JP2004028278A - 内燃機関の主運動機構 - Google Patents

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Yukiyasu Taguchi
田口 幸保
Akira Yamada
山田 晃
Shinichiro Sakamoto
阪本 真一郎
Hiroshi Munetoki
宗時 弘志
Ryohei Kusunoki
楠 亮平
Takashi Shioda
塩田 隆
Kazue Nomura
野村 一衛
Naoki Iwama
岩間 直樹
Hidehisa Kato
加藤 英久
Tomohisa Kamimura
上村 智久
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Daihatsu Motor Co Ltd
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Abstract

【課題】高周波焼入れ又は表面硬化処理を施さず、パーライトと初析フェライト又はパーライトからなる組織を有する非調質型鋼材製クランク軸と、このクランク軸の外周に装着され、アルミニウム軸受合金からなるすべり軸受とを含んでなる内燃機関の回転機構において、クランク軸とすべり軸受両方の摩耗を少なくする。
【解決手段】初析パーライトの面積分率が3%以下であり、かつすべり軸受と摺動する面のクランク軸の表面粗さがRz5μm以下である。アルミニウム軸受合金のマトリックスには、SiからなるもしくはSiを含み、Hv900以上の硬さを有し、6μm以下の硬質物が分散される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、内燃機関の主運動機構に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、クランク軸と、このクランク軸の外周に装着されたすべり軸受とを含んでなる主運動機構に関するものである。
【0002】
自動車等の内燃機関のクランク軸は、(図1に示すように)図示されないピストンと連結されたコネクティングロッドとの連結部であるクランクピン部12と、シリンダーブロックへの取り付け部であるクランクジャーナル部11とを有する。クランク軸の回転運動はかかる連結部及び取り付け部において、Al−Sn系アルミニウム合金又はCu−Pb系銅合金からなる半割形状のすべり軸受により支えられている。また、クランク軸のピン、ジャーナルとすべり軸受の間の摺動部10には油膜が形成されている。
【0003】
クランク軸の材料は鋳鉄製と鋼製に大別される。
鋼材としては、古くはS50Cなどの機械構造用中炭素鋼やSCM440などの合金鋼を焼入れ焼戻ししたものが使用されていた。その後焼入れ焼戻しを省略した非調質鋼としてV添加鋼も使用されるようになった。Vに代わる添加元素としてTiを添加した非調質鋼は例えば特許第3149741号明細書で公知であり、その組織はフェライト・パーライト混合組織である。
非調質型鋼材の中で、さらに高周波焼入れや軟窒化などの表面硬化処理を省略したものがある。本発明はこの「高周波焼入れ又は表面硬化処理を施さない非調質型鋼材」に属する。
さらにフェライト・パーライト組織をもつ非調質鋼材において、初析フェライト面積率は炭素含有量の増大とともに少なくなることも知られている(特開昭61−264162公報、第2図)。
【0004】
Al系軸受合金としては、一般に、Al−Sn系圧延合金が裏金鋼板に圧接されたバイメタル状のものが使用されている。Al系軸受合金としては、JIS−AJ2(6.0 〜9.0%のSn,0.5〜1.0%のCu, 1.0%以下の Ni, 0.5% 以下のMg、残部Al), SAE 785( 0.2%のSn, 0.7〜1.3%のCu, 4.5〜 5.5%のZn, 0.3%のFe, 0.2%のNi, 0.1%のMn,1.0〜 2.0%のSi, 0.1%のTi)など使用されている。
【0005】
本出願人の一名のドイツ特許DE 32 49 133C2(以下「ドイツ特許」と言う)には、0.5〜11%Siを含有するAl合金を裏金に圧接する前の最終圧延において350〜550℃の範囲で少なくとも30分以上加熱し、続いて200℃/hより遅い速度で冷却することによりSiを粗粒且つ球状化する方法が開示されている。5〜40μmの大きさのものが3.56 ×10−2mm当り5個以上存在する粗粒のSi粒子は球状黒鉛(nodular)鋳鉄軸の粗さを平滑化することにより、軸受性能の向上に寄与する。
ドイツ特許の疲労強度試験における相手軸はAISI 1055である。これは焼入れ・焼戻しを施して使用される非合金型中炭素調質鋼である。
【0006】
ドイツ特許で規定された5〜40μmより微粒のSi粒子は多数存在する。さらに、上記圧延後の冷却速度を速くすると、Si含有量が低い範囲ではSi粒子の大きさは5μm未満とすることができる。
【0007】
特公平5−69895号公報によると、組成が、3〜5%Si, 8〜20%Sn, 0.5〜 2%Cuを含み、Cr,Mn及び Pbを含有せず、残部がAlであり、組織は(イ)Snが網状に形成され、(ロ)Si粒子は直径が20μm以下であり、60%以上がSn相中に含まれているAl系合金が提案されている。「網状」とはAl相及びSn相が共に連続的であり、Sn相がAl結晶粒界又は粒界三重点に沿って連続しているものである。Sn相を網状化する方法は冷間加工後の焼鈍においてAl結晶を再結晶化するとともに網状組織を発達させる方法である。この合金にはCr、Mnは網状Sn相の形成を妨げるため含まれていない。このような組成及び組織が、ノジュラー鋳鉄軸と鋼軸を相手軸として優れた耐焼付性及び耐疲労性を得ることに寄与している。なお、鋼軸は非調質型とは特定されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前掲特公平5−69895号公報で試験されている鋼軸は非調質鋼であると特定されていない。ドイツ特許で試験されている鋼軸は調質型AISI1055である。したがって、フェライト・パーライト組織をもち、高周波焼入れなどの表面処理を施していない非調質鋼軸に対してどのようなAl系軸受合金が適しているか従来技術は考察をしていない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
クランク軸とAl系すべり軸受合金との摺動状況は材質の組み合わせにより次のように様々のものとなる。
(a)前掲特公平5−69895号公報によると、耐焼付性は硬度が低いほうが良好であり、一方耐疲労性は硬度が高いほうが良好であると考察されている。「Snが網状でSiを包んでいる組織」ではSn粒子は軟質なSn相に保持されているために、Si粒子に圧力が加えられるとその下側のSn相も変形することになるから、Si粒子の見掛け上の硬さは本来の硬さより低くなる結果、鋳鉄軸に対しても鋼軸に対しても良好な耐焼付性と耐疲労性が得られていると考えられる。上記引用した考察は摺動状況が不安定な摺動初期を除くと該当すると考えられる。
【0010】
(b)ドイツ特許の第16,17図で示されているようにSn粒子が孤立しており、且つ粗大球状Si粒子とSn相は分離しているAl合金すべり軸受が球状黒鉛軸と摺動すると、Si粒子が鋳鉄表面から黒鉛が脱落して形成される鋭い縁を削りとり、Al合金の摩耗を防止する。
【0011】
(c ) JIS−AJ2あるいは SAE 785などのAl系軸受合金を、高周波焼入れされた鋼軸に対して摺動させると、なじみ現象が起こってなじみ面が形成され易い。
【0012】
(d)JIS−AJ2あるいは SAE 785などのAl系軸受合金を、フェライト・パーライト組織を有する非調質鋼軸に対して摺動させると、比較的初期段階においてなじみ現象が起こる過程で、軸のフェライト相に優先してAl合金すべり軸受のAl相及びSn相が凝着して凝着摩耗が起こる。(c)と(d)を対比すると、鋼軸の高周波焼入れ組織は非常に硬いのでAl合金をアブレーシブ摩耗させるためになじみ面が形成され易いが、フェライト・パーライト組織はAl,Sn凝着を起こし易いと言える。
【0013】
(e)前記(d)のように凝着摩耗が起こる原因は次のように考えられる。パーライトはラメラー状セメンタイト(硬度Hv700程度)とフェライト(硬度Hv150〜300)がサブミクロン寸法でサンドイッチ構造になっている。研摩された鋼軸を断面で見るとラメラー状セメンタイトが突出し、フェライトが陥没した微細凹凸構造となっている。一方、初析フェライトは平面視では連続した網状もしくは不連続網状形態を有しており、その幅はパーライト中のフェライトよりも非常に厚くなっている。初折フェライトはいわゆる純鉄であり、凝着性が大きいので、初折フェライトを多く含む非調質鋼軸では凝着摩耗が起こる。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するために、パーライトと初析フェライト又はパーライトからなる組織を有し、高周波焼入れ又は表面硬化処理を施さない非調質型鋼材製クランク軸と、このクランク軸の外周に装着されたAl系合金を含んでなるすべり軸受とを含んでなる内燃機関の主運動機構において、前記非調質型鋼材は初析フェライトの面積分率が3%以下であり、且つ前記すべり軸受と摺動する面の前記クランク軸の表面粗さがRz0.5μm以下であるとともに、前記Al系合金は、SiからなるもしくはSiを含み、Hv900以上の硬さをする硬質物がAlマトリックスに分散されているとともに、前記硬質物の摺動面における粗さが6μm以下であることを特徴とする内燃機関の主運動機構を提供するものである。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
上述の摩耗機構(c),(d),(e)を前提として、本発明においては高周波焼入れ又は表面硬化処理を施さない非調質型鋼材製クランク軸(以下「非調質クランク鋼軸」と言う)の初析フェライトの面積分率を3%以下とすることにより、初期摩耗の促進を抑える。すなわち、パーライト組織とAl合金やAl−Sn合金とは初期凝着摩耗が起こり難いので、初析フェライトの面積分率の上限を抑えることが必要である。好ましくは、初析フェライトの面積分率は0.1〜1%以下である。
【0016】
さらに、非調質クランク鋼軸がすべり軸受と接触する面の粗さをRz0.5μm以下とする。粗さがRz0.5μm以下とすることにより、流体潤滑面の形成を容易にして、凝着が起こっても軸受の焼付まで至らないようにする。好ましい粗さはRz0.4μm以下である。
【0017】
さらに、すべり軸受のAl系合金のAlマトリックスにはHv900以上の硬質物が分散され,且つ硬質物の大きさは6μm以下である。
本発明において「Alマトリックス」とはEPMA分析でAlのピークが観察される領域である。また、硬質物がAlマトリックスに分散しているとは、実質的な意味であって、画像解析とEPMAを併用して観察されるAlのピークと硬質物のピークが同時に検出される一致領域が、硬質物粒子の個数全体に対して80%以上、より好ましくは90%以上であればよい。残りの少量の硬質物はSnもしくはPb相などに分散していてもよい。
【0018】
本発明において硬質物の硬さは、測定可能な大きさをもつ当該物質の硬さである。すなわち、Al系合金中に分散している硬質物粒子は測定可能な大きさより小さいこともあるため、上記のように本来の値とする。このような硬質粒子の硬度がHv900以上であると、AlやSnが相手軸に凝着したとしても、硬質粒子が凝着物を削り取る。硬質物の硬度上限はHv3500であることが好ましい。硬質物としては約Hv1200のSi粒子を使用することができ、その他Si,AlなどのAlに対してなじみ性が良いセラミック粒子も使用することができる。セラミックス粒子の大きさは6μm以下であることが好ましい。硬質物がSiである場合は、その含有量は1〜4質量%であり、Si以外の硬質物の量は0.5〜4であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明においては硬質物の摺動面における大きさは6μm以下である。硬質物の大きさが6μmを超えると凝着物を削り取る他にクランク鋼軸の摩耗も促進するので好ましくない。
【0020】
本発明者らは種々の条件で摩耗試験された非調質鋼材の表面を観察して、次のような機構を想定した。
クランク軸の表面構造は(a)フェライト相はパーライト相の周囲に連続したもしくは一部不連続の網目上に存在している;(b)仕上げの研摩時に生成された粗さによる凹凸がクランク軸の表面に存在するというものである。
6μmより粗大な硬質物は、Al,Snなどの初期凝着物を摺動面から凝着摩耗が進行しないレベルまで除去する。この状況以降は軸と軸受の間になじみが確立され、流体潤滑になるので、以降は凝着摩耗が進行しない。即ち、この状態でも摺動面にはフェライト相やAl,Snなどの凝着に関与する物質は存在するが、凝着は停止する。
一方、何らかの不安定要因により境界潤滑条件になると、6μmより粗大な硬質物は新たななじみ面形成をする。この際は、クランク軸の凸面を削りとる摩耗(イ)と、鋼材の組織中の軟らかいフェライト相の摩耗(b)が並行して進行する。摩耗(イ)は鋼材の組織とは関係なく凸面を削り取るものであり、摩耗(ロ)は表面のフェイラトを削りとるが網状に繋がった内部のフェライトが新たに露出するので、表面に露出するフェライトの量は殆ど変化しない。このようにフェライトの量は変化しないが、新に現れたフェライト相が凝着進行要因となる。
【0021】
上記した組織上の特徴を有するAl系合金及びこれを裏金と一体にしたすべり軸受の製造法は、硬質物がセラミックス粒子の場合は、ドイツ特許の第9頁第57〜66行に説明される方法、表2及び表2(続き)に示された従来法、及び発明法によることができる。従来法はバイメタル状すべり軸受を製造する通常の方法であり、発明法は段落0005で述べた最終圧延後の冷却を遅くする方法である。なお、これらの製造条件では特公平5−69895号公報で示されているSn相を網状化する条件とは本質的に異なっている。
また、セラミックス粒子ではなくアルミニウム合金内で分離して生成されるSiなどの硬質物については、最終圧延後急冷を行うドイツ特許の従来法によることが好ましい。しかしながら、Si含有量が多くなると最終圧延後の冷却速度を高くしても粗大Si粒子が生成することは避けられないので、Si含有量は1〜4質量%以下が好ましい。
内燃機関を廃棄するまでに摺動に伴いAl合金の表面から50μm程度の内部まで摩耗することもある。この状態で形成される摺動面での硬質物の大きさが6μm以下であることが必要である。より内部には6μmを超える粗大な硬質物が存在していてもよい。
【0022】
本発明のAl系合金は上記成分の残部は実質的にAlである。本発明のAl系合金は、さらに、例えば、2〜20%のSnに加えて,1〜3%のPb, 0.5〜2%のCu, 0.1〜1%のCr,0.5〜2%のMg, 0.1〜1%のZr, Mn, V, Ti及び/又はBなどの1種又は2種以上を含有することができる(百分率は質量%である)。この組成例のようにSi以外の成分の合計量が40%、即ちAl含有量が最低60%であってもよい、
上記成分のうちSnは上述の初期凝着防止手段を講じると軸受性能の向上に大きく寄与する。Pbも初期凝着し易いが同様に凝着防止手段を講じると軸受性能の向上に寄与する。但し、これらのSn,Pbの含有量が多くなると、Sn,Pb相に取り込まれるSi粒子の割合が多くなり好ましくない。CrはSnを微細化するが、微細化したSnも初期凝着傾向があるので、非調質鋼軸との凝着防止に本質的影響は与えない。しかし、微細Sn相は疲労強度などの面で好ましいので、Crを添加することができる。Cu,MgはAl系合金の固溶強化及び/又は析出強化をもたらすが、析出物の硬度はHv900未満であるので硬質物には該当しない。即ち、Cu,Mgの析出物には初期凝着防止作用はないが、Al系合金を強化することができる。
【0023】
続いて、上記した初期凝着摩耗の他に、長期間使用中におけるクランク軸用鋼材及び/又すべり軸受のAl系合金の摩耗対策を講じたクランク軸用鋼材を説明する。
このクランク軸用鋼材は、質量%で、C:0.62〜0.80%、Si:0.60%以下(0を含まない)、Mn:0.30〜1.80%、S:0.04〜0.35%、Cr:0.05〜0.50%、Al:0.005%未満(0を含まない)、O:0.0020%以下(0を含まない)、残部Fe及び不可避不純物からなり、且つ厚み20μm以下の硫化物系介在物を含有するものである。
【0024】
上記したクランク軸用鋼材中のAl量を0.005%未満に規制しているため、硬質介在物生成が抑制され、すべり軸受の損傷を防ぐことができる。また、Sをクランク軸用鋼中に0.04〜0.35%含有させるとともに、Al量を0.005%未満、O(酸素)量を0.0020%以下に規制することにより、クランク軸の被削性を改善することができる。さらに、S含有により生成したMnS等の硫化物系介在物は、その厚みが大きい場合にはクランク軸の耐摩耗性を劣化させるが、厚みを20μm以下としているため、クランク軸の耐摩耗性を良好にすることができる。
以下に、クランク軸用鋼材の各元素量(質量%)の限定理由を示す。
【0025】
C:0.62〜0.80%、
Cは強度の確保ならびに耐摩耗性を向上させるために必要な元素である。Cが0.62%未満の場合には、鋼の強度及び耐摩耗性が低下するため、下限を0.62%、好ましくは0.67%以上とする必要がある。一方、Cが0.80%を超える場合には、強度が必要以上に増加し、鋼の被削性が低下するため、上限を0.80%、好ましくは0.76%以下とする必要がある。
【0026】
Si:0.60%以下、
Siは製鋼時の脱酸補助材として効果的な元素であると共に強度、耐摩耗性の向上にも有効な元素である。ただしSiが0.60%を超える場合には、鋼の被削性の低下を招くため、上限を0.60%、好ましくは0.35%以下とする必要がある。
【0027】
Mn:0.30〜1.80%、
Mnは製鋼時の脱酸補助材として効果的な元素であると共に鋼の強度確保に必要な元素である。Mnが0.30%未満の場合には、強度が低下するため、下限を0.30%、好ましくは0.40%以上とする必要がある。一方、Mnが1.80%を超える場合には、ベイナイトやマルテンサイトといった低温変態組織が生成し、鋼の被削性の低下を招くため、上限を1.80%、好ましくは1.50%以下とする必要がある。
【0028】
S:0.04〜0.35%、
Sは鋼の被削性を改善するために不可欠な元素である。Sが0.04%未満では、その効果が得られないため、下限を0.04%、好ましくは0.13%以上とする必要がある。反面、Sが0.35%を超える場合には、鋼の強度および熱間加工性を損なうため、上限を0.35%、好ましくは0.20%以下とする必要がある。
【0029】
Cr:0.05〜0.50%、
Crは鋼の耐摩耗性の向上に有効な元素である。Crが0.05%未満の場合には、その向上が期待できないため、下限を0.05%、好ましくは0.10%以上とすることが必要である。一方、Crが0.50%を超えると、鋼の被削性の低下を招くため、上限を0.50%、好ましくは0.35%以下とする必要がある。
【0030】
Al:0.005%未満、
Alはすべり軸受の耐摩耗性及び鋼の被削性に有害なAlおよびAlNを生成するため極力低く抑える必要がある。Alが0.005%以上の場合には、AlおよびAlNの増加および粗大化を招き、すべり軸受の耐摩耗性および鋼の被削性を劣化させてしまうので、上限を0.005%とする必要がある。
【0031】
O(酸素):0.0020%以下、
Oが0.0020%を超える場合には、硫化物系介在物の厚みが大きくなり、鋼の耐摩耗性を低下させるという問題があるため、上限を0.0020%とする必要がある。
【0032】
硫化物系介在物は、クランク軸用鋼の中に形成されている。硫化物系介在物の厚みは、鋼の耐摩耗性の点から20μm以下に規制する必要がある。硫化物系介在物の厚みが20μmを越えると、耐摩耗性が低下してしまう。
【0033】
さらに好ましいクランク軸用鋼材は、質量%で、C:0.62〜0.80%、Si:0.60%以下、Mn:0.30〜1.80%、S:0.04〜0.35%、Cr:0.05〜0.50%、V:0.01〜0.09%、Al:0.005%未満、O:0.0020%以下、残部Fe及び不可避不純物からなり、且つ厚み20μm以下の硫化物系介在物を含有するものである。
このクランク軸用鋼には、上記成分に加えて、Vを0.01〜0.09質量%含んでいる。Vは、鋼の耐摩耗性を確保するために有効な元素である。その効果を得るためには、少なくとも0.01%の含有が必要なため、下限を0.01%、好ましくは0.03%以上とする必要がある。ただし、Vの含有量が0.09%を超えると、コスト高となってしまうため、上限を0.09%とした。
【0034】
より好ましいクランク軸用鋼は、更に、質量%でBi:0.01〜0.30%、Pb:0.01〜0.30%、Ca:0.0003〜0.020%、Mg:0.0003〜0.0020%、及びREM:0.001〜0.10%のグループから選ばれる1種または2種以上を含有し、さらに鋼の被削性が向上する。続いて、各成分含有量の限定理由を説明する。
【0035】
Bi:0.01〜0.30%、
Biは、鋼の被削性の改善に有効な元素で、その効果を発揮するためには0.01%以上、好ましくは0.02%以上の含有が必要である。一方、Biを0.30%を超えて含む場合にはその効果は飽和し、コスト高になるとともに、熱間加工性を損なうので、上限を0.30%、このましくは0.15%以下とする必要がある。
【0036】
Pb:0.01〜0.30%、
Pbは、Biと同様の効果を示す被削性改善に有効な元素で、その効果を発揮するためには0.01%以上、好ましくは0.04%以上の含有が必要である。一方、Pbを0.30%を超えて含む場合にはその効果は飽和し、且つ熱間加工性を損なうので、上限を0.30%、このましくは0.25%以下とする必要がある。
【0037】
Ca:0.0003〜0.020%、
Caは、被削性の改善に効果のある元素であり、その効果を発揮するためには0.0003%以上、好ましくは0.0005%以上の含有が必要である。一方0.020%を超えて含有させても、効果が飽和するとともに、コスト高となるため、上限を0.020%とした。
【0038】
Mg:0.0003〜0.020%、
Mgは、Caと同様の効果を示し、Caと複合で存在させた場合に大きな被削性改善効果及び機械的性質の異方性改善効果が得られる。その効果を得るためには、少なくともMgは0.0003%以上、好ましくは0.0005%以上必要であるが、必要以上に含有させてもその効果は飽和状態となり無駄であるためMgの上限を0.020%とした。
【0039】
REM:0.001〜0.10%
REMは、被削性改善に有効な希土類元素で、その効果を発揮するためには0.001%以上、好ましくは0.005%以上の含有が必要である。一方、REMを0.10%を超えて含有させても、効果が飽和するとともに、コストアップを招くので、上限を0.10%とした。以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
【0040】
【実施例】
実施例1
クランク軸用鋼として、重量%で、C:0.71%、Si:0.23%、Mn:0.63%、S:0.164%、Cr:0.20%、Al:0.003%、O:0.002%、残部Fe及び不可避不純物(P,Cu,Ni,Mo,N)からなる鋼材を直径60mmに鍛造し、鍛造終了後冷却した。冷却法は、水冷、空気吹き付けによる強制空冷、静止空気中の冷却、あるいはこれらの組合せ即ち、水冷→強制空冷、強制空冷→静止空気中冷却として、初析フェライト量を表1に示すように変化させた。
その後、鍛造軸の外周面を、粒度を変えたエメリー紙で研摩して表1に示すように表面粗さを変化させた。
【0041】
12%Snを含有するA.l合金の製造方法はドイツ特許の従来法の工程及び条件のとおりであった。但し最終圧延後の冷却速度は150〜500℃/hの範囲で変化させてSi粒子の大きさを変化させた。また、Al系合金の表面は粗さRz1μmに仕上げた。
【0042】
摩耗試験の方法は次のとおりであった。
摩耗試験
回転荷重軸受摩耗試験機を用いて、軸及び軸受の摩耗試験を実施した。
試験条件
軸径:42mm,軸受幅:17mm,軸回転数:8000rpm,使用油種:5W−20
軸受面圧:29MPa
上記条件にて3時間運転後、軸及び軸受の摩耗量を測定。
試験の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
Figure 2004028278
【0044】
実施例1〜6では鋼軸およびAl系合金の両方の摩耗量が少なくなっている。これに対して比較例7は初析フェライトの面積率が多いためにAl系合金の摩耗が多い。さらに比較例8は表面粗さが粗いために軸受の摩耗が多い。比較例9はAl系合金のSi量が多いために軸受摩耗量が多い。比較例10はAl系合金のSi量が多いために軸摩耗量が多い。比較例11は初折フェライト面積率が多く、表面粗さも粗く、かつSi含有量が低いために軸受摩耗量が多い。比較例12は初折フェライト面積率が多く、表面粗さも粗く、かつSi含有量も多いために軸と軸受摩耗量の両方が多い。
【0045】
実施例2
実施例1のAl合金のSiに代えてSiを使用し、表1の2と同じ条件で試験したところ鋼軸の摩耗量が1、Al合金の摩耗量が1μmであった。
【0046】
実施例3
実施例1のC:0.62%、Si:0.25%、Mn:0.87%、S:0.06%、Cr:0.19%、Al:0.003%、O:0.002%、残部Fe及び不可避不純物(P,Cu,Ni,Mo,N)からなる鋼を使用し、表1の2と同じ条件で試験したところ鋼軸の摩耗量が1μm、Al合金の摩耗量が1μmであった。
【0047】
実施例4
実施例1で使用したAl系合金のSiに代えてSi(最大粒径3μm)粒子を添加し、表1のNo.1と同じ条件で試験したところ、鋼軸の摩耗量が1μm、Al合金の摩耗量が1μmであった。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は非調質型クランク鋼軸とAl系合金すべり軸受の組成、組織、表面粗さを総合的に考察して、低コストの方法で両者の摩耗を少なくすることに成功した。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関の主運動機構の要部を示す図面である。
【符号の説明】
10 摺動部
11 (クランク)ジャーナル部
12 (クランク)ピン部

Claims (6)

  1. パーライトと初析フェライト又はパーライトからなる組織を有し、高周波焼入れ又は表面硬化処理を施さない非調質型鋼材製クランク軸と、このクランク軸の外周に装着されたAl系合金を含んでなるすべり軸受とを含んでなる内燃機関の主運動機構において、前記非調質型鋼材は初析フェライトの面積分率が3%以下であり、且つ前記すべり軸受と摺動する面の前記クランク軸の表面粗さがRz0.5μm以下であるとともに、前記Al系合金は、SiからなるもしくはSiを含み、Hv900以上の硬さを有する硬質物がAlマトリックスに分散されたAl系合金であるとともに、摺動面に存在する前記硬質物の大きさが6μm以下であることを特徴とする内燃機関の主運動機構。
  2. 前記Al系合金は1〜4質量%のSiを含有する請求項1記載の内燃機関の主運動機構。
  3. 前記Al系合金は、質量%で、2〜20%のSnに加えて、1〜3%のPb, 0.5〜2%のCu, 0.1〜1%のCr, 0.5〜2%のMg, 及び0.1〜1%のZr, Mn, V, Ti及び/又はBからなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の主運動機構。
  4. 前記非調質型鋼材が、質量%で、C:0.62〜0.80%、Si:0.60%以下(0を含まない)、Mn:0.30〜1.80%、S:0.04〜0.35%、Cr:0.05〜0.50%、Al:0.005%未満(0を含まない)、O:0.0020%以下(0を含まない)、残部Fe及び不可避不純物からなり、且つ厚み20μm以下の硫化物系介在物を含有することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項記載の内燃機関の主運動機構。
  5. 前記非調質型鋼材が、さらに、質量%でBi:0.01〜0.30%、Pb:0.01〜0.30%、Ca:0.0003〜0.020%、Mg:0.0003〜0.0020%、及びREM:0.001〜0.10%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項4記載の内燃機関の主運動機構。
  6. 前記非調質型鋼材が、さらにV:0.01〜0.09質量%を含有することを特徴とする請求項4又は5記載の内燃機関の主運動機構。
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