する工程以降の工程に要する時間が、全工程に要する時間に対して大きな割合を占めていた。そのため、従来は、顧客の注文を受けてから顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを完成させ、出荷するまでの時間、いわゆるサイクルタイムが長く、これは、例えば20日から25日程度であり、場合によっては30日から40日に及ぶ場合があった。その結果、顧客との間で、早い時期に、薄膜磁気ヘッドの特性等の仕様を取り決めても、実際の製品を出荷するまでに、上記のような多くの日数がかかっていた。
【0028】
また、昨今の技術進歩の速度と、顧客の要求する記録面密度や再生速度の向上は、目を見張るものがある。それに伴い、数カ月単位で、コンピュータのハードディスクドライブの仕様の変更や改善がなされている。そのため、薄膜磁気ヘッドの顧客は、注文後、短期間で、要求に合った薄膜磁気ヘッドが納入されることを望む。従って、薄膜磁気ヘッドの製造業者は、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを設計し、短期間で、その薄膜磁気ヘッドを量産し、市場に出荷する必要がある。
【0029】
このような状況にもかかわらず、従来は、上述のようにサイクルタイムが長すぎるため、顧客のニーズに十分応えることが難しいという問題点があった。
【0030】
また、従来は、薄膜磁気ヘッドの製造の全工程が終了した後に、完成品の薄膜磁気ヘッドに対して良・不良の検査を行っていた。そのため、製造途中で不良品が発生しても、それを取り除くことができず、完成品の歩留りを向上させることが難しいという問題点があった。
【0031】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを短期間で提供することを可能とすると共に、薄膜磁気ヘッドの歩留りを向上させることを可能とした薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法ならびに薄膜磁気ヘッド用素材およびその製造方法を提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドの一部と記録ヘッドの一部とを含む薄膜磁気ヘッド用素材を備えている。再生ヘッドは、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、磁気抵抗素子をシールドする第1および第2のシールド層とを有している。記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部がギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有している。第2のシールド層は、第1のシールド層に対して同一平面上に互いに絶縁された状態で配置された第1の部分と、磁気抵抗素子を挟んで第1のシールド層と対向すると共に第1の部分に接続された第2の部分とを有し、且つ、第1の磁性層を兼ねている。薄膜コイルの少なくとも一部は、第2のシールド層の第1の部分と第2の磁性層との間に配設されている。薄膜磁気ヘッド用素材は、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものである。
【0033】
本発明の薄膜磁気ヘッドでは、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた薄膜磁気ヘッド用素材を製造しておき、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成することが可能となる。
【0034】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法は、薄膜磁気ヘッド用素材を製造する第1の工程と、第1の工程によって製造された薄膜磁気ヘッド用素材に対して第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを加えることによって薄膜磁気ヘッドを完成させる第2の工程とを備えている。第1の工程は、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とが、同一平面上に互いに絶縁された状態で配置されるように、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とを形成する工程と、薄膜コイルの少なくとも一部が、第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置されるように、薄膜コイルの少なくとも一部を形成する工程とを備えている。第2の工程は、第1のシールド層の上に、絶縁膜を介して、磁気抵抗素子を形成する工程と、磁気抵抗素子の上に、絶縁膜を介して、第2のシールド層の第2の部分を形成する工程と、第2のシールド層の第2の部分の上に、ギャップ層を形成する工程と、ギャップ層の上に、第2の磁性層を形成する工程とを備えている。
【0035】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた薄膜磁気ヘッド用素材を製造しておき、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成することが可能となる。
【0036】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分を、めっき法により形成するようにしてもよい。
【0037】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材は、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置された薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものである。
【0038】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材によれば、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成して、薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となる。
【0039】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法は、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とが、同一平面上に互いに絶縁された状態で配置されるように、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分とを形成する工程と、薄膜コイルの少なくとも一部が、第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置されるように、薄膜コイルの少なくとも一部を形成する工程とを備えている。
【0040】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法によれば、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた素材を製造しておくことができ、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成して、薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となる。
【0041】
本発明の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法において、第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分を、めっき法により形成するようにしてもよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1ないし図8を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法としての複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。なお、図1ないし図6において、(a)はエアベアリング面に垂直な断面を示し、(b)は磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示している。また、以下の説明は、本実施の形態に係る磁気ヘッド用素材の製造方法の説明を兼ねている。
【0043】
本実施の形態に係る製造方法では、まず、図1に示したように、例えばアルティック(Al2O3・TiC)よりなる基板51の上に、例えばアルミナ(Al2O3 )よりなる絶縁層52を、約5〜10μmの厚みで堆積する。
【0044】
次に、図示しないが、絶縁層52の上に、下部シールド層と上部シールド層兼下部磁極(以下、上部シールド層と記す。)の一部をめっき法にて形成する際に使用される電極膜としてのシード層を、パーマロイ(NiFe)のスパッタによって形成する。
【0045】
次に、図2に示したように、シード層の上に、フォトレジスト膜をマスクとして、めっき法にて、磁性材料、例えばパーマロイ(NiFe)を約2〜3μmの厚みで選択的に形成して、再生ヘッド用の下部シールド層53と、上部シールド層の一部(以下、第1の部分と言う。)54aとを形成する。なお、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aは、磁性材料をスパッタリングした後、フォトリソグラフィによりパターニングして形成してもよい。下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aは、フォトレジスト膜によって、両者の間に、MR素子に接続される一対の電極それぞれの少なくとも一部が配置される一対の溝55が形成されるように、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置されるように形成される。下部シールド層53は、本発明における第1のシールド層に対応し、上部シールド層は、本発明における第2のシールド層に対応する。
【0046】
次に、溝55の部分におけるシード層を、選択的にエッチングして除去する。次に、溝55内を含めて、下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aの上に、例えばアルミナよりなる絶縁膜56を、例えばスパッタにより、約0.5〜1μmの厚みに形成する。
【0047】
次に、図3に示したように、絶縁膜56で覆われた溝55内に、MR素子に接続される電極(リード)となる一対の導電層57を、例えば銅(Cu)によって形成する。導電層57は、例えば、フォトレジスト膜をマスクとして、めっき法にて、銅を例えば約3μmの厚みに、溝55内に選択的に形成することによって形成する。この他、導電層57は、スパッタによって形成してもよい。
【0048】
次に、全面に、例えばアルミナまたはシリコン酸化膜よりなる絶縁層を、2〜3μmの厚みに形成する。次に、この絶縁層を、下部シールド層53、上部シールド層の第1の部分54aおよび導電層57の表面に至るまで研磨して平坦化する。この際の研磨方法としては、機械的な研磨またはCMP(化学機械研磨)が用いられる。この平坦化により、下部シールド層53、上部シールド層の第1の部分54aおよび導電層57の表面が露出する。
【0049】
このように、導電層57は、500nm以上の厚みの絶縁膜56によって完全に覆われた、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aとの間の溝55内に、めっき法により正確に埋設されるように形成される。従って、導電層57と下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aとの間の絶縁性能は極めて高く、導電層57と下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aとの間において、パーティクルや膜のピンホール等による磁気的および電気的な絶縁の不良をなくすことができる。
【0050】
次に、上部シールド層の第1の部分54aの上に、例えばアルミナ膜またはシリコン酸化膜よりなる絶縁膜を、0.5〜1μmの厚みに形成する。次に、フォトリソグラフィを用いて、絶縁膜を選択的にエッチングして、絶縁層58を形成する。このとき、絶縁層58の磁極部分側のエッジにテーパを形成する。次に、絶縁層58の上に、例えば銅(Cu)よりなる、記録ヘッド用の薄膜コイル59を、例えばめっき法により形成する。次に、絶縁層58およびコイル59の上に、フォトレジストよりなる絶縁層60を、所定のパターンに形成する。次に、200°C程度の温度でキュアを施す。
【0051】
なお、図3に示した状態に至るまでの製造工程を、以下の変形例のように変更してもよい。この変形例では、図2に示した状態から、同じ工程で、同じ材料を用いて、絶縁膜56の上にコイル59を形成すると共に、絶縁膜56で覆われた溝55内に導電層57を形成する。次に、絶縁膜56およびコイル59の上に、フォトレジストよりなる絶縁層60を、所定のパターンに形成する。次に、絶縁層60をマスクにして、絶縁膜56をパターンニングして、図3に示した状態とする。この場合には、図3における絶縁層58が、絶縁膜56に代わる。この変形例によれば、製造工程を大幅に減少させることができる。
【0052】
図3に示した状態の半製品、すなわち、下部シールド層53と、上部シールド層の第1の部分54aと、薄膜コイル59とを備えた半製品が、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド用素材となる。
【0053】
図3に示した状態から、次に、図4に示したように、全面に、スパッタにより、チッ化アルミニウムやアルミナ等の絶縁材を、数十nmの厚みに形成して、絶縁層としての下部シールドギャップ膜61aを形成する。下部シールドギャップ膜61aを形成する際には、予め、後述する電極層と導電層57とを電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する部分に、リフトオフを容易に行うことができるように、例えばT型のフォトレジストパターンを形成しておき、下部シールドギャップ膜61aの形成後、フォトレジストパターンをリフトオフすることにより、コンタクトホールを形成する。なお、コンタクトホールは、フォトリソグラフィを用いて、下部シールドギャップ膜61aを選択的にエッチングして形成してもよい。
【0054】
次に、下部シールドギャップ膜61aの上に、再生用のMR素子62を形成するためのMR膜を、スパッタにより、数十nmの厚みに形成する。次に、このMR膜の上に、MR素子62を形成すべき位置に選択的に、図示しないフォトレジストパターンを形成する。このとき、リフトオフを容易に行うことができるように、例えばT型のフォトレジストパターンを形成する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、例えば、アルゴン系のイオンミリングによってMR膜をエッチングして、MR素子62を形成する。なお、MR素子62は、GMR素子でもよいし、AMR素子でもよい。
【0055】
次に、下部シールドギャップ膜61aの上に、同じフォトレジストパターンをマスクとして、MR素子62に電気的に接続される一対の電極層63を、スパッタにより、数十〜数百nmの厚みに形成する。電極層63は、例えば、TiW,CoPt,TiW,Ta,Auを積層して形成される。また、電極層63は、下部シールドギャップ膜61aに形成されたコンタクトホールを介して、導電層57に対して電気的に接続される。電極層63および導電層57が、MR素子62に接続される電極を構成する。
【0056】
次に、全面に、スパッタにより、チッ化アルミニウムやアルミナ等の絶縁材を、数十nmの厚みに形成して、絶縁層としての上部シールドギャップ膜61bを形成して、MR素子62をシールドギャップ膜61a,61b内に埋設する。次に、フォトレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングによって、シールドギャップ膜61a,61bを選択的に除去して、後述する上部シールド層の第2の部分と第1の部分54aとを接続するためのコンタクトホールと、コイル59の後方(図4(a)における右側)の位置における磁路形成のためのコンタクトホールとを形成する。
【0057】
次に、図5に示したように、磁極部分側に、磁性材料からなり、MR素子62を挟んで下部シールド層53と対向するように配置され、且つ、上部シールド層の第1の部分54aに接続される上部シールド層の第2の部分54bを、例えば約3.5μmの厚みに形成する。同時に、薄膜コイル59の後方の位置における磁路形成のためのコンタクトホールの上に、磁路形成のための磁性材料からなる磁性層64を、例えば約3.5μmの厚みに形成する。上部シールド層の第2の部分54bと磁性層64は、例えば、めっき法によって形成する。
【0058】
なお、下部シールド層53や上部シールド層54a,54bは、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)を用いて形成してもよいし、NiFe(Ni:50重量%,Fe:50重量%)、センダスト、チッ化鉄(FeN)やその化合物、Fe−Co−Zrのアモルファス等の高飽和磁束密度材を用いて形成してもよいし、これらの材料を2種類以上重ねて形成してもよい。下部シールド層53や上部シールド層54a,54bの材料として、高飽和磁束密度材を用いることにより、MR素子62に対する、誘導型の記録ヘッドにおけるコイルから発生する磁気等の内部要因やハードディスク装置のモータ等の外部要因によるノイズの影響をより低減することが可能となり、正確な再生出力を得ることができ、しかも高感度な再生ヘッドを形成することが可能となる。
【0059】
次に、図6に示したように、コイル59の上側に、フォトレジストよりなる絶縁層65を、所定のパターンに形成する。次に、200°C程度の温度でキュアを施す。本実施の形態において、スロートハイトは、絶縁層65によって規定される。次に、全体に、アルミナ膜、チッ化アルミニウム膜、シリコン酸化膜等の絶縁膜よりなる記録ギャップ層66を、例えば300nm程度の厚みに形成する。次に、磁性層64の上側の部分において、記録ギャップ層66を選択的に除去して、磁路形成のためのコンタクトホールを形成する。
【0060】
次に、記録ギャップ層66の上に、誘導型の記録ヘッドのトラック幅を決定する上部磁極層67を、約3〜4μmの厚みに形成する。この上部磁極層67は、例えば、NiFe(Ni:50重量%,Fe:50重量%)を用いてめっき法により形成してもよいし、チッ化鉄(FeN)やその化合物等の高飽和磁束密度材をスパッタし、パターニングして形成してもよい。なお、上部磁極層67の材料としては、上記の例の他に、NiFe(Ni:80重量%,Fe:20重量%)や、Fe−Co−Zrのアモルファス等の高飽和磁束密度材を用いても良い。また、上部磁極層67は、上述の種々の材料を2種類以上重ねて形成してもよい。上部磁極層67の材料に、高飽和磁束密度材を用いることで、コイル59で発生した磁束が途中で飽和することなく有効に磁極部分に到達するようになり、効率のよい記録ヘッドを形成することが可能となる。
【0061】
次に、上部磁極層67の両側における記録ギャップ層66をドライエッチングにより除去した後、露出した上部シールド層の第2の部分54bを、上部磁極層67をマスクとして、イオンミリングによって、例えば約0.5μmエッチングして、トリム構造とする。
【0062】
次に、上部磁極層67の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層68を、約30〜40μmの厚みに形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0063】
上部シールド層(下部磁極)54a,54b、磁性層64、上部磁極層67と、薄膜コイル59は、本発明における記録ヘッドに対応する。つまり、上部シールド層(下部磁極)54a,54bおよび磁性層64は、本発明における記録ヘッドにおける第1の磁性層に対応し、上部磁極層67は、第2の磁性層に対応する。
【0064】
図7は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図、図8は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。なお、図7は、図3に示した状態に対応している。また、図8では、オーバーコート層68を省略している。また、この図は、スライダの機械加工を行う前の状態を表している。図8において、符号69は、上部シールド層の第2の部分54bと第1の部分54aとを接続するためのコンタクトホールを示している。なお、図1ないし図6における(a)は、図8におけるC−C′線断面を表し、(b)は、図8におけるD−D′線断面を表している。
【0065】
なお、図8に示したように、本実施の形態において、導電層57の少なくとも一部をシールドするための電極シールド層71を設けてもよい。この電極シールド層71は、導電層57のうち、上部シールド層の第2の部分54bに対向しない部分を覆うように設けられる。また、電極シールド層71は、例えば、上部磁極層67を形成する際に同時に、上部磁極層67と同じ磁性材料を用いて形成される。
【0066】
本実施の形態では、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aが、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置されている。そして、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aの間に形成された溝55内に、MR素子62に接続される電極を構成する導電層57の一部が、絶縁膜56によって、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに対して絶縁された状態で配置されている。
【0067】
ところで、薄膜磁気ヘッドの多くの顧客は、再生ヘッドにおけるトラック幅や、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅を、自社製品に合わせて注文してくる。しかし、注文の後に、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを生産していたのでは、注文から短期間で製品を提供することは困難であった。
【0068】
本実施の形態によれば、図3に示したように、コイル59の形成工程まで(本実施の形態では、絶縁層60の形成までを言うものとする。)で、薄膜磁気ヘッドにおける共通の基体である薄膜磁気ヘッド用素材が完成する。そして、この薄膜磁気ヘッド用素材に続く工程に要する時間は、比較的短い。また、この薄膜磁気ヘッド用素材の段階で、良・不良の検査を行って、不良品を取り除くことができる。
【0069】
そこで、本実施の形態によれば、コイル59の形成工程まで経た半製品、すなわち薄膜磁気ヘッド用素材を、多くの在庫が得られるように量産し、顧客に対応が可能なところまで在庫数を増加させた後、それぞれ異なる顧客毎の要求を受け入れて、薄膜磁気ヘッドの仕様を取り決めることができる。従って、本実施の形態によれば、薄膜磁気ヘッドの全製造工程の50〜60%以上の工程を既に終了し、しかも、その多くが良・不良の検査により良品とされた半製品を適正の在庫だけ持ち、顧客の期待する仕様の薄膜磁気ヘッドを、注文から短時間で提供することが可能となる。その結果、顧客の注文を受けてから薄膜磁気ヘッドを完成させ、出荷するまでの時間としてのサイクルタイムを、従来では例えば20日〜40日程度要していたのに対し、本実施の形態によれば、例えば2週間以内に短縮することが可能となる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階で不良品は既に取り除かれているので、良品の半製品を、顧客の要求に応じて、限りなく早く、製品にすることができ、従来にはない高い品質保証が可能となり、最終製品の歩留りも向上する。
【0071】
また、本実施の形態によれば、顧客の要求が短期間で変化しても、速やかに対応することができ、製品の無駄を防止することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階で良・不良の検査を行うことができるので、不良が発生している半製品については、その後の工程を省くことができるので、従来に比べて、薄膜磁気ヘッドの製造コストを低減することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階と、薄膜磁気ヘッドの完成後の段階の双方で、良・不良の検査を行うことにより、製品について極めて高い品質保証が可能となる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、半製品の段階と、薄膜磁気ヘッドの完成後の段階の双方で、良・不良の検査を行うことにより、問題のある工程を発見しやすく、また、その問題のある工程を改善を速やかに行うことが可能となり、大きな問題の発生を防止することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、コイル59を形成した後に、MR素子62を形成するので、コイルの形成の際におけるフォトレジストに対する熱処理やその際に発生する水分等の影響によるMR素子62の特性劣化を防止することが可能となる。この効果は、特に、MR素子62として、感度の高いGMR素子を用いる場合に顕著である。
【0076】
また、本実施の形態によれば、MR素子62を形成した後の工程が、従来に比べて短くなるため、ハンドリング等によるMR素子62の静電気破壊等の破損を、極めて少なくすることが可能となる。この効果は、特に、MR素子62として、複数の極めて薄い(1〜5nm程度)の層からなるGMR素子を用いる場合に顕著である。
【0077】
また、本実施の形態では、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aが、同一平面上に、互いに絶縁された状態で配置されている。そして、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aの間に形成された溝55内に、MR素子62に接続される電極を構成する導電層57の一部が、絶縁膜56によって、下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに対して絶縁された状態で配置されている。従って、本実施の形態によれば、導電層57と、下部シールド層53および上部シールド層の第1の部分54aとの間の絶縁性能を極めて高くすることができる。また、導電層57の一部は、下部シールドギャップ膜61aおよび上部シールドギャップ膜61bを介して上部シールド層の第2の部分54bと対向するが、大部分は上部シールド層54a,54bと対向しない構造であるため、導電層57と上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を極めて高くすることができる。
【0078】
以上のことから、本実施の形態によれば、導電層57と、下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を極めて高くすることができ、導電層57と、下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の磁気的および電気的な絶縁の不良をなくすことができる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、導電層57が下部シールドギャップ膜61aと上部シールドギャップ膜61bとの間に介挿された構造ではないので、導電層57が下部シールドギャップ膜61a、上部シールドギャップ膜61bを介して下部シールド層53、上部シールド層54a,54bと広い面積で対向することがない。従って、下部シールドギャップ膜61a、上部シールドギャップ膜61bを薄くしても、導電層57と下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を高く維持することができる。
【0080】
このように本実施の形態によれば、下部シールドギャップ膜61aおよび上部シールドギャップ膜61bを厚くすることなく、MR素子62に接続される電極と下部シールド層53および上部シールド層54a,54bとの間の絶縁性能を向上させることができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、サーマルアスピリティ(Thermal Asperity)を改善するために、下部シールドギャップ膜61aおよび上部シールドギャップ膜61bを十分薄くすることが可能となり、再生ヘッドの性能を向上させることができる。なお、サーマルアスピリティとは、再生時における再生ヘッドの自己発熱による再生特性の劣化を言う。
【0082】
また、本実施の形態によれば、導電層57を十分厚く形成することができるので、MR素子62に接続される電極の配線抵抗をより低くすることができる。これにより、MR素子62における微小な抵抗変化に対応する微小な出力信号変化を感度よく検出することが可能となり、この点からも再生ヘッドの性能を向上させることができる。
【0083】
また、本実施の形態では、導電層57のうち、MR素子62に近く、溝55内に配置された部分は、両側から下部シールド層53と上部シールド層の第1の部分54aに挟み込まれてシールドされ、上面側が上部シールド層の第2の部分54bによってシールドされる構造となっている。従って、MR素子62に対する、誘導型の記録ヘッドにおけるコイルから発生する磁気等の内部要因やハードディスク装置のモータ等の外部要因によるノイズの影響を低減することができる。この点からも、再生ヘッドの性能を向上させることができる。
【0084】
また、電極シールド層71を設けることにより、導電層57のうち、上部シールド層の第2の部分54bに対向しない部分の上面側を、電極シールド層71によってシールドすることができるので、導電層57に対するノイズの影響をより低減することができる。
【0085】
また、本実施の形態では、薄膜コイル59は、上部シールド層の第1の部分54aと上部磁極層67との間であって、上部シールド層の第2の部分54bの面に沿った方向の側方に配置されている。そのため、エイペックス部、すなわち、山状に盛り上がったコイル部分の高さを低くでき、記録ヘッドのトラック幅を決定する磁極(上部磁極層67)を微細に形成することが可能となる。これにより、記録密度を高め、記録ヘッドの性能を向上させることが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、互いに対向するコイル59と上部シールド層の第1の部分54aとの間に、厚い絶縁層58を形成できるので、コイル59と上部シールド層54a,54bとの間に、大きな絶縁耐圧を得ることができると共に、コイル59からの磁束の漏れを低減することができる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、記録ヘッドにおける上部磁極が、1層の上部磁極層67によって形成され、ポールチップと上部磁極層による2層構造になっていないので、ポールチップよりも幅の大きい上部磁極層がエアベアリング面において露出することがない。従って、実効トラック幅が大きくなったり、記録媒体上において本来データを記録すべき領域以外の領域にデータを書き込んでしまうような不具合を防止することができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、ポールチップと上部磁極層による2層構造の場合に、ポールチップと上部磁極層との接触部で生じる磁束の飽和がなくなり、磁束立ち上がり時間(Flux Rise Time)等の書き込み特性を向上させることが可能となる。
【0089】
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面に垂直な断面を示す断面図である。なお、図9は、スライダの機械加工を行う前の状態を表している。
【0090】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおけるフォトレジストよりなる絶縁層65内に、第2層目の薄膜コイル72を形成したものである。この場合には、コイル59の上側にフォトレジストよりなる絶縁層65を、所定の厚みだけ形成した後、コイル72を、例えばめっき法により形成し、更に、このコイル72を覆うように絶縁層65を形成するようにする。なお、本実施の形態において、スロートハイトは、絶縁層65によって規定される。
【0091】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0092】
次に、図10ないし図14を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、コイル59の形成工程までは、第1の実施の形態と同様である。そして、この工程まで経た半製品を量産し、良・不良のチェックを行って、良品の半製品を適正量だけ確保しておく。
【0093】
本実施の形態では、顧客の要求に応じて製品を完成される場合には、顧客の要求に応じて、MR素子の選択(AMR素子とするかやGMR素子とするか等)や、シールドギャップ膜の材料(アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等)の選択を行うと共に、再生ヘッドにおけるトラック幅や、記録ヘッドにおけるスロートハイトやトラック幅を決定し、上記半製品に対して、図10に示したように、シールドギャップ膜61a,61b、MR素子62および電極層63を形成する。次に、上部シールド層の第2の部分54bと磁性層64とを形成する。次に、全体に、例えばアルミナ膜よりなる絶縁層81を、3〜4μmの厚みに形成する。そして、上部シールド層の第2の部分54bおよび磁性層64の表面が露出するように、全体を例えばCMPによって平坦化する。
【0094】
次に、図11に示したように、上部シールド層の第2の部分54bおよび絶縁層81の上に、例えばアルミナ膜よりなり、記録ヘッドのスロートハイトを規定するための絶縁層82を形成する。次に、この絶縁層82の上に、第2層目の薄膜コイル83を形成する。次に、絶縁層82およびコイル83の上に、フォトレジストよりなる絶縁層84を、所定のパターンに形成する。次に、アルミナ膜等の絶縁膜よりなる記録ギャップ層85を形成する。次に、磁性層64の上側の部分において、記録ギャップ層85を選択的に除去して、磁路形成のためのコンタクトホールを形成する。
【0095】
次に、図12に示したように、記録ギャップ層85の上に、誘導型の記録ヘッドのトラック幅を決定する上部磁極層86を形成する。次に、上部磁極層86の両側における記録ギャップ層85を、反応性イオンエッチング等のドライエッチングにより除去した後、露出した上部シールド層の第2の部分54bを、上部磁極層86をマスクとして、イオンミリング等によってエッチングして、トリム構造とする。
【0096】
次に、上部磁極層86の上に、例えばアルミナよりなるオーバーコート層87を、約3〜5μmの厚みに形成する。最後に、スライダの機械加工を行って、記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベアリング面を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0097】
図13は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図、図14は、上述のようにして製造される本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。また、図14では、オーバーコート層87を省略している。また、この図は、スライダの機械加工を行う前の状態を表している。図14において、符号69は、上部シールド層の第2の部分54bと第1の部分54aとを接続するためのコンタクトホールを示している。なお、図10ないし図12における(a)は、図14におけるE−E′線断面を表し、(b)は、図14におけるF−F′線断面を表している。
【0098】
なお、図14に示したように、本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、導電層57の少なくとも一部をシールドするための電極シールド層71を設けてもよい。この電極シールド層71は、導電層57のうち、上部シールド層の第2の部分54bに対向しない部分を覆うように設けられる。また、電極シールド層71は、例えば、上部磁極層86を形成する際に同時に、上部磁極層86と同じ磁性材料を用いて形成される。
【0099】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0100】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されない。例えば、上記各実施の形態では、記録ヘッドにおける上部磁極を、1層の上部磁極層によって形成するようにしたが、本発明は、ポールチップと上部磁極層の2層によって上部磁極を形成する場合にも適用することができる。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の薄膜磁気ヘッド、薄膜磁気ヘッドの製造方法、薄膜磁気ヘッド用素材もしくは薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法によれば、第1のシールド層と、第2のシールド層の第1の部分と、薄膜コイルの少なくとも一部とを備えた薄膜磁気ヘッド用素材を製造しておき、この素材に対して、顧客の要求に応じて、第2のシールド層の第2の部分と、磁気抵抗素子と、第2の磁性層とを形成することで、薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となるので、顧客の要求に合った仕様の薄膜磁気ヘッドを短期間で提供することが可能となると共に、素材の段階で良・不良の検査を行って、良品の素材のみを用いて薄膜磁気ヘッドを製造することが可能となるので、薄膜磁気ヘッドの歩留りを向上させることを可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図2】図1に続く工程を説明するための断面図である。
【図3】図2に続く工程を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面に垂直な断面を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【図15】従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図16】図15に続く工程を説明するための断面図である。
【図17】図16に続く工程を説明するための断面図である。
【図18】図17に続く工程を説明するための断面図である。
【図19】図18に続く工程を説明するための断面図である。
【図20】図19に続く工程を説明するための断面図である。
【図21】図20に続く工程を説明するための断面図である。
【図22】図21に続く工程を説明するための断面図である。
【図23】図22に続く工程を説明するための断面図である。
【図24】従来の薄膜磁気ヘッドにおけるエアベアリング面に垂直な断面を示す断面図である。
【図25】従来の薄膜磁気ヘッドにおける磁極部分のエアベアリング面に平行な断面を示す断面図である。
【図26】従来の薄膜磁気ヘッドにおける製造途中の状態のものを示す平面図である。
【図27】従来の薄膜磁気ヘッドの平面図である。
【符号の説明】
51…基板、52…絶縁層、53…下部シールド層、54a…上部シールド層の第1の部分、54b…上部シールド層の第2の部分、56…絶縁膜、57…導電層、58…絶縁層、59…薄膜コイル、60…絶縁層、61a…下部シールドギャップ膜、61b…上部シールドギャップ膜、62…MR素子、63…電極層、64…磁性層、66…記録ギャップ層、67…上部磁極層、68…オーバーコート層。
Claims (6)
- 再生ヘッドと記録ヘッドとを備えた薄膜磁気ヘッドであって、
前記再生ヘッドの一部と前記記録ヘッドの一部とを含む薄膜磁気ヘッド用素材を備え、
前記再生ヘッドは、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が前記磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドする第1および第2のシールド層とを有し、
前記記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部がギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有し、
前記第2のシールド層は、前記第1のシールド層に対して同一平面上に互いに絶縁された状態で配置された第1の部分と、前記磁気抵抗素子を挟んで前記第1のシールド層と対向すると共に前記第1の部分に接続された第2の部分とを有し、且つ、前記第1の磁性層を兼ねており、
前記薄膜コイルの少なくとも一部は、前記第2のシールド層の第1の部分と前記第2の磁性層との間に配設され、
前記薄膜磁気ヘッド用素材は、前記第1のシールド層と、前記第2のシールド層の第1の部分と、前記薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、前記第2のシールド層の第2の部分と、前記磁気抵抗素子と、前記第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものであることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 再生ヘッドと記録ヘッドとを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記薄膜磁気ヘッドは、前記再生ヘッドの一部と前記記録ヘッドの一部とを含む薄膜磁気ヘッド用素材を備え、
前記再生ヘッドは、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が前記磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドする第1および第2のシールド層とを有し、
前記記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部がギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有し、
前記第2のシールド層は、前記第1のシールド層に対して同一平面上に互いに絶縁された状態で配置された第1の部分と、前記磁気抵抗素子を挟んで前記第1のシールド層と対向すると共に前記第1の部分に接続された第2の部分とを有し、且つ、前記第1の磁性層を兼ねており、
前記薄膜コイルの少なくとも一部は、前記第2のシールド層の第1の部分と前記第2の磁性層との間に配設され、
前記薄膜磁気ヘッド用素材は、前記第1のシールド層と、前記第2のシールド層の第1の部分と、前記薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、
薄膜磁気ヘッドの製造方法は、前記薄膜磁気ヘッド用素材を製造する第1の工程と、前記第1の工程によって製造された前記薄膜磁気ヘッド用素材に対して前記第2のシールド層の第2の部分と、前記磁気抵抗素子と、前記第2の磁性層とを加えることによって薄膜磁気ヘッドを完成させる第2の工程とを備え、
前記第1の工程は、
前記第1のシールド層と前記第2のシールド層の第1の部分とが、同一平面上に互いに絶縁された状態で配置されるように、前記第1のシールド層と前記第2のシールド層の第1の部分とを形成する工程と、
前記薄膜コイルの少なくとも一部が、前記第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置されるように、前記薄膜コイルの少なくとも一部を形成する工程とを備え、
前記第2の工程は、
前記第1のシールド層の上に、絶縁膜を介して、前記磁気抵抗素子を形成する工程と、
前記磁気抵抗素子の上に、絶縁膜を介して、前記第2のシールド層の第2の部分を形成する工程と、
前記第2のシールド層の第2の部分の上に、前記ギャップ層を形成する工程と、
前記ギャップ層の上に、前記第2の磁性層を形成する工程とを備えた
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分は、めっき法により形成されることを特徴とする請求項2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 再生ヘッドと記録ヘッドとを備え、
前記再生ヘッドは、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が前記磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドする第1および第2のシールド層とを有し、
前記記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部がギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有し、
前記第2のシールド層は、前記第1のシールド層に対して同一平面上に互いに絶縁された状態で配置された第1の部分と、前記磁気抵抗素子を挟んで前記第1のシールド層と対向すると共に前記第1の部分に接続された第2の部分とを有し、且つ、前記第1の磁性層を兼ねており、
前記薄膜コイルの少なくとも一部は、前記第2のシールド層の第1の部分と前記第2の磁性層との間に配設された薄膜磁気ヘッドの製造に用いられる薄膜磁気ヘッド用素材であって、
前記第1のシールド層と、
前記第2のシールド層の第1の部分と、
前記第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置された前記薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、
前記第2のシールド層の第2の部分と、前記磁気抵抗素子と、前記第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものであることを特徴とする薄膜磁気ヘッド用素材。 - 薄膜磁気ヘッドの製造に用いられる薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法であって、
前記薄膜磁気ヘッドは、再生ヘッドと記録ヘッドとを備え、
前記再生ヘッドは、磁気抵抗素子と、記録媒体に対向する側の一部が前記磁気抵抗素子を挟んで対向するように配置され、前記磁気抵抗素子をシールドする第1および第2のシールド層とを有し、
前記記録ヘッドは、磁気的に連結され、且つ記録媒体に対向する側の一部がギャップ層を介して互いに対向する磁極部分を含み、それぞれ少なくとも1つの層からなる第1および第2の磁性層と、この第1および第2の磁性層の間に配設された薄膜コイルとを有し、
前記第2のシールド層は、前記第1のシールド層に対して同一平面上に互いに絶縁された状態で配置された第1の部分と、前記磁気抵抗素子を挟んで前記第1のシールド層と対向すると共に前記第1の部分に接続された第2の部分とを有し、且つ、前記第1の磁性層を兼ねており、
前記薄膜コイルの少なくとも一部は、前記第2のシールド層の第1の部分と前記第2の磁性層との間に配設され、
前記薄膜磁気ヘッド用素材は、前記第1のシールド層と、前記第2のシールド層の第1の部分と、前記薄膜コイルの少なくとも一部とを備え、前記第2のシールド層の第2の部分と、前記磁気抵抗素子と、前記第2の磁性層とが加えられることによって薄膜磁気ヘッドを完成させるものであり、
薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法は、
前記第1のシールド層と前記第2のシールド層の第1の部分とが、同一平面上に互いに絶縁された状態で配置されるように、前記第1のシールド層と前記第2のシールド層の第1の部分とを形成する工程と、
前記薄膜コイルの少なくとも一部が、前記第2のシールド層の第1の部分の上に絶縁された状態で配置されるように、前記薄膜コイルの少なくとも一部を形成する工程と
を備えたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法。 - 前記第1のシールド層と第2のシールド層の第1の部分は、めっき法により形成されることを特徴とする請求項5記載の薄膜磁気ヘッド用素材の製造方法。
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A02 | Decision of refusal |
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