JP2004026870A - 加飾用フィルムにおける基材フィルム - Google Patents

加飾用フィルムにおける基材フィルム Download PDF

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Mitsuru Doteguchi
土手口 満
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Abstract

【課題】熱成形時の白化が抑制され、良好な熱成形性を有し、更に透明性に優れた加飾用フィルムにおける基材フィルム、該基材フィルムを使用した加飾用フィルム、並びに該加飾用フィルムを一体化接着した射出成形品を提供する。
【解決手段】基材フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂およびガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物であり、損失正接の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲であり、該基材フィルムの融解熱の変化(基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの無処理と160℃で1時間熱処理の場合の差)が、2kJ/kg以下であり、かつ2mmの成形品のヘーズが35%以下であることを特徴とする加飾用フィルムにおける基材フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のインジケータパネル、家庭電器製品、音響電子機器および事務用機械のコントロールパネル、並びに携帯電話等のモバイルIT機器のキーパットなどに代表されるその表面が立体形状を有する樹脂成形品を装飾するための加飾用フィルムにおける基材フィルム、該基材フィルムからなる加飾用フィルム、および該加飾用フィルムが成形樹脂の表面に一体化接着されてなるインサート射出成形品に関する。特に本発明は、深絞りされた凹凸形状を有する樹脂成形品表面を装飾するために用いられる加飾用フィルムにおける基材フィルムに関し、更に優れた透明性および熱成形を有する加飾用フィルムにおける基材フィルムに関する。また本発明は優れた透明性および熱成形を有する熱成形用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のインジケータパネル、家庭電器製品、音響電子機器および事務用機械のコントロールパネル、並びに携帯電話等のモバイルIT機器のキーパットなどに代表されるその表面が立体形状を有し、かつ該表面に図柄の施された樹脂成形品は多くの分野において使用されている。該成形品を得る方法の1つは、基材フィルムに所望の図柄を印刷して加飾用フィルムを得た後に、該フィルムを射出成形用金型内に配置し、印刷された図柄側に二次材料を射出成形すると同時に立体形状の成形品を得る方法である。更に該フィルムは金型内に配置される前に真空成形または圧空成形などの熱成形法を用いて樹脂成形品の形状に予備賦形される場合が多い。ここで図柄は基材フィルムを通して認識され、印刷された図柄を直接手などで触れることがないため、図柄が使用期間中に損傷することはない。
【0003】
このような加飾成形用フィルム(“IMDフィルム”と称される場合が多い)としては特開平2−215511号公報に開示されているようにポリカーボネートフィルムを使用する方法や、特開2002−018894号公報に開示されているように、ポリカーボネートとその他の樹脂からなる熱変形温度85〜120℃の樹脂組成物よりなるフィルムがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2−215511号公報に開示されているポリカーボネート樹脂からなる基材フィルムは、透明性には優れるものの耐熱性が高く、圧空成形などの手法を用いて予備賦形する工程における予熱に時間を要する問題点を有している。これを解決するために高温加熱のような手法を用いた場合、加飾用フィルムの全面を均一に加熱するように制御することは困難である。このよう加飾用フィルムの表面温度の不均一性は、圧空成形した場合に、部分的な伸びの違いを生じるため印刷の位置ずれなどが生じやすくなるなどの問題点を有していた。
【0005】
一方、特開2002−018894号公報に開示されているように、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートなどの他樹脂からなる熱変形温度85〜120℃の樹脂組成物よりなるフィルムは、前述のような成形性の改善はある程度認められる。しかしながら、ここで開示されている技術よりなるフィルムは次の点において更に改良を求められる場合があった。第1の点は熱成形時の白化である。かかる白化は最終的な製品において図柄の光沢感にムラを与え改良の求められる場合があった。第2の点は熱成形性の更なる改良である。上記公報に開示されたフィルムは更に良好な賦形性を有することにより複雑な形状に対応し、その適用範囲を広げることが求められる場合があった。更に第3の点は更に高い透明性である。高い透明性はより幅広い図柄への適用を可能とする。
【0006】
以上本発明の課題は、前述のような問題点を解消し、熱成形時の白化が抑制され、良好な熱成形性を有し、更に透明性に優れた加飾用フィルムにおける基材フィルム、該基材フィルムを使用した加飾用フィルム、並びに該加飾用フィルムを一体化接着した射出成形品を提供することを主たる目的とする。更に本発明は透明性および熱成形性に優れた各所の用途に使用可能な熱成形用のフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂と特定の熱可塑性樹脂との混合物からなり、更に特定の熱的特性を満足する樹脂からなるフィルムが熱成形時の白化が抑制され、良好な熱成形性を有し、更に透明性に優れることを見出し、更に鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)基材フィルム上に図柄層が形成され射出成形用の金型内にセットされて成形樹脂の表面に一体化接着される加飾用フィルムにおける基材フィルムであって、
(i)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂(A成分)および該A成分との組成物において該A成分由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)からなる樹脂組成物であり、
(ii)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、本文中に規定された動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲であり、
(iii)該基材フィルムの本文中に規定する融解熱の変化(H−H;ここでHは基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わし、Hは160℃で1時間熱処理された基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わす)が、2kJ/kg以下であり、かつ
(iv)ISO 14782に準拠して測定された該基材フィルムを構成する樹脂成分からなる2mmの成形品のヘーズが35%以下であることを特徴とする加飾用フィルムにおける基材フィルムにかかるものである。かかる(1)の構成によれば、透明性が良好でかつ図柄の光沢感等に影響を与える熱成形時の白化現象を実質的に有しない加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供される。
【0009】
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記基材フィルムの損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度は120〜160℃の範囲である上記(1)に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムである。かかる(2)の構成によれば、更に透明性が良好でかつ図柄の光沢感等に影響を与える白化現象を実質的に有しない加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供される。
【0010】
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記B成分は、ポリエステルブロック共重合体、ポリカプロラクトン、および脂環族ポリエステルからなる群から選ばれる一種以上の樹脂である上記(1)または(2)のいずれかに記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムである。かかる(3)の構成によれば、更に透明性が良好でかつ図柄の光沢感等に影響を与える白化現象を実質的に有しない加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供されると共に、耐薬品性の向上により図柄層の印刷における耐性が向上した用途の広い加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供される。
【0011】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記基材フィルムを構成する樹脂成分は、A成分とB成分の合計100重量%中、A成分が50〜98重量%およびB成分が50〜2重量%である上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムである。かかる(4)の構成によれば、良好な透明性および熱成形を有する加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供される。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記B成分は、ポリエステルブロック共重合体、および脂環族ポリエステルからなる群から選ばれる一種以上の樹脂である上記(3)に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムである。かかる(5)の構成によれば、更に用途の広い加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供される。
【0013】
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記B成分は、ポリエステルブロック共重合体である上記(3)に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムである。かかる(6)の構成によれば、更に用途の広い加飾用フィルムにおける基材フィルムが提供される。
【0014】
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムの少なくとも1つの表面に図柄層が形成されてなり、かかる図柄の少なくとも1つは基材フィルムを通して認識される加飾用フィルムである。かかる(7)の構成によれば、透明性が良好でかつ図柄の光沢感等に影響を与える熱成形時の白化現象を実質的に有しない加飾用フィルムが提供される。
【0015】
本発明の好適な態様の1つは、(8)上記(7)に記載の加飾用フィルムを熱成形してなる立体形状を有する加飾用フィルムである。かかる(8)の構成によれば、熱成形後も良好な図柄を保持したインサート成形用物品が提供される。
【0016】
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記(7)または(8)のいずれかに記載の加飾用フィルムが射出成形用の金型内にセットされて成形樹脂の表面に一体化接着されてなるインサート射出成形品である。かかる(9)の構成によれば、良好な図柄を保持したインサート成形品が提供される。
【0017】
更に本発明は、(10)熱成形用のフィルムであって、
(i)該フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂(A成分)および該A成分との組成物において該A成分由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)からなる樹脂組成物であり、
(ii)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、本文中に規定された動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲であり、
(iii)該フィルムの本文中に規定する融解熱の変化(H−H;ここでHはフィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わし、Hは160℃で1時間熱処理されたフィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わす)が、2kJ/kg以下であり、かつ
(iv)ISO 14782に準拠して測定された該フィルムを構成する樹脂成分からなる2mmの成形品のヘーズが35%以下であることを特徴とする熱成形用のフィルムにかかるものである。
【0018】
以下本発明の詳細について説明する。
【0019】
本発明の加飾用フィルムにおける基材フィルムは、上記の如く(i)〜(iv)の要件を満足するものである。
【0020】
すなわち、かかる基材フィルムは第1に、“(i)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂(A成分)および該A成分との組成物において該A成分由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)からなる樹脂組成物である”ことを要件とする。
【0021】
ここでA成分の詳細は後述するが、好適なA成分は、ビスフェノールAを二価フェノールとするポリカーボネート樹脂である。かかるポリカーボネート樹脂は、強度に優れかつ適度な耐熱性を有する。あまりに耐熱性が高い場合にはB成分の割合が過剰となり強度などが不十分となる場合がある。更にかかるポリカーボネート樹脂は、広く利用され入手が容易であるため低コストが達成できる利点を有する。
【0022】
B成分はA成分のポリカーボネート樹脂との溶融混練された樹脂組成物において、かかるポリカーボネート樹脂由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる熱可塑性樹脂である。ガラス転移温度を低下させるためには、ポリカーボネート樹脂との良好な相溶性が必要である。かかる良好な相溶性は、良好な透明性を得るのに役立つ。更にかかる良好な相溶性は単に熱変形温度を低下させることとは異なり、均質に材料の熱特性を改変する。かかる改変はより均質な変形を可能とし、白化のない熱成形を可能とする。
【0023】
上記のガラス転移温度の低下は、上記の(ii)における損失正接(以下単に“tanδ”と称する場合がある)の最大となるピーク温度の移動を意味する。即ちポリカーボネート樹脂単独の場合のtanδが最大となるピーク温度が低温側にずれることを意味する。かかるガラス転移温度の低下の幅は、上記の(ii)の条件を満足する範囲であれば特に制限されないものの、10〜100℃の範囲が好ましく、20〜70℃の範囲がより好ましく、25〜50℃の範囲が更に好ましい。
【0024】
ここで好適なB成分は、ポリエステルブロック共重合体、ポリカプロラクトン、および脂環族ポリエステルからなる群から選ばれる一種以上の樹脂であり、更に好適なB成分は、ポリエステルブロック共重合体、および脂環族ポリエステルからなる群から選ばれる一種以上の樹脂であり、特に好適なB成分はポリエステルブロック共重合体である。これらの樹脂はいずれもポリカーボネート樹脂と極めて良好な相溶性を有し、更に下記の(ii)〜(iv)の要件を満足することから、基材フィルムに良好な透明性および熱成形を与える。これら好適なB成分の詳細については後述する。
【0025】
かかるA成分とB成分との組成割合は、(ii)〜(iv)の要件を満足する範囲内であれば特に限定されないが、B成分が適切な範囲で存在することがポリカーボネート樹脂の有する利点を活かしつつ熱成形性の改良が可能となることから次の範囲が好ましい。すなわちA成分とB成分の合計100重量%あたり、A成分が50〜98重量%およびB成分が50〜2重量%が好ましく、A成分が60〜95重量%およびB成分が40〜5重量%がより好ましく、A成分が70〜90重量%およびB成分が30〜10重量%が更に好ましく、A成分が75〜90重量%およびB成分が25〜10重量%が特に好ましい。
【0026】
本発明の基材フィルムは第2に、“(ii)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、本文中に規定された動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲である”ことを要件とする。
【0027】
かかる要件を満足することにより、基材フィルムは良好な熱成形を得る。かかるtanδの最大となるピーク温度は120〜160℃の範囲が好ましく、130〜160℃の範囲が更に好ましい。ピーク温度が上記範囲を超えて低すぎる場合には、耐熱性に劣ることから圧空成形などの熱成形時のドローダウンが生じやすくなる。かかるドローダウンは所定の成形を困難にする。またピーク温度が上記範囲を超えて高すぎる場合には、短時間の予熱で基材フィルムが均質に加熱されることが困難となるため良好な熱成形性が得られない。
【0028】
尚、上記tanδの測定は、TA Instruments社製DMA983型動的粘弾性測定装置を用い、Resonant Frequency Mode(共振周波数モード)を用いて測定されるものである。更に測定は空気雰囲気下であり、30℃より昇温速度10℃/minの条件において行われる。更にはOscillation Amplitudeは0.2mmの条件において行われる。また試験片は長さ64mm×幅12mm×厚み3.2mm程度の大きさを基本とする。そして試験片を固定するクランプとしてVertical Clamp Assembly(垂直型留め組み具)を使用する。
【0029】
上記(ii)の要件は、tanδの最大となるピーク温度のみを規定するものであることから、かかるピークよりも小さいtanδのピーク部分をより高温部分に有するものであってもよい。例えば、ポリカーボネート樹脂単独のガラス転移に対応するtanδのピークが検出される場合などが例示される。しかしながら基材フィルムを構成する樹脂組成物は、そのガラス転移に対応した1つのtanδのピークを有する態様がより好ましい。かかる特性を有する樹脂組成物はより均質なためである。
【0030】
本発明の基材フィルムは第3に、“(iii)該基材フィルムの本文中に規定する融解熱の変化(H−H;ここでHは基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わし、Hは160℃で1時間熱処理された基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わす)が、2kJ/kg以下である”ことを要件とする。
【0031】
かかる要件を満足することにより本発明の基材フィルムは、熱成形後においても均質かつ良好な透明性を維持することが可能となる。上記の融解熱量が2kJ/kgを超えた場合には、熱成形時の結晶化が比較的大きくなる。かかる結晶化は白化現象として顕在化しその透明性にムラを生ずる。すなわち結晶化は、コーナー部など変形の大きな部位で進展する一方、変形の小さな部位ではあまり進展しない。したがってかかる結晶化の差異は、熱成形後の基材フィルムの透明性のムラとなって顕在化する。またかかる結晶化は同様に強度のムラとなって基材フィルムの均一な変形を阻害し、その結果基材フィルムの賦形性を低下させる。
【0032】
融解熱の変化(H−H)は実質的に0であることがより好ましい。かかる条件を満足することはフィルムにより良好かつ均質な透明性と良好な熱成形性を与える。ここで融解熱の変化(H−H)が実質的に0となれば、すなわちHおよびHがほぼ等しければ、これらの絶対値は特に制限されない。しかしながらHおよびHが実質的に0となる態様がより好ましい。HおよびHが有意量かつほぼ等しい状態にするためには、フィルムを構成する樹脂組成物の結晶化挙動を著しく促進する必要がある。しかしながらかかる処方は、経時変化などに対する耐性を低下しやすい。HおよびHがいずれも0となる態様は好ましい特性を有しかつ簡便な処方である。
【0033】
尚、上記HおよびHの測定は、JIS K7122に準拠した方法により測定することができる。すなわちDSC(示差走査熱量測定)装置を用いて、窒素気流雰囲気下、10℃/minの昇温速度で280℃まで昇温し得られたDSC曲線より融解熱量を求めることができる。
【0034】
本発明の基材フィルムは第4に、“(iv)ISO 14782に準拠して測定された該基材フィルムを構成する樹脂成分からなる2mmの成形品のヘーズが35%以下である”ことを要件とする。
【0035】
かかる要件を満足することにより本発明の基材フィルムは透明性に優れ、更に上記(i)〜(iii)の要件を有することで熱成形後においても均質かつ良好な透明性を維持することが可能となる。上記のヘーズは20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。一方かかる下限はポリカーボネート樹脂単体と同程度、すなわち0.5%程度とすることも可能である。
【0036】
本発明の基材フィルムを構成するA成分のポリカーボネート樹脂について説明する。本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0037】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも強度に優れ、適度な耐熱性を有し、かつ入手容易でコスト的にも優れる点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0038】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0039】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0040】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0041】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0042】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。
【0043】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0044】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0045】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0046】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0047】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0048】
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0049】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0050】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0051】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0052】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0053】
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
【0054】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、13,000〜40,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましく、20,000〜32,000が更に好ましく、22,000〜28,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂を使用した場合、本発明の基材フィルムはフィルム成形性に優れかつ良好な強度を有する。上記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0055】
本発明の好適なB成分について説明する。B成分のポリエステルブロック共重合体は、いわゆるハードセグメントと称される高融点ポリエステルセグメント、並びにいわゆるソフトセグメントと称される低融点重合体セグメントから構成されるブロック共重合体である。殊に好適にはかかる低融点重合体セグメントがポリエステル重合体セグメントであるブロック共重合体である。
【0056】
上記高融点ポリエステルセグメント(以下、単に“ハードセグメント”と称する場合がある。)は、該セグメントから形成された高重合体の融点が150℃以上となる構造を有するポリエステルセグメントである。かかるポリエステルセグメントは、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体とジオール成分またはその誘導体とを重合してなるポリエステルおよびこれらの少なくともいずれか1つの成分が2種以上の成分を重合してなるコポリエステル、オキシ酸またはその誘導体を重合してなるポリエステル、並びに芳香族エーテルジカルボン酸またはその誘導体とジオール成分またはその誘導体とを重合してなるポリエステルなどが例示される。
【0057】
上記の芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、およびビス(4−カルボキシフェニル)スルホンなどが例示される。中でも芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。
【0058】
またジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、p−キシリレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノールなどが例示される。中でもジオール成分としては、炭素数2〜4のジオール成分が好適である。
【0059】
上記の中でもハードセグメントとして好適な構造は、ポリテトラメチレンテレフタレートである。かかる構造はポリカーボネート樹脂との相溶性に優れ、また強度などにおいて良好な特性を有する。尚、かかるポリテトラメチレンテレフタレートは、本発明の効果を発揮する範囲で他の成分を共重合成分として含むことができる。共重合成分の割合は、ジカルボン酸成分およびジオール成分共に、それぞれの全成分100モル%中、40モル%以下が適切であり、30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0060】
ポリエステルブロック共重合体における上記低融点重合体セグメント(以下、単に“ソフトセグメント”と称する場合がある。)は、該セグメントから形成された高重合体の融点が100℃以下または100℃において液状を呈する非晶性の重合体である。ソフトセグメントはより好ましくは該セグメントから形成された高重合体の融点が50℃以下または50℃において液状を呈する非晶性の重合体である。
【0061】
かかるソフトセグメントとしては、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールが挙げられる。ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとしては、例えば、ポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(プロピレンオキサイド)グリコール、およびポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール、並びにこれらのポリエーテルグリコール構成成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコールなどが例示される。かかるポリ(アルキレンオキサイド)グリコールの数平均分子量は400〜6,000の範囲が好ましく、500〜3,000がより好ましい。
【0062】
ソフトセグメントとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10の脂肪族グリコールから製造されるポリエステルが挙げられる。かかるポリエステルとしては、例えばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリネオペンチルセバケート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、およびポリヘキサメチレンアゼレートなどが例示される。
【0063】
ソフトセグメントとしては、ポリ−ε−カプロラクトンを代表とするポリラクトン類などが例示される。更に上記ポリエステルとポリエーテルを組み合わせたポリエステルポリエーテル共重合体なども示すことができる。
【0064】
ソフトセグメントとしては、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸または、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸からなり、ジオール成分として炭素数5〜15のジオールおよび/またはポリ(アルキレンオキサイド)グリコールからなるポリエステルが挙げられる。かかるポリエステルの具体的な態様は、(1)芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分および炭素数5〜15のジオール成分から構成されるポリエステル(以下“SS−1”と称する場合がある)、および(2)芳香族ジカルボン酸成分、およびポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分から構成されるポリエステル(以下“SS−2”と称する場合がある)である。特にSS−1は極めて良好な透明性が得られる点から好適である。
【0065】
上記ソフトセグメントSS−1は、ポリエステルブロック共重合体が本発明の所定の条件を満足すれば特に制限されるものではないが、より良好な透明性を得られる点からジカルボン酸成分の合計100モル%中、芳香族ジカルボン酸60〜99モル%および脂肪族ジカルボン酸1〜40モル%から構成されることが好ましい。より好適な態様は芳香族ジカルボン酸70〜95モル%および脂肪族ジカルボン酸5〜30モル%の構成であり、更に好適な態様は芳香族ジカルボン酸85〜93モル%および脂肪族ジカルボン酸7〜15モル%の構成である。特に好適な態様は芳香族ジカルボン酸89〜92モル%および脂肪族ジカルボン酸8〜11モル%の構成である。SS−1の芳香族ジカルボン酸としては上述の各種が使用できるが、テレフタル酸およびイソフタル酸が好適であり、特に結晶性低下の点からイソフタル酸が好適である。
【0066】
ソフトセグメントSS−1の脂肪族ジカルボン酸として炭素数6〜12の直鎖状脂肪族ジカルボン酸が好適であり、特にセバシン酸が好適である。
【0067】
ソフトセグメントSS−1の炭素数5〜15のジオール成分としては、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、および2−メチルオクタメチレンジオールなどが好適に例示され、特にヘキサメチレングリコールが好ましい。
【0068】
上記ソフトセグメントSS−2は、ポリエステルブロック共重合体が本発明の所定の条件を満足すれば特に制限されるものではないが、好適なポリ(アルキレンオキサイド)グリコール成分は、分子式HO(CHCHO)H(i=2〜5)、または分子式HO(CHCHCHCHO)H(i=2〜3)で表わされるものであり、更に好適には分子式HO(CHCHO)H(i=2〜5)で表わされるものであり、特に好ましくはトリ(エチレンオキサイド)グリコールである。SS−2の芳香族ジカルボン酸としては上述の各種が使用できるが、テレフタル酸およびイソフタル酸が好適であり、特にテレフタル酸が好適である。
【0069】
上記のソフトセグメントである、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸または、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸からなり、ジオール成分として炭素数5〜15のジオールおよび/またはポリ(アルキレンオキサイド)グリコールからなるポリエステルには、本発明の効果を発揮する範囲において脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸を共重合することができ、炭素数2〜4の直鎖状脂肪族ジオールを共重合することができる。
【0070】
かかる脂肪族ジカルボン酸としては例えば炭素数4〜12の直鎖状ジカルボン酸が挙げられ、炭素数8〜12の直鎖状ジカルボン酸がより好ましく挙げられる。かかるジカルボン酸の具体例としてはコハク酸、アジピン酸、およびセバチン酸が例示される。かかる脂環族ジカルボン酸としては例えばシクロヘキサンジカルボン酸が例示される。また芳香族ジカルボン酸は2種以上の成分を使用することができ、例えばSS−1およびSS−2において好適に例示した芳香族ジカルボン酸とその他の芳香族ジカルボン酸を混合して使用することができる。しかしながらこれらの共重合される他の成分の割合はジカルボン酸成分の合計100モル%中40モル%以下が適切であり、30モル%以下が好ましく、20モル%以下とすることがより好ましい。
【0071】
B成分のポリエステルブロック共重合体においてハードセグメントとソフトセグメントとの割合は、共重合体100重量%中、ハードセグメントが20〜70重量%およびソフトセグメントが80〜30重量%であることが適切であり、ハードセグメントが20〜40重量%およびソフトセグメントが80〜60重量%であることが好ましい。ハートセグメントの割合が上記の範囲を超えて多くなりすぎると本発明の所定の要件、殊に(iii)の要件を満足しにくくなる。ソフトセグメントの割合が上記の範囲を超えて多くなりすぎると相溶性の低下するものが増え、(i)や(iv)の要件を満足しないものが増える。尚、ポリエステルブロック共重合体は上記ソフトセグメントの2種以上をその構成成分として含むことができる。
【0072】
更に上記ハードセグメントとソフトセグメントの分子量は、500〜7,000の範囲が好ましく、800〜5,000の範囲がより好ましい。
【0073】
B成分のポリエステルブロック共重合体の固有粘度(o−クロロフェノール中、35℃での測定された値)は0.6以上が好ましく、0.8から1.5の範囲がより好ましく、0.8〜1.2の範囲が更に好ましい。固有粘度が上記範囲を超えて低すぎる場合には強度が低くなり好ましくない。
【0074】
B成分の脂環族ポリエステルは、ジカルボン酸成分およびジオール成分のそれぞれ100モル%中50モル%以上の脂環族ジカルボン酸および脂環族ジオールをその構成成分として含むポリエステルである。更に脂環族ジカルボン酸は、ジカルボン酸成分100モル%中80モル%以上が好適であり、90モル%以上がより好適であり、実質的に100モル%であることが更に好適である。脂環族ジオールも同様にジオール成分100モル%中80モル%以上が好適であり、90モル%以上がより好適であり、実質的に100モル%であることが更に好適である。共重合可能な他のジカルボン酸およびジオールは上述した各種が使用できる。
【0075】
脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸が例示される。脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。より好適にはシクロヘキサンジカルボン酸およびシクロヘキサンジメタノールをその構成成分とするポリエステルである。かかる脂環族ジカルボン酸の固有粘度(o−クロロフェノール中、35℃での測定された値)は0.6以上が好ましく、0.8から1.5の範囲がより好ましく、0.8〜1.2の範囲が更に好ましい。固有粘度が上記範囲を超えて低すぎる場合には強度が低くなり好ましくない。
【0076】
B成分のポリカプロラクトンは、例えばε−カプロラクトンを酸、塩基、有機金属化合物等の触媒の存在下開環重合して製造することができる。また、ポリカプロラクトンの末端はエステル化やエーテル化等の末端処理を施してあってもよい。ポリカプロラクトンの分子量は特に制限する必要はないが、数平均分子量で表して1,000〜100,000が好ましく、2,000〜80,000がより好ましい。
【0077】
本発明の基材フィルムには、各種の添加剤を含めることができる。添加剤としては熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料などが挙げられる。
【0078】
熱安定剤としては例えば各種ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物、およびホスフェート化合物などリン系安定剤を好ましく挙げることができる。本発明のB成分の好ましい態様はポリエステルであることから、A成分のポリカーボネート樹脂との間に生ずる熱分解反応を抑制する目的でかかるリン系安定剤を配合することは好ましい。
【0079】
ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0080】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0081】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0082】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0083】
リン化合物からなる安定剤としては、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい。またリン化合物からなる安定剤の組成割合としては、本発明の基材フィルム100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0084】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを挙げることができる。フェノール系酸化防止剤としては種々のものを使用することができる。
【0085】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばn−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどを好ましく挙げることができ、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネートをより好ましく挙げることができる。
【0086】
本発明のイオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステル、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などを挙げることができる。より好ましくは、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリルチオプロピオネート)エステルを挙げることができる。
【0087】
また基材フィルムは紫外線吸収剤などを含むこともできる。紫外線吸収剤としては、例えば2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0088】
また紫外線吸収剤としては例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0089】
更に紫外線吸収剤としては例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0090】
またビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサンなどに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。
【0091】
フェノール系酸化防止剤、またはイオウ系酸化防止剤の組成割合はそれぞれ本発明の基材フィルム100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0092】
また紫外線吸収剤、光安定剤の組成割合は、それぞれ本発明の基材フィルム100重量%中、0.001〜10重量%が好ましく、0.001〜5重量%がより好ましい。
【0093】
本発明の基材フィルムは離型剤を含むものであってよい。離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。
【0094】
好ましい離型剤としては飽和脂肪酸エステルが挙げられ、例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレートなどグリセリン脂肪酸エステル類、デカグリセリンデカステアレートおよびデカグリセリンテトラステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、ステアリルステアレートなどの低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネートなどの高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレートなどのエリスリトールエステル類、ポリオレフィン系ワックスを挙げることができる。
【0095】
離型剤は本発明の基材フィルム100重量%中、0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1重量%、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0096】
本発明の基材フィルムは帯電防止剤を含むものであってよい。帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライドなどが挙げられる。
【0097】
本発明の基材フィルムは染料を含むものであってよい。すなわち本発明の基材フィルムは透明性に優れるが無色である必要はなく、各種の目的に応じて染料を含むことができる。例えば青色染料を微量に含有する場合には透明感を増大させることができ、黄色または橙色の染料は金属膜との組み合わせで金色を呈し高級感を付与できる場合がある。
【0098】
染料としては、例えばペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等の有機系色剤が挙げられ、これらの中でも透明性の有機系色剤が好ましい。さらに好ましくは、アンスラキノン系染料、ペリノン系染料、キノリン系染料、ペリレン系染料、クマリン系染料およびチオインジゴ系染料をなどが挙げられる。染料は通常の染料だけでなく蛍光染料および蛍光増白剤が含まれる。蛍光増白剤としてはビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体、およびクマリン誘導体などが例示される。
【0099】
更に本発明の基材フィルムには、本発明の効果を発揮する範囲で、強化充填材を配合してもよい。強化充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、ワラストナイト、カオリンクレー、マイカ、タルクおよび各種ウイスカー類(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカーなど)といった一般に知られている各種フィラーを併用することができる。形状は繊維状、フレーク状、球状、中空状を自由に選択できる。
【0100】
さらに本発明の効果を発揮する範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂)、難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、シリコーン系難燃剤等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸ナトリウム等)、衝撃改良剤、滑剤、等を配合してもよい。
【0101】
上記基材フィルムを構成する樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。該ペレットを基材フィルムの製造装置に供給しフィルムを製造する。
【0102】
ここで予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができる。
【0103】
更に、本発明の基材フィルムは、上記のペレット工程を経ることなく、溶融混練機から直接Tダイなどを用いてフィルムを製造することも可能である。かかる製造法は樹脂組成物に対する熱負荷が低減できることから、色相や強度がより良好な基材フィルムが得るのに好ましい方法である。
【0104】
本発明の基材フィルムは上述のごとく製造されたペレットから、または溶融混練機から直接にフィルム成形を行い製造される。フィルムの製造方法としては、層を構成する樹脂組成物をTダイやコートハンガーダイにより溶融押出する溶融押出法、カレンダー成形法、溶剤キャスティングする方法、およびインフレーション法などを挙げることができるがTダイやコートハンガーダイによる溶融押出法が最も好適である。
【0105】
かくして得られる基材フィルムの厚みは、0.05〜1mmの範囲が好ましく、0.07〜0.5mmの範囲がより好ましく、0.08〜0.4mmの範囲が更に好ましく、0.1〜0.3mmの範囲が特に好ましい。上記の範囲を超えて基材フィルムが薄すぎる場合には、該フィルムの扱いの困難さが原因で、およびフィルムの破れやすさによる熱成形条件の範囲の縮小が原因で加飾フィルムやその熱成形品の製造効率が劣る。一方上記の範囲を超えて基材フィルムが厚すぎる場合には、加飾される成形品の外観が不十分となったり、印刷など図柄層の形成における製造効率が劣るようになる。
【0106】
基材フィルムは、延伸フィルムおよび無延伸フィルムのいずれであってもよいが、無延伸フィルムであることが好ましい。本発明の基材フィルムにおいては無延伸フィルムは簡便な工程で製造され、かつ良好な特性を有する。
【0107】
また基材フィルムの表面は平滑である方が汎用的であり好ましいが、非平滑であってもよい。例えば基材フィルムのいずれの表面に対しても凹凸が施されることができる。フィルム表面に凹凸を形成する方法としては、エンボス模様を有する転写ロールなどのエンボス模様を有する転写媒体を用いて該模様を転写する方法、およびダイスを異形化する方法などを挙げることができる。
【0108】
図柄層は基材フィルム表面の通常その片面に形成され、基材フィルムを通してその図柄が認識される。またかかる図柄の他に基材フィルムの表層に他の印刷等を施してもよい。すなわち本発明によれば加飾用フィルムにおける基材フィルムの少なくとも1つの表面に図柄層が形成されてなり、かかる図柄の少なくとも1つは基材フィルムを通して認識される加飾用フィルムが提供される。
【0109】
図柄層は通常印刷層として形成される。印刷層の材質としては、ウレタン系樹脂(硬化型)、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセテート系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂、並びにその他熱可塑性エラストマーなどの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキが例示される。
【0110】
更に成形樹脂の耐熱性が高く、その成形加工温度が高い場合には、耐熱性の高い樹脂バインダーが必要とされる。一方で本発明の基材フィルムはポリカーボネート樹脂をその主成分として有することから、密着性の点で印刷層の材質としてポリカーボネート樹脂は好適な材料の1つである。かかる点から成形樹脂の耐熱性が高い場合、耐熱性の良好なポリカーボネートをバインダーとして使用した着色インキは好適な態様である。かかるバインダーを構成するポリカーボネートとしては、全二価フェノール成分の少なくとも90モル%が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンである二価フェノールより得られたそのガラス転移温度が155〜185℃およびその比粘度が0.24〜1.60であるポリカーボネート樹脂や、9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物を構成単位として5〜95モル%含有するポリカーボネート樹脂などが例示される。
【0111】
図柄層を形成するための印刷方法としては、グラビア印刷、平板印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、パット印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方法を製品形状や印刷用途に応じて使用することができる。特に多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷やグラビア印刷が適している。
【0112】
更に図柄層は、印刷層だけでなく金属または金属酸化物の薄膜層であってもよく、更に印刷層と金属または金属酸化物の薄膜層との組合せからなるものでもよい。金属または金属酸化物の薄膜層を形成する方法としては例えば蒸着法、溶射法、およびメッキ法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。
【0113】
溶射法としては大気圧プラズマ溶射法、および減圧プラズマ溶射法などが例示される。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキおよび電気メッキ法などが挙げられ、電気メッキ法においてはレーザーメッキ法を使用することができる。上記の中でも蒸着法およびメッキ法が金属層を形成する上で好ましく、蒸着法が金属酸化物層を形成する上で好ましい。また蒸着法およびメッキ法は組み合わせて使用することができる。
【0114】
また部分的に金属または金属酸化物の薄膜層を形成する場合の一例としては、該薄膜層を必要としない部分に溶剤可溶性樹脂層を形成した後、その上に全面的にかかる薄膜層を形成し、溶剤洗浄を行って溶剤可溶性樹脂層と共に不要な金属薄膜を除去する方法がある。この場合によく用いる溶剤は、水または水溶液である。また、別の一例としては、全面的にかかる薄膜を形成し、次に該薄膜を残しておきたい部分にレジスト層を形成し、酸またはアルカリでエッチングを行い、レジスト層を除去する方法である。
【0115】
更に本発明の加飾用フィルムは接着層を有するものであってもよい。接着層は加飾用フィルムと成形樹脂との間の接着性を改良する。したがって接着層は図柄層の上に形成されることが好ましいが、基材フィルム、接着層、および図柄層の順に形成され、図柄層が形成されていない部分のみで有効な接着力を発揮するものであってもよい。接着層としては成形樹脂の材質に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば成形樹脂の材質がスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂などの場合には、これらの樹脂に親和性のあるアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびポリカーボネート系樹脂などが好ましい接着層の樹脂である。接着層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0116】
また本発明の加飾用フィルムは、加飾用フィルムに腰の強さを与えその取り扱い性や熱成形性を容易にする目的でバッキングシートを有することもできる。更に本発明の加飾用フィルムは、成形樹脂の層とは反対側の表面に、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(メッキ、蒸着、スパッタリングなど)などの各種の表面処理を行うことができる。
【0117】
上記の如く得られた加飾用フィルムは、射出成形用の金型内にセットされて成形樹脂の表面に一体化接着される。ここで加飾用フィルムは真空成形法や圧空成形法などの熱成形方法を用いて予備賦形されることが、多様な成形品表面形状、殊に深絞りされた凹凸形状を有する成形品表面形状に対応可能であることから好ましい。本発明の加飾用フィルムにおける基材フィルムは、かかる熱成形性において優れ好適である。かかる予備賦形は、成形機の金型を用いて射出成形の直前に行う方法、並びに予め別の装置を用いて予備賦形したフィルムを金型内に装着する方法のいずれも選択できる。
【0118】
真空成形または圧空成形の方法としては、ストレート成形法の他、リバースドロー成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスドリバースドロー成形法、ドレープ成形法、およびエアスリップ成形法が例示され、いずれの成形法も使用できる。また熱成形時の加飾用フィルムの加熱方法としては、電気ヒーター、赤外線ヒーター、高周波誘導、ハロゲンランプ、マイクロ波、高温熱媒体(スチームなど)、およびレーザーなどの各種方法を用いることができる。
【0119】
更に熱成形された加飾用フィルムは、上記の予備賦形をした後、または予備賦形と同時に、所定の形状に打ち抜き加工される場合が多い。かかる所定の形状に打ち抜き加工する方法としては、トムソン打ち抜き法、金型によるプレス法などが例示される。また打ち抜き形状としては、所定形状の外周に沿った線や所定形状の孔などがある。
【0120】
上記の如く製造された予備賦形された加飾用フィルム(金型内に装着後予備賦形されるフィルムを含む)は、射出成形用の金型内にセットされて溶融した成形樹脂が該金型内に充填され、その結果加飾用フィルムが成形樹脂の表面に一体化接着された樹脂成形品が製造される。かかる金型内へのセット方法は、ロール巻物の加飾用フィルムを準じ金型内に送り込む方法、単葉の加飾用フィルムを順次金型内に送り込む方法、並びに予備賦形された加飾用フィルムを順次金型内に送り込む方法などが例示され、いずれも好適に用いられるものである。
【0121】
更にかかる成形樹脂の金型内への充填においては、通常の射出成形法の他に適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形(加飾用フィルム以外のインサート品を使用することができる)、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0122】
かくして製造された樹脂成形品は、図柄層によってその意匠性や情報の認識具合に優れ、各種の産業用途に広く有用な樹脂成形品を提供する。かかる樹脂成形品としては各種機器や製品のカバー、ハウジング、およびケース成形品が例示され、かかる成形品は例えば自動車のインジケータパネル、並びに家庭電器製品、音響電子機器および事務用機械のコントロールパネルなどに代表される。また樹脂成形品としては各種機器や製品のボタン、スイッチ、キー、キーパット、ハンドル、レバー、および鍵盤などの人が手で触れる部品が例示され、かかる成形品は例えば携帯電話などのモバイルIT機器のキーパットなどに代表される。更にサングラスやゴーグルなどの透明性と共に意匠性が要求される製品においても好適である。このように本発明の樹脂成形品は幅広い用途に有効であり、したがって本発明の加飾用フィルムにおける基材フィルム、該基材フィルムを使用した加飾用フィルム、並びに該加飾用フィルムを一体化接着した射出成形品は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、および雑貨などの各種用途に有用である。
【0123】
更に本発明の基材フィルムは透明性および熱成形性に優れることから、該基材フィルム単体で、または各種の表面処理層を有する形態で幅広い産業分野に使用可能である。したがって本発明によれば、熱成形用のフィルムであって、
(i)該フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂(A成分)および該A成分との組成物において該A成分由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)からなる樹脂組成物であり、
(ii)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、本文中に規定された動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲であり、
(iii)該フィルムの本文中に規定する融解熱の変化(H−H;ここでHはフィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わし、Hは160℃で1時間熱処理されたフィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わす)が、2kJ/kg以下であり、かつ
(iv)ISO 14782に準拠して測定された該フィルムを構成する樹脂成分からなる2mmの成形品のヘーズが35%以下であることを特徴とする熱成形用のフィルムが提供される。かかる熱成形用フィルムは、ブリスター成形品、カップ成形品、ボトル成形品、およびPTP包装などの分野において有用である。
【0124】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の評価方法は下記のとおりである。表中において組成物を構成する成分の単位は特に記載のない限り重量部である。
【0125】
[実施例1〜8、および比較例1〜4]
(I)評価方法
(1)損失正接(tanδ)
作成した樹脂ペレットを110℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、シリンダー温度260℃〜280℃、金型温度40℃の条件にて射出成形(ファナック(株)製:T−150D射出成形機使用)を行い、長さ64mm×幅12mm×厚み3.2mmの試験片を得た。tanδの測定は、TA Instruments社製DMA983型動的粘弾性測定装置を用い、ResonantFrequency Mode(共振周波数モード)を用いて行った。長さ64mm×幅12mm×厚み3.2mmの試験片を、チャック間距離30mmの垂直型留め具(Vertical Clamp)に固定し、空気雰囲気下30℃より昇温速度10℃/minの条件で約200℃まで昇温することにより測定を行った。また、測定におけるOscillation Amplitudeは0.2mmとした。尚、途中tanδの最大ピークを超えて適切な測定が困難になった場合には、測定をその時点で中断した。またかかるtanδのピーク温度がA成分のポリカーボネート樹脂単独の場合に比較して低下した場合、本発明の要件(i)を満足するものと判定した。結果を表1および表2に示す。
(2)融解熱量(融解熱の変化(H−H))
作成した厚み200μmのフィルムより約10mgのサンプルを採取し、TAInstruments社製DSC測定装置を用い、JIS K7122に準拠した方法により、50ml/minの窒素気流下、昇温速度10℃/minで280℃℃まで加熱し、この際の融解熱量をH(kJ/kg)として求めた。また、200μmフィルムを事前に160℃にて1時間熱処理したサンプルを、前述の方法と同様に測定し、融解熱量をH(kJ/kg)を求めた。かかる両者の値からH−H(kJ/kg)を求めた。結果を表1および表2に示す。
(3)ヘーズ
作成した樹脂ペレットを110℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、シリンダー温度260℃〜280℃、金型温度40℃の条件にて射出成形を行い、長さ90mm×幅50mm×厚み2mmの試験片を得た。得られた試験片を(株)村上色彩技術研究所製 ヘーズメーターHR−100を用いISO 14782に準拠してかかる2mm厚みの成形品のヘーズを測定した。結果を表1および表2に示す。
(4)熱成形性
真空成形機に幅65mm×長さ70mm×深さ10mm、底部コーナーエッジ0.5mmRの凹型形状を有する雌型金型を取り付けた。ついで、作成した厚み200μmフィルムを210mm×297mmの大きさに切断し、予熱時間10秒、真空度13.3kPa、冷却時間15秒の条件にて真空成形した。加熱はフィルムの上下をヒーターで挟みこむことにより行った。得られた真空成形品を観察し形状トレース性およびフィルムの白化状態を評価した。形状トレース性の評価は、得られた真空成形品のコーナーエッジ部の半径をRゲージを用いて測定することにより行った。なお、用いた真空成形機における200μmフィルムの予熱挙動を図1に示す。フィルムの温度は赤外線サーモグラフィー装置により観察を行った。
【0126】
(II)評価サンプルの作成
(1)基材フィルムの作成
表1および表2に示す成分および配合割合にて事前に予備乾燥した材料をV型ブレンダーで混合した後、スクリュー径40mmの単軸押出機を用いてシリンダー温度280℃およびダイ温度280℃の条件で、250mm幅のTダイから押し出し、厚み200μmの未延伸フィルムを作製した。なお冷却ロールには温度調整機が接続され、自在に冷却温度を制御することが可能であり、冷却ロールの温度は各フィルムにおいて最も製造が安定する30℃に調整した。
(2)射出成形用ペレットの作成
表1および表2に示す成分および配合割合にて事前に予備乾燥した材料をV型ブレンダーで混合した後、スクリュー径40mmの単軸押出機を用いてシリンダー温度280℃およびダイ温度280℃の条件でストランドを作成後、ペレタイザーでカットしてペレットを作製した。
【0127】
(III)使用原料(表1および表2中に表記の記号の内容)
(A成分)
PC:ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成(株)製:パンライトL−1250、粘度平均分子量23,700)
(B成分)
PEs1:後述の製造法により製造されたポリエステルブロック共重合体
PEs2:後述の製造法により製造されたポリエステルブロック共重合体
PEs3:後述の製造法により製造されたポリエステルブロック共重合体
PEs4:後述の製造法により製造されたポリエステルブロック共重合体
PCL::数平均分子量10,000のポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製;プラクセルH1P)
(A成分とB成分との混合物)
PC/A:ポリカーボネート、並びに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる構成成分を有する脂環族ポリエステルとのポリマーアロイ(GE Plastics社製:XYLEX X−7300)
(B成分に類似する樹脂成分)
PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット(帝人(株)製:TRB−H、固有粘度1.07)
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(帝人(株)製:TR−8580H、固有粘度0.8)
(安定剤)
ST A:ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(旭電化(株)製:PEP−8)
ST B:トリメチルホスフェート
【0128】
(IV)ポリエステルブロック共重合体の製造(ここで“部”は特に断りのない限り“重量部”を示す)
(1)[ポリエステルブロック共重合体PEs1の製造]
イソフタル酸ジメチル175部、セバシン酸ジメチル23部、ヘキサメチレングリコール140部をジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、減圧下に重縮合して、固有粘度が1.06であり、DSC法による測定で結晶の溶融に起因する吸熱ピークを示さない非晶性のポリエステルを得た。
このポリエステルに別途重縮合して得た固有粘度0.98のポリブチレンテレフタレートのチップを乾燥して107部添加し、240℃で45分反応させたのち、フェニルフォスフォン酸を0.1部添加して反応を停止させた。
得られたポリエステルブロック共重合体の融点は190℃で、固有粘度は0.93であった。これをポリエステルブロック共重合体PEs1とする。
(2)[ポリエステルブロック共重合体PEs2の製造]
イソフタル酸ジメチル125部、セバシン酸ジメチル54部、ヘキサメチレングリコール140部をジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、減圧下に重縮合して、固有粘度1.06のポリエステルを得た。
このポリエステルと107部のポリブチレンテレフタレートを用いて、ポリエステルブロック共重合体PEs1と同様の方法でポリエステルブロック共重合体を得た。これをポリエステルブロック共重合体PEs2とする。
(3)[ポリエステルブロック共重合体PEs2の製造]
テレフタル酸ジメチル194部、トリエチレングリコール160部をジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、減圧下に重縮合して、固有粘度0.76の水飴状のポリエステルを得た。
このポリエステルにポリブチレンテレフタレートを107部添加し、250℃で75分反応させたのち、フェニルフォスフォン酸を0.1部添加して反応を停止させた。
得られたポリエステルブロック共重合体の融点は176℃で、固有粘度は0.83であった。これをポリエステルブロック共重合体PEs3とする。
(4)[ポリエステルブロック共重合体PEs4の製造]
テレフタル酸ジメチル613部、ポリテトラメチレングリコール(平均分子量1000)185部、テトラメチレングリコール398部をテトラブトキシチタネートを触媒として、常法により重合して、固有粘度1.61、ハードセグメント量79重量%のポリエステルブロック共重合体を得た。これをポリエステルブロック共重合体PEs4とする。
【0129】
【表1】
Figure 2004026870
【0130】
【表2】
Figure 2004026870
【0131】
上記の表から明らかなように、本発明の要件を満足するフィルムは熱成形時の白化現象がなく白化現象後も均質で良好な透明性を有すると共に、熱成形性においても優れている。
【0132】
[実施例9]
上記実施例1の配合組成からなり、上記(II)の(1)基材フィルムの作成の項で記載された方法で作成された厚み200μmおよび幅250mmの基材フィルムに下記の方法で図柄層を設け加飾用フィルムを作製した後、真空成形して予備賦形し、かかる予備賦形された加飾用フィルムをインサート成形することにより、加飾フィルムが一体化接着された容器状の樹脂成形品を作製した。
【0133】
バインダー樹脂として9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称する)と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールA”と略称する)からなる二価フェノール{ビスクレゾールフルオレン:ビスフェノールA=30:70(モル比)}、ホスゲンおよび末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールを使用して、通常の界面重縮合反応させて得られたポリカーボネート樹脂(比粘度;0.612、Tg;192℃)30部、染料としてPlast Red8370(アントラキノン系赤染料;有本化学工業製)12部、溶剤としてシクロヘキサノン50部およびジオキソラン50部を混合して、印刷用インキを調整した。
【0134】
次いで、上記実施例1で作成された厚み200μmの基材フィルムの片面に、上記印刷用インキをシルクスクリーン印刷機(300型半自動スクリーン印刷機、江口孔板製)を用いてスクリーン印刷し、100℃で60分間乾燥させて、加飾用フィルムを得た。
【0135】
次に得られた加飾用フィルムを上記(I)の(4)熱成形性の項に記載された金型および方法を用いて真空成形を行い、その後不要な周囲部分の打ち抜きを行って、図柄層が裏面側に形成された幅65mm×長さ70mm×深さ10mmの凹型形状を有する成形品を得た。
【0136】
さらに、得られたかかる成形品を射出成形金型内に図柄層側に樹脂が充填されるように装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(パンライトL−1225 帝人化成(株)製)を用いて310℃の成形温度でインサート成形を行った。かかる成形により幅65mm×長さ70mm×高さ10mm、および厚み2.5mmの凹型形状を有する成形品が得られた。ゲートはほぼ中心部分に位置する0.9mm径のピンゲートであった。得られた成形品は、そのインクの流れやにじみもなく、優れた図柄の均質感および良好な高意匠性を有していた。
【0137】
【発明の効果】
本発明は、熱成形時の白化が抑制され、良好な熱成形性を有し、更に透明性に優れた加飾用フィルムにおける基材フィルム、該基材フィルムを使用した加飾用フィルム、並びに該加飾用フィルムを一体化接着した射出成形品を提供するものであることから、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、および雑貨などの各種用途に有用であり、特に各種機器や製品のカバー、ハウジング、およびケース成形品、各種機器や製品のボタン、スイッチ、キー、キーパット、ハンドル、レバー、および鍵盤などの人が手で触れる部品、並びにサングラスやゴーグルなどの透明性と共に意匠性が要求される製品において好適であることから、その奏する産業上の効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【図1】真空成形機における200μmフィルムの予熱挙動を示す図(横軸予熱時間(秒)および縦軸フィルム温度(℃))。

Claims (10)

  1. 基材フィルム上に図柄層が形成され射出成形用の金型内にセットされて成形樹脂の表面に一体化接着される加飾用フィルムにおける基材フィルムであって、
    (i)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂(A成分)および該A成分との組成物において該A成分由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)からなる樹脂組成物であり、
    (ii)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、本文中に規定された動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲であり、
    (iii)該基材フィルムの本文中に規定する融解熱の変化(H−H;ここでHは基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わし、Hは160℃で1時間熱処理された基材フィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わす)が、2kJ/kg以下であり、かつ
    (iv)ISO 14782に準拠して測定された該基材フィルムを構成する樹脂成分からなる2mmの成形品のヘーズが35%以下であることを特徴とする加飾用フィルムにおける基材フィルム。
  2. 上記基材フィルムの損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度は120〜160℃の範囲である請求項1に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルム。
  3. 上記B成分は、ポリエステルブロック共重合体、ポリカプロラクトン、および脂環族ポリエステルからなる群から選ばれる一種以上の樹脂である請求項1または2のいずれかに記載の加飾用フィルムにおける基材フィルム。
  4. 上記基材フィルムを構成する樹脂成分は、A成分とB成分の合計100重量%中、A成分が50〜98重量%およびB成分が50〜2重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルム。
  5. 上記B成分は、ポリエステルブロック共重合体、および脂環族ポリエステルからなる群から選ばれる一種以上の樹脂である請求項3に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルム。
  6. 上記B成分は、ポリエステルブロック共重合体である請求項3に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルム。
  7. 上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の加飾用フィルムにおける基材フィルムの少なくとも1つの表面に図柄層が形成されてなり、かかる図柄の少なくとも1つは基材フィルムを通して認識される加飾用フィルム。
  8. 上記請求項7に記載の加飾用フィルムを熱成形してなる立体形状を有する加飾用フィルム。
  9. 上記請求項7または8のいずれかに1項に記載の加飾用フィルムが射出成形用の金型内にセットされて成形樹脂の表面に一体化接着されてなるインサート射出成形品。
  10. 熱成形用のフィルムであって、
    (i)該フィルムを構成する樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂(A成分)および該A成分との組成物において該A成分由来のガラス転移温度を低温側にシフトさせる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B成分)からなる樹脂組成物であり、
    (ii)該基材フィルムを構成する樹脂成分は、本文中に規定された動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の最大となるピーク温度が100〜170℃の範囲であり、
    (iii)該フィルムの本文中に規定する融解熱の変化(H−H;ここでHはフィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わし、Hは160℃で1時間熱処理されたフィルムを30℃〜280℃まで加熱したときの単位質量当たりの融解熱量(kJ/kg)を表わす)が、2kJ/kg以下であり、かつ
    (iv)ISO 14782に準拠して測定された該フィルムを構成する樹脂成分からなる2mmの成形品のヘーズが35%以下であることを特徴とする熱成形用のフィルム。
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