JP2004026972A - 高摩擦塗料及び高摩擦塗装物 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機物のバインダーと亜鉛末を含み、塗膜を形成したときの該塗膜のすべり係数が0.45以上の高摩擦塗料、及びすべり係数が0.45以上の高摩擦塗装物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%である高摩擦塗料、及び該高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装した高摩擦塗装物である。
【選択図】 なし
【解決手段】エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%である高摩擦塗料、及び該高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装した高摩擦塗装物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、摩擦接合方式の高力ボルト継手など使用される高摩擦塗料及び高摩擦塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦接合方式の高力ボルト継手に使用される塗料は、防錆性に優れていること、及び大きな摩擦力(すべり係数0.45以上)を持っていることが要求されるため、現在は、無機物のバインダーと亜鉛末とを含む、所謂、無機ジンクリッチペイントが採用されている。しかし、無機ジンクリッチペイントは、塗膜中に空隙を多く含むことから、その空隙を塗料で置換させる塗装方法(ミストコート)を行わなければ、上塗り塗料が発泡してしまい、そのため、塗装工程が増えてしまうという問題がある。さらに、無機ジンクリッチペイントは、有機ジンクリッチペイントと比較して、高グレードの素地調整が必要である。また、継手部以外が無機ジンクリッチペイントではない塗装仕様になる場合は、養生を行い、塗り継を行わなければならず、塗装効率が悪かった。ミストコート不要で、無機ジンクリッチペイントよりも低ケレングレード(錆落とし)で塗装可能な有機ジンクリッチペイントへの変更が望まれていたが、従来においては、有機ジンクリッチペイントでは、すべり係数を0.45以上とすることができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の問題に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、有機物のバインダーと亜鉛末を含み、塗膜を形成したときの該塗膜のすべり係数が0.45以上の高摩擦塗料を提供することを目的とする。
本発明はまた、すべり係数が0.45以上の高摩擦塗装物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、塗膜中の顔料体積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)の増加がすべり係数の上昇に寄与していることを見出しなされたものである。すなわち、
本発明の高摩擦塗料は、エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%であることを特徴としている。
【0005】
前記亜鉛末の粒度分布は、粒径10μm以下の粒子を20〜40質量%とし、粒径10μm超〜50μmの粒子を50〜70質量%とし、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子を5〜20質量%とすることが好ましい。
【0006】
また、本発明の高摩擦塗装物は、前記本発明の高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装した塗装物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の高摩擦塗料は、エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%であることを特徴としている。
【0008】
本発明の高摩擦塗料は、エポキシ樹脂と、前記亜鉛末及び前記骨材を含む顔料を主成分とするが、ここで「主成分」とは、高摩擦塗料全質量に対して、エポキシ樹脂と前記顔料とを60質量%以上含むことを意味する。
【0009】
以下、本発明の高摩擦塗料の各成分について詳述する。
<エポキシ樹脂>
本発明に係るエポキシ樹脂としては、ジンクリッチ塗料に通常使用されている公知のエポキシ樹脂を使用することができる。例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油、その他各種変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
本発明においては、前記エポキシ樹脂の含有量は、高摩擦塗料質量に対して不揮発分換算で1〜10質量%としているが、1質量%未満ではバインダーとしての機能を果たず、また、10質量%を超えると、塗膜の剪断強さを高めることができない。高摩擦塗料中におけるエポキシ樹脂の含有量は、より好ましくは3〜7質量%である。
【0011】
<顔料>
本発明に係る顔料としては、少なくとも、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含み、膜厚を確保するため、必要に応じてその他の顔料を含有させることが好ましい。本発明の高摩擦塗料においては、高摩擦塗料中の全固形分に対する、以下に説明する顔料の顔料体積濃度(PVC)を70超〜85%としている。該顔料体積濃度を70超〜85%とすることにより、有機ジンクリッチペイントでありながら、すべり係数を0.45以上とすることができる。該顔料体積濃度が70%以下であると、すべり係数を0.45以上とすることができず、85%を超えると、塗膜としたときの該塗膜の透過性が増加し、防錆性が低下してしまう。前記顔料体積濃度は、より好ましくは、75〜80%である。
【0012】
顔料体積濃度とすべり係数の関係を数値で示すと以下の通りとなる。
即ち、顔料体積濃度が70%を超えると、すべり係数が0.45以上となる。
【0013】
以下に、本発明の高摩擦塗料中に含まれる顔料を成分別に説明する。
[亜鉛末]
本発明の高摩擦塗料においては、該塗料中、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末を65〜80質量%含有している。該亜鉛末の含有量は、より好ましくは、65〜70質量%である。
【0014】
亜鉛末の粒度分布については、どのようなものでもよく特に限定はないが、粒径10μm以下の粒子が20〜40質量%であり、粒径10μm超〜50μmの粒子が50〜70質量%であり、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が5〜20質量%であることがより好ましい。亜鉛末の粒度分布を上記範囲とすることにより、塗膜としたときの該塗膜のすべり係数をより容易に0.45以上とすることができる。
【0015】
[骨材]
前記骨材としては、体積平均粒子径が3〜10μmのものであり、該骨材の素材としては、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄等を挙げることができる。前記骨材の含有量は、3〜20質量%であるが、より好ましくは、5〜15質量%である。
【0016】
[その他の顔料]
その他の顔料は、塗膜としたときの該塗膜中の亜鉛末間に分布させ、塗膜の膜厚を確保するために添加する。その他の顔料としては、通常塗料用として使用されている各種着色顔料、体質顔料、防食顔料等を使用することができるが、亜鉛末よりも硬いものがすべり係数の高い塗膜が得られることから、モース硬さ2.5以上、好ましくは5.0以上の顔料が好適に使用することができる。モース硬さ2.5以上の顔料としては、例えば、水酸化マグネシウムや、炭酸カルシウム、ホタル石、リンカイ石、含水酸化鉄、黒色酸化鉄、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、二酸化ケイ素、アルミナ、炭化ケイ素、アルミニウム粉、鉄粉、ステンレス粉、カーボンなどが挙げられる。
【0017】
その他、酸化クロム、酸化ジルコニウム、複合金属酸化物等の金属酸化物顔料、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等のリン酸塩、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩、バナジン酸塩、ホウ酸塩、クロム酸塩、鉛酸塩、ケイ酸塩等の塩類顔料、窒化ケイ素、ガラスビーズ、リン鉄粉、その他フタロシアニン、キナクリドンなどの耐熱性有機顔料等も挙げられる。これら顔料の平均粒径は30μm 以下であることが好ましく、これ以上では塗膜がポーラスな膜となることがある。
【0018】
<その他の成分>
本発明の高摩擦塗料は、その他、樹脂、溶剤等を含む。塗膜形成成分を溶解もしくは分散させるために配合される溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類、水等が代表的なものとして挙げられる。
【0019】
次いで、本発明の高摩擦塗装物について説明する。
本発明の高摩擦塗装物は、前記本発明の高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装した塗装物である。膜厚が50μm未満であると、長期防食性が低下するばかりでなく、摩擦係数も低下し、一方、150μmを超えると、塗膜の乾燥性等が低下するため好ましくない。また、該鋼材素地としては、橋梁などの鋼構造物等が挙げられる。
【0020】
前記高摩擦塗料の塗装手段としては、例えば、スプレー塗装や、ハケ塗装等の従来から公知の塗装手段を採用することができる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
エポキシ樹脂(組成は表1に示す。)3質量%と、亜鉛末70質量%と、骨材として風化珪石(丸尾カルシウム(株)製、K−1クレー、体積平均粒子径:7μm、組成は表1に示す。)5質量%と、溶剤等22質量%とを混合、分散し、高摩擦塗料を調製した。高摩擦塗料中の全固形分に対する全顔料の顔料体積濃度は、80%であった。また、亜鉛末の粒度分布は、粒径10μm以下の粒子が33質量%であり、粒径10μm超〜50μmの粒子が61質量%であり、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が6質量%であった。
【0023】
以上のようにして得られた高摩擦塗料を、エアスプレー塗装により、乾燥膜厚が75μmとなるように、ブラスト処理した鋼材標準試験体上に塗装し乾燥させ、実施例1の高摩擦塗装物を得た。
【0024】
(実施例2)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が96質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が4質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が0質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2の高摩擦塗装物を得た。
【0025】
(実施例3)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が72質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が27質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が1質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例3の高摩擦塗装物を得た。
【0026】
(実施例4)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が54質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が43質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が3質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4の高摩擦塗装物を得た。
【0027】
(実施例5)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が59質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が37質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が4質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例5の高摩擦塗装物を得た。
【0028】
(実施例6〜9)
エポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして実施例6〜9の高摩擦塗装物を得た。
【0029】
(比較例1〜8)
エポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして比較例1〜8の塗装物を得た。
【0030】
次いで、得られた実施例1〜9の高摩擦塗装物及び比較例1〜8の塗装物のすべり係数の測定を次のようにして行った。測定結果を表1に示す。
[すべり係数の測定]
実施例1〜9の高摩擦塗装物及び比較例1〜8の塗装物に対し、屋外暴露1ヶ月後、リラクゼーションを1ヶ月行なった。こうして作製した塗装試験体を2枚重ね合わせ、M22ボルト2本で締結し、すべり試験機を使用して荷重を与え、すべり係数を測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、実施例1〜8の高摩擦塗装物はいずれも、有機ジンクリッチペイントでありながら、0.45以上のすべり係数が得られたことが分かる。これに対して、比較例1〜8の塗装物はいずれも、0.45以上のすべり係数を得ることができなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、有機物のバインダーと亜鉛末を含み、塗膜を形成したときの該塗膜のすべり係数が0.45以上の高摩擦塗料を提供することができる。
また、本発明によれば、すべり係数が0.45以上の高摩擦塗装物を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、摩擦接合方式の高力ボルト継手など使用される高摩擦塗料及び高摩擦塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
摩擦接合方式の高力ボルト継手に使用される塗料は、防錆性に優れていること、及び大きな摩擦力(すべり係数0.45以上)を持っていることが要求されるため、現在は、無機物のバインダーと亜鉛末とを含む、所謂、無機ジンクリッチペイントが採用されている。しかし、無機ジンクリッチペイントは、塗膜中に空隙を多く含むことから、その空隙を塗料で置換させる塗装方法(ミストコート)を行わなければ、上塗り塗料が発泡してしまい、そのため、塗装工程が増えてしまうという問題がある。さらに、無機ジンクリッチペイントは、有機ジンクリッチペイントと比較して、高グレードの素地調整が必要である。また、継手部以外が無機ジンクリッチペイントではない塗装仕様になる場合は、養生を行い、塗り継を行わなければならず、塗装効率が悪かった。ミストコート不要で、無機ジンクリッチペイントよりも低ケレングレード(錆落とし)で塗装可能な有機ジンクリッチペイントへの変更が望まれていたが、従来においては、有機ジンクリッチペイントでは、すべり係数を0.45以上とすることができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の問題に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、有機物のバインダーと亜鉛末を含み、塗膜を形成したときの該塗膜のすべり係数が0.45以上の高摩擦塗料を提供することを目的とする。
本発明はまた、すべり係数が0.45以上の高摩擦塗装物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、塗膜中の顔料体積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)の増加がすべり係数の上昇に寄与していることを見出しなされたものである。すなわち、
本発明の高摩擦塗料は、エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%であることを特徴としている。
【0005】
前記亜鉛末の粒度分布は、粒径10μm以下の粒子を20〜40質量%とし、粒径10μm超〜50μmの粒子を50〜70質量%とし、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子を5〜20質量%とすることが好ましい。
【0006】
また、本発明の高摩擦塗装物は、前記本発明の高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装した塗装物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の高摩擦塗料は、エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%であることを特徴としている。
【0008】
本発明の高摩擦塗料は、エポキシ樹脂と、前記亜鉛末及び前記骨材を含む顔料を主成分とするが、ここで「主成分」とは、高摩擦塗料全質量に対して、エポキシ樹脂と前記顔料とを60質量%以上含むことを意味する。
【0009】
以下、本発明の高摩擦塗料の各成分について詳述する。
<エポキシ樹脂>
本発明に係るエポキシ樹脂としては、ジンクリッチ塗料に通常使用されている公知のエポキシ樹脂を使用することができる。例えば、エピクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、エピクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油、その他各種変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0010】
本発明においては、前記エポキシ樹脂の含有量は、高摩擦塗料質量に対して不揮発分換算で1〜10質量%としているが、1質量%未満ではバインダーとしての機能を果たず、また、10質量%を超えると、塗膜の剪断強さを高めることができない。高摩擦塗料中におけるエポキシ樹脂の含有量は、より好ましくは3〜7質量%である。
【0011】
<顔料>
本発明に係る顔料としては、少なくとも、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含み、膜厚を確保するため、必要に応じてその他の顔料を含有させることが好ましい。本発明の高摩擦塗料においては、高摩擦塗料中の全固形分に対する、以下に説明する顔料の顔料体積濃度(PVC)を70超〜85%としている。該顔料体積濃度を70超〜85%とすることにより、有機ジンクリッチペイントでありながら、すべり係数を0.45以上とすることができる。該顔料体積濃度が70%以下であると、すべり係数を0.45以上とすることができず、85%を超えると、塗膜としたときの該塗膜の透過性が増加し、防錆性が低下してしまう。前記顔料体積濃度は、より好ましくは、75〜80%である。
【0012】
顔料体積濃度とすべり係数の関係を数値で示すと以下の通りとなる。
即ち、顔料体積濃度が70%を超えると、すべり係数が0.45以上となる。
【0013】
以下に、本発明の高摩擦塗料中に含まれる顔料を成分別に説明する。
[亜鉛末]
本発明の高摩擦塗料においては、該塗料中、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末を65〜80質量%含有している。該亜鉛末の含有量は、より好ましくは、65〜70質量%である。
【0014】
亜鉛末の粒度分布については、どのようなものでもよく特に限定はないが、粒径10μm以下の粒子が20〜40質量%であり、粒径10μm超〜50μmの粒子が50〜70質量%であり、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が5〜20質量%であることがより好ましい。亜鉛末の粒度分布を上記範囲とすることにより、塗膜としたときの該塗膜のすべり係数をより容易に0.45以上とすることができる。
【0015】
[骨材]
前記骨材としては、体積平均粒子径が3〜10μmのものであり、該骨材の素材としては、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄等を挙げることができる。前記骨材の含有量は、3〜20質量%であるが、より好ましくは、5〜15質量%である。
【0016】
[その他の顔料]
その他の顔料は、塗膜としたときの該塗膜中の亜鉛末間に分布させ、塗膜の膜厚を確保するために添加する。その他の顔料としては、通常塗料用として使用されている各種着色顔料、体質顔料、防食顔料等を使用することができるが、亜鉛末よりも硬いものがすべり係数の高い塗膜が得られることから、モース硬さ2.5以上、好ましくは5.0以上の顔料が好適に使用することができる。モース硬さ2.5以上の顔料としては、例えば、水酸化マグネシウムや、炭酸カルシウム、ホタル石、リンカイ石、含水酸化鉄、黒色酸化鉄、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、二酸化ケイ素、アルミナ、炭化ケイ素、アルミニウム粉、鉄粉、ステンレス粉、カーボンなどが挙げられる。
【0017】
その他、酸化クロム、酸化ジルコニウム、複合金属酸化物等の金属酸化物顔料、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等のリン酸塩、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩、バナジン酸塩、ホウ酸塩、クロム酸塩、鉛酸塩、ケイ酸塩等の塩類顔料、窒化ケイ素、ガラスビーズ、リン鉄粉、その他フタロシアニン、キナクリドンなどの耐熱性有機顔料等も挙げられる。これら顔料の平均粒径は30μm 以下であることが好ましく、これ以上では塗膜がポーラスな膜となることがある。
【0018】
<その他の成分>
本発明の高摩擦塗料は、その他、樹脂、溶剤等を含む。塗膜形成成分を溶解もしくは分散させるために配合される溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類、水等が代表的なものとして挙げられる。
【0019】
次いで、本発明の高摩擦塗装物について説明する。
本発明の高摩擦塗装物は、前記本発明の高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装した塗装物である。膜厚が50μm未満であると、長期防食性が低下するばかりでなく、摩擦係数も低下し、一方、150μmを超えると、塗膜の乾燥性等が低下するため好ましくない。また、該鋼材素地としては、橋梁などの鋼構造物等が挙げられる。
【0020】
前記高摩擦塗料の塗装手段としては、例えば、スプレー塗装や、ハケ塗装等の従来から公知の塗装手段を採用することができる。
【0021】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
エポキシ樹脂(組成は表1に示す。)3質量%と、亜鉛末70質量%と、骨材として風化珪石(丸尾カルシウム(株)製、K−1クレー、体積平均粒子径:7μm、組成は表1に示す。)5質量%と、溶剤等22質量%とを混合、分散し、高摩擦塗料を調製した。高摩擦塗料中の全固形分に対する全顔料の顔料体積濃度は、80%であった。また、亜鉛末の粒度分布は、粒径10μm以下の粒子が33質量%であり、粒径10μm超〜50μmの粒子が61質量%であり、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が6質量%であった。
【0023】
以上のようにして得られた高摩擦塗料を、エアスプレー塗装により、乾燥膜厚が75μmとなるように、ブラスト処理した鋼材標準試験体上に塗装し乾燥させ、実施例1の高摩擦塗装物を得た。
【0024】
(実施例2)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が96質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が4質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が0質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2の高摩擦塗装物を得た。
【0025】
(実施例3)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が72質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が27質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が1質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例3の高摩擦塗装物を得た。
【0026】
(実施例4)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が54質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が43質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が3質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4の高摩擦塗装物を得た。
【0027】
(実施例5)
亜鉛末として、粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が59質量%、粒径10μm超〜50μmの粒子が37質量%、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が4質量%の亜鉛末に代えたこと、及びエポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例5の高摩擦塗装物を得た。
【0028】
(実施例6〜9)
エポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして実施例6〜9の高摩擦塗装物を得た。
【0029】
(比較例1〜8)
エポキシ樹脂と、亜鉛末と、骨材と、溶剤等との添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして比較例1〜8の塗装物を得た。
【0030】
次いで、得られた実施例1〜9の高摩擦塗装物及び比較例1〜8の塗装物のすべり係数の測定を次のようにして行った。測定結果を表1に示す。
[すべり係数の測定]
実施例1〜9の高摩擦塗装物及び比較例1〜8の塗装物に対し、屋外暴露1ヶ月後、リラクゼーションを1ヶ月行なった。こうして作製した塗装試験体を2枚重ね合わせ、M22ボルト2本で締結し、すべり試験機を使用して荷重を与え、すべり係数を測定した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1より、実施例1〜8の高摩擦塗装物はいずれも、有機ジンクリッチペイントでありながら、0.45以上のすべり係数が得られたことが分かる。これに対して、比較例1〜8の塗装物はいずれも、0.45以上のすべり係数を得ることができなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、有機物のバインダーと亜鉛末を含み、塗膜を形成したときの該塗膜のすべり係数が0.45以上の高摩擦塗料を提供することができる。
また、本発明によれば、すべり係数が0.45以上の高摩擦塗装物を提供することができる。
Claims (3)
- エポキシ樹脂と、体積平均粒子径1〜40μmの亜鉛末及び体積平均粒子径3〜10μmの骨材を含む顔料と、を主成分とする高摩擦塗料であって、
前記エポキシ樹脂を不揮発分換算で1〜10質量%、前記亜鉛末を65〜80質量%、及び前記骨材を3〜20質量%含有し、かつ
本高摩擦塗料中の全固形分に対する前記顔料の顔料体積濃度(PVC)が70超〜85%であることを特徴とする高摩擦塗料。 - 前記亜鉛末の粒度分布が、粒径10μm以下の粒子が20〜40質量%であり、粒径10μm超〜50μmの粒子が50〜70質量%であり、かつ粒径50μm超〜120μmの粒子が5〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の高摩擦塗料。
- 請求項1または2に記載の高摩擦塗料を、乾燥膜厚50〜150μmで鋼材素地上に塗装したことを特徴とする高摩擦塗装物。
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---|---|---|---|
JP2002184078A JP2004026972A (ja) | 2002-06-25 | 2002-06-25 | 高摩擦塗料及び高摩擦塗装物 |
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Publications (1)
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---|---|
JP2004026972A true JP2004026972A (ja) | 2004-01-29 |
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ID=31180073
Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004026972A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008031237A (ja) * | 2006-07-27 | 2008-02-14 | Kansai Paint Co Ltd | 無機質ジンクリッチペイント及びそれを用いた複層塗膜形成方法 |
JP2013119582A (ja) * | 2011-12-07 | 2013-06-17 | Shinto Paint Co Ltd | 金属亜鉛含有の粉体塗料組成物 |
JP5577475B1 (ja) * | 2014-03-03 | 2014-08-20 | 日本ペイント株式会社 | 水系有機ジンクリッチ塗料組成物、防錆塗膜形成方法及び複層塗膜 |
JP7338116B2 (ja) | 2019-03-29 | 2023-09-05 | 株式会社大林組 | 鉄骨の接合構造、及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-06-25 JP JP2002184078A patent/JP2004026972A/ja active Pending
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