JP2004028118A - 高負荷伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】ベルトが屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する応力を緩和することができるとともに、ブロックの回転運動を抑止してセンターベルトの摩耗やブロックの摩耗による故障を防止し、騒音レベルを下げる。
【解決手段】センターベルト3aに複数のブロック2を装着した高負荷伝動ベルトの少なくとも下側において、センターベルトの溝条部21に係合するブロックの凸条部19は、中央に曲率半径の大なる大径部22と、その両側に位置する曲率半径の小さな小径部23で構成され、ベルトが直線状に伸ばされた状態のときには凸条部19においてセンターベルトとの間に隙間を生じ、且つベルトが屈曲した際には凸条部と溝条部とのあいだに発生する応力Fが大径部22よりも小径部23において大とする。
【選択図】 図4
【解決手段】センターベルト3aに複数のブロック2を装着した高負荷伝動ベルトの少なくとも下側において、センターベルトの溝条部21に係合するブロックの凸条部19は、中央に曲率半径の大なる大径部22と、その両側に位置する曲率半径の小さな小径部23で構成され、ベルトが直線状に伸ばされた状態のときには凸条部19においてセンターベルトとの間に隙間を生じ、且つベルトが屈曲した際には凸条部と溝条部とのあいだに発生する応力Fが大径部22よりも小径部23において大とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エラストマー製のセンターベルトと耐側圧を補強するブロックからなる高負荷伝動ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から無段変速装置等の高負荷伝動を要求される用途として適用されるベルトとして、ゴム製Vベルトも使用されているが、ゴム製Vベルトでは高負荷用のものであっても最大面圧が10kg/cm2程度であり、それ以上のトルクのかかる用途であるとゴム製Vベルトが高い側圧に耐えられず座屈変形してしまう。
【0003】
そこで、高負荷にも耐えうるベルトとして心体を埋設したゴムベルトに硬質の樹脂等からなるブロックを固定してベルト幅方向の強度を高め、耐久性を向上させたベルトも多数提案されている。
【0004】
特開昭62−151646号公報ではセンターベルト(張力帯)側の下面に設けた凸条部の最下端位置を、この凸条部と係合するブロックの嵌合溝内における下側凸部の下端よりも上に位置させることによって、センターベルト(張力帯)がベルトの屈曲時に隣り合うブロック同士に挟まれて繰返し圧縮されて発熱したり劣化したりするのを防止することが開示されている。
【0005】
また、特開平9−25999号公報にはセンターベルト(張力帯)の下面に設けた溝条部の曲率半径を、その溝条部と係合するブロックの嵌合溝下側に形成した凸条部の曲率半径よりも大きく設定して、ベルトがプーリ同士のスパン間にある直線の部分ではブロックとセンターベルトの嵌合部の両側部にて隙間ができ、且つプーリに巻きかかって最小プーリ径で屈曲した際にも、中央部と両側部とで発生する応力が略均一になるようにし、やはり張力帯を形成するゴムの発熱や劣化を防止するといったことが開示されている。
【0006】
また特開2002−39281号公報には前記2つと同様にブロックとセンターベルト(負荷支持体)とがベルト長手方向に移動しないように係合するセンターベルトに設けた溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部にあって、ベルト伸長状態から最小の回転半径までのブロックと負荷支持体との前記溝条部と凸条部との接触範囲全体において、接触範囲の中央から外側範囲の方に曲率が増大するように、連続的に変化する曲率、または一定の曲率の少なくとも3つの部分からなる複合体から形成されているベルトが開示されている。
【0007】
そして、このような構成を採ることによってベルトが屈曲した場合においてもブロックとセンターベルト(負荷支持体)における押圧力が滑りの少ない中央の範囲に集中して効率を高めることができるものである。
【0008】
特開平9−25999号公報においては、ブロックとセンターベルトとが係合している凸条部と溝条部の間で発生している応力は最小プーリ径に巻きかかった状態にあっても中央部、両側部で均一としており、特開2002−39281号にあっては屈曲した状態にあってもなおかつ中央部において大きくなるように設定している。
【0009】
一方、このようなブロックをセンターベルトに取り付けたベルトにおいて、ベルトの走行中にブロックがセンターベルトと凹凸で係合した部分を中心として回転方向の動きをすることによって、センターベルトが摩耗したり、ブロックが摩耗したりといった問題が発生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特開平9−25999号公報や特開2002−39281号に開示されたベルトであるとベルトの屈曲の際に隣り合うブロックに挟まれて圧縮を繰り返し受けることによるセンターベルトの発熱や劣化は防止することができるものの、基本的にブロックとセンターベルトとの間の規制力は低くなるので、ブロックの回転運動は発生しやすくなり、それが原因によるセンターベルトやブロックの摩耗が生じやすくなる。このブロックの回転運動はベルトが屈曲しているプーリ中で、特にベルトのブロックがプーリに入る時とプーリから出る時によく起こる。
【0011】
そこで本発明はベルトの屈曲によってセンターベルトがブロックから圧縮を受けて劣化するといった問題を低減すると共に、センターベルトを中心とするブロックの回転運動をも防止してベルトの伝動効率の向上と長寿命化を図ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために請求項1では、エラストマー中に心線を埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトの長手方向に複数嵌合配置したブロックからなり、少なくともセンターベルトの下面には溝条部が所定ピッチで設けられ、該溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部を係合した高負荷伝動ベルトにおいて、溝条部に係合するブロックの凸条部は、凸条部の中央に位置し曲率半径の大きな曲面で形成された大径部と、その大径部の両側に位置し曲率半径の小さな曲面で形成された小径部で構成することによって、ベルトが直線状態のときにはブロックの凸条部の小径部においてセンターベルトとの間に隙間を生じるようにし、且つベルトが屈曲した際には凸条部における大径部でセンターベルトとの間に発生する応力よりも小径部において発生する応力の方が大としたことを特徴とする。
【0013】
ベルトが屈曲していない状態において、ブロックとセンターベルトとの係合において小径部に隙間を有するようにしているので、ベルトが屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する応力を緩和することができるとともに、最小プーリ径にて屈曲する際にはセンターベルトでブロックを挟み込んで回転運動しないようにすることができるので、回転運動によるセンターベルトの摩耗やブロックの摩耗による故障を防止し、騒音レベルを下げることもできる。
【0014】
請求項2では、ベルトが最小プーリ径にて屈曲した際に、ブロックの凸条部とセンターベルトとの間で発生する応力の大きさにおいて、2.5≧小径部/大径部≧1.3である高負荷伝動ベルトとしている。
【0015】
ベルトを最小プーリ径にて屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する中央部と両側部の応力をこのような分布にすることによって、センターベルトに応力がかかりすぎて発熱や劣化の問題が大きくなることがなく、しかもブロックがベルトの屈曲時にはセンターベルトによって挟まれた状態になり回転運動を抑止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す斜視概略図であり、図2はその側断面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内にロープ状の心体5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3a、3bと、このセンターベルト3a、3bの上下面6、7に所定ピッチで形成された凹条部18、19に嵌合し、係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の両側面8、9は、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3a、3bを引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
【0018】
ブロック2の形状は図3に示すように、上ビーム部11および下ビーム部12と、上下ビーム部11、12の中央部同士を連結したセンターピラー13からなっており、ブロック2の両側面にはセンターベルト3a、3bを嵌めこむ嵌合溝14、15が形成されている。また、嵌合溝15内の溝上面16および溝下面17にはセンターベルト3a、3bの上面6に設けた溝条部18と下面7に設けた溝条部19に係合する凸条部20、21が設けられ、互いに係合することによってベルト長手方向にブロック2が係止されている。
【0019】
本発明では、図4のように凸条部21の面は中央に曲率半径の大きい曲面で形成される大径部22を配置し、該大径部22の両端には曲率半径の小さい曲面で形成される小径部23を配置している。
【0020】
一方、センターベルト3a、3bの下面に設けた溝条部19を形成する曲面は、ブロックの凸条部21の中央部を形成する大径部22の曲率半径と略同じ大きさの曲率半径を有する曲面となっている。
【0021】
このようなブロック2とセンターベルト3a、3bを係合させることによって、高負荷伝動ベルトが直線となっているところでは凸条部21の小径部23とセンターベルト3a、3bとのあいだで隙間Sが発生した状態となる。そしてベルトが進行し、プーリに巻きかかった状態、すなわちベルトが屈曲した状態になると前述の隙間Sはなくなって小径部23とセンターベルト3a、3bは接触する。しかも、図4にその応力分布Fを示すように大径部22で発生している応力よりも小径部23とセンターベルト3a、3bとのあいだで発生する応力の方が大きくなる程度に圧縮された状態となる。
【0022】
このような状態にすることでブロック2の凸条部は両側の小径部23においてセンターベルト3a、3bにて挟まれた状態となり、ブロック2のセンターベルト3a、3bに嵌合装着した部分を中心とした回転運動を抑止することができ、センターベルト3a、3bの摩耗や疲労、またブロック2の摩耗といった問題を解消することができ、騒音のレベルを下げることができるものである。
【0023】
図には示さないが別の例としてブロック2の凸条部21の中央に配置する大径部22の更に中央の一部に平面で形成する平面部を配置したものでも構わない。これは、前述の例の大径部における曲率半径が極端に大きい場合のようなもので、使用するプーリの最小径が大きな場合に用いることができる。
【0024】
ブロック2は図3に示すように樹脂材41中にインサート材42が埋設されたものであるが、インサート材42は、ブロック2の耐側圧性や曲げ剛性を持たせる部分となるインサート材であり、素材としてはアルミ合金、セラミックス、セラミックスとアルミニウムとの複合材料、炭素繊維強化樹脂や鉄などの素材が挙げられる。
【0025】
耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が好ましく、金属材料の中ではアルミ合金の弾性率が7000kgf/mm2で比重が2.8であるのに対し、鉄は弾性率が22000kgf/mm2で比重が7.8であり、強度的には鉄を用いるほうが高いといえるが、高速で回転するベルトにとって、ベルト重量は寿命に大きく影響を与えるため軽量化の面で有利なアルミ合金を用いることが好ましい。ただし、耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が優れており、インサート材42の所定箇所に樹脂材41を被覆したブロック2を用いることが好ましい。
【0026】
樹脂材41を所定の箇所に配置する場合、ブロック2の大きさよりもひと回り小さい金属材料からなるインサート材42を用いてそのほぼ全面を樹脂材41で被覆したものを用いると、部分的に樹脂材41を被覆配置したものに比べて、樹脂材の剥離などの問題が発生しにくいので好ましい形態ということができる。ただし、全面といっても製造工程の上で樹脂材41を被覆する際にインサート材42を固定する部材が接触しているところは、インサート材42が露出する箇所が発生することになるが、その程度のインサート材42の露出は、実質的に全面を樹脂材で被覆している形態に含まれるといってよいものである。
【0027】
インサート材42を被覆する樹脂材41としては、比較的摩擦係数の大きく耐摩耗性に優れ、センターベルト4を構成するエラストマー2と比べると剛性の高い、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。
【0028】
また、これらの樹脂中に、綿糸、ポリアミド繊維やアラミド繊維等の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等からなる織布、フィラー、ウィスカ、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料等を混入した強化樹脂からなる。
【0029】
またブロック2としては樹脂材41のみからなっているものも使用できる。このようなインサート材42を埋設していないブロック2を用いた場合、インサート材42を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があるが、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いている。
【0030】
ここでインサート材42というのは、それだけでほぼブロックの形状を呈する骨組的なものことを指し、例えば合成樹脂素材中に配合する形で加える短繊維やウィスカなどの補強材を添加することはインサート材42を埋設することを意味するものではない。
【0031】
ブロック2の樹脂として用いることができるのは、インサート材を埋設したブロック2に用いる樹脂材と同様に具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。等の合成樹脂が用いられる。
【0032】
これらの中でもブロックを効率よく製造するために射出成形法にて製造するには、ポリアミド樹脂のような熱可塑性樹脂を用いることになる。また低摩擦係数で耐摩耗性に優れ、剛性があるとともに曲げに対しても弾力性を有しており、簡単に破損してしまうことのない樹脂がよいということからすると、ポリアミド樹脂なかでもナイロン46が好ましいといえる。
【0033】
本発明では前述のようにブロックを形成する樹脂材中に繊維状の補強材やウィスカ状の補強材を配合することは可能であり、繊維状の補強材は15〜40重量%の範囲で配合する。15重量%未満であると補強効果が少なくブロックの耐摩耗性が十分でないなどの問題があり、40重量%を超えると樹脂への配合が困難になったり射出成形が困難になったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0034】
合成樹脂に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。その中でも前記のブロックを構成する樹脂で好ましい例であるナイロン46と炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維がナイロン46の吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、且つナイロン46の有する耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができるものである。炭素繊維の中でも、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。また、炭素繊維と組み合わせてアラミド繊維を配合することによってブロックの靭性が向上し、耐摩耗性や、耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0035】
ここで、使用されるPAN系炭素繊維は、熱可塑性樹脂と相性が良く、用いる炭素繊維の長さは3〜6mmのものが好ましい。3mm未満であると、ブロックの補強が十分になされず、また、6mmを越えると、樹脂との混練が困難になること、また、混練時に折れて短くなってしまうので好ましくない。
【0036】
また、前記繊維状補強材として上記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。
【0037】
このような材料構成とすることによって、プーリと接する際に受ける側圧にも十分に耐えうる剛性、靭性等の強度を有するとともに、耐摩耗性に優れ、更には、摩擦時に発生する熱に対しても強いブロックとすることが可能となり、プーリから受ける動力を効率よくセンターベルト3a、3bに引張力として伝えることができ、引張伝動式の高負荷伝動ベルトを構成することができる。
【0038】
なお、これらの他に、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂から選ばれてなる少なくとも一つを混入することによってもブロック2の潤滑性を向上させることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、ポリフッ化アルコキシエチレン(PFA)等が挙げられる。
【0039】
また、ブロック2の下ビームは屈曲を許容しベルトがプーリに巻きかかることができるようにしなければならず、ベルト走行方向の前後面の少なくともいずれか一方に傾斜面を設けている。傾斜面を設けることによってブロック同士が緩衝することなくベルトが屈曲することができる。
【0040】
センターベルト3a、3bのエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心体5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心体5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維の織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
【0041】
図5は、別のベルトの例であり、ビーム部31の両端から上方に向かって一対のサイドピラー32、33が延びており、このサイドピラー32、33の上端からそれぞれブロック2の中心に向かって延びるロック部34、35が対向するように設けられている。そして、これらビーム部31、サイドピラー32、33及びロック部34、35によってセンターベルト3a、3bが嵌合する嵌合溝30が形成されている。この嵌合溝30に、センターベルト3a、3bが、ロック部34、35間の開口部より挿入され装着される。また、ロック部34、35の嵌合溝30側には、凸部37がそれぞれ設けられており、この凸部37が、センターベルト3a、3bに所定ピッチで設けられている凹部36に嵌合する。これによって、センターベルト3a、3bは、装着後はブロック2から抜けにくい状態となる。
【0042】
以上、説明したが本発明では要するにセンターベルト3a、3bとセンターベルト3a、3bを挿入する嵌合溝内において、センターベルト3a、3bの下面に設けた溝条部19とブロック側の凸条部21の係合においての上述したような構成になっていればよく、ブロックの形状自体は、特に限定されるものではない。よって、ブロックの側面に嵌合溝があって横からセンターベルトを嵌合するようなベルトや、センターベルトを上下一対のブロックで挟み込み、締着材で固定するようなベルトにも適用できるものである。
【0043】
【実施例】
次に、本発明のベルトを実際に走行させて寿命に至る時間を比較する試験を行った。実施例としては図1に示すような高負荷伝動ベルトであり、ブロックは図2のようにブロックの凸条部の大径部が曲率半径1.32mmの曲面で形成され、小径部を0.9mmの曲面としたブロックを用いた。なお、センターベルトには水素化ニトリルゴム中にアラミド繊維からなる心線をスパイラル状に埋設した上下に凸部を有するベルトを用い、ブロックの補強材の素材としてはアルミニウム合金、樹脂はエポキシ樹脂を用いた。一方センターベルト下面の溝条部は前記凸条部の大径部と等しい曲率半径1.32mmの曲面で形成した。
【0044】
比較例としては、ブロックの凸条部を一定の曲率半径1.32mmの曲面で形成した以外は、実施例と全く同じ条件のベルトを用いた。
【0045】
それぞれのベルトを走行させて寿命となるまでの時間を測定すると共に騒音レベルを測定した。走行条件は、駆動側プーリのピッチ径(直径)が65mm(半径は32.5mm)で回転数が3200rpm、従動側プーリのピッチ径が130mmで回転数が1600rpm、そして雰囲気温度は90℃、負荷は駆動側が3.5kgfm、従動側が7kgfmで行った。
その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1からわかるように、比較例では183時間で心線の疲労により寿命となっているのに対して、実施例では300時間走行してもまだ寿命に至っておらず。本発明による寿命を延長することができる効果が認められる。
【0048】
また騒音レベルも比較例と比べて実施例にて低い良好な結果が得られており、本発明による騒音の低減の効果も認められた。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明の高負荷伝動ベルトは、請求項1では、エラストマー中に心線を埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトの長手方向に複数嵌合配置したブロックからなり、少なくともセンターベルトの下面には溝条部が所定ピッチで設けられ、該溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部を係合した高負荷伝動ベルトにおいて、溝条部に係合するブロックの凸条部は、凸条部の中央に位置し曲率半径の大きな曲面で形成された大径部と、その大径部の両側に位置し曲率半径の小さな曲面で形成された小径部で構成することによって、ベルトが直線状態のときにはブロックの凸条部の小径部においてセンターベルトとの間に隙間を生じるようにし、且つベルトが屈曲した際には凸条部における大径部でセンターベルトとの間に発生する応力よりも小径部において発生する応力の方が大としたことを特徴とする。
【0050】
ベルトが屈曲していない状態において、ブロックとセンターベルトとの係合において両側部に隙間を有するようにしているので、ベルトが屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する応力を緩和することができるとともに、最小プーリ径にて屈曲する際にはセンターベルトでブロックを挟み込んで回転運動しないようにすることができるので、回転運動によるセンターベルトの摩耗やブロックの摩耗による故障を防止し、騒音レベルを下げることもできる。
【0051】
請求項2では、ベルトが最小プーリ径にて屈曲した際に、ブロックの凸条部とセンターベルトとの間で発生する応力の大きさにおいて、2.5≧小径部/大径部≧1.3である高負荷伝動ベルトとしている。
【0052】
ベルトを最小プーリ径にて屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する大径部と小径部の応力をこのような分布にすることによって、センターベルトに応力がかかりすぎて発熱や劣化の問題が大きくなることがなく、しかもブロックがベルトの屈曲時にはセンターベルトによって挟まれた状態になり回転運動を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高負荷伝動ベルトの要部斜視図である。
【図2】本発明の高負荷伝動ベルトの側断面図である。
【図3】ブロックの正面図である。
【図4】図2におけるA部拡大図である。
【図5】本発明の別のベルトの例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
3a センターベルト
3b センターベルト
4 エラストマー
5 心体
6 上面
7 下面
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
14 嵌合溝
15 嵌合溝
18 凸条部
19 凸条部
20 溝条部
21 溝条部
22 大径部
23 小径部
【発明の属する技術分野】
本発明は、エラストマー製のセンターベルトと耐側圧を補強するブロックからなる高負荷伝動ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から無段変速装置等の高負荷伝動を要求される用途として適用されるベルトとして、ゴム製Vベルトも使用されているが、ゴム製Vベルトでは高負荷用のものであっても最大面圧が10kg/cm2程度であり、それ以上のトルクのかかる用途であるとゴム製Vベルトが高い側圧に耐えられず座屈変形してしまう。
【0003】
そこで、高負荷にも耐えうるベルトとして心体を埋設したゴムベルトに硬質の樹脂等からなるブロックを固定してベルト幅方向の強度を高め、耐久性を向上させたベルトも多数提案されている。
【0004】
特開昭62−151646号公報ではセンターベルト(張力帯)側の下面に設けた凸条部の最下端位置を、この凸条部と係合するブロックの嵌合溝内における下側凸部の下端よりも上に位置させることによって、センターベルト(張力帯)がベルトの屈曲時に隣り合うブロック同士に挟まれて繰返し圧縮されて発熱したり劣化したりするのを防止することが開示されている。
【0005】
また、特開平9−25999号公報にはセンターベルト(張力帯)の下面に設けた溝条部の曲率半径を、その溝条部と係合するブロックの嵌合溝下側に形成した凸条部の曲率半径よりも大きく設定して、ベルトがプーリ同士のスパン間にある直線の部分ではブロックとセンターベルトの嵌合部の両側部にて隙間ができ、且つプーリに巻きかかって最小プーリ径で屈曲した際にも、中央部と両側部とで発生する応力が略均一になるようにし、やはり張力帯を形成するゴムの発熱や劣化を防止するといったことが開示されている。
【0006】
また特開2002−39281号公報には前記2つと同様にブロックとセンターベルト(負荷支持体)とがベルト長手方向に移動しないように係合するセンターベルトに設けた溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部にあって、ベルト伸長状態から最小の回転半径までのブロックと負荷支持体との前記溝条部と凸条部との接触範囲全体において、接触範囲の中央から外側範囲の方に曲率が増大するように、連続的に変化する曲率、または一定の曲率の少なくとも3つの部分からなる複合体から形成されているベルトが開示されている。
【0007】
そして、このような構成を採ることによってベルトが屈曲した場合においてもブロックとセンターベルト(負荷支持体)における押圧力が滑りの少ない中央の範囲に集中して効率を高めることができるものである。
【0008】
特開平9−25999号公報においては、ブロックとセンターベルトとが係合している凸条部と溝条部の間で発生している応力は最小プーリ径に巻きかかった状態にあっても中央部、両側部で均一としており、特開2002−39281号にあっては屈曲した状態にあってもなおかつ中央部において大きくなるように設定している。
【0009】
一方、このようなブロックをセンターベルトに取り付けたベルトにおいて、ベルトの走行中にブロックがセンターベルトと凹凸で係合した部分を中心として回転方向の動きをすることによって、センターベルトが摩耗したり、ブロックが摩耗したりといった問題が発生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特開平9−25999号公報や特開2002−39281号に開示されたベルトであるとベルトの屈曲の際に隣り合うブロックに挟まれて圧縮を繰り返し受けることによるセンターベルトの発熱や劣化は防止することができるものの、基本的にブロックとセンターベルトとの間の規制力は低くなるので、ブロックの回転運動は発生しやすくなり、それが原因によるセンターベルトやブロックの摩耗が生じやすくなる。このブロックの回転運動はベルトが屈曲しているプーリ中で、特にベルトのブロックがプーリに入る時とプーリから出る時によく起こる。
【0011】
そこで本発明はベルトの屈曲によってセンターベルトがブロックから圧縮を受けて劣化するといった問題を低減すると共に、センターベルトを中心とするブロックの回転運動をも防止してベルトの伝動効率の向上と長寿命化を図ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために請求項1では、エラストマー中に心線を埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトの長手方向に複数嵌合配置したブロックからなり、少なくともセンターベルトの下面には溝条部が所定ピッチで設けられ、該溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部を係合した高負荷伝動ベルトにおいて、溝条部に係合するブロックの凸条部は、凸条部の中央に位置し曲率半径の大きな曲面で形成された大径部と、その大径部の両側に位置し曲率半径の小さな曲面で形成された小径部で構成することによって、ベルトが直線状態のときにはブロックの凸条部の小径部においてセンターベルトとの間に隙間を生じるようにし、且つベルトが屈曲した際には凸条部における大径部でセンターベルトとの間に発生する応力よりも小径部において発生する応力の方が大としたことを特徴とする。
【0013】
ベルトが屈曲していない状態において、ブロックとセンターベルトとの係合において小径部に隙間を有するようにしているので、ベルトが屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する応力を緩和することができるとともに、最小プーリ径にて屈曲する際にはセンターベルトでブロックを挟み込んで回転運動しないようにすることができるので、回転運動によるセンターベルトの摩耗やブロックの摩耗による故障を防止し、騒音レベルを下げることもできる。
【0014】
請求項2では、ベルトが最小プーリ径にて屈曲した際に、ブロックの凸条部とセンターベルトとの間で発生する応力の大きさにおいて、2.5≧小径部/大径部≧1.3である高負荷伝動ベルトとしている。
【0015】
ベルトを最小プーリ径にて屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する中央部と両側部の応力をこのような分布にすることによって、センターベルトに応力がかかりすぎて発熱や劣化の問題が大きくなることがなく、しかもブロックがベルトの屈曲時にはセンターベルトによって挟まれた状態になり回転運動を抑止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す斜視概略図であり、図2はその側断面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内にロープ状の心体5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3a、3bと、このセンターベルト3a、3bの上下面6、7に所定ピッチで形成された凹条部18、19に嵌合し、係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の両側面8、9は、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3a、3bを引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
【0018】
ブロック2の形状は図3に示すように、上ビーム部11および下ビーム部12と、上下ビーム部11、12の中央部同士を連結したセンターピラー13からなっており、ブロック2の両側面にはセンターベルト3a、3bを嵌めこむ嵌合溝14、15が形成されている。また、嵌合溝15内の溝上面16および溝下面17にはセンターベルト3a、3bの上面6に設けた溝条部18と下面7に設けた溝条部19に係合する凸条部20、21が設けられ、互いに係合することによってベルト長手方向にブロック2が係止されている。
【0019】
本発明では、図4のように凸条部21の面は中央に曲率半径の大きい曲面で形成される大径部22を配置し、該大径部22の両端には曲率半径の小さい曲面で形成される小径部23を配置している。
【0020】
一方、センターベルト3a、3bの下面に設けた溝条部19を形成する曲面は、ブロックの凸条部21の中央部を形成する大径部22の曲率半径と略同じ大きさの曲率半径を有する曲面となっている。
【0021】
このようなブロック2とセンターベルト3a、3bを係合させることによって、高負荷伝動ベルトが直線となっているところでは凸条部21の小径部23とセンターベルト3a、3bとのあいだで隙間Sが発生した状態となる。そしてベルトが進行し、プーリに巻きかかった状態、すなわちベルトが屈曲した状態になると前述の隙間Sはなくなって小径部23とセンターベルト3a、3bは接触する。しかも、図4にその応力分布Fを示すように大径部22で発生している応力よりも小径部23とセンターベルト3a、3bとのあいだで発生する応力の方が大きくなる程度に圧縮された状態となる。
【0022】
このような状態にすることでブロック2の凸条部は両側の小径部23においてセンターベルト3a、3bにて挟まれた状態となり、ブロック2のセンターベルト3a、3bに嵌合装着した部分を中心とした回転運動を抑止することができ、センターベルト3a、3bの摩耗や疲労、またブロック2の摩耗といった問題を解消することができ、騒音のレベルを下げることができるものである。
【0023】
図には示さないが別の例としてブロック2の凸条部21の中央に配置する大径部22の更に中央の一部に平面で形成する平面部を配置したものでも構わない。これは、前述の例の大径部における曲率半径が極端に大きい場合のようなもので、使用するプーリの最小径が大きな場合に用いることができる。
【0024】
ブロック2は図3に示すように樹脂材41中にインサート材42が埋設されたものであるが、インサート材42は、ブロック2の耐側圧性や曲げ剛性を持たせる部分となるインサート材であり、素材としてはアルミ合金、セラミックス、セラミックスとアルミニウムとの複合材料、炭素繊維強化樹脂や鉄などの素材が挙げられる。
【0025】
耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が好ましく、金属材料の中ではアルミ合金の弾性率が7000kgf/mm2で比重が2.8であるのに対し、鉄は弾性率が22000kgf/mm2で比重が7.8であり、強度的には鉄を用いるほうが高いといえるが、高速で回転するベルトにとって、ベルト重量は寿命に大きく影響を与えるため軽量化の面で有利なアルミ合金を用いることが好ましい。ただし、耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が優れており、インサート材42の所定箇所に樹脂材41を被覆したブロック2を用いることが好ましい。
【0026】
樹脂材41を所定の箇所に配置する場合、ブロック2の大きさよりもひと回り小さい金属材料からなるインサート材42を用いてそのほぼ全面を樹脂材41で被覆したものを用いると、部分的に樹脂材41を被覆配置したものに比べて、樹脂材の剥離などの問題が発生しにくいので好ましい形態ということができる。ただし、全面といっても製造工程の上で樹脂材41を被覆する際にインサート材42を固定する部材が接触しているところは、インサート材42が露出する箇所が発生することになるが、その程度のインサート材42の露出は、実質的に全面を樹脂材で被覆している形態に含まれるといってよいものである。
【0027】
インサート材42を被覆する樹脂材41としては、比較的摩擦係数の大きく耐摩耗性に優れ、センターベルト4を構成するエラストマー2と比べると剛性の高い、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。
【0028】
また、これらの樹脂中に、綿糸、ポリアミド繊維やアラミド繊維等の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等からなる織布、フィラー、ウィスカ、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料等を混入した強化樹脂からなる。
【0029】
またブロック2としては樹脂材41のみからなっているものも使用できる。このようなインサート材42を埋設していないブロック2を用いた場合、インサート材42を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があるが、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いている。
【0030】
ここでインサート材42というのは、それだけでほぼブロックの形状を呈する骨組的なものことを指し、例えば合成樹脂素材中に配合する形で加える短繊維やウィスカなどの補強材を添加することはインサート材42を埋設することを意味するものではない。
【0031】
ブロック2の樹脂として用いることができるのは、インサート材を埋設したブロック2に用いる樹脂材と同様に具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。等の合成樹脂が用いられる。
【0032】
これらの中でもブロックを効率よく製造するために射出成形法にて製造するには、ポリアミド樹脂のような熱可塑性樹脂を用いることになる。また低摩擦係数で耐摩耗性に優れ、剛性があるとともに曲げに対しても弾力性を有しており、簡単に破損してしまうことのない樹脂がよいということからすると、ポリアミド樹脂なかでもナイロン46が好ましいといえる。
【0033】
本発明では前述のようにブロックを形成する樹脂材中に繊維状の補強材やウィスカ状の補強材を配合することは可能であり、繊維状の補強材は15〜40重量%の範囲で配合する。15重量%未満であると補強効果が少なくブロックの耐摩耗性が十分でないなどの問題があり、40重量%を超えると樹脂への配合が困難になったり射出成形が困難になったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0034】
合成樹脂に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。その中でも前記のブロックを構成する樹脂で好ましい例であるナイロン46と炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維がナイロン46の吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、且つナイロン46の有する耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができるものである。炭素繊維の中でも、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。また、炭素繊維と組み合わせてアラミド繊維を配合することによってブロックの靭性が向上し、耐摩耗性や、耐衝撃性を一層向上させることができる。
【0035】
ここで、使用されるPAN系炭素繊維は、熱可塑性樹脂と相性が良く、用いる炭素繊維の長さは3〜6mmのものが好ましい。3mm未満であると、ブロックの補強が十分になされず、また、6mmを越えると、樹脂との混練が困難になること、また、混練時に折れて短くなってしまうので好ましくない。
【0036】
また、前記繊維状補強材として上記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。
【0037】
このような材料構成とすることによって、プーリと接する際に受ける側圧にも十分に耐えうる剛性、靭性等の強度を有するとともに、耐摩耗性に優れ、更には、摩擦時に発生する熱に対しても強いブロックとすることが可能となり、プーリから受ける動力を効率よくセンターベルト3a、3bに引張力として伝えることができ、引張伝動式の高負荷伝動ベルトを構成することができる。
【0038】
なお、これらの他に、二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂から選ばれてなる少なくとも一つを混入することによってもブロック2の潤滑性を向上させることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、ポリフッ化アルコキシエチレン(PFA)等が挙げられる。
【0039】
また、ブロック2の下ビームは屈曲を許容しベルトがプーリに巻きかかることができるようにしなければならず、ベルト走行方向の前後面の少なくともいずれか一方に傾斜面を設けている。傾斜面を設けることによってブロック同士が緩衝することなくベルトが屈曲することができる。
【0040】
センターベルト3a、3bのエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心体5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心体5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維の織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
【0041】
図5は、別のベルトの例であり、ビーム部31の両端から上方に向かって一対のサイドピラー32、33が延びており、このサイドピラー32、33の上端からそれぞれブロック2の中心に向かって延びるロック部34、35が対向するように設けられている。そして、これらビーム部31、サイドピラー32、33及びロック部34、35によってセンターベルト3a、3bが嵌合する嵌合溝30が形成されている。この嵌合溝30に、センターベルト3a、3bが、ロック部34、35間の開口部より挿入され装着される。また、ロック部34、35の嵌合溝30側には、凸部37がそれぞれ設けられており、この凸部37が、センターベルト3a、3bに所定ピッチで設けられている凹部36に嵌合する。これによって、センターベルト3a、3bは、装着後はブロック2から抜けにくい状態となる。
【0042】
以上、説明したが本発明では要するにセンターベルト3a、3bとセンターベルト3a、3bを挿入する嵌合溝内において、センターベルト3a、3bの下面に設けた溝条部19とブロック側の凸条部21の係合においての上述したような構成になっていればよく、ブロックの形状自体は、特に限定されるものではない。よって、ブロックの側面に嵌合溝があって横からセンターベルトを嵌合するようなベルトや、センターベルトを上下一対のブロックで挟み込み、締着材で固定するようなベルトにも適用できるものである。
【0043】
【実施例】
次に、本発明のベルトを実際に走行させて寿命に至る時間を比較する試験を行った。実施例としては図1に示すような高負荷伝動ベルトであり、ブロックは図2のようにブロックの凸条部の大径部が曲率半径1.32mmの曲面で形成され、小径部を0.9mmの曲面としたブロックを用いた。なお、センターベルトには水素化ニトリルゴム中にアラミド繊維からなる心線をスパイラル状に埋設した上下に凸部を有するベルトを用い、ブロックの補強材の素材としてはアルミニウム合金、樹脂はエポキシ樹脂を用いた。一方センターベルト下面の溝条部は前記凸条部の大径部と等しい曲率半径1.32mmの曲面で形成した。
【0044】
比較例としては、ブロックの凸条部を一定の曲率半径1.32mmの曲面で形成した以外は、実施例と全く同じ条件のベルトを用いた。
【0045】
それぞれのベルトを走行させて寿命となるまでの時間を測定すると共に騒音レベルを測定した。走行条件は、駆動側プーリのピッチ径(直径)が65mm(半径は32.5mm)で回転数が3200rpm、従動側プーリのピッチ径が130mmで回転数が1600rpm、そして雰囲気温度は90℃、負荷は駆動側が3.5kgfm、従動側が7kgfmで行った。
その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1からわかるように、比較例では183時間で心線の疲労により寿命となっているのに対して、実施例では300時間走行してもまだ寿命に至っておらず。本発明による寿命を延長することができる効果が認められる。
【0048】
また騒音レベルも比較例と比べて実施例にて低い良好な結果が得られており、本発明による騒音の低減の効果も認められた。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明の高負荷伝動ベルトは、請求項1では、エラストマー中に心線を埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトの長手方向に複数嵌合配置したブロックからなり、少なくともセンターベルトの下面には溝条部が所定ピッチで設けられ、該溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部を係合した高負荷伝動ベルトにおいて、溝条部に係合するブロックの凸条部は、凸条部の中央に位置し曲率半径の大きな曲面で形成された大径部と、その大径部の両側に位置し曲率半径の小さな曲面で形成された小径部で構成することによって、ベルトが直線状態のときにはブロックの凸条部の小径部においてセンターベルトとの間に隙間を生じるようにし、且つベルトが屈曲した際には凸条部における大径部でセンターベルトとの間に発生する応力よりも小径部において発生する応力の方が大としたことを特徴とする。
【0050】
ベルトが屈曲していない状態において、ブロックとセンターベルトとの係合において両側部に隙間を有するようにしているので、ベルトが屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する応力を緩和することができるとともに、最小プーリ径にて屈曲する際にはセンターベルトでブロックを挟み込んで回転運動しないようにすることができるので、回転運動によるセンターベルトの摩耗やブロックの摩耗による故障を防止し、騒音レベルを下げることもできる。
【0051】
請求項2では、ベルトが最小プーリ径にて屈曲した際に、ブロックの凸条部とセンターベルトとの間で発生する応力の大きさにおいて、2.5≧小径部/大径部≧1.3である高負荷伝動ベルトとしている。
【0052】
ベルトを最小プーリ径にて屈曲した際にブロックとセンターベルトとの間に発生する大径部と小径部の応力をこのような分布にすることによって、センターベルトに応力がかかりすぎて発熱や劣化の問題が大きくなることがなく、しかもブロックがベルトの屈曲時にはセンターベルトによって挟まれた状態になり回転運動を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高負荷伝動ベルトの要部斜視図である。
【図2】本発明の高負荷伝動ベルトの側断面図である。
【図3】ブロックの正面図である。
【図4】図2におけるA部拡大図である。
【図5】本発明の別のベルトの例を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
3a センターベルト
3b センターベルト
4 エラストマー
5 心体
6 上面
7 下面
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
14 嵌合溝
15 嵌合溝
18 凸条部
19 凸条部
20 溝条部
21 溝条部
22 大径部
23 小径部
Claims (2)
- エラストマー中に心線を埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトの長手方向に複数嵌合配置したブロックからなり、少なくともセンターベルトの下面には溝条部が所定ピッチで設けられ、該溝条部とブロックの嵌合溝内に設けた凸条部を係合した高負荷伝動ベルトにおいて、溝条部に係合するブロックの凸条部は、凸条部の中央に位置し曲率半径の大きな曲面で形成された大径部と、その大径部の両側に位置し曲率半径の小さな曲面で形成された小径部で構成することによって、ベルトが直線状に伸ばされた状態のときにはブロックの凸条部の両側部においてセンターベルトとの間に隙間を生じるようにし、且つベルトが屈曲した際には凸条部における大径部でセンターベルトとの間に発生する応力よりも小径部において発生する応力の方が大としたことを特徴とする高負荷伝動ベルト。
- ベルトが最小半径にて屈曲した際に、ブロックの凸条部とセンターベルトとの間で発生する応力の大きさにおいて、2.5≧小径部/大径部≧1.3である請求項1記載の高負荷伝動ベルト。
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