JP2004027168A - エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)硬化促進剤を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂が(D)ビフェニル型エポキシ樹脂を含有し、(B)フェノール樹脂が(E)アラルキル型フェノール樹脂を含有し、(C)硬化促進剤が(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を含有するエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
【選択図】なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形材料、積層板用又は接着剤の材料として好適なエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、成形材料、積層板用、接着剤用材料等にエポキシ樹脂が広範囲に使用され、トランジスタ、IC等の電子部品の素子封止の分野ではエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。特に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノールノボラック硬化剤の組み合わせはこれらのバランスに優れており、IC封止用成形材料のベース樹脂として主流になっている。また、硬化促進剤としては3級アミン、イミダゾール等のアミン化合物、ホスフィン類、ホスホニウム等のリン化合物が一般に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、電子部品のプリント配線板への高密度実装化が進んでおり、これに伴い電子部品は従来のピン挿入型のパッケージから、表面実装型のパッケージが主流になりつつある。IC、LSIなどの表面実装型ICは、実装密度を高くするために素子のパッケージに対する占有体積がしだいに大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきた。さらに、ピン挿入型パッケージは、ピンを配線板に挿入した後に配線板裏面からはんだ付けが行われるためパッケージが直接高温にさらされることがなかったのに対し、表面実装型ICは配線板表面に仮止めを行った後、はんだバスやリフロー装置などで処理されるため、直接はんだ付け温度にさらされる。この結果、ICパッケージが吸湿した場合、はんだ付け時に吸湿水分が急激に膨張しパッケージクラックに至り、これが大きな問題になっている。
【0004】
このはんだ付け時のパッケージクラックに対する耐性、いわゆる耐リフロークラック性を改良するために、無機充填剤を多く含むエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、無機充填剤量の増加は成形時の流動性の低下を招き、充填不良、ボイド発生等の成形上の障害やICチップのボンディングワイヤが断線し導通不良が発生するなど、成形品の性能低下を招くため、無機充填剤の増加量には限界があり、結果として耐リフロークラック性が十分でないという問題があった。
特にトリフェニルホスフィン等のリン系硬化促進剤や1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のアミン系硬化促進剤を用いた場合、流動性が低く、耐リフロークラック性が十分でないのが実情である。
【0005】
このような問題点を改善するために、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を硬化促進剤として用いる方法(特開平9−157497公報)、電子供与性置換基を有するフェニル基を3つ有するホスフィンと無水マレイン酸又はキノン類との付加反応物を硬化促進剤として用いる方法(特開平7−228672号公報)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、最近さらにパッケージの狭ピッチ化が進み、ICチップのボンディングワイヤの変形いわゆるワイヤ流れが以前に増して問題となっている。ワイヤの変形度合いが大きいと間隔の狭くなった隣のワイヤと接触しショートする不良が発生する。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、耐リフロークラック性を低下させずに、流動性、硬化性及び吸湿時の硬化性に優れ、かつワイヤの変形量の小さいエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ビフェニル骨格を有する特定のエポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂及びトリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物を組み合わせて配合することにより、耐リフロークラック性を低下させずに、流動性及び吸湿時の硬化性に優れ、かつワイヤ変形量の小さいエポキシ樹脂組成物が得られ、上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)硬化促進剤を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂が(D)ビフェニル型エポキシ樹脂を含有し、(B)フェノール樹脂が(E)アラルキル型フェノール樹脂を含有し、(C)硬化促進剤が(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を含有するエポキシ樹脂組成物、
(2)(C)硬化促進剤が、さらに(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を含有する上記(1)記載のエポキシ樹脂組成物、
(3)(D)ビフェニル型エポキシ樹脂が下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂である上記(1)又は(2)記載のエポキシ樹脂組成物、
【化5】
(ここで、R1は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜12のアルキル基、及び置換又は非置換の炭素数6〜12のアリール基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは、平均値であり0〜10の正数を示す。)
(4)(E)アラルキル型フェノール樹脂が下記一般式(II)で示されるフェノール樹脂である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
【化6】
(ここで、R2及びR3は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜12のアルキル基、及び置換又は非置換の炭素数6〜12のアリール基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり0〜10の正数を示し、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数を示す。)
(5)(H)無機充填剤をさらに含有し、その配合量がエポキシ樹脂組成物に対して70〜90体積%である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)(D)ビフェニル型エポキシ樹脂が下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂である上記(1)〜(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、及び
【化7】
(ここで、R4は水素原子又はメチル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは、平均値であり0〜10の正数を示す。)
(7)(E)アラルキル型フェノール樹脂が、下記一般式(IV)で示されるフェノール樹脂である上記(1)〜(6)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、並びに
【化8】
(ここで、nは平均値であり0〜10の正数を示す。)
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂としては、(D)ビフェニル型エポキシ樹脂を含有していれば特に制限はなく、(D)ビフェニル型エポキシ樹脂を単独で用いても、それ以外のエポキシ樹脂を1種又は2種以上併用してもよい。
(D)ビフェニル型エポキシ樹脂としてはビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
【化9】
(ここで、R1は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜12のアルキル基、及び置換又は非置換の炭素数6〜12のアリール基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは、平均値であり0〜10の正数を示す。)
【0011】
上記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂の中でも下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂がさらに好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、すべてのR4がメチル基であるYX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、すべてのR4が水素原子である4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、すべてのR4が水素原子であるエポキシ樹脂とすべてのR4がメチル基であるエポキシ樹脂との混合品であるYL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【化10】
(ここで、R4は水素原子又はメチル基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは、平均値であり0〜10の正数を示す。)
【0012】
(A)エポキシ樹脂として、(D)ビフェニル型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を併用する場合、(D)ビフェニル型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するために、(A)エポキシ樹脂全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。
併用するエポキシ樹脂としては特に制限はないが、例えば、一般に使用されている1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂で、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル、ブタンジオ一ル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル、アニリン、イソシアヌール酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型またはメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの2種以上を組み合わせて併用してもよい。なかでも、下記一般式(V)〜(X)のいずれかで示されるエポキシ樹脂が耐リフロークラック性及び流動性の点で好ましく、下記一般式(V)〜(VII)のいずれかで示されるエポキシ樹脂がより好ましい。
【0013】
【化11】
(ここで、一般式(V)〜(X)中のR5〜R15は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜12のアルキル基、及び置換又は非置換の炭素数6〜12のアリール基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり0〜10の正数、pは1又は0を示し、l、mはそれぞれ平均値であり0〜11の正数で(l+m)は平均値であり1〜11の正数を示す。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数、qは1〜3の整数を示す。)
上記一般式(V)〜(X)中のR5〜R15について、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよいの意味は、例えば式(III)中の16個のR5の全てが同一でも異なっていてもよいの意味である。他のR6〜R15についても式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいとの意味である。また、R5〜R15はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば式(X)中のR6とR7の全てについて同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明において用いられる(B)フェノール樹脂としては、(E)アラルキル型フェノール樹脂を含有していれば特に制限はなく、(E)アラルキルフェノール樹脂を単独で用いても、それ以外のフェノール樹脂を1種又は2種以上併用してもよい。
本発明において用いられる(E)アラルキル型フェノール樹脂としては特に制限はなく、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂などが挙げられ、具体的には下記一般式(II)で示されるフェノール・アラルキル樹脂、下記一般式(XI)で示されるナフトール・アラルキル樹脂等が挙げられる。なかでも、下記一般式(II)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【化12】
(ここで、一般式(II)中のR2及びR3、及び一般式(XI)中のR18〜R20は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜12のアルキル基、及び置換又は非置換の炭素数6〜12のアリール基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは、平均値であり0〜10の正数を示す。iは0〜3の整数、kは0〜4の整数を示す。)
【0015】
上記一般式(II)で示されるで表されるアラルキルフェノール樹脂の中でも下記一般式(IV)で示されるフェノール樹脂がさらに好ましい。このようなフェノール樹脂としては、XL−225(三井化学株式会社製商品名)、XLC(三井化学株式会社製商品名)、MEH−7800(明和化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【化13】
(ここで、nは、平均値であり0〜10の正数を示す。)
【0016】
(B)フェノール樹脂として、(E)アラルキルフェノール樹脂以外のフェノール樹脂を併用する場合、(E)アラルキルフェノール樹脂の配合量は、その性能を発揮するために、(B)フェノール樹脂全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。
併用するフェノール樹脂としては特に制限はないが、例えば、一般に使用されている1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂で、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐リフロークラック性及び流動性の観点からは下記一般式(XII)〜(XIV)のいずれかで示されるフェノール樹脂が好ましい。これら一般式(XII)〜(XIV)のいずれかで示されるフェノール樹脂は、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0017】
【化14】
(ここで、一般式(XII)〜(XIV)中のR16〜R23は水素原子、置換又は非置換の炭素数1〜12のアルキル基、及び置換又は非置換の炭素数6〜12のアリール基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり0〜10の正数を示し、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数を示す。)上記一般式(II)及び(XI)〜(XIV)中のR2、R3及びR16〜R23について、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよいの意味は、例えば式(XII)中のi個のR16の全てが同一でも相互に異なっていてもよいの意味である。他のR3、R3及びR17〜R23についても式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいとの意味である。また、R2、R3及びR16〜R23はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えばR16とR17の全てについて同一でも異なっていてもよく、R18とR20の全てについて同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(II)、(IV)及び(XI)〜(XIV)中のnは1分子中の平均値で0〜10の範囲であることが必要で、10を超えた場合は(B)フェノール樹脂の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0018】
本発明において(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂との配合比率は、全エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する全フェノール樹脂の水酸基当量の比率(フェノール樹脂中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)で0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.7〜1.5がより好ましく、0.8〜1.3がさらに好ましい。この比率が0.5未満ではエポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が劣る傾向があり、2.0を超えるとフェノール樹脂成分が過剰なため硬化が不充分となったり、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため電気特性及び耐湿性が悪くなったりする傾向がある。
【0019】
本発明において用いられる(C)硬化促進剤としては、(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を含有すれば特に制限はなく、(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を単独で用いても、それ以外の硬化促進剤を1種又は2種以上併用してもよい。
本発明において用いられる(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物は、下記一般式(XV)で示されるホスフィン化合物と下記一般式(XVI)で示されるキノン化合物とが反応して得られる化合物である。
【化15】
【0020】
(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、原料として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物とを両者が溶解する有機溶媒中で付加反応させて単離する方法、(B)成分のフェノール樹脂中で付加反応させる方法等が挙げられ、後者の方法においては単離せずにそのままフェノール樹脂中に溶解した状態で、エポキシ樹脂組成物の配合成分として用いることができる。
【0021】
(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物としては、例えば、下記一般式(XVII)で示される化合物等が挙げられる。
【化16】
【0022】
(C)硬化促進剤として、(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物以外の硬化促進剤を併用する場合、(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の配合量は、その性能を発揮するために、(C)硬化促進剤に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の配合量が(C)硬化促進剤中30重量%未満であると吸湿時の硬化性又は流動性が低下する傾向にある。
(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物に併用する硬化促進剤としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を促進する硬化促進剤として一般に用いられているものを1種又は2種以上併用することができる。これらの硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンなどのシクロアミジン化合物、その誘導体、それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、これら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体、トリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル(アルキルフェニル)ホスフィン、ジアリールアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン以外のトリアルキルホスフィン等の3級ホスフィンと1,4−ベンゾキノン等の上記キノン化合物とのベタイン型付加反応物などが挙げられる。
【0023】
(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物に併用する硬化促進剤としては、上記のなかでも(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物が好ましい。(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物に(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を併用した場合、トリフェニルホスフィン等の3級ホスフィンや1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5や1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物を併用した場合に比べ、流動性の低下度合いが少ない。また、(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を併用した場合、耐リフロークラック性が向上する傾向が見られる。その反面、(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の配合量が多くなると硬化性が低下する傾向が見られる。
【0024】
(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物は、下記一般式(XVIII)で示される化合物と下記一般式(XVI)で示されるキノン化合物とが反応して得られる化合物である。
【化17】
【0025】
(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の構造としては、例えば、下記一般式(XIX)で示される化合物が挙げられる。
【化18】
【0026】
(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、原料として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物とを両者が溶解する有機溶媒中で付加反応させて単離する方法、(B)成分のフェノール樹脂中で付加反応させる方法等が挙げられ、後者の方法においては単離せずにそのままフェノール樹脂中に溶解した状態で、エポキシ樹脂組成物の配合成分として用いることができる。
(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を併用する場合、その配合量は、(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンと(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物の総量に対して10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%がさらに好ましい。10重量%未満であると耐リフロークラック性の向上効果が少なくなる傾向にあり、90重量%を超えると吸湿時の硬化性が低下する傾向にある。
【0027】
(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物以外の硬化促進剤を併用する場合、(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンと(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの合計配合量は、(C)硬化促進剤全量に対して30重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上である。(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンと(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの合計配合量が30重量%未満であると吸湿時の硬化性又は流動性が低下し、本発明の効果が少なくなる傾向がある。
(C)硬化促進剤の全配合量は、硬化促進効果が得られれば特に制限はないが、吸湿時硬化性及び流動性の観点からは(A)エポキシ樹脂と(B)フェノール樹脂の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、1〜7重量部がより好ましい。0.1重量部未満では短時間で硬化させることが困難で、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合が生じる傾向がある。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、(H)無機充填剤を必要に応じてさらに配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上の観点から(H)無機充填剤を配合することが好ましい。本発明において用いられる(H)無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるもので特に限定はないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズなどが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。なかでも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これらの無機充填剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(H)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に対して70〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が70体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向があり、90体積%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
また、(H)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充填剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下したりする傾向がある。
流動性の観点からは、(H)無機充填剤の粒子形状は角形より球形が好ましく、(H)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70重量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいため配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、下記組成式(XVIII)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【化19】
Mg1−XAlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(XX)
(0<X≦0.5、mは正の整数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0031】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
カップリング剤の配合量は、(H)無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0032】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、二級アミノ基を有するカップリング剤が流動性及びワイヤ流れの観点から好ましい。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合してもよい。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができるが、例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01重量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10重量%を超えると接着性が阻害されるおそれがある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
【0035】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、難燃性を付与する目的で、従来公知の難燃剤を添加することができる。例えば、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン含有化合物、酸化アンチモン等のアンチモン含有化合物、赤燐、リン酸エステル等のリン含有化合物、メラミン、メラミン誘導体、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体、メラミン変性フェノール樹脂等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン/窒素含有化合物、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、フェロセン等の金属化合物がある。これらの中でも、硬化性の観点からは、臭素化エポキシ樹脂と酸化アンチモンの組み合わせが好ましく、高温放置特性の観点から臭素化エポキシ等のハロゲン原子を含有しない難燃剤、例えば、リン酸エステルが好ましい。耐湿性の観点からは、赤燐を含有しない難燃剤が好ましい。
難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して1〜30重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。
【0038】
本発明で得られるエポキシ樹脂組成物により素子を封止して得られる電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明のエポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead Package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明のエポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0040】
【実施例】
次に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1〜6
エポキシ樹脂としてはエポキシ当量196、融点106℃のビフェニル骨格型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX−4000H)及びエポキシ当量195、軟化点62℃のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:住友化学工業株式会社製商品名ESCN−190−2)、フェノール樹脂としては水酸基当量176、軟化点70℃のアラルキル型フェノール樹脂(硬化剤1:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL−225)及び水酸基当量106、軟化点80℃のフェノールノボラック樹脂(硬化剤2:日立化成工業株式会社製商品名HP−850N)、硬化促進剤としてはトリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤2)及びトリフェニルホスフィン(硬化促進剤3)、無機充填剤としては平均粒径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカを用い、その他の添加成分としてはカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)及びγ−アニリノプロピルトリメトキシシラン(アニリノシラン)、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)、離型剤としてカルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)、難燃剤として三酸化アンチモン及びエポキシ当量393、軟化点80℃、臭素含有量48重量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(臭素化エポキシ樹脂)を用い、表1に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行い、実施例1〜4、比較例1〜6のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1〜4、比較例1〜6のエポキシ樹脂組成物を、次の各試験により評価した。評価結果を表2に示す。
なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力7MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、上記条件でエポキシ樹脂組成物を成形して流動距離(cm)を測定した。
(2)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(3)吸湿時熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を25℃/50%RHの条件で72時間放置後、上記(2)と同様に成形しショアD型硬度計を用いて測定した。
(4)耐リフロークラック性1
42アロイフレームに寸法8×10×0.4mmのテスト用シリコンチップを銀ペーストを用いて搭載した、外形寸法14×20×2.0mmのQFP80ピンのパッケージを、エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、85℃、85%RHの条件で168時間吸湿させた後、IRリフロー装置により、240℃、10秒の条件でリフロー処理を行って、クラックの発生の有無を確認し、試験パッケージ数(5)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
(5)耐リフロークラック性2
85℃、85%RHの条件で72時間吸湿させた後、IRリフロー装置により、260℃、10秒の条件でリフロー処理を行った以外は上記(4)に示す方法と同様に行った。
(6)高温放置特性
外形サイズ5×9mmで5μmの酸化膜を有するシリコンサブストレート上にライン/スペースが10μmのアルミ配線を形成したテスト素子を使用して、部分銀メッキを施した16ピン型DIP(Dual Inline Package)42アロイリードフレームに銀ペーストを用いて搭載し、サーモニックワイヤにより、200℃で素子のボンディングパッドとインナーリードをAu線にて接続したパッケージをエポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、200℃の条件で500時間及び1000時間保管した後、取り出して導通試験を行い、不良パッケージ数を調べ、試験パッケージ数(10)に対する不良発生パッケージ数で評価した。
(7)ワイヤ変形量(ワイヤ流れの指標)
10mm×10mm×0.4mm(面積100mm2)、パッドピッチ80μmのテスト用シリコンチップを搭載し、直径18μm、最大長さ3mmの金線(ワイヤ)でワイヤボンディングを施した、外形20mm×20mm、半導体チップ上面の封止材の厚さ0.5mm、半導体チップ裏面の封止材の厚さ0.5mm、半導体装置の総厚み1.5mmのLQFPパッケージを、エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、ソフトX線測定装置(ソフテックス社製PRO−TEST 100型)を用いて、電圧100kV、電流1.5mAの条件で、半導体装置の透視観察を行ってワイヤ変形量を求め、ワイヤ流れを評価した。図1に示すように、観察はフレーム面に対し垂直方向から行い、ワイヤボンディングの最短距離L(半導体チップ1の端子部3とリード4を結ぶ直線距離)及びワイヤ2の最大変位量Xを測定し、X/L×100をワイヤ変形量(%)とした。
【0043】
【表2】
【0044】
実施例1〜4は、流動性、熱時硬度、吸湿時熱時硬度、耐リフロークラック性、ワイヤ変形量いずれにも優れている。特に、流動性の点ではアニリノシランを用いた実施例3が優れ、高温放置特性の点ではリン酸エステルを難燃剤として用いた実施例4が優れ、吸湿時熱時硬度の点では、硬化促進剤としてトリ−n−ブチルホスフィンを単独で用いた実施例1、3及び4が優れ、耐リフロークラック性の点では硬化促進剤としてトリ−n−ブチルホスフィンとトリフェニルホスフィンを併用した実施例2が優れる。
これに対して、本発明の(D)、(E)及び(F)成分のうちのいずれかを含有しない比較例1〜6ではいずれもワイヤ変形量及び他の項目で劣っている。
【0045】
【発明の効果】
本発明になるエポキシ樹脂組成物は、流動性、硬化性、吸湿時の硬化性及び耐リフロークラック性に優れ、かつワイヤの変形量の小さく、このエポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば、実施例で示したように耐リフロークラック性が良好で、信頼性に優れる電子部品装置を得ることができるので、その工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ変形量の測定方法を示す図
【符号の説明】
1:半導体チップ
2:ワイヤ
3:端子部(ボンディングパット)
4:配線板の端子部
Claims (8)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂及び(C)硬化促進剤を必須成分とし、(A)エポキシ樹脂が(D)ビフェニル型エポキシ樹脂を含有し、(B)フェノール樹脂が(E)アラルキル型フェノール樹脂を含有し、(C)硬化促進剤が(F)トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を含有するエポキシ樹脂組成物。
- (C)硬化促進剤が、さらに(G)トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
- (H)無機充填剤をさらに含有し、その配合量がエポキシ樹脂組成物に対して70〜90体積%である請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009227815A (ja) * | 2008-03-24 | 2009-10-08 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | フェノール樹脂成形材料 |
JP2010159401A (ja) * | 2008-12-10 | 2010-07-22 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | 半導体封止用樹脂組成物、半導体装置の製造方法及び半導体装置 |
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2002
- 2002-08-26 JP JP2002245309A patent/JP2004027168A/ja active Pending
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JP2009227815A (ja) * | 2008-03-24 | 2009-10-08 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | フェノール樹脂成形材料 |
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