JP2004026909A - アクリル系エマルション型粘着剤 - Google Patents

アクリル系エマルション型粘着剤 Download PDF

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常峰 直樹
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Abstract

【課題】良好な塗工性、耐水白化性、耐洗剤性および粘着特性を示すアクリル系エマルション型粘着剤を提供する。
【解決手段】フィルム基材に粘着剤層を形成するために用いられるアクリル系エマルション型粘着剤であって、
感圧接着性ポリマー(A)、カルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、カルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(C)、酸価190未満の粘着付与剤(D)、カルボキシル基含有乳化剤(E)、及びノニオン型浸透剤(F)を必須成分として含む。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難接着性のポリオレフィン等に対しても強い粘着力を発揮し、耐水性、耐水白化性、耐洗剤性、耐エッジリフト性、フィルム基材密着性、剥離ライナーへの塗布性に優れ、高い凝集力を有するアクリル系エマルション型粘着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護、作業環境の安全性、省資源、コスト等の観点から、粘着剤(=感圧接着剤)の供給形態としては、溶剤型(有機溶剤を溶媒に用いたもの)から無溶剤型(有機溶剤を使用しないもの)への移行が大きな流れとなっている。汎用性、作業性の点から、無溶剤型の中でも特にエマルション型粘着剤が好適に使用されている。このようなエマルション型粘着剤では、水不溶性の感圧接着性ポリマーを水性媒体中に分散させるために乳化剤等の分散剤が必要であり、この分散剤が水溶性物質であることから、粘着剤皮膜の耐水性が劣るという問題がある。
【0003】
本出願人は、分散剤と化学結合し得る化合物をエマルション型粘着剤に配合し、皮膜化後に分散剤中のカルボキシル基を上記化合物と反応させることによって、分散剤の親水性を低下させ、粘着剤製品の耐水性を向上させることに成功した(国際公開WO96/29373号)。
【0004】
上記エマルション型粘着剤から得られた粘着剤製品は、良好な耐水性を示すが、より優れた粘着諸特性が求められており、さらなる検討が必要となってきた。
【0005】
そこで、本出願人は、特定の粘着付与剤と、この粘着付与剤と化学結合し得る化合物を組み合わせたエマルション型粘着剤を見出し、皮膜化後に粘着付与剤中のカルボキシル基と上記の化合物と反応させることにより、粘着付与剤の親水性を低下させ、粘着剤製品の耐水性を低下させることなく、粘着特性を向上させることに成功した。(特開2000−198973号)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記エマルション型粘着剤から得られた粘着剤製品は、良好な耐水性や粘着特性を示すが、フィルム基材を用いた場合に、フィルム系剥離ライナーへの塗布性の点においては充分とは言えず、フィルム基材との密着性にも不足しており、フィルムタック製品に用いることを想定すれば、未だ改善の余地が残っており、さらなる検討が必要であった。
【0007】
そこで本発明では、良好なフィルム基材密着性、フィルム系剥離ライナーへの塗布性を示すと共に、耐エッジリフト性、耐洗剤性などと他の粘着特性にも優れたフィルムタック製品を作り得るアクリル系エマルション型粘着剤を提供することを課題として掲げた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤は、ガラス転移温度が−80〜−20℃、重量平均分子量15万以上、かつカルボキシル基による酸価が30以下の感圧接着性ポリマー(A)、
重量平均分子量が10万以下で、アルカリ化する前のカルボキシル基による酸価が190以上であり、このカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、
重量平均分子量が10万以下で、カルボキシル基を有しておらず、かつカルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(C)、
重量平均分子量が10万以下で、酸価が190未満の粘着付与剤(D)、
重量平均分子量が10万以下で、分子中にロジン骨格を有しておらず、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を持ち、このカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有乳化剤(E)、およびノニオン型浸透剤(F)を必須成分として含むところに要旨を有する。なお、ここでロジン骨格とは、アビエチン酸およびその異性体、あるいはこれらの変性体のことであり、またアクリル系エマルション型粘着剤とは、フィルム系基材、粘着剤層、および剥離シートを積層した粘着シートいわゆるフィルムタック製品(印刷用粘着フィルム)用のアクリル系エマルション型粘着剤を意味する。
【0009】
アクリル系エマルション型粘着剤は、予め、カルボキシル基含有乳化剤(E)で粘着付与剤(D)を水分散体化したものを、感圧接着性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)と化合物(C)とを含むエマルションに添加して得られたものであることが好ましい。
【0010】
前記粘着付与剤(D)の水分散体化にあたっては、粘着付与剤(D)100質量部に対し、カルボキシル基含有乳化剤(E)を0.5〜20質量部用いることが好ましい。
【0011】
感圧接着性ポリマー(A)100質量部に対し、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、粘着付与剤(D)およびカルボキシル基含有乳化剤(E)が合計で2〜100質量部含まれており、化合物(C)は、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)とカルボキシル基含有乳化剤(E)の有するカルボキシル基の合計1当量に対し、化合物(C)の有する前記官能基が0.05〜10当量となるように含まれていることが好ましい。
【0012】
前記粘着付与剤(D)がロジン誘導体である構成は、本発明の好ましい実施態様である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤は、感圧接着性ポリマー(A)、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、カルボキシル基と反応し得る官能基を有する化合物(C)、粘着付与剤(D)、分子内にロジン骨格を有さないカルボキシル基含有乳化剤(E)を必須成分とするものである。本発明の最大の特徴は、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)を、アルカリ塩の形でエマルション中に安定に存在させ、一方でカルボキシル基含有乳化剤(E)により粘着付与剤(D)をエマルション中に安定に存在させていることと、皮膜化後に、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)とカルボキシル基含有乳化剤(E)の持つカルボキシル基を化合物(C)と化学反応させてその親水性を失わせることによって、良好な耐水性を維持しつつ、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)や粘着付与剤(D)の持つ粘着力改質効果を発揮させて、さらに濡れ剤としてノニオン型浸透剤(F)を必須成分として含むことで、耐水性、耐水白化性などの物性を低下させることなく、耐エッジリフト性、耐洗剤性、フィルム基材密着性、フィルム系剥離ライナーへの塗布性の向上を図ることができた点にある。以下、本発明を詳細に説明するが、単に「ポリマー」というときは、ホモポリマーはもとより、コポリマーや三元以上の共重合体も含まれるものとする。
【0014】
まず、第1の必須成分である感圧接着性ポリマー(A)は、一般に感圧接着剤製品が使用される温度域において感圧接着性を示すポリマーである。通常、感圧接着性ポリマー(A)は、水およびアルカリ水溶液に溶解せずに、水溶性の乳化剤によって乳化されて水分散体を形成する。また、エチレン性不飽和二重結合を有する乳化剤等、ポリマー(A)用のモノマーとの反応性を有する反応性乳化剤を使用して、感圧接着性ポリマー(A)の乳化重合を行うと、感圧接着性ポリマー(A)の分子鎖に反応性乳化剤が化学的に結合して、反応性乳化剤が組み込まれたポリマー(A)が得られる。その結果、この感圧接着性ポリマー(A)は他の乳化剤の助けがなくても、自らでエマルションになっている。本発明ではこのような感圧接着性ポリマー(A)も好ましく使用できる。
【0015】
感圧接着性ポリマー(A)としては、ガラス転移温度(Tg)が−80〜−20℃のものを用いる。Tgが−20℃より高いポリマーは、常温で感圧接着性が発現しないことがあるので、ポリマーが感圧接着性を示す目安として、上記Tg要件を定めた。ただし、Tgが−80℃より低くなると、高温凝集力が低下する傾向にあるため好ましくない。Tg(K)は、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons, Inc.発行)に記載された各ホモポリマーのTg(K)を元にして、下記式で計算により簡単に求められる他、DSC(示差走査熱量測定装置)やDTA(示差熱分析装置)によって求めることができる。
【0016】
【数1】
Figure 2004026909
【0017】
ここで W ;各単量体の質量分率(%)
Tg;各単量体のホモポリマーのTg(K)
感圧接着性ポリマー(A)は、重量平均分子量(Mw)が15万以上のものを用いる。Mwが15万より小さいと、粘着特性が劣ったものとなるためである。なお、分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である(Mw、Mn共、以下同じ)。ただし、分子量が大きい(Mwが約150万以上)ポリマーはGPC測定の際に用いられる溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解しなくなり、GPCによる分子量測定自体が不可能となるので、正確なMwは不明となるが、換言すれば、THFに溶解しないポリマーは、Mwがだいたい150万以上であることが明らかなので、本発明において好ましく用いることができる。
【0018】
感圧接着性ポリマー(A)としては、酸価(カルボキシル基価)が30以下のものを用いる。酸価が30を超えると、Tgが−20℃よりも高くなることが多いためである。また、後述する化合物(C)がポリマー中のカルボキシル基と反応して、ポリマー鎖が架橋して感圧接着剤として粘着力が低下してしまうため好ましくない。酸価は15以下が好ましく、さらに好ましくは5以下である。なお、本発明の「酸価」とは、カルボキシル基を含有する化合物1gを良溶媒に溶解して、KOHで中和滴定を行ったときに要したKOH量をmgで表した値である。
【0019】
本発明で用いる感圧接着性ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主な構成成分とするアクリル系ポリマーである。
【0020】
アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、これらを1種以上使用することができる。
【0021】
アクリル系ポリマーは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのみで構成されていてもよいが、その他のモノマーを共重合させてもよい。そのときは、粘着特性の観点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類をモノマー全体の60質量%以上用いることが好ましい。
【0022】
その他のモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸シクロアルキル類、炭素数3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族不飽和炭化水素類、ビニルエステル類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル等の不飽和シアン化合物、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等の窒素原子含有モノマー等、あるいはイソプレンやブタジエンを共重合させても良い。
【0023】
アクリル系ポリマー等で代表される感圧接着性ポリマー(A)を合成するには、溶液重合法、塊状重合法等も利用可能であるが、本発明の感圧接着性エマルションを簡単に得ることのできる乳化重合法を用いることが好ましい。
【0024】
感圧接着性ポリマー(A)を乳化重合で合成するために用いられる乳化剤(以下、単に、「乳化剤(a)」という。)としては、スルホン酸塩基やカルボキシレート基等の親水基と、炭化水素基等の疎水基を持ち、乳化能を有する化合物であればよいが、本発明では、通常の乳化重合の条件下(0〜95℃)では、カルボキシル基と反応し得る官能基を持たないものを用いる。カルボキシル基と反応し得る官能基を持つ化合物(C)がエマルション中に存在しているため、乳化剤(a)は、そのような官能基を持つ必要がないからである。
【0025】
乳化剤(a)としては、重量平均分子量Mwが10万以下のものを用いる。分子量が小さい方がエマルションの表面張力を低下させる効果が高く、塗工性に優れるためである。この観点から、乳化剤(a)のMwは1万以下が好ましく、3000以下がより好ましい。なお、乳化剤(a)の酸価は、185以下とすることが耐水性の点から好ましい。
【0026】
乳化剤(a)の種類としては、特に限定されない。例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物等のアニオン型乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、「SR−200」(荒川化学社製)、「レオコール」シリーズおよび「ライオノール」シリーズ(いずれもライオン社製)等のノニオン型乳化剤等が使用可能である。また、後述するカルボキシル基含有乳化剤(E)を用いてもよい。
【0027】
さらに、乳化重合時の乳化安定性に優れたカルボキシル基含有オリゴマー型乳化剤である、国際公開WO96/29373号に開示された分散剤(乳化剤)(以下、単に「乳化剤(b)」という。)を用いてもよい。この乳化剤(b)は、不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸)を必須成分として含む重合性モノマーを炭素数が6〜18のアルキルメルカプタンの存在下に重合して得られる水溶性若しくは水分散性オリゴマーである。
【0028】
なお、以上の乳化剤(a)および(b)は、後述する反応性乳化剤とは異なり、感圧接着剤性ポリマー(A)用モノマーとの反応性は持っていない。従って、エマルション中では、これらの乳化剤(a)および(b)は、感圧接着性ポリマー(A)に吸着しているが、化学的に結合しているのではない。また、これらの乳化剤(a)および(b)は、感圧接着性ポリマー(A)、後述するカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、化合物(C)、粘着付与剤(D)のいずれの化合物とも異なる化合物である。
【0029】
さらなる耐水性向上のためには、感圧接着性ポリマー(A)の合成用の乳化剤として、感圧接着性ポリマー(A)用のモノマーとの反応性を有する乳化剤、すなわち、エチレン性不飽和二重結合を有する反応性乳化剤(以下、「反応性乳化剤(c)」または単に「乳化剤(c)という。」)を使用することが好ましい。反応性乳化剤(c)を用いて乳化重合を行うと、感圧接着性ポリマー(A)用のモノマーの有するエチレン性不飽和二重結合と反応して、感圧接着性ポリマー(A)の分子鎖に反応性乳化剤(c)が重合反応で結合する。その結果、感圧接着性ポリマー(A)と反応性乳化剤(c)とが一体化して、エマルション中に反応性乳化剤(c)が単分子で存在しなくなるので、耐水性を低下させることがなくなるからである。
【0030】
二重結合を有する反応性乳化剤(c)の具体例は、以下の通りである。これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0031】
【化1】
Figure 2004026909
【0032】
上記式(ただしRはアルキル基、または水素)で示されるアルケニル基を含有する場合、具体的にはRがメチル基、RおよびRが水素であるプロペニル基(CH−CH=CH−)を有するものとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩:市販品として、「アクアロンHS」シリーズおよび「アクアロンBC」シリーズ(第一工業製薬社製)などのプロペニル基含有アニオンタイプ、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル:市販品として、「アクアロンRNシリーズ」(第一工業製薬社製)などのプロペニル基含有ノニオンタイプがある。
【0033】
さらに上記式においてR〜Rがいずれも水素であり、かつRの結合する炭素にメチレン基が結合したアリル基(CH=CH−CH−)を有するものも使用可能であり、具体的には「アデカリアソープSE、SR」シリーズ(旭電化社製)、「エレミノールJS」シリーズ(三洋化成社製)、「ラテムル」シリーズ(花王社製)、「アクアロンKH」シリーズ(第一工業製薬社製)などのアリル基含有アニオンタイプ、「アデカリアソープNE、ER」シリーズ(旭電化社製)などのアリル基含有ノニオンタイプ、「RF−751」(日本乳化剤社製)などのアリル基含有カチオンタイプがある。
【0034】
また、下記式(ただしRはアルキル基、または水素)で示される(メタ)アクリロイル基を含有する反応性乳化剤も使用可能である。
【0035】
【化2】
Figure 2004026909
【0036】
具体的には、「エレミノールRS」シリーズ(三洋化成社製)、「Antox」シリーズ(日本乳化剤社製)などの(メタ)アクリロイル基含有アニオンタイプ、「RMA−560」シリーズ(日本乳化剤社製)などの(メタ)アクリロイル基含有ノニオンタイプがある。
【0037】
これらの中でも、環境ホルモンの問題からアルキルフェノール誘導体でないものを用いるのが好ましい。
【0038】
乳化重合に際しては、乳化剤(a)〜(c)は、感圧接着性ポリマー(A)用のモノマー100質量部に対して0.5〜10質量部の範囲で使用する。上記した各種乳化剤(a)〜(c)を混合して用いてもよい。なお、乳化重合法は公知の条件で行うことができ、これにより感圧接着性ポリマー(A)のエマルションが得られる。
【0039】
エマルション状態での感圧接着性ポリマー(A)の平均粒子径は、1000nm以下が好ましい。より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。できるだけ平均粒子径が小さい方が緻密な皮膜を形成でき、耐水性等の特性向上につながるからである。なお、平均粒子径の測定法としては、(1)電子顕微鏡写真法、(2)石鹸滴定法、(3)光散乱法、(4)遠心沈降法等が挙げられるが、本発明では、光散乱法を採用した。
【0040】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤には、第2の必須成分として、重量平均分子量が10万以下で、アルカリ化する前のカルボキシル基による酸価が190以上であり、このカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)が含まれている。なお、以下、便宜上、アルカリ化する前のカルボキシル基含有ロジン誘導体をロジン誘導体(B’)という。
【0041】
本発明で用いる「ロジン誘導体(B’)」とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンに大別される松由来のロジンに対し、少なくとも、カルボン酸変性が行われたものを指す。これらのロジンの主成分は、アビエチン酸、レボヒマル酸、ネオアビエチン酸等であり、いずれも分子中に環構造を有している。
【0042】
ロジンは元来カルボキシル基を有しているが、大抵のロジンは、カルボン酸変性が行われていなければ、酸価が190以上にはならない。この点で、ロジン誘導体(B’)は、後述する酸価190未満の粘着付与剤(D)とは異なる。
【0043】
カルボン酸変性は、これらのロジンに対し、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸を反応させて、ロジン中にカルボキシル基を導入することにより行われる。もちろん、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル等のロジン類も、カルボン酸変性後の酸価が190以上のものは、ロジン誘導体(B’)として用いることができる。水添ロジンは、特に、感圧接着剤の耐候性および耐黄変性の向上に有用である。
【0044】
ロジン類は、よく知られているように、粘着付与剤である。ロジン類の持つ粘着力改善効果によって、アクリル系エマルション型粘着剤が皮膜化されて得られる感圧接着剤皮膜の粘着力を向上させる。また、例えば、シリコーン樹脂によって剥離処理されたような低表面エネルギーの基材に対してエマルションを塗布した場合、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)が含まれていないと、エマルションが弾いて(塗膜にならずに、多数の液滴状になる)しまって塗工が難しいが、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)の存在によってこの不都合が避けられる。これは、アルカリ塩となったカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)がエマルションに溶解し、エマルションの動的表面張力を低下させるためである。
【0045】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤中に存在しているカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)は、そのカルボキシル基がアルカリ塩となることによってアルカリ性のエマルションの水相に溶解した状態と、ロジン誘導体(B’)および(B)自体の油滴がカルボキシル基またはカルボキシル基のアルカリ塩基によって安定化されてエマルション化した状態とで存在していると考えられる。また、アルカリ塩化されたカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)の一部は、感圧接着性ポリマー(A)の油滴に吸着した状態で存在しているとも考えられ、ポリマー油滴を安定化させる乳化剤としても作用している。これらの作用が総合されて、エマルション中でカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)が安定に存在しているのである。なお、アルカリ性とは、pH7以上の状態を指す。
【0046】
このような安定な存在状態を得るためには、アルカリ塩となる前のカルボキシル基含有ロジン誘導体(B’)の酸価が190以上でなければならない。ロジン誘導体(B’)の酸価が190以上でないと、ロジン誘導体(B’)の有するカルボキシル基の全部をアルカリ塩基にしても、エマルション中でカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)が安定に存在できなくなるため好ましくない。すなわち、ロジン誘導体(B’)の酸価が190より小さいと、エマルション中に安定に分散させるために多量の他の乳化剤が必要となって、この乳化剤の存在が感圧接着剤皮膜の耐水性を悪化させる。また、他の乳化剤でロジン誘導体(B’)の油滴を乳化しなければ、エマルション中でロジン誘導体(B’)粒子同士が融着して、凝集沈降してしまうという不都合が起こる。より好ましいロジン誘導体(B’)の酸価は210以上である。水中での安定性が向上するためである。ただし、あまり酸価が大きいロジン誘導体(B’)を用いると、化合物(C)による親水性喪失作用があっても、感圧接着剤製品の耐水性が劣ったものとなることがあるため、ロジン誘導体(B’)の酸価は270以下に抑えることが好ましい。
【0047】
カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)をエマルション中に存在させるためには、感圧接着性ポリマー(A)のエマルションを合成した後、アンモニア水等のアルカリ水溶液を添加してエマルションをアルカリ性にしてから、酸価190以上のロジン誘導体(B’)をエマルションに添加する方法が簡便であり、添加されたロジン誘導体(B’)のカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となって、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)となる。
【0048】
またカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)は、前記のように乳化剤の力を借りなくても、エマルション中で安定に存在しているので、エマルション中の乳化剤(前記乳化剤(a)〜(c)と後述するカルボキシル基含有乳化剤(E))の絶対量を減らすことができる。さらに、エマルションを皮膜化した後は、アルカリが飛散するので、皮膜中には、ロジン誘導体(B’)に由来する多数のカルボキシル基が存在することとなるが、本発明では、このカルボキシル基と、後述する化合物(C)の持つ「カルボキシル基と反応し得る官能基」との化学反応によって、カルボキシル基を消費してその親水性を消失させることができるため、皮膜の耐水性が優れたものとなる。
【0049】
ロジン誘導体(B’)としては、重量平均分子量(Mw)で10万以下のものを用いる。10万を超えると、ロジン誘導体(B’)と感圧接着性ポリマー(A)との相溶性があまりよくない場合に、得られる皮膜の透明性が悪くなることがある。Mwが1万以下が好ましく、より好ましくは6000以下、さらに好ましくは3000以下である。Mwが100より小さいと粘着力を改質する効果に乏しいため、Mwは100以上が好ましい。
【0050】
また、ロジン誘導体(B’)は、軟化点が200℃以下のものを選択することが好ましい。より好ましい軟化点の範囲は80〜180℃である。80℃より低い軟化点を有するロジン誘導体(B’)を使用すると、感圧接着剤の凝集力が劣る傾向にあるが、感圧接着剤製品を比較的低温で使用することが予想される場合や、粗面接着性を重視する場合は、80℃より低い軟化点のロジン誘導体(B’)を使用してもよい。
【0051】
ロジン誘導体(B’)は、感圧接着性ポリマー(A)100質量部に対し、1〜50質量部とすることが好ましい。1質量部より少ないと粘着特性を改善する効果に乏しく、50質量部を超えると粘着特性のバランスが崩れてしまうため好ましくない。より好ましい下限は2質量部であり、さらに好ましい下限は4質量部である。また、より好ましい上限は30質量部であり、さらに好ましい上限は20質量部である。
【0052】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤の第3の必須成分は、カルボキシル基を有しておらず、かつ、カルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(C)である。この化合物(C)は、アクリル系エマルション型粘着剤の皮膜化後に、前記ロジン誘導体(B’)や、後述するカルボキシル基含有乳化剤(E)の持つカルボキシル基と化合物(C)との官能基とを化学反応させて、カルボキシル基の親水性を失わせ、皮膜の耐水性を向上させるために用いられる。
【0053】
従って化合物(C)は、カルボキシル基と反応することのできる官能基を1個以上有している必要がある。このような官能基としては、エポキシ基、アジリジニル基、オキサゾリニル基、イソシアネート基や、カルボジイミド構造等が挙げられる。ただし、イソシアネート基を有する化合物(C)を用いる場合には、イソシアネート基がエマルションの媒体である水と反応してしまうので、イソシアネート基がブロックされているもの(ブロックイソシアネート)を用いることが好ましい。なお、化合物(C)は、カルボキシル基を持っていない。化合物(C)がカルボキシル基を持っていると、化合物(C)の持つ上記官能基と反応するため、化合物(C)同士で反応して上記官能基を消費してしまい、化合物(C)として必要なカルボキシル基との反応性を失ってしまうからである。化合物(C)は、上記のように皮膜化後の化学反応時に必要であるので、エマルションを皮膜化する前に、エマルション中に存在していればよい。皮膜化後における化合物(C)とカルボキシル基との反応は、150℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下である。
【0054】
化合物(C)は、油溶性であることが好ましい。化合物(C)が油溶性であると、皮膜化後の耐水性に優れるからである。また、化合物(C)としては、重量平均分子量Mwが10万以下のものを用いる。Mwは1万以下がより好ましく、5000以下がさらに好ましい。あまり分子量が高いと、化合物(C)が、エマルション中へ溶解または分散しにくくなるためである。化合物(C)の具体例としては、下記の通りである。
【0055】
エポキシ基含有化合物:プロピレンオキサイド等の脂肪族オキサイド類、スチレンオキサイド等の芳香族オキサイド類、シクロヘキセンオキサイド等の脂環式エポキシド類、ブチルグリシジルエーテル、「エポライトM−1230」(共栄社油脂化学工業社製)等の脂肪族グリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等の芳香族グリシジルエーテル類、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジルエステル類、「TETRAD」シリーズ(三菱瓦斯化学社製)等のグリシジルアミン化合物、「デナコール」シリーズ(ナガセ社製)等のポリグリシジルエーテル類等
アジリジニル基含有化合物:ブチルアジリジン等の脂肪族アジリジン類、フェニルアジリジン等の芳香族アジリジン類、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート等の不飽和基含有アジリジン類、「ケミタイト」シリーズ(日本触媒社製)等
オキサゾリニル基含有化合物:2−メチルオキサゾリン等の脂肪族オキサゾリン類、2−フェニルオキサゾリン等の芳香族オキサゾリン類、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の不飽和基含有オキサゾリン類、「エポクロス」シリーズ(日本触媒社製)等
イソシアネート基含有化合物:トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の汎用イソシアネート類、「デスモジュールAPステーブル」・「デスモジュールCTステーブル」(住友バイエル社製)等のブロックポリイソシアネート類、「デスモカップ11」等のブロックイソシアネート含有プレポリマー類、「エラストロン」シリーズ、「エラストロンBN」シリーズ等の水分散型ブロックイソシアネート(第一工業製薬社製)類等
カルボジイミド化合物:「カルボジライト」シリーズ(日清紡社製)、「ユカーリンクXL−29SE」(ユニオンカーバイド社製)等が挙げられる。
【0056】
化合物(C)としては、上記例示したものの中では、グリシジルアミン化合物(「TETRAD−C」、「TETRAD−X」;三菱瓦斯化学社製)やアジリジニル基含有化合物(「ケミタイトPZ−33」、「ケミタイトDZ−22」;日本触媒社製)等が、反応性が高く、好適に用いられる。
【0057】
化合物(C)は、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)とカルボキシル基含有乳化剤(E)の有する総カルボキシル基(アルカリ塩となっているものも含む。実質的には、ロジン誘導体(B’)と乳化剤(E)の有するカルボキシル基の合計量である)の合計を1当量としたときに、化合物(C)が有しているカルボキシル基と反応し得る官能基が、0.05〜10当量の範囲となるように用いることが好ましい。0.05当量未満では、耐水性の向上効果が不充分となることがあり、10当量を超えると、ロジン誘導体(B’)の粘質特性改質効果が不十分となることがある。より好ましい下限は、0.1当量であり、上限は5当量である。
【0058】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤には、第4の必須成分として、重量平均分子量が10万以下で、酸価が190未満の粘着付与剤(D)が含まれている。前記カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)も粘着付与剤であるが、化合物(C)との反応量のバランスをとるのが難しく、酸価が190未満の粘着付与剤(D)を添加することにより、耐エッジリフト性、耐洗剤性が向上することが見出されたため、この粘着付与剤(D)を必須成分とした。
【0059】
粘着付与剤(D)としては、重量平均分子量(Mw)が10万以下のものを用いる。好ましくはMwが1万以下であり、より好ましくは6000以下、さらに好ましくは3000以下である。Mwが100より小さいと粘着力を改質する効果に乏しいため、Mwは100以上が好ましい。
【0060】
粘着付与剤(D)は、酸価が190未満でなければならない。前記のカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)とは異なり、化合物(C)に拘束されずにタック力を発現させるためである。より好ましい酸価の上限は50であり、さらに好ましくは30である。
【0061】
粘着付与剤(D)としては、前記したロジン誘導体(B’)の酸変性前のロジン類、すなわち、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等や、これらのロジン類のグリセリンエステル等のロジンエステル類等のロジン系樹脂、あるいは、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン系樹脂等の天然樹脂系粘着付与剤が使用可能である。また、脂肪族系(C系)石油樹脂、芳香族系(C系)石油樹脂、共重合系(C/C)石油樹脂、脂環族系石油樹脂等の石油樹脂;クマロン・インデン樹脂、スチレン系石油樹脂等の重合系樹脂;フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の縮合系樹脂等で代表される合成樹脂系粘着付与剤も用いることができる。粘質付与剤(D)の軟化点については、前記したロジン誘導体(B’)を選択するときと同様の基準を採用すればよい。
【0062】
中でも、粘着特性の改質効果に優れていて、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)との親和性の高い点で、ロジン類やロジンエステル類が好ましく使用できる。
【0063】
酸変性を行っていないロジン類やその他上記した各種の粘着付与剤は、通常官能基を有しておらず、有しているとしてもカルボキシル基および/またはヒドロキシル基であり、この点で、粘着付与剤(D)とカルボキシル基と速やかに反応し得る官能基を有している前記化合物(C)とは異なる化合物である。
【0064】
これらの粘着付与剤(D)は、油溶性であり、単独では水に溶解しないため、アクリル系エマルション型粘着剤中に分散させるために、カルボキシル基含有乳化剤(E)を用いる。
【0065】
粘着付与剤(D)を安定に水分散体化するためのカルボキシル基含有乳化剤(E)は、本発明のアクリル系エマルション型粘着剤の、第5の必須成分であり、重量平均分子量(Mw)が10万以下で、分子中にロジン骨格を有さず、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を持ち、このカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有乳化剤(E)である。以下、カルボキシル基含有乳化剤(E)を単に乳化剤(E)という。
【0066】
この乳化剤(E)は、油溶性の粘着付与剤(D)をエマルションの水媒体中に分散させて、安定なエマルション状態を保つために必要な成分である。従って、乳化剤(E)は、水に分散または溶解して粘着付与剤(D)を乳化する能力を持つと共に、化合物(C)との反応点となるカルボキシル基を有することが必要である。乳化剤(E)が親水基としてカルボキシル基を有していれば、ロジン誘導体(B’)の持つカルボキシル基と同様に、皮膜化後に化合物(C)と反応するため、得られる皮膜の耐水性が向上するからである。このため、乳化剤(E)は1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を持つ化合物とする。また、乳化能を持つ必要性から、乳化剤(E)は疎水基を有していなければならないが、この疎水基としては、乳化能の点で炭素数8以上の直鎖状炭化水素基が好ましい。疎水基としてロジン骨格を持つものは乳化剤(E)としては用いない。すなわち、乳化剤(E)は、アビエチン酸、アビエチン酸の異性体、あるいはこれらの変性体のいずれの化合物でもない。この点で、乳化剤(E)と分子中にロジン骨格を有するカルボキシル基含有ロジン誘導体(B’)とは、異なる化合物である。
【0067】
また、乳化剤(E)は、カルボキシル基と反応し得る官能基は有していない。乳化剤(E)はカルボキシル基を有しているので、このような官能基を持っていると乳化剤(E)同士で反応してしまい、乳化能を失うからである。この点で乳化剤(E)は化合物(C)とは異なる化合物となる。
【0068】
乳化剤(E)としては、重量平均分子量(Mw)は10万以下のものを用いる。分子量が小さい方がエマルションの表面張力を低下させる効果が高く、塗工性に優れるためである。この観点から、乳化剤(E)のMwは1万以下が好ましく、より好ましくは3000以下であり、さらに好ましくは1500以下である。
【0069】
乳化剤(E)はアニオン型のものが好ましく、具体例としては、高級脂肪酸(C12〜C18)のナトリウム塩やカリウム塩等の脂肪酸石鹸および脂肪酸;N−アシルアミノ酸(塩);「MX−RLM」シリーズ(花王社製)等のアルキルエーテルカルボン酸塩;アシル化ペプチド;アルキルジメチルベタインやラウリルジメチルベタイン等のカルボキシベタイン型乳化剤;アミノカルボン酸塩、「ラテムル」(花王社製;アルケニルコハク酸カリ塩);「デモール」、「ポイズ」、「ホモゲノール」(いずれも花王社製)等のポリカルボン酸型高分子乳化剤;「RA−1020」、「RA−1120」、「RA−1820」等の「RA−1000」シリーズおよび「RA−2320」(日本乳化剤社製);「SLB−12」、「ULB−20」、「SL−20」、「SB−20」、「IPU−22」、「IPS−22」(いずれも岡村製油社製);「PDSA−DB」、「PDSA−DA」、「DSA」、「サンビター150」(いずれも三洋化成工業社製)等が挙げられ、これらを一種以上用いることができる。中でも、「RA−1120」等の「RA−1000」シリーズおよび「RA−2320」が好ましい。
【0070】
乳化剤(E)の粘着付与剤(D)に対する配合比は、粘着付与剤(D)100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。より好ましい下限は1質量部、さらに好ましい下限は3質量部である。またより好ましい上限は10質量部、さらに好ましい上限は8質量部である。
【0071】
粘着付与剤(D)と乳化剤(E)の感圧接着性ポリマー(A)に対する配合比は、感圧接着性ポリマー(A)100質量部に対して、合計で1〜50質量部とすることが好ましい。より好ましい下限は2質量部、さらに好ましい下限は5質量部である。またより好ましい上限は30質量部、さらに好ましい上限は20質量部である。従って、感圧接着性ポリマー(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)と粘着付与剤(D)と乳化剤(E)との合計は、2〜100質量部とすることが好ましい。
【0072】
粘着付与剤(D)は油溶性であり、単独では水に溶解しないので、乳化剤(E)を用いて水分散体化させてから、感圧接着性ポリマー(A)のエマルションと混合することが好ましい。
【0073】
水分散体化の方法としては、機械的強制乳化法や転相乳化法等の一般的な手段が用いられる。具体的には、粘着付与剤(D)を酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解した後、乳化剤(E)および脱イオン水を添加し、乳化機(ホモディスパー、ホモジナイザー、ホモミキサーなど)を用いてエマルション化した後、減圧下で溶剤を蒸留する方法、粘着付与剤(D)に少量の酢酸エチル等の適当な溶剤を混合し、続いて乳化剤(E)を練り込み、さらに熱水を徐々に添加して転相乳化させてエマルションを得た後、溶剤を減圧下に除去またはそのまま使用する方法、加圧下または常圧下にて粘着付与剤(D)の軟化点以上に昇温して乳化剤(E)を練り込み、熱水を徐々に添加して転相乳化させてエマルション化する方法等を挙げることができる。
【0074】
水分散体中の粘着付与剤(D)の平均粒子径は、1000nm以下が好ましい。より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。できるだけ平均粒子径が小さい方が耐水性等に有利であるためである。
【0075】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤には、第6の必須成分として、ノニオン型浸透剤(F)が含まれている。ここで、浸透剤は、濡れ剤あるいは湿潤剤とも言われ、アクリル系エマルション型粘着剤の表面張力を低下させることにより、基材や基布へ塗布しやすくしたり、染み込ませやすくするために添加するものであり、界面活性剤の一種である。
【0076】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤は、浸透剤を含まない場合、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムにシリコーン樹脂によって剥離処理したフィルム系剥離ライナーへの塗布性が充分でなかった。例えば、前記フィルム系剥離ライナーに、乾燥後の糊厚が約30μm以下となるように薄く塗布すると、エマルションが弾いて塗膜とならず多数の液滴状になったり、端部に縮みが生じるなどの塗膜欠陥が生じた。この問題を解決するために、通常よく使われるスルホコハク酸塩などのイオン性の濡れ剤を使用することが考えられるが、この方法では、剥離ライナーへの塗布性が改善されても、耐水白化性、耐洗剤性などが不良となってしまう。また、濡れ剤を添加せずに上記塗膜欠陥の発生を防ぐため、エマルションの粘度を高くすると、塗工筋が入り、きれいな塗膜が得られないといった問題が生じる。
【0077】
そこで、本発明者らがさらに検討を進めたところ、本発明のアクリル系エマルション型粘着剤にノニオン型浸透剤(F)を必須成分として用いれば、耐水白化性や耐洗剤性などを劣化させることがなく、またシリコーン樹脂によって処理されたフィルム系の剥離ライナーへの塗布性にも優れ、かつフィルム基材への密着性、耐エッジリフト性などにも優れ、アクリル系エマルション型粘着剤として塗布性から粘着物性までのトータルバランスに優れたものが得られることがわかった。
【0078】
ノニオン型浸透剤(F)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレングリセリド、アルキルアルカノールアミドなどの構造を有するものが挙げられ、これらの中でも、HLBが2以上、15以下のものが好ましく、より好ましくは3以上、10以下のものである。具体的には、「エマルゲン」シリーズ、「エマノーン」シリーズ、「レオドール」シリーズ、「エマゾール」シリーズ、「エキセル」シリーズ(いずれも花王社製)、「サーフィノール」シリーズ(エアープロダクツ社製)などが挙げられる。特に、アセチレンジオール骨格を有する化合物である「サーフィノール」シリーズは、分子の対称性が良く、かつ疎水性が高いため、ノニオン型浸透剤に好適に用いられる。
【0079】
ノニオン型浸透剤(F)は、分子量2000以下、HLBが2以上、15以下、好ましくは3以上、10以下で、さらにロジン骨格を有さない化合物であり、上記(A)〜(E)とは異なる化合物である。
【0080】
ノニオン型浸透剤(F)の配合量は、本発明のアクリル系エマルション型粘着剤100質量%中(wet)、0.1〜5質量%であることが好ましい。0.1質量%より少ないと、フィルム系剥離ライナーへの塗布性が不良となり、5質量%より多いと、耐水白化性やフィルム基材密着性などへ悪影響を及ぼす。より好ましい下限は0.3質量%であり、さらに好ましい下限は0.5質量%である。より好ましい上限は3質量%であり、さらに好ましい上限は2質量%である。
【0081】
ノニオン型浸透剤(F)の添加時期は限定されず、本発明のアクリル系エマルション型粘着剤を製造する工程の任意の段階、あるいは、粘着剤用エマルションの製造後、フィルム基材への塗工直前までの任意の段階で添加することができる。また、添加方法についても特に限定されず、水、アルコール、溶剤などの溶媒で希釈してから添加しても良い。
【0082】
以下、本発明のアクリル系エマルション型粘着剤の好ましい製造方法について説明する。本発明のアクリル系エマルション型粘着剤を製造する第1の方法は、前記した乳化剤(a)〜(c)を用いた乳化重合法で感圧接着性ポリマー(A)用のモノマーを重合して、得られた感圧接着性ポリマー(A)のエマルションをアルカリ性にしてから、別途、カルボキシル基含有乳化剤(E)を用いて水分散体化しておいた粘着付与剤(D)の水分散体とロジン誘導体(B’)と化合物(C)をこのエマルションに添加する方法である。感圧接着性ポリマー(A)合成後、そのままエマルションとして使えるため、簡便な方法である。なお、ノニオン型浸透剤(F)の添加時期は、前記したように特に限定されない。
【0083】
ロジン誘導体(B’)は、多数のカルボキシル基(親水性基)を有し、ロジンに由来する親油性部分も有しているので、乳化剤としても作用する。従って、最終的にエマルション中に存在すべきロジン誘導体(B)量の一部または全部に相当するロジン誘導体(B’)を、感圧接着性ポリマー(A)の乳化重合の最初から重合容器に添加して、乳化剤(a)〜(c)のいずれか一種以上と併用しながら重合してもよい。
【0084】
エマルションをアルカリ性にして、ロジン誘導体(B’)をロジン誘導体(B)に変換するのは、乳化重合のいずれの段階で行ってもよい。乳化重合の前、途中、重合後のいずれかのときに、重合のための水媒体のpHを7以上にして、ロジン誘導体(B’)をこのアルカリ水中に添加すれば、最終的に得られるエマルション中にロジン誘導体(B)が存在することとなる。ロジン誘導体(B’)の必要量を、一括して添加しても、逐次添加してもよく、ロジン誘導体(B’)が常温で固体であれば粉末にして加えてもよい。また、ロジン誘導体(B’)をアルカリ水溶液に溶解させて、予めロジン誘導体(B)にしたものを、生成したエマルションまたは重合容器に添加してもよい。ロジン誘導体を添加するときの温度は、0〜90℃の範囲が好ましい。使用できるアルカリとしては、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物類、アルカリ土類金属化合物、メチルアミン等のアルキルアミン類、アンモニア等が挙げられるが、揮発性の高いアルキルアミン類やアンモニア等を用いると、乾燥後の皮膜に残存しないため、耐水性が向上する。
【0085】
粘着付与剤(D)は、前記したように、予め、カルボキシル基含有乳化剤(E)により水分散体化しておいてから、感圧接着性ポリマー(A)のエマルションに添加することが好ましい。このとき、上記アルカリによって、アルカリ性の水分散体にしてもよい。
【0086】
化合物(C)をエマルションに添加する時期は特に限定されないが、化合物(C)と、ロジン誘導体(B)およびカルボキシル基含有乳化剤(E)との化学反応が、乳化重合中やアクリル系エマルション型粘着剤の保存中に起こるのを防ぐために、化合物(C)は、乳化重合終了後で、アクリル系エマルション型粘着剤を塗工する前に混合することが好ましい。化合物(C)は、そのままで、あるいは乳化剤(a)または(b)または(E)で水分散体にした状態で、エマルションに加えるとよい。また、ノニオン型浸透剤(F)の添加時期も特に限定されず、いずれの段階で添加してもかまわない。
【0087】
上記の製造方法ではなく、予め、乳化重合以外の重合方法によって感圧接着性ポリマー(A)を得ておき、粘着付与剤(D)と水とカルボキシル基含有乳化剤(E)を加えて前記した水分散体化法等でエマルションを作製し、ロジン誘導体(B’)と化合物(C)をこのエマルションに添加する方法を採用することもできる。感圧接着性ポリマー(A)とロジン誘導体(B’)と粘着付与剤(D)を加熱溶融して混合してから、カルボキシル基含有乳化剤(E)でエマルション化してもよい。また、感圧接着性ポリマー(A)と粘着付与剤(D)をエマルション化している途中や作製後に、エマルションをアルカリ性にしてから、ロジン誘導体(B’)をこのエマルションに加えてもよい。これらの感圧接着性ポリマー(A)の後乳化法では、カルボキシル基含有乳化剤(E)と共に、前記乳化剤(a)か(b)を一部併用してもかまわない。化合物(C)は、前記したように、ポリマー(A)のエマルション化後、アクリル系エマルション型粘着剤を塗工する前に混合することが好ましい。この方法における感圧接着性ポリマー(A)の重合方法は、溶液重合法、塊状重合法等を採用すればよい。また、乳化重合や懸濁重合法で作製した後、ポリマーを水から分離して用いてもよい。
【0088】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤の固形分は、塗工性の点で、好ましい上限は70質量%であり、より好ましくは60質量%である。また、好ましい下限は30質量%であり、より好ましくは40質量%である。
【0089】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤には、公知の粘着付与剤、架橋剤、湿潤剤、粘性調節剤、増粘剤、消泡剤、改質剤、顔料、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で加えてもよい。
【0090】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤は、フィルム系基材(基体フィルム)、粘着剤層、および剥離シートを積層した粘着シートいわゆる粘着製品(例えば、印刷用粘着フィルム)の粘着剤層を形成するために用いることができる。
【0091】
まず、上述のような粘着製品とする際の基体フィルムについて説明する。基体フィルムは、粘着シート中、粘着剤層の支持体として機能するものである。この基体フィルムとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等の樹脂からなるフィルムが好ましい。上述のフィルムの中でも、ポリオレフィンまたはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを主成分として含むフィルムが基体フィルムとして好ましい。
【0092】
上記フィルムの中では、ポリオレフィン系フィルムが、安価で透明性に優れ、且つ加工適正に優れるため特に好ましい。
【0093】
なお、強度などを考慮すれば、これらのフィルムは二軸延伸されたものであることが好ましい。
【0094】
上記ポリオレフィン系フィルムとしては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体などのポリエチレン系フィルムの他、ポリプロピレンを主成分とするフィルムも好適に利用できる。例えば、ポリプロピレン、エチレン、ブテン、4−メチルペンテンなどのα−オレフィン類、スチレンなどの芳香族系オレフィン類、あるいはブタジエンなどのジエン類などとプロピレンとの共重合体などや、これらの混合物からなるフィルムが挙げられる。さらに、ポリプロピレンやポリプロピレン共重合体を主体とするブレンド物をフィルム原料としてもよく、ブレンドの相手としては例えばポリエチレン、上記各種エチレン共重合体などのポリ−α−オレフィン類、ポリスチレン、合成ゴム、テルペン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルなどが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また任意に組み合わせた混合物としても好適に使用できる。これらの成分の種類や配合量は、ポリプロピレンフィルムとしての特性を失わない範囲で適宜決定すればよく、また、必要に応じて光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤などを添加することができる。
【0095】
基体フィルムは、単層あるいは複数層の構造であってもかまわない。該基体フィルムの厚さは、用途により適宜選択できるが、例えば表示ラベル用として用いる場合であれば、20〜200μm程度が好ましく、より好ましくは20〜100μm程度である。
【0096】
基体フィルムの製造方法については特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系フィルムの製造方法としては、ポリプロピレン組成物を常法に従って溶融押出しした後、延伸すればよい。延伸処理としては、縦と横の両方向に引き伸ばす2軸延伸を施すのが好ましく、この際、縦延伸した後、横延伸したものであってもよいし、または横延伸した後に縦延伸したものであってもよい。尚、縦・横延伸倍率はそれぞれ2〜20倍であることが好ましい。また、ポリプロピレン以外の樹脂からなる基体フィルムも、それぞれ常法に従って製造することができる。
【0097】
上述の様にして得られた基体フィルムの片面あるいは両面には、所望により、濡れ張力を増大させる目的でコロナ放電処理、火炎処理、サンドブラスト、帯電防止層の形成など既知の方法により表面処理を施すことが好ましい。表面処理の中でも、特に、所定の塗布液をコーティングして、アンカーコート層を形成することが好ましい。これにより、後述する印刷受容層あるいは粘着剤と基体フィルムとの密着性を向上させることができる。
【0098】
アンカーコート層を形成するアンカーコート剤としては特に限定されないが、例えばエチレン系共重合体をその成分として含むものは、基体フィルムあるいはアンカーコート層上に形成する層との密着性に優れるので好ましい。ここで、エチレン系共重合体としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリル酸エステル共重合体などから選ばれる少なくとも1種以上を挙げることができる。また、アンカーコート剤中には、必要に応じて、ブロッキング防止のための顔料を添加しても良い。
【0099】
アンカーコート剤の塗布時期は、二軸延伸後の基体フィルムに塗布してもよく、またはフィルムを二軸延伸する際、縦延伸工程と横延伸工程との間(または横延伸工程と縦延伸工程との間)で行うようにしてもよい。
【0100】
特に、逐次2軸延伸処理を採用し、二回の延伸工程の間にアンカーコート剤の塗布を行う場合には、アンカーコート剤の塗布後、二回目の延伸工程に先立って塗布層を十分に乾燥させることが好ましい。この場合、さらに二回目の延伸後にフィルムのアンカーコート剤塗布面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0101】
アンカーコート剤を塗布する方法としては、公知の方法、例えば、メタリングバー方式、グラビアロール方式、エアナイフ方式、スプレー方式、リバースロール方式などの方法が利用できる。この際の基体フィルムへの塗工量は、0.005〜1.0g/mであることが好ましい。塗布量が0.005g/mより少ない場合には均一な表面改質ができず、1.0g/mより多い場合には高い透明性が得られない。
【0102】
基体フィルムの少なくとも粘着剤層を形成しない面には、基体フィルムの印刷特性を向上させるため、印刷受容層を形成することができる。勿論、基体フィルムの両面に印刷受容層を有してもかまわないが、高い透明度を確保するためには、片面(粘着剤層を形成しない面)のみに印刷受容層を形成することが好ましい。これにより、基体フィルムへの印刷が容易になり、美観が向上する。
【0103】
該印刷受容層を形成するために用いられる組成物は、特に限定されないが、ポリオレフィン系フィルムなどの透明プラスチックフィルムとの密着性が高く、オフセット印刷、スクリーン印刷、UVフレキソ印刷等の各種印刷法に対してインキ密着性に優れていることから、オキサゾリニル基変性樹脂とバインダー樹脂を含むものが好ましい。
【0104】
上記オキサゾリニル基変性樹脂とは、樹脂中にオキサゾリニル基が存在するものであればいかなるものでも構わない。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、SBR樹脂、ポリオレフィン樹脂にオキサゾリニル基をグラフト化反応させたものを挙げることができる。オキサゾリニル基変性樹脂は、印刷受容層中に0.5質量%以上、50質量%以下含有されていることが好ましく、より好ましくは1質量%以上、20質量%以下とすることが好ましい。オキサゾリニル基変性樹脂の含量が0.5質量%未満の場合には、ポリオレフィン系、ポリエステル系樹脂などからなる基体フィルムと印刷受容層とが十分に密着しない場合がある。
【0105】
オキサゾリニル基変性樹脂と併用するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、SBR樹脂、オレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂から選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。これらの中でもアクリル系樹脂は、印刷適正が良好であるため好ましい。
【0106】
また、印刷受容層形成組成物中には、ブロッキング防止のため、有機顔料や無機顔料を配合しても良い。特に、有機顔料は透明性が優れるので好ましい。これらの顔料の配合量は、有機顔料の場合、印刷受容層中5質量%以下であることが好ましく、無機顔料の場合は、0.1質量%以上、2質量%以下であることが好ましい。有機および無機顔料の配合量が上記上限値より多い場合は基体フィルムの透明性が低下し、透明な基材を得がたくなる。
【0107】
上記有機顔料としては、アクリル系樹脂顔料、ポリスチレン系樹脂顔料、スチレン−アクリル共重合体樹脂顔料などが好ましい。また、無機顔料としては、二酸化珪素顔料が好ましい材料として挙げられる。これらの顔料の平均粒子径は、1μm以上、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは、4μm以上、8μm以下であり、中でも真球状粒径のものが好ましい。顔料の平均粒子径が1μm未満では、その効果を十分に発揮することができず、印刷中にブロッキングが起こる可能性があり、一方、平均粒子径が10μmを超えると、顔料が印刷受容層から剥がれ易くなり、結果としてブロッキングが生じたり、また凸版印刷において印刷ムラを発生することがある。
【0108】
上記印刷受容層形成組成物の基体フィルム上への塗布方法としては、メタリングバー方式、グラビアロール方式、エアナイフ方式、スプレー方式、リバースロール方式などの公知の方法が利用できる。該組成物の塗工量は0.05g/m以上、1.0g/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.1g/m以上、0.5g/m以下である。塗工量が0.05g/mより少ないと均一な塗布が難しく、1.0g/mを超えると、透明性が低下したり、ブロッキングが生じやすくなるので好ましくない。
【0109】
このようにして形成した印刷受容層上には、感熱記録層、熱転写受像層、インクジェット記録層といった公知の各種記録層や、顔料塗被層などを形成することができる。
【0110】
次に、基体フィルム上に粘着剤層を形成した粘着シートを製造する方法について説明する。基体フィルム上に粘着剤層を形成するには、上述のアクリル系エマルション型粘着剤を該基体フィルム上に直接塗布しても構わないが、作業性などの面からは、一旦、所定の剥離シート上にアクリル系エマルション型粘着剤を塗布し、必要により乾燥して粘着剤層を形成した後に、基体フィルムと貼り合せて粘着シートを得る方法を用いることが好ましい。
【0111】
上記アクリル系エマルション型粘着剤を基体フィルムに塗布する装置としては、リバースロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、エアーナイフコーター、リバースグラビアコーター、バリオグラビアコーターなどを使用することができる。粘着剤の塗布量は乾燥重量で5g/m以上、50g/m以下の範囲で調節するのが好ましく、より好ましくは10g/m以上、30g/m以下である。粘着剤の塗布量が5g/m未満では、被着体に対する粘着力が不十分となり、一方50g/mを超えると、粘着剤が基体フィルムからはみ出したり、印刷加工適正を悪くするおそれがある。
【0112】
剥離シートの素材は特に限定されず、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙または上質紙にポリエチレンなどのフィルムをラミネートした紙、上質紙にポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体などの樹脂を塗布した紙、あるいはポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンなどのプラスチックフィルムに、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等を乾燥重量で0.05〜3g/m程度になるように塗布した後、熱硬化や電離放射線硬化などを施すことによって剥離剤層を設けたものが適宜使用される。
【0113】
特に、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等を塗布して剥離剤層を設ける際の塗布装置としては、バーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアロールコーター、オフセットグラビアロールコーター、多段ロールコーター等を適宜使用すればよい。
【0114】
上述の剥離シートの中でも、プラスチックフィルムを使用した剥離シートは、紙系の剥離シートに比べて、透明性・平滑性に優れ、また、温度や質度の影響を受けにくいためカールも生じ難い。特に、フィルムタック製品に透明性が要求される場合には、プラスチック系の剥離シートを用いるのが好ましい。
【0115】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお以下特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0116】
合成例1〔感圧接着性ポリマーの乳化重合〕
表1に示した組成のモノマー成分100部と、分子量調節剤としてtert−ドデシルメルカプタン(以下TDMと省略する)0.02部、乳化剤(a)として「アクアロンKH10」(第一工業製薬社製;ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステルアンモニウム塩を基本骨格とするタイプ)を1.5部および脱イオン水34部を混合して撹拌し、モノマープレエマルションを作製した。
【0117】
次いで、滴下ロート、撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えたフラスコに、前記モノマープレエマルション100%のうちの2%と、脱イオン水41部と、開始剤アゾビスシアノバレリックアシッド(以下ACVAと省略する。酸価400)0.1部を仕込み、窒素雰囲気下約80℃で、20分間反応させた。その後、前記モノマープレエマルション100%のうちの残りの98%および開始剤ACVA0.07部を約3時間かけて連続滴下して重合反応を行った。滴下終了後も約3時間80℃を維持した。不揮発成分が53%になるように水で希釈し、感圧接着性ポリマーエマルション(A−1)を得た。この感圧接着性ポリマーの酸価(計算値)は0.7mgKOH/gである。
【0118】
得られた感圧接着性ポリマーの計算Tg(℃)は−56℃、重量平均分子量(Mw)は77万、平均粒子径は243(nm)であった。なお、このTg(℃)は、後述する各モノマーのホモポリマーのTg(K)を用いて前述の数式によって計算した値であり、Mwは、GPCを用いて測定したテトラヒドロフラン可溶部分のポリスチレン換算値である。
【0119】
平均粒子径の測定には、光散乱式粒度分布計(Particle Sizing System社製「NICOMP 380 ZLS」)を用いた。
【0120】
合成例2〜4
モノマー組成を表1に示したように変えた以外は合成例1と同様にして、感圧接着性ポリマーエマルション(A−2)〜(A−4)を合成した。Tg(℃)、Mw、平均粒子径(nm)および酸価(計算値)を表1に併記した。
【0121】
なお表1においては、各モノマー名を次のように略記した。右の数字は、ポリマーハンドブックに掲載されているホモポリマーのTg(K)の値である。
BA  :n−ブチルアクリレート         219K
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート     223K
MMA :メチルメタクリレート          378K
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート   328K
MAA :メタクリル酸              501K
【0122】
【表1】
Figure 2004026909
【0123】
配合例1〔感圧接着性ポリマー(A)のエマルションへのカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)の配合〕
感圧接着性ポリマーエマルション(A−1)(設定固形分53%)100部の入ったフラスコに25%アンモニア水を1.3部((B)100部に対して24部)加えて、80℃に保ちながら、酸価245、軟化点131℃のカルボキシル基含有ロジン誘導体(B’)(酸変性ロジン;「KE−604B」;荒川化学社製;Mw=420、Mn=410)5.3部((A−1)の固形分100部に対して10部)を適当に粉砕したものをフラスコに投入した。約1時間撹拌を続けたところ、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)が溶解したエマルション(AB−1)(理論固形分55%)が得られた。
【0124】
〔粘着付与剤(D)と乳化剤(E)の配合〕
粘着付与剤(D)として、酸価10〜16の「ペンセルD160」(重合ロジンエステル;荒川化学社製;Mw=1890、Mn=1190)を用い、カルボキシル基含有乳化剤(E)として、「RA−2320」(酸価約48;日本乳化剤社製)を用いて、粘着付与剤水分散体(DE)を製造した。粘着付与剤水分散体(DE)は、まず、フラスコ中で「ペンセルD160」100部および「RA−2320」6部を酢酸エチル67部に溶解させ、次いで25%アンモニア水0.6部および脱イオン水105部を加えた後、ホモディスパーにて強制的に攪拌して乳化させた。この乳化物を加熱しながら、70〜90℃、6〜8時間減圧蒸留して酢酸エチルを除去した後、不揮発分が約50%、pH8程度になるように、脱イオン水やアンモニア水を適宜追加し、粘着付与剤水分散体(DE)を得た。粘着付与剤水分散体(DE)の平均粒子径は570nmであった。
【0125】
〔エマルション(ABDEF−1)の作製〕
前記エマルション(AB−1)106.6部(設定固形分55%)に対し、この水分散体(DE)を5.3部((A−1)の固形分100部に対して(DE)の固形分5部)を添加して、よく撹拌した。さらに、60回転/1分の粘度が2000〜5000mPa・sとなるように、アルカリ可溶型増粘剤を適当量添加して、充分に攪拌混合し、粘性を調整した。最後に、ノニオン型浸透剤(F)として「サーフィノールPSA204」(エアープロダクツ社製、アセチレンジオール型浸透剤)1.1部を添加し充分に攪拌を行い、200メッシュ金網で濾過を行った。得られたエマルション(ABDEF−1)の固形分(%)、粘度(60回転/1分、6回転/1分;25℃;B型粘度計;ローターNo.4)およびpHを測定し、結果を表2に示した。
【0126】
配合例2〜10
表2に示したように、各成分の配合量を変更した以外は、配合例1と同様にして、化合物(C)の配合前のエマルションABDEF−2〜ABDEF−10を調製した。このうちABDEF−5〜ABDEF−10は比較用のエマルションである。ABDEF−5および7は本発明の必須成分である粘着付与剤水分散体(DE)を配合していないもの、ABDEF−6は本発明の必須成分であるノニオン型浸透剤(F)を配合していないもの、ABDEF−8は、本発明の必須成分である粘着付与剤水分散体(DE)とノニオン型浸透剤(F)を配合していないもの、ABDEF−9は本発明の必須成分の粘着付与剤水分散体(DE)の替わりに市販の粘着付与剤水分散体(「スーパーエステルE−788」、荒川化学社製、主乳化剤としてカルボン酸型乳化剤未使用)を配合したもの、ABDEF−10は本発明の必須成分であるノニオン型浸透剤(F)の替わりに、一般的な浸透剤(「ペレックスOT−P」、花王社製、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、非ノニオン型)を配合したものである。
【0127】
【表2】
Figure 2004026909
【0128】
実施例用フィルムタック製造例1
表2に示したABDEF−1の100部に対し、化合物(C)として「TETRAD−C」(三菱瓦斯化学社製;1分子中に4個のエポキシ基を有する化合物;エポキシ当量92;カタログによる分子量366)を、表3に示したように1.0部添加し、よく撹拌して、本発明のアクリル系エマルション型粘着剤No.1を調製した。表3には、配合したTETRAD−Cの当量(カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)とカルボキシル基含有乳化剤(E)の有するカルボキシル基の合計を1当量としたときのエポキシ基の当量である)も併記した。なお当量計算においては、増粘剤の添加量を考慮せず、実測した固形分より算出した。
【0129】
得られたアクリル系エマルション型粘着剤No.1を用いて、評価用フィルムタックの作製を行った。上記アクリル系エマルション型粘着剤を、シリコーン樹脂で処理されたフィルム系の剥離ライナーに、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗工し、105℃の熱風乾燥機で1分間乾燥した。これを、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の片面に転着して、フィルムタックを作製し、40℃で3日以上熟成した。その後、粘着特性を測定した。ただし、耐洗剤性、耐水白化性、吸水率の評価用には、コロナ放電処理した厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を用いてフィルムタックを作製した。
【0130】
実施例用フィルムタック製造例2〜5
表2に示したエマルションABDEF−1〜ABDEF−4に、表3に示した量のTETRAD−Cを添加し、実施例フィルムタック製造例1と同様にして、実施例用のアクリル系エマルション型粘着剤No.2〜5を調整した。さらに、実施例用フィルムタック製造例1と同様にして、実施例用フィルムタックを得た。
【0131】
【表3】
Figure 2004026909
【0132】
比較例用フィルムタック製造例1〜6
表2に示したエマルションABDEF−5〜ABDEF−10に、表4に示した量のTETRAD−Cを添加し、実施例用フィルムタック製造例と同様にして、比較用のアクリル系エマルション型粘着剤No.1〜6を調製した。さらに、実施例用フィルムタック製造例と同様にして、比較例用フィルムタックを得た。
【0133】
【表4】
Figure 2004026909
【0134】
〔粘着特性の評価方法〕
以上の実施例用フィルムタック製造例1〜5および比較例用フィルムタック製造例1〜6で得られたエマルションおよびフィルムタックを用い、下記方法で粘着特性の評価を行い、結果を表5、6に示した。
【0135】
1.塗工性
前記フィルム系剥離ライナーへ、アクリル系エマルション型粘着剤をウエットで50μmとなるように塗布したときの塗工適性を目視で評価した。判定は、はじき、縮み、筋(ストリーク)、ピンホール等の発生がなく、きれいな塗膜が得られるものを○(合格)、はじき、縮み、筋(ストリーク)、ピンホールのいずれかが発生するものを×(不合格)とした。
【0136】
2.PE粘着力
JIS Z 0237に準じて、ポリエチレン(PE)板に貼着した25mm幅の評価用フィルムタック片を180°方向で引き剥す時の抵抗力(23℃)を測定した。判定は、78N/m(200g/25mm)以上が○(合格)、78N/m(200g/25mm)未満を×(不合格)とした。
【0137】
3.SUS粘着力
PE粘着力測定の場合と同様に、JIS Z 0237に準じて、ステンレス(SUS)板に貼着した25mm幅の評価用フィルムタック片を180°方向で引き剥す時の抵抗力(23℃)を測定した。判定は、431N/m(1100g/25mm)以上が○(合格)、431N/m(1100g/25mm)未満を×(不合格)とした。
【0138】
4.耐水白化性
25mm×70mmに裁断し、かつ剥離ライナーを除いた評価用フィルムタック片を23℃の水50mlに24時間浸漬した後の感圧接着剤層の白化度合いを目視で評価した。判定は、透明感があるものを○(合格)、僅かに白化したものを△(不合格)、白濁してしまったものを×(不合格)とした。
【0139】
5.吸水率
25mm×70mmに裁断し、かつ剥離ライナーを除いた評価用フィルムタック片の質量を測定する。これをWaとする。この評価用フィルムタック片を23℃の水50mlに24時間浸漬した後、水から取り出し、表面についた余分の水分を軽くふき取った後、再び質量を測定する。これをWbとする。25mm×70mmのフィルム基材のみ別途測定しておき、Wcとする。各質量を用い、吸水率を以下の式で算出した。
吸水率(%)=(Wb−Wa)/(Wa−Wc)×100
判定は、10%未満を○(合格)、10〜15%未満を△(不合格)、15%以上を×(不合格)とした。
【0140】
6.耐熱保持力
JIS Z 0237に準じて、保持力測定を行った。幅25mm、長さ約150mmの評価用フィルムタック片をステンレス(SUS)板に貼着面積25mm×25mmで貼着して、テープの貼着されていない部分は内側に折り重ねて、これを試験片とする。この試験片を、60℃の恒温槽内に鉛直に吊り下げた後、テープの折り重ねた部分に1Kgの荷重を吊り下げ、24時間放置した。24時間後のズレ距離(mm)、または落下までの時間を測定した。24時間で落下しないものを○(合格)、落下するものを×(不合格)とした。
【0141】
7.耐エッジリフト
長さ20mm×幅16mmのフィルムタック片を、表面がポリエチレンで被覆された直径13mmの円柱に貼着し、23℃雰囲気下で静置する。24時間後の端部の浮き(エッジリフト)を測定する。判定は、端部の浮きのないもの(10%未満)を○(合格)、浮きのあるものを×(不合格)とした。
【0142】
8.耐洗剤性
長さ20mm×幅16mmのフィルムタック片を、厚さ50μmのPETフィルムに貼着し、23℃雰囲気下で24時間静置した後、市販の食器洗い用洗剤(原液)に浸漬する。40℃で3日間静置した後に取り出し、端部の白化、浮き、剥れを観察する。判定は、端部の白化、浮き、剥れのないものを○(合格)、いずれかがあるものを×(不合格)とした。
【0143】
【表5】
Figure 2004026909
【0144】
【表6】
Figure 2004026909
【0145】
本発明の規定を満たす実施例1〜5は、良好なフィルム基材密着性、フィルム系剥離ライナーへの塗布性を示すと共に、耐エッジリフト性、耐洗剤性などと他の粘着特性にも優れていた。
【0146】
これに対して、比較例1は、粘着付与剤水分散体(DE)を含んでいないため、耐エッジリフト性に劣っていた。比較例2は、浸透剤(F)を含んでいないため、塗工性に劣るものであった。比較例3は、粘着付与剤水分散体(DE)を含んでいないため、耐洗剤性に劣っていた。比較例4は、浸透剤(F)も含んでいないため塗工性に劣っており、また、粘着付与剤水分散体(DE)を含んでいないため粘着性や耐エッジリフト性に劣っていた。比較例5は、粘着付与剤水分散体(DE)として比較品(主乳化剤にカルボン酸型乳化剤を未使用)を用いたため、粘着剤が皮膜化した後も親水性を示す成分が残留しており、耐水性が向上せず、耐水白化性および吸水率に劣るものであった。比較例6は、浸透剤(F)として、非ノニオン型(アニオン)の浸透剤を用いたため、塗工性は良好であるが、耐水白化性および吸水率に劣るものであった。
【0147】
【発明の効果】
本発明のアクリル系エマルション型粘着剤は、高酸価のロジン誘導体と、低酸価の粘着付与剤、ノニオン型浸透剤を組み合わせたため、良好な塗工性と粘着特性を発揮する。特に、エマルションから粘着剤層を形成するときに、高酸価のロジン誘導体の有するカルボキシル基や、低酸価の粘着付与剤を水分散体化させるために用いられる乳化剤の有するカルボキシル基を、これらのカルボキシル基と反応し得る官能基を有する化合物と化学反応させることにより、親水性を消失させることができたので、耐水性や耐水白化性に優れる。かつ、オレフィンに対する接着性や耐エッジリフト性、粘着力と凝集力とのバランスにも優れる。さらに、ノニオン型浸透剤の使用により耐水性、耐洗剤性や粘着物性に悪影響を与えることなく良好な塗工性を付与できたため、高性能なフィルムラベル用のアクリル系エマルション型粘着剤を提供することができた。

Claims (5)

  1. フィルム基材に粘着剤層を形成するために用いられるアクリル系エマルション型粘着剤であって、
    ガラス転移温度が−80〜−20℃、重量平均分子量15万以上、かつカルボキシル基による酸価が30以下の感圧接着性ポリマー(A)、
    重量平均分子量が10万以下で、アルカリ化する前のカルボキシル基による酸価が190以上であり、このカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、
    重量平均分子量が10万以下で、カルボキシル基を有しておらず、かつカルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に少なくとも1個有する化合物(C)、
    重量平均分子量が10万以下で、酸価が190未満の粘着付与剤(D)、
    重量平均分子量が10万以下で、分子中にロジン骨格を有しておらず、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を持ち、このカルボキシル基の一部または全部がアルカリ塩となっているカルボキシル基含有乳化剤(E)、および
    ノニオン型の浸透剤(F)を必須成分として含むことを特徴とするアクリル系エマルション型粘着剤。
  2. 予め、カルボキシル基含有乳化剤(E)で粘着付与剤(D)を水分散体化したものを、感圧接着性ポリマー(A)とカルボキシル基含有ロジン誘導体(B)と化合物(C)とを含むエマルションに添加して得られたものである請求項1に記載のアクリル系エマルション型粘着剤。
  3. 粘着付与剤(D)の水分散体化にあたり、粘着付与剤(D)100質量部に対し、カルボキシル基含有乳化剤(E)を0.5〜20質量部用いるものである請求項2に記載のアクリル系エマルション型粘着剤。
  4. 感圧接着性ポリマー(A)100質量部に対し、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)、粘着付与剤(D)およびカルボキシル基含有乳化剤(E)が合計で2〜100質量部含まれており、
    化合物(C)は、カルボキシル基含有ロジン誘導体(B)とカルボキシル基含有乳化剤(E)の有するカルボキシル基の合計1当量に対し、化合物(C)の有する前記官能基が0.05〜10当量となるように含まれているものである請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系エマルション型粘着剤。
  5. 粘着付与剤(D)がロジン誘導体である請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系エマルション型粘着剤。
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