JP2004027138A - 非熱可塑性ポリイミドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非熱可塑性ポリイミドの製造法であって、
第1工程(液相反応工程)としてジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分を含有する原料混合物の少なくとも一部を、有機溶媒に溶解してなる反応系を、混合して液相反応させることによりポリイミドプレポリマーを製造する工程、
第2工程(乾燥工程)として、第1工程で得られたポリイミドプレポリマーから有機溶媒を除去する工程、
第3工程(固相反応工程)として、第2工程で得られたポリイミドプレポリマーを、さらに、固相反応させて、ポリイミドプレポリマーよりも大きな分子量を有する非熱可塑性ポリイミドを製造する工程とを含んで構成されることを特徴とする、非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れた非熱可塑性ポリイミドの製造方法に関する。更に詳しくは、プレ重合したポリマーを用い固相にて反応を行い非熱可塑性ポリイミドを効率良く製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリイミド粉末の製造方法は、以下の方法が一般的に知られている。芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機極性溶媒に長時間で溶解、さらに両モノマーを長時間重合して、ポリイミドの前駆体である高分子量のポリアミド酸を生成し、次いでその反応液にポリアミド酸不溶性の溶媒を多量添加し、ポリアミド酸粉末を析出させ単離、そのポリアミド酸粉末を高温でイミド化してポリイミド粉末を得る方法、あるいは前記高分子量のポリアミド酸を含有する反応液にイミド化剤を添加するか、またはその反応液を高温に加熱して、前記ポリアミド酸をイミド化してポリイミド粉末として析出させ単離してポリイミド粉末を得る方法である。
【0003】
しかし、前述の公知の方法では、高分子量の芳香族ポリアミド酸の生成工程とそのポリアミド酸のイミド化工程の二工程が必要であるので、全体として製造工程が複雑であり長時間を要するという欠点があった。特に、ポリアミド酸の生成工程において、有機極性溶媒または反応液を実質的に無水の状態にしなければ高分子量のポリアミド酸が生成しないこと、高分子量のポリアミド酸の生成した反応液が高い回転粘度となり、取扱いが極めて困難になるなどの問題点等があった。
【0004】
その他の製造法としては、原料であるテトラカルボン酸あるいはテトラカルボン酸ジエステルとジアミンから得られる「塩モノマー」を固相で重縮合させる方法(例えば、POLYMER LETTERS,5巻,946ページ (1967年))、脂肪族ジアミンとピロメリット酸類からなる「塩モノマー」を用い、固相で重縮合を行う合成法(米国特許2,710,853号、米国特許2,867,609号)、および脂肪族ジアミンあるいは芳香族テトラカルボン酸類からなる「塩モノマー」を用い、固相で重縮合する合成法(例えば、Macromolecules,27巻,4101ページ(1994年)、Macromolecules,28巻,6368ページ(1995年)等)等が報告されている。しかしながら、これらの手法で得られる「塩モノマー」は単離する必要があり、また得られた「塩モノマー」は非常に不安定であり、工業的な製造には応用しにくかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリイミドが本来有する優れた諸物性、すなわち耐熱性、機械物性、摺動特性、低吸水性、電気特性、耐薬品性、および耐放射線性等を損なうことなく、従来の煩雑な製造工程を大きく改善した、生産効率の高い製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリイミドの原料であるジアミン化合物と酸二無水物を高濃度で反応して、オリゴマーを生成させ、さらに脱溶媒、固相反応を行うことにより、非熱可塑性ポリイミド粉末を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下[1]〜[7]に記載した事項により特定される。
【0008】
[1] 一般式(1)
【0009】
【化5】
(式(1)中nは、1以上の整数、Xは炭素数6以上30以下であり、かつ単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、あるいは芳香族基が直接結合または架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基であり、Xは2価の基を示し、Yは4価の基で以下のいずれかの構造を示す。)
【0010】
【化6】
で表される繰り返し構造を有する非熱可塑性ポリイミドの製造法であって、
第1工程(液相反応工程)として一般式(2)
【0011】
【化7】
(化学式(2)中Xは、前記と同じ意味を示す。)で表されるジアミン成分、一般式(3)
【0012】
【化8】
(式(3)中Yは、前記と同じ意味を示す。)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分を含有する原料混合物の少なくとも一部を、有機溶媒に溶解してなる反応系を、混合して液相反応させることによりポリイミドプレポリマーを製造する工程、
第2工程(乾燥工程)として、第1工程で得られたポリイミドプレポリマーから有機溶媒を除去する工程、
第3工程(固相反応工程)として、第2工程で得られたポリイミドプレポリマーを、さらに、固相反応させて、ポリイミドプレポリマーよりも大きな分子量を有する非熱可塑性ポリイミドを製造する工程
とを含んで構成されることを特徴とする、非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0013】
[2] 第1工程(液相反応工程)において、一般式(2)で表されるジアミン成分と、一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分との量比が、ジアミン成分1モルを基準として、テトラカルボン酸二無水物成分が、0.900〜1.000モルの範囲である[1]記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0014】
[3] 第1工程(液相反応工程)において、使用する有機溶媒の沸点が100℃以上であり、反応温度が、100℃以上かつ使用する有機溶媒の沸点以下である[1]乃至[2]記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0015】
[4] 第1工程(液相反応工程)において、一般式(2)で表されるジアミン成分および一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分の固形分合計重量が、反応系合計重量を基準として、30〜70重量%である[1]乃至[3]記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0016】
[5] 第1工程(液相反応工程)および/または第3工程(固相反応工程)において使用する反応機が、少なくとも二つの回転翼を有し、かつ、それぞれの回転翼が独立した回転軸を有すると共に、各回転軸を同時に回転させても、各回転翼同士の衝突または接触が起こらないように配列された構造を有する混練機を使用したものである[1]乃至[4]記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0017】
[6] 第1工程(液相反応工程)および/または第3工程(固相反応工程)において使用する反応機が、駆動軸に対し、1つ以上の従動軸を有し、該従動軸に1つ以上の翼を有し、すべての翼の運転経路が、衝突または接触が起こらないように配列された構造を有する混練機を使用したものである[1]乃至[5]記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0018】
[7] 第3工程(固相反応工程)において、反応温度が200〜300℃であることを特徴とする、[1]乃至[6]に記載した非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法で得られる非熱可塑性ポリイミドは、一般式(1)
【0020】
【化9】
(式(1)中n、X、Yは、前記と同じ意味を示す。)
【0021】
【化10】
で表される繰り返し構造単位を有するものである。その原料としては、一般式(2)
【0022】
【化11】
(式(2)中Xは、前記と同じ意味を示す。)で表されるジアミンと、一般式(3)
【0023】
【化12】
(式(3)中Yは、前記と同じ意味を示す。)で表されるテトラカルボン酸二無水物、または、その全加水分解開環物または一部加水分解開環物が必須モノマーである。
【0024】
[ジアミン成分]
ジアミン成分としては、1つのベンゼン環を有する単環式芳香族基、ナフタレン環等を有する縮合多環芳香族基、あるいは複数の芳香族基が直接結合、ハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基、カルボニル基、スルホン基、スルホキシド基、エーテル基またはスルフィド基の架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を有するジアミンを用いることができ、前述の一般式(2)で表される化合物である。
【0025】
ジアミン成分の具体的な化合物としては、以下に示すアミンを用いることができる。
o−、p−、m−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、6,6’−ビス(2−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等が挙げられ、またこれらは単独または2種以上を混合して使用される。
【0026】
[テトラカルボン酸二無水物]
テトラカルボン酸二無水物としては、一般式(3)で表される化合物であり、具体例としてピロメリット酸二無水物、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、使用は、これらいずれかの化合物、あるいは両方を混合して用いることができる。そして、上記テトラカルボン酸二無水物の全てまたは一部が加水分解した化合物も使用する事ができる。
【0027】
[原料の使用量比]
ジアミン成分、テトラカルボン酸二無水物成分(あるいはその全部または一部加水分解開環物)の量比によって、得られるポリイミドの分子量を調節することができる。使用量はジアミン成分1モルに対して、テトラカルボン酸二無水物成分は好ましくは0.900〜1.000モルの範囲で、更に好ましくは0.920〜0.990モルである。テトラカルボン酸二無水物の使用量比が0.900未満であれば得られるポリイミドの分子量が不足し、耐熱性・機械物性が悪化する可能性がある。
【0028】
[反応溶媒]
本発明の製造方法において第1工程(液相反応工程)で使用できる溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、沸点が100℃以上であることが好ましい。一般にポリイミドの重合に用いられる公知の溶媒を採用することができる。例えば、少なくとも一つの反応物質、好ましくは酸無水物類とジアミン類の両方を溶解するものである。具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、クレゾール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素等が挙げられる。これらの溶媒類は、単独、あるいはベンゾニトリル、ジオキサン、キシレン或いはトルエン等の他の溶媒との組み合わせで用いることができる。
【0029】
[触媒]
本発明の製造方法においては、触媒を用いることもできる。触媒は、脱水重縮合反応の進行を実質的に促進するか、架橋等の副反応の進行を阻害するものである限り、特に制限されない。また、触媒の使用量は、触媒の揮散性や酸強度等の触媒自身の性質、反応条件を考慮して、実質的に反応を促進させるか、架橋等の副反応の進行を阻害させることができれば特に制限されない。
【0030】
また、触媒とは、触媒自身に前述したような性質がなくても、流通ガスや、反応溶媒と反応することにより上記の性質を有する化合物に変化する触媒も含まれる。
【0031】
触媒としてはポリイミドの重合に用いられる一般的な公知触媒のほか、例えば、有機スルホン酸等の酸触媒が挙げられる。さらに具体例を挙げると例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、等のアルカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、等のハロゲン化置換アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホン酸、等のベンゼンスルホン酸誘導体、ナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、2,5−ナフタレンジスルホン酸、等のナフタレンスルホン酸誘導体等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
[仕込み方法]
第1工程(液相反応工程)において、原料・溶媒および必要に応じて加えられるその他の触媒等の仕込み順序・方法は特に限定されない。
【0033】
[反応温度]
第1工程(液相反応工程)において、重合が進行するのであれば、反応温度は、特に制限されるものではないが、好ましくは100℃以上、溶媒の沸点以下である。反応時間は必要な重合度を得るのに充分である範囲であれば特に限定されない。また、反応に際しては窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0034】
[反応濃度]
第1工程(液相反応工程)において、反応系内(反応機内)の固形分濃度は30%以上であることが好ましく、70%以下であることが好ましい。より具体的には、第1工程(液相反応工程)において、一般式(2)で表されるジアミン成分、および一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分の固形分合計重量が、反応系合計重量を基準として、30〜70重量%であることが好ましい。
【0035】
[反応装置]
本発明方法において使用する反応装置は、これらの原料・溶媒および必要に応じて加えられるその他の触媒等を撹拌、混合できれば、装置は特に限定されないが、第1工程(液相反応工程)および/または第3工程(固相反応工程)においては、少なくとも二つの回転翼を有し、かつ、それぞれの回転翼が独立した回転軸を有すると共に、各回転軸を同時に回転させても、各回転翼同士が衝突または接触が起こらないように配列された構造を有する混練機が好ましい。具体的にはニーダー、スーパーブレンド(住友重機械工業製)等が挙げられる。さらに好ましくは、駆動軸に対し1つ以上の従動軸を有し、該従動軸に1つ以上の翼を有し、すべての翼の運転経路が、衝突または接触しないように配列された混練機である。さらに詳しくは、主駆動軸が回転し、従動軸がそれぞれ個別に回転することで撹拌子の動きがプラネタリーアクション、換言すると自転・公転運動を行うことにより、強力で効率のよい撹拌を行う装置である。具体的には、愛工ケミカルミキサー(愛工舎製作所製)、プラネタリーミキサー(井上製作所製)、トリミックス(井上製作所製)のような縦形の混練機が挙げられる。
また、反応に際しては窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0036】
[脱溶媒]
第2工程(乾燥工程)における脱溶媒の条件としては、ポリイミドプレポリマー中の溶媒量が5重量%以下になれば、常圧でも減圧下でも良く、特に限定されない。温度と減圧度に関しては、好ましくは、温度が50〜300℃、減圧度が1〜30kPaであり、さらに好ましくは温度が100〜200℃、減圧度が1.5〜20kPaである。時間に関しては30分間〜20時間であり、さらに好ましくは1〜15時間以下である。
また、脱溶媒に際しても窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0037】
[固相反応]
第3工程(固相反応工程)における固相反応は、第2工程(乾燥工程)で脱溶媒して得られたプレポリマーを固相状態で、脱水重縮合することを特徴とする。この固相反応は、反応系に存在するポリマー(プレポリマー及び反応生成物)が実質的に固体状態を維持し、固相反応終了後のポリイミドの分子量が、固相反応開始前のプレポリマーの分子量以上であれば特に限定されない。
【0038】
[固相反応温度]
固相反応温度は脱溶媒温度以上であるが、200〜300℃が好ましい。反応時間は必要な重合度を得るのに充分である範囲内に限って限定されない。
また、反応に際しては窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
なお、実施例の記載は、本発明の内容の理解を支援するためのものであって、本発明の技術的範囲を狭く解釈する根拠となる性格のものではない。
【0040】
実施例1
ねじれ枠型のステンレス製の翼を内部に三本有する内容積50Lのステンレス製の井上製作所製トリミックス(型式TX−50)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3,945g(19.7mol)、ピロメリット酸二無水物4,297g(19.7mol)、およびクレゾール12.2kgを装入(固形分濃度40%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度を200℃に昇温し、圧力を徐々に下げていき、1.3kPaまで減圧して5時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。
このプレポリマーを同一反応機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末7,532gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。このポリイミド粉と、固相反応前のプレポリマーの一部を用いて、350℃空気中における重量減少率の経時変化を測定した。この結果を図1に示した。ポリイミド粉はプレポリマーより熱的に安定であり、重合が進んで分子量が増加していることがわかった。
【0041】
実施例2
等速Σ型のステンレス製の翼を内部に二本有する内容積1Lのステンレス製の入江卓上型ニーダー(型式PNV−1H)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル76.89g(0.384mol)、ピロメリット酸二無水物82.89g(0.380mol)、およびクレゾール106.52gを装入(固形分濃度60%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度は150℃のまま20kPaに減圧し、15時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。
このプレポリマーを棚段乾燥機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末146.10gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。
【0042】
実施例3
等速Σ型のステンレス製の翼を内部に二本有する内容積1Lのステンレス製の入江卓上型ニーダー(型式PNV−1H)に、p−フェニレンジアミン62.29g(0.576mol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物166.08g(0.564mol)、およびN−メチル−2−ピロリドン342.56gを装入(固形分濃度40%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度は150℃のまま20kPaに減圧し、15時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。
このプレポリマーを棚段乾燥機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末208.06gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。
【0043】
実施例4
等速Σ型のステンレス製の翼を内部に二本有する内容積1Lのステンレス製の入江卓上型ニーダー(型式PNV−1H)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル80.10g(0.400mol)、ピロメリット酸二無水物43.62g(0.200mol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.84g(0.200mol)、およびクレゾール180.54gを装入(固形分濃度50%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度は150℃のまま9kPaに減圧し、15時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。
このプレポリマーを棚段乾燥機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末168.16gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。
【0044】
実施例5
ダブルヘリカルリボン翼及び翼の内部に4本の邪魔板を有する内容積20Lの住友重機械工業製スーパーブレンド(型式SBR−22)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1,209g(6.04mol)、p−フェニレンジアミン653g、ピロメリット酸二無水物2,635g(12.08mol)、およびクレゾール6,745gを装入(固形分濃度40%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度は150℃のまま20kPaに減圧し、15時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。
このプレポリマーを同一混合機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末4,279gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。
【0045】
実施例6
スパイラルフック型のステンレス製の翼を内部に二本有する内容積5lのステンレス製の愛工舎製作所製愛工ケミカルミキサー(型式ACM−5LVT)に、p−フェニレンジアミン216.3g(2.00mol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物570.8g(1.94mol)、およびクレゾール1,180gを装入(固形分濃度40%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度は150℃のまま20kPaに減圧し、15時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。
このプレポリマーを同一混合機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末717.2gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。
【0046】
実施例7
ねじれ枠型のステンレス製の翼を内部に二本有する内容積50Lのステンレス製の井上製作所製プラネタリーミキサー(型式PLM−50)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4,024g(20.1mol)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物5,855g(19.9mol)、およびクレゾール14.8kgを装入(固形分濃度40%)し、攪拌しながら、反応容器内を十分に窒素置換した。これを150℃まで昇温し、この後、150℃で1時間攪拌した。温度を200℃に昇温し、圧力を1.3kPaに減圧して5時間乾燥することにより、反応系からクレゾールを留去した。このプレポリマーを同一混合機中、窒素雰囲気下、300℃で4時間固相反応して、黄色粉末9,162gを得た。ここで得られたポリイミド粉は、赤外線吸収スペクトルでイミド結合の特性吸収ピーク1770cm−1、1720cm−1付近の吸収が顕著に認められた。
【0047】
比較例1
撹拌機、還流冷却器、および窒素導入管を備えたフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル120.12g(0.600mol)およびN,N−ジメチルアセトアミド898.00gを装入し、室温で窒素雰囲気下にピロメリット酸二無水物124.33g(0.570mol)を溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で10時間撹拌した。得られたポリアミド酸溶液のうち575.64gを別のフラスコにとり、トリエチルアミン121.24g(1.198mol)および無水酢酸183.65g(1.799mol)を滴下した。滴下終了後1時間で黄色のポリイミド粉が析出した。さらに室温で10時間撹拌を続けて、濾過した。メタノールで分散洗浄した後濾過し、180℃で4時間乾燥し、ポリイミド粉104.21gを得た。ここで得られたポリイミド粉の一部を用いて、実施例1と同様にして350℃空気中における重量減少率の経時変化を測定した。この結果を実施例1の結果とともに図1に示した。図1の結果より実施例1の固相重合後のポリイミド粉はポリアミド酸から合成されたポリイミド粉と同等の熱的安定性を有し、同等の分子量であることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
プレ重合したポリマーを用い、固相にて反応を行うことにより、前駆体であるポリアミド酸製造の後イミド化を行うという複雑な工程・反応設備を必要とせず、非熱可塑性ポリイミドの生産効率を向上させることが可能となった。また、高濃度でプレポリマーを合成することにより、さらに生産効率を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたプレポリマー、ポリイミド粉および比較例1で得られたポリイミド粉の空気中350℃における等温重量減少率の経時変化である。
Claims (7)
- 一般式(1)
第1工程(液相反応工程)として一般式(2)
第2工程(乾燥工程)として、第1工程で得られたポリイミドプレポリマーから有機溶媒を除去する工程、
第3工程(固相反応工程)として、第2工程で得られたポリイミドプレポリマーを、さらに、固相反応させて、ポリイミドプレポリマーよりも大きな分子量を有する非熱可塑性ポリイミドを製造する工程とを含んで構成されることを特徴とする、非熱可塑性ポリイミドの製造方法。 - 第1工程(液相反応工程)において、一般式(2)で表されるジアミン成分と、一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分との量比が、ジアミン成分1モルを基準として、テトラカルボン酸二無水物成分が、0.900〜1.000モルの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
- 第1工程(液相反応工程)において、使用する有機溶媒の沸点が100℃以上であり、反応温度が、100℃以上かつ使用する有機溶媒の沸点以下であることを特徴とする請求項1または2記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
- 第1工程(液相反応工程)において、一般式(2)で表されるジアミン成分および一般式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物成分の固形分合計重量が、反応系合計重量を基準として、30〜70重量%であることを特徴とする、請求項1乃至3記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
- 第1工程(液相反応工程)および/または第3工程(固相反応工程)において使用する反応機が、少なくとも二つの回転翼を有し、かつ、それぞれの回転翼が独立した回転軸を有すると共に、各回転軸を同時に回転させても、各回転翼同士の衝突または接触が起こらないように配列された構造を有する混練機を使用したものであることを特徴とする請求項1乃至4記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
- 第1工程(液相反応工程)および/または第3工程(固相反応工程)において使用する反応機が、駆動軸に対し、1つ以上の従動軸を有し、該従動軸に1つ以上の翼を有し、すべての翼の運転経路が、衝突または接触が起こらないように配列された構造を有する混練機を使用したものであることを特徴とする請求項1乃至5記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
- 第3工程(固相反応工程)において、反応温度が200〜300℃であることを特徴とする請求項1乃至6記載の非熱可塑性ポリイミドの製造方法。
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