JP2004029338A - 光ファイバケーブルの製造方法およびその製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被覆前の光ファイバ素線への塵埃の吸着と吸湿を防ぐ、簡便なプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及びその製造装置を提供すること。
【解決手段】光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイスに至る走行路おいて、調湿下で帯電除去する工程を有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法、及び光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイス、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニットを有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置。
【選択図】 図1
【解決手段】光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイスに至る走行路おいて、調湿下で帯電除去する工程を有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法、及び光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイス、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニットを有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂により被覆されたプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及びその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバは、石英系光ファイバと較べると、光の伝送損失が大きいものの、大口径化による接続容易性、端末加工容易性、これに伴う高精度調芯機構が不要になるメリット、人体への突き刺し災害による危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性、耐振動性、低コストなどの観点から、家庭や車載用途で注目されてきている。
プラスチック光ファイバは素線の曲げ・耐候性の向上、吸湿による性能低下抑制、引張り強度の向上、耐踏付け性付与、薬品による損傷からの保護、着色などによる商品性向上、等を目的として素線の表面に1層以上の被覆層を設けて使用することが一般的である。しかし、その製造工程において、せっかく清浄な雰囲気下で素線を製造し異物の混入を防止して延伸したファイバも、仮保存や次工程で環境が良くないとファイバ自身の帯電により、大気中の塵埃を吸着して、被覆を施す際に、これらを巻き込んで不具合が生じる。この塵埃の種類によっては、特に金属成分などによって素線が経年変化を起こして性能が劣化する場合がある。更に異物を巻き込んだ部分は巻き込んだ異物によって不要な応力がかかったり、線径(外径)が変化するためファイバの配線時に不具合を生じ、施工ができないことも有る。
さらに、被覆工程では被覆材料を素線に密着させるために、ダイス内を一定の減圧に保つ必要があるが、この際に素線に付着したごみがダイスと素線とのクリアランスを塞いでしまうと、異物付着部分が通過する際に圧力が変動して、被覆と素線が離れてしまい、被覆の内径が変化して安定した被覆層が得られないことが有る。
【0003】
また、別の問題として、素線がプラスチック光ファイバの場合、プラスチックファイバは吸湿によって光の伝送損失が増加するが、特定の波長、特に850nmで使用する場合、伝送損失が顕著に増加することが知られているため、これを排除する必要がある。製造工程がバッチ式の場合、製造が連続的でないために切り替え時間等の待ち時間が有り、被覆前の素線が吸湿してしまうことがある。この状態で、そのまま被覆を施してしまうと吸湿した水分が抜けなくなり損失増加を加速することが有る。これを防止するためには、乾燥状態で延伸された素線を乾燥状態のまま次の工程に搬送して次の工程でも乾燥状態に保ちながらハンドリングをする必要がある。
これを達成するためには全工程を除塵調湿下に制御した大規模な製造設備が必要となり現実的とは言えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、被覆前の光ファイバ素線(以下、単に「素線」とも言う。)への塵埃の吸着と吸湿を防ぐ、簡便なプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討行なった結果、以下に示す被覆に用いる素線を被覆用ダイスまで、乾燥除塵雰囲気下に保つ方法及びその製造装置により上記課題を解決し、本発明を完成するに至った。
(1)光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイスに至る走行路において、調湿下で帯電除去する工程を有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法、
(2)光ファイバ素線がプラスチック光ファイバである(1)記載の光ファイバケーブルの製造方法、
(3)光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイス、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニットを有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置、
(4)光ファイバ素線の供給を乾燥雰囲気に保持したドラムカートリッジで行う(3)記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【0006】
【発明の実施の形態】
(プラスチック光ファイバ素線)
本発明において用いられる素線の種類、材質などは特に限定されない。石英光ファイバ素線、プラスチック光ファイバ素線等を用いることが可能であるが、本発明においてはプラスチック光ファイバ素線を用いることが好ましい。なお、以降の記述は外周のクラッド部からコア部中心に向って連続的に屈折率が変化する屈折率分布型プラスチック光ファイバ素線について記述しているが、屈折率分布を有しないステップインデックス型プラスチック光ファイバ素線については屈折率分布の付与を除くことで、材料や製法が同様に適用できる。
【0007】
(コア部)
コア部の原料としては、その重合体が伝送される光に対して光透過性である限り特に制約はないが、伝送される光信号の伝送損失が少ない材料を用いるのが好ましい。原料のモノマーとしては例えば、メチルメタクリレート(MMA)、重水素化メチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル−2−フルオロアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら各モノマーからポリマーを重合してコア部として用いる。また、これらモノマーを2種以上用いて、共重合体(コポリマー)からコア部を形成してもよい。しかしながら、塊状重合が容易であるMMAを選択し、ストレートポリマー(ホモポリマー)であるポリメチルメタクリレート(PMMA)にてコア部を形成するのが好ましい。また、これらのモノマーが有する水素原子を重水素原子(D)またはハロゲン原子(X)で置換したモノマーを用いて、ポリマーを重合することもできる。特定の波長領域において、C−H結合に起因する光伝送損失が生じるが、HをDまたはXで置換することにより、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。
【0008】
前記モノマーからポリマーを重合する際に、重合開始剤および重合調整剤を添加することができる。重合開始剤としては、重合されるポリマーに応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)パラレート(PHV)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。重合調整剤は、主に重合体(ポリマー)の分子量の調整のために用いられ、ポリマーの重合度に応じて適宜選択することができるが、1−ブタンチオール、ドデシルメルカプタンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種類以上の重合調整剤を併用してもよい。
【0009】
コア部が、中心から外側に向かって屈折率の分布を有しているGI型であると、高い伝送容量を有するケーブルが得られるので好ましい。屈折率調整剤は、これを含有するポリマーが無添加のポリマーと比較して、屈折率が高くなる性質を有するものをいう。この性質を有し、ポリマーと安定して共存可能で、且つ前述の原料であるモノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。
【0010】
(クラッド部)
クラッド部は、コア部を伝送する光がそれらの界面で全反射するために、コア部の屈折率より低い屈折率を有し、非晶性であり、コア部との密着性が良く、タフネスに優れ、耐熱性に優れているものが好ましく用いられる。例えば、クラッド部の原料であるモノマーとしてはコア部と同様に、メチルメタクリレート、重水素化メチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル−2−フルオロアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのモノマーを2種以上用いて、共重合体からなるクラッド部を作製してもよい。
【0011】
前記モノマーからクラッド部のポリマーを重合する際にも、コア部の形成に用いた前述した重合開始剤および重合調整剤(例えば、連鎖移動剤等)を添加することができる。
【0012】
その他、クラッド部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができ、添加剤は、前記原料モノマーに添加した後に、モノマーからポリマーを重合することによってクラッド部に含有させることができる。前記添加剤としては、耐候性や耐久性などを向上させる安定剤、光伝送性能を向上させる光信号増幅用の誘導放出機能化合物等が挙げられる。誘導放出機能化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することが可能となり、伝送距離が向上するので、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。なお、これらの添加剤は、コア部の形成時にモノマーに添加させて、コア部に含有させることもできる。
【0013】
(素線の作製)
以上の素材もちいて、クラッド部とコア部からなるプラスチック光ファイバ素線を作成する。
素線の製法に関しては特に制限はなく、既知の方法は等しく適用することができる。素線の製造方法としては、例えば、コア部とクラッド部をそれぞれ形成する方法としては既知の方法である、コア部作成後のクラッド部の積層付与による方法、クラッド部となる中空管作成後内部にコア部を作成する方法、コア部とクラッド部の同時多層押出しや紡糸による方法等が挙げられる。
また、それらを素線に加工する方法として、直接紡糸する方法やプリフォームと呼ばれる予備加工品を延伸する方法などが好ましく用いることができる。
【0014】
以上の製造方法のうち、屈折率分布型のプラスチック光ファイバ素線の製造方法としては国際公開WO93/08488に記載されているような、クラッド部となる樹脂の中空管を作成し、その管内にコア部を形成する樹脂組成物を入れ、界面ゲル重合法によりポリマーを重合することによりコア部を形成することができる。
樹脂組成物は前述のように、単一の屈折率を持つ樹脂組成物に屈折率調整剤を添加するものや、屈折率の異なる樹脂を混合するのものを用いて屈折率を分布させる。なお、本発明に用いられる素線の直径は0.2〜1.5mmの範囲であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、その素線のコア部の直径は、0.1〜1.0mmが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0015】
(光ファイバケーブルの製造方法)
本発明の光ファイバケーブルの製造に用いられる被覆ラインは、従来から知られている電気ケーブル等と同様な被覆ラインを使用することができる。
なお、被覆方法としては溶融押出し方法、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いて、塗布・硬化させて被覆層を得る方法等を用いることができる。本発明においては、溶融押出し方法を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法において、光ファイバを被覆する前の表面処理方法として、光ファイバを調湿下で帯電除去する工程を有する。調湿下で帯電除去する工程は、主として(1)被覆用ダイスまでの走行路の湿度調整及び、(2)帯電除去(塵埃除去)、の2点を行う工程である。
【0017】
(走行路の調湿)
光ファイバを用いる場合、特にプラスチック光ファイバの場合、素材によるが吸湿性を有するものがある。吸湿状態で被覆を行うと、吸湿したまま性能の低下が起きてしまうため好ましくない。したがって耐湿性の被覆を施すなどの操作を行うまでは、除湿された環境下で行うことが好ましい。乾燥した空気を供給するために簡便な方法としては熱した空気を通すことが考えられる。空気を流す方向は、光ファイバの進行方向と逆方向であることが好ましい。プラスチック素材の場合は熱風の温度が高すぎると、ファイバ自体が軟化してしまい性能の劣化をもたらすため、熱風の温度は120℃以下に制御しておくことと、下限としては室温以上に制御することが好ましい。なかでも30℃以上60℃以下に制御しておくことがさらに好ましい。
相対湿度は、50%以下に制御しておくことが好ましく、30%以下に制御しておくことがさらに好ましい。下限としては0%が好ましいが、除湿の能力を勘案すると現実的には1%が相応と思われる。
また、被覆を積層する際に、低次の被覆では耐湿性が低いため極力湿度を取り除く必要がある。そのため、被覆後も乾燥領域を設けて湿度を取り除くことが好ましい。
同様に光ファイバ芯線を供給する際においても、除湿防塵状態が保てるように除湿機能を有するカートリッジ式ドラム等を用いることが好ましい。
【0018】
(帯電除去)
光ファイバケーブルの製造においては、光ファイバ素線が帯電することにより塵埃を吸着し、被覆を施す際にこれらを巻き込んで不具合が生じることがある。特に素線がプラスチックからなるプラスチック光ファイバの場合、その素材故に帯電が起きやすい。一般的に帯電を除去する方法としては、1)接地により中和する、2)高湿度下に曝すなどの方法があるが、1)に対してはドラムに巻き取られた状態のファイバを接地してすべて除電することは困難であり、かつ、走行時にも帯電してしまう。2)の高湿度は前述の除湿雰囲気と反対の施策であるため用いることができない。
本発明においては除電器によってイオン化した風をファイバに当てることによって、ファイバ表面を帯電した状態から電荷を取り除き中和することができる。
【0019】
風速はファイバの引き取りに足してその相対速度が、20cm/sec以上であることが好ましいが、あまり強い風を当てるとファイバが撚れたり振動してしまい、均一な被覆ができなくなる。相対速度が速すぎる場合はファイバの走行方向と同方向に風を流すほうが好ましい。また、風向は後述のような方法でファイバ円周に沿ってらせん状になるように当てることで、全面に均一にイオン風を当てることができるため好ましい。
前述の熱風を循環させる場合は、表面処理を行う領域に塵埃が残らないようにフィルターを付けて取り除くようにする。さらに、領域へ吹き込む風は強めにしてファイバ走行路等から水分や塵埃が流入しないように若干の加圧状態が保つようにすることが好ましい。
【0020】
(プラスチック光ファイバケーブルの製造装置)
本発明の一実施態様である光ファイバの製造装置を図1に示す。本発明の製造装置は、光ファイバを被覆する被覆用ダイス10、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット5、6、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニット4を有する。以下、本発明の製造装置について詳細に説明する。
【0021】
(防湿除塵カートリッジ)
クラス500〜1000の雰囲気で延伸された光ファイバ素線は必要に応じて表面コートなどが施されたのちに運搬・保管用の防湿除塵カートリッジ1に収納される。素線は巻きぐせ抑制のため400mmφ以上の巻き径とするのが好ましい。素線の巻き取りリール3は防湿除塵カートリッジ1から容易に着脱でき、防湿除塵カートリッジ1に収納時は収納状態のまま中心部分に巻き取り軸をセットして回転させることができる。防湿除塵カートリッジ1は側面が開閉できる扉構造となっており(図示せず)扉を閉めれば内部は外気と完全に遮断される。
【0022】
防湿除塵カートリッジ1内部には扉を閉めた後に内部に残った水分(水蒸気)を吸収してドライに保つための乾燥剤ユニット2が備わっており仮置きなど、比較的長期の保管でも素線に吸湿ダメージを与えないようになっている。このユニット2は防湿除塵カートリッジ1から着脱できるためユニット2だけを交換することができる。
防湿除塵カートリッジ1には素線を引き出すことのできるスリットがあり(図示せず)極力外気がカートリッジ1内に入ることを抑制することができるほか必要に応じて清浄な空気をカートリッジ1内部に導入できるノズルを備え、カートリッジ1内を微加圧にすることもできる。
カートリッジ1から引き出された素線は帯電除去ユニット4を経て被覆用ダイス10に入り被覆される。その後冷却槽12で被覆を急速に冷却することによりその形態を保つと共に素線への熱ダメージを防止できる。
【0023】
(帯電除去ユニット)
帯電除去ユニット4には乾燥・清浄空気を循環する装置としてヘパフィルター8、ブロワー7、除湿装置5及び温調装置6からなる調湿ユニットが付属している。調湿ユニット5、6において、帯電除去ユニット4に送る空気の除湿及び加熱を行う。前述の通り、空気の温度は、ファイバ自体が軟化してしまうことを考慮し、熱風の温度は室温以上、120℃以下に制御する事が好ましく、なかでも30℃以上60℃以下に制御しておくことがさらに好ましい。
相対湿度についても、50%以下に制御しておくことが好ましく、1%以上30%以下に制御しておくことがさらに好ましい。
また、乾燥空気は、被覆ダイス10から防湿除塵カートリッジ1に向って流すほうがファイバの走行方向に対して対向方向となり、除電や乾燥の効率が良い。防湿除塵カートリッジ1と帯電防止ユニット4間、及び被覆用ダイス10と帯電防止ユニット4間の隙間を完全に無くすことはできないため、帯電防止ユニット4内から光ファイバ走行路に沿って若干の乾燥・清浄空気を吹き出させて光ファイバを保護することができるが、この場合はフィルター8を備える外気取入口から空気を補う。
乾燥・清浄空気を循環させるブロワー7は軸受け部分がシールされた発塵の少ないクリーン用の機器を選定する必要があり、他の部品も極力可動部分のない物を使用するのが好ましい。
【0024】
本発明における一実施態様としての帯電除去ユニット4は、図2aに示す除電器21、エア吹き出し穴23を有する中空パイプ27等からなる。除電器21は充分な除電性能があれば円形タイプ、イオンバランスタイプ、エアーアシストタイプなども使用でき、交流タイプでも良い。
エア吹き出し穴23を有する中空パイプ27は、ファイバ素線の円周を囲むよう、ほぼ円形の形状を有していることが好ましい。図3aは中空パイプの一実施態様を示す模式図である。図3bに示すようにパイプをねじって使用することも可能である。中空パイプ27のエア吹き出し穴23は、吹き出し穴23から出た風がファイバ素線の円周に沿ってらせん状に当たるよう、具体的にはファイバ素線に対し45℃の角度で円周の全面に風が当たるよう開けられている。
帯電除去ユニット4は、図2bに示すようにエア吹き出し穴23から出た空気がファイバの走行方向と同方向に流れるよう設置しても良いし、逆方向に流れるよう設置しても良い。相対速度が速すぎる場合は、逆方向に流れるよう設置することが好ましい。
また、図1に示すように帯電除去ユニット4を乾燥除湿領域に組み込む場合は、帯電を除去する風を当てる以外に、直流コロナ方式の除電バーをファイバ走行ルートに沿って単数もしくは複数本配置して、除電機能を組み込んでもよい。
【0025】
(被覆用ダイス)
被覆用ダイス10は原理的には銅線などのいわゆる電線被覆に用いるダイスと同じタイプが使用できる。ダイスの入口側には素線とわずかに離れているかあるいは軽く接するシール膜が内属された減圧機構がありポンプ等で引いた際にダイス内部の圧力を効率的に下げることができる。これによりダイスから出た被覆樹脂を引き落としながら素線に密着させることができる。
【0026】
しかしながら素線に塵埃が付着しているとこのシール部分を通過する際に圧力変動を発生させたりシール部分に引っかかって大きく成長し、それが一気に抜けることにより目視でも容易に確認できるような塵埃の固りとなって被覆外形に凸部を作ったり素線を押しつけたりすることになり、光ファイバの性能を損うこととなる。塵埃がシール部分で圧縮されて大きな固りになると走行する光ファイバの抵抗となり、最悪の場合光ファイバを切ってしまうことがある。
【0027】
冷却槽12と被覆用ダイス10は接触させると熱が相互に移動しダイスの温度低下トラブルなどが発生するため注意が必要である。防塵の観点からはオーバラップするカバーを取付けるのが効果的である。
【0028】
(冷却槽)
冷却槽12は通常チラーによって10℃以下に冷却された清浄な冷却水を循環しその水中を被覆された光ファイバを走らせる。被覆速度が速くなると相対的に被覆の冷却がおそくなるため被覆が充分早く固化し、内部の素線も充分早く冷却されるように冷却水温を調整する必要がある。
【0029】
(線径測定器及びコブ検出器)
冷却された光ファイバは除湿ブロー装置13で表面に付着した水分を充分切ったのち線径測定器14でX,Y2方向断面の線径が測定される。これとその後に設置された非接触式コブ検出器15との組合せで光ファイバの線径異状(被覆異状)を検知することができる。
これらのデータは工程管理用コンピュータ(図示せず)に取り込み、光ファイバ走行長カウンタ(図示せず)との組み合わせで光ファイバのどの位置に異状があったか特定させオンラインでマーキングをすることもできる。
コブ検出器15の後に被覆された光ファイバは再び供給と同様の防湿除塵カートリッジ1に収納される。
【0030】
図1では被覆ラインの基本となる最低限の要素について説明したが、被覆装置はこれに限定されるものではない。生産設備においては素線の供給を安定させるためにリールシャフトにサーボモータを取付けて一定テンションを保つようにしたり、生産の効率化の為ダンサーローラやアキュムレータを備えてリールの変換が行えるようにすることもできる。
【0031】
(被覆の構造)
ケーブル製造の際にその被覆の形態として、素線と被覆材を密着させる密着型の被覆と素線と被覆材の間に空隙層を設けるルース型の被覆がある。
ルース型の被覆の場合、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、素線にかかるダメージを軽減させることができるため好ましく用いることができる。ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
【0032】
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(以下、抗張力繊維と称す)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂で包みながら被覆を付与すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。
その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
【0033】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらをまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。
【0034】
(被覆材)
前述した被覆材である被覆用樹脂組成物を選択する際には、製造時および製造後に素線へダメージを与えないものが重要である。
溶融押出法で被覆を行う場合、樹脂溶融によって被覆材に加えられた熱が、被覆工程で、素線へ伝播して素線に悪影響を与えてしまうため、組成物を構成する熱可塑性樹脂の流動開始温度が一定の範囲内に収まることが必須である。
なお、ルース型に被覆する場合には、素線と被覆の間の空隙層によって熱の伝播が緩和されるため、密着型の場合に比較して流動開始温度をより高く設定することが可能である。
【0035】
本発明で使用される、好ましい流動開始温度を有する熱可塑性樹脂としては、前述した特徴を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン(ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−11など)、ポリ塩化ビニル、エチレンアクリル酸エチル共重合体、ポリエステル化合物などが挙げられ、その中でも好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンである。これらの熱可塑性樹脂はその分子量、分子量分布、枝分かれ度、架橋度、末端官能基の種類などを変えることにより、種々の溶融挙動を示し、流動開始温度の値を制御することが可能となる。また、これらの樹脂を適宜混合して好ましい流動開始温度の範囲に調整してよい。また同様に流動開始温度を低下するために、前述したポリマーの共重合体を用いたり、酢酸ビニル成分を共重合したりしてもよい。または、可塑剤などの添加剤量を調整することにより、流動開始温度を制御してもよい。
【0036】
本発明の光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)等の他、特開平10−123350、特開2002−90571、特開2001−290055等の光バス、特開2001−74971、特開2000−32996、特開2001−74966、特開2001−74968、特開2001−318263、特開2001−311840等の光分岐結合装置、特開2000−241655等の光スターカプラ、特開2002−62457、特開2002−101044、特開2001−305395等の光信号伝達装置や光データバスシステム、特開2002−23011等の光信号処理装置、特開2001−86537等の光信号クロスコネクトシステム、特開2002−26815等の光伝送システム、特開2001−339554、特開2001−339555等のマルチファンクションシステムなどを参考にすることができる。
なお、特開2001−74971の光結合装置に接続する際は、前述の屈折率分布型のプラスチック光ファイバであると、開口度が大きく取れるため接続性が高く、屈折率分布が付与されているので、アライメントずれに対しての許容度を高くとることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様(材料、試薬、それらの割合、温度等の製造条件など)はこれらに限定されない。また、説明においては、実施例1で詳細に説明し、その他の実施例及び比較例については、実施例1と同じ点については説明を省略している。
【0038】
(プラスチック光ファイバ素線の作製)
PMMAからなる円筒管型のクラッド部を公知の回転重合法で製造した。次に、界面ゲル重合法によりMMAを主原料にコア部を重合した。この際に、ドーパントとしてDPS(硫化ジフェニル)を用いて、MMAに対して12.5重量%加えた。こうして直径22mm、長さ55cmのプリフォームを製作した。このプリフォームのガラス転移温度Tgは、コア中心部85℃、クラッド部107℃であり、コア部の中心からクラッド部にかけてガラス転移温度はゆるやかに上昇していた(Tgmin=85℃)。また、このプリフォームの屈折率は、コア部の中心で1.504、クラッド部1.491であり、コア部の中心からクラッド部にかけて屈折率はゆるやかに下降していた。このプリフォームを235℃で加熱して延伸し、外径750μm、コア径500μmのGI型素線11を得た。この素線11の屈折率は、コア部の中心1.504、クラッド部1.491であった。また、この素線11の波長650nmの光を用いた伝送損失値は180dB/kmであった。
【0039】
(実施例1)
気温25℃、湿度60%、パーティクルカウンタによるクリーン度はクラス30万の室内にある製造装置に、図1に示すようにダイスまでの間に乾燥雰囲気を保つ領域を設けた。乾燥空気は、ダイス方向から供給ドラムに向けて流れるようにし、領域内が気温20℃、湿度30%となっていることを確認した。
また、除電装置は直流コロナ放電式バー型除電器(針先電圧+6kV、−5kV)のものを用い、循環乾燥風はファイバの円周前面に当たるように調整し、風向はダイス方向から供給ドラムに向けて流れるようにした。
なお、ファイバは7〜10kVに帯電しており、むき出しの素線をしばらく放置しておくと塵埃が吸着しているのが目視でも確認できた。
【0040】
(プラスチック光ファイバケーブルの被覆)
この素線に対して、1次被覆として高圧法により重合した、メルトフローレート(JIS K 6922−2)が80g/10minであり、密度が0.916g/cm3の低密度ポリエチレン(以下、PEと称する)を、クロスダイヘッド付の被覆押し出し機(ダイス直径3.7mm、ニップル直径2.7mm)を用いた被覆ドラム10(図1参照)により、素線の搬送速度を50m/minとして被覆を行い、0.5mmの1次被覆層を有する密着型の被覆ケーブルを得た。
【0041】
(実施例2)
プラスチックファイバ素線の外周にPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を保護層として付与したものを作成し、実施例1と同様にして被覆を行ったところ実施例1と同等の結果になることが確認できた。
【0042】
(比較例1)
実施例1の調湿工程を行わない方法で被覆を行った。
実施例1と同様に評価したところ、伝送損失は、192dB/kmであり、吸湿のため若干性能が低下したが、塵埃によるダイスのつまりは確認されなかった。
【0043】
(比較例2)
実施例1において、除電器を稼働させず、乾燥風の除塵フィルターも外しての除塵工程を行わない方法で被覆を行った。
実施例1と同様に評価したところ、乾燥工程によってファイバ表面の帯電が増し、表面処理を何も行わない場合よりも表面の帯電が強くなった。そのため、塵埃によるダイスのつまりが顕著となり、被覆用ダイスに付属する減圧装置での圧力制御が不安定となり、正常な状態では図4aの断面であった被覆が図4bのような形状に変動した。このため被覆がファイバに断続的に接触し、被覆後のファイバによれが発生した。また、ファイバと被覆とが密着している部分に、ダイス入口に溜まった塵埃が断続的にダイスに引き込まれるため、塵埃の固まりがポツポツと被覆にめり込むように入り込んみ、被覆表面に凸部が発生した。更に塵埃の固まりが堆積してダイ入口でのファイバ走行に抵抗になったため、ファイバが切断してしまった。伝送損失はファイバのよれに伴う損失増加もあり215dB/kmであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及び製造装置によれば、大型の製造設備を用いずに被覆前の塵埃除去と良好な乾燥状態を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの製造装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】図2aは本発明における調湿ユニットの一実施態様を示す模式図、図2bは本発明における調湿ユニットの一実施態様を示す側面図である。
【図3】図3a及び図3bは、本発明の中空パイプの一実施態様を示す側面図及び正面図である。
【図4】図4aは正常な形状の密着型光ファイバケーブルの断面を示す模式図、図4bは変形した密着型光ファイバケーブルの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
1 防湿除塵カートリッジ
2 乾燥剤ユニット
3 リール
4 帯電除去ユニット
5 温調装置(調湿ユニット)
6 除湿装置(調湿ユニット)
7 ブロワー
8 フィルター
9 外気取入口
10 被覆用ダイス
11 減圧装置
12 冷却槽
13 除湿ブロー装置
14 線径測定器
15 コブ検出器
16 ノズル
17 光ファイバ素線
18 被覆
19 空間
21 除電器
22 エア吹き出し口
23 エア吹き出し穴
24 清浄なエア
25 パイプ
26 電源
27 中空パイプ
A 光ファイバ進行方向
B エア吹き出し方向
θ 穴角度
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂により被覆されたプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及びその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック光ファイバは、石英系光ファイバと較べると、光の伝送損失が大きいものの、大口径化による接続容易性、端末加工容易性、これに伴う高精度調芯機構が不要になるメリット、人体への突き刺し災害による危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性、耐振動性、低コストなどの観点から、家庭や車載用途で注目されてきている。
プラスチック光ファイバは素線の曲げ・耐候性の向上、吸湿による性能低下抑制、引張り強度の向上、耐踏付け性付与、薬品による損傷からの保護、着色などによる商品性向上、等を目的として素線の表面に1層以上の被覆層を設けて使用することが一般的である。しかし、その製造工程において、せっかく清浄な雰囲気下で素線を製造し異物の混入を防止して延伸したファイバも、仮保存や次工程で環境が良くないとファイバ自身の帯電により、大気中の塵埃を吸着して、被覆を施す際に、これらを巻き込んで不具合が生じる。この塵埃の種類によっては、特に金属成分などによって素線が経年変化を起こして性能が劣化する場合がある。更に異物を巻き込んだ部分は巻き込んだ異物によって不要な応力がかかったり、線径(外径)が変化するためファイバの配線時に不具合を生じ、施工ができないことも有る。
さらに、被覆工程では被覆材料を素線に密着させるために、ダイス内を一定の減圧に保つ必要があるが、この際に素線に付着したごみがダイスと素線とのクリアランスを塞いでしまうと、異物付着部分が通過する際に圧力が変動して、被覆と素線が離れてしまい、被覆の内径が変化して安定した被覆層が得られないことが有る。
【0003】
また、別の問題として、素線がプラスチック光ファイバの場合、プラスチックファイバは吸湿によって光の伝送損失が増加するが、特定の波長、特に850nmで使用する場合、伝送損失が顕著に増加することが知られているため、これを排除する必要がある。製造工程がバッチ式の場合、製造が連続的でないために切り替え時間等の待ち時間が有り、被覆前の素線が吸湿してしまうことがある。この状態で、そのまま被覆を施してしまうと吸湿した水分が抜けなくなり損失増加を加速することが有る。これを防止するためには、乾燥状態で延伸された素線を乾燥状態のまま次の工程に搬送して次の工程でも乾燥状態に保ちながらハンドリングをする必要がある。
これを達成するためには全工程を除塵調湿下に制御した大規模な製造設備が必要となり現実的とは言えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、被覆前の光ファイバ素線(以下、単に「素線」とも言う。)への塵埃の吸着と吸湿を防ぐ、簡便なプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討行なった結果、以下に示す被覆に用いる素線を被覆用ダイスまで、乾燥除塵雰囲気下に保つ方法及びその製造装置により上記課題を解決し、本発明を完成するに至った。
(1)光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイスに至る走行路において、調湿下で帯電除去する工程を有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法、
(2)光ファイバ素線がプラスチック光ファイバである(1)記載の光ファイバケーブルの製造方法、
(3)光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイス、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニットを有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置、
(4)光ファイバ素線の供給を乾燥雰囲気に保持したドラムカートリッジで行う(3)記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【0006】
【発明の実施の形態】
(プラスチック光ファイバ素線)
本発明において用いられる素線の種類、材質などは特に限定されない。石英光ファイバ素線、プラスチック光ファイバ素線等を用いることが可能であるが、本発明においてはプラスチック光ファイバ素線を用いることが好ましい。なお、以降の記述は外周のクラッド部からコア部中心に向って連続的に屈折率が変化する屈折率分布型プラスチック光ファイバ素線について記述しているが、屈折率分布を有しないステップインデックス型プラスチック光ファイバ素線については屈折率分布の付与を除くことで、材料や製法が同様に適用できる。
【0007】
(コア部)
コア部の原料としては、その重合体が伝送される光に対して光透過性である限り特に制約はないが、伝送される光信号の伝送損失が少ない材料を用いるのが好ましい。原料のモノマーとしては例えば、メチルメタクリレート(MMA)、重水素化メチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル−2−フルオロアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら各モノマーからポリマーを重合してコア部として用いる。また、これらモノマーを2種以上用いて、共重合体(コポリマー)からコア部を形成してもよい。しかしながら、塊状重合が容易であるMMAを選択し、ストレートポリマー(ホモポリマー)であるポリメチルメタクリレート(PMMA)にてコア部を形成するのが好ましい。また、これらのモノマーが有する水素原子を重水素原子(D)またはハロゲン原子(X)で置換したモノマーを用いて、ポリマーを重合することもできる。特定の波長領域において、C−H結合に起因する光伝送損失が生じるが、HをDまたはXで置換することにより、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。
【0008】
前記モノマーからポリマーを重合する際に、重合開始剤および重合調整剤を添加することができる。重合開始剤としては、重合されるポリマーに応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)パラレート(PHV)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。重合調整剤は、主に重合体(ポリマー)の分子量の調整のために用いられ、ポリマーの重合度に応じて適宜選択することができるが、1−ブタンチオール、ドデシルメルカプタンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、2種類以上の重合調整剤を併用してもよい。
【0009】
コア部が、中心から外側に向かって屈折率の分布を有しているGI型であると、高い伝送容量を有するケーブルが得られるので好ましい。屈折率調整剤は、これを含有するポリマーが無添加のポリマーと比較して、屈折率が高くなる性質を有するものをいう。この性質を有し、ポリマーと安定して共存可能で、且つ前述の原料であるモノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。
【0010】
(クラッド部)
クラッド部は、コア部を伝送する光がそれらの界面で全反射するために、コア部の屈折率より低い屈折率を有し、非晶性であり、コア部との密着性が良く、タフネスに優れ、耐熱性に優れているものが好ましく用いられる。例えば、クラッド部の原料であるモノマーとしてはコア部と同様に、メチルメタクリレート、重水素化メチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル−2−フルオロアクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのモノマーを2種以上用いて、共重合体からなるクラッド部を作製してもよい。
【0011】
前記モノマーからクラッド部のポリマーを重合する際にも、コア部の形成に用いた前述した重合開始剤および重合調整剤(例えば、連鎖移動剤等)を添加することができる。
【0012】
その他、クラッド部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができ、添加剤は、前記原料モノマーに添加した後に、モノマーからポリマーを重合することによってクラッド部に含有させることができる。前記添加剤としては、耐候性や耐久性などを向上させる安定剤、光伝送性能を向上させる光信号増幅用の誘導放出機能化合物等が挙げられる。誘導放出機能化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することが可能となり、伝送距離が向上するので、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。なお、これらの添加剤は、コア部の形成時にモノマーに添加させて、コア部に含有させることもできる。
【0013】
(素線の作製)
以上の素材もちいて、クラッド部とコア部からなるプラスチック光ファイバ素線を作成する。
素線の製法に関しては特に制限はなく、既知の方法は等しく適用することができる。素線の製造方法としては、例えば、コア部とクラッド部をそれぞれ形成する方法としては既知の方法である、コア部作成後のクラッド部の積層付与による方法、クラッド部となる中空管作成後内部にコア部を作成する方法、コア部とクラッド部の同時多層押出しや紡糸による方法等が挙げられる。
また、それらを素線に加工する方法として、直接紡糸する方法やプリフォームと呼ばれる予備加工品を延伸する方法などが好ましく用いることができる。
【0014】
以上の製造方法のうち、屈折率分布型のプラスチック光ファイバ素線の製造方法としては国際公開WO93/08488に記載されているような、クラッド部となる樹脂の中空管を作成し、その管内にコア部を形成する樹脂組成物を入れ、界面ゲル重合法によりポリマーを重合することによりコア部を形成することができる。
樹脂組成物は前述のように、単一の屈折率を持つ樹脂組成物に屈折率調整剤を添加するものや、屈折率の異なる樹脂を混合するのものを用いて屈折率を分布させる。なお、本発明に用いられる素線の直径は0.2〜1.5mmの範囲であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、その素線のコア部の直径は、0.1〜1.0mmが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0015】
(光ファイバケーブルの製造方法)
本発明の光ファイバケーブルの製造に用いられる被覆ラインは、従来から知られている電気ケーブル等と同様な被覆ラインを使用することができる。
なお、被覆方法としては溶融押出し方法、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いて、塗布・硬化させて被覆層を得る方法等を用いることができる。本発明においては、溶融押出し方法を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法において、光ファイバを被覆する前の表面処理方法として、光ファイバを調湿下で帯電除去する工程を有する。調湿下で帯電除去する工程は、主として(1)被覆用ダイスまでの走行路の湿度調整及び、(2)帯電除去(塵埃除去)、の2点を行う工程である。
【0017】
(走行路の調湿)
光ファイバを用いる場合、特にプラスチック光ファイバの場合、素材によるが吸湿性を有するものがある。吸湿状態で被覆を行うと、吸湿したまま性能の低下が起きてしまうため好ましくない。したがって耐湿性の被覆を施すなどの操作を行うまでは、除湿された環境下で行うことが好ましい。乾燥した空気を供給するために簡便な方法としては熱した空気を通すことが考えられる。空気を流す方向は、光ファイバの進行方向と逆方向であることが好ましい。プラスチック素材の場合は熱風の温度が高すぎると、ファイバ自体が軟化してしまい性能の劣化をもたらすため、熱風の温度は120℃以下に制御しておくことと、下限としては室温以上に制御することが好ましい。なかでも30℃以上60℃以下に制御しておくことがさらに好ましい。
相対湿度は、50%以下に制御しておくことが好ましく、30%以下に制御しておくことがさらに好ましい。下限としては0%が好ましいが、除湿の能力を勘案すると現実的には1%が相応と思われる。
また、被覆を積層する際に、低次の被覆では耐湿性が低いため極力湿度を取り除く必要がある。そのため、被覆後も乾燥領域を設けて湿度を取り除くことが好ましい。
同様に光ファイバ芯線を供給する際においても、除湿防塵状態が保てるように除湿機能を有するカートリッジ式ドラム等を用いることが好ましい。
【0018】
(帯電除去)
光ファイバケーブルの製造においては、光ファイバ素線が帯電することにより塵埃を吸着し、被覆を施す際にこれらを巻き込んで不具合が生じることがある。特に素線がプラスチックからなるプラスチック光ファイバの場合、その素材故に帯電が起きやすい。一般的に帯電を除去する方法としては、1)接地により中和する、2)高湿度下に曝すなどの方法があるが、1)に対してはドラムに巻き取られた状態のファイバを接地してすべて除電することは困難であり、かつ、走行時にも帯電してしまう。2)の高湿度は前述の除湿雰囲気と反対の施策であるため用いることができない。
本発明においては除電器によってイオン化した風をファイバに当てることによって、ファイバ表面を帯電した状態から電荷を取り除き中和することができる。
【0019】
風速はファイバの引き取りに足してその相対速度が、20cm/sec以上であることが好ましいが、あまり強い風を当てるとファイバが撚れたり振動してしまい、均一な被覆ができなくなる。相対速度が速すぎる場合はファイバの走行方向と同方向に風を流すほうが好ましい。また、風向は後述のような方法でファイバ円周に沿ってらせん状になるように当てることで、全面に均一にイオン風を当てることができるため好ましい。
前述の熱風を循環させる場合は、表面処理を行う領域に塵埃が残らないようにフィルターを付けて取り除くようにする。さらに、領域へ吹き込む風は強めにしてファイバ走行路等から水分や塵埃が流入しないように若干の加圧状態が保つようにすることが好ましい。
【0020】
(プラスチック光ファイバケーブルの製造装置)
本発明の一実施態様である光ファイバの製造装置を図1に示す。本発明の製造装置は、光ファイバを被覆する被覆用ダイス10、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット5、6、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニット4を有する。以下、本発明の製造装置について詳細に説明する。
【0021】
(防湿除塵カートリッジ)
クラス500〜1000の雰囲気で延伸された光ファイバ素線は必要に応じて表面コートなどが施されたのちに運搬・保管用の防湿除塵カートリッジ1に収納される。素線は巻きぐせ抑制のため400mmφ以上の巻き径とするのが好ましい。素線の巻き取りリール3は防湿除塵カートリッジ1から容易に着脱でき、防湿除塵カートリッジ1に収納時は収納状態のまま中心部分に巻き取り軸をセットして回転させることができる。防湿除塵カートリッジ1は側面が開閉できる扉構造となっており(図示せず)扉を閉めれば内部は外気と完全に遮断される。
【0022】
防湿除塵カートリッジ1内部には扉を閉めた後に内部に残った水分(水蒸気)を吸収してドライに保つための乾燥剤ユニット2が備わっており仮置きなど、比較的長期の保管でも素線に吸湿ダメージを与えないようになっている。このユニット2は防湿除塵カートリッジ1から着脱できるためユニット2だけを交換することができる。
防湿除塵カートリッジ1には素線を引き出すことのできるスリットがあり(図示せず)極力外気がカートリッジ1内に入ることを抑制することができるほか必要に応じて清浄な空気をカートリッジ1内部に導入できるノズルを備え、カートリッジ1内を微加圧にすることもできる。
カートリッジ1から引き出された素線は帯電除去ユニット4を経て被覆用ダイス10に入り被覆される。その後冷却槽12で被覆を急速に冷却することによりその形態を保つと共に素線への熱ダメージを防止できる。
【0023】
(帯電除去ユニット)
帯電除去ユニット4には乾燥・清浄空気を循環する装置としてヘパフィルター8、ブロワー7、除湿装置5及び温調装置6からなる調湿ユニットが付属している。調湿ユニット5、6において、帯電除去ユニット4に送る空気の除湿及び加熱を行う。前述の通り、空気の温度は、ファイバ自体が軟化してしまうことを考慮し、熱風の温度は室温以上、120℃以下に制御する事が好ましく、なかでも30℃以上60℃以下に制御しておくことがさらに好ましい。
相対湿度についても、50%以下に制御しておくことが好ましく、1%以上30%以下に制御しておくことがさらに好ましい。
また、乾燥空気は、被覆ダイス10から防湿除塵カートリッジ1に向って流すほうがファイバの走行方向に対して対向方向となり、除電や乾燥の効率が良い。防湿除塵カートリッジ1と帯電防止ユニット4間、及び被覆用ダイス10と帯電防止ユニット4間の隙間を完全に無くすことはできないため、帯電防止ユニット4内から光ファイバ走行路に沿って若干の乾燥・清浄空気を吹き出させて光ファイバを保護することができるが、この場合はフィルター8を備える外気取入口から空気を補う。
乾燥・清浄空気を循環させるブロワー7は軸受け部分がシールされた発塵の少ないクリーン用の機器を選定する必要があり、他の部品も極力可動部分のない物を使用するのが好ましい。
【0024】
本発明における一実施態様としての帯電除去ユニット4は、図2aに示す除電器21、エア吹き出し穴23を有する中空パイプ27等からなる。除電器21は充分な除電性能があれば円形タイプ、イオンバランスタイプ、エアーアシストタイプなども使用でき、交流タイプでも良い。
エア吹き出し穴23を有する中空パイプ27は、ファイバ素線の円周を囲むよう、ほぼ円形の形状を有していることが好ましい。図3aは中空パイプの一実施態様を示す模式図である。図3bに示すようにパイプをねじって使用することも可能である。中空パイプ27のエア吹き出し穴23は、吹き出し穴23から出た風がファイバ素線の円周に沿ってらせん状に当たるよう、具体的にはファイバ素線に対し45℃の角度で円周の全面に風が当たるよう開けられている。
帯電除去ユニット4は、図2bに示すようにエア吹き出し穴23から出た空気がファイバの走行方向と同方向に流れるよう設置しても良いし、逆方向に流れるよう設置しても良い。相対速度が速すぎる場合は、逆方向に流れるよう設置することが好ましい。
また、図1に示すように帯電除去ユニット4を乾燥除湿領域に組み込む場合は、帯電を除去する風を当てる以外に、直流コロナ方式の除電バーをファイバ走行ルートに沿って単数もしくは複数本配置して、除電機能を組み込んでもよい。
【0025】
(被覆用ダイス)
被覆用ダイス10は原理的には銅線などのいわゆる電線被覆に用いるダイスと同じタイプが使用できる。ダイスの入口側には素線とわずかに離れているかあるいは軽く接するシール膜が内属された減圧機構がありポンプ等で引いた際にダイス内部の圧力を効率的に下げることができる。これによりダイスから出た被覆樹脂を引き落としながら素線に密着させることができる。
【0026】
しかしながら素線に塵埃が付着しているとこのシール部分を通過する際に圧力変動を発生させたりシール部分に引っかかって大きく成長し、それが一気に抜けることにより目視でも容易に確認できるような塵埃の固りとなって被覆外形に凸部を作ったり素線を押しつけたりすることになり、光ファイバの性能を損うこととなる。塵埃がシール部分で圧縮されて大きな固りになると走行する光ファイバの抵抗となり、最悪の場合光ファイバを切ってしまうことがある。
【0027】
冷却槽12と被覆用ダイス10は接触させると熱が相互に移動しダイスの温度低下トラブルなどが発生するため注意が必要である。防塵の観点からはオーバラップするカバーを取付けるのが効果的である。
【0028】
(冷却槽)
冷却槽12は通常チラーによって10℃以下に冷却された清浄な冷却水を循環しその水中を被覆された光ファイバを走らせる。被覆速度が速くなると相対的に被覆の冷却がおそくなるため被覆が充分早く固化し、内部の素線も充分早く冷却されるように冷却水温を調整する必要がある。
【0029】
(線径測定器及びコブ検出器)
冷却された光ファイバは除湿ブロー装置13で表面に付着した水分を充分切ったのち線径測定器14でX,Y2方向断面の線径が測定される。これとその後に設置された非接触式コブ検出器15との組合せで光ファイバの線径異状(被覆異状)を検知することができる。
これらのデータは工程管理用コンピュータ(図示せず)に取り込み、光ファイバ走行長カウンタ(図示せず)との組み合わせで光ファイバのどの位置に異状があったか特定させオンラインでマーキングをすることもできる。
コブ検出器15の後に被覆された光ファイバは再び供給と同様の防湿除塵カートリッジ1に収納される。
【0030】
図1では被覆ラインの基本となる最低限の要素について説明したが、被覆装置はこれに限定されるものではない。生産設備においては素線の供給を安定させるためにリールシャフトにサーボモータを取付けて一定テンションを保つようにしたり、生産の効率化の為ダンサーローラやアキュムレータを備えてリールの変換が行えるようにすることもできる。
【0031】
(被覆の構造)
ケーブル製造の際にその被覆の形態として、素線と被覆材を密着させる密着型の被覆と素線と被覆材の間に空隙層を設けるルース型の被覆がある。
ルース型の被覆の場合、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、素線にかかるダメージを軽減させることができるため好ましく用いることができる。ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
【0032】
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(以下、抗張力繊維と称す)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂で包みながら被覆を付与すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。
その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
【0033】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらをまとめた集合ケーブルなど用途に応じて選ぶことができる。
【0034】
(被覆材)
前述した被覆材である被覆用樹脂組成物を選択する際には、製造時および製造後に素線へダメージを与えないものが重要である。
溶融押出法で被覆を行う場合、樹脂溶融によって被覆材に加えられた熱が、被覆工程で、素線へ伝播して素線に悪影響を与えてしまうため、組成物を構成する熱可塑性樹脂の流動開始温度が一定の範囲内に収まることが必須である。
なお、ルース型に被覆する場合には、素線と被覆の間の空隙層によって熱の伝播が緩和されるため、密着型の場合に比較して流動開始温度をより高く設定することが可能である。
【0035】
本発明で使用される、好ましい流動開始温度を有する熱可塑性樹脂としては、前述した特徴を有するものであれば特に制限されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン(ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−11など)、ポリ塩化ビニル、エチレンアクリル酸エチル共重合体、ポリエステル化合物などが挙げられ、その中でも好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンである。これらの熱可塑性樹脂はその分子量、分子量分布、枝分かれ度、架橋度、末端官能基の種類などを変えることにより、種々の溶融挙動を示し、流動開始温度の値を制御することが可能となる。また、これらの樹脂を適宜混合して好ましい流動開始温度の範囲に調整してよい。また同様に流動開始温度を低下するために、前述したポリマーの共重合体を用いたり、酢酸ビニル成分を共重合したりしてもよい。または、可塑剤などの添加剤量を調整することにより、流動開始温度を制御してもよい。
【0036】
本発明の光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)等の他、特開平10−123350、特開2002−90571、特開2001−290055等の光バス、特開2001−74971、特開2000−32996、特開2001−74966、特開2001−74968、特開2001−318263、特開2001−311840等の光分岐結合装置、特開2000−241655等の光スターカプラ、特開2002−62457、特開2002−101044、特開2001−305395等の光信号伝達装置や光データバスシステム、特開2002−23011等の光信号処理装置、特開2001−86537等の光信号クロスコネクトシステム、特開2002−26815等の光伝送システム、特開2001−339554、特開2001−339555等のマルチファンクションシステムなどを参考にすることができる。
なお、特開2001−74971の光結合装置に接続する際は、前述の屈折率分布型のプラスチック光ファイバであると、開口度が大きく取れるため接続性が高く、屈折率分布が付与されているので、アライメントずれに対しての許容度を高くとることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様(材料、試薬、それらの割合、温度等の製造条件など)はこれらに限定されない。また、説明においては、実施例1で詳細に説明し、その他の実施例及び比較例については、実施例1と同じ点については説明を省略している。
【0038】
(プラスチック光ファイバ素線の作製)
PMMAからなる円筒管型のクラッド部を公知の回転重合法で製造した。次に、界面ゲル重合法によりMMAを主原料にコア部を重合した。この際に、ドーパントとしてDPS(硫化ジフェニル)を用いて、MMAに対して12.5重量%加えた。こうして直径22mm、長さ55cmのプリフォームを製作した。このプリフォームのガラス転移温度Tgは、コア中心部85℃、クラッド部107℃であり、コア部の中心からクラッド部にかけてガラス転移温度はゆるやかに上昇していた(Tgmin=85℃)。また、このプリフォームの屈折率は、コア部の中心で1.504、クラッド部1.491であり、コア部の中心からクラッド部にかけて屈折率はゆるやかに下降していた。このプリフォームを235℃で加熱して延伸し、外径750μm、コア径500μmのGI型素線11を得た。この素線11の屈折率は、コア部の中心1.504、クラッド部1.491であった。また、この素線11の波長650nmの光を用いた伝送損失値は180dB/kmであった。
【0039】
(実施例1)
気温25℃、湿度60%、パーティクルカウンタによるクリーン度はクラス30万の室内にある製造装置に、図1に示すようにダイスまでの間に乾燥雰囲気を保つ領域を設けた。乾燥空気は、ダイス方向から供給ドラムに向けて流れるようにし、領域内が気温20℃、湿度30%となっていることを確認した。
また、除電装置は直流コロナ放電式バー型除電器(針先電圧+6kV、−5kV)のものを用い、循環乾燥風はファイバの円周前面に当たるように調整し、風向はダイス方向から供給ドラムに向けて流れるようにした。
なお、ファイバは7〜10kVに帯電しており、むき出しの素線をしばらく放置しておくと塵埃が吸着しているのが目視でも確認できた。
【0040】
(プラスチック光ファイバケーブルの被覆)
この素線に対して、1次被覆として高圧法により重合した、メルトフローレート(JIS K 6922−2)が80g/10minであり、密度が0.916g/cm3の低密度ポリエチレン(以下、PEと称する)を、クロスダイヘッド付の被覆押し出し機(ダイス直径3.7mm、ニップル直径2.7mm)を用いた被覆ドラム10(図1参照)により、素線の搬送速度を50m/minとして被覆を行い、0.5mmの1次被覆層を有する密着型の被覆ケーブルを得た。
【0041】
(実施例2)
プラスチックファイバ素線の外周にPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を保護層として付与したものを作成し、実施例1と同様にして被覆を行ったところ実施例1と同等の結果になることが確認できた。
【0042】
(比較例1)
実施例1の調湿工程を行わない方法で被覆を行った。
実施例1と同様に評価したところ、伝送損失は、192dB/kmであり、吸湿のため若干性能が低下したが、塵埃によるダイスのつまりは確認されなかった。
【0043】
(比較例2)
実施例1において、除電器を稼働させず、乾燥風の除塵フィルターも外しての除塵工程を行わない方法で被覆を行った。
実施例1と同様に評価したところ、乾燥工程によってファイバ表面の帯電が増し、表面処理を何も行わない場合よりも表面の帯電が強くなった。そのため、塵埃によるダイスのつまりが顕著となり、被覆用ダイスに付属する減圧装置での圧力制御が不安定となり、正常な状態では図4aの断面であった被覆が図4bのような形状に変動した。このため被覆がファイバに断続的に接触し、被覆後のファイバによれが発生した。また、ファイバと被覆とが密着している部分に、ダイス入口に溜まった塵埃が断続的にダイスに引き込まれるため、塵埃の固まりがポツポツと被覆にめり込むように入り込んみ、被覆表面に凸部が発生した。更に塵埃の固まりが堆積してダイ入口でのファイバ走行に抵抗になったため、ファイバが切断してしまった。伝送損失はファイバのよれに伴う損失増加もあり215dB/kmであった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のプラスチック光ファイバケーブルの製造方法及び製造装置によれば、大型の製造設備を用いずに被覆前の塵埃除去と良好な乾燥状態を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの製造装置の一実施態様を示す概略図である。
【図2】図2aは本発明における調湿ユニットの一実施態様を示す模式図、図2bは本発明における調湿ユニットの一実施態様を示す側面図である。
【図3】図3a及び図3bは、本発明の中空パイプの一実施態様を示す側面図及び正面図である。
【図4】図4aは正常な形状の密着型光ファイバケーブルの断面を示す模式図、図4bは変形した密着型光ファイバケーブルの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
1 防湿除塵カートリッジ
2 乾燥剤ユニット
3 リール
4 帯電除去ユニット
5 温調装置(調湿ユニット)
6 除湿装置(調湿ユニット)
7 ブロワー
8 フィルター
9 外気取入口
10 被覆用ダイス
11 減圧装置
12 冷却槽
13 除湿ブロー装置
14 線径測定器
15 コブ検出器
16 ノズル
17 光ファイバ素線
18 被覆
19 空間
21 除電器
22 エア吹き出し口
23 エア吹き出し穴
24 清浄なエア
25 パイプ
26 電源
27 中空パイプ
A 光ファイバ進行方向
B エア吹き出し方向
θ 穴角度
Claims (2)
- 光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイスに至る走行路おいて、調湿下で帯電除去する工程を有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
- 光ファイバに被覆材を被覆する被覆用ダイス、該被覆用ダイスに至る走行路を調湿する調湿ユニット、及び帯電した光ファイバから電荷を除去する帯電除去ユニットを有することを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002184853A JP2004029338A (ja) | 2002-06-25 | 2002-06-25 | 光ファイバケーブルの製造方法およびその製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002184853A JP2004029338A (ja) | 2002-06-25 | 2002-06-25 | 光ファイバケーブルの製造方法およびその製造装置 |
Publications (1)
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JP2004029338A true JP2004029338A (ja) | 2004-01-29 |
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ID=31180667
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002184853A Pending JP2004029338A (ja) | 2002-06-25 | 2002-06-25 | 光ファイバケーブルの製造方法およびその製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004029338A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006317589A (ja) * | 2005-05-11 | 2006-11-24 | Fujikura Ltd | 低帯電プラスチック光ファイバ及びプラスチック光ファイバテープ心線とその製造方法 |
CN118243626A (zh) * | 2024-05-21 | 2024-06-25 | 西安科技大学 | 一种基于微纳光纤阵列的光热光谱气体检测装置及方法 |
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2002
- 2002-06-25 JP JP2002184853A patent/JP2004029338A/ja active Pending
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