JP2004029723A - 共振器用スペーサ - Google Patents

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Abstract

【目的】高い温度安定性を有するエタロンを作製できる共振器用スペーサガラスを提供することである。
【構成】本発明の共振器用スペーサガラスは、共振器の反射鏡間に配置され、−40〜80℃において、−0.6〜−25×10−7/℃の熱膨張係数を有するガラスからなることを特徴とする。このガラスは、主成分としてLiO、Al、SiOを含有し、主結晶として粒径が1μm以下のβ−石英固溶体を含有する結晶化ガラスからなり、10ppm未満の熱膨張のヒステリシスを有する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共振器用反射鏡のスペーサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光の干渉を用いた共振器は狭帯域の波長フィルタとして機能するため、波長多重光通信システムにおいて多くのデバイスに利用されている。中でもファブリペローエタロン(以下、エタロンと呼ぶ。)は半導体レーザーの波長安定化のための波長ロッカや、光信号の利得等化器などに用いられる重要な共振器である。エタロンとは、高い平面度と平行度をもつ一対の平行平面ハーフミラーから構成され、これに入射した光がハーフミラー間で多重干渉することにより、干渉次数に応じた波長の光が周期的に透過する性質を有する。ハーフミラー間の空間をキャビティといい、キャビティはガラスや空気などの透光性の物質で満たされる。
【0003】
エタロンは波長フィルタとして優れた特徴を有しているが、温度が変化するとキャビティの屈折率変化によって光路長が変化し、それに伴って透過波長が変化する問題がある。空気の屈折率の温度変化率は約−1×10−6/℃であり、ガラスのそれ(10×10−6/℃)に比べてはるかに小さく、この点でキャビティ材質として空気はガラスよりも優れている。空気をキャビティとするには、ハーフミラーの間隔を一定に保つスペーサが必要であり、このスペーサとして負の熱膨張係数を有するセラミックガラスからなるサブスペーサと正の熱膨張係数を有する合成石英又は水晶からなるサブスペーサとの積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−86673号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載のエタロンは、負の熱膨張係数を有するサブスペーサと正の熱膨張係数を有するサブスペーサとを組み合わせて、それぞれのサブスペーサの熱膨張係数を相殺し、スペーサの熱膨張係数をゼロとするものであるが、スペーサの熱膨張係数が完全にゼロであっても、スペーサにハーフミラーを接着するために用いられる接着剤の熱膨張を無視することが出来ない。つまり、この種の接着剤は、スペーサに比べて熱膨張係数が大きく、これによってハーフミラー間隔が変化してしまうという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、高い温度安定性を有するエタロンを作製できる共振器用スペーサを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、共振器用スペーサとして、接着剤の熱膨張の影響を相殺する負の熱膨張係数を有するガラス材料を使用することによって、エタロンの温度依存性を略ゼロにでき、高い温度安定性を有するエタロンを作製できることを見出し、本発明として提案するものである。
【0008】
すなわち本発明の共振器用スペーサは、共振器の反射鏡間に配置され、−40〜80℃において、−0.6〜−25×10−7/℃の熱膨張係数を有するガラスからなることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
エタロンの単位長さあたりの光路長変化率dS/dTは、式(1)で与えられる。
【0010】
dS/dT=dn/dT+nα   (1)
ここで、dn/dTは、キャビティ材質、すなわち空気の屈折率の温度変化率で、その値は約−1×10−6/℃、nは空気の屈折率で、1.0003、αはスペーサと接着剤による平均熱膨張係数である。
【0011】
一般にスペーサは1〜5mm程度の長さのものが用いられるが、接着剤厚さは両側合わせておおよそ0.01〜0.5mmである。しかし、接着剤の熱膨張係数はスペーサのそれに対して非常に大きく、10〜100×10−6/℃にも達するため、ハーフミラー間隔に対する接着剤の熱膨張の影響が無視できなくなる。スペーサ長はより短いほうが小型化に有利であるが、接着剤の熱膨張の影響が相対的に大きくなるため平均熱膨張係数が大きくなってしまう。しかしながら、スペーサの熱膨張係数を、接着剤(好ましくはさらにハーフミラーの)の熱膨張を考慮し、さらに上記(1)式の右辺がゼロになるような平均屈折率を与えるように設計することで、エタロンの光路長の温度変化を完全にゼロにすることができる。すなわち、本発明の共振器用スペーサは、−40〜80℃における熱膨張係数が、−0.6〜−25×10−7/℃(好ましくは、−1〜−10×10−7/℃)であるガラスからなるため、各種のスペーサ長、接着剤厚さ、好ましくはハーフミラーの材質とその肉厚の組み合わせにおいて、(1)式の右辺をゼロにより近づけることができる。下記にその一例を示す(ハーフミラーについては考慮に入れていない)。
【0012】
スペーサ長をLs、接着剤厚さをLaとし、スペーサおよび接着剤の熱膨張係数をそれぞれαs、αaとすれば平均熱膨張係数は、α=(Lsαs+Laαa)/(Ls+La)と表される。今、Ls=5mm、La=0.1mmとし、αa=60×10−6/℃とすれば、平均膨張係数α、すなわち、温度変化によるスペーサ間隔の変化率は、α=(5×αs+0.1×60×10−6)/5.1/℃となる。これを(1)式に代入して、dS/dT=0とすると、αs=−2×10−7/℃を得る。
【0013】
本発明の共振器用スペーサは、−40〜80℃における熱膨張係数が、−0.6×10−7/℃よりも正に大きいと、接着剤に起因する光路長の熱膨張を相殺する効果が不充分であり、−2.5×10−7/℃よりも負に大きいと、温度上昇時に光路長が収縮する影響が顕著になるため好ましくない。
【0014】
また、本発明の共振器用スペーサは、熱膨張のヒステリシスが10ppm未満であるガラスからなると、温度変化による透過波長のヒステリシスが、非常に小さくなり、高い温度安定性を有するエタロンを作製することができる。
【0015】
上記した特性を有する共振器用スペーサを構成するガラスとしては、SiO−TiO系ガラスや主成分としてLiO、Al及びSiOを含有し、主結晶として粒径が1μm以下のβ−石英固溶体を含有する結晶化ガラスが好適であるが、後者は特に広い組成範囲において精密な熱膨張コントロールが行えるためより優れている。具体的には、質量百分率で、SiO 55〜75%、Al 14〜35%、LiO 2〜8%、MgO 0〜4%、ZnO 0〜4%、TiO 0〜4%、ZrO 0〜4%、(TiO+ZrO)>0.7%、SnO 0〜4%、P 0〜4%、NaO 0〜7%、KO 0〜7%、BaO 0〜7%を含む結晶化ガラスが好適である。
【0016】
次に、ガラス組成を、上記したように限定した理由を以下に述べる。
【0017】
SiOはガラスの骨格成分であると同時に結晶構成成分でもあり、含有量が55%よりも少ないと、所定の結晶の析出が難しくなるともにガラスの耐久性が悪くなり、75%よりも多いと溶融が困難になるため均質なガラスが得られ難くなる。SiOの好ましい組成範囲は、55〜70%である。
【0018】
Alもガラス骨格成分であるとともに結晶構成成分であり、14%よりも少ないと異種結晶が析出するため熱膨張係数が所定の範囲からはずれ、35%よりも多いとガラス化が困難になる。Alの好ましい組成範囲は、17〜31%である。
【0019】
LiOはガラス修飾成分であると同時に結晶を構成する成分であり、2%より少ないと異種結晶が析出し、8%より多いとガラスの失透性が高くなる。LiOの好ましい組成範囲は、2〜7.5%である。
【0020】
MgO、ZnOはガラス修飾成分であるが結晶を構成し得る成分であり、それぞれ4%を超えると異種結晶が析出する。
【0021】
TiOおよびZrOは結晶核を形成する成分であり、それぞれ4%を超えるとガラスの失透性が高くなって均質なガラスが得られない。TiOの好ましい組成範囲は、0〜3.5%であり、ZrOの好ましい組成範囲は、0〜3%である。また、TiOとZrOの合計量が0.7%より少ないと、核形成作用が不十分になるため、所定の粒径の結晶を析出させることができず、8%よりも多いと、ガラスの失透性が高くなるため好ましくない。TiOとZrOの合計量の好ましい範囲は、2.0〜5%である。
【0022】
SnOは清澄剤であるとともに核形成剤としても作用する成分であり、4%より多いとガラスの失透性が高くなる。SnOの好ましい組成範囲は、0〜3%である。
【0023】
はガラスの核形成を容易にする成分であり、4%より多くなるとガラスの分相が著しくなり失透性が高くなる。Pの好ましい組成範囲は、0〜3%である。
【0024】
NaO、KOおよびBaOはガラスの溶融を助けガラスを安定化させると共に、熱膨張係数を制御することに有用な成分である。それぞれ7%より多くなると熱膨張係数が大きくなりすぎるため好ましくない。NaO、KO又はBaOの好ましい組成範囲は、0〜5%である。
【0025】
上記した結晶化ガラスは、LiO、Al及びSiOからなるβ−石英固溶体を主結晶として析出してなるが、β−石英固溶体結晶の熱膨張係数は、負に大きいため、これらの成分が多いほど、結晶化ガラスの熱膨張係数が負に大きくなるため好ましく、特にLiO、Al及びSiOを合量で80質量%以上含有することが好ましい。
【0026】
その他、所定の特性を損なわない限り、SrO、CaO、B、Sb、Asやその他の酸化物を合計で8%まで含有させることができるが、8%を超えると熱膨張係数が大きくなったり所定の結晶が析出しなくなったりするため好ましくない。
【0027】
また、本発明の共振器用スペーサは、ハーフミラーと接する面が互いに平行平面となるように研磨されるが、析出結晶の粒径が1μmよりも大きくなると、ハーフミラー間隔を決定する平行平面の平面度が劣化すると共に、熱膨張のヒステリシスが大きくなりやすいため好ましくない。
【0028】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0029】
表1に、実施例1〜8及び比較例1、2を示す。図1は、本発明の共振器用スペーサガラスを用いたエタロンの説明図である。
【0030】
【表1】
Figure 2004029723
【0031】
先ず、表1に示す組成となるように原料を調合し、白金坩堝中で1550℃にて10時間溶融を行った後、得られたガラスをカーボン型内に流し出し室温まで徐冷した。その後、780℃に再加熱して3時間保持することによって核形成を行い、続いて880℃で1時間保持することによって結晶化させて室温まで冷却し、共振器用スペーサに使用する結晶化ガラスを得た。尚、比較例1は、溶融シリカガラスを用いた。
【0032】
次いで、得られた結晶化ガラス及びシリカガラスについて、熱膨張係数、熱膨張ヒステリシスを、ディラトメータを用いて測定するとともにX線回折法によって析出結晶の同定を行った。また、結晶粒径をSEM像から求めた。尚、表1において、β−qは、β−石英固溶体を表している。
【0033】
図1に示すように、さらに結晶化ガラス及びシリカガラスを表1に示すスペーサ長に切断した後、平行平面を有するように研磨を行い、共振器用スペーサ1を作製した。次に、共振器用スペーサ1の両面に、硬化後の熱膨張係数が60×10−6/℃となるエポキシ系接着剤2を0.1mmの厚みに塗布し、エタロン用ハーフミラー3を貼り付け、エタロン10を作製した。
【0034】
透過波長の温度変化率は、1550μm帯の光を入射しながら測定した。試料の温度変化はペルチェ素子を用いて行い、透過光線4の透過波長は光スペクトラムアナライザーによって測定した。
【0035】
表1に示すように、実施例1〜8は、スペーサ長が5mm以下のエタロンにおいて、その透過波長の温度変化率はいずれも0.2pm/℃以内であり、かつ、結晶粒径が1μmよりも小さく、スペーサの熱膨張のヒステリシスが極めて小さいため、透過波長も温度によるヒステリシスを示さなかった。
【0036】
一方、比較例1は、スペーサガラスの熱膨張係数が正に大きいため、透過波長の温度変化率が大きかった。また、比較例2は、析出結晶の粒径が1μmよりも大きいために熱膨張のヒステリシスが大きかった。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の共振器用スペーサは、エタロンの透過波長の温度安定性を極めて小さくすることができるため、波長ロッカや、光信号の利得等化器などに使用されるエタロンのスペーサとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の共振器用スペーサを用いたエタロンの説明図である。
【符号の説明】
1 スペーサ
2 接着剤
3 ハーフミラー
4 透過光線
10 エタロン

Claims (4)

  1. 共振器の反射鏡間に配置され、−40〜80℃において、−0.6〜−25×10−7/℃の熱膨張係数を有するガラスからなることを特徴とする共振器用スペーサ。
  2. ガラスが、10ppm未満の熱膨張のヒステリシスを有するガラスからなることを特徴とする請求項1に記載の共振器用スペーサ。
  3. ガラスが、主成分としてLiO、Al、SiOを含有し、主結晶として粒径が1μm以下のβ−石英固溶体を含有する結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の共振器用スペーサ。
  4. ガラスが、質量百分率で、SiO 55〜75%、Al 14〜35%、LiO 2〜8%、MgO 0〜4%、ZnO 0〜4%、TiO 0〜4%、ZrO 0〜4%、(TiO+ZrO)>0.7%、SnO 0〜4%、P 0〜4%、NaO 0〜7%、KO 0〜7%、BaO 0〜7%を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の共振器用スペーサ。
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